(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ICカード
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20240305BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G06K19/07 220
G06K19/07 260
G06K19/077 180
G06K19/077 212
G06K19/077 216
G06K19/077 244
G06K19/077 264
G06K19/077 296
(21)【出願番号】P 2020078400
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】坂田 直幸
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-149360(JP,A)
【文献】特開2004-355604(JP,A)
【文献】特開平10-293828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形基体内に、折り取り可能なIC媒体を有するICカードであって、
該IC媒体が少なくとも非接触型の通信機能を備え、
該IC媒体が、非接触無線通信するための第一の通信アンテナコイルを有し、
また該第一の通信アンテナコイルと無線通信結合するための第二の通信アンテナコイルを該IC媒体外の外形基体内に有し、
該ICカード外の無線通信機器と無線通信するための、該第二の通信アンテナコイルに直接接続された第三の通信アンテナコイルをIC媒体外の外形基体内に有することを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記IC媒体と外形基体との間に、配線の導体を分断すること無くスリットとハーフカット部分を形成してなることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記IC媒体内にICチップとは別にコンデンサを搭載することを特徴とする請求項1または2に記載のICカード。
【請求項4】
前記IC媒体が、非接触型の通信機能に加えて接触型の通信機能も有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
決済、アミューズメント用途等で使用されるSIM(Subscriber Identity Module)形状の非接触IC媒体をその製造過程から内包するSIM用ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
IC媒体としてのプラグインICカードであるSIMカードは、ISO/IEC 7810規格のID-000で規定される縦寸法約15mm、横寸法約25mm、厚み寸法約0.76mmのカードに、縦寸法約11.5mm、横寸法約12.5mm程度のICモジュールが搭載され、カード四隅の内の1ヶ所に機器への装着時の位置決め用に約3mm程度の切欠きを有する。
【0003】
このようなSIMカードは、カード寸法が小さいために紛失しやすく取り扱いが不便であるなどの問題があるために、直接この外形で製造され、供給されるのではなく、PVC、PETG、ABS等のプラスチック材料を用いた一般的なカード寸法の板状外形基体内部に切り取り可能な状態で一体形成され、必要な時に板状外形基体から分離できるように切り取り加工構造を備えている。
【0004】
したがって、このようなSIMカードは、SIMカード用の特別の製造ラインではなく、従来の接触型または非接触型のICカード製造ラインを用いて製造される。
【0005】
ところが通信アンテナコイルをSIMカードに内蔵する非接触型SIMカードの場合、従来の製造ラインにおいては
図3に示すように従来の非接触型ICカードの通信アンテナコイルを前提として通信検査用リーダライタが設置されているため、通信アンテナコイルの位置と大きさが従来の非接触型ICカードとは異なる非接触型SIMカードに対して適切な通信が行われなくなるという課題があった。
【0006】
一方、そのために外径枠体内のSIMカードの位置を中央に移すという対策も考えられるが、該SIMカードは接触型として機能させる場合もあるため、電極位置は従来のままでなければならず、SIMカードの位置を変更することはできない。
【0007】
この課題を解決する手段として、下記特許文献1のように、SIMカードを支持している板状外形基体上にも通信アンテナコイルを備え、これとSIMカードを有線接続することによってICカード製造ラインにおける通信検査を可能にする提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし上記特許文献1の技術では通信検査時に非接触型SIMカード上の通信アンテナコイルを用いないことから、該通信アンテナコイル自体に存在する可能性のある製造上の異常を検知することができない。また該SIMカードを外形基体から分離する際に、外形基体上の通信アンテナと接続するための配線が分離破断面に露出することになり、SIMカード使用時の信頼性を低下させるおそれが生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような課題に対処するためになされたものであって、非接触型SIMカード上の通信アンテナコイルを用いて製造ラインにおける通信検査を行うことができ、またSIMカード分離に際しても不要な接続配線を使用環境に露出することなく、従来の製造ラインで製造可能な非接触型SIM用のICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
外形基体内に、折り取り可能なIC媒体を有するICカードであって、
該IC媒体が少なくとも非接触型の通信機能を備え、
該IC媒体が、非接触無線通信するための第一の通信アンテナコイルを有し、
また該第一の通信アンテナコイルと無線通信結合するための第二の通信アンテナコイルを該IC媒体外の外形基体内に有し、
該ICカード外の無線通信機器と無線通信するための、該第二の通信アンテナコイルに直接接続された第三の通信アンテナコイルをIC媒体外の外形基体内に有することを特徴とするICカードである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記IC媒体と外形基体との間に配線の導体を分断すること無くスリットとハーフカット部分を形成することを特徴とする請求項1に記載のICカードである。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記IC媒体内にICチップとは別にコンデンサを搭載することを特徴とする請求項1または2に記載のICカードである。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記IC媒体が、非接触型の通信機能に加えて接触型の通信機能も有することを特徴とする請求項1、2または3に記載のICカードである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、製造ライン上に備えられた通信機能検査のためのリーダライタとICカードの通信をICカードの外形基体に備えられた第三の通信アンテナコイルを用いて行うことから、従来の製造設備に変更を加えることなく、従来の非接触型ICカードの製造と同様に安定した通信機能検査を行うことができる。
【0016】
また、該第三の通信アンテナコイルは折り取り可能なIC媒体に備えられた第一の通信アンテナコイルから無線結合された第二の通信アンテナコイルに直接接続されていることから、該IC媒体が備えている第一の通信アンテナコイルを経由した無線通信機能を迂回することなく、該第一の通信コイルアンテナの機能検査が可能になる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、折り取り可能なIC媒体と、外形基体との間にあるスリットとハーフカット部分を隔てた結合用の第二の通信アンテナコイルとの間に導体配線が存在しないことから、容易に折り取ることが可能となる。
【0018】
またハーフカット部の分離破断面に導体配線が露出しないことから、SIMカードとしての使用環境下で、配線経路を介したICモジュールへの水分侵蝕の危険を回避することができ、長期信頼性が向上する。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、IC媒体内にICチップとは別にコンデンサを搭載することから、共振周波数を調整することによって通信距離を増加することが可能になり、製造時における製造ライン設定またはSIMカードとして使用する際の使用環境の自由度をそれぞれ向上することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、IC媒体が、非接触型の通信機能に加えて接触型の通信機能も有することから、使用時に接触型リーダライタと通信する用途であっても、製造時には該ICカードが有する非接触型通信の機能によって、製造ライン上の非接触型リーダライタを用いた通信検査を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した非接触型専用のIC媒体を有するICカードの平面図。
【
図2】本発明を適用した接触型・非接触型兼用のIC媒体を有するICカードの平面図。
【
図3】従来の非接触型IC媒体を有するICカードの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下
図1~
図2を用いて、各実施形態について説明する。
【0023】
<実施形態1>
図1は実施形態1に係る非接触型専用のIC媒体を有するICカード100の平面図である。該ICカードはSIM形状の非接触IC媒体101と外形基体102からなり、これらの間に形成されたスリット21によって切り欠き部を含む3方が分離され、ハーフカット22を有する辺によってのみ機械的に固定されている。
【0024】
非接触IC媒体101は半導体パッケージ3aおよび非接触通信のための第一の通信アンテナコイル11を有する。
【0025】
外形基体102は前記第一の通信アンテナコイル11の近傍でこれを囲むように配された第二の通信アンテナコイル12を有し、これら2つのアンテナコイルはトランス結合(電磁結合)によって非接触に結合される。
【0026】
更に外形基体102は前記第二の通信アンテナコイル12と導体で直接接続された第三の通信アンテナコイル13を有する。該第三の通信アンテナコイル13は外形基体102の周縁に配され大きな周長を有していることから、それよりより小さい外径しか有しない第一の通信アンテナコイルに比べて、より長い通信距離を得ることができる。
【0027】
従来のICカードと同様に、前記スリット21とハーフカット22が形成されていることから、従来のICカードの取り扱いと何ら変わること無く、SIMカードとして使用する際には、SIM形状の非接触IC媒体101を外径基体102からハーフカット部で容易に切り離すことが可能である。
【0028】
カードの製造方法についても従来のICカードと同様であり、アンテナコイルが形成されたシートをカード基材で挟み込み、ラミネートすることで得られる。外径基体102側の第二のアンテナコイル12および第三のアンテナコイル13は、非接触ICカード媒体101側の第一のアンテナコイル11と同時に形成することが可能である。この場合、これら3つのアンテナコイルはカードの厚み方向で同じ位置に存在することになる。アンテナコイルは、銅線による巻線アンテナや成膜された導体、例えばアルミニウムのエッチングなどによって形成することが可能で、その形成方法は特に限定されない。
【0029】
図示していないが、半導体パッケージ3a内にはICチップと別にコンデンサを搭載し、共振周波数を調整することによって、使用時の非接触型リーダライタまたは製造設備の検査用非接触型リーダライタとの通信距離を大きくすることが可能になる。
【0030】
<実施形態2>
図2は実施形態2に係る接触型・非接触型兼用のIC媒体を有するICカードの平面図である。前述の非接触型専用との違いは半導体パッケージ3aが接触型の特徴である接触端子を有する半導体パッケージ3bに置き換わっている点のみである。
【0031】
このことによって、該ICカード100は、非接触型ICカードのリーダライタに加えて接触型ICカードのリーダライタとも通信可能となり、ICカードとしての使用形態における自由度を上げることができる。
【0032】
またSIM形状の非接触IC媒体101を外径基体102から折り取ってSIMカードとして使用する際にも、非接触型通信機器に加えて接触型通信機器への組み込みも可能となることから、より広い応用性を獲得することができる。
【符号の説明】
【0033】
100 ICカード本体
101 SIM形状の非接触IC媒体
102 外形基体
3a 半導体パッケージ(非接触通信のみの場合)
3b 半導体パッケージ(接触通信を含む場合)
11 第一の通信アンテナコイル
12 第二の通信アンテナコイル
13 第三の通信アンテナコイル
21 スリット
22 ハーフカット
A 製造設備の通信検査用リーダライタのアンテナコイル領域