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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】クレーン組立方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20240305BHJP
   B66C 23/36 20060101ALI20240305BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/36 Z
B66C23/42 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020078723
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172500
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】小矢畑 章
(72)【発明者】
【氏名】松井 大朗
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154845(JP,A)
【文献】特開2019-069838(JP,A)
【文献】特開2012-116607(JP,A)
【文献】特開2007-290782(JP,A)
【文献】特開2013-049499(JP,A)
【文献】特開2007-290790(JP,A)
【文献】特開2020-132298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体及びこの下部走行体上で上記下部走行体が進行する面と平行な面内で回転可能な上部旋回体と、
基端が上記上部旋回体に連結され、上記平行面に対して起伏可能なブームと、
基端が上記ブームの先端に連結され、先端で吊荷用ケーブルを垂下し、上記ブームに対して起伏可能なジブと、
上記ジブの基端側又は上記ブームの先端側で基端が連結され、先端側が上記ジブの先端側にフロント側ガイラインを介して接続されているフロントストラットと、
上記ジブの基端側又は上記ブームの先端側で基端が連結され、先端側が上記ブームの基端側にリア側ガイライン又は起伏ケーブルを介して接続されているリアストラットと
を備えるクレーンを組み立てる方法であって、
上記リアストラットの基端の連結、及び上記フロントストラットの基端の連結を行うストラット連結工程と、
上記リアストラットに一端が接続されている伸縮自在なシリンダユニットを伸長して他端を上記ブームに接続するシリンダ接続工程と、
上記シリンダユニットを縮小して上記リアストラットを引き起こすリアストラット起立工程と、
上記リア側ガイライン又は起伏ケーブルを上記リアストラットの先端側と上記ブームの基端側との間に架け渡して緊張するライン緊張工程と
を有し、
上記ブームにレールが配設され、
上記シリンダ接続工程で、上記シリンダユニットの他端が上記レール上を移動するクレーン組み立て方法。
【請求項2】
上記レール又はシリンダユニットの他端にガイドを配設し、
上記シリンダ接続工程で、上記ガイドが上記シリンダユニットの他端を上記レール上に誘導する請求項に記載のクレーン組み立て方法。
【請求項3】
上記シリンダユニットの他端にローラをさらに配設し、
上記シリンダ接続工程で、上記ローラが上記レール上を転動する請求項又は請求項に記載のクレーン組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーン組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型のクレーンとして、ブームの先端にジブ及びこのジブを起伏するためのストラットを備えるラッフィングジブクレーンやタワークレーン等のクレーンが知られている。大型クレーンは、この大型クレーンが使用される現場において、ブーム、ジブ及びストラットを組み立てて使用される。
【0003】
一般に、大型のクレーンの組み立てでは、下部ブーム及び中間ブームを接合してブームを形成し、その先端にストラットを取り付け、その後に基端側の端部ジブ、中間ジブ及び先端側の端部ジブとを取り付けていく。ここで、ブームとジブとは略水平状態で組み立てていくことができるが、ストラットは、ブームの先端に取り付けた後、ブームに対して略垂直に引き起こすことが必要であるため、ブームやジブの組み立て作業とは異なる困難性を有する。
【0004】
ストラットを容易に引き起こすことができるクレーンとして、ストラットの先端部に一端部を回動可能に接続した棒状部材と、この棒状部材に対して該棒状部材の長手方向に沿って他端側に引く方向の力を付与するための直動装置とを有するストラット回動手段を付設した構成を有するクレーンが発案されている(特開2014-043318号公報)。
【0005】
上記公報に記載のクレーンは、ブームの先端の支持フレームに、シリンダ、リンク板及び複数のリンク棒を含む組立装置と、後ストラットの先端と上記リンク板とを接続し、伸縮可能でトグル機構を有するリンク棒とを有する。このクレーンの組み立てでは、上記シリンダの伸縮動作によって上記リンク板及び複数のリンク棒が作動して後ストラットが後方及び前方に回動し、上記トグル機構を有するリンク棒が後ストラットを基端側ペンダントを張る姿勢に配置することができる。
【0006】
上記公報に記載のクレーンの組み立てでは、リンク機構を有する組立装置やトグル機構を有するリンク棒を要するため構造が複雑であり、製造誤差、組立誤差、各部材の経年劣化等からガタや動作不良を起こすおそれがある。また、組立作業が容易とはいい難く、クレーンのコストが増大するおそれがあり、組立作業のさらなる容易性、コストの抑制が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-043318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような事情に鑑みて、本発明は、ストラットを備えるクレーンを容易に組み立てることができるクレーン組立方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、下部走行体及びこの下部走行体上で上記下部走行体が進行する面と平行な面内で回転可能な上部旋回体と、基端が上記上部旋回体に連結され、上記平行面に対して起伏可能なブームと、基端が上記ブームの先端に連結され、先端で吊荷用ケーブルを垂下し、上記ブームに対して起伏可能なジブと、上記ジブの基端側又は上記ブームの先端側で基端が連結され、先端側が上記ジブの先端側にフロント側ガイラインを介して接続されているフロントストラットと、上記ジブの基端側又は上記ブームの先端側で基端が連結され、先端側が上記ブームの基端側にリア側ガイライン又は起伏ケーブルを介して接続されているリアストラットとを備えるクレーンを組み立てる方法であって、上記リアストラットの基端の連結、及び上記フロントストラットの基端の連結を行うストラット連結工程と、上記リアストラットに一端が接続されている伸縮自在なシリンダユニットを伸長して他端を上記ブームに接続するシリンダ接続工程と、上記シリンダユニットを縮小して上記リアストラットを引き起こすリアストラット起立工程と、上記リア側ガイライン又は起伏ケーブルを上記リアストラットの先端側と上記ブームの基端側との間に架け渡して緊張するライン緊張工程とを有する。
【0010】
当該クレーン組立方法は、リアストラットに一端が接続されているシリンダユニットを伸長して他端をブームに接続し、シリンダユニットを縮小することでリアストラットが引き起こされるため、リアストラットの引き起こしが容易であり、専用のリンク機構等を配設することなくリアストラットを回動して引き起こすことができる。さらに、シリンダユニットの伸長を停止することでリアストラットを所望する角度で起立させることができるため、ガイライン又は起伏ケーブルの接続及び緊張と、起伏ケーブルの巻き上げによるフロントストラットの引き起こしとが容易にできる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係るクレーン組立方法は、ストラットを備える大型クレーンを容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態のクレーン組立方法によって組み立てられるクレーンを示す模式的側面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態におけるクレーン組立方法の一工程を示す模式的側面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態におけるクレーン組立方法の図2の次の工程を示す模式的側面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態におけるクレーン組立方法の図3の次の工程を示す模式的側面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態におけるクレーン組立方法の図4の次の工程を示す模式的側面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態におけるクレーン組立方法で用いられるレール、ガイド及びローラを示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。以下の説明で、「先端」とは、ブーム及びジブにおいては、ブーム及びジブを延ばした状態で上部旋回体から遠い側を意味し、ストラットにおいては、ブームの先端から遠い側を意味する。「基端」とは、ブーム及びジブにおいては、ブーム及びジブを延ばした状態で上部旋回体に近い側を意味し、ストラットにおいては、ブームの先端に近い側を意味する。また、「腹側」とはブーム、ジブ及びストラットを倒伏した状態で鉛直方向の下になる側(地面に近い側)を意味し、「背側」とはブーム、ジブ及びストラットを延ばして倒伏した状態で鉛直方向の上になる側を意味する。
【0014】
[クレーン]
図1に本発明の一実施形態に係るクレーン組立方法よって組み立てられるクレーン1の構成を示す。
【0015】
このクレーン1は、下部走行体2と、この下部走行体2上で下部走行体2が進行する面と平行な面内で旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に、前後方向に起伏(前側に倒伏、後側に起立するよう揺動)可能に配設されるブーム4と、ブーム4の先端に前後方向に起伏可能に連結されるジブ5と、ブーム4の先端側に配置されるストラット6とを備えるラッフィングジブクレーンである。
【0016】
〔下部走行体〕
下部走行体2は、走行装置として一対のクローラー等を有し、任意の方向に進行することができる。
【0017】
〔上部旋回体〕
上部旋回体3は、下部走行体2上に搭載され、下部走行体2が進行する面と平行な面内で旋回可能である。上部旋回体3は、操縦者用キャビン、ブーム4を起伏させるブーム起伏ウインチ、ジブ5を起伏させるジブ起伏ウインチ、ジブ5の先端から垂下される吊荷用ロープを送出及び巻上げる巻上げウインチ等を有する。なお、「平行な面」とは、完全に平行する2つの面の他、下部走行体2及び上部旋回体3における設計交差、製造誤差等により、下部走行体2が進行する面に対して僅かな傾きを有する面をも含む。
【0018】
〔ブーム〕
ブーム4は、その基端が上部旋回体3に連結され、上部旋回体3の回転面に対して垂直に起伏する。ブーム4は、先端側でジブ5と連結する上部ブーム41と、長手方向中央の直胴部を構成する1又は複数の中間ブーム42と、上部旋回体3と連結され、テーパー状を呈している下部ブーム43とを有する。
【0019】
上部ブーム41、下部ブーム43及び中間ブーム42は、概略四角筒状に形成され、例えば、ラチス構造を有する。ラチス構造は、長手方向に垂直な断面視で仮想方形の頂点に位置するように配置した4本のブーム主桁(支柱又は主柱)と、隣接する上記ブーム主桁間を接続して上記ブーム主桁を底辺とする複数の三角形、四角形等を形成するよう配置される複数のブーム補桁(ラチス又は斜材)とを有する。上部ブーム41及び下部ブーム43は、上記複数のブーム補桁に換えて板状の補強部材としてもよい。上部ブーム41、下部ブーム43及び中間ブーム42は、ブーム主桁の端部同士を接続することによって1本のブーム4に組み立てられる。
【0020】
〔ジブ〕
ジブ5は、その基端がブーム4の先端に連結される。ジブ5は、ブーム4と同様に、上部旋回体3の回転面に対して垂直に起伏可能であり、先端で吊荷用ケーブルCを垂下する。ジブ5は、ブーム4と連結される下部ジブ51と、長手方向中央の直胴部を構成する1又は複数の中間ジブ52と、先端側の上部ジブ53とを有する。下部ジブ51及び上部ジブ53は、テーパー状を呈してしている。
【0021】
下部ジブ51、中間ジブ52及び上部ジブ53は、ブーム4と同様に、概略四角筒状に形成され、例えば、ラチス構造を有する。ラチス構造は、長手方向に垂直な断面視で仮想方形の頂点に位置するように配置した4本のジブ主桁と、隣接する上記ジブ主桁間を接続してジブ主桁を底辺とする複数の三角形、四角形等を形成するよう配置される複数のジブ補桁とを有する。下部ジブ51及び上部ジブ53は、上記複数のジブ補桁に換えて板状の補強部材としてもよい。下部ジブ51、中間ジブ52及び上部ジブ53は、ジブ主桁の端部同士を接続することによって、1本のジブ5に組み立てられる。
【0022】
〔ストラット〕
ストラット6は、ジブ5の基端側又はブーム4の先端側で基端が連結される。本実施形態では、ストラット6は、ブーム4の先端側に連結され、ブーム4とジブ5との背側でブーム4側に位置するリアストラット61と、ジブ5の基端側に連結され、ブーム4とジブ5との背側でジブ側に位置するフロントストラット62との2本のストラットで構成されるもので説明する。
【0023】
ストラット6は、概略四角筒状に形成され、ブーム4及びジブ5と同様にラチス構造の骨組みを有し、又は箱体である。ストラット6は、例えば、分割されている下側ストラット部と上側ストラット部とを接続することによって、1本のストラット6に組み立てられるものであってもよいし、分割不可能に一体で形成されているものであってもよい。
【0024】
〔ガイライン〕
ガイラインは、ブーム4の基端側とリアストラット61の先端側との間に張架されるリア側ガイラインGrと、ジブ5の先端側とフロントストラット62の先端側との間に張架されるフロント側ガイラインGfとを含む。
【0025】
リア側ガイラインGr及びフロント側ガイラインGfは、複数のガイリンクを有する。このリア側ガイラインGr及びフロント側ガイラインGfは、一部が可撓性を有するワイヤケーブル等から形成されてもよい。ガイリンクとしては、特に限定されるものではなく、例えば以下の構成のものとすることができる。
【0026】
ガイリンクは、ロッド及びこのロッドの一端に接続されているリンクプレートを有する。このガイリンクは、十分な引張強度を有する鋼材等から形成される。上記ロッドは、貫通孔が形成された両端部と、この両端部を繋ぐ中部とを有する棒状(帯板状や筒状等を含む)の部材とすることができる。このロッドは、好ましくは、上記両端部の幅が、貫通孔の軸方向に垂直な方向で、上記中部の幅より大きく、平坦な地面に載置した場合に上記中部が接地せずに浮き上がるよう構成される。上記ロッドをこのような構成とすることにより、ガイリンクの格納ユニットへの収容が容易となる。このようなロッドは、棒材又は十分に堅固なワイヤケーブルの両端に貫通孔を形成した部材を接合することによって形成することができる。
【0027】
上記リンクプレートは、両端部に上記ロッドの貫通孔を貫通するリンクピンが係合する接続孔が形成されている。上記ロッドの一端に上記リンクプレートの一端を接続してなるガイリンクは、上記リンクプレートの他端に別のガイリンクのロッドの他端を接続することで連結することができる。
【0028】
〔起伏ケーブル〕
起伏ケーブルAは、リアストラット61及びフロントストラット62それぞれの先端に配設されているシーブ63,64に掛け渡されている。起伏ケーブルAは、一端がブーム4に配設される上記ジブ起伏ウインチに接続され、ジブ起伏ウインチによって送出及び巻取りがなされる。上記送出及び巻取りにより、リアストラット61及びフロントストラット62間の角度が調節され、ブーム4に対するジブ5の角度が定められる。又は、上記送出及び巻取りにより、互いの角度が固定されたリアストラット61及びフロントストラット62が回動し、ブーム4に対するジブ5の角度が定められる。
【0029】
又は、起伏ケーブルは、ブーム4の基端側とリアストラット61の先端側との間に掛け渡されている(不図示)。すなわち、上記ガイラインが、ブーム4の基端側とリアストラット61の先端側との間に張架されるリア側ガイラインGrを含まず、リアストラット61の先端側がブーム4の基端側に起伏ケーブルを介して接続される。この場合、フロントストラット62の先端側とリアストラット61の先端側とはリンク部材で接続されており、フロントストラット61、リアストラット62、及び上記リンク部材が一体となって起伏することで、ブーム4に対するジブ5の角度が定められる。換言すると、フロントストラット61及びリアストラット62は、それぞれの間の角度が調節されることなく一定であり、上記ジブ起伏ウインチによって送出及び巻取りがなされる起伏ケーブルによって同時に同一の方向に起伏し、ブーム4に対するジブ5の角度を定める。
【0030】
[クレーン組立方法]
本発明の一実施形態に係るクレーン組立方法は、下部走行体2及び下部走行体2上で下部走行体2が進行する面と平行な面内で回転可能な上部旋回体3と、基端が上部旋回体3に連結され、上記平行面に対して起伏可能なブーム4と、基端がブーム4の先端に連結され、先端で吊荷用ケーブルCを垂下し、ブーム4に対して起伏可能なジブ5と、ジブ5の基端側又はブーム4の先端側で基端が連結され、先端側がジブ5の先端側にフロント側ガイラインGfを介して接続されているフロントストラット62と、ジブ5の基端側又はブーム4の先端側で基端が連結され、先端側がブーム4の基端側にリア側ガイラインGr又は起伏ケーブルを介して接続されているリアストラット61とを備えるクレーン1を組み立てる方法であって、リアストラット61の基端の連結、及びフロントストラット62の基端の連結を行うストラット連結工程と、リアストラット61に一端が接続されている伸縮自在なシリンダユニット65を伸長して他端をブーム4に接続するシリンダ接続工程と、シリンダユニット65を縮小してリアストラット61を引き起こすリアストラット起立工程と、リア側ガイラインGr又は起伏ケーブルをリアストラット61の先端側とブーム4の基端側との間に架け渡して緊張するライン緊張工程とを有する。
【0031】
フロントストラット62及びリアストラット61の連結は、両共にジブ5の基端側に連結されるもの、両共にブーム4の先端側に連結されるもの、或いは一方がジブ5の基端側に連結され、他方がブーム4の先端側に連結されるものがある。本実施形態では、例として、フロントストラット62がジブ5の基端側に連結され、リアストラット61がブーム4の先端側に連結されるもので説明する。
【0032】
また、当該クレーン組立方法は、ストラット連結工程の前に、ブーム4の組み立て、下部ジブ51及びストラット6の準備をする準備工程と、下部ジブ51を連結するジブ連結工程とを含むのが好ましい。さらに、当該クレーン組立方法は、ライン緊張工程の後に、フロントストラット起立工程を含むのが好ましい。
【0033】
〔準備工程〕
準備工程では、下部ブーム43、中間ブーム42及び上部ブーム41を組み立ててブーム4を形成する。ブーム4の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて形成されればよい。
【0034】
また、準備工程では、組み立てられたブーム4における上部ブーム41の先端に接続される下部ジブ51と、下部ジブ51の基端側又は上部ブーム41の先端側に接続されるフロントストラット62及びリアストラット61とを準備する。下部ジブ51、フロントストラット62及びリアストラット61の準備としては、特に限定されず、下部ジブ51、フロントストラット62及びリアストラット61をそれぞれ準備する、又は一体にしたフロントストラット62及びリアストラット61と下部ジブ51とを準備することもできるが、下部ジブ51の背側にフロントストラット62を載置し、フロントストラット62の背側にリアストラット61をさらに載置した状態で下部ジブ51を準備するのが好ましい(図2)。このような状態で準備することで、フロントストラット62及びリアストラット61と下部ジブ51とを一体で輸送することができ、輸送コストを低減することができる。
【0035】
フロントストラット62、リアストラット61及び下部ジブ51を一体で準備する場合、フロントストラット62及びリアストラット61の間にフロントストラット62がリアストラット61を支持する支持体66を配置することが好ましい。リアストラット61が支持体66で支持されることにより、安定した輸送をすることができる。また、支持体66は、リアストラット61の基端の接続時にリアストラット61の基端から先端へ伸びる直線が水平に対して仰角をなすことができる長さ(高さ)を有することが好ましい。
【0036】
〔ジブ連結工程〕
ジブ連結工程では、上部ブーム41の先端に、フロントストラット62及びリアストラット61を背側に載置した下部ジブ51を連結する(図2)。
【0037】
下部ジブ51は、例えば、組み立て用クレーンを用いて、上部ブーム41の先端に取り付ける。ジブ連結工程は、下部ジブ51を水平に吊り上げて行うことができるよう、ブーム4の先端を僅かに持ち上げた状態で行うことが好ましい。
【0038】
下部ジブ51、フロントストラット62及びリアストラット61をそれぞれ準備し、又は一体にしたフロントストラット62及びリアストラット61と下部ジブ51とを準備する場合においては、下部ジブ51の連結は、後述するストラット連結工程の後に行われてもよい。
【0039】
〔ストラット連結工程〕
本実施形態におけるストラット連結工程では、ブーム4の先端側にリアストラット61の基端を連結し、ジブ5の基端側にフロントストラット62の基端を連結する(図2)。
【0040】
リアストラット61及びフロントストラット62を背側に載置した下部ジブ51を予め上部ブーム41に連結した場合、リアストラット61は、下部ジブ51に載置されているフロントストラット62上にあるので、リアストラット61の基端の高さを、上部ブーム41が有する連結箇所の高さに近くすることができ、リアストラット61の上部ブーム41への連結を比較的容易にすることができる。フロントストラット62の基端側の下部ジブ51への連結は、上記ジブ準備工程で、フロントストラット62の基端が下部ジブ51に連結されていてもよい。このようにすることで、現場におけるフロントストラット62の基端側を下部ジブ51に連結することを省略でき、現場における作業効率を向上することができる。
【0041】
フロントストラット62及びリアストラット61の連結が、両共にジブ5の基端側に連結されるもの、又は両共にブーム4の先端側に連結されるものである場合、フロントストラット62及びリアストラット61を連結する順序は、特に限定されるものではない。
【0042】
〔シリンダ接続工程〕
シリンダ接続工程では、リアストラット61に一端が接続されている伸縮自在なシリンダユニット65を伸長して他端を上部ブーム41に接続する(図2,3)。
【0043】
シリンダユニット65は、リアストラット61の背側に配置され、シリンダとこのシリンダ内を直動可能なピストンとを有する。このピストンが上記シリンダ内を出退することは、シリンダユニット65が伸縮することを意味する。シリンダユニット65の伸縮は、油圧によるものとすることが好ましい。また、この油圧の動力源としては、クレーン1が有する動力源、又はブーム4等に搭載可能な動力源とすることもできるが、クレーン1の外部に配設される動力源とすることが好ましい。動力源を外部に設けることで、クレーン1を簡易な構成のものとすることができる。
【0044】
クレーン1が有する動力源を用いる場合、上部旋回体3等からシリンダユニット65用の油圧配管を配設するため、クレーン1のコストが増大するおそれがある。ブーム4等に動力源を搭載する場合、この動力源と共に油タンク、ポンプ、バルブ、フィルター等をさらに搭載することを要するため、ブーム4の先端側又はジブ5の基端側における重量が増大し、クレーン1の安定性が損なわれると共にクレーン能力が低下するおそれがある。また、ブーム4等に搭載する動力源をクレーン1の組み立て後に分離するとした場合、この分離が作業として追加されることにより作業効率が低下するおそれがあり、動力源は重量物であるため、その搭載及び分離も容易ではなく、作業効率がより低下するおそれがある。
【0045】
シリンダユニット65としては、特に限定されるものではなく、リアストラット61を引き起こすことができる能力を有するものであればよい。また、シリンダユニット65の一端をリアストラット61と接続する箇所、及びシリンダユニット65の他端をブーム4と接続する箇所も、特に限定されるものではなく、シリンダユニット65の能力、伸縮可能な長さに応じて適宜選択することができる。シリンダユニット65は、組み立てられたクレーンにおいて、ストラットバックとして使用されることが好ましい。従って、シリンダユニット65及びその接続箇所は、ストラットバックとしての使用も考慮して選択されることが好ましい。
【0046】
シリンダユニット65は、リアストラット61及びフロントストラット62を背側に載置した下部ジブ51を準備する場合、リアストラット61に一端を接続した状態で準備されてもよい。又は、現場でシリンダユニット65の一端をリアストラット61に接続し、その後に他端を上部ブーム41に接続してもよい。上記他端と上部ブーム41との接続方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、上記他端にブーム係合用孔を設けると共に、上部ブーム41の背側の所定箇所にシリンダ係合用孔を設け、上記ブーム係合用孔とシリンダ係合用孔とに係合ピンを篏合して接続することができる。
【0047】
リアストラット61及びフロントストラット62を背側に載置した下部ジブ51を連結し、リアストラット61が支持体66で支持され、支持体66によってリアストラット61の基端から先端へ伸びる直線が水平に対して仰角をなしている場合においては、シリンダユニット65を伸長すると上記他端が上部ブーム41の背側に容易に到達できる(図2)。
【0048】
シリンダユニット65の上記他端が移動するためのレール44が、ブーム4に配設されるのが好ましい。具体的には、ブーム4の背側にシリンダユニット65の上記他端が移動可能なレール44を配設すし、伸長するシリンダユニット65の上記他端が、レール44に当接してシリンダユニット65をさらに伸長することで上記レール44上を移動することが好ましい(図3,6)。このようにすることで、上記他端を上部ブーム41との連結位置に容易かつ確実に配置することができる。
【0049】
レール44又はシリンダユニット65の上記他端に、シリンダユニット65の上記他端をレール44上に誘導するためのガイド68を配設することが好ましい。具体的には、シリンダユニット65の上記他端に配設されるガイド68としては(図6)、シリンダユニット65の上記他端で、レール44の幅方向の長さより僅かに長い(広い)間隔で配設される板状部材とすることができる。ガイド68は、シリンダユニット65が伸長して上記他端がレール44に近接すると、レール44の幅方向の縁部を挟むようにして上記他端をレール44上に誘導する。上記板状部材は、シリンダユニット65が伸縮する方向に略平行に配設され、又はシリンダユニット65の上記他端に近接している側で間隔が狭く、上記他端から離間している側に向けて間隔が漸増してレール44の幅より広い間隔となるように配設される。このような構成とすることで、レール44に上基端部が近接した際にガイド68が上記他端をレール44上に確実に導くことができると共に、レール44上を移動する上記他端がレール44上から脱落することを防止することができる。レール44に配設されるガイド68としては、レール44の幅方向の縁部に、レール44の表面に垂直な壁部を配設することができる。
【0050】
シリンダユニット65の上記他端に、レール44上を転動可能なローラ67をさらに配設することが好ましい。このようにすることで、上記他端のレール44上の移動が容易になる。又は、ローラ67に換えて、シリンダユニット65の姿勢変化に対応可能な略球状の部材、側面視で円弧状の部材等を配設し、この部材がレール44上を滑走又は摺動するようにしてもよい。
【0051】
<リアストラット起立工程>
リアストラット起立工程では、シリンダユニット65を縮小してリアストラット61を引き起こす(図3,4)。具体的には、両端部をリアストラット61及び上部ブーム41に接続したシリンダユニット65を縮小し、リアストラット61及び上部ブーム41の連結箇所を中心としてリアストラット61を回動させて引き起こす。リアストラット61の引き起こしは、シーブ63とフロントストラット62のシーブ64とに架け渡されている起伏ケーブルAを繰り出しながら行う。
【0052】
<ライン緊張工程>
ライン緊張工程では、リア側ガイラインGr又は起伏ケーブルをリアストラット61の先端側とブーム4の基端側との間に架け渡して緊張させる(図5)。具体的には、リアストラット61の背側と上部ブーム41の背側とのなす角度が側面視で鋭角となる角度までリアストラット61を引き起こし、ブーム4の基端近傍部から伸びているリア側ガイラインGr又は起伏ケーブルの一部と、リアストラット61の先端側に接続されているリア側ガイラインGr又は起伏ケーブルの残部とを接続する。或いは、起伏ケーブルにおいては、上記ジブ起伏ウインチによって送出される起伏ケーブルの一端をリアストラット61の先端側に架け渡す。その後、シリンダユニット65を再び伸長して上記リアストラット61の背側と上部ブーム41の背側とのなす角度を所望する角度にすることで上記接続したリア側ガイラインGr又は起伏ケーブルが緊張する。
【0053】
〔フロントストラット起立工程〕
フロントストラット起立工程では、リアストラット61の先端とフロントストラット62の先端との間に架け渡されている起伏ケーブルAを巻き上げてフロントストラット62を引き起こす。
【0054】
具体的には、上記固定したリアストラット61のシーブ63と、倒伏しているフロントストラット62のシーブ64との間に架け渡されている起伏ケーブルAを巻き上げることにより、フロントストラット62が、フロントストラット62と下部ジブ51との連結箇所を中心に回動して引き起こされる。
【0055】
又は、起伏ケーブルがブーム4の基端側とリアストラット61の先端側との間に掛け渡されているクレーンにおいては、上記倒伏しているフロントストラット62の先端側に一時的に起伏ケーブルを架け渡し、若しくは起伏ケーブルに他のケーブルを接続してこの他のケーブルを架け渡す。その後、上記起伏ケーブルを巻き上げることにより、フロントストラット62が、フロントストラット62と下部ジブ51との連結箇所を中心に回動して引き起こされる。
【0056】
<利点>
当該クレーン組立方法は、上述のように、シリンダユニット65の両端をリアストラット61及びブーム4に接続し、シリンダユニット65を縮小することでリアストラット61を引き起こすことができるので、クレーン1の組み立てを比較的容易に行うことができる。また、リアストラット61を引き起こすためのリンク機構等をクレーンに付設する必要がないためクレーン1のコストを抑制でき、リアストラット61を引き起こすための相判機も要しないため、クレーン1を組み立てる作業を容易にすることができる。さらに、クレーン1の組み立て後にシリンダユニット65の両端をリアストラット61及びブーム4に接続した状態で、そのままストラットバックとして使用できるため、クレーン1のコストをより抑制しつつ組み立てをより容易にすることができる。
【0057】
当該クレーン組立方法は、下部ジブ51を上部ブーム61に連結してリアストラット61及びフロントストラット62をシリンダユニット65で引き起こすので、リアストラット61及びフロントストラット62を引き起こし作業と同時に、ジブ5の組立作業をすることができるため、クレーン1の組立時間を低減することができる。
【0058】
当該クレーン組立方法は、下部ジブ51にフロントストラット62を載置し、さらにリアストラット61を載置して下部ジブ51を輸送し、上部ブーム41に連結するジブ連結工程を含むことが好ましい。このようにすることで、輸送費を低減すると共に、リアストラット61の上部ブーム41への連結を容易にすることができる。
【0059】
また、フロントストラット62及びリアストラット61の間にフロントストラット62がリアストラット61を支持する支持体66を配置することがこのましい。このようにすることで、リアストラット61の基端の上部ブーム41への接続でリアストラット61の先端側が基端側より相対的に上に位置するため、シリンダユニット65を伸長すると上部ブーム41に接続する側の端部が上部ブーム41の背側に容易に到達できる。
【0060】
さらに、ブーム4にレール44を配設することで、シリンダユニット65の上記他端をブーム4との連結位置に容易に移動させることができる。また、レール44又はシリンダユニット65の他端にガイド68を配設することで、ガイド68が上記他端をレール44上に誘導するため、上記他端が確実にレール44上に導かれ、レール44から脱落をすることがなく、シリンダユニット65の上記他端とブーム4との連結をより容易にできる。さらに、シリンダユニット65の上記他端にローラ67を配設することで、上記他端のレール44上での移動がより容易になり、シリンダユニット65の上記他端とブーム4との連結をさらに容易にできる。
【0061】
図1のクレーンの構成は、一般的なラッフィングジブクレーンの構成である。当該クレーン組立方法は、クレーンに特殊な構成を設けることを必要とせず、リアストラット61及びブーム4に接続可能なシリンダユニット65を用意するだけでよい。このため、当該クレーン組立方法は、一般的なラッフィングジブクレーンの組み立てに広く適用することができるので、汎用性が高い。
【0062】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0063】
当該クレーン組立方法において、ブームは、下部ブーム及び中間ブームを接続したもので説明したが、ブームはテレスコピックタイプのものであってもよい。
【0064】
当該クレーン組立方法において、ストラットを2本有するクレーンで説明したが、ストラットを1本有するクレーンでもよい。
【0065】
当該クレーン組立方法において、リアストラット61をブーム4の先端側に、フロントストラット62をジブ5の基端側にそれぞれ連結するもので説明したが、両ストラットがブーム4の先端側又はジブ5の基端側に連結されるものであってもよい。
【0066】
当該クレーン組立方法において、板状部材で形成されるガイドについて説明したが、シリンダユニット65の上記他端をレール44上に誘導可能な部材であれば板状に限定されるものではない。
【0067】
当該クレーンの組立方法は、使用中にブームを起伏しないタワークレーンの組み立てにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係るクレーン組立方法は、大型のラッフィングジブクレーンに特に好適に利用される。
【符号の説明】
【0069】
1 クレーン
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
41 上部ブーム
42 中間ブーム
43 下部ブーム
44 レール
5 ジブ
51 下部ジブ
52 中間ジブ
53 上部ジブ
6 ストラット
61 リアストラット
62 フロントストラット
63,64 シーブ
65 シリンダユニット
66 支持体
67 ローラ
68 ガイド
A 起伏ケーブル
C 吊荷用ケーブル
Gf フロント側ガイライン
Gr リア側ガイライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6