(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】送信装置照合装置、送信装置照合方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/18 20150101AFI20240305BHJP
【FI】
H04B17/18
(21)【出願番号】P 2020084332
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大辻 太一
(72)【発明者】
【氏名】堺 淳
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/016853(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/154830(WO,A1)
【文献】特開2017-112542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から無線送信された信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、前記スペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する信号領域検出部と、
前記信号領域パラメータに応じた信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換し、変換後の信号から特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量抽出部で抽出された特徴量と予め記憶された特徴量とに基づき類似度を算出し、前記類似度に基づき前記送信装置を照合する照合部と、
を備え、
前記信号領域検出部で検出する前記信号領域パラメータを、前記照合部での照合の精度である照合精度に基づき調整する、
送信装置照合装置。
【請求項2】
前記照合精度が所定閾値より低かった場合、前記信号領域検出部から出力する前記信号領域パラメータを、前記照合精度を上げるように調整する、
請求項1に記載の送信装置照合装置。
【請求項3】
前記信号領域パラメータの調整は、
前記照合精度に基づき前記信号変換パラメータを変更し、
前記特徴量抽出部が、変更した前記信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換した後の信号から特徴量を抽出し、
前記照合部が、前記送信装置の照合を実行し、前記照合精度を前記所定閾値と比較する、
処理を繰り返し、前記照合精度が前記所定閾値より大きくなった場合に繰り返しを終了する、
請求項2に記載の送信装置照合装置。
【請求項4】
前記信号領域パラメータの調整は、
前記照合精度に基づき前記信号変換パラメータを変更し、
前記特徴量抽出部が、変更した前記信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換した後の信号から特徴量を抽出し、
前記照合部が、前記送信装置の照合を実行し、前記照合精度を前記所定閾値と比較する、
処理を繰り返し、前記照合精度の変化幅が所定値以下になった場合に繰り返しを終了する、
請求項2又は3に記載の送信装置照合装置。
【請求項5】
前記信号領域検出部は、
前記受信信号から前記スペクトログラムを生成するスペクトログラム生成部と、
前記スペクトログラムから電力累積分布関数を生成し、生成した前記電力累積分布関数から、所定の累積確率閾値に対応する電力閾値を決定する閾値決定部と、
前記電力閾値を用いて前記スペクトログラムから前記信号領域パラメータを検出する検出部と、
を有し、
前記特徴量抽出部は、
前記受信信号のうち前記信号領域パラメータが示す前記特定の信号領域の信号である検出信号を変換した後の信号が、中心周波数が0で且つ所定の帯域幅となるように、前記信号変換パラメータを決定する変換パラメータ決定部と、
前記検出信号が存在する時間帯において前記受信信号を前記信号変換パラメータに従って変換する受信信号変換部と、
前記受信信号変換部で変換後の信号から特徴量を生成する特徴量生成部と、
前記所定の累積確率閾値を、前記照合精度に基づき更新する閾値更新部と、
を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の送信装置照合装置。
【請求項6】
前記閾値決定部は、前記スペクトログラムから生成した前記電力累積分布関数の二階微分の最小値となる電力に対応する累積確率を、前記所定の累積確率閾値の初期値とする、
請求項5に記載の送信装置照合装置。
【請求項7】
前記信号領域検出部は、前記受信部で受信した信号にフィルタリング処理を施した後の信号を前記受信信号とし、前記受信信号から前記スペクトログラムを生成する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の送信装置照合装置。
【請求項8】
送信装置から無線送信された信号を受信する受信部を備えた送信装置照合装置における送信装置照合方法であって、
前記受信部で受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、前記スペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する信号領域検出ステップと、
前記信号領域パラメータに応じた信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換し、変換後の信号から特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記特徴量抽出ステップで抽出された特徴量と予め記憶された特徴量とに基づき類似度を算出し、前記類似度に基づき前記送信装置を照合する照合ステップと、
前記信号領域検出ステップで検出する前記信号領域パラメータを、前記照合ステップでの照合の精度である照合精度に基づき調整する調整ステップと、
を備えた、送信装置照合方法。
【請求項9】
送信装置から無線送信された信号を受信する受信部を備えた送信装置照合装置に搭載されたコンピュータに、
前記受信部で受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、前記スペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する信号領域検出ステップと、
前記信号領域パラメータに応じた信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換し、変換後の信号から特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記特徴量抽出ステップで抽出された特徴量と予め記憶された特徴量とに基づき類似度を算出し、前記類似度に基づき前記送信装置を照合する照合ステップと、
前記信号領域検出ステップで検出する前記信号領域パラメータを、前記照合ステップでの照合の精度である照合精度に基づき調整する調整ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信装置照合装置、送信装置照合方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末装置などの無線端末装置(以下、単に無線端末と称する)を特定する技術が提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、受信機が、無線端末からの受信信号の特性に基づいて無線端末を特定(識別)する電波識別システムが記載されている。この電波識別システムは、プリアンブル信号などの既知信号の波形を電力スペクトル密度に変換する。その後、当該電波識別システムは、上記電力スペクトル密度を特徴量としてk近傍法などの機械学習アルゴリズムを用いて学習し、識別モデルを生成する。その後、当該電波識別システムは、受信した信号から抽出した特徴量を学習済みモデルに入力することで、学習済みの無線端末の中からどの端末が送信したかを識別する。
【0004】
通常、このように、無線端末を識別するために受信した信号から特徴量を抽出する。識別精度を高めるためには、受信信号の中から対象の信号を正確に切り出しておく必要がある。無線LAN(Local Area Network)やLTE(Long Term Evolution)等の標準規格化された通信方式は信号の中心周波数や帯域幅が事前に決まっている。しかしながら、ISM(Industry Science and Medical)バンドのように免許不要で使用可能で周波数や帯域幅等が標準化されていない通信方式の信号や電子レンジ他の高周波機器が発する信号が飛んでいる。このように方式の異なる複数の無線信号送信源が存在する環境において対象の信号を切り出すために、生成したスペクトログラムから対象信号の時間・周波数領域を検出する技術が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の技術では、受信信号のスペクトログラムにおいて、時間方向の立ち上がり、立ち下がりが周波数方向に連続している点を、それぞれ送信開始時刻、送信終了時刻とした時間周波数領域を、検出対象信号の存在する領域として決定する。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、まず、スペクトログラムを用いて時間周波数空間上の受信電力値の累積分布関数を生成し、所定の確率閾値に対応する電力閾値を用いてスペクトログラムを二値化する。そして、この技術では、その二値化したスペクトログラムの外接矩形の時間周波数領域を、検出対象の存在する領域として決定する。
【0007】
特許文献3には、電波源の立ち上がりまたは立ち下がりを検出できない場合にも電波源の機種を識別する識別装置が記載されている。特許文献3に記載の識別装置は、次のような特徴量抽出部、機種別特徴量保存部、及び機種識別部を備える。上記特徴量抽出部は、アンテナが受信した電波から生成した離散化された受信信号から検出された被検査信号の複数の特徴量を少なくとも一つの通信中の特徴量を含んで抽出する。上記機種別特徴量保存部は、ある機種の電波源が送信する電波が受信されて得られる受信信号の複数の特徴量のそれぞれが取りうる範囲である機種別特徴量範囲を電波源の機種ごとに保存する。上記機種識別部は、被検査信号から抽出した特徴量である被検査特徴量と機種別特徴量保存部に保存された機種別特徴量範囲とを比較して、複数の被検査特徴量のそれぞれが機種別特徴量範囲に入る機種を、被検査信号を送信した電波源の機種として識別する。
【0008】
特許文献4には、送信装置から受信した高周波信号を分析し、当該送信装置を自動的(一部手動も含む)に個別識別(同じ装置間でもその違いを識別)、分類、並びに特定することを目的とした受信解析装置が記載されている。特許文献4に記載の受信解析装置は、送信装置から送信された高周波信号を広帯域と狭帯域に分割して受信し、時間領域での高周波信号の状態を、立ち上がり状態、定常状態、無音状態、立ち下り状態及び異常状態の5つの状態に分割する。そして、上記受信解析装置は、変調された高周波信号は搬送波と変調波に分離し、それぞれ必要に応じて、時間軸、周波数軸(位相変化も含む)に変換し、その結果をパラメータ化する。さらに、上記受信解析装置は、その組み合わせを入力として、機械学習の手法を組み合わせ、受信信号の中から前述のパラメータの特性、変動幅及び変動速度を含め自動的に送信装置の個別識別、分類並びに特定を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】S. U. Rehman, K. Sowerby, and C. Coghill, “Analysis of Receiver Front End on the Performance of RF Fingerprinting,” 2012 IEEE International Symposium on Personal, Indoor, and Mobile Radio Communications (PIMRC), pp. 2494-2499, 2012.
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6354104号公報
【文献】特許第6509465号公報
【文献】特開2018-011241号公報
【文献】特開2016-158209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、標準化されていない通信方式の信号を受信して送信装置(無線端末)を照合する場合について考察した。この場合、中心周波数や帯域幅等のパラメータ、換言すれば送信パターンが不明であるため、対象の信号に比べて広帯域に受信し、検出対象信号の存在領域を取り出す必要がある。しかしながら、システムの運用者(オペレータ、業務担当者)が手動で上記パラメータを決定する場合、熟練度や個人差によってその決定に違いが出てしまう。
【0012】
従って、特徴量をデータベースに登録する時と照合する時とで、上記パラメータに差異がある場合、抽出される特徴量に差異が発生し、結果として識別精度(照合精度)が低下してしまうといった課題がある。また、受信信号内に複数の送信信号が含まれる場合も、抽出される特徴量に差異が発生すると言えるため、同様にこのような照合精度の低下が生じ得る。
【0013】
非特許文献1に記載の技術は、識別(照合)対象とする送信端末の無線方式は無線LANであり、標準化されていない通信方式の信号を受信する場合については上述の課題を解決できるものではない。なお、特許文献1,特許文献2には、送信端末の特定(識別)まで加味して中心周波数や帯域幅を決定する手法まで開示されていない。
【0014】
また、特許文献3に記載の技術は、立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングが受信できていない場合に識別できない課題を解決することができるものの、中心周波数や帯域幅のズレに対応できるものではない。
【0015】
また、特許文献4に記載の技術は、帯域幅に差異がある場合について、上記課題が解決できるものではなく、よって信号領域を示すパラメータに差異がある場合について上記課題が解決できるものではないと言える。また、特許文献4に記載の技術は、広帯域の受信信号に複数の信号波(中心周波数の異なる信号波)が含まれている場合について、上記課題が解決できるものでもない。
【0016】
本開示は、上述した課題を鑑み、次のような送信装置照合装置、送信装置照合方法、及びプログラムを提供することを目的とする。即ち、本開示は、送信装置の照合を行うに際し、照合対象の送信装置から無線送信される信号に比して広帯域の信号に対しても照合精度の低下を低減させることが可能な送信装置照合装置、送信装置照合方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の第1の態様に係る送信装置照合装置は、送信装置から無線送信された信号を受信する受信部(受信手段)と、前記受信部で受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、前記スペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する信号領域検出部(信号領域検出手段)と、前記信号領域パラメータに応じた信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換し、変換後の信号から特徴量を抽出する特徴量抽出部(特徴量抽出手段)と、前記特徴量抽出部で抽出された特徴量と予め記憶された特徴量とに基づき類似度を算出し、前記類似度に基づき前記送信装置を照合する照合部(照合手段)と、を備え、前記信号領域検出部で検出する前記信号領域パラメータを、前記照合部での照合の精度である照合精度に基づき調整する、ものである。
【0018】
本開示の第2の態様に係る送信装置照合方法は、送信装置から無線送信された信号を受信する受信部(受信手段)を備えた送信装置照合装置における送信装置照合方法であって、前記受信部で受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、前記スペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する信号領域検出ステップと、前記信号領域パラメータに応じた信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換し、変換後の信号から特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、前記特徴量抽出ステップで抽出された特徴量と予め記憶された特徴量とに基づき類似度を算出し、前記類似度に基づき前記送信装置を照合する照合ステップと、前記信号領域検出ステップで検出する前記信号領域パラメータを、前記照合ステップでの照合の精度である照合精度に基づき調整する調整ステップと、を備えた、ものである。
【0019】
本開示の第3の態様に係るプログラムは、送信装置から無線送信された信号を受信する受信部(受信手段)を備えた送信装置照合装置に搭載されたコンピュータに、前記受信部で受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、前記スペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する信号領域検出ステップと、前記信号領域パラメータに応じた信号変換パラメータに基づき前記受信信号を変換し、変換後の信号から特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、前記特徴量抽出ステップで抽出された特徴量と予め記憶された特徴量とに基づき類似度を算出し、前記類似度に基づき前記送信装置を照合する照合ステップと、前記信号領域検出ステップで検出する前記信号領域パラメータを、前記照合ステップでの照合の精度である照合精度に基づき調整する調整ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本開示により、送信装置の照合を行うに際し、照合対象の送信装置から無線送信される信号に比して広帯域の信号に対しても照合精度の低下を低減させることが可能な送信装置照合装置、送信装置照合方法、及びプログラムを提供することができる。なお、本開示により、このような効果の代わりに、又はこのような効果とともに、他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態に係る送信装置照合装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】第2の実施形態に係る送信装置照合装置の概要を説明するためのブロック図である。
【
図3】第2の実施形態に係る送信装置照合装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4】第2の実施形態に係る送信装置照合装置の配置例を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る累積確率閾値の初期値の決定方法の一例を説明するための図である。
【
図6】第2の実施形態に係る送信装置照合装置の動作例の全体フロー(閾値の学習時)を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る信号領域の検出に関する処理フローを示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る特徴量の抽出に関する処理フローを示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る照合精度の評価に関する処理フローを示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る送信装置照合装置の動作例の全体フロー(閾値の学習後)を示す図である。
【
図11】送信装置照合装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。本明細書及び図面において、同様に説明されることが可能な要素については、同一の符号を付することにより重複説明が省略され得る。
【0023】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る送信装置照合装置の一構成例を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、送信装置照合装置1は、受信部1a、信号領域検出部1b、特徴量抽出部1c、及び照合部1dを備える。受信部1aは、図示しない送信装置から無線送信された信号を受信するもので、無線受信部と称することもできる。また、この送信装置は、無線通信が可能な無線端末装置(無線端末)だけでなく、非意図的に電波を発信する装置(ノイズを発するLED(発光ダイオード)デバイスや増幅器の故障した無線装置など)も含まれてよい。以下、この送信装置を「送信端末」、あるいは単に「端末」と称して説明する。
【0025】
信号領域検出部1bは、受信部1aで受信した受信信号から対象信号となり得る信号領域(特定の信号領域)を示す信号領域パラメータを検出する。上記特定の信号領域は1つの領域であってもよいし複数の領域であってもよい。特に、信号領域検出部1bは、受信部1aで受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、生成したスペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する。検出した信号領域パラメータは、特徴量抽出部1cに出力されることができる。換言すれば、信号領域検出部1bは、受信信号からスペクトログラムを生成し、生成したスペクトログラムに基づき、特定の信号領域を検出し、その特定の信号領域を示す信号領域パラメータを出力することができる。
【0026】
特徴量抽出部1cは、信号領域検出部1bが検出した1以上の信号領域パラメータのそれぞれに応じた信号変換パラメータに基づき、受信部1aで受信した受信信号をそれぞれ変換し、変換後の信号からそれぞれ特徴量を抽出する。
【0027】
照合部1dは、特徴量抽出部1cで抽出された特徴量(以下、サンプル特徴量)と予め記憶された特徴量(以下、テンプレート特徴量)とに基づき類似度を算出し、算出された類似度に基づき送信端末を照合する。テンプレート特徴量の登録先は、照合部1d内にテンプレート特徴量記憶部として設けた記憶装置とすることができるが、送信装置照合装置1の外部の記憶装置であってもよい。
【0028】
また、送信端末の照合は、算出された類似度を照合のための閾値(照合閾値)と比較することで実行することができ、例えば照合閾値以上であった場合に照合に成功したとすることができる。また、照合部1dは、照合に際し、その照合の精度(照合精度)、つまり照合度合いを評価し、その照合精度を出力することができる。このように、照合部1dは、サンプル特徴量とテンプレート特徴量との照合処理を行い、その照合精度を評価すること(評価値として出力すること)ができる。この照合精度は、単純な例を挙げると、例えば算出された類似度に比例する値など、類似度の関数として得ることや、類似度を複数の閾値と比較することにより得ることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る送信装置照合装置1は、送信端末から無線送信された信号(送信端末から受信した電波)を用いて送信源を照合する装置であり、電波センサ装置あるいは照合処理装置などと称することもできる。但し、上述のように非意図的に電波を発信する装置なども送信端末に含めることができる。
【0030】
よって、上記特定の信号領域は、(A)標準化されている通信方式の領域の信号、(B)標準化されていない通信方式の領域の信号、(C)非意図的に電波を発信する装置の信号、のいずれかとすることができる。そして、特定の信号領域が上記(A),(B),(C)のいずれに該当するかは、予め登録(記憶)しておいたテンプレート特徴量と照合した結果で判別させることができる。また、特定の信号領域が上記(A)のうちどの通信方式の領域の信号であるか、上記(B)のうちどの通信方式の領域の信号であるか、上記(C)のうちどのような種類の装置の信号であるかなども、テンプレート特徴量と照合した結果で判別させることができる。
【0031】
そして、本実施形態に係る送信装置照合装置1は、その主たる特徴の一つとして、信号領域検出部1bで検出する信号領域パラメータ、つまり信号領域検出部1bで出力する信号領域パラメータを、照合部1dでの照合精度に基づき調整する。
【0032】
照合精度に基づく調整の簡単な例を挙げると、信号領域検出部1b又は特徴量抽出部1cは、照合部1dが出力する照合精度が所定閾値より低い場合、信号領域検出部1bから出力される信号領域パラメータを調整する。この調整は、基本的に照合精度が最終的に高くなるように実施すればよい。
【0033】
その結果、本実施形態では、標準化されていない通信方式の信号を受信し送信端末の照合を行う場合において、照合精度に基づき信号領域パラメータが自動的に調整され、照合用に登録した時の特徴量と抽出される特徴量との差異が解消されることになる。なお、上記(C)の装置を送信端末として照合する場合にも同様である。これにより、本実施形態によれば、広帯域に受信した信号の中心周波数や帯域幅等の信号領域パラメータが照合用に予め登録した際と異なる状況においても、識別精度(照合精度)の低下を低減することが可能になる。換言すれば、本実施形態によれば、広帯域の信号に対しても信号領域の検出と信号変換処理を自動化することで、業務担当者の習熟具合や個人差に左右されずに、つまり熟練の運用者による信号領域パラメータの調整に依らずとも、照合精度を維持することができる。なお、ここで広帯域とは、照合対象の送信端末から無線送信される信号に比して帯域が広いことを意味する。
【0034】
また、本実施形態によれば、受信信号内に複数の送信信号が含まれる場合も同様に照合精度の低下を低減することができる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、送信端末の照合を行うに際し、照合対象の送信端末から無線送信される信号に比して広帯域の信号に対しても照合精度の低下を低減させることが可能になる。
【0036】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について
図2~
図10を併せて参照しながら、第1の実施形態との相違点を中心に説明するが、第2の実施形態でも、第1の実施形態で説明した様々な例が適用できる。まず、
図2を参照しながら、第2の実施形態に係る送信装置照合装置の概要について説明する。
図2は、第2の実施形態に係る送信装置照合装置の概要を説明するためのブロック図である。なお、この概要に付記した図面の参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載は何らの限定を意図するものではない。
【0037】
図2に示すように、本実施形態に係る送信装置照合装置10は、
図1の受信部1aに相当する受信部101を備えるとともに、次のような構成要素を備えることができる。即ち、送信装置照合装置10は、信号領域検出部102、変換パラメータ決定部103、受信信号変換部104、特徴量生成部105、類似度算出部106、評価部107、及び閾値更新部108を備えることができる。なお、変換パラメータ決定部103、受信信号変換部104、及び特徴量生成部105、及び閾値更新部108は
図1の特徴量抽出部1cの一例に相当し、類似度算出部106及び評価部107は
図1の照合部1dの一例に相当する。
【0038】
受信部101は、送信端末からの信号を受信する。信号領域検出部102は、受信部101で受信した受信信号から対象信号となり得る信号領域(特定の信号領域)を示す信号領域パラメータを検出し、その信号領域パラメータを出力する。本実施形態においても、特定の信号領域は1つであってもよいし複数であってもよい。
【0039】
変換パラメータ決定部103は、受信信号のうち信号領域検出部102の出力する信号領域パラメータに基づき検出された検出信号を変換した後の信号が、中心周波数が0(0Hz)で且つ所定の帯域幅となるように、信号変換パラメータを決定し、出力する。ここで、信号変換パラメータとしては、例えば変換周波数及びサンプリングレートを決定することができる。この決定は計算やルックアップテーブルの参照により行うことができる。信号領域パラメータが複数ある場合は、そのそれぞれに対して信号変換パラメータを決定する。なお、上記検出信号は、受信信号のうち信号領域パラメータが示す特定の信号領域の信号を指す。
【0040】
受信信号変換部104は、変換パラメータ決定部103が出力する信号変換パラメータに基づき、受信部101で受信した受信信号を変換する。ここで、受信信号変換部104は、検出信号が存在する時間帯における受信信号を信号変換パラメータに従って変換する。これにより、検出信号が存在する時間帯についてのみ、信号変換を行い、後段の特徴量生成部105に渡すことができる。特徴量生成部105は、受信信号変換部104で変換後の信号から特徴量を生成することで、サンプル特徴量の抽出を行う。
【0041】
類似度算出部106は、特徴量生成部105が出力するサンプル特徴量と予め記憶されたテンプレート特徴量との類似度を算出する。そして、類似度算出部106は、その類似度が所定の照合閾値より大きい場合は特徴量が登録済み(つまり既知)の送信端末と判定する、あるいは類似度が所定の照合閾値より小さい場合は特徴量が未登録(つまり未知)の送信端末と判定する。もしくは、類似度算出部106は、その類似度が所定の照合閾値より大きい場合は特徴量が既知の送信端末と判定し、且つ、類似度が所定の照合閾値より小さい場合は特徴量が未知の送信端末と判定する。
【0042】
評価部107は、既知の送信端末が送信する条件において類似度算出部106が出力する判定結果をまとめ、照合精度が所定閾値より低いか否かを評価する。この照合精度が所定閾値より低い場合、受信信号変換部104は、評価部107における評価結果に基づき信号領域パラメータを調整する処理を繰り返す。なお、ここでの評価結果は、上記の判定の結果であってもよいし、照合精度のそのものであってもよい。
【0043】
そして、信号領域パラメータの調整により照合精度の変化幅が所定値に以下に収束した場合、閾値更新部108は信号領域検出に使用するパラメータ(例えば、累積確率閾値)を更新する。この累積確率閾値は、その詳細については後述するが、繰り返し処理に基づき電力閾値を決定(変更)するために使用する閾値の例である。電力閾値は、特定の信号領域の幅(信号検出幅)に対応する閾値であり、上記の例では所定の帯域幅に対応する閾値である。例えば、累積確率閾値を照合精度に基づき所定の値から更新することで、照合精度に基づく信号領域パラメータの調整がなされることになる。
【0044】
その結果、本実施形態によれば、標準化されていない通信方式の信号を受信し送信端末の照合を行う場合において、信号領域パラメータが自動的に調整されることになり、次のような状況においても、識別精度(照合精度)の低下を低減することができる。上記状況は、広帯域に受信した信号の中心周波数や帯域幅等のパラメータがデータベースに登録した際と異なる状況を指す。
【0045】
以下に、本実施形態のより具体的な例について、
図3~
図10を参照しながら詳しく説明する。まず、
図3及び
図4を参照しながら、送信装置照合装置10の構成及び配置の例について説明する。
図3は送信装置照合装置10の機能構成の例を示すブロック図であり、
図4は送信装置照合装置10の配置例を示す図である。なお、
図3で示した構成要素のうち、
図1及び
図2で説明した構成要素と同じ名称のものは基本的に同様の機能を有することになる。
【0046】
図3に示す送信装置照合装置10は、図示しない送信端末が送信する電波の個体差に基づき生成したサンプル特徴量と、予め内部のデータベースに登録されたテンプレート特徴量と、について、類似度計算を行うことで送信端末を照合する。なお、「照合する」は「識別する」、「特定する」、「判定する」等と言い換えることもできる。
【0047】
ここで、電波の個体差等に関して説明する。送信端末の仕様の違いによって、あるいは、同じ仕様であっても送信端末に実装されるアナログ回路の特性のばらつき等により送信する電波に個体差が生じ得る。送信装置照合装置10は、送信端末ごとに当該送信端末が送信する電波の特徴量をテンプレート特徴量としてデータベース(
図3の記憶部132)に登録しておく。そして、送信装置照合装置10は電波を受信すると、受信信号のサンプル特徴量を生成する。送信装置照合装置10は、このサンプル特徴量とデータベース内のテンプレート特徴量の類似度計算を行い、所定の照合閾値より大きいテンプレート特徴量をもつ端末が存在する場合、受信した電波の送信元である送信端末を特定する。所定の照合閾値より大きいテンプレート特徴量をもつ端末が複数存在する場合、そのうち最大のものを照合結果として出力する、あるいは2以上の所定数以下の候補を推定確率とともに出力してもよい。
【0048】
送信端末の照合には、送信端末の個体を特定する「個体識別」が含まれる。また、送信端末の特定には、いずれの個体が電波を送信したかまでは特定しないが、当該電波を送信した機種を特定する「機種識別」も含まれる。当該状況を鑑みて、以降の説明では「個体識別」と「機種識別」を合わせて「電波識別」あるいは「端末照合」と呼称する場合がある。
【0049】
送信装置照合装置10は、受信した電波(受信した無線信号)の特徴量を抽出可能であればよく、送信端末が送信装置照合装置10宛に(送信装置照合装置10に向けて)電波を送信する必要はない。送信装置照合装置10は、都市部や各種施設(空港、ショッピングモール等)における不審者の検知及び追跡、あるいは、店舗や商業施設内における顧客の動線の把握、電波を活用した限定エリアへの入退場管理など、種々の用途に活用(適用)できる。その他、送信装置照合装置10は、例えば、重要無線通信に対する干渉信号発信源の探索などにも活用できる。
【0050】
送信装置照合装置10は、電波の特徴量を用いて送信端末の同一性を判定できる。しかしながら、送信装置照合装置10は、当該特徴量に基づいて送信端末の所有者を直接的に割り出すことはできない。このように、送信装置照合装置10が用いる電波の特徴量には匿名性があり、送信装置照合装置10は、個々人のプライバシーに配慮した処理を行うことができる。
【0051】
以下、
図3に示す送信装置照合装置10の各構成要素について説明する。
図3に示すように、送信装置照合装置10は、受信部101、信号領域検出部110、特徴量抽出部120、及び照合部130を備えることができる。なお、これらの構成要素は、それぞれ
図1の受信部1a、信号領域検出部1b、特徴量抽出部1c、及び照合部1dの一例である。
【0052】
受信部101は、電波識別の対象となる送信端末を含む送信端末からの電波(無線信号)を受信する。なお、送信装置照合装置10が備える受信部101の数は、1又はそれ以上の数であればよい。つまり、送信装置照合装置10は、少なくとも1以上の受信部101を含んでいればよい。
【0053】
ここで、
図4を参照しながら、受信部101を含む送信装置照合装置10と送信端末の配置例について説明する。
図4の例では、送信装置照合装置10と、送信装置照合装置10による端末照合の対象領域A1内に配置された送信端末900a、900bと、が示されている。なお、送信端末900aは送信装置照合装置10による照合対象の送信端末であり、送信端末900bは送信装置照合装置10による照合対象ではない送信端末である。本開示では、送信端末900aと送信端末900bを区別する特段の理由がない場合には、単に「送信端末900」と表記する。なお、
図4には、1台の照合対象となる送信端末900aを図示しているが、実際には複数の照合対象となる送信端末900aが含まれる。つまり、少なくとも1台以上の送信端末900aがフィールド(対象領域)に存在していればよい。また、
図4には送信端末が送信する電波の受信装置(後述する無線通信基地局やアクセスポイントなど)は図示していない。
【0054】
送信端末900としては、携帯電話機(スマートフォンと称されるものも含む)、ゲーム機、タブレット端末等の携帯端末装置やコンピュータ(パーソナルコンピュータ、ノートパソコン)等が例示される。あるいは、送信端末900は、電波を発信するIoT(Internet of Things)端末、MTC(Machine Type Communication)端末等であってもよい。しかしながら、送信端末900(送信装置照合装置10による端末照合の対象を含む)は、上記例示に限定されない。即ち、本開示では、電波を発信する任意の装置を送信装置照合装置10による端末照合の対象とすることができる。
【0055】
上述のように、送信端末900aが送信する電波が、送信装置照合装置10宛(受信部101宛)に送信される電波である必要はない。例えば、受信部101は、送信端末900が携帯電話機等のための無線通信基地局やアクセスポイントに向けて送信した電波、又は、送信端末900が無線通信基地局やアクセスポイントをサーチするために送信した電波を受信してもよい。あるいは、受信部101は、重要無線通信に対する干渉信号発信源(LED電球のインバータや蛍光灯)が発信した電波を受信してもよい。
【0056】
また、送信装置照合装置10は、周波数や帯域幅等が標準化されていない通信方式を含む、方式の異なる複数の無線信号送信源が電波を送信し得る環境に設置されることが想定される。このような設置環境において送信源を特定する場合、データベース登録時と特定(照合)時とで中心周波数や帯域幅等のパラメータに差異がある場合や受信信号内に複数の送信信号が含まれる場合、抽出される特徴量に差異が発生する。そして、このような場合、このような差異の発生による結果として照合精度が低下するおそれがある。
【0057】
そこで、本実施形態に係る送信装置照合装置10は、照合部130が備える類似度算出部131及び評価部133による照合評価が所定閾値を下回った場合、検出した信号領域が適切でなかったと判断する。このような判断の結果として、送信装置照合装置10は、特徴量抽出部120が備える変換パラメータ決定部121において信号変換パラメータを変更する。そして、照合評価結果が所定閾値を上回るまで信号変換パラメータを更新し、最終的に閾値更新部124において累積確率閾値を更新する。
【0058】
図3の各部の詳細な説明に戻る。信号領域検出部110は、スペクトログラム生成部111、閾値決定部(電力閾値決定部)112、及び検出部(信号領域決定部)113を備えることができる。
【0059】
スペクトログラム生成部111は、受信部101で受信した受信信号からスペクトログラムを生成する。具体的には、スペクトログラム生成部111は、取得した離散波形データから規定されたサンプル数を取得し離散フーリエ変換(DFT)を行い、電力スペクトルに変換する処理を、取得時間をずらしながら実行する処理を繰り返し行う。なお、DFTは、Discrete Fourier Transformの略である。スペクトログラム生成部111は、このような処理により、時間周波数の2次元平面上で受信信号の受信電力値を表すスペクトログラムを生成する。
【0060】
また、生成したスペクトログラムに対し、検出特性を向上することを目的とし、画像処理の分野で一般的に使用されるメディアンフィルタやガウシアンフィルタ等の画像フィルタによるフィルタリング処理を適用することでスペクトログラムを滑らかにしてもよい。なお、このフィルタリング処理には、例示した以外の低域通過フィルタを用いることもできる。
【0061】
このように、信号領域検出部110は、受信部101で受信した信号にフィルタリング処理を施した後の信号を上記受信信号とし、その受信信号からスペクトログラムを生成することもできる。受信信号変換部104について上述したように、後述する受信信号変換部122は、検出信号が存在する時間帯において受信信号を信号変換パラメータに従って変換することになるが、実際には、同時間帯に複数の信号が同時に検出される可能性がある。しかし、このようなフィルタリング処理を施すことで、検出信号それぞれが抽出され、結果的にそれぞれの照合精度の低下を低減させることができる。
【0062】
電力閾値決定部112は、生成したスペクトログラムから、どの時間周波数領域に検出対象信号が存在しているかを2値化するための電力閾値を決定する。具体的には、電力閾値決定部112は、時間・周波数の各ビンの電力の累積分布関数(Cumulative Distribute Function;CDF)を生成し、所定の累積確率閾値から二値化のための電力閾値を決定する。このように、電力閾値決定部112は、生成したスペクトログラムから電力累積分布関数を生成し、生成した電力累積分布関数から、所定の累積確率閾値に対応する電力閾値(特定の信号領域を検出するための電力閾値)を決定することができる。
【0063】
但し、周辺環境の違いにより、電力閾値を一意に決められないため、別途決定した累積確率閾値から2値化のための電力閾値を決定する。上述の通り、閾値更新部124によって累積確率閾値が更新されるが、例えばその初期値は次の例ように決定されてもよい。
【0064】
ここでは累積確率閾値として、背景雑音量が検出領域(特定の信号領域)に含まれる割合を微量に抑え、対象信号の電力値が検出領域内において支配的になる点を求める。
図5に累積確率閾値の初期値の決定方法の一例を説明するための図を示す。
図5のグラフCは、スペクトログラムのとある周波数ビンのある所定時間内の電力値から作成した電力CDFのカーブの一例である。
図5のグラフC-dは、グラフCの電力CDFを電力方向に一階微分したカーブであり、スペクトログラムのとある周波数ビンの電力のヒストグラムに等しい。グラフC-dから、受信電力ごとにどの程度割合で含まれるかが分かる。
図5のグラフC-ddはグラフCの電力CDFを電力方向に二階微分したカーブである。
【0065】
信号に背景雑音のみ含まれる場合、グラフC-dが正規分布に近似する分布になることが推定される。一方で、検出対象の信号も含まれる場合、分布の右裾部分の形状がくずれる(電力分布の変化量が変わる)。よって、グラフC-ddのカーブの最小値(符号50aで示す部分)は一階微分の変化点に相当するため、検出対象の信号が支配的になる電力値をとらえることができる。これは、背景雑音が正規分布に従う場合、二階微分すると平均+標準偏差(1σ)の点が求まり、この点より左に背景雑音の約83%が含まれ、背景雑音の大半を除くことができるためである。
【0066】
以上より、グラフCにおいて、符号50aに相当する累積確率50bを累積確率閾値の初期位置として使用可能であるといえる。そして、電力閾値決定部112は、このようにして決定した累積確率閾値から、グラフCの電力CDFカーブと累積確率閾値50bの交点からおろした点50cの値を2値化に用いる電力閾値として決定する。その後は、後述する閾値更新処理にて調整することで、適した累積確率閾値にする。上記の説明では、周波数ビンごとに電力CDFを生成した上でそれぞれに累積確率閾値の初期値を決定したが、周波数ビンごとに生成せずに全周波数でトータルに電力CDFを生成し、全体の累積確率閾値の初期値を決定してもよい。
【0067】
このように、電力閾値決定部112は、スペクトログラムから生成した電力累積分布関数の二階微分の最小値となる電力に対応する(相当する)累積確率を、所定の累積確率閾値の初期値(初期の累積確率閾値)とすることができる。
【0068】
信号領域決定部113は、生成したスペクトログラムの時間周波数の各マスが電力閾値決定部112で決定した電力閾値より大きい場合に1、等しいあるいは小さい場合に0とした二値化スペクトログラムを生成する。なお、二値化スペクトログラムは、0と1が反転していても問題ない。そして、信号領域決定部113は、生成した二値化スペクトログラムに対して、画像処理の分野で一般的に使用される外接矩形化処理を行い、当該外接矩形から信号領域パラメータを決定する。信号領域パラメータには、中心周波数、帯域幅、送信開始/終了時刻が含まれる。なお、受信信号の中に複数の検出対象信号が含まれる場合、複数の外接矩形が生成されるため、それぞれに対して信号領域パラメータを決定する。このように、信号領域決定部113は、電力閾値を用いてスペクトログラムから信号領域パラメータを検出する。
【0069】
特徴量抽出部120は、変換パラメータ決定部121、受信信号変換部122、特徴量生成部123、及び閾値更新部124を備えることができる。変換パラメータ決定部121は、信号領域パラメータに基づいて検出された検出信号(検出対象信号)が中心周波数0Hz及び所定の帯域幅に変換されるように、信号変換パラメータ(変換周波数とサンプリングレート)を決定する。受信信号変換部122は、受信部101で受信した受信信号のうち検出信号と同時間帯の信号を信号変換パラメータに従って変換した信号を生成する。
【0070】
特徴量生成部123は、受信信号変換部122によって変換された受信信号から電波特徴量を生成する。送信装置照合装置10が電波発信元の送信端末の照合に用いる電波特徴量は、送信端末900の個体差が現れる種々の特徴量とすることができる。
【0071】
電波特徴量としては、例えば、受信部101における受信信号のトランジェント(立ち上がり、立ち下り)、プリアンブル等のリファレンス信号部分の電力スペクトル密度、スペクトログラムが挙げられる。電波特徴量としては、離散ウェーブレット変換(Continuous Wavelet Transform; CWT)やヒルベルト変換の処理結果も挙げられる。さらに、電波特徴量としては、受信信号のエラーベクトル振幅(Error Vector Magnitude; EVM)が挙げられる。その他、電波特徴量としては、例えば、IQ(同相・直交位相)信号の振幅及び位相誤差、IQインバランス量等も挙げられる。あるいは、電波特徴量としては、周波数オフセット、シンボルクロック誤差のうち1又は複数を示す特徴量が使用されてもよい。但し、ここでの電波特徴量の例示は、送信装置照合装置10が送信端末の特定に使用する特徴量を限定する趣旨ではない。
【0072】
照合部130は、類似度算出部131、記憶部132、評価部133、及び出力部134を備えることができる。記憶部132は、予め記憶された特徴量としてテンプレート特徴量を、例えばデータベース形式で記憶(保管)する。類似度算出部131は、特徴量生成部123で生成したサンプル特徴量と、記憶部132(いわゆるデータベース)に登録済みのテンプレート特徴量とで、1対Nの類似度計算を行い、類似度を算出する。なお、Nは登録済みのテンプレート特徴量の数を示す任意の値であり、正の整数である。また、ここでは特徴量生成部123において変換したIQ信号から生成した特徴量をサンプル特徴量と呼称し、記憶部132に登録済みの特徴量をテンプレート特徴量と呼称している。
【0073】
サンプル特徴量とテンプレート特徴量との類似度計算に使用するのは、例えばコサイン類似度、ユークリッドスコア、相関係数などが考えられる。つまり、類似度算出部131で計算される類似度は、コサイン類似度、ユークリッドスコア、あるいは相関係数のうちいずれか1つとすることができ、あるいは、それらのうちの複数の組み合わせとすることができる。なお、類似度は、類似度スコアとして計算されることができる。
【0074】
具体的には、2つのN次元特徴量ベクトルを、<p>=(p_1,…,p_N)、及び<q>=(q_1,…,q_N)としたとき、そのコサイン類似度は式(1)で、そのユークリッドスコアは式(2)で、その相関係数は式(3)でそれぞれ表される。なお、ここでは、便宜上、<p>はpのベクトルの表記とし、<q>はqのベクトルの表記としている。また、式(3)におけるp、qの上付きバーの表記は、それぞれ式(4)、式(5)で表されるものである。
【0075】
【0076】
ここで説明した類似度の算出手法は例示に過ぎず、送信装置照合装置10が類似度の算出に使用する手法を限定する趣旨ではない。なお、以下では特徴量どうしが似ていれば似ているほど類似度が高く(1に近く)、違っていれば違っているほど類似度が低く(0に近く)出力されることを前提に説明を行うが、これに限ったものではない。
【0077】
評価部133は、ラベルのあるデータセット(特定の送信端末のみ存在する条件で受信した受信信号)から生成したサンプル特徴量と、記憶部132に登録済みのテンプレート特徴量との類似度計算結果に基づき、他人受入率及び本人拒否率を算出する。他人受入率及び本人拒否率はそれぞれ、類似度の閾値を変化させていくとカーブになる。例えば、他人受入率のカーブと本人拒否率のカーブの交点(等価エラー率)を1から減算した値を照合精度としたとき、評価部133はこの照合精度と所定閾値とを比較する。そして、照合精度が所定閾値より低い場合、信号変換パラメータの設定が不適切であると判断されるため、評価部133は変換パラメータ決定部121に対して信号変換パラメータの変更を通知する。この通知は、変更の指示に相当するものとすることができる。
【0078】
変換パラメータ決定部121は、評価部133から信号変換パラメータの変更の通知を受け、信号変換パラメータを修正する。このように、信号変換パラメータの変更、照合、評価のループを繰り返し、最終的に次の通りに累積確率閾値を更新する。
【0079】
即ち、閾値更新部124は、所定の照合精度になった際の変換パラメータに基づき、上記累積確率閾値を更新する。例えば、特定の信号領域の幅(信号検出幅)が広い場合、特定の信号領域に余分に背景雑音を含んでいると言えるため、累積確率閾値を高めに更新する。その結果、電力閾値が高めに変更され、信号領域決定部113で検出される特定の信号領域の幅が狭くなる。一方で、信号検出幅が狭い場合、本来なら特定の信号領域として検出すべき領域が検出されなかったと言えるため、累積確率閾値を低めに更新する。その結果、電力閾値が低めに変更され、信号領域決定部113で検出される特定の信号領域の幅が広くなる。
【0080】
出力部134は、類似度算出部131の出力する類似度が所定の照合閾値よりも大きいテンプレート特徴量を持つ端末が存在する場合、その照合結果(電波の送信元である送信端末のID等の登録済み送信端末の識別情報)を出力する。所定の照合閾値より大きいテンプレート特徴量をもつ端末が複数存在する場合、そのうち最大のものを照合結果として出力する、あるいは2以上の所定数を候補として出力してもよい。あるいは、所定の照合閾値より大きいテンプレート特徴量をもつ端末が全く存在しない場合、未知端末(未登録の送信源)であることを出力する。
【0081】
なお、評価部133と出力部134は排他的に動作することができ、具体的には累積確率閾値の学習時(換言すれば電力閾値の学習時)は評価部133が動作し、学習後は出力部134が動作することができる。上記の学習は、例えば、閾値更新部124による更新が開始されてから終了するまでの処理を指すことができ、運用は学習後に開始することができる。
【0082】
以上のように、信号領域検出部110に各部111~113を備え、特徴量抽出部120に各部103~105,108を備える構成の送信装置照合装置10では、照合精度に基づき累積確率閾値を所定の値から更新する。そして、このような更新により、照合精度に基づく信号領域パラメータの調整がなされる。
【0083】
以下、上述したような送信装置照合装置10の動作例について、
図6~
図9及び
図10のフローを参照しながら詳細に説明する。
【0084】
図6は、第2の実施形態に係る送信装置照合装置10の動作例の全体フロー(累積確率閾値の学習時)を示す図である。送信装置照合装置10は、受信した信号から特定の信号領域を検出し(ステップS11)、検出した信号からサンプル特徴量を抽出する(ステップS12)。そして、送信装置照合装置10は、照合精度を評価(算出)し(ステップS13)、照合精度が所定閾値以上か否かを判定する(ステップS14)。
【0085】
送信装置照合装置10は、ステップS14でNOの場合、信号変換パラメータを修正し(ステップS15)、ステップS12に戻る。送信装置照合装置10は、ステップS14でYESの場合、ステップS15で信号変換パラメータが変更(修正)されているか否かを判定し(ステップS16)、変更された場合(ステップS16でYESの場合)、累積確率閾値を更新する(ステップS17)。ステップS16でNOの場合、並びにステップS17の処理後は、動作を終了する。
【0086】
図7は、第2の実施形態に係る信号領域の検出(
図6のステップS11)の動作例を示す図である。送信装置照合装置10は、電波センサを有する受信部101を動作させ、送信端末が送信した信号を受信する(ステップS111)。次いで、スペクトログラム生成部111は、ステップS111で取得された受信信号からスペクトログラムを生成する(ステップS112)。
【0087】
次に、電力閾値決定部112は、時間・周波数の各ビンの電力CDFを生成する(ステップS113)。そして、電力閾値決定部112は、所定の累積確率閾値に基づきどの時間周波数領域に検出対象信号が存在しているかを2値化するための電力閾値を決定する(ステップS114)。次いで、信号領域決定部113は、スペクトログラムの時間周波数の各マスが上記電力閾値より大きい場合に1、等しいあるいは小さい場合に0とした二値化スペクトログラムを生成する(ステップS115)。そして、信号領域決定部113は、二値化スペクトログラムに対して外接矩形化処理を行い、当該外接矩形から信号領域パラメータを決定する(ステップS116)。
【0088】
この例における信号領域パラメータによって示される特定の信号領域とは、グレースケール等で表現されたスペクトログラム画像から、何等かの閾値でもって二値化することで得た二値化スペクトログラムにおいて、矩形検出した(特定した)信号領域となる。例えば、受信信号から生成するスペクトログラム自体が10MHz幅を持つ場合でも特定の信号領域は例えば100kHz幅を持つだけという場合もある。
【0089】
図8は、第2の実施形態に係る特徴量の抽出(
図6のステップS12)の動作例を示す図である。変換パラメータ決定部121は、信号領域決定部113がステップS11で決定した信号領域パラメータに基づき、検出対象信号が中心周波数0Hz及び所定の帯域幅に変換されるように信号変換パラメータを決定する(ステップS121)。ここでは、信号変換パラメータは1つの特定の信号領域ごとに複数存在するものとして、信号変換パラメータセットとして説明している。
【0090】
次に、受信信号変換部122は、受信部101が受信した受信信号のうちの検出信号と同時間帯の信号を上記変換パラメータセットに従って変換することで、変換後の信号を生成する(ステップS122)。次に、特徴量生成部123は、ステップS122で変換した信号から電波特徴量(サンプル特徴量)を生成する(ステップS123)。なお、ステップS121~S123の処理は、ステップS11で決定した信号領域パラメータセットが複数ある場合、その領域数分だけ処理を行う。そのため、1領域ごとに1つのサンプル特徴量が生成される。
【0091】
図9は、第2の実施形態に係る照合精度の評価(
図6のステップS13)の動作例を示す図である。類似度算出部131は、記憶部132に登録済みのテンプレート特徴量とで、1対N(Nは任意の自然数)の類似度計算を行い、類似度を算出する(ステップS131)。次いで、評価部133は、類似度計算結果に基づき、他人受入率及び本人拒否率を算出する(ステップS132)。そして、類似度算出部131は、ステップS132で算出した他人受入率及び本人拒否率に基づき照合精度を算出する(ステップS133)。なお、ステップS131~S133の処理も、ステップS11で決定した信号領域パラメータセットが複数ある場合、その領域数分だけ処理を行う。そのため、1領域ごとに1つの照合精度が算出される。
【0092】
図6のフローの説明に戻る。評価部133は、ステップS133で算出した照合精度が所定閾値以下の場合、信号変換パラメータの変更を変換パラメータ決定部121へ通知する。変換パラメータ決定部121は、評価部133からの通知を受け、信号変換パラメータを修正する(ステップS15)。ステップS12~S15のループは、ステップS14において照合精度が所定閾値以上になるまで繰り返す。つまり、照合精度が所定閾値以上の場合、あるいは上記ループ処理を1回以上繰り返し、照合精度が所定閾値を超えた場合、次のステップ(ステップS16)に進む。信号変換パラメータが変更済み、つまり、1度でも上記ループ処理を行った場合、閾値更新部124は累積確率閾値を更新する(ステップS17)。
【0093】
図6で説明したように、送信装置照合装置10は、信号から取り出したサンプル特徴量の照合精度が所定閾値より低かった場合、信号領域パラメータを調整する処理を繰り返す。より具体的には、信号領域パラメータの調整は、次のような処理Iを繰り返し行うことで実施することができる。上記処理Iは、照合精度に基づき信号変換パラメータを変更し、特徴量抽出部120が、変更した信号変換パラメータに基づき受信信号を変換した後の信号からサンプル特徴量を抽出し、照合部130が送信端末の照合を実行してその照合精度を所定閾値と比較する。信号領域パラメータの調整は、上記処理Iを繰り返すことで実施される。
【0094】
このように、上記処理Iでは、信号領域パラメータを直接変更するのではなく信号変換パラメータを変更しており、上記処理Iが繰り返されることで信号領域パラメータの調整を実施している。
【0095】
そして、上述したように、信号領域パラメータの調整は、照合精度の変化幅が所定値以下になった場合にその繰り返しを終了するとよい。また、このような終了処理の代替処理として、あるいはこのような終了処理に加えて、信号領域パラメータの調整は、照合精度が所定閾値より大きくなった場合に繰り返しを終了することもできる。つまり、照合精度が所定閾値より大きくなるまで、信号領域パラメータの調整を繰り返すようにすることもできる。
【0096】
図10は、第2の実施形態に係る送信装置照合装置10の動作例の全体フロー(累積確率閾値の学習後)を示す図である。本動作フローでは、信号領域検出部110が受信した信号から信号領域を検出し(ステップS11)、特徴量抽出部120が検出した信号からサンプル特徴量を抽出する(ステップS12)。本動作フローでは、その後、類似度算出部131がステップS12で抽出したサンプル特徴量と記憶部132に保管されたテンプレート特徴量との1対Nの類似度算出を行う(ステップS23)。その後、出力部134が、上記N個のテンプレート特徴量に対応する類似度スコアが、所定の照合閾値以上の送信端末が存在するかを判定し、判定結果を出力する(ステップS24)。
【0097】
なお、
図10の学習後のフローと
図6の学習時のフローとで異なる点は、次の通りである。即ち、
図10では繰り返し処理により信号変換パラメータの修正を行う部分(ステップS14,S15など)や累積確率閾値の更新(ステップS16,S17)がない点、
図10では照合結果を出力する点が、これらのフローの相違点である。
【0098】
また、送信装置照合装置10は、照合精度が所定閾値より低かった場合、信号領域検出部110から出力する信号領域パラメータを、照合精度を上げるように調整することで、最終的に所定閾値より高い照合精度まで調整するとよい。特に、可能な限り、調整の度に照合精度を上げるように調整することが好ましい。照合精度を上げるためには、例えば帯域幅を小さくする方向で調整を行い、その結果として照合精度が上がれば同様の傾向で帯域幅を小さくする方向で調整を行えばよい。一方で、例えば帯域幅を小さくする方向で調整を行い、その結果として照合精度が下がれば、中心周波数を照合精度が上がる方向を検索しながらずらすなどの処理を行うことができる。
【0099】
以上のような構成により、本実施形態に係る送信装置照合装置10は、標準化されていない通信方式の信号を受信し送信端末の照合を行う場合において、信号領域パラメータが自動的に調整されることになり、次のような効果を得ることができる。即ち、本実施形態に係る送信装置照合装置10では、広帯域に受信した信号の中心周波数や帯域幅がデータベースに登録した際と異なる状況においても、識別精度(照合精度)の低下を低減することができる。なお、非意図的に電波を発信する装置の信号を受信しその装置を照合する場合にも同様である。
【0100】
特に、データベースに登録済みの特徴量の信号帯域幅と照合対象の信号の帯域幅が異なると照合精度が大幅に低下するが、本実施形態では、スペクトログラムから特定した信号領域パラメータを用いて信号を次のように変換している。即ち、本実施形態では、この信号領域パラメータを用いて、信号が入っている帯域幅とサンプリングした帯域幅が、データベース内に登録済み特徴量生成時と照合対象の信号とで同一(例えば1対4)になるように、周波数シフトやサンプリング周波数を変換する。これにより、本実施形態では照合精度の低下を低減させることができる。また、この時、帯域の中心からずれていてもやはり照合精度の低下の要因となるため、中心が0になるように中心周波数も変換することで、照合精度の低下をより低減させることができる。
【0101】
<他の実施形態>
第2の実施形態の説明において参照した複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、例えば各処理を並行して実行する等、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0102】
そして、第1,第2の実施形態において、送信装置照合装置における処理の手順を説明したように、本開示は、送信端末から無線送信された信号を受信する受信部を備えた送信装置照合装置における送信装置照合方法としての形態も採り得る。この送信装置照合方法は、次の信号領域検出ステップ、特徴量抽出ステップ、照合ステップ、及び調整ステップを備えることができる。上記信号領域検出ステップは、上記受信部で受信した受信信号からスペクトログラムを生成し、生成したスペクトログラムに基づき、特定の信号領域を示す信号領域パラメータを検出する。上記特徴量抽出ステップは、上記信号領域パラメータに応じた信号変換パラメータに基づき上記受信信号を変換し、変換後の信号から特徴量を抽出する。上記照合ステップは、上記特徴量抽出ステップで抽出された特徴量と予め記憶された特徴量とに基づき類似度を算出し、算出した類似度に基づき送信端末を照合する。上記調整ステップは、上記信号領域検出ステップで検出する信号領域パラメータを、上記照合ステップでの照合の精度である照合精度に基づき調整する。なお、その他の例については、上述した様々な実施形態で説明した通りである。
【0103】
また、第1,第2の実施形態に係る送信装置照合装置及びそのシステムについて、その構成要素である各部を機能的に説明したが、これに限ったものではない。例えば照合部に電波特徴量生成部を備えるなど、送信装置照合装置として各部の機能が備えられていればよい。また、上述した各実施形態では、送信装置照合装置が単体の装置として構成することを前提として説明したが、機能を分散させて複数の装置として構成することもできる。
【0104】
また、第1及び第2の実施形態に係る送信装置照合装置は、いずれも次のようなハードウェア構成を有することができる。
図11は、装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【0105】
図11に例示する送信装置照合装置1000は、第1又は第2の実施形態に係る送信装置照合装置とすることができる。送信装置照合装置1000は、情報処理装置(いわゆるコンピュータ)により構成可能であり、例えばプロセッサ1001、メモリ1002、入出力インターフェイス1003及び無線通信回路1004等を備える。なお、無線通信回路1004に加えて有線通信回路を備えることもできる。上記プロセッサ1001等の構成要素は内部バス等により接続され、相互に通信可能に構成されている。
【0106】
プロセッサ1001は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPUなどのプログラマブルなデバイスである。あるいは、プロセッサ1001はFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスであってもよい。プロセッサ1001は、オペレーティングシステム(OS;Operating System)を含む各種プログラムを実行することができる。
【0107】
メモリ1002は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はメモリカードなどの記憶装置である。メモリ1002は、OSプログラム、アプリケーションプログラム、各種データを格納する。
【0108】
入出力インターフェイス1003は、図示しない表示装置や入力装置のインターフェイスである。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等のユーザ操作を受け付ける装置である。
【0109】
無線通信回路1004は、他の装置と無線通信を行う回路、モジュール等である。例えば、無線通信回路1004は、RF(Radio Frequency)回路等を備える。なお、送信装置照合装置1000の一部又は全部は、1又は複数の集積回路(Integrated Circuit)によって実現されることもできる。
【0110】
送信装置照合装置1000の機能は、各種処理モジュールにより実現されることができる。当該処理モジュールは、例えば、メモリ1002に格納されたプログラムをプロセッサ1001が実行することで実現される。この場合のプログラム(送信装置照合プログラム)は、送信装置照合装置1000のコンピュータに、上述した4つのステップを実行させるためのプログラムとすることができる。この送信装置照合装置1000は、送信端末から無線送信された信号を受信する受信部(無線通信回路1004で例示)を備える。上述した4つのステップとは、信号領域検出ステップ、特徴量抽出ステップ、照合ステップ、及び調整ステップである。なお、その他の例については、上述した様々な実施形態で説明した通りである。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。
【0111】
また、上述した送信装置照合プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。この記憶媒体は、非トランジェント(non-transitory)なもの、つまり非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)とすることができる。このように、本開示の目的は、コンピュータプログラム製品として具現化することでも実現可能である。例えば、プログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上述した処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。
【0112】
このように、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。さらに、この例は、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wを含む。さらに、この例は、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0113】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0114】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0115】
1、10、1000 送信装置照合装置
1a、101 受信部
1b、102、110 信号領域検出部
1c、120 特徴量抽出部
1d、130 照合部
103、121 変換パラメータ決定部
104、122 受信信号変換部
105、123 特徴量生成部
106、131 類似度算出部
107、133 評価部
108、124 閾値更新部
111 スペクトログラム生成部
112 電力閾値決定部
113 信号領域決定部
121 変換パラメータ決定部
132 記憶部
134 出力部
311 プロセッサ
312 メモリ
313 入出力インターフェイス
314 無線通信回路
900a、900b、900 送信装置(送信端末)
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 入出力インターフェイス
1004 無線通信回路
A1 対象領域