(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ブラスト加工用研磨材及びその製造方法、ブラスト加工方法、並びにブラスト加工装置
(51)【国際特許分類】
B24C 11/00 20060101AFI20240305BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20240305BHJP
B24C 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B24C11/00 Z
B24C5/02 A
B24C1/00 C
(21)【出願番号】P 2020086537
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】神田 真治
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】谷口 隼人
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003597(JP,A)
【文献】特開2011-121120(JP,A)
【文献】特開2006-159402(JP,A)
【文献】特開2019-081211(JP,A)
【文献】特開2001-162995(JP,A)
【文献】特開2001-239595(JP,A)
【文献】特開2016-049619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と共にワークに向けて噴射されるブラスト加工用研磨材であって、
ホットメルト樹脂からなる粒子と、
前記粒子に固着される砥粒と、
を含
み、
前記ホットメルト樹脂のゴム硬度の変化は、20℃~50℃の温度範囲において1℃の温度変化に対して1.3(A)以上である、
ブラスト加工用研磨材。
【請求項2】
前記ホットメルト樹脂は、エチレン酢酸ビニル及びポリウレタンの何れか一方を主成分とする、請求項1に記載のブラスト加工用研磨材。
【請求項3】
前記砥粒は、
前記粒子の表面から前記粒子の径方向内側に一部が埋没するように固着され、前記粒子の表面から前記粒子の径方向外側に露出する砥粒を含む、
請求項1又は2に記載のブラスト加工用研磨材。
【請求項4】
前記砥粒は、
前記粒子に全部が埋没するように固着される砥粒を含み、
前記全部が埋没するように固着される砥粒は、前記粒子の中心より前記粒子の表面の近傍に多く分布する、
請求項1~3の何れか一項に記載のブラスト加工用研磨材。
【請求項5】
気体と共にワークに向けて噴射されるブラスト加工用研磨材の製造方法であって、
ホットメルト樹脂の粒子と砥粒とを予め定められた重量比で配合した配合物を作製する工程と、
前記配合物を前記粒子の融点以上の温度に加熱する工程と、
前記配合物を前記粒子の融点より低い温度に冷却する工程と、
前記配合物から前記粒子に固着されない前記砥粒を除去する工程と、
を含
み、
前記ホットメルト樹脂のゴム硬度の変化は、20℃~50℃の温度範囲において1℃の温度変化に対して1.3(A)以上である、
ブラスト加工用研磨材の製造方法。
【請求項6】
ブラスト加工用研磨材を気体と共にワークに向けて噴射するブラスト加工方法であって、
ホットメルト樹脂からなる粒子と前記粒子に固着される砥粒とを有するブラスト加工用研磨材を準備する工程と、
前記気体を加熱する工程と、
前記準備されたブラスト加工用研磨材と前記加熱された気体とを共に噴射する工程と、
を含
み、
前記気体を加熱する前記工程では、前記粒子の硬度と温度との関係に基づいて、前記気体の温度は調整される、
ブラスト加工方法。
【請求項7】
ブラスト加工用研磨材を気体と共にワークに向けて噴射するブラスト加工装置であって、
ホットメルト樹脂からなる粒子と前記粒子に固着される砥粒とを有するブラスト加工用研磨材を貯留する貯留容器と、
前記気体を加熱するヒータと、
前記ヒータの加熱温度を調整することで、前記ブラスト加工用研磨材の硬度を調整する制御装置と、
前記貯留容器から供給された前記ブラスト加工用研磨材を前記ヒータにより加熱された前記気体と共に噴射するノズルと、
を含
み、
前記制御装置は、前記粒子の硬度と温度との関係に基づいて、前記気体の温度を調整する、
ブラスト加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブラスト加工用研磨材及びその製造方法、ブラスト加工方法、並びにブラスト加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨材と気体とからなる固気二相流を噴射ノズルより被加工物に向けて噴射して表面処理を行うブラスト加工方法は広く知られている。ブラスト加工は鋳造品のスケール除去や湯じわ消し、錆取り、塗装皮膜の除去、下地処理などに用いられる。さらに、ブラスト加工は、近年では平滑仕上げや光沢仕上げなど、高い加工精度が要求される用途でも用いられている。
【0003】
特許文献1には、ブラスト加工に使用される研磨材が記載されている。この研磨材は、コア材の表面にバインダを塗布して、バインダの上から砥粒(研磨粉)をまぶして付着させている。もしくは、砥粒とバインダとを混錬したものをコア材の表面に付着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるブラスト加工では、加工能力はコア材の硬度に依存する。そのため、研磨材はワークの種類や目標とする表面状態に応じて製造される必要がある。また、最適な加工条件を見出すために、様々な硬度のコア材を有する研磨材が試行錯誤で都度製造される必要がある。
【0006】
また、ブラスト加工では、研磨材は何度も再使用される。特許文献1の研磨材は、コア材の表面にしか砥粒が固定されていないので、ブラスト加工によって砥粒がコア材から脱離した場合には、研磨能力を失い、再使用できなくなる。即ち、研磨材の製造と、ブラスト加工装置への研磨材の入れ替え作業とが頻繁に行われることになる。
【0007】
以上を鑑み、本開示は、ワークを目標とする表面状態にするためのブラスト加工を効率良く行える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は、気体と共にワークに向けて噴射されるブラスト加工用研磨材である。このブラスト加工用研磨材は、ホットメルト樹脂の粒子と、粒子に固着される砥粒とを含む。
【0009】
砥粒を固着するホットメルト樹脂の粒子は、温度に応じて硬度が変化する。このため、このブラスト加工用研磨材を用いてブラスト加工を行う場合、ブラスト加工用研磨材の硬度を、ブラスト加工用研磨材と共に噴射される気体の温度に応じて変化させることができる。よって、このブラスト加工用研磨材を用いることにより、ワークを目標とする表面状態にするためのブラスト加工が効率良く実現できる。
【0010】
一実施形態においては、ホットメルト樹脂は、エチレン酢酸ビニル及びポリウレタンの何れか一方を主成分としてもよい。
【0011】
一実施形態においては、砥粒は、粒子の表面から粒子の径方向内側に一部が埋没するように固着され、粒子の表面から粒子の径方向外側に露出する砥粒を含んでもよい。このブラスト加工用研磨材は、砥粒が粒子の表面に接触して固定されたブラスト加工用研磨材と比べて、粒子から脱落する砥粒を低減できる。
【0012】
一実施形態においては、砥粒は、粒子に全部が埋没するように固着される砥粒を含んでもよい。全部が埋没するように固着される砥粒は、粒子の中心より粒子の表面の近傍に多く分布してもよい。この場合、全部が埋没するように固着される砥粒は、ブラスト加工用研磨材の表面の砥粒が脱離すると内部から新たに露出する。このブラスト加工用研磨材は、表面にのみ砥粒が固定されているブラスト加工用研磨材と比べて、ブラスト加工による切削力の低下を低減できる。
【0013】
本開示の他の側面は、気体と共にワークに向けて噴射されるブラスト加工用研磨材の製造方法である。このブラスト加工用研磨材の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)配合物を作製する工程。配合物は、ホットメルト樹脂の粒子と砥粒とを予め定められた重量比で配合される。
(2)配合物をホットメルト樹脂の粒子の融点以上の温度に加熱する工程。
(3)配合物を粒子の融点より低い温度に冷却する工程。
(4)配合物からホットメルト樹脂の粒子に固着されない砥粒を除去する工程。
【0014】
この製造方法によれば、ホットメルト樹脂の粒子に砥粒が固着したブラスト加工用研磨材が得られる。ホットメルト樹脂の粒子は、温度に応じて硬度が変化する。このため、このブラスト加工用研磨材を用いてブラスト加工を行う場合、ブラスト加工用研磨材の硬度は、ブラスト加工用研磨材と共に噴射される気体の温度に応じて変化する。よって、この製造方法によれば、気体の温度を調整することで目標とする表面状態にするためのブラスト加工を効率良く行えるブラスト加工用研磨材を製造できる。
【0015】
本開示の他の側面は、ブラスト加工用研磨材を気体と共にワークに向けて噴射するブラスト加工方法である。このブラスト加工方法は、以下の工程を含む。
(1)ブラスト加工用研磨材を準備する工程。ブラスト加工用研磨材は、ホットメルト樹脂からなる粒子と、粒子に固着される砥粒と、を有する。
(2)気体を加熱する工程。
(3)ブラスト加工用研磨材と加熱された気体とを共に噴射する工程。
【0016】
このブラスト加工方法によれば、砥粒を固着するホットメルト樹脂の粒子は、温度に応じて硬度が変化する。このため、このブラスト加工用研磨材を用いてブラスト加工を行う場合、ブラスト加工用研磨材の硬度は、ブラスト加工用研磨材と共に噴射される気体の温度に応じて変化する。よって、このブラスト加工方法によれば、気体の温度を調整することで目標とする表面状態にするための加工を効率良く行える。
【0017】
本開示の他の側面は、ブラスト加工用研磨材を気体と共にワークに向けて噴射するためのブラスト加工装置である。このブラスト加工装置は、貯留容器、ヒータ、ノズル、を含む。貯留容器は、ホットメルト樹脂からなる粒子と粒子に固着される砥粒とを有するブラスト加工用研磨材(ホットメルト樹脂からなる粒子と粒子に固着される砥粒とを有する)を貯留する。ヒータは、気体を加熱する。ノズルは、貯留容器から供給されたブラスト加工用研磨材をヒータにより加熱された気体と共に噴射する。
【0018】
このブラスト加工装置によれば、砥粒を固着するホットメルト樹脂の粒子は、温度に応じて硬度が変化する。このため、このブラスト加工用研磨材を用いてブラスト加工を行う場合、ブラスト加工用研磨材の硬度は、ブラスト加工用研磨材と共に噴射される気体の温度に応じて変化する。よって、このブラスト加工装置によれば、気体の温度を調整することで目標とする表面状態にするためのブラスト加工を効率良く行える。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る技術によれば、ワークを目標とする表面状態にするためのブラスト加工を効率良く行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るブラスト加工用研磨材の一例を示す断面図である。
【
図2】実施形態に係るブラスト加工用研磨材の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係るブラスト加工方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係るブラスト加工装置の一例を示す概要図である。
【
図5】低温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材がワークに衝突する場合の一例を示す模式図である。
【
図6】中温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材がワークに衝突する場合の一例を示す模式図である。
【
図7】高温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材がワークに衝突する場合の一例を示す模式図である。
【
図8】他の実施形態に係るブラスト加工装置の一例を示す概要図である。
【
図9】温度とホットメルト樹脂のゴム硬度との関係を示す測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0022】
[ブラスト加工用研磨材の構造]
図1は、実施形態に係るブラスト加工用研磨材1の一例を示す断面図である。ブラスト加工用研磨材1は、ホットメルト樹脂からなる粒子2、及び粒子2に固着される砥粒3によって構成される。
【0023】
ホットメルト樹脂は、熱可塑性を有する樹脂である。ホットメルト樹脂は、常温では固体(固相)であり、融点以上の温度で溶融して液体(液相)となる。液相のホットメルト樹脂を他の材料に接触させた状態でホットメルト樹脂を固相へと変化させることで、ホットメルト樹脂は他の材料に接合する。
【0024】
粒子2に採用し得るホットメルト樹脂は、一例として融点が60℃以上かつ100℃以下の材料とすることができる。融点が60℃より小さい場合にはブラスト加工時に液相となるおそれがある。融点が100℃を超える場合には砥粒3の固着工程にコストがかかるおそれがあるとともに、軟化点も高温となる傾向にあるためゴム弾性の制御が難しくなるおそれがある。軟化点とは、ホットメルト樹脂が軟化し始める温度である。また、粒子2に採用し得るホットメルト樹脂は、80℃以下の温度範囲でゴム弾性が温度に応じて変化する材料とすることができる。例えば、20℃~50℃の温度範囲において1℃の温度変化に対してゴム硬度の変化が1.3(A)以上となる材料とすることができる。
【0025】
上述した条件を満たすホットメルト樹脂は、一例として、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、低密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アイオノマー、又はポリビニルアルコールを主成分とすることができる。エチレン酢酸ビニルを主成分とするホットメルト樹脂は、融点が60℃~97℃の範囲であり、軟化点が69℃以下(融点が60℃の場合には軟化点は40℃以下)である。ポリウレタンを主成分とするホットメルト樹脂は、融点が90℃である。
【0026】
粒子2は、ホットメルト樹脂を所定の範囲の粒子径に粉末化した粒子である。粒子2の形状は、球状、板状、柱状、錐状、又は多面体であってもよい。粒子2の粒子径は、50μm~1000μmの範囲であってもよい。粒子2は、ホットメルト樹脂を主成分とすればよく、ホットメルト樹脂以外の樹脂やその他成分を含んでいてもよい。
【0027】
砥粒3は、ブラスト加工が行われる素材よりも硬い素材を所定の範囲の粒子径に粉末化した粒子である。砥粒3の素材は、アルミナ、炭化珪素、酸化セリウム、タングステンカーバイド、ジルコニア、炭化ホウ素、又はダイヤモンドなどを素材としてもよい。砥粒3は、所定の平均粒径の粉末であってもよい。平均粒径とは、メディアン径(D50)であり、粒子径の分布を示す。砥粒3の平均粒径は、20μm以下、又は10μm以下であってもよい。
【0028】
砥粒3は、粒子2に固着される。固着されるとは、被固着物と溶融した物質とが密着して、溶融した物質が固化することで接着されることである。砥粒3と熱によって溶融した粒子2とが密着して、冷却によって粒子2が固化することで、砥粒3は粒子2に接着される。砥粒3は、粒子2の表面、又は粒子2の粒子2の径方向内側で固着されてもよい。砥粒3は、粒子2の表面から粒子2の径方向内側に一部が埋没し、かつ粒子2の表面から粒子2の径方向外側に露出するように固着されていてもよい。砥粒4(3)は、粒子2に全部が埋没するように固着されていてもよい。この場合、粒子2に全部が埋没するように固着される砥粒4(3)は、粒子2の中心よりも、粒子2の表面の近傍に多く分布する。
【0029】
粒子2に全部が埋没するように固着される砥粒4(3)が、粒子2の中心よりも粒子2の表面の近傍に多く分布する場合、全部が埋没するように固着される砥粒3は、ブラスト加工用研磨材1の表面が摩耗すると内部から新たに露出する。また、砥粒3が粒子2の表面の近傍に多く分布するブラスト加工用研磨材1は、粒子2の内部に均一に砥粒3が分布するブラスト加工用研磨材と比べて、切削力が高く、弾性限界が大きい。
【0030】
以上、実施形態に係るブラスト加工用研磨材1によれば、砥粒3を固着するホットメルト樹脂の粒子2は、温度に応じて硬度が変化する。ブラスト加工用研磨材1を用いてブラスト加工を行う場合、ブラスト加工用研磨材1の硬度は、ブラスト加工用研磨材1と共に噴射される気体の温度に応じて変化する。このため、ブラスト加工用研磨材1を用いることにより、気体の温度を調整することで、ワークを目標とする表面状態にするためのブラスト加工を効率良く実現できる。
【0031】
ブラスト加工用研磨材1は、砥粒3が粒子2の表面に接触して固定されるブラスト加工用研磨材と比べて、粒子2から脱落する砥粒を低減できる。
【0032】
全部が埋没するように固着される砥粒3は、ブラスト加工用研磨材1の表面が摩耗すると内部から新たに露出する。このブラスト加工用研磨材1は、粒子2に全部が埋没するように固着される砥粒3を含まないブラスト加工用研磨材と比べて、摩耗による切削力の低下を低減できる。
【0033】
[ブラスト加工用研磨材の製造方法]
図2は、実施形態に係るブラスト加工用研磨材1の製造方法の一例を示すフローチャートである。最初に、配合物作製工程(ステップS10)として、粒子2と砥粒3とを予め定められた重量比で配合した配合物が作製される。配合物は、一種類のホットメルト樹脂からなる粒子2だけでなく、異なる種類のホットメルト樹脂からなる粒子2を含んでもよい。配合物は、一種類の素材からなる砥粒3だけでなく、異なる種類の素材からなる砥粒3を含んでもよい。
【0034】
次に、加熱工程(ステップS12)として、配合物は、粒子2の融点以上の温度に加熱される。粒子2は、加熱によって液相に変化し始める。砥粒3は、液相に変化し始めた粒子2の表面に密着する。砥粒3は、加熱時間に応じて粒子2の表面から粒子2の内部へ拡散する。粒子2の内部における砥粒3の分布は、加熱時間、加熱温度及び粒子2の素材に基づいて管理されてもよい。
【0035】
次に、冷却工程(ステップS14)として、配合物は、粒子2の融点より低い温度に冷却される。砥粒3は、液相から固相に変化した粒子2に固着される。
【0036】
最後に、除去工程(ステップS16)として、粒子2に固着されない砥粒3が配合物から除去される。砥粒3は、篩又は分級機などによって除去される。配合物は、粒子2に固着されない砥粒3が除去されることで、ブラスト加工用研磨材1となる。以上によって、
図2に示されるフローチャートが終了する。
図2に示される製造方法によって、ブラスト加工用研磨材1が製造される。
【0037】
以上、実施形態に係る製造方法によれば、気体の温度を調整することでワークを目標とする表面状態にするためのブラスト加工を効率良く実現できるブラスト加工用研磨材1を製造できる。
【0038】
[ブラスト加工方法及びブラスト加工装置]
図3は、実施形態に係るブラスト加工方法の一例を示すフローチャートである。
図4は、実施形態に係るブラスト加工装置10の一例を示す概要図である。ブラスト加工方法は、ブラスト加工用研磨材1を用いたブラスト加工装置10によって実行される。
図4に示されるブラスト加工装置10は、吸引式(重力式)のブラスト加工装置10である。最初に、
図4に示されるブラスト加工装置10を説明する。
【0039】
図4に示されるように、ブラスト加工装置10は、貯留容器20、ヒータ30、及びノズル40を含む。貯留容器20は、内部にブラスト加工用研磨材1を貯留する空間を画成し、ブラスト加工用研磨材1を貯留する。貯留容器20には、外部からブラスト加工用研磨材1が供給される。例えば、作業者が貯留容器20にブラスト加工用研磨材1を供給してもよい。貯留容器20は、ブラスト加工に使用したブラスト加工用研磨材1の一部を再使用してもよい。この場合、貯留容器20は、後述する分級機構14からブラスト加工に使用したブラスト加工用研磨材1を供給される。貯留容器20は、定量供給部21及び配管13を介してノズル40に接続される。定量供給部21は、貯留容器20に貯留されたブラスト加工用研磨材1を配管13へ送り出す装置であり、一例としてスクリューフィーダである。
【0040】
配管13には、気体を供給する気体供給源12が接続される。気体供給源12は、例えば、中圧力(例えば、0.1~0.6MPa)の気体を供給するコンプレッサやガスボンベ、低圧力(例えば、0.01~0.1MPa)の気体を供給するファンやブロアなどの送風機、などがある。本実施形態では、コンプレッサによって圧縮空気を供給する。気体供給源12から配管13に供給された気体は、定量供給部21によって送り出されたブラスト加工用研磨材1をノズル40へと搬送する。
【0041】
ヒータ30は、配管13内の気体を加熱する装置である。ヒータ30は、一例として、ニクロム線、セラミックヒータ、リボンヒータ、オイルヒータ又は熱交換器などである。ヒータ30は、配管13の外壁に設けられてもよいし、配管13の内部に設けられてもよい。ヒータ30は、配管13において、定量供給部21による送り出し位置よりも上流に設けられる。この場合、ヒータ30が定量供給部21による送り出し位置よりも下流に設けられる場合と比べて、加熱された気体とブラスト加工用研磨材1との接触時間を長くできるので、ブラスト加工用研磨材1の硬度の調整範囲を大きくできる。ヒータ30は、配管13において、定量供給部21による送り出し位置よりも下流に設けられてもよい。
【0042】
ノズル40は、貯留容器20から供給されたブラスト加工用研磨材1をヒータ30により加熱された気体と共に噴射する。ノズル40は、処理室41内に収容され、配管13を介して、貯留容器20から供給されたブラスト加工用研磨材1とヒータ30により加熱された気体とが混合した固気二相流が供給される。ノズル40は、処理室41内に配置されたワークW(
図5~
図7)に向けて、ブラスト加工用研磨材1を気体と共に噴射する。これにより、ワークWはブラスト加工が行われる。ワークWはテーブル(不図示)に支持され、テーブル駆動機構によって位置が調整されてもよい。
【0043】
処理室41の下部は、分級機構14を介して貯留容器20に接続される。処理室41の下部に落下したブラスト加工用研磨材1及びワークWの切粉は、集塵機(不図示)に吸引されて分級機構14を通過する。分級機構14は、再使用可能なブラスト加工用研磨材1とその他の微粉(砕けたブラスト加工用研磨材1及びワークWの切粉など)とに分級する。その他の微粉は集塵機に回収される。分級機構14の下部は、貯留容器20の上部に接続される。再使用可能なブラスト加工用研磨材1は、分級機構14から貯留容器20へ供給される。ブラスト加工用研磨材1を再使用しない場合、ブラスト加工装置10は、分級機構14を備えていなくてもよい。
【0044】
ブラスト加工装置10は、制御装置11によって制御される。制御装置11は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として構成される。制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(RandomAccess Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御装置11は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御装置11の機能を実現する。例えば、制御装置11は、気体供給源12の気体の圧力を制御する。制御装置11は、定量供給部21が送り出すブラスト加工用研磨材1の量を制御する。制御装置11は、ヒータ30を動作させて気体の温度を制御する。制御装置11は、配管13又はノズル40に設けられる温度センサ(不図示)に基づいて、気体の温度を制御してもよい。制御装置11は、粒子2の硬度と温度との関係及びノズル40における気体の温度の少なくとも何れか一方に基づいて気体の温度を決定してもよい。制御装置11は、ワークWを支持するテーブルを移動させてノズル40とワークWとの距離を調整してもよい。制御装置11は、ブラスト加工用研磨材1の噴射量、ブラスト加工用研磨材1を吹き付ける圧力、ブラスト加工用研磨材1を噴射する気体の温度、及びノズル40とワークWとの距離の少なくとも何れか一つを制御してもよい。
【0045】
次に、上述したブラスト加工装置10によるブラスト加工方法を説明する。
図3に示されるように、最初に、準備工程(ステップS20)として、ブラスト加工用研磨材1が準備される。準備とは、所定の量のブラスト加工用研磨材1を貯留容器20に貯留することである。
【0046】
次に、加熱工程(ステップS22)として、気体が加熱される。気体の温度は、ヒータ30による加熱によって上昇する。ヒータ30によって加熱された気体は、配管13にからノズル40へ流れる気流になる。ノズル40へ流れる加熱された気体の気流に、定量供給部21からブラスト加工用研磨材1が供給される。ブラスト加工用研磨材1の硬度は、気体の温度によって変化する。
【0047】
最後に、噴射工程(ステップS24)として、準備されたブラスト加工用研磨材1と加熱された気体とが共に噴射される。ノズル40は、ブラスト加工用研磨材1と加熱された気体とを共に噴射する。噴射工程(ステップS24)が完了すると、
図3に示されたフローチャートが終了する。
図3に示されるブラスト加工方法によって、ブラスト加工用研磨材1が任意の硬度で噴射される。
【0048】
制御装置11は、ヒータ30の加熱温度を調整することで、ブラスト加工用研磨材1の硬度を調整する。一例として、制御装置11は、低温領域、中温領域、及び高温領域の3つの温度範囲にブラスト加工用研磨材1の温度を設定し、ブラスト加工用研磨材1の硬度を調整する。低温領域、中温領域、及び高温領域は、順に高温になるように設定される。高温領域は、ブラスト加工用研磨材1のホットメルト樹脂の融点よりも低い範囲に設定される。低温領域、中温領域、及び高温領域の何れかがブラスト加工用研磨材1のホットメルト樹脂の軟化点を含む範囲となってもよい。
【0049】
図5は、低温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1がワークWに衝突する場合の一例を示す模式図である。
図5は、ブラスト加工用研磨材1がワークWに衝突して跳ね返るまでの間における、ブラスト加工用研磨材の形状変化を示す。低温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1は中温領域及び高温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1と比べて硬度が高くなる。
【0050】
ブラスト加工用研磨材1Aは、ノズル40からワークWへ向かって噴射されたブラスト加工用研磨材1である。ブラスト加工用研磨材1Aは、衝突前は例えば球体である。ブラスト加工用研磨材1Aは、所定の速度及び所定の入射角でワークWに衝突する。ブラスト加工用研磨材1Aの速度は、気体の圧力、ノズル40の形状、及びノズル40とワークWの間の距離に基づいて定まる。ブラスト加工用研磨材1Aの入射角は、ワークWに対するノズル40の傾斜角度、及びノズル40の形状に基づいて定まる。これらの速度及び入射角は、ブラスト条件として変更され得る。
【0051】
ブラスト加工用研磨材1Bは、ワークWに衝突したブラスト加工用研磨材1である。ブラスト加工用研磨材1の形状は、衝突によって球から楕円体に変形する。ブラスト加工用研磨材1Aの運動エネルギーの一部は、ブラスト加工用研磨材1の変形、摩擦によるワークWの研磨などに使用される。ブラスト加工用研磨材1Bは、中温領域及び高温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1よりも硬く変形量が小さい。よって、低温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1Bは、中温領域及び高温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1よりもワークWを強く研磨する。
【0052】
ブラスト加工用研磨材1Cは、ワークWに衝突して跳ね返ったブラスト加工用研磨材1である。ブラスト加工用研磨材1Cの速度は、ブラスト加工用研磨材1Bの変形量に応じて変化する。ブラスト加工用研磨材1Cは、処理室41の下部に落下する。
【0053】
図6は、中温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1がワークWに衝突する場合の一例を示す模式図である。
図7は、高温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1がワークWに衝突する場合の一例を示す模式図である。
図6及び
図7と
図5との違いは、ブラスト加工用研磨材1の温度のみである。以下では、
図5との相違点を中心に説明し、共通する説明は省略する。
【0054】
図6に示されるブラスト加工用研磨材1は、
図5に係るブラスト加工用研磨材1よりも温度が高い。よって、
図6に係るブラスト加工用研磨材1は、
図5に係るブラスト加工用研磨材1よりも軟らかい。このため、中温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1Eは、低温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1Bよりも衝突時の変形量が大きい。よって、中温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1は、低温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1よりもワークWを弱く研磨する。
【0055】
図7に示されるブラスト加工用研磨材1は、
図6に係るブラスト加工用研磨材1よりも温度が高い。よって、
図7に係るブラスト加工用研磨材1は、
図6に係るブラスト加工用研磨材1よりも軟らかい。このため、高温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1Hは、中温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1Eよりも衝突時の変形量が大きい。よって、高温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1は、低温領域又は中温領域に設定された温度のブラスト加工用研磨材1よりもワークWを弱く研磨する。ワークWを研磨する強さは、ブラスト条件として調整される。
【0056】
以上、実施形態に係るブラスト加工方法及びブラスト加工装置10は、気体の温度を調整することでワークを目標とする表面状態にするためのブラスト加工を行える。即ち、気体の温度という新規の調整パラメータをブラスト条件に導入し、他のブラスト条件(噴射圧力、ブラスト加工用研磨材1Aの入射角、ワークWとノズル40との距離など)を組み合わせて適宜調整することで、ワークを目標とする表面状態にするためのブラスト加工を実現できる。
【0057】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0058】
砥粒3は、粒子2の表面から粒子2の径方向内側に一部が埋没するように固着され、粒子2の表面から粒子2の径方向外側に露出する砥粒3を含まなくてもよい。粒子2は、砥粒3に全部が埋没するように固着される粒子2を含まなくてもよい。全部が埋没するように固着される砥粒3は、粒子2の中心より粒子2の表面の近傍に多く分布しなくてもよい。
【0059】
図8は、他の実施形態に係るブラスト加工装置10Aの一例を示す概要図である。ブラスト加工装置10Aは、直圧式(加圧式)のブラスト加工装置である。以下では、
図8に係るブラスト加工装置10と
図4に係るブラスト加工装置10との相違点を中心に説明し、共通する説明は省略する。
【0060】
ブラスト加工装置10Aでは、気体供給源12は、導管13a及び補助管13bに接続される。ブラスト加工装置10Aは、複数の気体供給源12を備えてもよい。この場合、導管13a及び補助管13bにはそれぞれ異なる気体供給源12が接続される。導管13a及び補助管13bは、配管13に接続される。ブラスト加工装置10Aの噴射圧力は、主に導管13aからノズル40に供給される気体の圧力によって定められる。ブラスト加工用研磨材1は、補助管13bを流れる気体によって配管13へ供給される。ヒータ30は、導管13aに設けられる。ヒータ30は、導管13aを流れる気体を加熱する。導管13aを流れる加熱された気体は、配管13へ供給されノズル40から噴射される気流になる。ノズル40へ流れるヒータ30によって加熱された気体の気流に、補助管13bからブラスト加工用研磨材1が供給される。ノズル40は、補助管13bから供給されたブラスト加工用研磨材1を、ヒータ30により加熱された気体と共に噴射する。
【0061】
除去工程(ステップS16)の前工程及び後工程の少なくとも何れか一方の工程に、所定の寸法より大きいブラスト加工用研磨材1を分離する分離工程が含まれてもよい。粒子2と他の粒子2が溶融して一体となった塊状の粒子2が分離される。塊状の粒子2は、篩又は分級機などによって除去される。
【0062】
加熱工程(ステップS22)は、配管13を流れる気体にブラスト加工用研磨材1が供給された後でもよい。加熱工程(ステップS22)は、複数あってもよい。加熱された気体を貯留容器20に供給してもよい。
【0063】
制御装置11は、ブラスト加工用研磨材1の硬度をブラスト条件に合わせて調整してもよい。この場合、制御装置11は、粒子2の硬度と温度との関係に基づいて、気体の温度を調整してもよい。制御装置11は、低温領域、中温領域及び高温領域の3つの温度領域にブラスト加工用研磨材の温度を設定することに限定されない。制御装置11は、低温領域及び高温領域の2つの温度領域にブラスト加工用研磨材の温度を設定してもよいし、4つ以上の温度領域にブラスト加工用研磨材の温度を設定してもよい。
【0064】
ヒータ30は、補助管13bに設けられてもよい。ブラスト加工装置10は、湿式のブラスト加工装置であってもよい。この場合、配管13又は導管13aへ水を供給する水供給管が接続される。この場合、ノズル40は、ブラスト加工用研磨材1、気体及び水を噴射する。
【実施例】
【0065】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例について説明する。
【0066】
[実施例1]
実施形態で説明された製造方法により、ブラスト加工用研磨材1を製造した。最初に、東京インキ株式会社製のエチレン酢酸ビニル共重合体のホットメルト粉末PR8050Cを使用した粒子2と信濃電気精錬株式会社製のSiC(炭化珪素)粉末GP#2000を使用した砥粒3とを同じ重量比で配合した配合物を作製した(ステップS10)。ホットメルト粉末PR8050Cの軟化点は40℃以下で、融点は60℃である。この配合物を65℃に加熱した後に冷却した(ステップS12、ステップS14)。続いて、粒子2に付着しないSiC粉末GP#2000を篩によって除去して(ステップS16)、ブラスト加工用研磨材1を作製した。
【0067】
[実施例2]
砥粒3として昭和電工株式会社製の酸化セリウム系研磨材SHOROX A-0を使用したブラスト加工用研磨材1を作製した。他の材料及び製造方法は実施例1と同一である。
【0068】
[ブラスト加工用研磨材の硬度の制御性の確認]
実施例1に係るブラスト加工用研磨材1を用いて、ブラスト加工用研磨材1の硬度の制御性の確認を行った。ホットメルト粉末PR8050Cの融点である60℃より低い温度範囲(20℃~50℃の範囲)においてホットメルト粉末PR8050Cのゴム硬度を測定した。ホットメルト粉末PR8050Cの軟化点は40℃以下であるため、上記温度範囲には、少なくとも軟化点以上の温度が含まれている。温度範囲内の測定として、ホットメルト粉末PR8050Cが20℃、30℃、40℃、50℃におけるゴム硬度を測定した。これらの温度は、
図5~
図7の説明に対応させると、20℃は低温領域、30℃及び40℃は中温領域、50℃は高温領域となる。ゴム硬度の測定は、タイプAのデュロメータを使用して測定した。結果を
図9に示す。
【0069】
図9は、温度とホットメルト樹脂のゴム硬度との関係を示す測定結果である。
図9に示されるように、粒子2の表面温度が20℃の場合(低温領域に対応)、粒子2のゴム硬度は69(A)を示した。粒子2の表面温度が30℃の場合(中温領域に対応)、粒子2のゴム硬度は53.5(A)を示した。粒子2の表面温度が40℃の場合(中温領域に対応)、粒子2のゴム硬度は42(A)を示した。粒子2の表面温度が50℃の場合(高温領域に対応)、粒子2のゴム硬度は19(A)を示した。
図9に示されるように、ホットメルト樹脂の融点以下の温度範囲において、温度を上昇させることによりゴム硬度が低下することが確認された。ホットメルト樹脂を採用することにより、20℃~50℃の温度範囲において1℃の温度変化に対してゴム硬度の変化が1.3(A)程度となることが確認された。このように、20℃~50℃という比較的低温の温度範囲においてブラスト加工用研磨材1の硬度を制御できることが確認された。つまり、新規の調整パラメータをブラスト条件に導入できることが確認された。
【0070】
[ブラスト加工による平坦化処理の確認]
ブラスト加工装置10に実施例1に係るブラスト加工用研磨材1を充填してワークWへブラスト加工を行い、ブラスト加工の前後でワークWの表面粗さ(算術表面粗さ:Ra)を測定した。ワークWとして、新東工業株式会社製のスチールショットSBM300でショットピーニング加工を行った焼き入れ材(材質はクロムモリブデン鋼)のギヤを準備した。ブラスト加工装置10として、新東工業株式会社製の直圧式サンドブラスト装置ELP-3TRを使用した。最初に、ブラスト加工装置10にブラスト加工用研磨材1Aを貯留した(ステップS20)。次に、気体(圧縮空気)を90℃に加熱した(ステップS22)。最後に、実施例1に係るブラスト加工用研磨材1を0.2MPaの加熱された気体でワークWに対して噴射した(ステップS24)。
【0071】
ワークWの表面粗さは、ブラスト加工の前後でRa0.73からRa0.36に変化した。実施例1に係るブラスト加工用研磨材1をブラスト加工装置10に適用してブラスト加工を行うことで、ワークWの平坦化処理ができることが確認された。
【0072】
[ブラスト加工による光沢化処理の確認]
ブラスト加工装置10に実施例2に係るブラスト加工用研磨材1を充填してワークWへブラスト加工を行い、ブラスト加工の前後でワークWの光沢を比較した。ワークWとして、アルミナ系研磨材ホワイトモランダムWA#1200を使用してサンドブラスト加工を行ったガラス基板を準備した。ブラスト加工装置10として、湿式直圧ブラスト装置を使用した。最初に、ブラスト加工装置10に実施例2に係るブラスト加工用研磨材1を貯留した(ステップS20)。次に、気体を加熱した(ステップS22)。最後に、実施例2に係るブラスト加工用研磨材1を0.2MPaの加熱された気体でワークWに対して噴射した(ステップS24)。
【0073】
ワークWの表面は、ブラスト加工の前後で粗面から光沢面に変化した。実施例2に係るブラスト加工用研磨材1をブラスト加工装置10に適用してブラスト加工を行うことで、ワークWの光沢化処理ができることが確認された。
【符号の説明】
【0074】
1…ブラスト加工用研磨材、2…粒子、3,4…砥粒、10,10A…ブラスト加工装置、20…貯留容器、30…ヒータ、40…ノズル。