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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G03G15/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020086572
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021182030
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 恭宏
(72)【発明者】
【氏名】笹本 能史
(72)【発明者】
【氏名】島添 誠
(72)【発明者】
【氏名】立本 雄平
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-058869(JP,A)
【文献】特開2019-168484(JP,A)
【文献】特開2000-056592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0311252(US,A1)
【文献】特開平06-161296(JP,A)
【文献】特開2015-108773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートにトナー画像を転写する転写部と、
前記転写部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、前記シートの抵抗を測定するための抵抗測定部材と、
前記シート搬送方向において前記転写部と前記抵抗測定部材との間に配置された除電部材と、
前記抵抗測定部材に抵抗測定用の電圧を印加する第1の電圧印加部と、
前記除電部材に前記抵抗測定用の電圧とは逆バイアスの電圧である除電用の電圧を印加する第2の電圧印加部と、
を備え、
前記シート搬送方向と直交する方向において、前記除電部材による除電領域の幅が前記抵抗測定部材による荷電領域の幅よりも広く、
前記除電用の電圧の絶対値が前記抵抗測定用の電圧の絶対値よりも小さい
画像形成装置。
【請求項2】
前記抵抗測定部材は、前記シートを挟み込む一対の抵抗測定ローラからなり、
前記除電部材は、前記シートを挟み込む一対の除電ローラからなり、
前記シート搬送方向と直交する方向において、前記一対の除電ローラによる前記シートのニップ幅が、前記一対の抵抗測定ローラによる前記シートのニップ幅よりも広い
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記除電用の電圧の絶対値は、前記抵抗測定用の電圧の絶対値の半分である
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写部で転写不良が発生する閾値電圧は、前記抵抗測定用の電圧の絶対値と前記除電用の電圧の絶対値との差よりも大きい
請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の電圧印加部および前記第2の電圧印加部を制御する電圧制御部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記第2の電圧印加部による前記除電用の電圧の印加タイミングを、前記第1の電圧印加部による前記抵抗測定用の電圧の印加タイミングと前記シートの搬送速度とに基づいて決定する
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記シート搬送方向と直交する方向における、前記除電用の電圧の分布形状が、谷型である
請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記除電ローラは、ローラ軸部とローラニップ部とを有し、
前記ローラニップ部は、第1の電気抵抗を有する第1のローラ部分と、前記第1の電気抵抗よりも高い第2の電気抵抗を有する第2のローラ部分とを有し、
前記第2のローラ部分は、前記ローラ軸部の中心軸方向において、前記第1のローラ部分よりもローラ端側に配置されている
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記抵抗測定ローラは、ローラ軸部とローラニップ部とを有し、
前記シート搬送方向と直交する方向において、前記抵抗測定ローラの前記ローラニップ部の両端位置は、前記除電ローラにおける前記第2のローラ部分の領域内に配置されている
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記抵抗測定ローラの前記ローラニップ部の両端位置は、前記除電ローラにおける前記第2のローラ部分の中心位置に配置されている
請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置は、シートにトナー画像を転写する転写部を備えている。この種の画像形成装置では、シートにトナー画像を転写するときの転写条件を、シートの電気的な抵抗に基づいて制御することがある。以降の説明においては、「電気的な抵抗」のことを、単に「抵抗」、または「電気抵抗」ともいう。
【0003】
特許文献1には、転写部よりもシート搬送方向の上流側に設けられたローラに電圧を印加し、このローラを通過するシートの抵抗を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-322798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ローラに電圧を印加してシートの抵抗を測定する際にシートに電荷が残留し、この残留電荷が原因となって、転写部で転写不良などの不具合が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、シートの抵抗測定にともなって転写部で不具合が発生することを抑制できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、シートにトナー画像を転写する転写部と、転写部よりもシート搬送方向の上流側に配置され、シートの抵抗を測定するための抵抗測定部材と、シート搬送方向において転写部と抵抗測定部材との間に配置された除電部材と、抵抗測定部材に抵抗測定用の電圧を印加する第1の電圧印加部と、除電部材に抵抗測定用の電圧とは逆バイアスの電圧である除電用の電圧を印加する第2の電圧印加部と、を備える。シート搬送方向と直交する方向において、除電部材による除電領域の幅は、抵抗測定部材による荷電領域の幅よりも広い。また、除電用の電圧の絶対値は、抵抗測定用の電圧の絶対値よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートの抵抗測定にともなって転写部で不具合が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
図2図1に示す画像形成装置の一部を拡大した模式図である。
図3図2に示す抵抗測定部、除電部および転写部の配置を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図5】一対の抵抗測定ローラの間にシートを挟み込んで、抵抗測定用電源によって一対の抵抗測定ローラに電圧を加えた状態を示す模式図である。
図6】抵抗測定ローラと除電ローラのローラ幅を同一に設定した例を示す概略図である。
図7】抵抗測定用の電圧と除電用の電圧の設定例を示す図である。
図8】抵抗測定ローラと除電ローラのローラ幅の違いによってローラ端の位置にずれが生じた状態を示す概略図である。
図9図8に示すローラ端の位置ずれによって転写不良が発生する原理を説明する図である。
図10】抵抗測定ローラと除電ローラの取り付け位置にずれが生じた状態を示す概略図である。
図11】抵抗測定ローラと除電ローラの取り付け位置のずれによって転写不良が発生する原理を説明する図である。
図12】本発明の実施形態における抵抗測定ローラと除電ローラのローラ幅の大小関係を示す概略図である。
図13】本発明の実施形態における抵抗測定用の電圧と除電用の電圧の第1設定例を説明する図である。
図14】本発明の実施形態における抵抗測定用の電圧と除電用の電圧の第2設定例を説明する図である。
図15】本発明の実施形態に係る除電ローラの構成を説明する概略図である。
図16】除電ローラの構造の第1例を示す概略図である。
図17】除電ローラの構造の第2例を示す概略図である。
図18】除電用の電圧の分布形状を説明する図である。
図19】本発明の実施形態に係る画像形成装置の動作手順を示すフローチャートである。
図20】抵抗測定ローラと除電ローラとによってシートが搬送される様子を示す概略側面図である。
図21】抵抗測定ローラと除電ローラとによってシートが搬送される様子を示す概略平面図である。
図22】本発明の実施形態において、抵抗測定用電圧の印加期間と除電用電圧の印加期間とを示すタイミングチャートである。
図23】制御部による電圧印加タイミングの決定方法を説明するための図である。
図24】1枚のシートにつき、抵抗測定を複数回行う場合を示す模式図である。
図25】抵抗測定用の電圧と除電用の電圧とを互いに逆バイアスの電圧とするための電気的な接続例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真式の画像形成装置であって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を重ね合わせてフルカラーの画像を形成可能なタンデム方式のカラー画像形成装置である。
画像形成装置1は、画像読取部21と、操作表示部22と、シート供給部23と、画像形成部24と、中間転写ベルト25と、転写部27と、定着部28と、シート排出部29と、制御部50とを備えている。
【0012】
画像読取部21は、原稿の画像を読み取る部分である。画像読取部21は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿送り装置21aと、原稿画像走査装置(スキャナー)21bとを備えている。自動原稿送り装置21aは、原稿トレイに載置された原稿を搬送機構により搬送して原稿画像走査装置21bへと送り出す。画像読取部21は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿の画像を連続して読み取ることができる。このような原稿画像の読み取りは、自動原稿送り装置21aと原稿画像走査装置21bとの協働によって実現される。原稿画像走査装置21bは、自動原稿送り装置21aによってコンタクトガラス上に搬送された原稿、またはユーザーによってコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサ等の受光面上に結像させることで、原稿の画像を読み取る。画像読取部21は、原稿画像走査装置21bによる読取結果に基づいて画像データを生成する。
【0013】
操作表示部22は、ユーザーの入力操作を受け付ける操作部としての機能と、ユーザーに対して種々の情報を表示する表示部としての機能とを有する。操作表示部22は、たとえばタッチパネル式の液晶表示部によって構成されており、ユーザーによる操作の受け付け、および、ユーザーに対する情報の表示が可能となっている。なお、操作部をマウスやタブレット等で構成し、表示部とは別体で操作部を構成することも可能である。
【0014】
シート供給部23は、複数のシート収納部23aを備えている。複数のシート収納部23aには、サイズや種類の異なるシート20を収納可能である。本実施形態において、シート20は、たとえば、用紙である。シート20は、抵抗測定が可能なものであれば、用紙以外のものであってもよい。シート供給部23は、ジョブの指示内容に基づいていずれかのシート収納部23aが選択されると、選択されたシート収納部23aからシート20を供給する。ジョブは、操作表示部22を操作するユーザーによって投入されるか、もしくは、画像形成装置1とネットワークを介して通信可能な外部の装置から投入される。シート収納部23aからのシート20の送り出しは、シート収納部23aに対応して設けられたシート供給ローラ(図示せず)の駆動によって行われる。シート収納部23aから送り出されたシート20は、その後、シート搬送路10に沿って搬送される。
【0015】
シート搬送路10には、シート20を搬送するための複数の搬送ローラ12が設けられている。また、シート搬送路10には、レジスト部14と、抵抗測定部16と、除電部18とが設けられている。シート搬送部34は、上述した複数の搬送ローラ12と、レジスト部14と、抵抗測定部16と、除電部18とを備えた構成となっている。レジスト部14は、一対のレジストローラを用いて構成されている。一対のレジストローラは、互いに所定の加圧力で接触する状態に配置される。一対のレジストローラは、シート搬送路10に沿って搬送されるシート20を一時停止させた後、所定のタイミングでシート20を転写部27に向けて送り込む。所定のタイミングは、転写部27にトナー画像が到達するタイミングに合わせて設定される。また、一対のレジストローラは、シート20を挟持しながら回転することにより、転写部27に向けてシート20を送り込むとともに、この送り込みの途中でシート搬送方向Yと直交する方向に揺動することにより、シート20の幅方向の位置ずれを補正する。「挟持」とは、「挟んで支持する」という意味である。
【0016】
シート搬送路10は、シート供給部23からシート排出部29まで延在している。シート排出部29には、シートを受け取る排出トレイが設けられ、画像の形成を終えたシート20は、この排出トレイの上に排出される。
【0017】
また、画像形成装置本体2には、図示しない反転搬送路と再搬送路とが設けられている。反転搬送路は、転写部27および定着部28を通過したシートを表裏反転させるための搬送路である。再搬送路は、反転搬送路で表裏反転させたシートを再び転写部27に向けて搬送するための搬送路である。
【0018】
また、レジスト部14の近傍にはシート検知部30が設けられている。シート検知部30は、シート収納部23aから送り出されたシート20を搬送ローラ12によって搬送する場合に、シート20の先端および後端の通過を検知する。シート20の先端は、シート搬送方向Yの下流側に位置するシート端であり、シート20の後端は、シート搬送方向Yの上流側に位置するシート端である。
【0019】
シート検知部30は、たとえば、非接触式センサまたは接触式センサを用いて構成される。非接触センサとしては、反射式または透過式の光学センサを用いることができる。接触式センサとしては、たとえば、移動自在なセンサアームを有し、このセンサアームがシートの先端に押されることでセンサ出力がオン状態となり、センサアームがシートの後端から離れることでセンサ出力がオフ状態となるセンサを用いることができる。
【0020】
画像形成部24は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成するために、4つの画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kを備えている。4つの画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kの各々は、感光体ドラム、帯電器、露光器、現像器、除電器、ドラムクリーナなどを備えている。画像形成部24は、各々の画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kの動作を制御することにより、各色のトナー画像を形成する。
【0021】
画像形成装置1は、各々の画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kが有する感光体ドラムの表面にトナー画像を形成する。トナー画像の形成は、次のようなプロセスによって行われる。まず、感光体ドラムの表面を帯電器によって帯電させる。次に、帯電した感光体ドラムの表面を露光器で露光して電荷を消去することにより、感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する。次に、感光体ドラムの表面に現像器によってトナーを供給することにより、静電潜像をトナーの付着により現像する。以上のプロセスにより、感光体ドラムの表面にトナー画像が形成される。その際、画像形成ユニット26Yの感光体ドラムにはイエローのトナー画像が形成され、画像形成ユニット26Mの感光体ドラムにはマゼンタのトナー画像が形成される。また、画像形成ユニット26Cの感光体ドラムにはシアンのトナー画像が形成され、画像形成ユニット26Kの感光体ドラムにはブラックのトナー画像が形成される。
【0022】
このように、各々の画像形成ユニット26Y,26M,26C,26Kが有する感光体ドラムの表面にトナー画像を形成したら、各色のトナー画像を、中間転写ベルト25の表面に順に転写する。感光体ドラムから中間転写ベルト25へのトナー画像の転写は、図示しない一次転写ローラによって行われる。このとき、中間転写ベルト25には各色のトナー画像が重ねて転写される。この段階の転写は一次転写と呼ばれる。これにより、中間転写ベルト25にカラーのトナー画像が形成される。
【0023】
次に、上述のように中間転写ベルト25に形成されたカラーのトナー画像を、転写部27によってシート20に一括転写する。この段階の転写は二次転写と呼ばれる。二次転写に際して、シート20は、転写部27にトナー画像(以下、単に「画像」ともいう。)が到達するタイミングに合わせて、レジスト部14から転写部27へと送り込まれる。これにより、中間転写ベルト25上のトナー画像がシート20に転写される。その結果、シート20にトナー画像が形成される。その後、シート20は定着部28へと送られる。
【0024】
定着部28は、トナー画像が形成されたシート20に画像を定着させる部分である。定着部28は、転写部27を経て搬送されてきたシート20を加圧および加熱することにより、シート20にトナー画像を定着させる。定着部28は、定着ローラと加圧ローラとからなる一対のローラを備える。定着ローラにはヒータが内蔵されている。定着ローラと加圧ローラとは互いに圧接した状態に配置され、その圧接部分に定着ニップ部が形成される。この定着ニップ部に対し、シート20は、トナー画像が形成されている紙面が定着ローラに接するように定着部28へと送り込まれる。これにより、定着部28を通過するシート20には、加圧ローラによる加圧力と、定着ローラに内蔵されたヒータによる熱とが加わる。その結果、シート20上のトナーが加熱されて溶融し、かつ、溶融したトナーがシート20に圧着される。このような定着処理が行われたシート20は、シート排出部29に排出される。
【0025】
なお、シート20の画像形成面を下向きにして排出する場合は、定着部28から送り出されたシート20を図示しない反転搬送路に導き、反転搬送路を用いたスイッチバック搬送によりシート20の表裏を反転させた状態で、シート排出部29にシート20を排出する。シート20の両面に画像を形成する場合は、第1面への画像の形成を終えて定着部28から送り出されたシート20を図示しない反転搬送路に導き、反転搬送路を用いたスイッチバック搬送によりシート20の表裏を反転させた状態で、図示しない再搬送路にシート20を送り込む。そして、再搬送路を通してシート20を再び転写部27および定着部28に送り込んだ後、シート排出部29にシート20を排出する。
【0026】
図2は、図1に示す画像形成装置1の一部を拡大した模式図である。また、図3は、図2に示す抵抗測定部16、除電部18および転写部27の配置を示す平面図である。図3においては、各種サイズのシート20をセンター基準で搬送する場合の各部の配置を示している。シート20をセンター基準で搬送する場合とは、シート20の幅方向のセンター位置が、シートサイズの大小にかかわらず、同じ基準位置Kになるように搬送する場合をいう。
【0027】
図2および図3に示すように、抵抗測定部16は、転写部27よりもシート搬送方向Yの上流側に配置されている。抵抗測定部16には、一対の抵抗測定ローラ16a,16bが配置されている。一対の抵抗測定ローラ16a,16bは、シート20の抵抗を測定するための抵抗測定部材の一例として設けられている。各々の抵抗測定ローラ16a,16bは、シート搬送方向Yと直交する向きに配置されている。また、各々の抵抗測定ローラ16a,16bは、ローラ軸部161とローラニップ部162とによって構成されている。ローラ軸部161は、たとえば金属製のシャフトによって構成され、ローラニップ部162は、たとえば、導電性の樹脂によって構成される。ローラニップ部162は、円筒状に形成されると共に、ローラ軸部161に嵌め込まれて固定されている。シート搬送路10に沿って搬送されるシート20は、このローラニップ部162によって挟み込まれる。各々の抵抗測定ローラ16a,16bのローラ径D1およびローラ幅W1は、ローラニップ部162の径および幅によって規定されている。ローラ幅W1は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによるシートのニップ幅に相当する。ローラニップ部162の幅方向の中心位置は、上述した基準位置Kに位置決めされている。
【0028】
一対の抵抗測定ローラ16a,16bは、以下に述べる抵抗測定用の電気回路(以下、「抵抗測定回路」ともいう。)を構成している。
まず、一対の抵抗測定ローラ16a,16bには、抵抗測定用電源31が電気的に接続されている。抵抗測定用電源31のプラス極は、上側の抵抗測定ローラ16aに接続されている。また、抵抗測定用電源31のプラス極と上側の抵抗測定ローラ16aとの間には、スイッチ32と電流計33が設けられている。一方、抵抗測定用電源31のマイナス極は、接続点T1に接続されている。接続点T1は、下側の抵抗測定ローラ16bとグランドGNDとの間に設けられている。抵抗測定用電源31およびスイッチ32は、抵抗測定部材としての一対の抵抗測定ローラ16a,16bに対し、抵抗測定用の電圧を印加する第1の電圧印加部を構成している。
【0029】
上述した抵抗測定回路においては、一対の抵抗測定ローラ16a,16bの間にシート20を挟み込んでスイッチ32を閉じると、一対の抵抗測定ローラ16a,16bとシート20とに電圧が印加される。このとき、一対の抵抗測定ローラ16a,16bとシート20には、直流電圧が印加される。すなわち、抵抗測定部16における電圧の印加方式は、ローラ挟持方式で、かつ直流重畳方式である。また、上側の抵抗測定ローラ16aには、プラスの電圧が印加される。また、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに挟まれたシート20には、このシート20の抵抗に応じて電流が流れる。したがって、シート20に流れる電流を電流計33によって測定することにより、シート20の抵抗を測定することができる。具体的には、シート20の抵抗(単位、オーム)をRs、抵抗測定用電源31によって一対の抵抗測定ローラ16a,16bに印加される電圧(単位、ボルト)をV1、電流計33によって検出される電流(単位:アンペア)をI、抵抗測定ローラ16aの抵抗(単位:オーム)をRr1、抵抗測定ローラ16bの抵抗(単位:オーム)をRr2とすると、シート20の抵抗(体積抵抗)は、「Rs=V1/I-Rr1-Rr2」の計算式により求めることができる。この場合、電圧V1は、抵抗測定用の電圧に相当する。
【0030】
除電部18は、シート搬送方向Yにおいて転写部27と抵抗測定部16との間に配置されている。このため、シート搬送路10に沿って搬送されるシート20は、抵抗測定部16および除電部18を順に経て、転写部27へと送り込まれる。除電部18には、一対の除電ローラ18a,18bが配置されている。一対の除電ローラ18a,18bは、シート20に残留する電荷を取り除くための除電部材の一例として設けられている。各々の除電ローラ18a,18bは、シート搬送方向Yと直交する向きに配置されている。また、各々の除電ローラ18a,18bは、ローラ軸部181とローラニップ部182とによって構成されている。ローラ軸部181は、たとえば金属製のシャフトによって構成され、ローラニップ部182は、たとえば、導電性の樹脂によって構成される。ローラニップ部182は、円筒状に形成されると共に、ローラ軸部181に嵌め込まれて固定されている。シート搬送路10に沿って搬送されるシート20は、このローラニップ部182によって挟み込まれる。各々の除電ローラ18a,18bのローラ径D2およびローラ幅W2は、ローラニップ部182の径および幅によって規定されている。ローラ幅W2は、一対の除電ローラ18a,18bによるシートのニップ幅に相当する。ローラニップ部182の幅方向の中心位置は、上述した基準位置Kに位置決めされている。また、除電ローラ18a,18bのローラ径D2は、上述した抵抗測定ローラ16a,16bのローラ径D1と同一に設定されている。シート搬送方向Yにおける抵抗測定ローラ16a,16bと除電ローラ18a,18bとの間のローラ距離は、Lr(mm)に設定されている。また、シート搬送方向Yにおける抵抗測定ローラ16a,16bと除電ローラ18a,18bとの間のローラ軸間距離は、Lj(mm)に設定されている。
【0031】
一対の除電ローラ18a,18bは、以下に述べる除電用の電気回路(以下、「除電回路」ともいう。)を構成している。
まず、一対の除電ローラ18a,18bには、除電用電源35が電気的に接続されている。除電用電源35のマイナス極は、上側の除電ローラ18aに接続されている。また、除電用電源35のマイナス極と上側の除電ローラ18aとの間には、スイッチ36が設けられている。一方、除電用電源35のプラス極は、接続点T2に接続されている。接続点T2は、下側の除電ローラ18bとグランドGNDとの間に設けられている。除電用電源35およびスイッチ36は、除電部材としての一対の除電ローラ18a,18bに対し、除電用の電圧を印加する第2の電圧印加部を構成している。除電用の電圧は、上述した抵抗測定用の電圧とは逆バイアスの電圧である。
【0032】
上述した除電回路においては、一対の除電ローラ18a,18bの間にシート20を挟み込んでスイッチ36を閉じると、一対の除電ローラ18a,18bとシート20とに電圧が印加される。このとき、一対の除電ローラ18a,18bとシート20には、直流電圧が印加される。すなわち、除電部18における電圧の印加方式は、ローラ挟持方式で、かつ直流重畳方式である。また、上側の除電ローラ18aにはマイナスの電圧、すなわち上述した電圧V1とは逆バイアスの電圧が印加される。これにより、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによってシート20に付与される電荷を除去することができる。
【0033】
転写部27は、除電部18よりもシート搬送方向Yの下流側に配置されている。転写部27には、一対の転写ローラ27a,27bが配置されている。一対の転写ローラ27a,27bは、中間転写ベルト25からシート20へとトナー画像を転写するための転写部材の一例として設けられている。各々の転写ローラ27a,27bは、シート搬送方向Yと直交する向きに配置されている。また、各々の転写ローラ27a,27bは、ローラ軸部271とローラニップ部272とによって構成されている。ローラ軸部271は、たとえば金属製のシャフトによって構成され、ローラニップ部272は、たとえば、導電性の樹脂によって構成される。ローラニップ部272は、円筒状に形成されると共に、ローラ軸部271に嵌め込まれて固定されている。シート搬送路10に沿って搬送されるシート20は、このローラニップ部272によって挟み込まれる。各々の転写ローラ27a,27bのローラ径D3およびローラ幅W3は、ローラニップ部272の径および幅によって規定されている。ローラニップ部272の幅方向の中心位置は、上述した基準位置Kに位置決めされている。また、転写ローラ27a,27bのローラ径D3は、上述した抵抗測定ローラ16a,16bのローラ径D1よりも大きく設定されている。また、転写ローラ27a,27bのローラ幅W3は、上述した抵抗測定ローラ16a,16bのローラ幅W1よりも大きく、かつ、シート搬送路10を搬送可能な最大のシート幅W4よりも大きく設定されている。なお、図3における幅W5は、画像形成装置1のシート搬送路10における機械的な制限幅を示しており、転写ローラ27a,27bのローラ幅W3は、この幅W5よりも小さく設定されている。
【0034】
一対の転写ローラ27a,27bは、以下に述べる転写用の電気回路(以下、「転写回路」ともいう。)を構成している。
まず、一対の転写ローラ27a,27bには、転写用電源37が電気的に接続されている。転写用電源37のプラス極は、上側の転写ローラ27aに接続されている。また、転写用電源37のプラス極と上側の転写ローラ27aとの間には、スイッチ38が設けられている。一方、転写用電源37のマイナス極は、接続点T3に接続されている。接続点T3は、下側の転写ローラ27bとグランドGNDとの間に設けられている。転写用電源37およびスイッチ38は、転写部材としての一対の転写ローラ27a,27bに対し、転写用の電圧を印加する転写電圧印加部を構成している。
【0035】
上述した転写回路においては、一対の転写ローラ27a,27bの間にシート20を挟み込んでスイッチ38を閉じると、一対の転写ローラ27a,27bとシート20とに電圧が印加される。このとき、一対の転写ローラ27a,27bには、直流電圧が印加される。また、上側の転写ローラ27aにはプラスの電圧が印加される。このプラスの電圧は、転写用の電圧である。
【0036】
<画像形成装置の制御構成>
図4は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、画像形成装置1は、上述した画像読取部21、操作表示部22、シート供給部23、画像形成部24、転写部27、定着部28、シート排出部29、シート検知部30、抵抗測定用電源31、スイッチ32,36,38、電流計33、シート搬送部34、除電用電源35、転写用電源37および制御部50の他に、画像処理部45、通信部47および記憶部48を備えている。
【0037】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)65と、ROM(Read Only Memory)66と、RAM(Random Access Memory)67とを備えている。制御部50は、ROM66に格納された所定の処理プログラムをCPU65が読み出してRAM67に展開し、展開したプログラムをCPU65が実行することにより、画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する。また、制御部50は、抵抗測定用電源31およびスイッチ32を用いて抵抗測定用の電圧の印加を制御すると共に、除電用電源35およびスイッチ36を用いて除電用の電圧の印加を制御する。すなわち、制御部50は、電圧制御部としての機能を有する。電圧制御部としての機能は、スイッチ32の開閉タイミングと、スイッチ36の開閉タイミングとを制御部50が制御することによって実現される。
【0038】
画像処理部45は、画像読取部21によって読み取られた画像データ、あるいは通信部47を介して受信した画像データに所定の画像処理を施すものである。所定の画像処理には、たとえば、階調補正処理や中間調処理などが含まれる。階調補正処理は、用紙に形成された画像の濃度が目標の濃度と一致するように、画像データの各画素の階調値を補正する処理である。中間調処理は、たとえば、誤差拡散処理、組織的ディザ法を用いたスクリーン処理等である。
【0039】
通信部47は、図示しないネットワーク上の外部の装置と通信することにより、画像形成装置1と外部の装置との間で各種データの送受信を行う。画像形成装置1は、通信部47を介してLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続され、この通信ネットワークを通して外部の装置(たとえば、パーソナルコンピュータ)と各種データの送受信を行う。通信部47は、たとえば、外部の装置から送信されたPDLデータを受信する。PDLデータは、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたデータである。画像処理部45は、PDLデータをラスタライズ処理することにより、ビットマップ形式の画像データに変換する。
【0040】
記憶部48は、画像形成装置1を動作させたり、その動作を制御したりするうえで必要になる各種の情報(データ)を記憶するために用いられる。記憶部48は、たとえば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成される。
【0041】
<抵抗測定時の電圧印加状態>
次に、抵抗測定部16においてシート20の抵抗を測定するときの電圧印加状態について説明する。
一般に、シート20の抵抗値は大きいため、一対の抵抗測定ローラ16a,16bの間にシート20を挟み込んでシート20の抵抗を測定する場合は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに対し、ある程度の高電圧をかけないと、シート20の抵抗を正確に測定できない。本発明者の実験では、抵抗測定用の電圧が100Vの場合は、シート20の抵抗を測定できないことが多く、抵抗測定用の電圧が200Vの場合は、環境によってシート20の抵抗を測定可能であった。また、抵抗測定用の電圧が500Vの場合は、シート20の抵抗を測定可能であり、抵抗測定用の電圧が1000Vの場合も、シート20の抵抗を測定可能であった。ただし、抵抗測定用の電圧が1000Vの場合は、測定対象となるシート20の抵抗が小さいと、一対の抵抗測定ローラ16a,16bの間でシート20に電流が多く流れるため、このような電流の流れを許容し得る程度の大きな容量をもつ抵抗測定用電源31を用意する必要があり、画像形成装置1のコストアップが懸念された。そこで、本実施形態においては、好ましい一つの例として、抵抗測定の電圧を500Vに設定する。
【0042】
図5は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bの間にシート20を挟み込んで、抵抗測定用電源31によって一対の抵抗測定ローラ16a,16bに電圧を加えた状態を示す模式図である。
図5に示すように、用紙などのシート20は、一般に、抵抗成分とコンデンサ成分とによって成り立っている。このため、抵抗測定用電源31によって一対の抵抗測定ローラ16a,16bに電圧を加えると、上側の抵抗測定ローラ16aからはプラスの電荷、下側の抵抗測定ローラ16bからはマイナスの電荷が、それぞれシート20に与えられる。その結果、シート20には電荷が蓄積され、この状態でシート20が転写部27へと送り込まれると、上記の電荷の作用によってトナー画像の転写時に転写不良などの不具合が発生してしまう。
【0043】
そこで本出願人は、特願2020-030158号の明細書のなかで、以下の(1)および(2)の技術的事項を開示している。
(1)図6に示すように、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによるシートのニップ幅であるローラ幅W1と、一対の除電ローラ18a,18bによるシートのニップ幅であるローラ幅W2との関係を、W1=W2に設定する。
(2)図7に示すように、抵抗測定用の電圧V1を500Vに設定し、除電用の電圧V2をそれとは逆バイアスの500V、すなわち-500Vに設定する。
これにより、図7に示すように、除電後におけるシートの表面電位V3を実質的に0Vとすることができる。したがって、シート20の残留電荷を取り除き、転写部27で不具合が発生することを抑制できる。
【0044】
本発明者は、特願2020-030158号の明細書に記載された発明について、さらに検討を重ねた結果、次のような新たな課題が存在するという知見を得た。
まず、一対の抵抗測定ローラ16a,16bにおけるローラニップ部162のローラ幅W1と、一対の除電ローラ18a,18bにおけるローラニップ部182のローラ幅W2とを、厳密に同じ寸法となるように、各々のローラを加工することは難しい。このため、たとえば図8に示すように、除電ローラ18a,18bのローラ幅W2が抵抗測定ローラ16a,16bのローラ幅W1よりも短かった場合に、各々のローラニップ部162,182の一方の端を揃えて配置しても、他方の端の位置にずれαが生じる。その結果、図9に示すように、抵抗測定用の電圧V1と除電用の電圧V2との関係を、上記(2)で記述したように設定しても、除電後におけるシートの表面電位V3は、上記の位置ずれαに起因して局所的に500Vとなり、この500Vの残留電荷によって転写スジなどの転写不良が発生してしまう。転写スジとは、シート20にトナー画像を転写した際に、シート搬送方向Yに沿ってスジ状に現れる画像の濃淡部分である。転写スジは、シート20に高濃度のベタ画像を形成する場合に、シート搬送方向Yに沿う細長いスジ状の低濃度部分として現れる。
【0045】
一方で、抵抗測定ローラ16a,16bのローラ幅W1と除電ローラ18a,18bのローラ幅W2とが同じ寸法となるよう、各々のローラを加工できたとしても、図10に示すように、シート搬送方向Yと直交する方向において、各々のローラニップ部162,182の位置にずれβが生じる場合がある。この場合、図11に示すように、抵抗測定用の電圧V1と除電用の電圧V2との関係を、上記(2)で記述したように設定しても、除電後におけるシートの表面電位V3は、上記の位置ずれβに起因して局所的に500Vまたは-500Vとなり、この500Vまたは-500Vの残留電荷によって転写スジなどの転写不良が発生してしまう。
【0046】
そこで、本発明の実施形態においては、以下の(A)および(B)の要件を満たす構成を採用している。
(A)シート搬送方向Yと直交する方向において、除電部18による除電領域の幅が抵抗測定部16による荷電領域の幅よりも広い。
(B)除電用の電圧V2の絶対値が抵抗測定用の電圧V1の絶対値よりも小さい。
【0047】
荷電領域とは、シート20の抵抗を抵抗測定部16によって測定する場合に、抵抗測定部16によって電荷が蓄積される領域をいう。この荷電領域の幅は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによるシートのニップ幅、すなわちローラニップ部162のローラ幅W1によって規定される。これに対し、除電領域とは、シート20の電荷を除電部18によって取り除く場合に、除電部18によって除電される領域をいう。この除電領域の幅は、一対の除電ローラ18a,18bによるシートのニップ幅、すなわちローラニップ部182のローラ幅W2によって規定される。
【0048】
したがって、本発明の実施形態においては、図12に示すように、シート搬送方向Yと直交する方向において、一対の除電ローラ18a,18bによるシートのニップ幅に相当するローラ幅W2が、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによるシートのニップ幅に相当するローラ幅W1よりも広く設定されている。ローラ幅W2とローラ幅W1との大小関係は、各々のローラ16a,16b,18a,18bの加工寸法および取り付け寸法が、設計上許容される誤差(公差)をもってばらついても維持される。ローラ幅W2とローラ幅W1との差分は、少なくとも0mmより大であり、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上である。
【0049】
また、本発明の実施形態においては、好ましい一つの例(以下、「第1の形態例」という。)として、図13に示すように、抵抗測定用の電圧V1を500Vとし、除電用の電圧V2を-400Vとする。この場合、除電後におけるシートの表面電位は、100Vの部分と-400Vの部分に分かれる。具体的には、上記のローラ幅W1よりも内側の部分の表面電位V3aは100Vとなり、上記のローラ幅W1よりも外側でかつローラ幅W2よりも内側の部分の表面電位V3bは―400Vとなる。すなわち、除電後のシートには残留電荷が生じる。ただし、100Vの残留電荷は、転写不良が発生しない程度に小さい。また、-400Vの残留電荷は、上記図9に示す残留電荷(500V)よりも小さい。したがって、残留電荷による転写不良(転写スジなど)の発生を抑制することができる。
【0050】
また、本発明の実施形態においては、より好ましい例(以下、「第2の形態例」という。)として、除電用の電圧V2の絶対値を、抵抗測定用の電圧V1の絶対値の半分とする。具体的な数値例を挙げると、図14に示すように、抵抗測定用の電圧V1を500Vとし、除電用の電圧V2を-250Vとする。この場合、除電後におけるシートの表面電位は、250Vの部分と-250Vの部分に分かれる。具体的には、上記のローラ幅W1よりも内側の部分の表面電位V3aは250Vとなり、上記のローラ幅W1よりも外側でかつローラ幅W2よりも内側の部分の表面電位V3bは―250Vとなる。これにより、第2の形態例においては、除電後にシートに残留する電荷の絶対値が、第1の形態例に比べて小さくなる。したがって、残留電荷による転写不良(転写スジなど)の発生をより効果的に抑制することができる。また、第2の形態例においては、図14に示すように、転写部27で転写不良が発生する閾値電圧Vshが、抵抗測定用の電圧V1の絶対値と除電用の電圧V2の絶対値との差よりも大きい。具体的には、閾値電圧Vshが300Vであるのに対し、抵抗測定用の電圧V1の絶対値と除電用の電圧V2の絶対値との差が250Vとなっている。これにより、除電後にシートに残留する電荷を、転写部27での転写に影響のないレベルに抑えることができる。
【0051】
図15は、本発明の実施形態に係る除電ローラ18aの構成を説明する概略図である。
図15に示すように、除電ローラ18aは、ローラ軸部181とローラニップ部182とを有する。ローラニップ部182は、第1のローラ部分182aと第2のローラ部分182bとを有する。第1のローラ部分182aは、第1の電気抵抗を有する部分であり、第2のローラ部分182bは、第1の電気抵抗よりも高い第2の電気抵抗を有する部分である。第1のローラ部分182aの電気抵抗および第2のローラ部分182bの電気抵抗は、ローラの半径方向における、ローラの軸心とローラの外周面との間の電気抵抗である。
【0052】
第1のローラ部分182aは、ローラ軸部181の中心軸方向(以下、「ローラ中心軸方向」ともいう。)において、第2のローラ部分182bよりもローラニップ部182のローラ中心側に配置され、第2のローラ部分182bは、ローラ中心軸方向において、第1のローラ部分182aよりもローラニップ部182のローラ端側に配置されている。また、第2のローラ部分182bは、ローラニップ部182の両端部に配置されている。また、シート搬送方向Yと直交する方向であるローラ中心軸方向において、ローラ幅W1を有する抵抗測定ローラ16a,16bの両端位置Peは、除電ローラ18aにおける第2のローラ部分182bの領域内、より具体的には第2のローラ部分182bの中心位置に配置されている。
【0053】
以上述べた除電ローラ18aの構成は、除電ローラ18bに適用してもよい。ただし、本実施形態においては、図2に示すように、除電ローラ18aが除電用電源35のマイナス極に接続され、除電ローラ18bがグランドGNDに接地されている。このため、除電ローラ18bは、ローラ全幅にわたって電気抵抗が一様なローラによって構成されていてもよい。また、除電ローラ18bは、たとえば、除電ローラ18b全体が金属製のローラによって構成されていてもよい。
【0054】
除電ローラ18aの構成において、第1のローラ部分182aおよび第2のローラ部分182bを、互いに異なる電気抵抗を有する部分とするための具体的なローラ構造としては、たとえば図16または図17に示す構造が考えられる。
【0055】
図16において、ローラ軸部181は、大径軸部181aと小径軸部181bとを一体に有する。小径軸部181bは、大径軸部181aの両端からローラ中心軸方向の外側に向かって延在している。ローラニップ部182は、大径軸部181aと同じローラ幅を有する。ローラニップ部182は、大径軸部181aに固定されている。ローラニップ部182は、第1のローラ部分182aと第2のローラ部分182bとを一体に有する。第1のローラ部分182aおよび第2のローラ部分182bの各々は、ベースとなる絶縁性樹脂に導電性フィラーを混ぜた材料によって構成されている。第1のローラ部分182aにおける導電性フィラーの配合割合は、第2のローラ部分182bにおける導電性フィラーの配合割合よりも多い。このため、第1のローラ部分182aの電気抵抗は、第2のローラ部分182bの電気抵抗よりも低い。
【0056】
一方、図17において、ローラ軸部181は、大径軸部181aと小径軸部181bとを一体に有する。大径軸部181aは、ラジアルクラウン形状に形成されている。ラジアルクラウン形状とは、ローラ中心軸方向の中央部を頂点とし、そこからローラ中心軸方向の両端部に向かって緩やかな円弧状をなすローラ形状をいう。小径軸部181bは、大径軸部181aの両端からローラ中心軸方向の外側に向かって延在している。ローラニップ部182は、大径軸部181aと同じローラ幅を有する。ローラニップ部182は、大径軸部181aに固定されている。ローラニップ部182は、第1のローラ部分182aと第2のローラ部分182bとを一体に有する。ローラニップ部182の外径は、ローラ幅方向で一定である。ローラニップ部182の内径は、大径軸部181aの外周形状であるラジアルクラウン形状にしたがって連続的に変化している。このため、第1のローラ部分182aの外径は第2のローラ部分182bの外径と同一であるが、第1のローラ部分182aの内径は第2のローラ部分182bの内径よりも大きい。したがって、第1のローラ部分182aの電気抵抗は、第2のローラ部分182bの電気抵抗よりも低い。
【0057】
このように除電ローラ18aを構成することにより、図2に示すスイッチ36を閉じて、一対の除電ローラ18a,18bに除電用の電圧V2を印加した場合に、シート搬送方向Yと直交する方向における、除電用の電圧V2の分布形状が、図18のような谷型になる。具体的には、一例として、抵抗測定用の電圧V1を500V、除電用の電圧V2を第1のローラ部分182aの体積抵抗率に合わせて-500Vに設定した場合に、除電用の電圧V2の分布形状は、-500Vのレベルを谷底部分とし、この谷底部分の両端部が0Vのレベルに向かって斜めに立ち上がった形状になる。なお、本明細書において、電圧の分布形状は、電圧が0Vである場合を基準にして、正(プラス)の電圧を上側、負(マイナス)の電圧を下側にとった場合の形状によって定義される。
【0058】
上述のように除電用の電圧V2の分布形状を谷型とした場合は、この電圧分布形状を凹型(図9図11を参照)とする場合と比較して、除電後にシートに残留する電荷の絶対値が小さくなる。具体的には、図16に示すように、除電後におけるシートの表面電位V3a,V3bを、上述した閾値電圧Vshよりも小さいレベル、すなわち±250Vとすることが可能になる。したがって、除電後にシートに残留する電荷を、転写部27での転写に影響のないレベルに抑えることができる。
【0059】
なお、図16に示すローラ構造においては、ローラニップ部182を、第1のローラ部分182aと第2のローラ部分182bとに区分し、第1のローラ部分182aにおける導電性フィラーの配合割合を、第2のローラ部分182bにおける導電性フィラーの配合割合よりも多くしたが、本発明はこれに限らない。たとえば、図示はしないが、ローラニップ部182における導電性フィラーの配合割合を、ローラ中心軸方向の中央部からローラ端に向かって段階的にまたは連続的に少なくしたローラ構造を採用してもよい。
【0060】
<画像形成装置の動作>
続いて、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の動作につい説明する。
ここでは、画像形成装置1の動作の一例として、シート供給部23から供給されたシート20が、レジスト部14、抵抗測定部16および転写部27を順に通過するときの画像形成装置1の動作(制御方法)について説明する。
【0061】
図19は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の動作手順を示すフローチャートである。
まず、制御部50は、シート供給部23からシート搬送路10に送り出されたシート20の先端の通過をシート検知部30が検知したか否かを繰り返し確認する(ステップS1)。そして、制御部50は、シート20の先端の通過をシート検知部30が検知したと判断すると、所定のタイミングT0で一対のレジストローラの回転を開始させる(ステップS2)。所定のタイミングT0は、シート20の先端が一対のレジストローラのニップ部分に突き当たり、かつシート20が所定のループを形成するのに必要な時間と、ループ形成済みのシート20を転写部27に送り込むのに必要な時間と、中間転写ベルト25上のトナー画像が転写部27に到達するのに必要な時間とに基づいて設定される。なお、一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bは、それぞれ、一対のレジストローラと同じシート搬送速度でシート20を搬送するよう、たとえば一対のレジストローラと同時に回転を開始する。
【0062】
次に、制御部50は、上述した所定のタイミングT0から第1の時間が経過したか否かを判断する(ステップS3)。第1の時間は、所定のタイミングT0で一対のレジストローラが回転を開始してから、シート搬送路10においてシート20の先端が一対の除電ローラ18a,18bのニップ部分に到達するまでに要する時間を「T1(秒)」と定義すると、T1以上の条件で設定される時間である。
【0063】
次に、制御部50は、抵抗測定回路のスイッチ32(図2参照)を閉じることにより、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに抵抗測定用の電圧を印加する(ステップS4)。これにより、図20Aに示すように、一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bが同一のシート20を挟み込んでいるときに、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに対して抵抗測定用の電圧が印加される。
【0064】
また、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに抵抗測定用の電圧を印加すると、各々のローラニップ部162に接触するシート20には、上側の抵抗測定ローラ16aをプラス極、下側の抵抗測定ローラ16bをマイナス極とする電圧が印加される。そうすると、シート20には、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによって電荷が付与される。この電荷は、シート20が有するコンデンサ成分により、シート20の表面とシート20の内部とに蓄積される。本明細書においては、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに抵抗測定用の電圧を印加することによって、シート20に電荷が蓄積される領域を「荷電領域」と定義する。一対の抵抗測定ローラ16a,16bに抵抗測定用の電圧V1を印加すると、一対の抵抗測定ローラ16a,16bの間に挟み込まれたシート20には、シート20自身の抵抗に応じた電流が流れる。このとき、シート20を流れる電流の値は、電流計33から制御部50へと通知される。これにより、制御部50は、電流計33から通知される電流の値に基づいて、シート20の抵抗を測定する(ステップS5)。シート20の抵抗の求め方は、前述したとおりである。
【0065】
次に、制御部50は、上述した所定のタイミングT0から第2の時間が経過したか否かを判断する(ステップS6)。第2の時間は、前述した第1の時間よりも長い時間である。第2の時間は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに対して抵抗測定用の電圧の印加を開始してから、シート搬送路10においてシート20の荷電領域の先端が一対の除電ローラ18a,18bのニップ部分に到達するまでに要する時間を「T2(秒)」と定義すると、T2未満の条件で設定される時間である。
【0066】
次に、制御部50は、抵抗測定回路のスイッチ32を開くことにより、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに対する電圧の印加を停止する(ステップS7)。これにより、シート20には、図20Bに示すように、所定の大きさを有する荷電領域E1が形成される。荷電領域E1の大きさは、スイッチ32を開いてから閉じるまでのシート搬送距離と、抵抗測定ローラ16a,16bのローラ幅W1(図3参照)とによって決まる。また、スイッチ32を開いた後は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bの回転にしたがってシート20が搬送されることにより、図20Cおよび図21Aに示すように、荷電領域E1の位置が除電ローラ18a,18bに近づいていく。ここで、抵抗測定用の電圧の印加期間を「第1の電圧印加期間Tv1」と定義すると、この第1の電圧印加期間Tv1は、図22のように表すことができる。
【0067】
次に、制御部50は、除電回路のスイッチ36(図2参照)を閉じることにより、一対の除電ローラ18a,18bに除電用の電圧を印加する(ステップS8)。これにより、一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bが同一のシート20を挟み込んでいるときに、一対の除電ローラ18a,18bに対して除電用の電圧が印加される。除電用の電圧を印加するタイミングは、図20Dに示すように、荷電領域E1の先端が一対の除電ローラ18a,18bのニップ部分に到達するタイミングに合わせて設定される。換言すると、制御部50は、荷電領域E1の先端が一対の除電ローラ18a,18bのニップ部分に到達すると同時に、スイッチ36を閉じる。これにより、図20Eに示すように、一対の除電ローラ18a,18bの間を通過した荷電領域E1の一部が、除電領域E2に変化する。除電領域E2は、一対の除電ローラ18a,18bに除電用の電圧を印加することにより、電荷が取り除かれた領域である。なお、荷電領域E1の先端とは、シート搬送方向Yの下流側に位置する荷電領域E1の端をいう。
【0068】
ここで、制御部50は、第2の電圧印加部(除電用電源35およびスイッチ36)による除電用の電圧の印加タイミングを、第1の電圧印加部(抵抗測定用電源31およびスイッチ32)による抵抗測定用の電圧の印加タイミングとシートの搬送速度とに基づいて決定する。具体的には、制御部50は、除電用の電圧の印加タイミングを次のように決定する。
【0069】
まず、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに対して抵抗測定用の電圧の印加を開始するタイミングをT11、一対の除電ローラ18a,18bに対して除電用の電圧の印加を開始するタイミングをT12とし、タイミングT12とタイミングT11との時間差をΔT(秒)とする。また、図23に示すように、シート搬送方向Yにおける抵抗測定ローラ16a,16bと除電ローラ18a,18bとの間のローラ軸間距離をLj(mm)、シート20の搬送速度をVs(mm/秒)とする。そうした場合、制御部50は、以下の(1)式によってΔTを演算する。
ΔT=Lj/Vs …(1)
【0070】
また、制御部50は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bに対して抵抗測定用の電圧の印加を開始したタイミングT11からΔTの時間が経過したタイミングで、一対の除電ローラ18a,18bに除電用の電圧V2の印加を開始するよう、抵抗測定回路のスイッチ32の開閉タイミングと除電回路のスイッチ36の開閉タイミングとを制御する。これにより、荷電領域E1の先端が一対の除電ローラ18a,18bのニップ部分に到達すると同時に、一対の除電ローラ18a,18bによる除電を開始することができる。このため、荷電領域E1の先端側に残留電荷を残すことなく、シート20を除電することができる。
【0071】
次に、制御部50は、スイッチ36を閉じてから所定の時間T4が経過したタイミングで、スイッチ36を開くことにより、一対の除電ローラ18a,18bに対する電圧の印加を停止する(ステップS9)。所定の時間T4は、スイッチ32を閉じてから開くまでの時間と同じ時間に設定される。したがって、除電用の電圧の印加期間を「第2の電圧印加期間Tv2」と定義すると、この第2の電圧印加期間Tv2は、図22のように表すことができる。図22に示すように、制御部50は、第1の電圧印加期間Tv1と第2の電圧印加期間Tv2とが、同じ長さの期間となるように、スイッチ32,36の開閉タイミングを制御する。これにより、シート20の同じ領域を対象に、抵抗測定用の電圧を印加し、かつ除電用の電圧を印加することができる。また、制御部50は、抵抗測定用の電圧の印加タイミングと除電用の電圧の印加タイミングとが重ならないように、スイッチ32,36の開閉タイミングを制御する。これにより、抵抗測定ローラ16a,16bと除電ローラ18a,18bとの間で放電が起こることを抑制できる。また、シート20の荷電領域E1が一対の除電ローラ18a,18bによって挟み込まれている期間のみ、一対の除電ローラ18a,18Bに対して除電用の電圧、すなわち抵抗測定用の電圧とは逆バイアスの電圧が印加される。このため、除電用の電圧の印加によってシート20に電荷を蓄積させることなく、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによってシート20に蓄積された電荷を、一対の除電ローラ18a,18bによって取り除くことができる。したがって、荷電領域E1の後端が一対の除電ローラ18a,18bのニップ部分に到達した段階では、図20Fに示すように、シート20の荷電領域E1の全領域が、除電領域E2に変換される。また、スイッチ36を開いた後は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bの回転にしたがってシート20が搬送されることにより、図20Gおよび図21Bに示すように、除電領域E2の位置が除電ローラ18a,18bから離れていく。なお、荷電領域E1の後端とは、シート搬送方向Yの上流側に位置する荷電領域E1の端をいう。
【0072】
ちなみに、従来においては、グランドに接地された除電ブラシをシート20の表面に接触させてシート20の電荷を取り除く除電方式が知られている。この除電方式では、シート20の表面に存在する電荷をある程度取り除くことができるが、シート20の内部に存在する電荷を取り除くことができない。すなわち、従来の除電方式では、一対の抵抗測定ローラ16a,16bへの電圧の印加によってシート20の内部に蓄積された電荷を取り除くことができない。これに対し、本実施形態においては、抵抗測定用の電圧とは逆バイアスの電圧を一対の除電ローラ18a,18bに印加するため、シート20の表面に存在する電荷だけでなく、シート20の内部に存在する電荷をも取り除くことができる。
【0073】
次に、制御部50は、転写回路のスイッチ38(図2参照)を閉じることにより、一対の転写ローラ27a,27bに転写用の電圧を印加する(ステップS10)。これにより、一対の転写ローラ27a,27bの間をシート20が通過する場合に、中間転写ベルト25上のトナー画像が、中間転写ベルト25からシート20へと転写される。
【0074】
次に、制御部50は、スイッチ38を閉じてから所定の時間T5が経過したタイミングで、スイッチ38を開くことにより、一対の転写ローラ27a,27bに対する電圧の印加を停止する(ステップS11)。所定の時間T5は、一対の転写ローラ27a,27bの間をシート20の後端が通過してからスイッチ38が開くように設定するとよい。
【0075】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置1においては、転写部27と抵抗測定部16との間に除電部18が配置されている。このため、一対の除電ローラ18a,18bの間にシート20を挟み込み、その状態のもとで、除電用電源35により一対の除電ローラ18a,18bに除電用の電圧を印加することにより、シート20に蓄積されている電荷を除去できる。したがって、シート20の抵抗測定にともなって転写部27で不具合が発生することを抑制できる。
【0076】
また、本実施形態の画像形成装置1においては、一対の除電ローラ18a,18bによる除電領域E2の幅(W2)が、一対の抵抗測定ローラ16a,16bによる荷電領域E1の幅(W1)よりも広く、かつ、除電用の電圧V2の絶対値が抵抗測定用の電圧V1の絶対値よりも小さい構成を採用している。これにより、各々のローラ16a,16b,18a,18bの加工寸法や取り付け寸法に誤差があっても、除電後におけるシート20の残留電荷を低減し、残留電荷による転写不良の発生を抑制することができる。
【0077】
<変形例等>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。たとえば、上述した実施形態では、本発明の内容を理解しやすいように詳細に説明しているが、本発明は、上述した実施形態で説明したすべての構成を必ずしも備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、これを削除し、または他の構成を追加し、あるいは他の構成に置換することも可能である。
【0078】
また、上記実施形態においては、抵抗測定部16および除電部18を、レジスト部14よりもシート搬送方向Yの下流側に配置したが、本発明はこれに限らない。たとえば、抵抗測定部16および除電部18を、レジスト部14よりもシート搬送方向Yの上流側に配置することも可能である。また、シート搬送方向Yにおいて、抵抗測定部16をレジスト部14の上流側に配置し、除電部18をレジスト部14の下流側に配置することも可能である。
【0079】
また、上記実施形態においては、1枚のシート20につき、シート20の抵抗測定を1回だけ行う場合について説明したが、本発明はこれに限らず、図24に示すように、1枚のシート20につき、抵抗測定を複数回行うように、制御部50がスイッチ32,36の開閉タイミングを制御する構成を採用してもよい。1枚のシート20につき、シート20の抵抗測定を複数回行えば、1枚のシート20に対して、より広範囲に抵抗測定を実施できる。よって、シート搬送方向Yにおけるシート20の抵抗分布を把握することが可能となる。また、各回の抵抗測定は、一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bが同一のシート20を挟み込んでいるときに行うことが好ましい。一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bが同一のシート20を挟み込んでいるときに、一対の抵抗測定ローラ16a,16bおよび一対の除電ローラ18a,18bに交互に電圧を印加することにより、表面抵抗の外乱を考慮することなく、抵抗測定と除電とを行うことができる。
【0080】
また、上記実施形態においては、抵抗測定用の電圧と除電用の電圧とを互いに逆バイアスの電圧とするために、抵抗測定用電源31のプラス極を上側の抵抗測定ローラ16aに接続し、除電用電源35のマイナス極を上側の除電ローラ18aに接続する例を示したが、本発明はこれに限らない。以下に、抵抗測定回路および除電回路における他の接続例について、図25A図25Gを用いて説明する。
【0081】
図25Aに示す接続例は、抵抗測定用電源31のプラス極を上側の抵抗測定ローラ16aに接続し、除電用電源35のプラス極を下側の除電ローラ18bに接続した例である。
図25Bに示す接続例は、抵抗測定用電源31のプラス極を下側の抵抗測定ローラ16bに接続し、除電用電源35のプラス極を上側の除電ローラ18aに接続した例である。
図25Cに示す接続例は、抵抗測定用電源31のプラス極を下側の抵抗測定ローラ16bに接続し、除電用電源35のマイナス極を下側の除電ローラ18bに接続した例である。
図25Dに示す接続例は、抵抗測定用電源31のマイナス極を上側の抵抗測定ローラ16aに接続し、除電用電源35のプラス極を上側の除電ローラ18aに接続した例である。
図25Eに示す接続例は、抵抗測定用電源31のマイナス極を上側の抵抗測定ローラ16aに接続し、除電用電源35のマイナス極を下側の除電ローラ18bに接続した例である。
図25Fに示す接続例は、抵抗測定用電源31のマイナス極を下側の抵抗測定ローラ16bに接続し、除電用電源35のマイナス極を上側の除電ローラ18aに接続した例である。
図25Gに示す接続例は、抵抗測定用電源31のマイナス極を下側の抵抗測定ローラ16bに接続し、除電用電源35のプラス極を下側の除電ローラ18bに接続した例である。
このような接続例を採用した場合でも、抗測定用の電圧と除電用の電圧とを互いに逆バイアスの電圧とすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1…画像形成装置、16a,16b…抵抗測定ローラ(抵抗測定部材)、18a,18b…除電ローラ(除電部材)、20…シート、27…転写部、31…抵抗測定用電源(第1の電圧印加部)、32…スイッチ(第1の電圧印加部)、35…除電用電源(第2の電圧印加部)、36…スイッチ(第2の電圧印加部)、50…制御部(電圧制御部)、E1…荷電領域、E2…除電領域、Y…シート搬送方向、V1…抵抗測定用の電圧、V2…除電用の電圧、W1…ローラ幅(ニップ幅)、W2…ローラ幅(ニップ幅)
図1
図2
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