(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ロボットアームの制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/16 20060101AFI20240305BHJP
B65B 5/08 20060101ALI20240305BHJP
B65B 35/18 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B25J9/16
B65B5/08
B65B35/18
(21)【出願番号】P 2020091361
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】都築 博
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-040149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0066627(US,A1)
【文献】国際公開第2019/206924(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/125627(WO,A1)
【文献】特開平02-083186(JP,A)
【文献】特開2008-132991(JP,A)
【文献】特開2019-181620(JP,A)
【文献】Lillian Chin,etc,Automated Recycling Separation Enabled by Soft Robotic Material Classification,2019 2nd IEEE Iternational Conference on Soft Robotics,米国,IEEE,2019年04月18日,pp. 102-107
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B65B 5/00-5/12
B65B 35/16-35/18
B65B 35/36-35/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の側面である内壁を覆うように不定形の接触防止部材が設けられた容器にワークを整列状態で投入するロボットアームを制御するロボットアームの制御装置であって、
前記容器における前記ワークの投入位置を設定する位置設定部と、
前記ワークを前記位置設定部により設定された前記投入位置に配置するように前記ロボットアームの動作を制御する動作制御部と、
を備え、
前記動作制御部は、前記位置設定部により設定された前記投入位置が少なくとも1つの前記内壁に隣接する位置である場合、前記ロボットアームの先端を前記容器の高さ方向に沿って下降させる動作を行うときには前記投入位置に隣接する前記内壁から前記容器の前記高さ方向に直交する横方向へ所定の安全距離だけ離れた位置までの安全領域に前記ワークが侵入することがないように前記ロボットアームの動作を制御するロボットアームの制御装置。
【請求項2】
前記動作制御部は、前記位置設定部により設定された前記投入位置が少なくとも1つの前記内壁に隣接する位置である場合、前記投入位置の真上の位置に対し前記ワークが前記安全領域に侵入しないように前記容器の横方向へオフセットされたオフセット位置に前記ワークを移動させる第1動作を行い、前記第1動作の後に前記ワークを真下に向けて下降させる第2動作を行い、前記第2動作により前記ワークが所定の高さ位置に達した後に前記ワークを前記投入位置に向けて移動させる第3動作を行うように、前記ロボットアームの動作を制御する請求項1に記載のロボットアームの制御装置。
【請求項3】
前記動作制御部は、前記位置設定部により設定された前記投入位置が2つの前記内壁に隣接する位置である場合、前記投入位置に隣接する2つの前記内壁の双方から前記容器の前記横方向へ前記安全距離だけ離れた位置までの領域を前記安全領域とする請求項1または2に記載のロボットアームの制御装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記位置設定部により設定された前記投入位置が少なくとも1つの前記内壁に隣接する位置である場合、前記ワークが前記投入位置に配置された後には、前記ロボットアームの先端が前記投入位置から前記容器の前記高さ方向に沿って上昇するように、前記ロボットアームの動作を制御する請求項2または3に記載のロボットアームの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産現場において、ワークをコンベアなどの搬送装置により搬送することで工場内の生産ラインに流通させ、ロボットアームによりワークを把持して取り出して所定の作業を行うものがある。このような生産ラインでは、特許文献1に開示されているように、ワークをロボットアームで取り出して矩形状の容器に整列状態で投入を行う、といった工程が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような工程において、ワークが例えば冷凍された食品などの場合、衛生面の配慮が必要になる。また、冷凍された食品などは、その表面に水滴が生じる可能性があることから、容器が段ボール箱などの水分に弱いものである場合、ワークと段ボール箱が直接接触すると、段ボール箱が水分を含んで破れるなどの問題が生じるおそれがある。そこで、このような問題の発生を防止するため、段ボール箱の内側部分、つまり内壁を覆うように、ビニール袋などの接触防止部材が設けられる。この場合、ビニール袋は、段ボール箱の上部において外側に折り返されることにより簡易的に固定されるだけであり、接着などによる確実な固定はされないことが多い。
【0005】
上記構成において、ワークを目標とする投入位置へと搬送する際、ロボットアームの動作としては、投入位置の上方にワークを位置させた後、真っすぐに下降させることでワークを投入位置へと移動させる、といった動作が一般的である。このような動作の際、ワークの投入位置が段ボール箱の端部に近い位置となる場合にはビニール袋が不定形であるため、ワークがビニール袋に接触するおそれがある。ワークがビニール袋に接触すると、ワークが落下して搬送が失敗するといった問題、ビニール袋が段ボール箱から外れるといった問題などが生じ、その結果、作業のやり直しなどの手間が生じる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークを容器に投入する際に容器の内壁に取り付けられた接触防止部材とワークとの接触を回避することができるロボットアームの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のロボットアームの制御装置は、容器にワークを整列状態で投入するロボットアームを制御する装置であり、位置設定部および動作制御部を備える。この場合、容器には、その内部の側面である内壁を覆うように不定形の接触防止部材が設けられる。位置設定部は、容器におけるワークの投入位置を設定する。動作制御部は、ワークを位置設定部により設定された投入位置に配置するようにロボットアームの動作を制御する。
【0008】
上記構成において、ワークの投入位置が容器の内壁に隣接する位置である場合、従来技術の課題として説明したように、接触防止部材が不定形であるが故、その接触防止部材にワークが接触するおそれがある。そこで、動作制御部は、位置設定部により設定された投入位置が少なくとも1つの内壁に隣接する位置である場合、ロボットアームの先端を容器の高さ方向に沿って下降させる動作を行うときには安全領域にワークが侵入することがないようにロボットアームの動作を制御する。
【0009】
上記した安全領域は、投入位置に隣接する内壁から容器の高さ方向に直交する横方向へ所定の安全距離だけ離れた位置までの領域である。この場合、安全距離は、接触防止部材の形状の変化のばらつきなどを考慮したうえで、ロボットアームの先端を下降させる動作が行われる際に接触防止部材がワークに干渉しないような安全領域が確保できる程度の距離に設定するとよい。このようにすれば、ワークの投入位置が容器の内壁に隣接する位置であっても、ロボットアームの先端を下降させる動作が行われる際にワークが接触防止部材に接触する可能性を低く抑えることができる。つまり、上記構成によれば、ワークを容器に投入する際に容器の内壁に取り付けられた接触防止部材とワークとの接触を回避することができ、その結果、ワークが落下して運搬が失敗するといった問題、接触防止部材が容器から外れるといった問題などの発生を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載のロボットアームの制御装置において、動作制御部は、位置設定部により設定された投入位置が少なくとも1つの内壁に隣接する位置である場合、第1動作、第2動作および第3動作を行うように、ロボットアームの動作を制御する。第1動作は、投入位置の真上の位置に対しワークが安全領域に侵入しないように容器の横方向へオフセットされたオフセット位置にワークを移動させる動作である。第2動作は、第1動作の後にワークを真下に向けて下降させる動作である。第3動作は、第2動作によりワークが所定の高さ位置に達した後にワークを投入位置に向けて移動させる動作である。
【0011】
このようにすれば、ロボットアームの先端を下降させる動作となる第2動作が行われる際、ワークの安全領域への侵入を確実に防止することが可能となり、ひいてはワークと接触防止部材との接触を確実に回避することができる。なお、第3動作では、ロボットアームの先端は、容器の横方向に沿うように平行移動または斜め下方向に移動することになる。これにより、第3動作では、ワークが安全領域に侵入することになるが、このときワークは、容器の内部から内壁に向けて接触防止部材に幅寄せしながら投入位置へと移動することになるため、ワークが落下したり、接触防止部材が容器から外れたりする、といった問題が生じることはない。
【0012】
投入位置が容器の角に対応する位置であるとき、その投入位置は2つの内壁に隣接することになる。投入位置が2つの内壁に隣接するということは、その投入位置にワークを配置する際、2つの内壁のそれぞれを覆う接触防止部材とワークとの接触をいずれも回避しなければならない。そこで、請求項3に記載のロボットアームの制御装置において、動作制御部は、位置設定部により設定された投入位置が2つの内壁に隣接する位置である場合、投入位置に隣接する2つの内壁の双方から容器の横方向へ安全距離だけ離れた位置までの領域を安全領域とする。このようにすれば、ワークの投入位置が容器の角に対応する位置であっても、ワークを容器に投入する際に接触防止部材とワークとの接触を回避することができる。
【0013】
請求項4に記載のロボットアームの制御装置において、動作制御部は、位置設定部により設定された投入位置が少なくとも1つの内壁に隣接する位置である場合、ワークが投入位置に配置された後には、ロボットアームの先端が投入位置から容器の高さ方向に沿って上昇するように、ロボットアームの動作を制御する。この場合、ロボットアームの先端が安全領域に侵入した状態で上昇することになるが、ワークが配置された後であることから、接触防止部材とワークとの接触を考慮する必要がない。そのため、このようにすれば、ワークが配置された後におけるロボットアームの動作時間が短く抑えられ、その結果、ワークを配置する作業全体のサイクルタイムを短く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る生産システムの構成を模式的に示す図
【
図2】一実施形態に係る容器におけるワークの投入位置を説明するための図
【
図3】一実施形態に係る動作制御部によるロボットアームの動作制御の具体的な内容を説明するための図その1
【
図4】一実施形態に係る動作制御部によるロボットアームの動作制御の具体的な内容を説明するための図その2
【
図5】一実施形態に係る動作制御部によるロボットアームの動作制御の具体的な内容を説明するための図その3
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ロボットアームの制御装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の生産システム1では、ワーク2をベルトコンベア装置であるコンベア3により搬送することで工場内の生産ラインに流通させるようになっている。生産システム1には、
図1に示すような工程、つまりワーク2がコンベア3により搬送されてくると、そのワーク2をロボットアーム4で取り出して容器5に整列状態で投入する工程、つまりコンベア3から容器5への移し変え工程が含まれる。
【0016】
コンベア3は、搬送装置に相当するものであり、基本的には、停止することなく動作し続けるようになっている。この場合、ワーク2は、例えば冷凍された食品であり、結露などによってその表面に水滴などの水分が生じる可能性がある。ワーク2は、コンベア3により一定の速度且つ一定の間隔で連続して搬送される。なお、
図1では、一部のワークにだけ符号を付し、他のワークの符号は省略している。
【0017】
ロボットアーム4は、ワーク2の搬送を行うものであり、例えば4軸のアームを有する水平多関節型ロボットとして構成されている。この場合、容器5は、例えば段ボール箱などの矩形状の容器であり、水分が付着すると、ふやけて変形したり、破れたりする可能性がある。また、冷凍された食品であるワーク2については、衛生面の配慮が必要となる。そこで、容器5には、その内部、具体的には、内部の側面である内壁5aおよび底面5bを覆うように、接触防止部材6が取り付けられている。接触防止部材6は、例えばビニール袋などであり、その形状が一定ではなく変化する不定形のもとなっている。
【0018】
この場合、接触防止部材6は、容器5に対して接着などにより確実に固定されるのではなく、容器5の上部においてその上端部が外側に向けて折り返されることによって簡易的に固定されている。そして、全てのワーク2が容器5に投入された後、接触防止部材6の上端部が内側に向けて折り返され、これにより、ワーク2の上部も接触防止部材6により覆われることになる。
【0019】
ロボットアーム4および容器5は、それぞれ作業台7、8上に配置されている。作業台7、8の各高さは、ロボットアーム4の先端を容器5の上方から底面まで移動することができるような高さに設定されている。ロボットアーム4の先端にはハンド9が取り付けられている。ハンド9は、複数の吸着機構9aを備えており、それら吸着機構によりワーク2を吸着して保持することができる構成となっている。ロボットアーム4は、アームを旋回させて先端をコンベア3の上方に位置させた後、そのアーム先端に取り付けられたハンド9を下降させ、ハンド9に取り付けられた吸着機構9aでワーク2を吸着して引き上げる。
【0020】
そして、ロボットアーム4は、アームを旋回させて先端を容器5の上方に位置させた後、ハンド9を下降させるなどの動作を行い、その後、ハンド9からワーク2を離して容器5の所定の投入位置に配置する。なお、ハンド9からワーク2を離すという作業は、吸着機構9aによる吸着状態を解除することで行われる。ロボットアーム4は、このようなワーク2に対する一連の作業、つまりコンベア3により搬送されるワーク2を取り出してから容器5に投入するという作業を繰り返し実行する。
【0021】
ロボットアーム4は、
図2に示すコントローラ10により制御される。コントローラ10は、ロボットアームの制御装置に相当するものであり、図示しないCPU、ROMおよびRAMなどで構成されたコンピュータからなる制御手段においてコンピュータプログラムを実行することで、ロボットアーム4を制御している。具体的には、コントローラ10は、インバータ回路などから構成された駆動部を備えており、ロボットアーム4の各軸を駆動するモータに対応して設けられているエンコーダで検知したモータの回転位置に基づいて例えばフィードバック制御によりそれぞれのモータを駆動する。コントローラ10は、予め設定された動作プログラムを実行することにより、ロボットアーム4の各軸が予め定められた所定の動作を自動的に実行するようにロボットアーム4を制御する。
【0022】
コントローラ10は、位置設定部11および動作制御部12などの機能ブロックを備えている。これら各機能ブロックは、コントローラ10が備えるCPUがROMなどに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、各機能ブロックのうち少なくとも一部をハードウェアにより実現する構成としてもよい。
【0023】
位置設定部11は、容器5におけるワーク2の投入位置を設定する。動作制御部12は、ワーク2をコンベア3上の所定の取り出し位置にて取り出すとともに、その取り出したワーク2を位置設定部11により設定された投入位置に配置するようにロボットアーム4の動作を制御する。この場合、コンベア3は
図2における左右方向に延びており、ワーク2は
図2における左から右へと搬送されるようになっている。つまり、この場合、ワーク2の搬送方向は、
図2に白抜きの矢印で示す方向となる。
【0024】
ここで、
図2における左右方向および上下方向は、容器5の高さ方向に直交する方向であり、容器5の横方向に相当する。
図2における容器5は、上方から見た平面図として表されている。本実施形態では、容器5により多くのワーク2を投入するため、容器5の内壁5aに隣接する部位である端部にまでワーク2が配置されるようになっている。具体的には、容器5には、その平面方向において左右方向に4つおよび上下方向に5つの配列となるように、合計20個のワーク2が配置されるようになっている。そして、この場合、ワーク2は、容器5の高さ方向に複数段積み重ねて配置することができるようになっている。
【0025】
上記したように、本実施形態では、ワーク2を容器5の端部に配置する必要があるため、ワーク2を保持するハンド9としては、吸着型のものが用いられるようになっている。なぜなら、ハンド9として両側から挟み込む形態のものを用いた場合、ワーク2の横方向の寸法よりもハンド9の横方向の可動範囲を広く取らざるを得なくなり、ワーク2を容器5の内壁5aに隣接する端部にまで配置することが困難となるからである。
【0026】
ワーク2の投入位置P1~P20は、3つのグループに分けることができる。すなわち、投入位置P6、P7、P10、P11、P14、P15は、容器5の内壁5aに隣接しない投入位置であり、これらを第1グループの投入位置と称する。また、投入位置P2、P3、P5、P8、P9、P12、P13、P16、P18、P19は、容器5の1つの内壁5aに隣接する投入位置であり、これらを第2グループの投入位置と称する。また、投入位置P1、P4、P17、P20は、容器5の2つの内壁5aに隣接する投入位置であり、これらを第3グループの投入位置と称する。
【0027】
動作制御部12は、位置設定部11により設定された投入位置が少なくとも1つの内壁5aに隣接する位置である場合、つまり第2グループまたは第3グループの投入位置が設定された場合、ロボットアーム4の先端を容器5の高さ方向に沿って下降させる動作を行うときには安全領域にワーク2が侵入することがないようにロボットアーム4の動作を制御する。上記安全領域は、投入位置に隣接する内壁5aから容器5の横方向へ所定の安全距離だけ離れた位置までの領域である。この場合、安全距離は、接触防止部材6の形状の変化のばらつきなどを考慮したうえで、ロボットアーム4の先端を下降させる動作が行われる際に接触防止部材6がワーク2に干渉しないような安全領域が確保できる程度の距離に設定されている。
【0028】
また、動作制御部12は、位置設定部11により設定された投入位置が2つの内壁5aに隣接する位置である場合、つまり第3グループの投入位置が設定された場合、投入位置に隣接する2つの内壁5aの双方から容器5の横方向へ安全距離だけ離れた位置までの領域を安全領域とするようになっている。さらに、動作制御部12は、位置設定部11により設定された投入位置が内壁5aに隣接しない位置である場合、つまり第1グループの投入位置が設定された場合、ロボットアーム4の先端を容器5の高さ方向に沿って下降させる動作を行うとき、上記した安全領域を考慮することなく、ロボットアーム4の動作を制御する。
【0029】
つまり、動作制御部12は、位置設定部11により設定された投入位置が第1グループの投入位置である場合、従来技術と同様にロボットアーム4の動作を制御する。また、動作制御部12は、位置設定部11により設定された投入位置が少なくとも1つの内壁5aに隣接する位置である場合、つまり第2グループまたは第3グループの投入位置が設定された場合、ワーク2が投入位置に配置された後には、ロボットアーム4の先端が投入位置から容器5の高さ方向に沿って上昇するように、ロボットアーム4の動作を制御する。
【0030】
このように、本実施形態では、第2グループまたは第3グループの投入位置が設定された場合における動作制御部12によるロボットアーム4の動作制御の内容に特徴を有している。以下、このような動作制御部12によるロボットアーム4の動作の制御の具体的な内容について
図3~
図5を参照して説明する。なお、ここでは、第2グループの投入位置が設定された場合を例に制御内容を説明するが、第3グループの投入位置が設定された場合の制御内容も同様のものとなる。
【0031】
動作制御部12は、コンベア3により搬送されるワーク2をハンド9により吸着して引き上げる動作を行う。その後、動作制御部12は、投入位置の真上の位置に対しワーク2が安全領域に侵入しないように容器5の横方向へオフセットされたオフセット位置にワーク2を移動させる第1動作を行う。このような第1動作により、
図3に示すように、ワーク2は、投入位置の真上の位置ではなく、安全領域に侵入しないように内壁5aから離れる方向にオフセットされたオフセット位置に到達する。なお、
図3などでは、安全領域をハッチングにより示すとともに、安全距離は符号Laを付して示している。
【0032】
動作制御部12は、第1動作の後、ワーク2を真下に向けて下降させる第2動作を行う。このような第2動作により、
図4に示すように、ワーク2は、オフセット位置から真っすぐに下降して所定の高さ位置に到達する。この場合、所定の高さ位置は、現時点において投入済みとなっている最上段のワーク2の上端部に対して所定のマージン高さだけ上方の位置に設定される。所定のマージン高さは、例えばワーク2の高さ寸法の半分程度の高さとすることができる。なお、所定の高さ位置は、全てのワーク2を投入した際の最上段のワーク2の上端部に対して所定のマージン高さだけ上方の位置に設定することもできる。
【0033】
動作制御部12は、第2動作によりワーク2が所定の高さ位置に達した後、ワークを投入位置に向けて移動させる第3動作を行う。第3動作では、ロボットアーム4の先端は、容器5の横方向に沿うように斜め下方向に移動することになる。なお、第3動作としては、現時点において投入済みとなっているワーク2が存在しない場合などには、容器5の横方向に沿うように平行移動するようにしてもよい。
【0034】
このような第3動作により、
図5に示すように、ワーク2は、
図4に示した位置から内壁5aに向けて接触防止部材6に幅寄せしながら移動して投入位置に到達する。その後、動作制御部12は、ハンド9からワーク2を離してワーク2の投入位置への配置を完了する。ワーク2が投入位置に配置された後、動作制御部12は、ロボットアーム4の先端が投入位置から容器5の高さ方向に沿って真上に上昇するように、ロボットアーム4の動作を制御する。
【0035】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態のコントローラ10は、容器5にワーク2を整列状態で投入するロボットアーム4を制御する装置であり、位置設定部11および動作制御部12を備える。この場合、容器5は、例えば段ボール箱であり、且つ、その内壁5aを覆うように例えばビニール袋である接触防止部材6が設けられる。位置設定部11は、容器5におけるワーク2の投入位置を設定する。動作制御部12は、ワーク2を位置設定部11により設定された投入位置に配置するようにロボットアーム4の動作を制御する。
【0036】
上記構成において、ワーク2の投入位置が容器5の内壁5aに隣接する位置である場合、接触防止部材6が不定形であるが故、その接触防止部材6にワーク2が接触するおそれがある。そこで、動作制御部12は、1つの内壁5aに隣接する第2グループの投入位置または2つの内壁5aに隣接する第3グループの投入位置が設定された場合、ロボットアーム4の先端を容器5の高さ方向に沿って下降させる動作を行うときには安全領域にワーク2が侵入することがないようにロボットアーム4の動作を制御する。
【0037】
上記した安全領域は、投入位置に隣接する内壁5aから容器5の横方向へ所定の安全距離Laだけ離れた位置までの領域である。この場合、安全距離Laは、接触防止部材6の形状の変化のばらつきなどを考慮したうえで、ロボットアーム4の先端を下降させる動作が行われる際に接触防止部材6がワーク2に干渉しないような安全領域が確保できる程度の距離に設定されている。
【0038】
このようにすれば、ワーク2の投入位置が容器5の内壁5aに隣接する位置であっても、ロボットアーム4の先端を下降させる動作が行われる際にワーク2が接触防止部材6に接触する可能性を低く抑えることができる。したがって、本実施形態によれば、ワーク2を容器5に投入する際に容器5の内壁5aに取り付けられた接触防止部材6とワーク2との接触を回避することができ、その結果、ワーク2が落下して運搬が失敗するといった問題、接触防止部材6が容器5から外れるといった問題などの発生を防止することができる。
【0039】
この場合、安全距離Laを比較的長い距離に設定すれば、ワーク2と接触防止部材6が接触する可能性をより低く抑えられるが、ロボットアーム4の動作時間、つまりワーク2を容器5に配置する作業工程のサイクルタイムの長期化を招くおそれがある。これに対し、安全距離Laを比較的短い距離に設定すれば、上記サイクルタイムの長期化を抑制できるが、ワーク2と接触防止部材6が接触する可能性を十分に低く抑えられない可能性がある。
【0040】
そこで、本実施形態では、これらをうまく両立できる程度に、適切な安全距離Laを設定するようにしている。このような安全距離Laの設定値は、一般的な統計学に基づいて予め算出することができる。すなわち、安全距離Laは、例えばビニール袋である接触防止部材6が容器5内部へせり出す量のばらつきなどを予め調査しておき、そのばらつき、つまり標準偏差に対して安全係数を乗算するなどして算出することができる。
【0041】
動作制御部12は、第2グループの投入位置または第3グループの投入位置が設定された場合、第1動作、第2動作および第3動作を行うように、ロボットアーム4の動作を制御する。第1動作は、投入位置の真上の位置に対しワーク2が安全領域に侵入しないように容器5の横方向へオフセットされたオフセット位置にワーク2を移動させる動作である。第2動作は、第1動作の後にワーク2を真下に向けて下降させる動作である。第3動作は、第2動作によりワーク2が所定の高さ位置に達した後にワーク2を投入位置に向けて移動させる動作である。
【0042】
このようにすれば、ロボットアーム4の先端を下降させる動作となる第2動作が行われる際、ワーク2の安全領域への侵入を確実に防止することが可能となり、ひいてはワーク2と接触防止部材6との接触を確実に回避することができる。なお、第3動作では、ロボットアーム4の先端は、容器5の横方向に沿うように平行移動または斜め下方向に移動することになる。これにより、第3動作では、ワーク2が安全領域に侵入することになるが、このときワーク2は、容器5の内部から内壁5aに向けて接触防止部材6に幅寄せしながら投入位置へと移動することになるため、ワーク2が落下したり、接触防止部材6が容器5から外れたりする、といった問題が生じることはない。
【0043】
投入位置が容器5の角に対応する位置である場合、つまり第3グループの投入位置P1、P4、P17、P20が設定された場合、その投入位置は2つの内壁5aに隣接することになる。投入位置が2つの内壁5aに隣接するということは、その投入位置にワーク2を配置する際、2つの内壁5aのそれぞれを覆う接触防止部材6とワーク2との接触をいずれも回避しなければならない。
【0044】
そこで、動作制御部12は、第3グループの投入位置が設定された場合、投入位置に隣接する2つの内壁5aの双方から容器5の横方向へ安全距離Laだけ離れた位置までの領域を安全領域とする。このようにすれば、ワーク2の投入位置が容器5の角に対応する位置であっても、ワーク2を容器5に投入する際に接触防止部材6とワーク2との接触を回避することができる。
【0045】
動作制御部12は、第2グループの投入位置または第3グループの投入位置が設定された場合、ワーク2が投入位置に配置された後には、ロボットアーム4の先端が投入位置から容器5の高さ方向に沿って上昇するように、ロボットアーム4の動作を制御する。この場合、ロボットアーム4の先端が安全領域に侵入した状態で上昇することになるが、ワーク2が配置された後であることから、接触防止部材6とワーク2との接触を考慮する必要がない。
【0046】
そのため、このようにすれば、ワーク2が配置された後におけるロボットアーム4の動作時間が短く抑えられ、その結果、ワーク2を配置する作業全体のサイクルタイムを短く抑えることができる。なお、本実施形態では、このような動作が行われる際、ロボットアーム4のハンド9が接触防止部材6と接触するおそれもない。この理由は、次の通りである。すなわち、
図3に示すように、ハンド9の水平方向の寸法Lbは、ワーク2の水平方向の寸法Lcよりも小さくなっている。そのため、ロボットアーム4の先端が投入位置から真上に移動したとしても、ハンド9が接触防止部材6に接触する可能性は極めて低いものとなる。
【0047】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0048】
接触防止部材6としては、形状が変化する可能性があるもの、つまり不定形のものであればよく、例えば気泡緩衝材であってもよい。
位置設定部11による投入位置の具体的な設定および動作制御部12によるロボットアーム4の動作制御の具体的な内容に関しては、上記した効果が得られる範囲であれば適宜変更することができる。
【0049】
本発明は、生産システム1に適用されるロボットアーム4のコントローラ10に限らず、矩形状であり且つ内部の側面である内壁を覆うように不定形の接触防止部材が設けられた容器にワークを整列状態で投入するロボットアームを制御するロボットアームの制御装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
2…ワーク、3…コンベア、4…ロボットアーム、5…容器、10…コントローラ、11…位置設定部、12…動作制御部。