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特許7447680超音波診断装置、超音波診断装置の制御プログラム、及び、超音波診断装置の制御方法
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  • 特許-超音波診断装置、超音波診断装置の制御プログラム、及び、超音波診断装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】超音波診断装置、超音波診断装置の制御プログラム、及び、超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020096137
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021186375
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智仁
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216880(JP,A)
【文献】特開2018-129738(JP,A)
【文献】特開2017-067765(JP,A)
【文献】特開2015-100539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する送受信部と、
前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する信号処理部と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成するフレーム平均化処理部と、
を備える超音波診断装置であって、
前記フレーム平均化処理部は、
前記信号処理部から、狭帯域フィルタを用いて生成された狭帯域画像データ、及び、広帯域フィルタを用いて生成された広帯域画像データを取得する取得部と、
第1比率で、前記第一のフレームデータの前記広帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記広帯域画像データとを重み付け加算して第1合成画像データを生成すると共に、第2比率で前記第一のフレームデータの前記狭帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記狭帯域画像データとを重み付け加算して第2合成画像データを生成し、前記第1合成画像データと前記第2合成画像データとに基づいて、前記出力フレームデータを生成する合成処理部と、
を有し、
前記第2比率における前記第一のフレームデータの重みは、前記第1比率における前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置。
【請求項2】
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する送受信部と、
前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する信号処理部と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成するフレーム平均化処理部と、
を備える超音波診断装置であって、
前記フレーム平均化処理部は、
前記信号処理部から、狭帯域フィルタを用いて生成された狭帯域画像データ、及び、広帯域フィルタを用いて生成された広帯域画像データを取得する取得部と、
前記広帯域画像データから前記狭帯域画像データを減算することで、差分画像データを生成する分離処理部と、
第1比率で、前記第一のフレームデータの前記差分画像データと前記第二のフレームデータの前記差分画像データとを重み付け加算して第1合成画像データを生成すると共に、第2比率で前記第一のフレームデータの前記狭帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記狭帯域画像データとを重み付け加算して第2合成画像データを生成し、前記第1合成画像データと前記第2合成画像データとに基づいて、前記出力フレームデータを生成する合成処理部と、
を有し、
前記第2比率における前記第一のフレームデータの重みは、前記第1比率における前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置。
【請求項3】
前記第二のフレームデータは、一時前に前記フレーム平均化処理部により生成された出力フレームデータである、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記第二のフレームデータは、一時前に前記信号処理部により生成されたフレームデータである、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
コンピュータに、
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する第1処理と、
信号処理部にて、前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する第2処理と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成する第3処理と、
を実行させる超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記第3処理は、
前記信号処理部から、狭帯域フィルタを用いて生成された狭帯域画像データ、及び、広帯域フィルタを用いて生成された広帯域画像データを取得する処理と、
第1比率で、前記第一のフレームデータの前記広帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記広帯域画像データとを重み付け加算して第1合成画像データを生成すると共に、第2比率で前記第一のフレームデータの前記狭帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記狭帯域画像データとを重み付け加算して第2合成画像データを生成し、前記第1合成画像データと前記第2合成画像データとに基づいて、前記出力フレームデータを生成する処理と、
を有し、
前記第2比率における前記第一のフレームデータの重みは、前記第1比率における前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する第1処理と、
信号処理部にて、前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する第2処理と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成する第3処理と、
を実行させる超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記第3処理は、
前記信号処理部から、狭帯域フィルタを用いて生成された狭帯域画像データ、及び、広帯域フィルタを用いて生成された広帯域画像データを取得する処理と、
前記広帯域画像データから前記狭帯域画像データを減算することで、差分画像データを生成する処理と、
第1比率で、前記第一のフレームデータの前記差分画像データと前記第二のフレームデータの前記差分画像データとを重み付け加算して第1合成画像データを生成すると共に、第2比率で前記第一のフレームデータの前記狭帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記狭帯域画像データとを重み付け加算して第2合成画像データを生成し、前記第1合成画像データと前記第2合成画像データとに基づいて、前記出力フレームデータを生成する処理と、
を有し、
前記第2比率における前記第一のフレームデータの重みは、前記第1比率における前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項7】
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する第1処理と、
信号処理部にて、前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する第2処理と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成する第3処理と、
を備える超音波診断装置の制御方法であって、
前記第3処理は、
前記信号処理部から、狭帯域フィルタを用いて生成された狭帯域画像データ、及び、広帯域フィルタを用いて生成された広帯域画像データを取得する処理と、
第1比率で、前記第一のフレームデータの前記広帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記広帯域画像データとを重み付け加算して第1合成画像データを生成すると共に、第2比率で前記第一のフレームデータの前記狭帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記狭帯域画像データとを重み付け加算して第2合成画像データを生成し、前記第1合成画像データと前記第2合成画像データとに基づいて、前記出力フレームデータを生成する処理と、
を有し、
前記第2比率における前記第一のフレームデータの重みは、前記第1比率における前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置の制御方法。
【請求項8】
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する第1処理と、
信号処理部にて、前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する第2処理と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成する第3処理と、
を備える超音波診断装置の制御方法であって、
前記第3処理は、
前記信号処理部から、狭帯域フィルタを用いて生成された狭帯域画像データ、及び、広帯域フィルタを用いて生成された広帯域画像データを取得する処理と、
前記広帯域画像データから前記狭帯域画像データを減算することで、差分画像データを生成する処理と、
第1比率で、前記第一のフレームデータの前記差分画像データと前記第二のフレームデータの前記差分画像データとを重み付け加算して第1合成画像データを生成すると共に、第2比率で前記第一のフレームデータの前記狭帯域画像データと前記第二のフレームデータの前記狭帯域画像データとを重み付け加算して第2合成画像データを生成し、前記第1合成画像データと前記第2合成画像データとに基づいて、前記出力フレームデータを生成する処理と、
を有し、
前記第2比率における前記第一のフレームデータの重みは、前記第1比率における前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置、超音波診断装置の制御プログラム、及び、超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブを用いて、被検体内の組織部を撮像する超音波診断装置が知られている。
【0003】
この種の超音波診断装置においては、被検体表面に超音波プローブを接触させ、この超音波プローブより発生した超音波ビームを被検体内に入射し、その反射波を受波することにより、その深さ方向での反射係数の分布を測定するもので、超音波ビームにて、被検体内をその断層面に沿った方向に、例えば扇型にスキャンすることによってその断層面での2次元画像(以下、「超音波画像」と称する)を得る。そして、超音波診断装置では、通常、このスキャンを繰り返し、超音波画像をつぎつぎにリアルタイムで得る。
【0004】
従来、この種の超音波診断装置においては、超音波プローブから取得した受信信号に基づいて生成された超音波画像内に発生するノイズ(例えば、電子回路の熱雑音、及び、被検体内での散乱、多重反射又は残響等に起因する音響ノイズ)を低減するため、当該超音波画像に対して、例えば、以下の式(1)のようにフレーム平均化処理を行って、表示出力することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
Qn=α×Do+(1-α)×Dn …式(1)
【0005】
式(1)において、Qnはフレーム平均化処理によって出力されるフレームデータ、Dnは現在入力された新フレームデータ(即ち、超音波プローブから取得した受信信号に基づいて生成された超音波画像)、Doは1フレーム前に表示出力された旧フレームデータ(即ち、1フレーム前にフレーム平均化処理によって生成されたフレームデータ)である。又、αは重み係数であって、0<α≦1の範囲の値を持つ値である。動きが速い画像を追従性良好に観察したい場合になどでは、α=0としてフレーム平均化処理を行わないようにし、逆に動きのあまりない画像で、ノイズを十分に減少させたい場合には重み係数αを大きくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-220138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなフレーム平均化処理では、ノイズ除去と動きのある組織構造物に対する追従性とはトレードオフの関係になるという基本的な問題がある。ノイズを効果的に除去するためには重み係数αを大きくすればよいが、そうすると以前のフレーム画像がより含まれるようになるため、動きのある領域はボケた画像として表示出力され、動きのある組織構造物に対する追従性が悪化してしまう。逆にボケが少なくなるように重み係数αを小さくすれば、今度はノイズを効果的に除去することができない。
【0008】
かかる観点から、例えば、特許文献1には、旧フレームデータと新フレームデータとの差をピクセル毎に求め、ピクセル毎に異なる重み係数αを設定した上で、フレーム平均化処理を実行することが記載されている。この特許文献1に係る従来技術によれば、動きがある組織構造物に対しては、重み係数αを小さく設定することができるため、追従性確保に一定程度の効果を得ることが可能である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術においては、組織構造物が動いた際、当該組織構造物上に重畳しているノイズについては低減しきれない、という課題がある。特に、特許文献1に係る従来技術においては、膜組織や血管壁等の高輝度部上に重畳しているノイズが残留し、超音波画像内でちらついて見えることになる。
【0010】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、超音波画像を出力する際、ノイズを効果的に除去しつつ、動きのある組織構造物に対する追従性を向上し得る超音波診断装置、超音波診断装置の制御プログラム、及び、超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する送受信部と、
前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する信号処理部と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成するフレーム平均化処理部と、
を備える超音波診断装置であって、
前記フレーム平均化処理部は、空間周波数帯域毎に異なる重み付けが行われるように、前記第一のフレームデータと、前記第二のフレームデータと、を重み付け加算し、
前記フレーム平均化処理部において、空間周波数が低い組織構造に対して設定される前記第一のフレームデータの重みは、空間周波数が高い組織構造に対して設定される前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置である。
【0012】
又、他の局面では、
コンピュータに、
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する第1処理と、
前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する第2処理と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成する第3処理と、
を実行させる超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記第3処理では、空間周波数帯域毎に異なる重み付けが行われるように、前記第一のフレームデータと、前記第二のフレームデータと、を重み付け加算し、
前記第3処理において、空間周波数が低い組織構造に対して設定される前記第一のフレームデータの重みは、空間周波数が高い組織構造に対して設定される前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置の制御プログラムである。
【0013】
又、他の局面では、
超音波プローブから、超音波エコーに係る受信信号を受信する第1処理と、
前記受信信号に基づいて、超音波画像を構成するフレームデータを生成する第2処理と、
前記信号処理部により生成された第一のフレームデータと、前記第一のフレームデータよりも前の時刻に生成された第二のフレームデータと、を重み付け加算することにより、出力フレームデータを生成する第3処理と、
を備える超音波診断装置の制御方法であって、
前記第3処理では、空間周波数帯域毎に異なる重み付けが行われるように、前記第一のフレームデータと、前記第二のフレームデータと、を重み付け加算し、
前記第3処理において、空間周波数が低い組織構造に対して設定される前記第一のフレームデータの重みは、空間周波数が高い組織構造に対して設定される前記第一のフレームデータの重みよりも大きい、
超音波診断装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る超音波診断装置によれば、超音波画像を出力する際、ノイズを効果的に除去しつつ、動きのある組織構造物に対する追従性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図
図2】第1の実施形態に係るフレーム平均化処理部の構成を示す図
図3】第1の実施形態に係るフレーム平均化処理部の動作を示すフローチャート
図4】第2の実施形態に係るフレーム平均化処理部の構成を示す図
図5】第3の実施形態に係るフレーム平均化処理部の構成を示す図
図6】第3の実施形態に係る信号処理部において、広帯域フィルタが抽出する超音波画像内の周波数帯域、及び狭帯域フィルタが抽出する超音波画像内の周波数帯域を示す図
図7】第4の実施形態に係るフレーム平均化処理部の構成を示す図
図8】第5の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(第1の実施形態)
[超音波診断装置の構成]
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。超音波診断装置は、上記したように、被検体内の形状、性状又は動態を超音波画像として可視化し、画像診断するために用いられる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置Aの構成を示す図である。
【0019】
超音波診断装置Aは、超音波プローブ1、送受信部2、信号処理部3、フレーム平均化処理部4、フレームメモリ5、及び、表示器6を備えている。
【0020】
超音波プローブ1は、超音波ビーム(ここでは、1~30MHz程度)を被検体(例えば、人体)内に対して送信するとともに、送信した超音波ビームのうち被検体内で反射された超音波エコーを受信して電気信号に変換する音響センサーとして機能する。尚、超音波プローブ1は、典型的には、ケーブルを介して、送受信部2、信号処理部3、フレーム平均化処理部4、フレームメモリ5、及び、表示器6を搭載する超音波診断装置Aの本体部と接続されている。そして、超音波検査時には、超音波プローブ1は、ユーザに把持され、超音波プローブ1の送受信面が被検体に接触させられた状態で、超音波の送受信を行う。
【0021】
超音波プローブ1は、例えば、マトリクス状に配設された複数の振動子(例えば、圧電素子)と、当該複数の振動子の駆動状態のオンオフを個別に又はブロック単位(即ち、チャンネル単位)で切替制御するためのチャンネル切替部(例えば、マルチプレクサ)を含んで構成される。超音波プローブ1の各振動子は、送信器2aで発生された電圧パルスを超音波ビームに変換して被検体内へ送信し、被検体内で反射した超音波エコーを受信して電気信号(以下、「受信信号」と称する)に変換し、受信器2bへ出力する。そして、超音波プローブ1の駆動対象の振動子が、走査方向に沿って順に切り替えられることにより、被検体内の超音波走査が実行される。
【0022】
送受信部2は、超音波プローブ1の各振動子に対して、超音波の送受信を行わせる駆動回路であり、送信器2aと受信器2bとを含む。
【0023】
送信器2aは、超音波プローブ1に対して駆動信号たる電圧パルスを送出する送信器である。送信器2aは、例えば、高周波パルス発振器、及びパルス設定部等を含んで構成される。送信器2aは、高周波パルス発振器で生成した電圧パルスを、パルス設定部で設定した電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングに調整して、超音波プローブ1に送出する。
【0024】
受信器2bは、超音波プローブ1で生成された超音波エコーに係る受信信号を受信処理する受信器である。受信器2bは、プリアンプ、AD変換部、及び受信ビームフォーマーを含んで構成される。受信器2bは、チャンネル毎に設けられたプリアンプ及びAD変換部にて、チャンネル毎に、微弱な超音波エコーに係る受信信号を増幅し、当該受信信号を、デジタル信号に変換する。そして、受信器2bは、受信ビームフォーマーにて、各チャンネルの受信信号を整相加算することで複数チャンネルの受信信号を1つにまとめて、音響線データとする。
【0025】
尚、送受信部2は、超音波プローブ1に対して、被検体内の超音波走査を繰り返し実行させ、超音波画像を構成するフレームデータを連続的に生成させる。
【0026】
信号処理部3は、送受信部2から受信信号を取得して、被検体内の超音波画像を順次生成する。信号処理部3は、例えば、超音波プローブ1が深度方向に向けてパルス状の超音波ビームを送信した際に、その後に検出される超音波エコーの信号強度を順次ラインメモリに蓄積する。そして、信号処理部3は、超音波プローブ1が被検体内を超音波走査するに応じて、各走査位置での超音波エコーの信号強度をラインメモリに順次蓄積し、超音波画像を構成するフレームデータを生成する。そして、信号処理部3は、被検体の内部の各位置で検出される超音波エコーの信号強度を輝度値に変換することによって、超音波画像を生成する。
【0027】
尚、信号処理部3は、AD変換部、ゲイン調整部、直交検波部、フィルタ処理部、Log圧縮処理部、ダイナミックレンジ調整処理部、及び、エンハンス処理部等を有していてもよい。
【0028】
フレーム平均化処理部4は、一時刻前(一フレーム前を表す。以下同じ)に表示出力された超音波画像に係るフレームデータ(以下、「旧フレームデータDo」とも称する)(本発明の「第二のフレームデータ」に相当)と、現在時刻に信号処理部3で生成された超音波画像に係るフレームデータ(以下、「新フレームデータDn」とも称する)(本発明の「第一のフレームデータ」に相当)と、を重み付け加算することにより、次の時刻で表示出力する対象の超音波画像に係るフレームデータ(以下、「出力フレームデータQn」とも称する)を生成し、フレームメモリ5に格納する。ここで、旧フレームデータDoは、一時刻前にフレーム平均化処理部4に生成され、フレームメモリ5に記憶されたフレームデータ(即ち、一時刻前の出力フレームデータQn)である。尚、フレーム平均化処理部4の処理の詳細は、後述する。
【0029】
フレームメモリ5は、フレーム平均化処理部4から出力される次の時刻で表示出力する対象の1フレーム分のフレームデータを格納する。フレームメモリ5に格納されるフレームデータは、フレーム平均化処理部4が旧フレームデータDoと新フレームデータDnとの重み付け加算を行う処理の度に読み出されると共に、当該処理によって生成されたフレームデータに更新される。
【0030】
尚、フレームメモリ5には、フレーム平均化処理部4の演算処理のための参考情報として、出力フレームデータQnに加えて、出力フレームデータQnを生成する際に生成された第1合成画像データQn1と第2合成画像データQn2が記憶されてもよい(図2を参照して後述)。
【0031】
表示器6は、フレームメモリ5に格納されたフレームデータを表示するディスプレイであって、例えば、液晶ディスプレイにて構成される。
【0032】
[フレーム平均化処理部の詳細構成]
図2は、本実施形態に係るフレーム平均化処理部4の構成を示す図である。
【0033】
フレーム平均化処理部4は、超音波画像に映る組織構造の空間周波数帯域毎に異なる重み付けが行われるように、旧フレームデータDoと、新フレームデータDnと、を重み付け加算する。この際、フレーム平均化処理部4において、空間周波数が低い組織構造に対して設定される新フレームデータDnの重みは、空間周波数が高い組織構造に対して設定される新フレームデータDnの重みよりも大きく設定される。つまり、フレーム平均化処理部4においては、おおまなか組織構造(例えば、組織毎の輪郭)の重み付け加算をする際の新フレームデータDnの重みが、微細な組織構造(例えば、結合組織の構造)の重み付け加算をする際の新フレームデータDnの重みよりも大きくなるように、設定される。
【0034】
かかる手法は、超音波画像の動画内で、組織毎の動きをボケなくダイナミックに表現する(即ち、組織毎の動きの追従性を良好にする)上では、おおまなか組織構造情報(例えば、組織毎の輪郭)だけでも十分であり、高周波領域においては、ノイズ除去を優先させた方が、ユーザにとっての視認性が向上する、という本願の発明者らの新たな知見に依拠する。
【0035】
フレーム平均化処理部4が重み付けを異ならせる基準となる空間周波数は、ノイズ除去の抑制度合いと追従性を犠牲にする微細な組織構造のサイズとのバランスを考慮して適宜設定されればよい。
【0036】
フレーム平均化処理部4は、合成処理部4a、及び分離処理部4bを含んで構成される。
【0037】
分離処理部4bは、信号処理部3に生成されたフレームデータを、超音波画像に映る組織構造の高周波成分がカットされた粗構造画像データ、及び、超音波画像に映る組織構造の高周波成分を含む微細構造画像データに分離する。分離処理部4bは、例えば、信号処理部3に生成されたフレームデータに対して、平滑化処理を施すことにより、粗構造画像データを生成し、当該フレームデータ(即ち、元画像)から粗構造画像データを減算することにより、微細構造画像データを生成する。
【0038】
分離処理部4bは、本実施形態では、信号処理部3から取得した新フレームデータDn、及びフレームメモリ5から取得した旧フレームデータDoそれぞれに対して、上記の分離処理を施す構成となっている。
【0039】
具体的には、分離処理部4bは、信号処理部3から新フレームデータDnを取得し、信号処理部3にて新フレームデータDnが生成される毎に、当該新フレームデータDnに基づいて、超音波画像に映る組織構造の高周波成分をカットした粗構造画像データ(以下、「第1粗構造画像データ」と称する)Dn2と、超音波画像に映る組織構造の高周波成分を含む微細構造画像データ(以下、「第1微細構造画像データ」と称する)Dn1と、を生成する。又、分離処理部4bは、例えば、フレームメモリ5から旧フレームデータDoを読み出して、当該旧フレームデータDoに基づいて、超音波画像に映る組織構造の高周波成分をカットした粗構造画像データ(以下、「第2粗構造画像データ」と称する)Do2と、超音波画像に映る組織構造の高周波成分を含む微細構造画像データ(以下、「第2微細構造画像データ」と称する)Do1と、を生成する。
【0040】
尚、画像に対して平滑化処理を施すことは、画像に対してローパスフィルタ処理を施して、元画像の低周波数成分のみを抽出することと同義である。又、元画像から平滑化処理後の画像を減算する処理は、元画像の高周波数成分のみを抽出することと同義である。
【0041】
分離処理部4bにおける平滑化処理の手法は、公知の任意の手法であってよいが、好ましくは、エッジ保存フィルタ(例えば、バイラテラルフィルタ)を用いた平滑化処理とする。非線形拡散フィルタを用いることで、平滑化処理後の画像(即ち、第1粗構造画像データDn2及び第2粗構造画像データDo2)において、組織構造の輪郭を表すエッジ部分を保存することが可能である。これによって、画像合成後の出力フレームデータにおいて、動きのある組織構造物の輪郭を鮮明に表現することができ、動きのある組織構造物に対する追従性をより良好にすることが可能である。
【0042】
尚、本実施形態では、第2微細構造画像データDo1及び第2粗構造画像データDo2は、分離処理部4bにて旧フレームデータDoから生成する構成としているが、より好ましくは、第2微細構造画像データDo1及び第2粗構造画像データDo2は、一時刻前の出力フレームデータQnを算出する際に生成された第1合成画像データQn1及び第2合成画像データQn2がそのまま用いられる構成とする。これによって、第2微細構造画像データDo1及び第2粗構造画像データDo2を別途生成するための分離処理部4bの処理は不要となり、演算処理を削減することが可能である。この場合、フレームメモリ5に、フレーム平均化処理部4に生成された次の時刻で表示出力する対象のフレームデータに加えて、フレーム平均化処理部4が当該フレームデータを算出する際に生成した第1合成画像データQn1及び第2合成画像データQn2を格納する構成とすればよい。
【0043】
合成処理部4aは、第1粗構造画像データDn2及び第1微細構造画像データDn1を取得すると共に、第2粗構造画像データDo2及び第2微細構造画像データDo1を取得する。そして、合成処理部4aは、第1比率で第1微細構造画像データDn1と第2微細構造画像データDo1とを重み付け加算して第1合成画像データQn1を生成すると共に、第2比率で第1粗構造画像データDn2と第2粗構造画像データDo2とを重み付け加算して第2合成画像データQn2を生成する。そして、合成処理部4aは、第1合成画像データQn1と第2合成画像データQn2とを加算することで、出力フレームデータQnを生成し、当該出力フレームデータQnをフレームメモリ5に格納する。
【0044】
具体的には、合成処理部4aは、以下の式(2)のように、第1微細構造画像データDn1の各画素の画素値に重み係数(1-α1)を乗じると共に、第2微細構造画像データDo1の各画素の画素値に重み係数α1を乗じ、両者の画素位置を対応させて、これらを加算することにより、第1合成画像データQn1を生成する。
Qn1=Do1×α1+Dn1×(1-α1) …式(2)
(但し、Qn1:第1合成画像データ、Dn1:第1微細構造画像データ、Do1:第2微細構造画像データ、α1:重み係数)
【0045】
又、合成処理部4aは、以下の式(3)のように、第1粗構造画像データDn2の各画素の画素値に重み係数(1-α2)を乗じると共に、第2粗構造画像データDo2の各画素の画素値に重み係数α2を乗じ、両者の画素位置を対応させて、これらを加算することにより、第2合成画像データQn2を生成する。
Qn2=Do2×α2+Dn2×(1-α2) …式(3)
(但し、Qn2:第2合成画像データ、Dn2:第1粗構造画像データDn2、Do2:第2粗構造画像データDo2、α2:重み係数)
【0046】
但し、合成処理部4aにおいては、第2比率における第1粗構造画像データDn2の重み(即ち、新フレームデータDnのおおまなか組織構造に対する重み)が、第1比率における第1微細構造画像データDn1の重み(即ち、新フレームデータDnの微細な組織構造に対する重み)よりも大きくなるように、設定される。即ち、式(2)、式(3)においては、重み係数α1の方が、重み係数α2よりも大きく設定される(α1>α2)。尚、重み係数α1は、例えば、0.6以上且つ1未満の値に設定され、重み係数α2は、例えば、0よりも大きく、0.4以下の値に設定される。
【0047】
次に、合成処理部4aは、以下の式(4)のように、第1合成画像データQn1と第2合成画像データQn2とを、両者の画素位置を対応させて加算することで、出力フレームデータQnを生成する。
Qn=Qn1+Qn2 …式(4)
(但し、Qn:出力フレームデータ、Qn1:第1合成画像データ、Qn2:第2合成画像データ)
【0048】
尚、合成処理部4aは、第1合成画像データQn1と第2合成画像データQn2とを加算する際、いずれか一方の重みが大きくなるように設定してもよい。
【0049】
図3は、本実施形態に係るフレーム平均化処理部4の動作を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、例えば、フレーム平均化処理部4がコンピュータプログラムに従って、信号処理部3にて超音波画像のフレームデータが生成される毎に繰り返し実行する処理である。
【0050】
まず、フレーム平均化処理部4は、信号処理部3から新フレームデータDnを取得する(ステップS1)。次に、フレーム平均化処理部4は、新フレームデータDnから、第1粗構造画像データDn2と第1微細構造画像データDn1とを生成する(ステップS2)。次に、フレーム平均化処理部4は、旧フレームデータDoから、第2微細構造画像データDo1と第2粗構造画像データDo2とを生成する(ステップS3)。次に、フレーム平均化処理部4は、第1微細構造画像データDn1と第2微細構造画像データDo1とを重み付け加算して、第1合成画像データQn1を生成する(ステップS4)。次に、フレーム平均化処理部4は、第1粗構造画像データDn2と第2粗構造画像データDo2とを重み付け加算して、第2合成画像データQn2を生成する(ステップS5)。次に、フレーム平均化処理部4は、第1合成画像データQn1と第2合成画像データQn2とを加算して、出力フレームデータQnを生成する(ステップS6)。
【0051】
フレーム平均化処理部4は、以上のような処理を信号処理部3が超音波画像を生成する度に、繰り返し実行し、表示器6に表示出力させる出力フレームデータQnを順次生成する。
【0052】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4では、空間周波数が低い組織構造情報(即ち、おおまなか組織構造情報)と、空間周波数が高い組織構造情報(即ち、微細な組織構造情報)と、を分離して、超音波画像に映る組織構造の空間周波数帯域毎に異なる重み付けが行われるように、旧フレームデータDoと、新フレームデータDnと、を重み付け加算する。この際、空間周波数が低い組織構造に対して設定される新フレームデータDnの重みが、空間周波数が高い組織構造に対して設定される新フレームデータDnの重みよりも大きくなるように、設定される。
【0053】
これによって、超音波画像を表示出力する際、組織毎の動きの追従性を良好にしながら、当該組織上に重畳しているノイズも抑制することが可能である。
【0054】
特に、本実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4では、超音波画像を、おおまなか組織構造情報(即ち、第1粗構造画像データDn2、第2粗構造画像データDo2)と微細な組織構造情報(即ち、第1微細構造画像データDn1、第2微細構造画像データDo1)とに分離する処理を、平滑化処理及び減算処理のみで実現している。そのため、本実施形態に係る超音波診断装置Aは、高速演算及び低負荷演算が可能である点でも有用である。
【0055】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4の構成を示す図である。
【0056】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4(分離処理部4c)は、超音波画像を、おおまなか組織構造情報と微細な組織構造情報とに分離する処理を、多重解像度分解処理で実現する点で、第1の実施形態に係るフレーム平均化処理部4と相違する。尚、第1の実施形態と共通する構成については、説明を省略する(以下、他の実施形態についても同様)。
【0057】
多重解像度分解処理は、入力画像から、段階的に解像度を低下させた複数の解像度画像を形成する処理であり、本実施形態では、多重解像度分解処理の一例として、ウェーブレット分解を用いている。多重解像度分解処理は、超音波画像に含まれる空間周波素成分を多階層に分離することにより、より細かな処理が可能となる点で、第1の実施形態の分離手法よりも好適である。尚、このウェーブレット分解の処理自体は、公知の手法と同様である(例えば、特開2015-203952号公報を参照)。
【0058】
但し、多重解像度分解処理は、ウェーブレット分解に代えて、ラプラシアン・ピラミッド法、又はダウンサンプリング処理等により実現されてもよい。
【0059】
本実施形態に係る分離処理部4cは、新フレームデータDnに対して、多重解像度分解処理を施すことにより、段階的に解像度を低下させた複数の解像度の画像データを生成する。又、分離処理部4cは、旧フレームデータDoに対して、多重解像度分解処理を施すことにより、段階的に解像度を低下させた複数の解像度の画像データを生成する。そして、合成処理部4aは、新フレームデータDnから生成された複数の解像度の画像データと、旧フレームデータDoから生成された複数の解像度の画像データと、を解像度毎に合成すると共に、これらを再構成して、出力フレームデータQnを生成する。
【0060】
尚、本実施形態においては、新フレームデータDnから生成された複数の解像度の画像データが、本発明の「第1粗構造画像データ」及び「第1微細構造画像データ」に相当し、旧フレームデータDoから生成された複数の解像度の画像データが、本発明の「第2粗構造画像データ」及び「第2微細構造画像データ」に相当する。
【0061】
具体的には、分離処理部4cは、新フレームデータDnに対して、ウェーブレット分解を施すことで、空間低周波帯域成分として、水平方向及び垂直方向で低周波の1階低周波成分画像データLL(1)と、水平方向低周波及び垂直方向高周波の1階高周波成分画像データLH(1)と、水平方向高周波及び垂直方向低周波の1階高周波成分画像データHL(1)と、水平方向及び垂直方向で高周波の1階高周波成分画像データHH(1)と、を生成する(以下、「新フレームデータDnの1階空間ウェーブレット分解により生成された画像データDn3」と称する)。
【0062】
続いて、分離処理部4cは、上記の1階低周波成分の画像データLL(1)に対し、更なるウェーブレット分解を施し、水平方向及び垂直方向で低周波の2階低周波成分の画像データLL(2)、水平方向低周波及び垂直方向高周波の2階高周波成分の画像データLH(2)、水平方向高周波及び垂直方向低周波の2階高周波成分の画像データHL(2)、水平方向及び垂直方向で高周波の2階高周波成分の画像データHH(2)を生成する(以下、「新フレームデータDnの2階空間ウェーブレット分解により生成された画像データDn4」と称する)。
【0063】
更に、分離処理部4cは、上記の2階低周波成分の画像データLL(2)に対し更なるウェーブレット分解を施し、水平方向及び垂直方向で低周波の3階低周波成分の画像データLL(3)、及び、水平方向低周波及び垂直方向高周波の3階高周波成分の画像データLH(3)、水平方向高周波及び垂直方向低周波の3階高周波成分の画像データHL(3)、及び、水平方向及び垂直方向で高周波の3階高周波成分の画像データHH(3)を生成する(以下、「新フレームデータDnの3階空間ウェーブレット分解により生成された画像データDn5」と称する)。
【0064】
同様に、分離処理部4cは、旧フレームデータDoに対して、ウェーブレット分解を施すことで、空間低周波帯域成分として、水平方向及び垂直方向で低周波の1階低周波成分の画像データLL(1)、水平方向低周波及び垂直方向高周波の1階高周波成分の画像データLH(1)、水平方向高周波及び垂直方向低周波の1階高周波成分の画像データHL(1)、水平方向及び垂直方向で高周波の1階高周波成分の画像データHH(1)を生成する(以下、「旧フレームデータDoの1階空間ウェーブレット分解により生成された画像データDo3」と称する)。
【0065】
続いて、分離処理部4cは、上記の1階低周波成分の画像データLL(1)に対し、更なるウェーブレット分解を施し、水平方向及び垂直方向で低周波の2階低周波成分の画像データLL(2)、水平方向低周波及び垂直方向高周波の2階高周波成分の画像データLH(2)、水平方向高周波及び垂直方向低周波の2階高周波成分の画像データHL(2)、水平方向及び垂直方向で高周波の2階高周波成分の画像データHH(2)を生成する(以下、「旧フレームデータDoの2階空間ウェーブレット分解により生成された画像データDo4」と称する)。
【0066】
更に、分離処理部4cは、上記の2階低周波成分の画像データLL(2)に対し更なるウェーブレット分解を施し、水平方向及び垂直方向で低周波の3階低周波成分の画像データLL(3)、及び、水平方向低周波及び垂直方向高周波の3階高周波成分の画像データLH(3)、水平方向高周波及び垂直方向低周波の3階高周波成分の画像データHL(3)、及び、水平方向及び垂直方向で高周波の3階高周波成分の画像データHH(3)を生成する(以下、「旧フレームデータDoの3階空間ウェーブレット分解により生成された画像データDo5」と称する)。
【0067】
尚、ウェーブレット分解を用いた多重解像度分解処理では、画像データのウェーブレット分解が行われる毎に、画像データの空間周波数は、低下することになる。
【0068】
合成処理部4aは、旧フレームデータDoと新フレームデータDnとを、以下の式(5)、式(6)、式(7)のように、階層毎に重み付け加算する。尚、この際、合成処理部4aは、水平方向及び垂直方向で低周波の画像データ、水平方向低周波及び垂直方向高周波の画像データ、水平方向高周波及び垂直方向低周波の画像データ、及び、水平方向及び垂直方向で高周波の画像データの各画像データで、画素位置を対応させて当該加算処理を行う。
Qn3=Do3×α3+Dn3×(1-α3) …式(5)
(但し、Qn3:1階層目の合成画像データ、Do3:旧フレームデータDoの1階空間ウェーブレット分解により生成された画像データ、Dn3:新フレームデータDnの1階空間ウェーブレット分解により生成された画像データ、α3:重み係数)
Qn4=Do4×α4+Dn4×(1-α4) …式(6)
(但し、Qn4:2階層目の合成画像データ、Do4:旧フレームデータDoの2階空間ウェーブレット分解により生成された画像データ、Dn4:新フレームデータDnの2階空間ウェーブレット分解により生成された画像データ、α4:重み係数)
Qn5=Do5×α5+Dn5×(1-α5) …式(7)
(但し、Qn5:3階層目の合成画像データ、Do5:旧フレームデータDoの3階空間ウェーブレット分解により生成された画像データ、Dn5:新フレームデータDnの3階空間ウェーブレット分解により生成された画像データ、α5:重み係数)
【0069】
但し、ここでは、おおまなか組織構造情報については、新フレームデータDnの重みが大きくなり、微細な組織構造情報については、旧フレームデータDoの重みが大きくなるように、重み係数α3、α4、α5は、重み係数α3>重み係数α4>重み係数α5となるように設定される。
【0070】
そして、合成処理部4aは、式(5)、式(6)、式(7)で生成された合成画像データQn3、Qn4、Qn5を、空間ウェーブレット再構成(即ち、逆ウェーブレット分解)を行うことにより、出力フレームデータQnを生成する。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置Aにおいても、超音波画像を表示出力する際、組織毎の動きの追従性を良好にしながら、当該組織上に重畳しているノイズを抑制することが可能である。
【0072】
特に、本実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4では、超音波画像を、おおまなか組織構造情報と微細な組織構造情報とに分離する処理を、多重解像度分解処理で実現している。そのため、本実施形態に係る超音波診断装置Aにおいては、超音波画像に含まれる周波数帯域毎により細かな処理が可能となり、より一層のちらつき抑制と追従性向上が可能となる。
【0073】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4の構成を示す図である。
【0074】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4は、信号処理部3において狭帯域フィルタを用いて生成された超音波画像(以下、「狭帯域画像データ」と称する)と、信号処理部3において広帯域フィルタを用いて生成された超音波画像(以下、「広帯域画像データ」と称する)とを取得し、これら狭帯域画像データと広帯域画像データとを用いて、超音波画像内に含まれるおおまなか組織構造情報と微細な組織構造情報とを分離して把握する点で、第1の実施形態に係るフレーム平均化処理部4と相違する。
【0075】
換言すると、本実施形態に係るフレーム平均化処理部4は、新フレームデータDnと旧フレームデータDоとを画像合成する際、第1の実施形態のように、超音波画像に映る組織構造の高周波成分がカットされた粗構造画像データと、超音波画像に映る組織構造の高周波成分を含む微細構造画像データとを用いる態様に代えて、狭帯域画像データと広帯域画像データとを用いる。
【0076】
本実施形態に係る信号処理部3は、受信器2bから出力される受信信号に対して、狭帯域フィルタ(例えば、FIR型のバンドパスフィルタ)を用いたフィルタ処理に処して狭帯域画像データを生成する信号処理部と、受信器2bから出力される受信信号に対して、広帯域フィルタ(例えば、FIR型のバンドパスフィルタ)を用いたフィルタ処理に処して広帯域画像データを生成する信号処理部と、が並列に設けられた構成となっている(図示せず)。尚、信号処理部3のフィルタ処理は、一般に、超音波走査時、走査ライン毎に実行される。
【0077】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4は、合成処理部4a、及び、取得部4dを備えている。
【0078】
取得部4dは、信号処理部3から、新フレームデータDnとして出力される狭帯域画像データ(以下、「第1狭帯域画像データ」と称する)Dn7と広帯域画像データ(以下、「第1広帯域画像データ」と称する)Dn6とを取得する。
【0079】
又、取得部4dは、フレームメモリ5から、一時刻前の出力フレームデータQnを算出する際に生成された第1合成画像データQn6及び第2合成画像データQn7を取得する。ここでは、一時刻前の出力フレームデータQnを算出する際に生成された第1合成画像データQn6が、旧フレームデータDoの広帯域画像データ(以下、「第2広帯域画像データ」と称する)Do6に相当し、一時刻前の出力フレームデータを算出する際に生成された第2合成画像データQn7が、旧フレームデータDoの狭帯域画像データ(以下、「第2狭帯域画像データ」と称する)Do7に相当する。
【0080】
尚、本実施形態に係るフレームメモリ5は、フレーム平均化処理部4に生成された次の時刻で表示出力する対象のフレームデータに加えて、フレーム平均化処理部4が当該フレームデータを算出する際に生成した第1合成画像データQn6及び第2合成画像データQn7を格納する構成となっている。
【0081】
図6は、本実施形態に係る信号処理部3において、広帯域フィルタが抽出する超音波画像内の周波数帯域f1、及び狭帯域フィルタが抽出する超音波画像内の周波数帯域f2を示す図である。
【0082】
一般に、受信器2bから送出される受信信号に含まれる周波数帯域は、送信超音波の中心周波数から、低周波数側と高周波数側にある程度の広がりを持ったものとなる。この周波数帯域は、送信超音波の周波数、超音波プローブ1の種類、及び、被検体内の検出対象部位の深度等の測定条件に応じて種々に異なる。送信超音波として中心周波数が10MHzの広帯域信号を用いた場合には、受信信号に含まれる周波数帯域は、例えば、4MHzから18MHzまでの帯域となる。尚、受信信号に含まれる周波数帯域が、送信超音波の周波数帯域よりもブロードになる理由としては、主に、非線形特性を持つ生体内を超音波が伝搬すると、波形に歪が生じるためである。
【0083】
ここで、信号処理部3において、広帯域フィルタの抽出対象の周波数帯域、及び、狭帯域フィルタの抽出対象の周波数帯域は、それぞれ、送信超音波の中心周波数を基準に、狭帯域フィルタの抽出対象の周波数帯域の方が、広帯域フィルタの抽出対象の周波数帯域よりも狭くなるように設定されている。例えば、送信超音波として中心周波数が10MHzの広帯域信号を用いた場合には、広帯域フィルタは、受信器2bから送出される受信信号から、上限側が18MHzで且つ下限側が4MHzの周波数帯域を抽出し得る構成され、狭帯域フィルタは、受信器2bから送出される受信信号から、上限側が12MHzで且つ下限側が7MHzの周波数帯域を抽出し得る構成される。
【0084】
つまり、狭帯域フィルタは、受信器2bから送出される受信信号に含まれる周波数帯域のうち、組織毎の輪郭を抽出する上では好適となる送信超音波の中心周波数付近の周波数帯域の組織構造のみを抽出し、画像化後にノイズとして表出する可能性がある高周波帯域をカットするように構成されている。一方、広帯域フィルタは、超音波画像にて微細な組織構造まで表現され得るように、受信器2bから送出される受信信号に含まれる周波数帯域の全領域を抽出する構成となっている。
【0085】
本実施形態に係る合成処理部4aの構成は、第1の実施形態に係る合成処理部4aの構成と同様である。
【0086】
具体的には、合成処理部4aは、以下の式(8)のように、第1広帯域画像データDn6の各画素の画素値に重み係数(1-α6)を乗じると共に、第2広帯域画像データDo6の各画素の画素値に重み係数α6を乗じ、両者の画素位置を対応させて、これらを加算することにより、第1合成画像データQn6を生成する。
Qn6=Do6×α6+Dn6×(1-α6) …式(8)
(但し、Qn1:第1合成画像データ、Dn6:第1広帯域画像データ、Do6:第2広帯域画像データ、α6:重み係数)
【0087】
又、合成処理部4aは、以下の式(9)のように、第1狭帯域画像データDn7の各画素の画素値に重み係数(1-α7)を乗じると共に、第2狭帯域画像データDo7の各画素の画素値に重み係数α7を乗じ、両者の画素位置を対応させて、これらを加算することにより、第2合成画像データQn2を生成する。
Qn7=Do7×α7+Dn7×(1-α7) …式(9)
(但し、Qn7:第2合成画像データ、Dn7:第1狭帯域画像データ、Do7:第2狭帯域画像データ、α7:重み係数)
【0088】
但し、式(8)、式(9)において、重み係数α6の方が、重み係数α7よりも大きい(α6>α7)。
【0089】
次に、合成処理部4aは、以下の式(10)のように、第1合成画像データQn6と第2合成画像データQn7とを、両者の画素位置を対応させて加算することで、出力フレームデータQnを生成する。
Qn=Qn6+Qn7 …式(10)
(但し、Qn:出力フレームデータ、Qn6:第1合成画像データ、Qn7:第2合成画像データ)
【0090】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置Aにおいても、超音波画像を表示出力する際、組織毎の動きの追従性を良好にしながら、当該組織上に重畳しているノイズを抑制することが可能である。
【0091】
特に、本実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4では、信号処理部3にて狭帯域フィルタ及び広帯域フィルタを用いて生成されたフレームデータにより、被検体内のおおまなか組織構造情報と微細な組織構造情報と把握する構成となっている。このように、画像化前の周波数成分にて分離することにより、狭帯域画像はよりノイズが少なく、S/N比の高い画像となる。そして、画像合成時には、この狭帯域画像を主に反映させるように、出力フレームデータが生成されるため、よりちらつきが少なく追従性の高い画像を提供することが可能である。
【0092】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4の構成を示す図である。
【0093】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4は、超音波画像を、おおまなか組織構造情報と微細な組織構造情報とに分離する処理手法の点で、第3の実施形態に係るフレーム平均化処理部4と相違する。
【0094】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4は、合成処理部4a、取得部4d、及び、分離処理部4eを備えている。
【0095】
本実施形態に係る取得部4dは、第3の実施形態と同様に、信号処理部3から新フレームデータDnとして出力される、第1狭帯域画像データDn7及び第1広帯域画像データDn6を取得すると共に、フレームメモリ5から、第2狭帯域画像データDo7及び第2広帯域画像データDo6を取得する。
【0096】
又、 本実施形態に係る分離処理部4eは、第1広帯域画像データDn6から第1狭帯域画像データDn7を減算することで、第1差分画像データDn8を生成すると共に、第2広帯域画像データDo6から第2狭帯域画像データDo7を減算することで、第2差分画像データDo8を生成する。つまり、本実施形態では、第1狭帯域画像データDn7及び第2狭帯域画像データDo7を、おおまなか組織構造情報が選択的に抽出された画像データとして用いて、第1差分画像データDn8及び第2差分画像データDo8を、微細な組織構造情報が選択的に抽出された画像データとして用いる。
【0097】
本実施形態に係る合成処理部4aの構成は、第1の実施形態に係る合成処理部4aの構成と同様である。
【0098】
具体的には、合成処理部4aは、以下の式(11)のように、第1差分画像データDn8の各画素の画素値に重み係数(1-α8)を乗じると共に、第2差分画像データDo8の各画素の画素値に重み係数α8を乗じ、両者の画素位置を対応させて、これらを加算することにより、第1合成画像データQn8を生成する。
Qn8=Do8×α8+Dn8×(1-α8) …式(11)
(但し、Qn8:第1合成画像データ、Dn8:第1差分画像データ、Do8:第2差分画像データ、α8:重み係数)
【0099】
又、合成処理部4aは、以下の式(12)のように、第1狭帯域画像データDn7の各画素の画素値に重み係数(1-α9)を乗じると共に、第2狭帯域画像データDo7の各画素の画素値に重み係数α9を乗じ、両者の画素位置を対応させて、これらを加算することにより、第2合成画像データQn9を生成する。
Qn9=Do7×α9+Dn7×(1-α9) …式(12)
(但し、Qn9:第2合成画像データ、Dn7:第1狭帯域画像データ、Do7:第2狭帯域画像データ、α9:重み係数)
【0100】
但し、式(11)、式(12)において、重み係数α8の方が、重み係数α9よりも大きい(α8>α9)。
【0101】
次に、合成処理部4aは、以下の式(13)のように、第1合成画像データQn8と第2合成画像データQn9とを、両者の画素位置を対応させて加算することで、出力フレームデータQnを生成する。
Qn=Qn8+Qn9 …式(13)
(但し、Qn:出力フレームデータ、Qn8:第1合成画像データ、Qn9:第2合成画像データ)
【0102】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置Aにおいても、超音波画像を表示出力する際、組織毎の動きの追従性を良好にしながら、当該組織上に重畳しているノイズを抑制することが可能である。
【0103】
特に、本実施形態に係る超音波診断装置Aのフレーム平均化処理部4では、おおまなか組織構造情報を選択的に抽出する第1狭帯域画像データDn7及び第2狭帯域画像データDo7と、微細な組織構造情報が選択的に抽出する第1差分画像データDn8及び第2差分画像データDo8と、を画像合成することで、出力フレームデータQnを生成する。これによって、動きのある組織構造物に対する追従性を保持しつつ、狭帯域フィルタで抽出される組織構造の輪郭等を特に強調した画像を生成することが可能である。これにより、第3の実施形態の態様と比較して、より一層ちらつきを低減することが可能である。
【0104】
(第5の実施形態)
図8は、第5の実施形態に係る超音波診断装置Aの構成を示す図である。
【0105】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4が、フレーム平均化処理を行う際の対象とするフレームデータとして、一時刻前に信号処理部3に生成された超音波画像に係るフレームデータと、現在時刻に信号処理部3で生成された超音波画像に係るフレームデータと、を用いる点で、第1の実施形態と相違する。
【0106】
尚、説明の便宜として、本実施形態では、一時刻前に信号処理部3に生成された超音波画像に係るフレームデータを「旧フレームデータDo」と称し、現在時刻に信号処理部3で生成された超音波画像に係るフレームデータを「新フレームデータDn」と称する。
【0107】
本実施形態に係る超音波診断装置Aは、信号処理部3で生成されたフレームデータを一時的に記憶する第2フレームメモリ7を有している。そして、第2フレームメモリ7には、信号処理部3でフレームデータが新たに生成される度に、当該フレームデータが格納される。換言すると、信号処理部3は、フレームデータを生成する毎に、フレーム平均化処理部4と第2フレームメモリ7とに出力する。
【0108】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4は、信号処理部3から新フレームデータDnを取得した際、第2フレームメモリ7から、その一時刻前に信号処理部3に生成された旧フレームデータDoを取得する。そして、フレーム平均化処理部4は、新フレームデータDnと旧フレームデータDoとを重み付け加算することで、表示出力する対象の出力フレームデータを生成し、フレームメモリ5に出力する。
【0109】
本実施形態に係るフレーム平均化処理部4にて、新フレームデータDnと旧フレームデータDoとを重み付け加算する方法は、第1乃至第4の実施形態と同様である。フレーム平均化処理部4は、例えば、新フレームデータDnに基づいて、第1微細構造画像データDn1及び第1粗構造画像データDn2を生成すると共に、旧フレームデータDoに基づいて、第2微細構造画像データDo1及び第2粗構造画像データDo2を生成する。そして、フレーム平均化処理部4は、例えば、上式(2)のように、第1微細構造画像データDn1と、第2微細構造画像データDo1との重み付け加算により、第1合成画像データQn1を生成すると共に、上式(3)のように、第1粗構造画像データDn2と、第2粗構造画像データDo2との重み付け加算により、第2合成画像データQn2を生成する。そして、合成処理部4aは、例えば、上式(4)のように、第1合成画像データQn1と第2合成画像データQn2とを加算することで、出力フレームデータQnを生成する。
【0110】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置Aにおいても、超音波画像を表示出力する際、組織毎の動きの追従性を良好にしながら、当該組織上に重畳しているノイズを抑制することが可能である。但し、本実施形態に係る平均化処理の手法では、一時刻前に表示出力されるフレームデータとは、異なるフレームデータを用いることになるため、ノイズ抑制の点では、第1乃至第4の実施形態に係る平均化処理の手法を用いる方がより好ましい。これは、第1乃至第4の実施形態に係る平均化処理の手法では、旧フレームデータにはより長い時間分の情報が含まれることになるためである。
【0111】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0112】
上記実施形態では、フレーム平均化処理部4の一例として、一時刻前に表示出力された(又は信号処理部3で生成された)フレームデータDoと、現在時刻に信号処理部3で生成されたフレームデータDnのみを、重み付け加算して、出力フレームデータQnを生成する態様を示した。しかしながら、本発明において、フレーム平均化処理部4は、上記フレームデータに加えて、更に、二時刻前(即ち、2フレーム前)や三時刻前(即ち、3フレーム前)に表示出力されたフレームデータを参照して、これらを重み付け加算して、出力フレームデータQnを生成してもよい。
【0113】
又、上記実施形態では、フレーム平均化処理部4の一例として、一時刻前に表示出力されたフレームデータDoと、現在時刻に信号処理部3で生成されたフレームデータDnとを重み付け加算する際の重み係数を全画素位置で規定値とする構成を示した。しかしながら、かかる重み係数の設定手法は、種々に変形可能である。例えば、一時刻前に表示出力されたフレームデータDoの画素値と、現在時刻に信号処理部3で生成されたフレームデータDnの画素値と、を画素毎に比較して、その画素値の差分に基づいて、当該重み係数を動的変化させてよい。又、当該重み係数は、信号処理部3が超音波画像に係るフレームデータを生成するフレームレートに基づいて、設定変更されてもよい。
【0114】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本開示に係る超音波診断装置によれば、超音波画像を表示出力する際、ノイズを効果的に除去しつつ、動きのある組織構造物に対する追従性を向上することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
A 超音波診断装置
1 超音波プローブ
2 送受信部
2a 送信器
2b 受信器
3 信号処理部
4 フレーム平均化処理部
4a 合成処理部
4b、4c、4e 分離処理部
4d 取得部
5 フレームメモリ
6 表示器
7 第2フレームメモリ
Dn 新フレームデータ(第一のフレームデータ)
Do 旧フレームデータ(第二のフレームデータ)
Qn 出力フレームデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8