(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】宅側装置、通信装置、PONシステム、及び電源断の通知方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20240305BHJP
H04L 41/06 20220101ALI20240305BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04L41/06
(21)【出願番号】P 2020106849
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 健治郎
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102404134(CN,A)
【文献】特表2009-522866(JP,A)
【文献】特表2015-527763(JP,A)
【文献】特開2002-344518(JP,A)
【文献】特開2010-252192(JP,A)
【文献】特開2016-032287(JP,A)
【文献】特許第5824119(JP,B1)
【文献】特開2016-178486(JP,A)
【文献】特開平02-283141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置であって、
光トランシーバと、
前記光トランシーバに接続されるPON処理部と、
前記PON処理部に接続されるPHY処理部と、
前記PHY処理部に接続される端子モジュールであって、通信装置の物理ポートに接続すると当該通信装置の電源部から電力が供給される端子モジュールと、を備え、
前記PON処理部は、
前記PHY処理部から入力される下記の第1フレームを下記の第2フレームに変換し、変換した前記第2フレームを前記光トランシーバに出力
し、
前記第1及び第2フレームは、
拡張OAMフレームであり、
前記PON処理部が実行するフレーム変換処理は、
前記第1フレームの送信元アドレスを自装置のアドレス情報に書き換える処理である宅側装置。
第1フレーム:通信装置の電源断を通知するための制御フレーム
第2フレーム:宅側装置の電源断を通知するための制御フレーム
【請求項2】
局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置と通信する通信装置であって、
前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートと、
接続済みの前記宅側装置を管理する管理制御部と、
前記宅側装置及び前記管理制御部が送受信する通信フレームを中継する中継処理部と、
自装置内の各部と前記宅側装置に電力を供給し、電源断後に所定時間だけ電力供給の継続が可能な電源部と、を備え、
前記管理制御部は、
自装置の電源断を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成
し、生成した前記制御フレームを、当該制御フレームを前記宅側装置の電源断を通知するための制御フレームに変換可能な前記宅側装置に対してのみ送信する通信装置。
【請求項3】
局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置と通信する通信装置であって、
前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートと、
接続済みの前記宅側装置を管理する管理制御部と、
前記宅側装置及び前記管理制御部が送受信する通信フレームを中継する中継処理部と、
自装置内の各部と前記宅側装置に電力を供給する電源部と、を備え、
前記管理制御部は、
自装置の電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成
し、生成した前記制御フレームを、当該制御フレームを前記宅側装置の電源断を通知するための制御フレームに変換可能な前記宅側装置に対してのみ送信する通信装置。
【請求項4】
局側装置と、
前記局側装置とPON回線により接続されるプラガブル型の宅側装置と、
前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートを有する通信装置と、を備えるPONシステムであって、
前記宅側装置に電力供給する前記通信装置が、自装置の電源断又は電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、下記の第1フレームを生成して前記宅側装置に送信し、
前記通信装置から前記第1フレームを受信した前記宅側装置が、受信した前記第1フレームを下記の第2フレームに変換し、変換した前記第2フレームを前記局側装置に送信
し、
前記第1及び第2フレームは、
拡張OAMフレームであり、
前記宅側装置が実行するフレーム変換処理は、
前記第1フレームの送信元アドレスを自装置のアドレス情報に書き換える処理であるPONシステム。
第1フレーム:通信装置の電源断を通知するための制御フレーム
第2フレーム:宅側装置の電源断を通知するための制御フレーム
【請求項5】
局側装置と、
前記局側装置とPON回線により接続されるプラガブル型の宅側装置と、
前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートを有する通信装置と、を備えるPONシステムにおける電源断の通知方法であって、
前記宅側装置に電力供給する前記通信装置が、自装置の電源断又は電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、下記の第1フレームを生成して前記宅側装置に送信するステップと、
前記通信装置から前記第1フレームを受信した前記宅側装置が、受信した前記第1フレームを下記の第2フレームに変換し、変換した前記第2フレームを前記局側装置に送信するステップと、を含
み、
前記第1及び第2フレームは、
拡張OAMフレームであり、
前記宅側装置が実行するフレーム変換処理は、
前記第1フレームの送信元アドレスを自装置のアドレス情報に書き換える処理である電源断の通知方法。
第1フレーム:通信装置の電源断を通知するための制御フレーム
第2フレーム:宅側装置の電源断を通知するための制御フレーム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅側装置、通信装置、PONシステム、及び電源断の通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、OLT(Optical Line Terminal)と、OLTとPON回線により接続されるMSA(Multi Source Agreement)規格に準拠する複数のプラガブル型ONU(Optical Network Unit)と、プラガブル型ONUを挿入可能な物理ポートを複数有する集線装置と、を備えるPON(Passive Optical Network)システムが記載されている。
【0003】
集線装置は、ONUに電力供給するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータの入力側に接続されたキャパシタと、電源断の検出信号を出力する検出部とを備え、ONUのMSAモジュールには、検出信号を伝送するための専用ピンが割り当てられている。
ONUの演算処理部は、集線装置の検出部から電源断の検出信号が入力されると、自装置の電源断をOLTに通知するための制御フレームを生成し、生成した制御フレームをPON通信用の通信制御部に送信させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のPONシステムでは、集線装置の電源断の検出信号をMSAモジュールの専用ピンでONUに伝送するので、検出信号を受信可能な専用の演算処理部をONUに実装する必要があり、製造コストが高くなるという問題がある。
本開示は、従来の問題点に鑑み、専用のハードウェア部品を採用しなくても、プラガブル型の宅側装置の電源断を局側装置に通知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る装置は、局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置であって、光トランシーバと、前記光トランシーバに接続されるPON処理部と、前記PON処理部に接続されるPHY処理部と、前記PHY処理部に接続される端子モジュールであって、通信装置の物理ポートに接続すると当該通信装置の電源部から電力が供給される端子モジュールと、を備え、前記PON処理部は、前記PHY処理部から入力される下記の第1フレームを下記の第2フレームに変換し、変換した前記第2フレームを前記光トランシーバに出力する。
【0007】
第1フレーム:通信装置の電源断を通知するための制御フレーム
第2フレーム:宅側装置の電源断を通知するための制御フレーム
【0008】
本開示の別態様に係る装置は、局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置と通信する通信装置であって、前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートと、接続済みの前記宅側装置を管理する管理制御部と、前記宅側装置及び前記管理制御部が送受信する通信フレームを中継する中継処理部と、自装置内の各部と前記宅側装置に電力を供給し、電源断後に所定時間だけ電力供給の継続が可能な電源部と、を備え、前記管理制御部は、自装置の電源断を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成して前記宅側装置に送信する。
【0009】
本開示の別態様に係る装置は、局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置と通信する通信装置であって、前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートと、接続済みの前記宅側装置を管理する管理制御部と、前記宅側装置及び前記管理制御部が送受信する通信フレームを中継する中継処理部と、自装置内の各部と前記宅側装置に電力を供給する電源部と、を備え、前記管理制御部は、自装置の電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成して前記宅側装置に送信する。
【0010】
本開示の一態様に係るシステムは、局側装置と、前記局側装置とPON回線により接続されるプラガブル型の宅側装置と、前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートを有する前記通信装置と、を備えるPONシステムであって、前記宅側装置に電力供給する通信装置が、自装置の電源断又は電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、上記の第1フレームを生成して前記宅側装置に送信し、前記通信装置から前記第1フレームを受信した前記宅側装置が、受信した前記第1フレームを上記の第2フレームに変換し、変換した前記第2フレームを前記局側装置に送信する。
【0011】
本開示の一態様に係る方法は、局側装置と、前記局側装置とPON回線により接続されるプラガブル型の宅側装置と、前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートを有する通信装置と、を備えるPONシステムにおける電源断の通知方法であって、前記宅側装置に電力供給する前記通信装置が、自装置の電源断又は電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、上記の第1フレームを生成して前記宅側装置に送信するステップと、前記通信装置から前記第1フレームを受信した前記宅側装置が、受信した前記第1フレームを上記の第2フレームに変換し、変換した前記第2フレームを前記局側装置に送信するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、専用のハードウェア部品を採用しなくても、プラガブル型の宅側装置の電源断を局側装置に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、光通信システムの全体構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、OLT、プラガブル型ONU、及びHGWの内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3Aは、HGWによるノード情報の取得方法一例を示すシーケンス図である。
図3Bは、HGWが保持するノード情報の管理テーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、HGWとプラガブル型ONUが実行する、電源断の通知方法の一例(通知方法1)を示すシーケンス図である。
【
図5】
図5は、HGWとプラガブル型ONUが実行する、電源断の通知方法の別例(通知方法2)を示すシーケンス図である。
【
図6】
図6は、HGWが保持するONUの判定テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、OLT、プラガブル型ONU、及びHGWの内部構成の別例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0015】
(1) 本実施形態の宅側装置は、局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置であって、光トランシーバと、前記光トランシーバに接続されるPON処理部と、前記PON処理部に接続されるPHY処理部と、前記PHY処理部に接続される端子モジュールであって、通信装置の物理ポートに接続すると当該通信装置の電源部から電力が供給される端子モジュールと、を備え、前記PON処理部は、前記PHY処理部から入力される下記の第1フレームを下記の第2フレームに変換し、変換した前記第2フレームを前記光トランシーバに出力する。
第1フレーム:通信装置の電源断を通知するための制御フレーム
第2フレーム:宅側装置の電源断を通知するための制御フレーム
【0016】
本実施形態の宅側装置によれば、第1フレームがPHY処理部からPON処理部に入力されるので、通常の通信フレームと同じ伝送経路で第1フレームをPON処理部に伝送できる。また、PON処理部が、第1フレームを第2フレームに変換し、変換した第2フレームを光トランシーバに出力するので、第2フレームを局側装置に伝送できる。
従って、専用のハードウェア部品を採用しなくても、プラガブル型の宅側装置の電源断を局側装置に通知することができる。
【0017】
(2) 本実施形態の宅側装置において、前記第1フレームが、前記通信装置と前記宅側装置の間で使用される独自の制御フレームであり、前記第2フレームが、拡張OAMフレームである場合には、前記PON処理部が実行するフレーム変換処理を、前記第1フレームの入力に応じて前記第2フレームを独自に生成する処理とすればよい。
この場合、PON処理部が生成する第2フレームが拡張OAMフレームよりなるので、宅側装置の電源断を局側装置に確実に通知することができる。
【0018】
(3) 本実施形態の宅側装置において、前記第1及び第2フレームが、拡張OAMフレームである場合には、前記PON処理部が実行するフレーム変換処理を、前記第1メッセージの送信元アドレスを自装置のアドレス情報に書き換える処理とすればよい。
この場合、アドレス情報を書き換えるだけで第2フレームを生成できるので、第2フレームを独自に生成する場合に比べて、宅側装置の電源断を局側装置に迅速に通知することができる。
【0019】
(4) 本実施形態の通信装置は、局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置と通信する通信装置であって、前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートと、接続済みの前記宅側装置を管理する管理制御部と、前宅側装置及び前記管理制御部が送受信する通信フレームを中継する中継処理部と、自装置内の各部と前記宅側装置に電力を供給し、電源断後に所定時間だけ電力供給の継続が可能な電源部と、を備え、前記管理制御部は、自装置の電源断を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成して前記宅側装置に送信する。
【0020】
本実施形態の通信装置によれば、管理制御部が、自装置の電源断(電源スイッチのオフ操作、ACアダプタの取り外し、コンセントの取り外し、及び停電など)を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成して宅側装置に送信するので、通常の通信フレームと同じ伝送経路で制御フレームを宅側装置に伝送できる。
このように、通信装置の電源断をプラがブル型の宅側装置に確実に通知することができるので、宅側装置は自身の電源断を局側装置に通知することができる。
【0021】
(5) 本実施形態の通信装置は、局側装置とともにPONシステムを構成するプラガブル型の宅側装置と通信する通信装置であって、前記宅側装置を接続可能な1又は複数の物理ポートと、接続済みの前記宅側装置を管理する管理制御部と、前記宅側装置及び前記管理制御部が送受信する通信フレームを中継する中継処理部と、自装置内の各部と前記宅側装置に電力を供給する電源部と、を備え、前記管理制御部は、自装置の電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成して前記宅側装置に送信する。
【0022】
本実施形態の通信装置によれば、管理制御部が、自装置の電源スイッチのオフ操作を検出した場合に、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成して宅側装置に送信するので、通常の通信フレームと同じ伝送経路で制御フレームを宅側装置に伝送できる。
従って、専用のハードウェア部品を採用しなくても、通信装置の電源断をプラガブル型の宅側装置に通知することができる。
【0023】
(6) 本実施形態の通信装置において、前記管理制御部は、前記制御フレームを前記宅側装置の電源断を通知するための制御フレームに変換可能な前記宅側装置に対してのみ、前記制御フレームを送信することが好ましい。
このようにすれば、上記のフレーム変換処理に非対応である宅側装置には制御フレームが送信されなくなるので、上記のフレーム変換処理に非対応である宅側装置に発生し得る誤作動を、未然に防止することができる。
【0024】
(7) 本実施形態のPONシステムは、上述の(1)~(3)の宅側装置と、上述の(4)~(6)の通信装置とを備えるコンビネーションに係るシステムである。
従って、本実施形態のPONシステムは、上述の(1)~(3)の宅側装置及び上述の(4)~(6)の通信装置と同様の作用効果を奏する。
【0025】
(8) 本実施形態の通知方法は、上述の(1)~(3)の宅側装置と、上述の(4)~(6)の通信装置とが協働して実行する通知方法である。
従って、本実施形態の通知方法は、上述の(1)~(3)の宅側装置及び上述の(4)~(6)の通信装置と同様の作用効果を奏する。
【0026】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
〔光通信システムの全体構成〕
図1は、光通信システムの全体構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態の光通信システムは、局側装置1、宅側装置2、及びホームゲートウェイ3などを備えるPONシステムよりなる。
【0028】
局側装置1は、PON回線4の上位側に接続される光回線終端装置(OLT)である。宅側装置2は、PON回線4の下位側に位置される光回線終端装置(ONU)である。
以下、局側装置1を「OLT1」と記載し、宅側装置2を「ONU2」と記載し、ホームゲートウェイ3を「HGW3」と記載する。
【0029】
本実施形態のPONは、例えば、IEEE系の通信規格に従うPON(例えば、GE-PON又は10G-EPONなど)である。
本実施形態のPONは、ITU-T系の通信規格に従うPON(例えば、G-PON、XG-PON、XGS-PON又はNG-PON2など)であってもよい。
【0030】
OLT1は、例えば通信事業者の局舎などに設置される。OLT1は、上位ネットワークに接続される。ONU2とHGW3は、例えば通信サービスの加入者(ユーザ)の建物などに設置される。
ONU2には、MSA(Multi-Source Agreement)規格に準拠する比較的サイズが小さい「プラガブル型ONU2A」と、MSA規格に準拠しない比較的サイズが大きい「据え置き型ONU2B」とが含まれる。
【0031】
MSA規格は、例えば、「SFP」(Small Form-factor Pluggable)、「SFP+」(Small Form-factor Pluggable Plus)、又は「XFP」(10 Gigabit Small Form-factor Pluggable)などである。
以下において、「プラガブル型ONU2A」を「ONU2A」と略記し、「据え置き型ONU2B」を「ONU2B」と略記することがある。ONU2AとONU2Bとで共通する事項については、共通符号「2」を用いて「ONU2」として説明する。
【0032】
HGW3は、プラガブル型ONU2Aを接続可能なスロットイン方式の少なくとも1つの物理ポートP1と、LANケーブルなどの通信ケーブルを接続可能な少なくとも1つの物理ポートP2とを有する。
HGW3は、10/100/1000BASE-Tなどに準拠するイーサネット(「イーサネット」は登録商標である。)通信機能、L2/L3レイヤのネットワーク機能、QoS(Quality of Service)機能、及びVLAN(Virtual LAN)機能などを有する。
【0033】
HGW3には、1又は複数のプラガブル型ONU2Aと、1又は複数のユーザ端末5とが接続される。据え置き型ONU2Aには、1又は複数のユーザ端末5が接続される。
ユーザ端末5は、例えばパーソナルコンピュータなどのイーサネット通信が可能なコンピュータ装置よりなる。ユーザ端末5は、中継ネットワーク(図示せず)を介してHGW3又はONU2Bに接続してもよい。
【0034】
PON回線4は、光スプリッタ6により光ファイバを分岐させたツリー構造の光回線よりなる。OLT1は、PON回線4の幹線ファイバ7に接続され、ONU2は、PON回線4の支線ファイバ8に接続される。
光スプリッタ6は、電力供給を必要とせずに、入力された光信号から受動的に光信号を分岐又は多重する。
【0035】
OLT1が送出する下り光信号は、光スプリッタ6において分岐し、支線ファイバ8を通って各ONU2に伝送される。各ONU2が送出する上り光信号は、光スプリッタ6において集束し、幹線ファイバ7を通ってOLT1に伝送される。
ONU2が送出する上り光信号は光スプリッタ6で合流するので、同じ波長の上り光信号が合流後に衝突しないための多重化が必要である。このため、PONでは、MPCP(Multi-Point Control Protocol)に則った時分割多重化が行われる。
【0036】
具体的には、ONU2は、自己のバッファ内のデータ長さ(送信要求量)を記した制御フレーム(レポート)をOLT1に送信する。
OLT1は、配下のONU2から収集したレポートに基づいて、各ONU2に指示する上り方向の送信開始時刻及び送信時間長を演算する。OLT1は、演算結果を含む制御フレーム(ゲート)を各ONU2に送信する。
【0037】
各ONU2は、ゲートで指示された送信開始時刻に、ゲートで指示された送信時間長に相当するデータをOLT1に送信する。これと同時に、ONU2は、次回分の送信要求量をレポートとともにOLT1に送信する。
また、OLT1は、P2MP(Point To Multi Point)ディスカバリを実行し、PON回線4へのONU2の接続を検出すると、検出したONU2の登録処理を実行する。この際、ONU2にLLID(Logical Link ID)が付与される。
【0038】
PONシステムはイーサネットに準拠するので、OLT1は、イーサネット規格に従うOAM(Operations, Administration and Maintenance)機能を有する。
このため、OLT1は、例えばIEEE802.3-2008のClause57に規定された通常のOAMフレーム、及び、通信事業者が保守管理の目的で独自に定義可能な拡張OAMフレームを、管理対象の通信機器であるONU2との間で送受信する。
【0039】
図1の光通信システムにおいて、据え置き型ONU2BをPON回線4に接続せず、プラガブル型ONU2AのみをOLT1に収容することにしてもよい。
また、1つのHGW3に接続するプラガブル型ONU2Aの個数は、1つに限定されるものではなく、2つ以上であってもよい。
【0040】
〔OLTの内部構成〕
図2は、OLT1、プラガブル型ONU2A、及びHGW3の内部構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、OLT1は、光トランシーバ(TRx)11、PON処理部12、L2スイッチ13、及び管理制御部14を備える。管理制御部14は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリなどから構成される。
【0041】
光トランシーバ11は、光信号と電気信号を相互に変換するサブアセンブリ(例えば、Bidirectional Optical Sub-Assembly)を含む光デバイスよりなる。光トランシーバ11は、PON回線4に光学的に接続され、PON処理部12に電気的に接続される。
光トランシーバ11は、PON回線4から入力される上り光信号を電気信号に変換してPON処理部12に入力し、PON処理部12から入力される電気信号を下り光信号に変換してPON回線4に送出する。
【0042】
PON処理部12は、PONの通信規格に則った所定の通信処理などを実行する集積回路(例えばOLT用のMACチップ)よりなる。
PON処理部12は、光トランシーバ11から入力される上りフレームがレポートである場合は、ONU2の上り方向の送信開始時刻及び送信時間長を演算する。PON処理部12は、演算結果を含む所定のLLID(ONU2)宛てのゲートを生成し、生成したゲートを光トランシーバ11に出力する。
【0043】
PON処理部12は、P2MPディスカバリ及びONU2の登録処理や、ONU2を管理対象とするOAMフレームの送受信なども実行する。
PON処理部12は、光トランシーバ11から入力される上りフレームがユーザフレームである場合は、ユーザフレームをL2スイッチ13に出力する。
PON処理部12は、L2スイッチ13から入力される下りフレームがユーザフレームである場合は、ユーザフレームを光トランシーバ11に出力する。
【0044】
L2スイッチ13は、自身に入力されるL2レイヤのフレームの宛先に応じて出力ポートを決定する、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路よりなる。
L2スイッチ13は、上位ネットワークから入力される下りフレームがユーザフレームである場合は、下りフレームをPON処理部12に出力する。
L2スイッチ13は、PON処理部12から入力される上りフレームがユーザフレームである場合は、ユーザフレームを上位ネットワークに送出する。
【0045】
管理制御部14は、L2スイッチ13及びPON処理部12に接続される。管理制御部14は、通信事業者の管理用端末15とも通信可能に接続される。管理用端末15は、上位ネットワークを通じて管理制御部14と通信してもよい。
管理制御部14は、L2スイッチ13のQoS(Quality of Service)パラメータ(例えば最大通信帯域)などを設定可能である。L2スイッチ13は、設定されたパラメータ値となるように、ユーザフレームのデータ通信量を調整する。
【0046】
管理用端末15は、OLT1及びONU2の設定情報を管理制御部14に送信することができる。管理制御部14は、OLT1の設定情報を受信すると、受信した設定情報に応じて自装置の各部のパラメータを調整する。
管理制御部14は、ONU2の設定情報を受信すると、受信した設定情報をPON処理部12に出力する。PON処理部12は、ONU2の設定情報を含む制御フレーム(例えば拡張OAMフレーム)を生成して光トランシーバ11に出力する。
【0047】
ONU2の設定情報としては、例えば次の情報1~4の少なくとも1つが含まれる。
情報1:ONU2のMACチップの設定パラメータ
情報2:ONU2と通信するユーザ端末5の認証情報(パスワードなど)
情報3:OLT/ONU間で使用する暗号鍵
情報4:ONU2に含まれるキューのバッファサイズの設定情報
【0048】
〔プラガブル型ONUの内部構成〕
図2に示すように、プラガブル型ONU2Aは、光トランシーバ(TRx)21、PON処理部22、PHY(物理層)処理部23、及び端子モジュール(端子部)24を備える。端子モジュール24は、所定のMSA規格に準拠する所定の構造及び個数の端子を有するコネクタよりなる。
【0049】
物理ポートP1には、HGW3の電源部が電圧を印加する電源用端子が含まれ、端子モジュール24は、物理ポートP1の電源用端子に接続される端子を有する。
従って、ONU2AをHGW3の物理ポートP1に挿入して端子モジュール24を正規に接続すると、HGW3の電源部からONU2Aに電力が供給される。すなわち、ONU2A内の各部21~23は、HGW3の電源部から供給される電力により駆動される。
【0050】
光トランシーバ21は、光信号と電気信号を相互に変換するサブアセンブリ(例えば、Bidirectional Optical Sub-Assembly)を含む光デバイスよりなる。光トランシーバ21は、PON回線4に光学的に接続され、PON処理部22に電気的に接続される。
光トランシーバ21は、PON回線4から入力される下り光信号を電気信号に変換してPON処理部22に入力し、PON処理部22から入力される電気信号を上り光信号に変換してPON回線4に送出する。
【0051】
PON処理部22は、PONの通信規格に則った所定の通信処理などを実行する集積回路(例えばONU用のMACチップ)よりなる。
PON処理部22は、自己のバッファ内のデータ長を記したレポートを生成し、光トランシーバ21に出力する。PON処理部22は、光トランシーバ21から入力される下りフレームがゲートである場合は、ゲートに記された指示内容に従って、バッファに蓄積中のデータを含むユーザフレームを生成して光トランシーバ21に出力する。
【0052】
PON処理部22は、光トランシーバ21から入力される下りフレームがユーザフレームである場合は、ユーザフレームをPHY処理部23に出力する。
PON処理部22は、PHY処理部23から入力される上りフレームがユーザフレームである場合は、ユーザフレームに含まれるデータを一旦バッファに蓄積する。
【0053】
PHY処理部23は、物理層における信号変換及び通信処理などを実行する集積回路(例えばPHYチップ)よりなる。
PHY処理部23は、HGW3から入力される電気信号をレイヤ2の電気信号に変換し、変換した電気信号をPON処理部22に出力する。PHY処理部23は、PON処理部22から入力される下りフレームをレイヤ1の電気信号に変換し、変換した電気信号をHGW3に送出する。
【0054】
〔HGWの内部構成〕
図2に示すように、HGW3は、上位側送受信部31、フレーム処理部32、下位側送受信部33、及び管理制御部34を備える。管理制御部34は、CPU及びメモリなどから構成される。
上位側送受信部31は、スロットイン方式の物理ポートP1に接続され、下位側送受信部33は、LANケーブ用の物理ポートP2に接続される。
図2では、各送受信部31,33が1つの場合が例示されているが、2つ以上であってもよい。
【0055】
上位側送受信部31は、物理層における信号変換及び通信処理などを実行する集積回路(例えばPHYチップ)よりなる。
上位側送受信部31は、ONU2Aから入力される電気信号をレイヤ2の電気信号に変換し、変換した電気信号をフレーム処理部32に出力する。上位側送受信部31は、フレーム処理部32から入力される電気信号をレイヤ1の電気信号に変換し、変換した電気信号をONU2Aに送出する。
【0056】
下位側送受信部33は、10/100/1000BASE-Tなどに準拠するイーサネット物理層における信号変換及び通信処理などを実行する集積回路(例えばPHYチップ)よりなる。
下位側送受信部33は、ユーザ端末5から入力される電気信号をレイヤ2の電気信号に変換し、変換した電気信号をフレーム処理部32に出力する。下位側送受信部33は、フレーム処理部32から入力される電気信号をレイヤ1の電気信号に変換し、変換した電気信号をユーザ端末5に送出する。
【0057】
フレーム処理部32は、自身に入力されるL2レイヤのフレームの種別や宛先に応じて出力ポートを決定する、FPGAなどの集積回路よりなる。
管理制御部34は、フレーム処理部32に接続される。管理制御部34は、OLT1の管理制御部14やOLT/ONUのPON処理部12,22との間で、OAMなどを利用した管理通信が可能である。
【0058】
上位側送受信部31、フレーム処理部32、及び下位側送受信部33は、接続済みのONU2A、接続済みのユーザ端末5、及び管理制御部34が送受信する通信フレームを中継する中継処理部として機能する。具体的には、次の通りである。
【0059】
フレーム処理部32は、上位側送受信部31から入力される下りフレームがユーザフレームである場合は、ユーザフレームを下位側送受信部33に出力する。
フレーム処理部32は、上位側送受信部31から入力される下りフレームが、OAMなどの制御フレームである場合は、制御フレームを管理制御部34に出力する。
【0060】
フレーム処理部32は、下位側送受信部33から入力される上りフレームがユーザフレームである場合は、ユーザフレームを上位側送受信部31に出力する。
フレーム処理部32は、下位側送受信部33から入力される上りフレームが、OAMなどの制御フレームである場合は、制御フレームを管理制御部34に出力する。
【0061】
フレーム処理部32は、管理制御部34から入力される通信フレームが、ONU2A用のOAMなどの制御フレームである場合は、入力された制御フレームを上位側送受信部31に出力する。
フレーム処理部32は、管理制御部34から入力される通信フレームが、ユーザ端末5用のOAMなどの制御フレームである場合は、入力された制御フレームを下位側送受信部33に出力する。
【0062】
フレーム処理部32は、ユーザフレームに関しては、フレームの宛先に応じて適宜出力ポートを選択する。
管理制御部34は、制御フレームをフレーム処理部32に出力する際に、制御フレームの出力先をフレーム処理部32に指定する。従って、フレーム処理部32は、管理制御部34から入力された制御フレームを管理制御部34が指定する出力ポートに中継する。
【0063】
〔HGWの電源部〕
図2に示すように、HGW3は、自装置の電源部として、電力変換部35、オフディレイ回路36、及び電源断センサ37を備える。
電力変換部35は、例えばDC/DCコンバータよりなる。電力変換部35には、ACアダプタ38から所定電圧の直流が入力される。電力変換部35は、電源スイッチ39によりオン/オフ操作される。
【0064】
電力変換部35は、ACアダプタ38から入力される直流電圧を降圧してオフディレイ回路36に出力する。オフディレイ回路36の出力側は、HGW3内の各部31~34とスロットイン方式の物理ポートP1の電源端子に接続される。
従って、オフディレイ回路36は、自装置内の各部31~34に出力電圧を印加するとともに、物理ポートP1に接続されたプラガブル型ONU2Aの端子モジュール24に含まれる所定の端子にも出力電圧を印加する。
【0065】
オフディレイ回路36は、キャパシタなどの蓄電素子を有し、電力変換部35からの入力が停止した場合に、入力停止から所定時間(例えば100~300ms)が経過するまで直流電圧を出力し続ける。
従って、電源スイッチ39のオフ操作、ACアダプタ38の取り外し、コンセントの取り外し、或いは停電などが原因で電力変換部35に対する電力供給が遮断されても、HGW3の各部31~34とONU2Aは所定時間だけ動作を継続することができる。
【0066】
電源断センサ37は、例えば、電力変換部35の出力電圧を検出し、検出信号を管理制御部34に出力する電圧センサよりなる。管理制御部34は、電力変換部35の出力電圧が所定の閾値(例えば0.1V)未満となると、自装置の電源断と判定する。
このように、
図2のHGW3では、管理制御部34が検出可能な電源断の原因事象には、電源スイッチ39のオフ操作だけでなく、ACアダプタ38の取り外し、コンセントの取り外し、及び停電なども含まれる。
【0067】
管理制御部34は、自装置の電源断を検出すると、自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成し、生成した制御フレームを、自装置に接続中のONU2A及びユーザ端末5に送信することができる。
【0068】
〔ノード情報の取得方法〕
図3Aは、HGW3によるノード情報の取得方法の一例を示すシーケンス図である。
図3に示すように、HGW3の管理制御部34は、物理ポートP1への通信機器の接続を検出すると(ステップS11)、所定の制御通信を実行し(ステップS12)、通信相手(ONU2A)から取得したノード情報をメモリに保持する(ステップS13)。
ステップS12の制御通信は、例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)通信又はインフォメーションOAMフレームの送受信などにより実行される。
【0069】
図3Bは、HGW3が保持するノード情報の管理テーブル40の一例を示す図である。
図3Bに示すように、管理テーブル40は、例えば、「ポート番号」、「機器種別」、及び「MACアドレス」、「プロダクトID」、及び「ベンダー」のカラムを含む表形式のデータよりなる。
「機器種別」、「MACアドレス」、「プロダクトID」、及び「ベンダー」は、管理制御部34が制御通信によって取得する通信機器のノード情報の一例である。
【0070】
「ポート番号」には、接続を検出した物理ポートPiの番号値が記され、「機器種別」には、接続を検出した通信機器の種別が記され、「MACアドレス」には、接続を検出した通信機器のMACアドレスのアドレス情報が記される。
「プロダクトID」には、接続を検出した通信機器の製品番号が記され、「ベンダー」には、接続を検出した通信機器の製造元が記される。
【0071】
〔電源断の通知方法1〕
図4は、HGW3とプラガブル型ONU2Aが実行する、電源断の通知方法の一例(通知方法1)を示すシーケンス図である。
図4の通知方法1は、HGW/ONU間で独自の制御フレームを送受信し、ONU/OLT間で拡張OAMフレームを送受信する方法である。具体的には、次の通りである。
【0072】
図4に示すように、HGW3の管理制御部34は、自装置の電源断を検出すると(ステップS21)、電源断をONU2Aに通知するための独自の制御フレームを生成し(ステップS22)、ONU2AのPON処理部22に送信する(ステップS23)。
上記の制御フレームは、例えば、DA=ONU2Aのアドレス情報、SA=HGW3のアドレス情報、Length/type=0xfffであり、データ領域に電源断を表すイベントIDを含むイーサネットフレームよりなる。
【0073】
従って、上記の制御フレームは、ONU2A内において、端子モジュール24からPHY処理部23に入力され、PHY処理部23においてレイヤ2の電気信号に変換されてPON処理部22に入力される。
なお、管理制御部34は、メモリに記憶された管理テーブル40を参照して、制御フレームのDAに記すONU2Aのアドレス情報を決定する。
【0074】
プラガブル型ONU2AのPON処理部22は、上記の制御フレームを受信すると、電源断をOLT1に通知するための拡張OAMフレームを生成し(ステップS24)、OLT1の管理制御部14に送信する(ステップS25)。
上記の拡張OAMフレームは、例えば、DA=スロープロトコル用のマルチキャストのアドレス情報、SA=ONU2Aのアドレス情報、イベントID=電源断(Dying Gasp)である拡張OAMフレームよりなる。
【0075】
〔電源断の通知方法2〕
図5は、HGW3とプラガブル型ONU2Aが実行する、電源断の通知方法の別例(通知方法2)を示すシーケンス図である。
図5の通知方法2は、HGW/ONU間で拡張OAMフレームを送受信し、ONU/OLT間でも拡張OAMフレームを送受信する方法である。具体的には、次の通りである。
【0076】
図5に示すように、HGW3の管理制御部34は、自装置の電源断を検出すると(ステップS31)、電源断をONU2Aに通知するための拡張OAMフレームを生成し(ステップS32)、ONU2AのPON処理部22に送信する(ステップS33)。
上記の拡張OAMフレームは、例えば、DA=スロープロトコル用のマルチキャストのアドレス情報、SA=HGWのアドレス情報、イベントID=電源断(Dying Gasp)である拡張OAMフレームよりなる。
【0077】
従って、上記の拡張OAMフレームは、ONU2A内において、端子モジュール24からPHY処理部23に入力され、PHY処理部23においてレイヤ2の電気信号に変換されてPON処理部22に入力される。
【0078】
プラガブル型ONU2AのPON処理部22は、上記の拡張OAMフレームを受信すると、拡張OAMフレームに対して送信元の書き換え処理を実行し(ステップS34)、処理後のOAMフレームをOLT1の管理制御部14に送信する(ステップS35)。
上記の書き換え処理は、ONU2AのPON処理部22が、HGW3から受信した拡張OAMフレームの送信元アドレスを、自装置(ONU2A)のアドレス情報に書き換える処理である。
【0079】
〔電源断の通知対象の限定方法〕
上述の通り、本実施形態のPONシステムでは、HGW3が、下記の第1フレームをONU2Aに送信し、ONU2Aが、受信した第1フレームを下記の第2フレームに変換してOLT1に送信する。第1フレームは、独自の制御フレーム又は拡張OAMフレームであり、第2フレームは、拡張OAMフレームである。
第1フレーム:HGW3の電源断を通知するための制御フレーム
第2フレーム:ONU2Aの電源断を通知するための制御フレーム
【0080】
ここで、ONU2Aが上記のフレーム変換処理に非対応の通信機器である場合は、受信側で解釈不能な制御フレームがONU2Aに送信されることになり、ONU2Aが誤作動を起こす可能性がある。
そこで、上記のような誤作動を未然に防止するため、ONU2Aが上記のフレーム変換処理に対応する通信機器か否かを判定し、対応するONU2Aに対してのみ第1フレームを送信し、非対応のONU2Aには、第1フレームを送信しないことが好ましい。
【0081】
図6は、HGW3が保持するONU2Aの判定テーブル41の一例を示す図である。判定テーブル41は、管理制御部34のメモリに予め登録される。
図6に示すように、判定テーブル40は、例えば、「プロダクトID」、「ベンダー」、及び「対応状況」のカラムを含む表形式のデータよりなる。対応状況が「対応」のONU2Aは、フレーム変換処理が可能であることを意味し、対応状況が「非対応」のONU2Aはフレーム変換処理が不可能又は可否が不明であることを意味する。
【0082】
この場合、HGW3の管理制御部34は、管理テーブル40に含まれる「プロダクトID」及び「ベンダー」の識別情報をキーとして判定テーブル41を探索し、自装置に接続中のONU2Aがフレーム変換処理に対応するか否かを判定すればよい。
図3Bの管理テーブル40では、HGW3に接続中のONU2AのプロダクトIDがAAA1234であり、ベンダーがA社である。また、
図6の判定テーブル41では、プロダクトID=AAA1234でかつベンダー=A社の「対応状況」は「対応」である。
【0083】
従って、HGW3の管理制御部34は、自装置に接続中であるONU2Aを、第1フレームから第2フレームへの変換処理が可能なONU2であると判断する。
なお、管理制御部34によるONU2Aに関するフレーム変換処理の対応可否は、プロダクトID及びベンダーの双方に基づいて判定するだけでなく、いずれか一方の情報のみに基づいて判定することにしてもよい。
【0084】
〔HGWの内部構成の変形例〕
図7は、OLT1、プラガブル型ONU2A、及びHGW3の内部構成の別例を示すブロック図である。
図7の光通信システムは、OLT1及びONU2Aの内部構成については
図2の場合と同様であるが、HGW3の内部構成が
図2の場合と異なる。
具体的には、HGW3の管理制御部(CPU)34は、電源スイッチ39のオフ操作から所定時間が経過した後に電力の切断を実行可能であり、HGW3の電源部は、オフディレイ回路36及び電源断センサ37を有していない。
【0085】
電力変換部35は、ACアダプタ38から入力される直流電圧を降圧して出力する。電力変換部35の出力側は、HGW3内の各部31~34とスロットイン方式の物理ポートP1の電源端子に接続される。
従って、電力変換部35は、自装置内の各部31~34に出力電圧を印加するとともに、物理ポートP1に接続されたプラガブル型ONU2Aの端子モジュール24に含まれる所定の端子にも出力電圧を印加する。
【0086】
図7に示すように、電源スイッチ39は、管理制御部34及び電力変換部35にそれぞれ接続される。電源スイッチ39は、オン操作に基づくオン信号S1を電力変換部35に出力し、オフ操作に基づくオフ信号S2を管理制御部34に出力する。
電力変換部35は、オン信号S1により起動し、電力変換部35からの停止信号S3により動作を停止する。管理制御部34は、オフ信号S2が入力されると、所定の終了処理を実行してから電力変換部35に停止信号S3を出力する。
【0087】
管理制御部34は、上記の終了処理の一環として、電源スイッチ39のオフ操作に基づく自装置の電源断を通知するための制御フレームを生成し、生成した制御フレームを、自装置に接続中のONU2A及びユーザ端末5に送信する。
このように、
図7のHGW3では、管理制御部34が検出可能な電源断の原因事象は、電源スイッチ39のオフ操作に限られる。
【0088】
従って、上記のHGW3を採用する
図7の光通信システムの場合には、
図4の電源断の通知方法1において、ステップS21の「電源断を検出」を、「電源スイッチのオフ操作を検出」に読み替えればよい。
同様に、上記のHGW3を採用する
図7の光通信システムの場合には、
図5の電源断の通知方法2において、ステップS31の「電源断を検出」を、「電源スイッチのオフ操作を検出」に読み替えればよい。
【0089】
図7の光通信システムにおいて、ACアダプタの取り外し、コンセントの取り外し、及び停電などによる電源断後に動作を所定時間だけ継続させる場合には、
図2のオフディレイ回路36及び電源断センサ37をHGW3に設けることにすればよい。
この場合、管理制御部34は、電源スイッチ39のオフ操作以外の上記の電源断を電源断センサ37により検出し、電源スイッチ39のオフ操作を電源スイッチ39からのオフ信号S2により検出する。
【0090】
〔その他の変形例〕
上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、ONU2Aを接続可能な通信装置がHGW3である場合を例示したが、当該通信装置は、マネジメントスイッチ又は汎用サーバなど、少なくとも1つのONU2A用の物理ポートを有する通信装置であればよい。
【0091】
上述の実施形態において、ONU2Aを接続可能な通信装置が汎用サーバなどのユーザ端末5を接続しない通信装置である場合には、ユーザ端末5用の物理ポートP2は不要となる。
【符号の説明】
【0092】
1 OLT(局側装置)
2 ONU(宅側装置)
2A プラガブル型ONU(宅側装置)
2B 据え置き型ONU(宅側装置)
3 HGW(通信装置)
4 PON回線
5 ユーザ端末
6 光スプリッタ
7 幹線ファイバ
8 支線ファイバ
11 光トランシーバ(TRx)
12 PON処理部
13 L2スイッチ
14 管理制御部
15 管理用端末
21 光トランシーバ(TRx)
22 PON処理部
23 PHY処理部
24 端子モジュール
31 上位側送受信部(中継処理部)
32 フレーム処理部(中継処理部)
33 下位側送受信部(中継処理部)
34 管理制御部
35 DC/DCコンバータ(電源部)
36 オフディレイ回路(電源部)
37 電源断センサ(電源部)
38 ACアダプタ
39 電源スイッチ
40 管理テーブル
41 判定テーブル
P1 物理ポート
P2 物理ポート