(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20240305BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B65G1/00 511A
B65G49/07 E
B65G1/00 501C
(21)【出願番号】P 2020114693
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西川 直
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193169(JP,A)
【文献】特開2005-182256(JP,A)
【文献】特開平06-156914(JP,A)
【文献】特開2006-323435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に吊り下げ支持され
て走行経路に沿って配置された走行レールと、前記走行レールに沿って走行する物品搬送車と、前記走行レールに隣接する位置に前記走行レールに沿って配置されて作業者が載って作業を行う作業台と、を備えた物品搬送設備であって、
前記作業台は、前記物品搬送車の走行方向に沿う走行方向視において前記走行経路とは重複しないように設置され、
前
記走行方向に沿って前記作業台が設置された範囲を少なくとも含む、予め規定された規定範囲内に前記走行レールに沿って配列された複数の警告灯と、
複数の前記警告灯の点灯及び消灯を制御する警告灯制御部と、
前記規定範囲への前記物品搬送車の接近を検出する搬送車検出部と、を備え、
前記警告灯制御部は、前記搬送車検出部による検出結果に基づいて、前記物品搬送車の前記作業台への接近に応じて複数の前記警告灯を前記走行方向の上流側から前記走行方向の下流側に向かって順番に点灯させる、物品搬送設備。
【請求項2】
前記警告灯制御部は、前記物品搬送車の走行速度に同期して、前記物品搬送車よりも前記下流側に位置する前記警告灯が点灯するように制御する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記警告灯制御部は、前記搬送車検出部により前記物品搬送車の接近を検出した場合に、予め規定された前記物品搬送車の規定走行速度に基づいて、複数の前記警告灯のそれぞれを点灯させる点灯時刻を決定する、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記警告灯制御部は、前記物品搬送車の走行速度が高くなるに従って、最も前記下流側で点灯する前記警告灯と前記物品搬送車との距離が長くなるように、それぞれの前記警告灯の点灯を制御する、請求項1から3の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記作業台には前記作業者の存否を検出する作業者検出センサが備えられ、前記警告灯制御部は、前記作業者検出センサが前記作業者が存在することを検出している場合に、前記警告灯を点灯させ、前記作業者検出センサが前記作業者が存在することを検出していない場合には前記警告灯を点灯させない、請求項1から4の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記作業台は、架台支持柱を介して前記天井に吊り下げ支持されており、前記警告灯は、前記架台支持柱を介して支持されている、請求項1から5の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記警告灯は、前記作業台の床面から前記天井までの間の高さに設置されている、請求項1から6の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に吊り下げ支持された走行レールに沿って走行する物品搬送車と、走行レールに隣接する位置に走行レールに沿って配置されて作業者が載って作業を行う作業台とを備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
天井に吊り下げ支持された走行レールに沿って走行する物品搬送車を備える物品搬送設備において、吊り下げされた状態の物品搬送車や走行レールのメンテナンスは、しばしば高所において実施される。特開2018-193169号公報には、床面を走行する台車本体と、台車本体に連結されたパンタグラフ構造の支持部と、支持部に支持された作業台と、支持部を伸縮させて作業台を昇降させる昇降部とを備えた高所作業用台車を使って作業者がメンテナンスを行う形態が例示されている。また、特開2018-70341号公報には、高所における作業中に、作業者と物品搬送車とが接触することを防止するために、走行レールに通行規制装置を設置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-193169号公報
【文献】特開2018-70341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2018-193169号公報のような高所作業用台車は、任意の場所に移動し易いが、メンテナンスの際に高所作業用台車を走行させる必要がある。このため、機動性に限界があり、確認を主体とするような日常的な点検に向いているとは言い難い。そこで、走行レールに沿って作業者が通行可能な作業台や作業通路(しばしばキャットウォークと称される)が設置される場合がある。このような作業台や作業通路は、走行経路に沿った方向視で、物品搬送車の走行軌跡と重複しない位置に設けられる。従って、通常は作業者が物品搬送車に接触する可能性は低く、作業者が作業台や作業通路に居る場合も、特開2018-70341号公報のように、通行規制装置を用いて物品搬送車の通行を制限するようなことは行われないことが多い。通行規制装置を用いると、作業者の安全性が確保される一方で物品搬送車の稼働率は低下するが、走行レールに沿った作業台や作業通路を設けることで稼働率の低下を抑制することができる。但し、作業者が作業台や作業通路から走行レールの側に身を乗り出したり、腕等を走行レールの方向に伸ばしたりした場合には、走行中の物品搬送車と作業者とが接触する可能性がある。
【0005】
上記背景に鑑みて、天井に吊り下げ支持された走行レールに沿って走行する物品搬送車と、走行レールに沿って配置されて作業者が載って作業を行う作業台とを備えた物品搬送設備において、搬送効率の低下を抑制しつつ作業者の安全性を高めることのできる技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた物品搬送設備は、天井に吊り下げ支持されて走行経路に沿って配置された走行レールと、前記走行レールに沿って走行する物品搬送車と、前記走行レールに隣接する位置に前記走行レールに沿って配置されて作業者が載って作業を行う作業台と、を備えた物品搬送設備であって、前記作業台は、前記物品搬送車の走行方向に沿う走行方向視において前記走行経路とは重複しないように設置され、前記物品搬送車の走行方向に沿って前記作業台が設置された範囲を少なくとも含む、予め規定された規定範囲内に前記走行レールに沿って配列された複数の警告灯と、複数の前記警告灯の点灯及び消灯を制御する警告灯制御部と、前記規定範囲への前記物品搬送車の接近を検出する搬送車検出部と、を備え、前記警告灯制御部は、前記搬送車検出部による検出結果に基づいて、前記物品搬送車の前記作業台への接近に応じて複数の前記警告灯を前記走行方向の上流側から前記走行方向の下流側に向かって順番に点灯させる。
【0007】
この構成によれば、作業台に物品搬送車が接近すると、複数の警告灯が走行方向の上流側から下流側に向かって順番に点灯する。これにより、作業台に載っている作業者は、物品搬送車が接近していることを、点灯する警告灯によって認知することができる。警告灯は、上流側から下流側に向かって点灯するから、物品搬送車の進行方向に合わせて、適切に物品搬送車が接近していることを作業者に報知することができる。即ち、本構成によれば、搬送効率の低下を抑制しつつ作業者の安全性を高めることのできる物品搬送設備を実現することができる。
【0008】
物品搬送設備のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図10】警告灯の制御形態の一例を示すシーケンス図
【
図11】警告灯を備えた物品保管設備の一例を示すブロック図
【
図12】警告灯を3備えた物品保管設備の他の例を示すブロック図
【
図13】警告灯を備えた物品保管設備の他の例を示すブロック図
【
図14】警告灯の制御形態の他の例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、物品保管設備の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図5に示すように、物品搬送設備100は、天井に吊り下げ支持されて走行経路1に沿って設置された走行レール2と、走行レール2上を走行経路1に沿って走行して物品Wを搬送する物品搬送車3と、を備えている。物品搬送車3は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)やフォトマスク等を収容するレチクルを物品Wとして搬送する。本実施形態では、物品WとしてFOUPを例示している。また、以下の説明では、走行経路1に沿った方向を走行方向Y、水平面に沿うと共に走行方向Yに直交する方向を幅方向Xとする。上下方向Zは、走行方向Y及び幅方向Xに直交する方向である。
【0011】
図1に示すように、走行経路1は、1つの環状の主経路1Mと、複数の処理装置Pを経由する環状の複数の副経路1Sと、これら主経路1Mと副経路1Sとを接続する接続部Jとを備えている。接続部Jは、主経路1Mから副経路1Sに向けて物品搬送車3を分岐走行させる分岐部と、副経路1Sから主経路1Mに向けて物品搬送車3を合流走行させる合流部とを含む。物品搬送車3は、走行経路1は一方通行であり、物品搬送車3は、走行経路1を走行方向上流側Y1から走行方向下流側Y2に向かって走行する(
図7等参照)。
【0012】
図2及び
図3に示すように、物品搬送車3は、走行経路1に沿って天井から吊り下げ支持されて配置された一対の走行レール2に案内されて走行経路1に沿って走行する走行部9と、走行レール2の下方に位置して走行部9に吊り下げ支持された搬送車本体10と、走行経路1に沿って配設された給電線11から非接触で駆動用電力を受電する受電部12とを備えている。また、搬送車本体10には、物品Wを吊り下げて保持する物品保持部13と、物品保持部13を昇降させる昇降部14とが備えられている。物品搬送車3は、
図2及び
図3に示すように、物品保持部13を上昇させた状態で走行して物品Wを搬送する。
【0013】
図4に示すように、物品搬送設備100は、床面側に設置されて物品Wが載置される載置台104を備えている。物品搬送車3は、物品保持部13を下降させた状態で載置台104との間で物品Wを移載する。載置台104は、物品搬送設備100の複数箇所に配置されている。例えば、載置台104は、それぞれの処理装置Pや、
図1における図外の物品保管庫に配置されている。
【0014】
本実施形態では、
図3に示すように、1台の物品搬送車3に2つの走行部9が備えられ、それぞれの走行部9により共通の搬送車本体10が吊り下げ支持されている。2つの走行部9は同じ構成であり、例えばそれぞれの走行部9に受電部12が備えられている。それぞれの走行部9は、物品搬送車3の走行方向Yに沿って並んで配置されている。
【0015】
図2及び
図3に示すように、それぞれの走行部9には、電動式の走行用アクチュエータ35(
図5参照)にて回転駆動される一対の走行輪15が備えられている。走行輪15は、走行レール2のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、それぞれの走行部9には、上下方向Zに沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪16が、一対の走行レール2における内側面に接当する状態で備えられている。搬送車本体10には、
図5に示すように、物品保持部13を昇降させる昇降用アクチュエータ34、物品Wを把持することによって保持する物品保持部13を駆動する保持用アクチュエータ33等のアクチュエータ、及びそれらのアクチュエータを駆動する駆動回路等が備えられている。尚、これらのアクチュエータは、例えばモータやソレノイド等である。
【0016】
物品搬送車3は、物品搬送設備100の全体を管理する設備制御装置H1(MCP:Material Control Processor)からの搬送指令に基づいて、物品Wを異なる載置台104の間で搬送する。本実施形態では、設備制御装置H1とそれぞれの物品搬送車3とは、ワイヤレス通信によって通信可能に構成されている。それぞれの物品搬送車3は、搬送車制御装置31を備えており、搬送指令に基づいて自律制御により物品搬送車3を走行させ、指定された載置台104の上方で停止して、物品保持部13を昇降させることによって物品Wを移載する。
【0017】
尚、上述したように、走行経路1は、複数の接続部Jを備えており、それぞれの接続部Jでは1つの経路が複数に分岐したり、複数の経路が1つの経路に合流したりする。例えば、ある物品搬送車3が分岐部において分岐する場合、分岐先の経路に別の物品搬送車3が存在すると、分岐後に当該別の物品搬送車3に追突する可能性がある。また、ある物品搬送車3が合流部において合流する場合、合流先の経路に別の物品搬送車3が存在すると、合流時に当該別の物品搬送車3に接触したり、合流後に当該別の物品搬送車3が追突したりする可能性がある。
【0018】
このため、接続部Jにおける物品搬送車3の通行を調停するために、物品搬送設備100は、ゾーン制御装置H2(ZCU:Zone Control Unit)を備えている。走行経路1には、複数の管理ゾーンE(
図12参照)が設定され、ゾーン制御装置H2は、それぞれの管理ゾーンEに備えられている。つまり、管理ゾーンEは、走行経路1において接続部Jなどの複数の物品搬送車3の通行を調停する必要のある領域に設定され、ゾーン制御装置H2は、それぞれの管理ゾーンEに配置されている。本実施形態では、ゾーン制御装置H2とそれぞれの物品搬送車3とは、ワイヤレス通信によって通信可能に構成されている。物品搬送車3は、ゾーン制御装置H2が通行を許可する場合に、接続部Jを通過する。
【0019】
ところで、物品搬送車3に対してメンテナンスが行われる際、物品搬送車3を走行レール2から床面側に下ろす場合もあるが、簡単な調整や点検等であれば、物品搬送車3が走行レール2に吊り下げ支持された状態で行われることもある。このため、例えば
図6に示すように、走行レール2に隣接する位置に作業者80が載って作業を行う作業台4が配置される場合がある。本実施形態では、この作業台4は、架台支持柱41を介して天井に吊り下げ支持されている。また、作業台4は、走行レール2に沿って配置されているが、走行レール2の全域に亘って設けられる必要はなく、部分的に設けられていればよい。物品搬送車3は天井側に配置された走行レール2に吊り下げ支持されているので、作業台4の床面42と物品搬送設備100の床面102とをつなぐ梯子105が作業台4に設置されている。
【0020】
尚、
図6は、走行経路1がそれぞれ物品搬送車3の走行方向Yが逆方向の第1走行経路1aと第2走行経路1bとを備えている形態を例示している。そして、作業台4が第1走行経路1aに隣接する位置に配置されている形態を例示している。しかし、作業台4は、第1走行経路1a及び第2走行経路1bの双方に設けられていてもよい。また、上述したように、作業台4は走行経路1の全域に亘って設けられる必要はないので、走行経路1の一部区間において第1走行経路1aに沿って作業台4が配置され、他の一部区間において第2走行経路1bに沿って作業台4が設置されていてもよい。
【0021】
図6に示すように、作業台4は走行経路1に走行方向Y視において走行経路1とは重複しないように設置されている。従って、通常は、作業台4に居る作業者80が走行経路1を走行する物品搬送車3に接触するようなことはない。しかし、作業者80が作業台4から走行経路1の側に身を乗り出したり、腕等を走行経路1の方向に伸ばしたりした場合には、走行中の物品搬送車3と作業者とが接触する可能性がある。このため、本実施形態では、作業台4に居る作業者80に物品搬送車3の接近を報知するための警告灯7が備えられている(
図7等参照)。
【0022】
警告灯7は、
図7に示すように、走行方向Yに沿って予め規定された規定範囲K7内に走行レール2に沿って複数個、配列されている。規定範囲K7は、物品搬送車3の走行方向Yに沿って作業台4が設置された範囲(作業台設置範囲K4)を少なくとも含む範囲に設定されている。
図7では、規定範囲K7と作業台設置範囲K4とが同じである形態を例示しているが、
図8のように、規定範囲K7は、作業台設置範囲K4よりも長い範囲に設定されていてもよい。また、
図8では、規定範囲K7が、作業台設置範囲K4よりも走行方向下流側Y2に延伸するように設定される形態を例示しているが、走行方向上流側Y1に延伸するように設定されてもよいし、走行方向Yの両側に延伸するように設定されていてもよい。
【0023】
図8に示すように、規定範囲K7が、作業台設置範囲K4よりも走行方向下流側Y2に延伸するように設定されていると、作業台4よりも走行方向下流側Y2に警告灯7を設置することができる。この場合、例えば作業台4の最も走行方向下流側Y2(下流側端部)において走行方向下流側Y2を向いて立っている作業者80に対しても、作業台4よりも走行方向下流側Y2に設置された警告灯7によって物品搬送車3の接近をより明確に報知することができる。規定範囲K7と作業台設置範囲K4とが同じである場合も、作業台4の下流側端部に設置された警告灯7が点灯すると、作業者80の側方で点灯する警告灯7に作業者80が気づく可能性はある。しかし、下流側端部よりもさらに走行方向下流側Y2の警告灯7が点灯することで、より確実に作業者80に物品搬送車3の接近を報知することができる。
【0024】
上述したように、作業台4は、架台支持柱41を介して天井101に吊り下げ支持されている。
図7及び
図8に示すように、本実施形態では、警告灯7は、架台支持柱41を介して支持されている。架台支持柱41が警告灯7を支持する支持体として兼用されることにより、警告灯7を設置する際に別途支持体を設ける必要がない。従って、警告灯7を設置することによる物品搬送設備100のコストの上昇を抑制することができる。尚、警告灯7は、
図8に示すように、走行経路1に沿うように架台支持柱41に設置された梁部材43や、張り綱(鋼線)等に支持されていてもよい。梁部材等に支持されることによって、架台支持柱41の設置間隔に関係なく、警告灯7を設置することができる。
【0025】
当然ながら、警告灯7は、架台支持柱41に直接支持されることなく、梁部材43等にのみ支持されていてもよい。また、架台支持柱41とは別に天井101から吊り下げ支持された不図示の警告灯支持体、或いは、作業台4の床面42に立設された不図示の警告灯支持体が設置され、警告灯7がこれらの警告等支持部材に設置される形態を妨げるものではない。
【0026】
また、
図7及び
図8に示すように、警告灯7は、作業台4の床面42から天井101までの間の高さに設置されている。作業台4に載った作業者80が視認し易い位置に、警告灯7が設置されるので、物品搬送車3が接近することを適切に作業者80に報知することができる。尚、より好ましくは、作業台4の床面42から150cm前後の高さ、つまり、平均的な作業者80の顔の位置の近傍に警告灯7が設置されるとよい。
【0027】
図9及び
図10に示すように、複数の警告灯7は、搬送車検出部5による検出結果に基づいて、警告灯制御部6により点灯及び消灯を制御される。搬送車検出部5は、規定範囲K7への物品搬送車3の接近を検出する。警告灯制御部6は、搬送車検出部5による検出結果に基づいて、物品搬送車3の作業台4への接近に応じて複数の警告灯7を走行方向上流側Y1から走行方向下流側Y2に向かって順番に点灯させる(順次点灯)。ここで、複数の警告灯7の内、最も走行方向上流側Y1に配置された警告灯7を最上流側警告灯71と称し、最も走行方向下流側Y2に配置された警告灯7を最下流側警告灯72と称する。警告灯制御部6は、最初に最上流側警告灯71が点灯し、最後に最下流側警告灯72が点灯するように、走行方向Yに沿った配置順に警告灯7を点灯させる。尚、消灯については、点灯と同じ順で、順次、消灯されても良いし、物品搬送車3が通過した後に、一斉に消灯されてもよい。
【0028】
即ち、作業台4に物品搬送車3が接近すると、複数の警告灯7が走行方向上流側Y1から走行方向下流側Y2に向かって順番に点灯する。これにより、作業台4に載っている作業者80は、物品搬送車3が接近していることを、点灯する警告灯7によって認知することができる。警告灯7は、走行方向上流側Y1から走行方向下流側Y2に向かって点灯するから、物品搬送車3の進行方向に合わせて、物品搬送車3が接近していることを、適切に作業者80に報知することができる。尚、搬送車検出部5は、例えば、
図11に示すように、作業台4よりも走行方向上流側Y1に設置された搬送車検出センサ51とすることができる。
【0029】
また、搬送車検出部5は、例えば、
図12に示すように、作業台4を含む領域に設定された管理ゾーンEを管理するゾーン制御装置H2とすることもできる。この際、管理ゾーンEへの物品搬送車3の進入を検出するゾーン進入検出センサ52が備えられ、ゾーン制御装置H2がゾーン進入検出センサ52の検出結果に基づいて物品搬送車3を検出してもよい。或いは、不図示のゾーン退出検出センサによる検出結果に基づいて、作業台4が設置された位置よりも走行方向上流側Y1のゾーンからの退出後の走行速度と時間とに基づいて物品搬送車3の位置を推定して、警告灯7が点灯されてもよい。尚、この場合、ゾーン制御装置H2と警告灯制御部6とは、設備内ネットワーク90を介して接続されている。
【0030】
また、搬送車検出部5は、
図13に示すように、設備制御装置H1とすることもできる。この場合、設備制御装置H1も、設備内ネットワーク90を介して警告灯制御部6と接続されている。設備制御装置H1は、物品搬送車3と通信可能に構成されている。また、設備制御装置H1からの搬送指令に基づいて自律走行する物品搬送車3は、走行経路1における自車の位置を所定の許容誤差の範囲内で把握している。例えば、物品搬送車3は、走行経路1沿って設置された位置マーカーから読み取った情報に基づいて走行経路1における自車位置を取得することができる。位置マーカーはバーコード(一次元・二次元の何れでも可)や文字等で示された位置標示や、無線タグ等である。物品搬送車3は、バーコードリーダや文字認識機能を備えたリーダ、無線タグリーダ等を備えて構成され、位置マーカーの情報を取得することができる。また、物品搬送車3は、例えば、走行輪15の回転を検出するエンコーダ等の距離センサの検出結果に基づいて、基準位置からの走行距離に応じた位置を取得することもできる。これらの自車位置の情報は、物品搬送車3から設備制御装置H1へ送信することができ、設備制御装置H1は、それぞれの物品搬送車3の自車位置情報に基づいて作業台4への物品搬送車3の接近を検出することができる。
【0031】
例えば、警告灯制御部6は、物品搬送車3の走行速度に同期して、物品搬送車3よりも下流側に位置する警告灯7が点灯するように制御する。複数の警告灯7が順次、点灯していく速度が物品搬送車3の走行速度と同期していることで、作業者80は接近する物品搬送車3の挙動を体感し易い。
【0032】
尚、警告灯制御部6は、物品搬送車3の走行速度に同期せずに警告灯7を点灯させてもよい。但し、警告灯制御部6は、最上流側警告灯71の点灯から最下流側警告灯72の点灯までの点灯速度が、物品搬送車3の走行速度よりも速くなるように、警告灯7を点灯させると好適である。このように警告灯7を点灯させることにより、物品搬送車3が接近するよりも先に警告灯7を点灯させることができる。
【0033】
また、警告灯制御部6は、搬送車検出部5により物品搬送車3の接近を検出した場合に、予め規定された物品搬送車3の規定走行速度に基づいて、複数の警告灯7のそれぞれを点灯させる点灯時刻を決定してもよい。作業台4が設置されている領域における物品搬送車3の走行速度は、予め規定しておくことが可能である。この場合には、物品搬送車3の走行速度の情報を逐次、取得しなくても、物品搬送車の走行速度に応じて警告灯を点灯させることができる。
【0034】
尚、規定走行速度は、等速には限らない。加速度が既知であれば、規定走行速度は、加減速を伴っていてもよい。この場合も、警告灯制御部6は、規定走行速度に同期して、警告灯7が点灯するように制御することができる。また、警告灯制御部6は、最上流側警告灯71の点灯から最下流側警告灯72の点灯までの点灯速度が、物品搬送車3の規定走行速度よりも速くなるように、警告灯7を点灯させてもよい。
【0035】
ところで、物品搬送車3の走行速度が高い場合は、当然ながら走行速度が低い場合に比べて単位時間当たりに物品搬送車3が走行する距離が長くなる。従って、警告灯7の点灯によって作業者80に物品搬送車3の接近を報知した場合に、物品搬送車3が作業者80に接近するまでの時間は、物品搬送車3の走行速度が高い場合の方が、走行速度が低い場合に比べて短くなる。このため、作業者80が警告灯7の点灯に気づいてから予防安全行動を行うまでの時間が短くなる。従って、警告灯制御部6は、物品搬送車3の走行速度が高くなるに従って、最も走行方向下流側Y2で点灯する警告灯7(最下流側警告灯72)と物品搬送車3との距離が長くなるように、それぞれの警告灯7の点灯を制御するとよい。警告灯制御部6がこのように制御すると、点灯した警告灯7と接近する物品搬送車3との距離が長くなるので、作業者80は予防安全行動を行うまでの時間を確保することができる。
【0036】
また、作業者80が作業台4に載っていない場合には、物品搬送車3の接近を報知する対象が居ないため、警告灯7を点灯させなくてもよい。このため、
図14に示すように、作業台4における作業者80の存否を検出する作業者検出センサ8が備えられていてもよい。この場合、警告灯制御部6は、作業者検出センサ8が作業者80が存在することを検出している場合に、警告灯7を点灯させ、作業者検出センサ8が作業者80が存在することを検出していない場合には警告灯7を点灯させないように制御する。これによって、報知が不要な警告灯7が点灯することを抑制することができる。尚、このように警告灯7が制御されると、物品搬送車3が作業台4に接近した際に、警告灯7が点灯する場合には作業台4に作業者80がおり、警告灯7が点灯しない場合には作業台4に作業者80が居ないと、他の作業者80等が判別することも可能である。
【0037】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について簡単に説明する。
【0038】
1つの態様として、天井に吊り下げ支持された走行レールと、前記走行レールに沿って走行する物品搬送車と、前記走行レールに隣接する位置に前記走行レールに沿って配置されて作業者が載って作業を行う作業台と、を備えた物品搬送設備は、前記物品搬送車の走行方向に沿って前記作業台が設置された範囲を少なくとも含む、予め規定された規定範囲内に前記走行レールに沿って配列された複数の警告灯と、複数の前記警告灯の点灯及び消灯を制御する警告灯制御部と、前記規定範囲への前記物品搬送車の接近を検出する搬送車検出部と、を備え、前記警告灯制御部は、前記搬送車検出部による検出結果に基づいて、前記物品搬送車の前記作業台への接近に応じて複数の前記警告灯を前記走行方向の上流側から前記走行方向の下流側に向かって順番に点灯させる。
【0039】
この構成によれば、作業台に物品搬送車が接近すると、複数の警告灯が走行方向の上流側から下流側に向かって順番に点灯する。これにより、作業台に載っている作業者は、物品搬送車が接近していることを、点灯する警告灯によって認知することができる。警告灯は、上流側から下流側に向かって点灯するから、物品搬送車の進行方向に合わせて、適切に物品搬送車が接近していることを作業者に報知することができる。即ち、本構成によれば、搬送効率の低下を抑制しつつ作業者の安全性を高めることのできる物品搬送設備を実現することができる。
【0040】
ここで、前記警告灯制御部は、前記物品搬送車の走行速度に同期して、前記物品搬送車よりも前記下流側に位置する前記警告灯が点灯するように制御すると好適である。
【0041】
この構成によれば、物品搬送車の位置に応じて、適切に警告灯が点灯するように制御される。複数の警告灯が順次、点灯していく速度が物品搬送車の走行速度と同期していることで、作業者は接近する物品搬送車の挙動を体感し易い。
【0042】
また、前記警告灯制御部は、前記搬送車検出部により前記物品搬送車の接近を検出した場合に、予め規定された前記物品搬送車の規定走行速度に基づいて、複数の前記警告灯のそれぞれを点灯させる点灯時刻を決定すると好適である。
【0043】
作業台が設置されている領域における物品搬送車の走行速度は、予め規定しておくことが可能である。この場合には、物品搬送車の走行速度の情報を逐次、取得しなくても、物品搬送車の走行速度に応じて警告灯を点灯させることができる。
【0044】
また、前記警告灯制御部は、前記物品搬送車の走行速度が高くなるに従って、最も前記下流側で点灯する前記警告灯と前記物品搬送車との距離が長くなるように、それぞれの前記警告灯の点灯を制御すると好適である。
【0045】
物品搬送車の走行速度が高い場合は、当然ながら走行速度が低い場合に比べて単位時間当たりに物品搬送車が走行する距離が長くなる。従って、警告灯の点灯によって作業者に物品搬送車の接近を報知した場合に物品搬送車が作業者に接近するまでの時間は、物品搬送車の走行速度が高い場合の方が、走行速度が低い場合に比べて短くなる。即ち、作業者が警告灯の点灯に気づいてから予防安全行動を行うまでの時間が短くなる。本構成によれば、物品搬送車の走行速度が高くなるに従って点灯する警告灯と物品搬送車との距離が長くなるので、作業者は予防安全行動を行うまでの時間を確保することができる。
【0046】
また、前記作業台には前記作業者の存否を検出する作業者検出センサが備えられ、前記警告灯制御部は、前記作業者検出センサが前記作業者が存在することを検出している場合に、前記警告灯を点灯させ、前記作業者検出センサが前記作業者が存在することを検出していない場合には前記警告灯を点灯させないと好適である。
【0047】
作業者が作業台に載っていない場合には、物品搬送車の接近を報知する対象が居ないため、警告灯を点灯させなくてもよい。従って、本構成のように、作業者検出センサの検出結果に基づいて警告灯を点灯させるか否かが制御されると好適である。
【0048】
また、前記作業台は、架台支持柱を介して前記天井に吊り下げ支持されており、前記警告灯は、前記架台支持柱を介して支持されていると好適である。
【0049】
この構成によれば、架台支持柱が警告灯を支持する支持体として兼用されるので、警告灯を設置する際に別途支持体を設ける必要がなく、警告灯を設置することによる物品搬送設備のコストの上昇を抑制することができる。
【0050】
また、前記警告灯は、前記作業台の床面から前記天井までの間の高さに設置されていると好適である。
【0051】
この構成によれば、作業台に載った作業者が視認し易い位置に、警告灯が設置されるので、物品搬送車が接近することを適切に作業者に報知することができる。
【符号の説明】
【0052】
2 :走行レール
3 :物品搬送車
4 :作業台
5 :搬送車検出部
6 :警告灯制御部
7 :警告灯
8 :作業者検出センサ
41 :架台支持柱
42 :床面(作業台の床面)
80 :作業者
100 :物品搬送設備
101 :天井
102 :床面(物品搬送設備の床面)
K4 :作業台設置範囲(走行方向に沿って作業台が設置された範囲)
K7 :規定範囲
W :物品
Y :走行方向
Y1 :走行方向上流側(上流側)
Y2 :走行方向下流側(下流側)