(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2020137017
(22)【出願日】2020-08-14
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 裕真
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117566(JP,A)
【文献】特開2020-107346(JP,A)
【文献】特開2020-123402(JP,A)
【文献】特開2020-103104(JP,A)
【文献】特開2018-151845(JP,A)
【文献】特開2018-116614(JP,A)
【文献】特開2020-072709(JP,A)
【文献】特開2020-103110(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0359906(US,A1)
【文献】特開2020-113063(JP,A)
【文献】特開2020-113062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位装置(61)と、通信装置(63)と、自動の走行および作業の動作を制御する自動運転制御装置(34)を有し、作業対象にする圃場の位置、形状および出入口の情報を含む圃場情報と圃場内および圃場間を移動するときの経路情報を取得する作業車両(1)
と、前記作業車両(1)を情報の通信により操作することが可能な遠隔操作端末(7)を備え、
前記自動運転制御装置(34)は、前記作業車両(1)の圃場での自動作業を圃場の形状からの逸脱を走行の停止により防止しながら行うよう制御する自動作業制御モード(35)と、前記作業車両(1)の自動作業を
した移動元の圃場の形状の一部から逸脱させて
移動先の圃場への移動を自動走行により行うよう制御する圃場間移動制御モード(36)を有
し、
前記自動運転制御装置(34)は、前記圃場間移動制御モード(36)において、前記作業車両(1)が前記圃場の形状の一部となる出入口を通過するときの逸脱のみを許容するよう制御するとともに、前記作業車両(1)が自動作業をする移動先の圃場の出入口に到達したときに一時停止させるよう制御し、
前記遠隔操作端末(7)は、前記自動運転制御装置(34)が前記一時停止した前記作業車両(1)の圃場間移動を再開させる制御を行うよう操作する機能(77b)を有していることを特徴とする作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記自動運転制御装置(34)は、前記圃場間移動制御モード(36)への移行およびその解除を、前記作業車両(1)の前記測位装置(61)から得られる位置情報が圃場の特定の位置に到達した検出情報に基づいて行うよう制御することを特徴とする請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動の走行および作業の動作を制御することが可能な作業車両の制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星測位システムを利用して測位しながら自律して走行および作業を行う自律走行作業車両を制御する制御システムであって、圃場毎の自律走行作業車両を操作可能な遠隔操縦装置を備え、その遠隔操縦装置を介して、圃場毎の自律走行作業車両に担当する圃場の作業領域と作業内容とを伝達することにより、圃場毎の自律走行作業車両に担当する圃場の所定の作業領域で所定の作業を行わせ、また圃場毎の自律走行作業車両の作動状態を監視するよう構成された制御システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
この制御システムは、遠隔操縦装置を介して、圃場毎の自律走行作業車両の作業終了時刻を報知し、また圃場毎の作業領域における自律走行作業車両の作業終了時刻から配車を必要とする順位を設定し、その配車を必要とする順位に基づいて配車を必要とする順位の高い自律走行作業車両の配車を優先的に行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の制御システムは、自律走行作業車両を他の圃場へ移動させる場合、その自律走行作業車両の作業終了時刻の順位に応じて配車される運搬車両に自律走行作業車両を積み込んで運搬することを教えているにとどまっている。
また、この制御システムでは、自律走行作業車両の作業終了後に圃場から運搬車両への移動やその運搬車両から次の圃場への移動を手動で運転して行う必要があり、手間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、自動の走行および作業が可能な作業車両を圃場と他の圃場の間を移動(圃場間移動)させることを容易に行うことができる作業車両の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、
測位装置(61)と、通信装置(63)と、自動の走行および作業の動作を制御する自動運転制御装置(34)を有し、作業対象にする圃場の位置、形状および出入口の情報を含む圃場情報と圃場内および圃場間を移動するときの経路情報を取得する作業車両(1)と、前記作業車両(1)を情報の通信により操作することが可能な遠隔操作端末(7)を備え、
前記自動運転制御装置(34)は、前記作業車両(1)の圃場での自動作業を圃場の形状からの逸脱を走行の停止により防止しながら行うよう制御する自動作業制御モード(35)と、前記作業車両(1)の自動作業をした移動元の圃場の形状の一部から逸脱させて移動先の圃場への移動を自動走行により行うよう制御する圃場間移動制御モード(36)を有し、
前記自動運転制御装置(34)は、前記圃場間移動制御モード(36)において、前記作業車両(1)が前記圃場の形状の一部となる出入口を通過するときの逸脱のみを許容するよう制御するとともに、前記作業車両(1)が自動作業をする移動先の圃場の出入口に到達したときに一時停止させるよう制御し、
前記遠隔操作端末(7)は、前記自動運転制御装置(34)が前記一時停止した前記作業車両(1)の圃場間移動を再開させる制御を行うよう操作する機能(77b)を有していることを特徴とする作業車両の制御システムである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両の制御システムにおいて、前記自動運転制御装置(34)は、前記圃場間移動制御モード(36)への移行およびその解除を、前記作業車両(1)の前記測位装置(61)から得られる位置情報が圃場の特定の位置に到達した検出情報に基づいて行うよう制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、自動運転制御装置(34)が自動作業制御モード(35)に加えて自動走行に基づく圃場間移動制御モード(36)を有しているので、自動の走行および作業が可能な作業車両を圃場間移動させることを自動走行にて容易に行うことができる。
また請求項1に記載の発明によれば、圃場間移動制御モード(36)において作業車両(1)が圃場の形状の一部となる出入口を通過するときの逸脱のみが許容されるので、作業車両の圃場間移動を安全に行うことができる。
さらに請求項1に記載の発明によれば、圃場間移動制御モード(36)において作業車両(1)が自動作業をする移動先の圃場の出入口に到達したときに一時停止させられ、一時停止した作業車両(1)の圃場間移動が遠隔操作端末(7)の操作により再開されるので、作業車両の圃場間移動を安全確認の機会が与えられてより安全に行うことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、圃場間移動制御モード(36)への移行およびその解除が作業車両(1)の位置情報が圃場の特定の位置に到達した検出情報に基づいて自動で行われるので、作業車両の圃場間移動をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る作業車両の制御システムを示す概要図である。
【
図2】
図1の制御システムを示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1の制御システムにおける自動作業制御モードや圃場間移動制御モードにより制御されるときのトラクタの各状態を示す概要図である。
【
図4】圃場の形状や出入口等を特定する外周記憶点や圃場内の経路情報の構成を示す概要図である。
【
図5】
図1の制御システムにおける圃場間移動制御モードの制御例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態に係る作業車両の制御システムは、
図1から
図3に示されるように、測位装置61と、通信装置63と、自動での走行および作業(自動運転)の動作を制御する自動運転制御装置の一例である自動運転制御部34を有し、圃場9での作業を行うことが可能な作業車両1を備えており、その作業車両1を圃場間移動させることを可能にする制御を行うものである。また、この制御システムは、作業車両1を情報の通信により操作することが可能な遠隔操作端末7も備えている。ここで、圃場間移動とは、ある圃場9から他の圃場9にまで移動することである。
【0021】
はじめに、この制御システムに適用される作業車両1は、その一例としてのトラクタ10である。本実施形態におけるトラクタ10は、自動での走行および作業(自動運転モード)が可能であることに加えて、操縦者の手動操作による手動での走行および作業(手動運転モード)も可能であるトラクタであり、その自動運転モードと手動運転モードが運転モード切換スイッチ59(
図2。SW:スイッチ)の操作により切り替え可能になっている。
【0022】
また、トラクタ10は、
図1に示されるように、その走行車体の後部に圃場9での所要の作業を行う作業機27が装着されている。
図1では、作業機27として3点リンク機構28等により昇降可能に取り付けられるロータリ耕うん機が例示されている。作業機27については、これに限定されるものではなく、トラクタ10に装着可能であって圃場9で行う作業に使用する作業機であればよく、例えば、播種機、草刈り機(モーア)等の作業機であってもよい。
【0023】
また、トラクタ10は、
図1に示されるように、走行車体の前部に操舵輪として機能する前輪11が、走行車体の後部に駆動輪として機能する後輪12が配置されており、また走行車体の前部にボンネット13で覆われるエンジンルーム(空間)内にエンジン14が搭載されている。また、トラクタ10は、エンジン14の回転動力を主にトランスミションケース15内の変速装置16により適宜減速させた後に伝動軸(駆動車軸)17を介して駆動輪の一例である後輪12に少なくとも伝える一方で、その回転動力の一部をトランスミションケース15の後端部から突出するPTO軸18を介して作業機27に伝えるよう構成されている。
【0024】
また、トラクタ10は、走行車体の上部にキャビン20が設けられている。キャビン20は、その内部に、運転座席21が配置され、運転座席21の前方にステアリングホイール22が配置されている。運転座席21やステアリングホイール22の近傍には、前進後進切換レバー23等の各種の操作レバーや、図示しない各種のスイッチ、必要な情報を表示する表示パネル等が配置されている。またキャビン20は、その内部の下部に、クラッチペダル24a、ブレーキペダル24b、図示しないアクセルペダル等の各種のペダルが配置されている。
【0025】
さらに、トラクタ10は、
図2に示されるように、トラクタ10の動作と作業機27の動作について総合的に制御する制御装置30を備えている。
【0026】
制御装置30は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の処理装置、ROM(Read only Memory),RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、入力装置等からなるコンピュータで構成されており、その処理装置がROM又はHDDの記憶部31に格納されている制御用のプログラム、データおよび検出情報に基づいて情報処理することで必要な制御対象に制御情報を送信するようになっている。
【0027】
また、制御装置30は、その制御機能として、トラクタ10の車両本体における動作を制御する車両制御部32と、そのトラクタ10における作業機27の動作を制御する作業機制御部33と、トラクタ10および作業機27が関係する自動走行および自動作業(自動運転)の各動作をそれぞれ制御する自動運転制御装置の一例である自動運転制御部34を有している。
【0028】
このうち車両制御部32は、例えば、エンジン14の動作と走行動作を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)等で構成されている。車両ECUについては、エンジン14の動作を専用に制御するエンジンECUと、走行動作を専用に制御する走行ECUとに分けて構成されていてもよい。
【0029】
また、車両制御部32は、
図2に示されるように、制御装置30に接続されている車両制御駆動部40を制御対象にしている。車両制御駆動部40としては、例えば、エンジン14の作動調整装置、変速装置16の変速段数や前進後進を変更する変更装置、前輪11の操舵方向(切れ角)を変更する操舵装置19を自動操縦する操縦装置、図示しないクラッチ装置の作動部やブレーキ装置の作動部等である。
【0030】
この車両制御部32は、車両制御駆動部40の動作について、その制御に必要な状態を検出する車両側の各種センサ50により検出された検出情報を取得しながら制御する。
車両側の各種センサ50は、例えば、エンジン14の回転数、走行速度、ステアリングホイール22の切れ角、操舵装置19の操舵方向、操作レバー、操作ペダル、走行車体の傾き、燃料の残量センサ52等の各状態をそれぞれ検出する複数のセンサである。
【0031】
次に、作業機制御部33は、例えば、作業機ECU等で構成されている。作業機ECUは、農業機用の通信規格であるISOBUSに適用可能な作業機27に搭載されている。また、作業機制御部33は、
図2に示されるように、制御装置30に接続されている作業機制御駆動部48を制御対象にしている。作業機制御駆動部48としては、例えば、PTO軸18の切換装置やその変速装置、作業機27の昇降用装置49、電動モータ等である。
【0032】
この作業機制御部33は、作業機制御駆動部48の動作について、その制御に必要な状態を検出する作業機側の各種センサ57にて検出された検出情報を取得しながら制御する。作業機側の各種センサ57は、例えば、PTO軸18の回転速度、作業機27の昇降位置、駆動速度、耕うん深度等の各状態をそれぞれ検出する複数のセンサである。
【0033】
次に、自動運転制御部34は、制御装置30の制御機能の一部として、トラクタ10および作業機27が関係する自動走行時又は自動作業時における各動作を、プログラム、各種データ等に基づいて制御するよう機能する部分である。自動運転制御部34は、実際には、上記車両制御部32および作業機制御部33とそれぞれ連携して制御を実行するよう構成されている。
自動運転制御部34は、トラクタ10における上記運転モード切換スイッチ59が自動運転モードに切り替えられたことの検出情報に基づいて作動する。
この自動運転制御部34の詳細については、後述する。
【0034】
また、トラクタ10は、自動運転制御部34を有していることも関係して、
図1や
図2に示されるように、測位装置61、通信装置63、障害物センサ65、カメラ66、表示装置67、ブザー68、音声再生装置69等を備えている。
【0035】
測位装置61は、作業車両1であるトラクタ10の自己位置を測位して位置情報として取得する装置である。
この測位装置61は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用した装置で構成されており、受信アンテナ62により航法衛星からの電波をそれぞれ受信して所定時間ごとにGNSS座標を個別に取得して地球上での位置情報を取得するようになっている。受信アンテナ62は、作業車両1の所定の部位に設けられるものであり、本実施の形態におけるトラクタ10では例えば各キャビン20の上面に設けられている。
また、測位装置61は、圃場9付近等の所要の場所に基地局(例えばRTK-GNSS(Real Time Kinematic-GNSS)基地局等)を設置して、より精度の高い位置情報を入手するよう構成してもよい。
【0036】
通信装置63は、遠隔操作端末7等の機器とデータ通信が可能な装置である。通信方式としては、例えば、インターネット等の通信ネットワークや、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth)等の近距離の無線通信技術が適用される。
遠隔操作端末7以外でデータ通信を行う機器としては、遠隔管理センター、圃場管理舎等の場所に設置されるコンピュータ(サーバ)等であってもよい。
また、この通信装置63は、圃場9付近等の所要の場所に基地局を設置して通信の中継を行うよう構成してもよい。
【0037】
障害物センサ65は、トラクタ10の走行時における周囲に存在する障害物を検出するセンサであり、例えば、超音波センサ、赤外線センサ等で構成されている。カメラ66は、トラクタ10の走行時における周囲やトラクタの状態を映像で確認することができる動画撮影が可能なものである。障害物センサ65とカメラ66は、走行車体の1か所のみに限らず、障害物の検出および撮影が必要な複数の個所に配置されている。
【0038】
表示装置67は、運転座席21に座る操縦者に伝えるべき必要な情報を表示させるものであり、例えば液晶表示パネル等で構成されている。ブザー68は、主にトラクタ10の近傍にいる者に注意喚起を促すための警報音を発するものである。音声再生装置69は、主にトラクタ10の周囲にいる者に自動の走行又は作業が行われることを報知する音声を再生するものであり、例えば音声生成装置、スピーカ等で構成されている。
【0039】
そして、自動運転制御部34は、
図2や
図3に示されるように、トラクタ10の圃場9での自動作業を圃場9の形状からの逸脱を走行の停止により防止しながら行うよう制御する自動作業制御モード35と、トラクタ10の自動作業をする圃場9の形状の一部から逸脱させて他の圃場9への移動を自動走行により行うよう制御する圃場間移動制御モード36と、作業対象にする圃場9の位置、形状、出入口91等の情報を含む圃場情報と圃場9での作業情報と圃場9内および圃場9間を移動するときの経路情報を取得する情報取得部37を有している。
【0040】
情報取得部37は、作業予定の圃場9の上記圃場情報や作業情報、上記経路情報等の自動運転の制御に必要な情報を、通信装置63等の情報取得手段を介して取得するよう構成されている。情報取得部37で取得した情報は、記憶部31に一時的に保存される。
圃場情報、作業情報および経路情報は、遠隔操作端末7に保存又は作成されている情報が使用される。また、これらの情報は、トラクタ10等の作業車両1の動作について支援管理する支援管理センター等の施設に設置されるサーバに保存又は作成されている情報を使用するようにしてもよい。
【0041】
圃場情報のうち圃場9の形状の情報は、
図4に示されるように、トラクタ10で自動作業する対象の圃場9ごとに、地図情報と関連付けて予め設定されている外周記憶点Paを線で結んで得られるときの形状の情報である。
また、圃場9の出入口91の情報は、
図4に示されるように、外周記憶点Paのうち圃場9の出入口91に相当する位置として指定される出入口記憶点Pbで示される部分の情報である。出入口91は、
図4等に示されるように入口と出口が兼用のものに限らず、入口と出口が別個独立したものも含まれる。
さらに、作業情報は、遠隔操作端末7等の機器において使用者が予め計画した作業内容や条件に基づいて作成される、作業に関する情報である。
【0042】
また、圃場9内の経路情報は、例えば、
図4に符号Rs1~Rs6が付された二点鎖線で示される自動作業時における作業走行経路と、符号Rt1~Rt5が付された二点鎖線で示される作業走行経路Rs間を移動するときの旋回走行経路とで構成されている。
図4における数字に付される符号L,Rは、
図4におけるトラクタ10の前進走行時における左右の各方向を示している。
【0043】
さらに、圃場9間を移動する経路情報は、例えば、
図3に示される圃場9内の移動経路Rmと、移動元の圃場9と移動先の圃場9との間を結ぶ道路(主に農道)95の走行経路Rrとで構成されている。
図3では6つの圃場9A~9Fが例示されているが、その圃場9A~9Cと圃場9D~9Fとの間に存在する部分が道路(農道)95になる。
図3において隣り合う圃場9の間には、畔等の境界部がある。
【0044】
自動作業制御モード35は、トラクタ10が作業予定の圃場9で自動作業するときの動作を制御する機能である。自動作業の動作は、厳密には自動走行の動作が含まれる。
自動運転制御部34では、上記運転モード切換スイッチ59(
図2)が自動運転モードに切り換えられると、初期の設定として自動作業制御モード35が選択されるようになっている。
【0045】
自動作業制御モード35では、作業予定の圃場9に進入したトラクタ10を情報取得部37で取得した圃場9の作業情報や圃場9内の経路情報(作業走行経路Rsや旋回走行経路Rt等)に従って圃場9内を自動で走行させるとともに、そのトラクタ10に装着されている作業機27を作動させて自動で作業を行うよう制御する。
これにより、自動の作業が実施される。
図3や
図4に示される符号Psは自動作業の作業開始位置、符号Peは自動作業の作業終了位置を示す。
ちなみに、トラクタ10の作業予定の最初の圃場9までの移動や進入は、操縦者の手動運転(モード)により行われる。
【0046】
また、自動作業制御モード35では、トラクタ10が圃場9内で自動作業をしている場合、トラクタ10の位置情報からトラクタ10が予定の経路を外れて圃場9の形状(外周記憶点Paで囲まれる形状)の外に逸脱しそうな移動を検出したときに、そのトラクタ10を一時停止させる。これにより、トラクタ10が圃場9の形状外へ逸脱することを防止するようになっている。
この一時停止させられたときのトラクタ10は、その後、予定の経路に戻されるよう自動で後進又は操舵が行われることにより圃場9の形状内に復帰させられる。
【0047】
圃場間移動制御モード36は、トラクタ10が自動作業した圃場9から次の作業予定の圃場9へ自動走行により圃場間移動するときの動作を制御する機能である。この圃場間移動制御モード36は、自動作業制御モード35の表現に近づける観点からすると、圃場間移動時の自動走行制御モードと言い換えることもできる。
【0048】
自動運転制御部34では、圃場間移動制御モード36への移行およびその解除を、原則として、トラクタ10の測位装置61から得られる位置情報が圃場9の特定の位置に到達した検出情報に基づいて行うよう制御している。
このときの特定の位置としては、例えば、移行時には自動作業した圃場9の作業終了位置Peであり、解除時には移動先の圃場9の作業開始位置Psである。なお、圃場間移動制御モード36への移行は、例外として、後述するように遠隔操作端末7の操作により行うことができる。
【0049】
また、自動運転制御部34は、圃場間移動制御モード36になると、トラクタ10が圃場9の形状の一部となる出入口91を通過するときの逸脱のみを許容するよう制御する一方で、そのトラクタ10が圃場9の形状の一部となる出入口91以外の部分から外へ逸脱しようとするときに自動作業制御モード35のときの制御の場合と同様に停止させるよう制御する。
これにより、圃場間移動制御モード36においては、トラクタ10が圃場9の出入口91を通過した圃場間移動が可能になり、また、トラクタ10が圃場9内においてその圃場9の形状外に逸脱することが防止される。
【0050】
圃場間移動制御モード36では、トラクタ10を自動作業した圃場9から次の作業予定の圃場9へむけて、情報取得部37で取得した圃場間を移動する経路情報(圃場9内の移動経路Rmと道路95の走行経路Rr等)に従って圃場9内の一部と圃場間の道路95を自動で走行させるよう制御する。
これにより、圃場間移動時の自動の走行が実施される。
【0051】
また、圃場間移動制御モード36では、移動元の圃場9内を出入口91に移動する場合に出入口91にトラクタ10が到達するとトラクタ10を一時停止させる制御を行い、また、移動先の圃場9の出入口91にトラクタ10が到達するとトラクタ10を一時停止させる制御を行うよう構成されている。
【0052】
さらに、自動運転制御部34は、その制御に際しては、自動運転に必要な情報として、車両側の各種センサ50,作業機27側の各種センサ57等の検出情報や、測位装置61の位置情報や、通信装置63から得られる通信情報等の情報が使用される。また、その制御に際しては、自動運転に必要な情報として、障害物センサ65からの検出情報や、カメラ66からの映像情報(を画像処理した情報)等も利用される。
自動運転制御部34は、障害物センサ65からの検出情報やカメラ66からの映像情報から自動の走行および作業の障害になる障害物の有無を検出する機能を有しており、その障害物の存在を認識したときにはトラクタ10の自動運転を緊急停止させる制御を行うよう構成されている。
【0053】
一方、遠隔操作端末7は、情報の通信によりトラクタ10の少なくとも一部の動作を操作することに加えて、トラクタ10の自動の走行および作業における少なくとも一部の動作条件、動作状態等の必要な情報について管理および制御することが可能な機器である。
【0054】
遠隔操作端末7は、
図2に示されるように、上記コンピュータ等で構成される管理制御装置71をはじめとして、トラクタ10における通信装置63と情報の通信が可能な通信装置75や、キーボード、タッチパネル、スイッチ(SW)等の入力装置76や、液晶パネル、ランプ等の表示装置78を備えている。管理制御装置71は、ROM又はHDD等からなる記憶部72や、通信装置75を通してトラクタ10から必要な情報を取得する情報取得部73を有している。
【0055】
管理制御装置71は、そのコンピュータにおける処理装置が記憶部72に格納されているプログラムおよびデータと通信装置75で得られる情報に基づいて必要な情報処理をするとともに、通信装置75を介して操作対象であるトラクタ10に必要な制御情報を送信する処理をする。
記憶部72には、圃場9に関する圃場情報、自動の走行および作業における各経路Rに関する経路情報等の必要な情報が格納されている。また記憶部72には、自動作業する圃場9におけるトラクタ10の作業走行経路等を生成する経路生成プログラム等も格納され
ている。
【0056】
また、遠隔操作端末7は、
図2に示されるように、入力装置76の一部として、トラクタ10における制御装置30の自動運転制御部34を圃場間移動制御モード36に強制的に移行させるよう操作する圃場間移動制御モード移行スイッチ77aや、圃場間移動時の自動走行が一時停止されたトラクタ10の圃場間移動を再開させる圃場間移動再開スイッチ77bや、図示しない緊急時に強制で停止させる緊急停止スイッチ等を有している。
【0057】
このような遠隔操作端末7は、トラクタ10から離れた場所でトラクタ10を自動の走行および作業させる際に使用する使用者が用いる、タブレット型等の端末機器として構成されている。
なお、この遠隔操作端末7は、作業車両1のトラクタ10における運転座席21に乗車して自動又は手動で操縦する操縦者が用いてもよい。また、この遠隔操作端末7は、作業管理センター、作業監視建物等の施設に設置して用いてもよい。
【0058】
そして、本実施形態に係る作業車両1であるトラクタ10の制御システムは、次のように作動する。
【0059】
ここでは、
図3に示されるようにトラクタ10が圃場9Aにおいて自動作業をした後、次の作業予定の圃場9Fに移動する場合を想定して説明する。また自動の走行および作業の自動運転は、トラクタ10の運転座席21に操縦者が乗らない無人運転を想定しているが、運転座席21に操縦者が乗る有人運転であっても構わない。
【0060】
はじめに、トラクタ10は、操縦者の手動運転により作業予定の(移動元の)圃場9Aに移動して圃場9A内に進入した後、操縦者により運転モード切換スイッチ59が手動運転モードから自動運転モードに切り換えられる。自動運転が無人運転でされる場合は、この時点で操縦者がトラクタ10の運転座席21から降りてトラクタ10から離れる。
【0061】
制御システムでは、
図5に示されるように、自動運転制御部34において自動作業制御モード35が選択されたか否かが判断され(ステップ10:S10)、自動作業制御モード35が選択されると、移動元の圃場9Aにおいて自動作業が実行される(S11)。
この際、自動作業制御モード35の選択は、運転モード切換スイッチ59が自動運転モードに切り換えられた情報が情報取得部37で取得されることで判断される。
【0062】
これにより、トラクタ10は、自動作業制御モード35により車両制御部32を介して、移動元の圃場9Aの作業開始位置Psから圃場9A内の経路情報(作業走行経路Rs等)に従って圃場9内を自動で走行するよう制御されながら、作業機制御部33を介して作業機27による自動の作業が行われるよう制御される。
図3において(1)が付されたトラクタ10は、自動作業中の状態にあるトラクタであることを示している。
【0063】
続いて、制御システムでは、自動運転制御部34において自動作業しているトラクタ10が移動元の圃場9Aにおける特定の位置の一例である作業終了位置Peに到達したか否かが判断される(S12)。
このステップ12において作業終了位置Peに到達したと判断されると、自動運転制御部34が自動作業制御モード35から圃場間移動制御モード36に自動で移行され(S13)、しかる後、トラクタ10が圃場間移動の自動走行が開始される(S14)。このときのトラクタ10は、圃場間移動制御モード36に移行されることで、移動元の圃場9Aから移動先の圃場9Fへの圃場間移動が可能な状態になる。
【0064】
この際、作業終了位置Peに到達したか否かは、測位装置61から得られて情報取得部37で取得される位置情報が作業経路における作業終了位置Peに達したか否かで判断される。このときトラクタ10では、作業終了位置Peに達した時点で、自動作業制御モード35により作業機27が停止して非使用時の位置まで昇降用装置49にて上昇させられるよう制御される。
【0065】
このときのトラクタ10は、作業終了位置Peに到達した後に、圃場間移動制御モード36により車両制御部32を介して、移動元の圃場9Aの作業終了位置Peから圃場9A内の経路情報(圃場内の移動経路Rm)に従って圃場9A内を自動で出入口91にむけて走行するよう制御される。
図3において(2)が付されたトラクタ10は、圃場間移動時の圃場内での自動走行中の状態にあるトラクタであることを示している。
【0066】
続いて、制御システムでは、自動運転制御部34において圃場間移動時のトラクタ10が移動元の圃場9Aの形状の一部である出入口91に到達したか否かが判断される(S15)。
このステップ15において出入口91に到達したと判断されると、トラクタ10が圃場間移動時における自動走行が中断されて一時停止させられる(S16)。
【0067】
このときのトラクタ10は、自動作業制御モード35により車両制御部32を介して、出入口91で自動走行が中断されて一時停止されるよう制御される。
図3において(3)が付されたトラクタ10は、圃場間移動時の移動元の圃場の出入口91で一時停止した状態にあるトラクタであることを示している。
【0068】
続いて、制御システムでは、自動運転制御部34において圃場間移動の再開の指示があるか否かが判断される(S17)。
【0069】
この制御システムでは、圃場間移動の再開の指示を、遠隔操作端末7からの再開用の操作指示を受けることで対応するように構成されている。これにより、遠隔操作端末7における圃場間移動再開スイッチ77bが使用者によりON操作されると、その操作が圃場間移動の再開の指示として通信装置75から発信された後、トラクタ10の通信装置63で受信されて自動運転制御部34に送られる。
この際、使用者は、トラクタ10が移動元の圃場9Aの出入口91から圃場間移動しても安全か否かを確認したうえで圃場間移動の再開の指示を出すことができる。これにより、トラクタ10は安全確認の機会が与えられて安全な圃場間移動が可能になる。
【0070】
ステップ17において圃場間移動の再開の指示があったと判断されると、トラクタ10において圃場間移動時の自動走行が再開させられる(S18)。
このときのトラクタ10は、圃場間移動制御モード36により車両制御部32を介して、移動元の圃場9Aの出入口91を通過して道路95に進出した後、圃場間移動時の経路情報(道路95の走行経路Rr)に沿って自動走行して移動先の圃場9Fにむけて移動するよう制御される。これにより、圃場間移動時の道路95上の自動走行が行われる。
図3において(4)が付されたトラクタ10は、圃場間移動時における道路95(圃場外の場所)を移動中の状態にあるトラクタであることを示している。
【0071】
続いて、制御システムでは、自動運転制御部34において圃場間移動中のトラクタ10が移動先の圃場9Fの形状の一部の一例である出入口91に到達したか否かが判断される(S19)。
【0072】
このステップ19において出入口91に到達したと判断されると、トラクタ10が圃場間移動時における自動走行が中断されて一時停止させられた後(S20)、移動先の圃場9F内に自動走行により進入させられる(S21)。
【0073】
このときのトラクタ10は、自動作業制御モード35により車両制御部32を介して、出入口91で自動走行が中断されて一時停止されるよう制御される。
図3において(5)が付されたトラクタ10は、圃場間移動時の移動先の圃場の出入口91で一時停止した状態にあるトラクタであることを示している。
またこのときのトラクタ10は、自動作業制御モード35により車両制御部32を介して、例えば一時停止時から一定の時間が経過した後に、圃場間移動が再開されて移動先の圃場9Fにおける出入口91を通過して圃場9F内に進入するよう制御される。
【0074】
続いて、制御システムでは、自動運転制御部34において移動先の圃場9F内に進入中のトラクタ10が圃場9Fの特定の位置の一例である作業開始位置Psに到達したか否かが判断される(S22)。
【0075】
このステップ22において作業開始位置Psに到達したと判断されると、自動作業制御モード35により車両制御部32を介してトラクタ10が圃場間移動の自動走行が終了するよう制御されるとともに、自動運転制御部34において圃場間移動制御モード36が解除されて自動作業制御モード35に自動で移行される(S23)。
このときのトラクタ10は、圃場間移動制御モード36が解除されることで、圃場間移動が完了した状態になる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る制御システムによれば、自動運転制御部34が自動走行に基づく圃場間移動制御モード36を有しているので、自動の走行および作業が可能な作業車両1の一例であるトラクタ10を圃場間移動させること(例えば圃場9Aから圃場9Fへ移動させること)を自動走行により容易に行うことが可能になる。
【0077】
また、この制御システムでは、圃場間移動制御モード36への移行およびその解除がトラクタ10の位置情報が圃場9における特定の位置の一例である作業終了位置Peや作業開始位置Psに到達した検出情報に基づいて自動で行われるので、トラクタ10の圃場間移動が、特別な操作等が要求されることなくスムーズに行われる。
また、この制御システムでは、圃場間移動制御モード36においてトラクタ10が圃場9の形状の一部となる出入口91を通過するときの逸脱のみが許容されてそれ以外の形状の部分では逸脱しないので、トラクタ10の圃場間移動が安全に行われる。
【0078】
さらに、この制御システムでは、圃場間移動制御モード36においてトラクタ10が自動作業をする圃場9の出入口91に到達したときに一時停止させられ、一時停止したトラクタ10の圃場間移動が遠隔操作端末7の操作により再開されるので、トラクタ10の圃場間移動を安全確認の機会が与えられてより安全に行うことができる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に係る制御システムの構成例等に限定されるものでなく、以下に例示するように、本発明の骨子を逸脱しない範囲であれば適宜変更した構成を採用することが可能である。
【0080】
上記実施形態に係る制御システムにおいては、圃場間移動をするとき、トラクタ10が移動元の圃場9Aの出入口91や移動先の圃場9Fの出入口91に接近して所定の手前位置まで到達したときに、圃場間移動制御モード36が車両制御部32を介して、自動走行の速度を圃場間移動開始時における初期の設定速度よりも遅い速度に低下させて減速させる制御を行うよう構成してもよい。所定の手前位置は、出入口91に対して予め設定する距離だけ手前になる位置であり、例えば1~10mの距離だけ手前の位置に設定される。
この構成を採用した場合は、トラクタ10の圃場間移動時における圃場9の出入口91付近や出入口91通過に安全な自動走行が可能になる。
【0081】
また、上記実施形態に係る制御システムにおいては、圃場間移動において圃場9A,9Fの各出入口91に到達してそれぞれ一時停止するとき(
図5のS16,S20)、圃場間移動制御モード36が車両制御部32を介して、ブザー68により警報音を発することや、音声再生装置69により圃場間移動の自動走行が行われることを伝える音声案内を再生すること、図示しない警告ランプ灯を点灯又は点滅させること等の報知する動作を実行する制御を行うよう構成してもよい。この報知の動作は、トラクタ10が圃場9の出入口91に接近した所定の手前位置に到達したときにも行うように構成するとよい。
この構成を採用した場合は、トラクタ10が圃場間移動する際、圃場9の出入口91やその周辺においてトラクタ10の近傍にいる者にトラクタ10が圃場間移動することや出入口91を通過することを注意喚起させることができ、安全な自動走行が可能になる。
【0082】
また、上記実施形態に係る制御システムにおいては、トラクタ10が移動元の圃場9Aの出入口91に到達又は進入したときに自動運転制御部34が圃場間移動制御モード36に移行する制御を行い、また、トラクタ10が移動先の圃場9Fの出入口91に到達又は進入したときに自動運転制御部34が圃場間移動制御モード36を解除する制御を行うよう構成してもよい。
この構成の場合、移動元の圃場9Aにおける作業終了位置Peからその圃場9Aの出入口91までのトラクタ10の移動は、例えば、自動作業制御モード35による退出動作として行うよう制御し、また、移動先の圃場9Fにおける出入口91から圃場9Fの作業開始位置Psまでのトラクタ10の移動は、例えば、自動作業制御モード35による退出動作として制御するよう構成すればよい。また、この構成の場合、各出入口91に到達したときも、上記したように一時停止させる制御(
図5のS16,S20)や、上記報知の動作を行う制御を組み合わせることが好ましい。
【0083】
また、上記実施形態に係る制御システムにおいては、自動運転制御部34が圃場間移動制御モード36に移行する制御を、遠隔操作端末7における圃場間移動制御モード移行スイッチ77a(
図2)の操作を受けて行うよう構成してもよい。
この構成を採用した場合は、例えば、遠隔操作端末7の使用者の都合で手動操作を行うことにより、トラクタ10を自動作業の途中で一旦中断させた後に圃場間移動させることができる。
【0084】
さらに、上記実施形態に係る制御システムにおいては、自動運転制御部34が圃場間移動制御モード36に移行した際、燃料残量センサ52の検出情報が所定の低い残量値以下であったときに、トラクタ10を燃料の補給作業を行わせるために移動元の圃場9Aの出入口91で停止させて待機させる制御を行うよう構成してもよい。
この場合は、自動運転制御部34が圃場間移動するトラクタ10が燃料の補給作業が必要になったことを遠隔操作端末7に情報の通信により報知する制御も行うよう構成するとよい。またこの場合は、燃料の補給作業により燃料残量センサ52の検出情報が所定の高い残量値を超えたときに、圃場間移動を再開させる制御を行うように構成すればよい。
この構成を採用した場合は、例えば、トラクタ10が圃場間移動の途中で燃料切れにより停止してしまう事態が発生することを防止することができ、圃場間移動を最後まで確実に行うことが可能になる。
【0085】
またさらに、上記実施形態に係る制御システムにおいては、自動運転制御部34が圃場間移動制御モード36に移行した場合、トラクタ10が移動元の圃場9Aの出入口91と移動先の圃場9Fの出入口91の一方又はその双方において所定の角度以上に曲がって走行するときや、トラクタ10が圃場間移動の道路95で所定の角度以上に曲がって走行するときに、圃場間移動時の初期の設定速度よりも遅い速度に低下させて減速した状態で曲がって走行する制御を行うように構成してもよい。
この構成の場合、所定の角度以上に曲がって走行するのは、例えば、圃場間移動の走行経路情報を照合して判定するか、あるいは、ステアリングホイール22の切れ角の検出情報を照合して判定すればよい。
この構成を採用した場合は、例えば、トラクタ10が圃場9の出入口91で高速で曲がって通過して転倒を誘発するおそれがなくなり、また圃場間移動の道路95の途中で高速で曲がって通過するおそれがなくなり、圃場間移動を全体にわたって安全に行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、トラクタ10等の農作業用の作業車両に限られず、それ以外の各種作業を行う作業車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 …作業車両
7 …遠隔操作端末
9 …圃場
10…トラクタ(作業車両の一例)
34…自動運転制御部(自動運転制御装置の一例)
35…自動作業制御モード
36…圃場間移動制御モード
61…測位装置
77b…圃場間移動再開スイッチ(操作する機能の一例)
91…出入口(圃場の形状の一部の一例)
Pe…作業終了位置(圃場における特定の位置の一例)
Ps…作業開始位置(圃場における特定の位置の一例)