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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/06 20060101AFI20240305BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240305BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240305BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20240305BHJP
   G05G 1/38 20080401ALI20240305BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20240305BHJP
【FI】
B60T7/06 E
B60T8/17 B
B60T13/74 D
G05G1/30 E
G05G1/38
G05G5/03 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020142634
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038244
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北斗 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柳田 悦豪
(72)【発明者】
【氏名】北 卓人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優介
(72)【発明者】
【氏名】木野内 惣一
(72)【発明者】
【氏名】針生 鉄男
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-281871(JP,A)
【文献】特開2004-262350(JP,A)
【文献】特開2002-104153(JP,A)
【文献】特開2006-281809(JP,A)
【文献】国際公開第2005/124500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-7/10
B60T 7/12-8/1769
B60T 13/00-13/74
G05G 1/30
G05G 1/38
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ回路(10、11、12)に液圧を発生させる液圧発生装置(14、15、18、19)を電子制御装置(20、21、22)により駆動するブレーキバイワイヤシステム(1)に用いられるブレーキ装置であって、
車体に取り付けられるハウジング(33)と、
前記ハウジングに回転可能に設けられ、前記液圧発生装置と機械的に接続されていないブレーキペダル(31)と、
前記ブレーキペダルのストローク量に応じた信号を前記電子制御装置に出力するセンサ(32)と、
一端が前記ブレーキペダルに接続され、他端が前記ハウジングに接続され、前記ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力を発生させる反力発生部材(40)と、
前記ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力を発生させると共に、その反力の大きさをドライバに応じて予め変更可能な反力変更機構(50)と、を備え、
前記反力変更機構は、前記ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力を発生させる弾性部材(51)と、
前記弾性部材のうち前記ブレーキペダルとは反対側の端部のプリセット位置を変更することの可能な位置変更部(52)とを有するブレーキ装置。
【請求項2】
前記位置変更部は、
通電により駆動する電動モータ(54)と、
前記電動モータの駆動を制御するモータ制御回路(55)とを有する、請求項に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記位置変更部は、
通電により駆動する電動モータ(54)と、
前記電動モータの駆動を制御するモータ制御回路(55)と、
前記電動モータの駆動により軸周りに回転するねじ(58)と、
前記弾性部材のうち前記ブレーキペダルとは反対側の端部に設けられ、前記ねじの回転により前記弾性部材の伸縮方向に移動する支持板(53)とを有する、請求項に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記モータ制御回路は、前記反力発生部材が発生する反力に対し、ペダルストローク全域において反力が一律に増加するように前記電動モータを駆動することが可能である、請求項2または3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力の大きさを変更するようにドライバが操作することの可能なスイッチ機構(60)をさらに備え、
前記スイッチ機構の出力信号が前記モータ制御回路に入力されるように構成されている、請求項2または3に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記車両には、前記車両に乗車するドライバを認識するドライバ認識装置(62)が搭載されており、
前記モータ制御回路は、前記ドライバ認識装置により認識されたドライバに応じて、前記ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力の大きさを自動調整するように構成されている、請求項2または3に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記位置変更部は、
手動により回転可能に設けられたねじ(58)と、
前記弾性部材のうち前記ブレーキペダルとは反対側の端部に設けられ、前記ねじの回転により前記弾性部材の伸縮方向に移動する支持板(53)とを有する、請求項に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のブレーキ回路に液圧を発生させる液圧発生装置の駆動を電子制御装置により制御するブレーキバイワイヤシステムが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のブレーキバイワイヤシステムに用いられるブレーキ装置は、ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力(以下、「ブレーキペダルの反力」という)を発生させる反力発生機構を備えている。そして、このブレーキバイワイヤシステムは、車両の目標減速度と現在減速度に応じて、ペダルストロークに対する制動力の比率を増減する制御を行う。そして、その制御を行う際、反力発生機構によりブレーキペダルの反力を増加させてドライバへ体感させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-95008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、車両の減速中にブレーキペダルの反力を変化させるものである。そのため、ドライバがブレーキペダルの踏み込み操作を行って車両の制動力を発生させている最中にブレーキペダルの反力が変化するため、ドライバによるブレーキペダルの操作性が悪化し、ドライバの運転制御に支障をきたすおそれがある。また、車両減速中にブレーキペダルの反力を急に増加させた場合、ドライバはペダルを押し返された感覚となるため、そのことでドライバがブレーキペダルの踏み込みを緩めてしまう危険がある。その場合、車両制動距離が延びるおそれがある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ドライバの嗜好に合わせてブレーキペダルの反力特性を変えることで、ドライバの疲労軽減効果およびコントロール性向上効果を得ることの可能なブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、車両のブレーキ回路(10、11、12)に液圧を発生させる液圧発生装置(14、15、18、19)を電子制御装置(20、21、22)により駆動するブレーキバイワイヤシステム(1)に用いられるブレーキ装置に関する。ブレーキ装置は、ハウジング(33)、ブレーキペダル(31)、センサ(32)、反力発生部材(40)および反力変更機構(50)を備える。ハウジングは、車体に取り付けられる。ブレーキペダルは、ハウジングに回転可能に設けられる。このブレーキペダルは、液圧発生装置と機械的に接続されていない。センサは、ブレーキペダルのストローク量に応じた信号を電子制御装置に出力する。反力発生部材は、一端がブレーキペダルに接続され、他端がハウジングに接続され、ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力を発生させる。反力変更機構は、ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力を発生させると共に、その反力の大きさをドライバに応じて予め変更可能である。反力変更機構は、ブレーキペダルに印加されるドライバの踏力に対する反力を発生させる弾性部材(51)と、弾性部材のうちブレーキペダルとは反対側の端部のプリセット位置を変更することの可能な位置変更部(52)とを有する。
【0008】
これによれば、ブレーキ装置は、ブレーキペダルと液圧発生装置とが機械的に接続されていない構成において、ハウジング内に設けられた反力発生部材により、ブレーキペダルの反力を発生させることが可能である。さらに、ブレーキ装置は、反力変更機構により、ドライバの嗜好に合わせて、予めブレーキペダルの反力特性を変えることが可能である。例えば、ブレーキペダルを楽に踏むことを好むドライバは、ブレーキペダルの反力を小さく設定することで、疲労軽減効果を得ることができる。一方、車両の制動を精密にコントロールすることを好むドライバは、ブレーキペダルの反力を大きく設定することで、コントロール性向上効果を得ることができる。なお、「予め変更可能」とは、車両の制動動作が行われる前に変更可能であることをいう。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るブレーキ装置が用いられるブレーキバイワイヤシステムの構成図である。
図2】第1実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図3】第1実施形態に係るブレーキ装置の断面図であり、踏力変更が行われている状態を示したものである。
図4】第1実施形態に係るブレーキ装置の断面図であり、スイッチ機構を備えるものである。
図5】ペダルストロークと反力との関係の一例を示すグラフである。
図6】第2実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図7】第3実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図8】第4実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図9】第5実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図10】第6実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図11】第7実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図12】第8実施形態に係るブレーキ装置の断面図である。
図13】第9実施形態に係るブレーキ装置が用いられるブレーキバイワイヤシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のブレーキ装置は、車両に搭載されるブレーキバイワイヤシステムに用いられる。まず、ブレーキバイワイヤシステムの構成の一例について説明する。
【0013】
図1に示すように、ブレーキバイワイヤシステム1は、各車輪に配置されるホイールシリンダ2~5に液圧を供給するブレーキ回路10と、そのブレーキ回路10の駆動を制御する電子制御装置20と、ブレーキペダル31を有するブレーキ装置30とを備えている。
【0014】
ブレーキ回路10は、第1ブレーキ回路11、第2ブレーキ回路12を有している。また、電子制御装置20は、第1ECU21および第2ECU22を有している。ECUは、Electronic Control Unitの略である。なお、図1では第1ECU21と第2ECU22とが別部材で構成されているものを図示しているが、それに限らず、第1ECU21と第2ECU22とは一体で構成してもよい。
【0015】
各車輪に配置されるホイールシリンダ2~5のうち、左前輪に配置される左前輪用ホイールシリンダ2は、左前輪のブレーキパッドを駆動する。右前輪に配置される右前輪用ホイールシリンダ3は、右前輪のブレーキパッドを駆動する。左後輪に配置される左後輪用ホイールシリンダ4は、左後輪のブレーキパッドを駆動する。右後輪に配置される右後輪用ホイールシリンダ5は、右後輪のブレーキパッドを駆動する。
【0016】
第1ブレーキ回路11は、第1ECU21からの制御信号に応じて液圧を発生させる。そして、第1ブレーキ回路11は、その液圧を増加させることにより、第2ブレーキ回路12を介して各ホイールシリンダ2~5の液圧を増加させる。具体的には、本実施形態の第1ブレーキ回路11は、リザーバ13、ブレーキポンプ14、ブレーキ回路用モータ15および圧力センサ16などを有している。
【0017】
リザーバ13は、ブレーキ液を貯蔵する。ブレーキ回路用モータ15は、第1ECU21からの駆動信号により回転駆動し、そのトルクをブレーキポンプ14に伝達する。ブレーキポンプ14は、ブレーキ回路用モータ15からのトルク伝達により駆動し、リザーバ13から供給されるブレーキ液の圧力を増加させる。ブレーキ回路用モータ15およびブレーキポンプ14は、ブレーキ回路10に液圧を発生させる液圧発生装置の一例に相当する。ブレーキポンプ14の駆動により増加したブレーキ液の液圧は、第1ブレーキ回路11から第2ブレーキ回路12に供給される。圧力センサ16は、第1ブレーキ回路11を流れるブレーキ液の液圧に応じた信号を第1ECU21に出力する。
【0018】
第2ブレーキ回路12は、第2ECU22からの制御信号に応じて各ホイールシリンダ2~5の液圧を制御することで、通常制御、ABS(Anti-lock Braking System)制御およびVSC(Vehicle Stability Control)制御などを行うための回路である。
【0019】
電源23は、第1ECU21および第2ECU22などに電力を供給する。第1ECU21は、第1ブレーキ回路11の有するブレーキ回路用モータ15の駆動を制御する。第1ECU21は、第1マイコン210および第1駆動回路211を有している。第1マイコン210は、CPUで構成される演算部212と、非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部213と、後述する第2マイコン220および各センサ16、32などと通信するための通信部214とを有する。第1マイコン210は、第1駆動回路211に駆動信号を出力する。第1駆動回路211は、図示しないスイッチング素子などを含んで構成され、第1マイコン210からの駆動信号に基づきブレーキ回路用モータ15に電力を供給し、第1ブレーキ回路11を駆動する。
【0020】
第2ECU22は、第2ブレーキ回路12の駆動を制御する。第2ECU22は、第2マイコン220および第2駆動回路221を有している。第2マイコン220は、CPUで構成される演算部222と、非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部223と、第1マイコン210および各センサ16、32などと通信するための通信部224とを有する。第2マイコン220は、第2駆動回路221に駆動信号を出力する。第2駆動回路221は、図示しないスイッチング素子などを含んで構成され、第2マイコン220からの駆動信号に基づき第2ブレーキ回路12の有する図示しない電磁弁やモータなどを駆動する。
【0021】
ブレーキ装置30は、ドライバの踏力により操作されるブレーキペダル31と、そのブレーキペダル31のストローク量に応じた信号を出力するセンサ32などを備えている。なお、ブレーキ装置30の構成については、後に詳細に説明する。
【0022】
ブレーキ装置30のセンサ32には、センサ用電源配線321、センサ用グランド配線322、第1出力配線323および第2出力配線324が接続されている。センサ用電源配線321とセンサ用グランド配線322と第1出力配線323はいずれも、第1ECU21とセンサ32を接続している。第2出力配線324は、第2ECU22とセンサ32を接続している。これにより、センサ32の出力する信号は、第1ECU21と第2ECU22に出力される。なお、図1では、センサ用電源配線321およびセンサ用グランド配線322はいずれも、第1ECU21とセンサ32とを接続しているが、それに限らず、それらの配線321、322は第2ECU22とセンサ32とを接続してもよい。
【0023】
次に、ブレーキバイワイヤシステム1の作動について説明する。
【0024】
車両のドライバがブレーキペダル31に踏力を印加し、ブレーキペダル31を操作すると、そのブレーキペダル31のストローク量に応じた信号がセンサ32から第1ECU21と第2ECU22に出力される。なお、ブレーキペダル31のストローク量は、ブレーキペダル31の踏み込み量または操作量とも呼ばれる。
【0025】
第1ECU21は、車両を減速させるため、ブレーキ回路用モータ15を駆動する。これにより、ブレーキ回路用モータ15の回転数が大きくなると、ブレーキポンプ14は、リザーバ13から供給されるブレーキ液の液圧を増加させる。そのブレーキ液の液圧は、第1ブレーキ回路11から第2ブレーキ回路12に伝わる。
【0026】
また、第2ECU22は、通常制御、ABS制御およびVSC制御などを実行する。通常制御とは、ドライバのブレーキペダル31のストローク量に応じた制動を行うものである。その通常制御において、第2ECU22は、第2ブレーキ回路12の有する各電磁弁などを制御し、第1ブレーキ回路11から第2ブレーキ回路12を介して各ホイールシリンダ2~5に液圧が供給されるようにする。したがって、各ホイールシリンダ2~5により駆動されるブレーキパッドがそれに対応するブレーキディスクと摩擦接触し、各車輪が制動されることで車両が減速する。
【0027】
また、例えば、第2ECU22は、車両の各車輪速度および車速に基づいて、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の各スリップ率を演算し、その演算結果に基づいてABS制御を実行する。ABS制御では、各ホイールシリンダ2~5に供給される液圧が調整され、各車輪がロックに至ることが抑制される。
【0028】
また、例えば、第2ECU22は、ヨーレート、操舵角、加速度、各車輪速度および車速等に基づいて車両の横滑り状態を演算し、その演算結果に基づいてVSC制御を実行する。VSC制御では、車両の旋回を安定させるための制御対象車輪を選定し、その車輪に対応するホイールシリンダ2~5の液圧を増加させることで、車両の横滑りを抑制する。そのため、車両の走行が安定する。
【0029】
なお、第2ECU22は、上述した通常制御、ABS制御およびVSC制御に加えて、図示しない他のECUからの信号に基づき、衝突回避制御および回生協調制御などを行ってもよい。
【0030】
続いて、上述したブレーキバイワイヤシステム1に用いられるブレーキ装置30について説明する。
【0031】
図2に示すように、ブレーキ装置30は、ハウジング33、ブレーキペダル31、センサ32、反力発生部材40、反力変更機構50などを備えている。
【0032】
ハウジング33は、ブレーキ装置30の外殻を構成している。ハウジング33の内側には、ブレーキペダル31の一部とセンサ32と反力発生部材40と反力変更機構50などを収容する空間が形成されている。また、ハウジング33は、ブレーキペダル31を挿通するための開口部34を有している。ハウジング33は、車室内前方の車体の一部に取り付けられる。具体的には、ハウジング33は、例えば、車両のエンジンルーム等の車室外と車室内とを区切る隔壁であるダッシュパネルに取り付けられる。なお、ダッシュパネルは、バルクヘッドと呼ばれることもある。
【0033】
ブレーキペダル31は、アーム部35およびペダル部36を有している。アーム部35は、長手方向の一方の側がハウジング33の内側に配置され、その端部がハウジング33に回転可能に設けられている。また、アーム部35は、長手方向の他方の側がハウジング33の開口部34から外側に延び出し、その端部にペダル部36が設けられている。ペダル部36に対してドライバの踏力が印加されると、ペダル部36とアーム部35は、アーム部35のうち長手方向の一方の端部に設けられた回転軸Axを中心として、矢印Aの方向に回転移動する。このように、ブレーキペダル31は、ペダル部36に印加されるドライバの踏力により操作される。なお、図示は省略するが、ブレーキペダル31は、回転軸Axを中心とした回転動作に代えて、または回転動作と共に、車両前後方向に並進移動するように構成されていてもよい。
【0034】
センサ32は、ブレーキペダル31のストローク量に応じた信号を第1ECU21および第2ECU22に出力する。なお、本実施形態では、センサ32は、ブレーキペダル31のストローク量に応じた信号を、後述するモータ制御回路55を介して第1ECU21および第2ECU22に出力する。本実施形態のセンサ32は、ブレーキペダル31のストローク量としてブレーキペダル31の回転角を検出する角度センサが用いられている。このセンサ32は、アーム部35の回転軸Ax上に配置されており、ブレーキペダル31の回転角に応じた電圧信号を出力する。センサ32として、例えばホールICなどを用いた磁気式の角度センサを用いることが可能である。なお、角度センサは、それに限らず、例えば機械式または光学式のものなどを用いてもよい。或いは、センサ32は、ブレーキペダル31のストローク量としてブレーキペダル31の回転角を検出するものに限らず、例えばブレーキペダル31の並進移動量を検出するものを用いてもよい。
【0035】
本実施形態のブレーキ装置30は、上述したブレーキペダル31に対して、ブレーキ回路10に液圧を発生させる液圧発生装置が機械的に接続されていない。そのため、ブレーキ装置30は、ブレーキペダル31に印加されるドライバの踏力に対する反力(以下、単に「ブレーキペダル31の反力」という)を発生させるための反力発生部材としての第1スプリング40を備えている。第1スプリング40は、圧縮コイルスプリングであり、ハウジング33の内側に設けられている。具体的には、第1スプリング40は、その一端がブレーキペダル31のアーム部35に接続され、他端がハウジング33の内壁に接続されている。第1スプリング40として、例えば、等間隔スプリング、不等間隔スプリング、2段式スプリングなど、要求される踏力特性に応じて任意のものを採用することが可能である。第1スプリング40は、ブレーキペダル31を車室内後方(すなわち、運転席に着座するドライバ側)へ付勢している。
【0036】
ハウジング33の内壁のうちブレーキペダル31に対して車室内後方の部位には、ストッパ37が設けられている。ブレーキペダル31に踏力が印加されていない状態で、ブレーキペダル31のアーム部35とストッパ37とが当接する。すなわち、ストッパ37は、ブレーキペダル31に踏力が印加されていない状態において、ブレーキペダル31の基準位置を定めるものである。
【0037】
さらに本実施形態では、ブレーキペダル31の反力特性を変えるための反力変更機構50を備えている。反力変更機構50は、弾性部材としての第2スプリング51と、位置変更部52とを有している。
【0038】
第2スプリング51は、圧縮コイルスプリングであり、ハウジング33の内側に設けられている。第2スプリング51の一端は、ブレーキペダル31のアーム部35に接続されている。第2スプリング51の他端には、支持板53が固定されている。支持板53は、ハウジング33の内壁に設けられた係止部38に係止される。第2スプリング51も、第1スプリング40と同じく、ブレーキペダル31を車室内後方(すなわち、運転席に着座するドライバ側)へ付勢している。すなわち、第2スプリング51も、第1スプリング40と同じく、ブレーキペダル31の反力を発生させる。なお、第2スプリング51の弾性力は、第1スプリング40の弾性力よりも小さく設定されている。したがって、第2スプリング51が発生する反力は、第1スプリング40が発生する反力より小さいものとなる。
【0039】
位置変更部52は、通電により駆動する電動モータ54と、その電動モータ54の駆動を制御するモータ制御回路55とを有している。
【0040】
電動モータ54のシャフト56にはレバー57が設けられている。電動モータ54が駆動すると、レバー57は図2の矢印Bの方向へ回転移動する。そして、図3に示すように、レバー57は、ブレーキペダル31側へ移動する。これにより、電動モータ54は、第2スプリング51のうちブレーキペダル31とは反対側の端部(すなわち、支持板53)のプリセット位置を変更することが可能である。これにより、第2スプリング51のプリセット荷重の大きさが変更される。なお、ハウジング33内において、電動モータ54とセンサ32との間には、仕切壁39が設けられている。
【0041】
モータ制御回路55は、図示しないマイコンおよび図示しないモータ駆動回路などを有している。図示は省略するが、モータ制御回路55の有するマイコンは、CPUで構成される演算部と、非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部と、センサ32などと通信するための通信部とを有する。モータ制御回路55の有するモータ駆動回路は、スイッチング素子などを含んで構成され、マイコンからの駆動信号に基づき電動モータ54を駆動する。なお、図2および図3では、モータ制御回路55とセンサ32との配線を破線41で示し、モータ制御回路55と電動モータ54との配線を破線42で示している。
【0042】
なお、ブレーキバイワイヤシステム1のブレーキ回路10の駆動を制御する第1ECU21および第2ECU22と、モータ制御回路55とは、別部材として構成されていてもよく、または、一体に構成されていてもよい。
【0043】
図4に示すように、モータ制御回路55には、ドライバにより操作されるスイッチ機構60からの出力信号が入力される。図4では、モータ制御回路55とスイッチ機構60との配線を破線61で示している。スイッチ機構60は、例えば、車両のインストルメントパネルなどドライバが操作可能な場所に設置してもよく、或いは、ドライバが携帯するスマートフォンなどに専用のアプリケーションをインストールしてもよい。ドライバは、スイッチ機構60を操作し、ブレーキペダル31の反力の変更を行うか否かを選択することが可能である。さらに、ドライバは、スイッチ機構60を操作し、ブレーキペダル31の反力の大きさを調整することが可能である。
【0044】
スイッチ機構60からモータ制御回路55に対し、ブレーキペダル31の反力に関する情報が入力されると、モータ制御回路55はその情報に基づき電動モータ54を駆動し、ブレーキペダル31の反力を変更する。なお、一般にペダルストロークの各位置において、ブレーキペダル31の反力は、ドライバがブレーキペダル31に印加する踏力と同じ大きさである。そのため、以下の説明では、ブレーキペダル31の反力を、ペダル踏力ということがある。
【0045】
図5は、ブレーキペダル31のストローク量に対するドライバのペダル踏力(すなわち、ブレーキペダル31の反力)の一例を示したものである。なお、図5では、反力発生部材としての第1スプリング40として、ペダルストロークの途中で弾性力が変化する2段式のスプリングが用いられている例を示している。
【0046】
図5の実線Cは、ブレーキペダル31の反力を変更していない状態(すなわち、第2スプリング51の端部に設けた支持板53が係止部38に係止されている状態)におけるペダル踏込方向の踏力特性を示している。以下、この踏力特性を「基準踏力特性」と呼ぶ。また、図5の実線Dは、図3に示したように反力変更機構50によりブレーキペダル31の反力を変更した状態(すなわち、電動モータ54により第2スプリング51の端部に設けた支持板53のプリセット位置を変更した状態)におけるペダル踏込方向の踏力特性を示している。なお、図5の破線Eは、ペダル戻し方向における踏力特性を示している。
【0047】
図5に示した例では、図5の白抜き矢印Fに示したように、反力変更機構50は、ペダルストローク全域においてペダル踏力を基準踏力特性に対して一律に増加させている。すなわち、反力変更機構50が備えるモータ制御回路55は、ペダルストローク全域においてペダル踏力が基準踏力特性に対して一律に増加するように電動モータ54を駆動する。モータ制御回路55は、ドライバが操作するスイッチ機構60から入力される情報に応じて、基準踏力特性に対するペダル踏力の増加量を任意に調整することが可能である。したがって、反力変更機構50は、ドライバの趣向により、ペダル踏力(すなわち、ブレーキペダル31の反力)を任意に変更することができる。
【0048】
さらに、図5に例示した踏力特性に限らず、反力変更機構50は、モータ制御回路55および電動モータ54により、センサ32から伝送されるブレーキペダル31のストローク量に応じてペダル踏力の増加量を任意に設定することが可能である。
【0049】
例えば、モータ制御回路55は、ブレーキペダル31のストローク量が小さいときは、基準踏力特性に対するペダル踏力の増加量を比較的小さくし、ブレーキペダル31のストローク量が大きくなるに従い基準踏力特性に対するペダル踏力の増加量が次第に大きくなるようにしてもよい。
【0050】
また、例えば、モータ制御回路55は、ブレーキペダル31のストローク量が小さいときは基準踏力特性に対するペダル踏力の増加量を比較的大きくし、ブレーキペダル31のストローク量が大きくなるに従い基準踏力特性に対するペダル踏力の増加量が次第に小さくなるようにしてもよい。
【0051】
また、例えば、モータ制御回路55は、ペダルストローク、車速、減速度などの数値からその時に必要なペダル踏力の増加量を設定することも可能である。
【0052】
以上説明した本実施形態のブレーキ装置30は、次の作用効果を奏する。
【0053】
本実施形態のブレーキ装置30は、ハウジング33内に設けた反力発生部材としての第1スプリング40により、ブレーキペダル31の反力を発生させる。そして、反力変更機構50は、ブレーキペダル31の反力を発生させると共に、その反力の大きさをドライバに応じて予め変更可能な構成である。なお、本実施形態のブレーキ装置30は、ブレーキペダル31と液圧発生装置とが機械的に接続されていない構成である。
【0054】
これにより、ブレーキ装置30は、反力発生部材としての第1スプリング40によりブレーキペダル31の反力を発生させることで、基準踏力特性を形成することが可能である。さらに、ブレーキ装置30は、反力変更機構50により、ドライバの嗜好に合わせて、予めブレーキペダル31の反力特性を変えることが可能である。例えば、ブレーキペダル31を楽に踏むことを好むドライバは、基準踏力特性に対するペダル踏力の増加量を0または小さくすることで、ブレーキペダル31の反力を小さく設定することができる。これにより、このドライバは、疲労軽減効果を得ることができる。一方、車両の制動を精密にコントロールすることを好むドライバは、基準踏力特性に対するペダル踏力の増加量を大きくすることで、ブレーキペダル31の反力を大きく設定することができる。これにより、このドライバは、コントロール性向上効果を得ることができる。このように、ブレーキ装置30は、ドライバの嗜好に合わせた反力を設定することができる。
【0055】
また、本実施形態のブレーキ装置30は、次の作用効果も奏することができる。
(1)ブレーキ装置30が備える反力変更機構50は、弾性部材としての第2スプリング51と、位置変更部52を有している。第2スプリング51は、ブレーキペダル31に印加されるドライバの踏力に対する反力を発生させる。位置変更部52は、第2スプリング51のうちブレーキペダル31とは反対側の端部のプリセット位置を変更することが可能である。
これにより、位置変更部52により第2スプリング51のプリセット位置を変更することで、第2スプリング51のプリセット荷重を変えることが可能である。したがって、反力変更機構50は、ブレーキペダル31の反力特性を変えることができる。
【0056】
(2)反力変更機構50を構成する位置変更部52は、通電により駆動する電動モータ54と、その電動モータ54の駆動を制御するモータ制御回路55を有している。
これにより、位置変更部52として電動モータ54およびモータ制御回路55を用いることで、第2スプリング51のプリセット位置を、事前に設定した値に瞬時に調整することができる。
また、モータ制御回路55により電動モータ54を駆動することで、ペダルストローク、車速、減速度などの数値からその時に必要な反力を決めることができる。
【0057】
(3)モータ制御回路55は、第1スプリング40が発生する反力特性(すなわち、基準踏力特性)に対し、ペダルストローク全域において反力が一律に増加するように電動モータ54を駆動することが可能である。
これにより、ブレーキ装置30は、ドライバに違和感を与えることなく、ブレーキペダル31の反力を設定することができる。
【0058】
(4)ブレーキ装置30は、ブレーキペダル31の反力の大きさを変更するようにドライバが操作することの可能なスイッチ機構60をさらに備える。
これにより、ドライバはスイッチ機構60を操作することにより、運転前または車両制動前に予めブレーキペダル31の反力を設定することができる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図6に示すように、第2実施形態のブレーキ装置30が搭載される車両には、車両に乗車するドライバを認識するドライバ認識装置62が搭載されている。ドライバ認識装置62は、ドライバを認識する機能を有するECU63と、ドライバが携帯する車両のキー64、または、運転席に着座するドライバを撮影する車載カメラ65などにより構成される。このECU63は、車両のキー64から入力される情報に基づきドライバを認識する。または、ECU63は、車載カメラ65から入力される情報に基づき、画像認識技術などを用いてドライバを認識する。そのECU63が認識したドライバに関する情報は、モータ制御回路55に入力される。モータ制御回路55は、そのドライバに関する情報に応じて電動モータ54の出力トルクを自動調整するように構成されている。すなわち、モータ制御回路55は、車両に乗車するドライバの趣向に応じて、ブレーキペダル31の反力を自動調整する。例えば、モータ制御回路55は、ブレーキペダル31を楽に踏むことを好むドライバに対しては、ブレーキペダル31の反力を小さく設定する。また、例えば、モータ制御回路55は、車両の制動を精密にコントロールすることを好むドライバに対しては、ブレーキペダル31の反力を大きく設定する。
【0061】
以上説明した第2実施形態も、第1実施形態と同様の構成から第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第2実施形態は、以下の作用効果を奏することができる。
【0062】
(1)第2実施形態のモータ制御回路55は、ドライバ認識装置62により認識されたドライバに応じてブレーキペダル31の反力の大きさを自動調整するように構成されている。
これにより、ドライバが車両に乗車すると、ブレーキペダル31の反力が自動調整されるので、ドライバが乗車の度にブレーキペダル31の反力を調整する手間を省くことができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態等に対して反力変更機構50の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図7に示すように、第3実施形態では、ブレーキ装置30の備える反力変更機構50は、弾性部材としての第2スプリング51と、その第2スプリング51のセット位置を変更する位置変更部52とを有している。位置変更部52は、モータ制御回路55、電動モータ54、ねじ58、支持板53を有している。
【0065】
電動モータ54のシャフト56には第1ギヤ71が設けられている。第1ギヤ71は、第2ギヤ72に噛み合っている。第2ギヤ72の回転中心にはねじ58が設けられている。ねじ58は、支持板53に設けられた図示しない雌ねじに螺合している。なお、第1ギヤ71と第2ギヤ72は、電動モータ54のトルクを増大してねじ58に伝える減速機構を構成している。
【0066】
上記の構成において、モータ制御回路55の駆動信号により電動モータ54が回転すると、そのトルクは第1ギヤ71から第2ギヤ72に伝わる。第2ギヤ72と共にねじ58が軸周りに回転すると、矢印Gに示すように、支持板53が第2スプリング51の伸縮方向に移動する。これにより、位置変更部52は、第2スプリング51のうちブレーキペダル31とは反対側の端部(すなわち、支持板53)のプリセット位置を変更することが可能である。これにより、第2スプリング51のプリセット荷重の大きさが変更される。
【0067】
以上説明した第3実施形態も、第1実施形態と同様の構成から第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第3実施形態は、以下の作用効果を奏することができる。
【0068】
(1)第3実施形態のブレーキ装置30が備える位置変更部52は、モータ制御回路55、電動モータ54、ねじ58、支持板53を有している。ねじ58は、電動モータ54の駆動により軸周りに回転し、支持板53は、ねじ58の回転により第2スプリング51の伸縮方向に移動する。
これにより、位置変更部52としてねじ58を用いることで、第2スプリング51のプリセット位置を保持することが可能である。すなわち、ねじ機構は、逆に回される効率が悪いので、プリセット位置を保持するための動力が不要となる。したがって、第3実施形態のブレーキ装置30が備える位置変更部52の構成によれば、電動モータ54の消費電力を低減することができる。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第3実施形態の変形例である。
【0070】
図8に示すように、第4実施形態でも、反力変更機構50の有する位置変更部52は、モータ制御回路55、電動モータ54、ねじ58、支持板53を有している。その電動モータ54は、減速機構を介することなく、ねじ58を軸周りに回転するように設けられている。そのため、モータ制御回路55の駆動信号により電動モータ54が回転すると、そのトルクはねじ58に直接伝わる。ねじ58が軸周りに回転すると、矢印Gに示すように、支持板53が第2スプリング51の伸縮方向に移動する。これにより、位置変更部52は、第2スプリング51のうちブレーキペダル31とは反対側の端部(すなわち、支持板53)のプリセット位置を変更することが可能である。これにより、第2スプリング51のプリセット荷重の大きさが変更される。
【0071】
以上説明した第4実施形態も、第1実施形態と同様の構成から第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第4実施形態は、第3実施形態に対して、減速機構を無くすことで、構成を簡素にすることができる。
【0072】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態も、第1実施形態等に対して反力変更機構50の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
図9に示すように、第5実施形態では、ブレーキ装置30の備える反力変更機構50は、モータ制御回路55、電動モータ54、第1ギヤ81および第2ギヤ82を有する。第1ギヤ81は、電動モータ54のシャフトに設けられている。一方、第2ギヤ82はブレーキペダル31の回転軸Axに設けられている。そして、第1ギヤ81と第2ギヤ82とは互いに噛み合っている。その第1ギヤ81と第2ギヤ82は、電動モータ54のトルクを増大してブレーキペダル31に伝える減速機構を構成している。
【0074】
なお、第5実施形態の反力変更機構50は、弾性部材としての第2スプリングを備えていない。すなわち、第5実施形態の反力変更機構50は、電動モータ54のトルクが弾性部材としての第2スプリングを介することなく、ブレーキペダル31の回転軸Axに伝わる構成である。
【0075】
上記の構成において、モータ制御回路55の駆動信号により電動モータ54が回転すると、そのトルクは第1ギヤ81から第2ギヤ82に伝わり、第2ギヤ82からブレーキペダル31にトルクが印加される。そのトルクは、ブレーキペダル31に印加される踏力に対して反対方向に作用する反力となる。したがって、モータ制御回路55は、モータに印加する電流値を可変することで、ブレーキペダル31の反力を任意に変更することが可能である。
【0076】
以上説明した第5実施形態も、第1実施形態と同様の構成から第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第5実施形態は、以下の作用効果を奏することができる。
【0077】
(1)第5実施形態のブレーキ装置30が備える反力変更機構50は、モータ制御回路55、電動モータ54、および、電動モータ54のトルクをブレーキペダル31の回転軸Axに伝える減速機構(すなわち、第1ギヤ81と第2ギヤ82)を有する。電動モータ54は、減速機構を介してブレーキペダル31の回転軸Axに対し、ブレーキペダル31に印加される踏力とは反対向きのトルクを出力する。
【0078】
一般に、ブレーキペダル31に印加されるドライバの踏力は、アクセルペダルに印加されるドライバの踏力に比べて大きい。その場合でも、ブレーキ装置30は、反力変更機構50として電動モータ54と共に減速機構を用いることで、電動モータ54を小型化した場合でも、ブレーキペダル31の反力の調整に必要なトルクをブレーキペダル31の回転軸Axに印加することができる。
さらに、電動モータ54がブレーキペダル31の回転軸Axにトルクを印加するので、反力の瞬間的な可変制御が可能となる。
【0079】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態は、第5実施形態の変形例である。
【0080】
図10に示すように、第6実施形態の反力変更機構50は、モータ制御回路55、電動モータ54を有している。電動モータ54のシャフトはブレーキペダル31の回転軸Axと同軸に配置されている。その電動モータ54は、減速機構を介することなく、ブレーキペダル31を回転するように設けられている。そのため、モータ制御回路55の駆動信号により電動モータ54が回転すると、そのトルクはブレーキペダル31に直接伝わる。そのトルクは、ブレーキペダル31に印加される踏力に対して反対方向に作用する反力となる。したがって、モータ制御回路55は、モータに印加する電流値を可変することで、ブレーキペダル31の反力を変更することが可能である。
【0081】
以上説明した第6実施形態も、第1実施形態と同様の構成から第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第6実施形態は、第5実施形態に対して、減速機構を無くすことで、構成を簡素にすることができる。また、電動モータ54がブレーキペダル31の回転軸Axにトルクを直接印加するので、反力の瞬間的な可変制御が可能となる。
【0082】
なお、第6実施形態のように電動モータ54のシャフト56とブレーキペダル31の回転軸Axとを同軸に配置した上で、そのシャフト56とブレーキペダル31の回転軸Axとの間に減速機構を設ける構成としてもよい。
【0083】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。第7実施形態は、第1実施形態等に対して反力変更機構50の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0084】
図11に示すように、第7実施形態では、ブレーキ装置30の備える反力変更機構50は、弾性部材としての第2スプリング51と、その第2スプリング51のセット位置を変更する位置変更部52とを有している。位置変更部52は、ねじ58、調整ダイヤル90、支持板53を有している。
【0085】
ねじ58と調整ダイヤル90とは、接続部91を介して同軸に接続されている。接続部91は、ハウジング33に対して軸周りに回転可能に設けられている。調整ダイヤル90はハウジング33の外側に設けられ、ねじ58はハウジング33の内側に設けられている。ねじ58は、支持板53に設けられた図示しない雌ねじに螺合している。
【0086】
上記の構成において、調整ダイヤル90を手動で回転すると、ねじ58が軸周りに回転する。これにより、矢印Gに示すように、支持板53が第2スプリング51の伸縮方向に移動する。そのため、位置変更部52は、第2スプリング51のうちブレーキペダル31とは反対側の端部(すなわち、支持板53)のプリセット位置を変更することが可能である。したがって、第2スプリング51のプリセット荷重の大きさが変更される。
【0087】
以上説明した第7実施形態も、第1実施形態と同様の構成から第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第7実施形態は、以下の作用効果を奏することができる。
【0088】
(1)第7実施形態のブレーキ装置30が備える位置変更部52は、ねじ58、調整ダイヤル90、支持板53を有している。ねじ58は、手動で軸周りに回転可能であり、支持板53は、ねじ58の回転により第2スプリング51の伸縮方向に移動する。
これにより、位置変更部52として電動モータ54およびモータ制御回路55を用いていないので、製造コストを低減することができる。また、ドライバが手動でブレーキペダル31の反力を調整できるので、ドライバの直感的な微調整が可能となる。
【0089】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。第8実施形態は、第7実施形態の変形例である。
【0090】
図12に示すように、第8実施形態でも、反力変更機構50の有する位置変更部52は、ねじ58、調整ダイヤル90、支持板53を有している。調整ダイヤル90はハウジング33の外側に設けられている。ねじ58は、調整ダイヤル90に接続すると共に、ハウジング33に設けられた雌ねじ部92に螺合し、その一部がハウジング33の内側に設けられている。ねじ58のうち調整ダイヤル90とは反対側の端部は、支持板53に当接している。
【0091】
上記の構成において、調整ダイヤル90を手動で回転すると、ねじ58が軸周りに回転し、第2スプリング51の伸縮方向に移動する。これにより、矢印Gに示すように、支持板53が第2スプリング51の伸縮方向に移動する。したがって、第2スプリング51のプリセット荷重の大きさが変更される。
【0092】
以上説明した第8実施形態も、第7実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0093】
(第9実施形態)
第9実施形態について説明する。第9実施形態は、第1実施形態等に対してブレーキ装置30が用いられるブレーキバイワイヤシステム1の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0094】
図13に示すように、第9実施形態のブレーキバイワイヤシステム1は、第1ブレーキ回路11の構成が、第1実施形態で説明した構成と異なっている。第9実施形態の第1ブレーキ回路11は、リザーバ13、ブレーキ回路用モータ15、ギヤ機構17、マスターシリンダ18、および圧力センサ16などを有している。
【0095】
リザーバ13は、ブレーキ液を貯蔵する。ブレーキ回路用モータ15は、第1ECU21からの駆動信号により回転駆動し、そのトルクをギヤ機構17に伝達する。マスターシリンダ18は、その内側にマスターピストン19およびスプリング191などを有している。ギヤ機構17は、マスターシリンダ18の有するマスターピストン19を、マスターシリンダ18の軸方向に往復移動させる。マスターピストン19の移動により、リザーバ13からマスターシリンダ18に供給されたブレーキ液の液圧が増加する。そのブレーキ液の液圧は、第1ブレーキ回路11から第2ブレーキ回路12に供給される。圧力センサ16は、第1ブレーキ回路11を流れるブレーキ液の液圧に応じた信号を第1ECU21に出力する。
【0096】
第9実施形態のマスターシリンダ18およびマスターピストン19は、ブレーキ回路10に液圧を発生させる液圧発生装置の一例に相当する。なお、第9実施形態においても、マスターシリンダ18およびマスターピストン19と、ブレーキ装置30の有するブレーキペダル31とは機械的に接続されていない構成である。
【0097】
第9実施形態のブレーキバイワイヤシステム1の構成に対して、上述した第1~第8実施形態で説明したブレーキ装置30を適用することが可能である。
【0098】
以上説明した第9実施形態も、第1実施形態等と実質的に同様の構成から第1実施形態等と同様の効果を奏する。
【0099】
(他の実施形態)
上述した各実施形態では、ブレーキ装置30は吊り下げ式のブレーキペダル31を備える構成について説明したが、これに限らず、ブレーキ装置30はオルガン式のブレーキペダル31を備える構成としてもよい。
【0100】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0101】
本発明に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1:ブレーキバイワイヤシステム
10、11、12:ブレーキ回路
14、15、18、19:液圧発生装置
20、21、22:電子制御装置
30:ブレーキ装置
31:ブレーキペダル
32:センサ
33:ハウジング
40:第1スプリング(反力発生部材)
50:反力変更機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13