(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
(21)【出願番号】P 2020154514
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】細川 祐宏
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0038174(US,A1)
【文献】実開平02-005933(JP,U)
【文献】特開2006-144761(JP,A)
【文献】特開平11-266497(JP,A)
【文献】特開昭62-133899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を形成しているケースと、
前記収容空間に配置され、圧電素体と、前記圧電素体に設けられた電極と、を有している圧電素子と、
前記電極と電気的に接続されているリード線と、
前記電極と当該電極に対応する前記リード線とを電気的に接続している導電部材と、
前記導電部材を保持している保持部材と、を備え、
前記導電部材は、前記リード線を保持している保持部を含み、
前記保持部材には、前記リード線の先端が収容されている凹部が設けられている、
圧電デバイス。
【請求項2】
前記導電部材は、前記圧電素体の主面に沿う方向における前記導電部材の動きを制限する第一ストッパを含んでいる、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記導電部材は、前記圧電素体の主面に交差する方向における前記導電部材の動きを制限する第二ストッパを含んでいる、
請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記保持部材は、前記圧電素体の主面に沿う方向に弾性を有し、前記ケースの内面に弾性的に当接した状態で前記収容空間に配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記ケースは、金属からなる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記導電部材は、前記ケースから離間して配置されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記リード線は、前記凹部に収容されている第一部分と、前記保持部に保持されている第二部分と、前記第一部分と前記第二部分とを接続している第三部分と、を含んでおり、
前記第一部分の長さは、前記第三部分の長さ未満、かつ、前記凹部の深さの1/2未満である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記保持部は、前記リード線の長さ方向に並んで配置され、それぞれ前記リード線を保持している一対のピン部分を含んでおり、
前記一対のピン部分のうち、前記リード線の先端側に配置された一方のピン部分の長さは、他方のピン部分の長さよりも短い、
請求項1~7のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項9】
前記一対のピン部分の幅は、ぞれぞれ前記リード線の芯線部分の太さよりも長い、
請求項8に記載の圧電デバイス。
【請求項10】
前記他方のピン部分は、前記リード線の被覆部分を保持し、
前記一方のピン部分は、前記リード線の芯線部分のみを保持する、
請求項8又は9に記載の圧電デバイス。
)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を備えた圧電デバイスが知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1に記載の圧電デバイスでは、圧電素子は一対の電極を有している。各電極には、リード線が電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧電デバイスでは、リード線が圧電素子の電極に物理的に接続されている。圧電素子の電極に対するリード線の強固な接続によって、圧電素子の電極からの配線部材の剥落を抑制することも考えられる。しかし、圧電素子の電極とリード線とが強固に接続されれば、圧電素子の変位が阻害される。圧電素子の変位が阻害されれば、超音波の発信又は検出に関する品質が低下する。たとえば、圧電素子の変位が阻害されると、圧電デバイスが超音波を発する場合には圧電デバイスから発せられる超音波の音圧が低下し、圧電デバイスが超音波を検出する場合には受けた超音波の検出限界が低下する。
【0005】
そこで、リード線と圧電素子の電極とを直接接続するのではなく、導電部材を介して間接的に接続すると共に、導電部材の姿勢を安定させるため、導電部材を保持する保持部材を設ける構成が考えられる。しかし、このような構成では、リードと導電部材とを接続する際に、リード線の位置がずれることにより、接続不良が生じる場合があった。
【0006】
本発明の一つの態様は、接続不良を抑制可能な圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様に係る圧電デバイスは、収容空間を形成しているケースと、収容空間に配置され、圧電素体と、圧電素体に設けられた一対の電極と、を有している圧電素子と、それぞれ対応する電極と電気的に接続されている一対のリード線と、電極と当該電極に対応するリード線とを電気的に接続している少なくとも一つの導電部材と、導電部材を保持している保持部材と、を備え、導電部材は、リード線を保持している保持部を含み、保持部材には、リード線の先端が収容されている凹部が設けられている。
【0008】
この圧電デバイスでは、保持部材にリード線の先端が収容されている凹部が設けられている。このため、リード線と導電部材とを接続する際に、リード線の先端が保持部材と干渉することにより、リード線の位置がすれることが抑制される。よって、接続不良を抑制することができる。
【0009】
導電部材は、圧電素体の主面に沿う方向における導電部材の動きを制限する第一ストッパを含んでいてもよい。この場合、導電部材が保持部材により安定して保持される。
【0010】
導電部材は、圧電素体の主面に交差する方向における導電部材の動きを制限する第二ストッパを含んでいてもよい。この場合、導電部材が保持部材により安定して保持される。
【0011】
保持部材は、圧電素体の主面に沿う方向に弾性を有し、ケースの内面に弾性的に当接した状態で収容空間に配置されていてもよい。この場合、保持部材をケースに対して着脱自在に配置することができる。
【0012】
ケースは、金属からなってもよい。この場合、ケースが樹脂からなる場合に比べて、ケースの寸法精度を向上させることができる。
【0013】
導電部材は、ケースから離間して配置されていてもよい。この場合、ケースが金属からなっていても、電気的短絡の発生を抑制できる。
【0014】
リード線は、凹部に収容されている第一部分と、保持部に保持されている第二部分と、第一部分と第二部分とを接続している第三部分と、を含んでおり、第一部分の長さは、第三部分の長さ未満、かつ、凹部の深さの1/2未満であってもよい。この場合、凹部に樹脂が充填され易い。
【0015】
保持部は、リード線の長さ方向に並んで配置され、それぞれリード線を保持している一対のピン部分を含んでおり、一対のピン部分のうち、リード線の先端側に配置された一方のピン部分の長さは、他方のピン部分の長さよりも短くてもよい。この場合、リード線を確実に保持することができる。
【0016】
一対のピン部分の幅は、ぞれぞれリード線の芯線部分の太さよりも長くてもよい。この場合、リード線を確実に保持することができる。
【0017】
他方のピン部分は、リード線の被覆部分を保持し、一方のピン部分は、リード線の芯線部分のみを保持してもよい。この場合、他方のピン部分がリード線を確実に保持する。一方のピン部分がリード線との電気的接続を確実に行いつつ、リード線のずれを確実に抑制する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一つの態様によれば、接続不良を抑制可能な圧電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る圧電デバイスを示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は圧電素子の底面図であり、
図7(b)は圧電素子の側面図であり、
図7(c)は圧電素子の平面図である。
【
図10】
図10は、圧電デバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図11】
図11(a)は、チャック前の樹脂部材の平面図であり、
図11(b)は、チャック後の樹脂部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0021】
図1~
図9を参照して、本実施形態に係る圧電デバイスの構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る圧電デバイスの斜視図である。
図2は、圧電デバイスの分解斜視図である。
図3は、圧電デバイスの断面図である。圧電デバイス1は、音響整合部材2(ケース)と、フレーム部材3と、圧電素子4と、配線部材5と、一対の導電部材6と、樹脂部材7(保持部材)と、充填部材8とを備える。
図4は、圧電デバイス1からフレーム部材3及び充填部材8を除いた状態を示している。
図5は、
図4に示した状態から音響整合部材2をさらに除いた状態を示している。
図6は、
図5に示した状態から樹脂部材7をさらに除いた状態を示している。
図7(a)~
図7(c)は、圧電素子4を示している。
図8は、樹脂部材7を示している。
図9は、導電部材6及び樹脂部材7を示している。
【0022】
圧電デバイス1は、圧電素子4によって、超音波を発する、又は、受けた超音波を検出する超音波送受装置である。圧電デバイス1が超音波を発する場合には、たとえば、圧電素子4に交流電圧が印加され、当該交流電圧によって圧電素子4が連続的に変位する。圧電素子4の変位に応じて、圧電デバイス1から超音波が発せられる。圧電デバイス1が超音波を検出する場合には、たとえば、受けた超音波に起因する圧電素子4の変位によって圧電素子4に起電力が発生する。起電力の発生によって超音波を受けたか否かが検出され、発生した起電力の大きさによって超音波の音圧又は音圧レベルなどが検出される。
【0023】
音響整合部材2は、圧電素子4を収容している収容空間Sを形成している。音響整合部材2は、少なくとも圧電素子4の一部及び導電部材6の少なくとも一部を覆って当該圧電素子4の音響インピーダンスを補整する。音響整合部材2は、その形状、構造、及び材料によって、圧電素子4の音響インピーダンスと、空気やガス等の媒質の音響インピーダンスとの整合を図る。音響整合部材2は、たとえば、金属からなる。音響整合部材2を構成する金属は、たとえば、アルミである。音響整合部材2は、有底筒状を呈している。音響整合部材2は、底部22と、側部23と、を有している。底部22及び側部23は、一体に形成されている。
【0024】
底部22は、円板形状を呈している。底部22は、圧電素子4の変位に応じて超音波を発する、又は、外部からの超音波を受けて圧電素子4に振動を伝達する部分である。底部22は、互いに対向している第一主面22a及び第二主面22bを有している。第一主面22a及び第二主面22bは、第一主面22aと第二主面22bとの対向方向から見て、たとえば、円形状を呈している。第一主面22aは、音響整合部材2の収容空間Sを形成している。第二主面22bは、圧電デバイス1における超音波の発信面及び受信面を構成している。底部22には、テーパー部22cが設けられている。テーパー部22cは、第一主面22a側から第二主面22b側に向かって先細りになっている。底部22の厚さは、たとえば、2.3mm以上2.6mm以下である。底部22の厚さは、第一主面22aと第二主面22bとの間の最短距離である。
【0025】
側部23は、円筒形状を呈している。側部23は、底部22の第一主面22aから、第一主面22aと第二主面22bとの対向方向に沿って延在している。側部23の内面23aは、底部22の第一主面22aと共に収容空間Sを形成している。
【0026】
フレーム部材3は、音響整合部材2に取り付けられている。フレーム部材3は、たとえば、ゴムで形成されている。フレーム部材3は、音響整合部材2と共に収容空間Sを形成している。フレーム部材3は、本体部31と、フランジ部32と、を有している。本体部31及びフランジ部32は、一体に形成されている。
【0027】
本体部31は、略円筒形状を呈している。本体部31は、音響整合部材2の側部23に取り付けられている。本体部31は、側部23の上部の外周面を取り囲むと共に、側部23の上部に配置されている。本体部31は、収容空間Sに連通する開口部Kを形成している。本体部31の内径は、音響整合部材2の側部23の内径よりも小さい。フランジ部32は、本体部31の上端部に設けられている。フランジ部32は、円枠状を呈している。フランジ部32は、本体部31の外周面から径方向の外側に張り出している。
【0028】
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)に示されるように、圧電素子4は、圧電素体40と、圧電素体40に設けられた一対の電極41,42と、を有している。圧電素体40は、円板形状を呈している。圧電素体40は、互いに対向している一対の主面40a,40bと、主面40aと主面40bとを連結している側面40cと、を有している。主面40a,40bは、円形状を呈している。なお、
図3では、一対の電極41,42の図示が省略されている。
【0029】
圧電素体40は、複数の圧電体層(不図示)が積層されて構成されている。各圧電体層は、圧電材料からなる。本実施形態では、各圧電体層は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料には、たとえば、PZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)が用いられる。各圧電体層は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の圧電素体40では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。圧電素体40内には、複数の内部電極(不図示)が配置されている。各内部電極は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。
【0030】
電極41は、主面40a、主面40b、及び側面40cに配置されている。電極41は、主面40a、側面40c及び主面40bにわたって配置されている。電極41のうち主面40aに配置されている部分は、略円形状を呈している。電極42は、主面40bに配置されている。電極42は、円形が一部切り欠かれた形状を呈している。
【0031】
電極41と電極42とは、互いに離間している。主面40a,40bの対向方向から見て、電極41のうち主面40bに配置されている部分の面積は、電極42のうち主面40bに配置されている部分の面積よりも小さい。電極41及び電極42は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。電極41及び電極42は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0032】
圧電素子4は、音響整合部材2及びフレーム部材3によって形成される収容空間Sに配置されている。圧電素子4は、音響整合部材2の底部22に配置されている。圧電素子4は、電気絶縁性を有する接着層(不図示)により底部22に接合されている。圧電素子4と底部22とは、接着層により電気的に絶縁されている。圧電素子4は、圧電素体40の主面40aが底部22の第一主面22aと対向するように配置されている。すなわち、圧電素子4は、電極41が第一主面22aと対向するように配置されている。
【0033】
配線部材5は、一対のリード線51を含む。一対のリード線51は、それぞれ対応する圧電素子4の電極41,42に電気的に間接的に接続されている。リード線51は、収容空間Sからフレーム部材3の開口部Kを介して収容空間Sの外部に延在している。一方のリード線51は、電極41に電気的に間接的に接続されている。他方のリード線51は、電極42に電気的に間接的に接続されている。リード線51は、芯線が被覆に覆われてなる被覆部分51bと、リード線51の先端部分において被覆から露出した芯線からなる芯線部分51cとを含む。
【0034】
一対の導電部材6は、樹脂部材7に保持された状態で、収容空間Sに配置されている。一対の導電部材6は、音響整合部材2から離間して配置されている。一対の導電部材6は、圧電素子4と電気的に接続されている。一方の導電部材6は、電極41と、電極41に対応する一方のリード線51とを電気的に接続している。他方の導電部材6は、電極42と、電極42に対応する他方のリード線51とを電気的に接続している。導電部材6は、圧電素子4に接合されている。導電部材6は、圧電素子4の主面40bに主面40bの縁に沿って設けられている。一対の導電部材6は、主面40bに沿う方向で互いに離間すると共に、互いに対向している。
【0035】
各導電部材6は、第一部分63及び第二部分64を有している。第一部分63及び第二部分64は、互いに電気的に接続されている。本実施形態では、第一部分63及び第二部分64は、一体的に接続されている。導電部材6は、たとえば、金属からなる。導電部材6を構成する金属は、たとえば、リン青銅、無酸素銅、又は銅合金などである。
【0036】
第一部分63は、リード線51に物理的に接続され、圧電素子4から離間している。第一部分63は、主面40a,40bと交差する方向に延在している。第一部分63は、主面40a,40bの対向方向、又は、当該対向方向から見て圧電素子4の重心から離れる方向に延在している。本実施形態では、第一部分63は、主面40a,40bの対向方向に延在している。
【0037】
リード線51は、圧電素子4及び第二部分64から離間して第一部分63に物理的に接続されている。本実施形態では、一方の導電部材6の第一部分63が、一方のリード線51の芯線部分51cに物理的に接続されている。他方の導電部材6の第一部分63が、他方のリード線51の芯線部分51cに物理的に接続されている。一方の導電部材6の第二部分64は電極41に物理的に接続されている。他方の導電部材6の第二部分64は電極42に物理的に接続されている。本明細書において、「物理的に接続されている」とは、直接的に当接している場合に加えてハンダ又は導電性樹脂などの導電性接着材料を介して接続されている場合を含むが、導電性接着材料以外の他の部材を介する場合を含まない。
【0038】
第一部分63及び第二部分64は、それぞれ板形状を呈する板部65,66を含む。第一部分63は板部65を含み、第二部分64は板部66を含む。板部65と板部66とは、互いに交差する方向に延在している。板部65は、電極41,42から離れる方向に延在している。本実施形態において、板部65と板部66とは、互いに直交する方向に延在している。換言すれば、本実施形態において、導電部材6は、L字形状を呈している。板部65は、主面40a,40bの対向方向に延在している。板部66は、主面40bに沿って延在している。
【0039】
板部65は、
図3に示されるように、樹脂部材7の外側に配置され、音響整合部材2の側部23と対向している。板部65及び側部23とは、主面40bに沿う方向において互いに離間している。板部65と側部23の内面23aとの間には、充填部材8が配置されている。板部65と側部23とは、充填部材8によって電気的に絶縁されている。
【0040】
第二部分64の板部66は、平面視で矩形状である。主面40a,40bの対向方向から見て、板部66の面積は、電極41のうち主面40bに配置された部分の面積よりも小さい。一方の導電部材6の板部66は電極41にハンダによって物理的に接続されている。他方の導電部材6の板部66は電極42にハンダによって物理的に接続されている。
【0041】
第一部分63は、板部65に接続された保持部67と、係合部68と、をさらに含む。保持部67及び係合部68は、板部65に対して一体に接続されており、板部65に対して折れ曲がっている。換言すれば、保持部67及び係合部68は、板部65から突出している。
【0042】
保持部67は、各リード線51の先端部分を保持している。本実施形態では、保持部67は、カシメ加工によって、各リード線51を固定している。保持部67は、各リード線51の長さ方向に並んで配置されている一対のピン部分67a,67bを含んでいる。一対のピン部分67a,67bのうち、一方のピン部分67aは、他方のピン部分67bよりもリード線51の先端51a側に配置されている。
【0043】
ピン部分67a,67bが折れ曲がることで各リード線51が保持される。リード線51の芯線部分51cは、保持部67によって導電部材6の板部65に物理的に接続されている。本実施形態では、保持部67は、少なくとも一つのピン部分67aによって各リード線51の芯線部分51cを保持し、当該芯線部分51cが少なくとも一つのピン部分67aにも接続されている。ピン部分67bは、リード線51の被覆部分51bを保持している。ピン部分67aは、リード線51の芯線部分51cのみを保持している。
【0044】
係合部68は、一対のピン部分68a,68bを含み、樹脂部材7に係合している。一対のピン部分68a,68bは、主面40bに沿う方向で互いに離間している。一対のピン部分68a,68bは、主面40bに沿う方向で互いに対向している。一対のピン部分68a,68bの対向方向は、一対の導電部材6の対向方向と交差している。樹脂部材7と係合部68との係合によって、導電部材6は樹脂部材7に固定されている。本明細書において、「固定」とは、ガタを有するように係合されている状態を含む。
【0045】
一対のピン部分68a,68bは、樹脂部材7に対し、一対のピン部分68a,68bの対向方向(すなわち、主面40bに沿う方向)における導電部材6の動きを制限している。つまり、係合部68は、主面40bに沿う方向における導電部材6の動きを制限する第一ストッパとして機能している。さらに、一対のピン部分68a,68bは、板部65と共に、樹脂部材7に対し、主面40aに交差する方向(すなわち、主面40a,40bの対向方向)における導電部材6の動きを制限している。つまり、係合部68及び板部66は、主面40bに交差する方向における導電部材6の動きを制限する第二ストッパとして機能している。
【0046】
樹脂部材7は、収容空間Sに配置されている。樹脂部材7は、圧電素子4上に配置されている。樹脂部材7は、一対の導電部材6を保持している保持部材である。樹脂部材7は、一対の導電部材6を保持し、一対の導電部材6の姿勢を安定させている。
図8に示されているように、樹脂部材7は、枠状を呈している。樹脂部材7の厚さ方向は、主面40a,40bの対向方向と一致する。樹脂部材7は、主面40a,40bの対向方向に延在する軸周りに形成されている。樹脂部材7は、音響整合部材2に囲まれている。樹脂部材7は、圧電素子4の外周に沿って設けられている。樹脂部材7は、圧電素子4の主面40bの縁に沿って延在している。樹脂部材7は、主面40a,40bの対向方向から見て主面40bの重心を囲うように延在している。
【0047】
樹脂部材7は、厚さ方向における圧電素子4と反対側の端部7aに一対の欠落部71を有している。一方の導電部材6の係合部68が一方の欠落部71の縁に係合する。他方の導電部材6の係合部68が他方の欠落部71の縁に係合する。これによって、一対の導電部材6は、樹脂部材7に固定される。樹脂部材7は、係合部68と板部66とに挟まれている。係合部68は、導電部材6に対し、樹脂部材7の外周方向における動きを制限しているとも言える。係合部68及び板部66は、導電部材6に対し、樹脂部材7の厚さ方向における動きを制限しているとも言える。樹脂部材7の材料は、たとえば、PBT、LCPなどの熱可塑性成形材料を含む。
【0048】
各欠落部71には、対応する各リード線51の先端51aが収容されている凹部73が設けられている。凹部73は、圧電素子4側に窪んだ窪みである。凹部73の深さ方向は、主面40a,40bの対向方向と一致している。一方のリード線51の先端51aは、一方の欠落部71に設けられた凹部73に収容されている。他方のリード線51の先端51aは、他方の欠落部71に設けられた凹部73に収容されている。
【0049】
図9に示されるように、各リード線51は、凹部73に収容されている第一部分53と、保持部に保持されている第二部分54と、第一部分53と第二部分54とを接続している第三部分55と、を含んでいる。第一部分53の長さL1は、凹部73の深さL2の1/2未満である。つまり、凹部73の深さ方向において、先端51aは凹部73の底よりも入口の近くに位置している。長さL1は、第三部分55の長さL3の長さ未満でもある。
【0050】
ピン部分67aの長さL4は、ピン部分67bの長さL5よりも短い。長さL4,L5は、ピン部分67a,67bがリード線51に交差する方向に延びる長さである。ピン部分67aの幅L6、及び、ピン部分67bの幅L7は、いずれもリード線51の芯線部分51cの太さL8よりも長い。幅L6,L7は、リード線51の長さ方向におけるピン部分67a,67bの長さである。太さL8は、具体的には、リード線51の芯線部分51cの断面の最大長さである。芯線部分51cの断面が円形状である場合は、太さL8は芯線部分51cの断面の直径である。
【0051】
樹脂部材7には、スリット75が設けられている。樹脂部材7は、スリット75によって一部断絶した枠状を呈している。樹脂部材7は、平面視でC字形状を呈している。樹脂部材7は、スリット75が設けられた形状によって、主面40bに沿う方向に弾性を有している。樹脂部材7は、外周を囲む音響整合部材2の内面23aに弾性的に当接した状態で、収容空間Sに配置されている。樹脂部材7が音響整合部材2に当接することで、音響整合部材2に対して圧電素子4が樹脂部材7及び導電部材6を介して位置決めされる。
【0052】
樹脂部材7の外周面には、主面40a,40bの対向方向に延びる複数の溝77が設けられている。溝77は、樹脂部材7をチャック装置によりチャックする際に用いられる。複数の溝77は、樹脂部材7の周方向において互いに等間隔で設けられている。本実施形態では、4つの溝77が設けられている。4つの溝77は、各欠落部71の両側に設けられている。
【0053】
充填部材8は、収容空間Sに充填されている。したがって、収容空間Sには、圧電素子4、配線部材5の一部、一対の導電部材6、樹脂部材7、充填部材8が収容されている。充填部材8は、音響整合部材2、フレーム部材3、圧電素子4、配線部材5の一部、一対の導電部材6、及び樹脂部材7に接する。充填部材8は、収容空間Sに圧電素子4、配線部材5の一部、一対の導電部材6、及び樹脂部材7が収容された後に充填される。充填部材8は、圧電素子4、配線部材5の一部、導電部材6、樹脂部材7を覆っている。充填部材8は、凹部73にも充填されている。充填部材8は、例えば、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂の少なくとも一つを含む。
【0054】
次に、
図10を参照して、圧電デバイス1の製造方法について説明する。
図10は、圧電デバイス1の製造方法のフローチャートである。
【0055】
まず、音響整合部材2に圧電素子4を配置する(工程S1)。圧電素子4は、音響整合部材2の収容空間Sに配置される。
【0056】
続いて、樹脂部材7に一対の導電部材6を配置する(工程S2)。樹脂部材7の各欠落部71に導電部材6の係合部68が係合する。これによって、一対の導電部材6が、樹脂部材7に取り付けられ、固定される。
【0057】
続いて、一対の導電部材6に配線部材5を配置する(工程S3)。各リード線51は導電部材6にカシメ加工によって固定され、リード線51の芯線部分51cは導電部材6の板部65に物理的に接続される。
【0058】
続いて、圧電素子4に一対の導電部材6を配置する(工程S4)。導電部材6は、樹脂部材7に固定された状態で樹脂部材7と共に収容空間Sに挿入され、圧電素子4の電極41及び電極42に物理的に接続されている。これによって、圧電素子4に対して、導電部材6が同時に位置決めされる。本実施形態では、一方の導電部材6の板部66が電極41にハンダ付けされ、他方の導電部材6の板部66が電極42にハンダ付けされる。
【0059】
樹脂部材7は、たとえば、チャック装置によりチャックされ、収容空間Sに挿入される。これにより、樹脂部材7に保持された一対の導電部材6も、樹脂部材7と共に収容空間Sに挿入される。
【0060】
図11(a)は、チャック前の樹脂部材7の平面図であり、
図11(b)は、チャック後の樹脂部材7の平面図である。
図11(a)及び
図11(b)では、樹脂部材7及びチャック装置のチャック部9以外の図示が省略されている。
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、複数のチャック部9が樹脂部材7の複数の溝77に1つずつ挿入され、樹脂部材7を径方向に押圧する。各チャック部9は、樹脂部材7の厚さ方向に延在する棒状部材である。樹脂部材7は、スリット75の幅が狭まるように弾性変形する。樹脂部材7は、弾性変形した状態で収容空間Sに挿入される。
【0061】
樹脂部材7の外形寸法は、チャック前の状態において、音響整合部材2の側部23の内径寸法よりも大きくなるように形成されている。樹脂部材7がチャックされることにより、樹脂部材7の外形寸法が側部23の内径寸法よりも小さくなる。これにより、チャック装置は、樹脂部材7を収容空間Sにスムーズに挿入することができる。チャック部9は、樹脂部材7を収容空間Sに挿入した後、軸方向に移動し、樹脂部材7から離間する。チャック部9が取り外されると、樹脂部材7は、スリット75の幅が広がるように弾性変形し、チャック前の形状に戻ろうとする。その結果、樹脂部材7は、音響整合部材2の側部23と弾性的に当接する。
【0062】
続いて、フレーム部材3を配置する(工程S5)。フレーム部材3の開口部Kに配線部材5を通した状態において、フレーム部材3が音響整合部材2に取り付けられる。
【0063】
続いて、収容空間Sに充填材を充填する(工程S6)。収容空間Sに充填された充填材によって、収容空間Sに収容された充填部材8が形成される。
【0064】
以上の工程S1~工程S6によって、圧電デバイス1が製造される。工程S1~工程S6の順序は、上述した説明の順序に限定されない。たとえば、工程S1と工程S2及び工程S3とは同時に行われてもよいし、工程S2又は工程S3の後に工程S1が行われてもよい。工程S3又は工程S4の後に工程S2が行われてもよい。
【0065】
次に、本実施形態に係る圧電デバイス1の作用効果について説明する。
【0066】
圧電デバイス1では、樹脂部材7にリード線51の先端51aが収容されている凹部73が設けられている。このため、リード線51と導電部材6とを接続する際に、リード線51の先端51aが樹脂部材7と干渉することにより、リード線51の位置がすれることが抑制される。よって、接続不良を抑制することができる。
【0067】
導電部材6は、主面40bに沿う方向における導電部材6の動きを制限する係合部68を含んでいる。このため、導電部材6が樹脂部材7により安定して保持される。
【0068】
導電部材6は、主面40bに交差する方向における導電部材6の動きを制限する係合部68及び板部65を含んでいる。このため、導電部材6が樹脂部材7により安定して保持される。
【0069】
樹脂部材7は、主面40bに沿う方向に弾性を有し、音響整合部材2の内面23aに弾性的に当接した状態で収容空間Sに配置されている。このように接着剤を用いないので、樹脂部材7を音響整合部材2に対して着脱自在に配置することができる。
【0070】
音響整合部材2は、金属からなる。このため、音響整合部材2が樹脂からなる場合に比べて、音響整合部材2の成形が容易となり、音響整合部材2の寸法精度を向上させることができる。よって、音響整合部材2の特性のばらつきが生じ難い。
【0071】
導電部材6は、音響整合部材2から離間して配置されている。このため、金属からなる音響整合部材2との間で電気的短絡が発生することを抑制できる。
【0072】
リード線51は、凹部73に収容されている第一部分53と、保持部67に保持されている第二部分54と、第一部分53と第二部分54とを接続している第三部分55と、を含んでいる。第一部分53の長さL1は、第三部分55の長さL3未満、かつ、凹部73の深さL2の1/2未満である。このため、凹部73に樹脂が充填され易い。
【0073】
保持部67では、リード線51の先端51a側に配置されたピン部分67aの長さL4は、もう一方のピン部分67bの長さL5よりも短い。このため、リード線51を確実に保持することができる。
【0074】
ピン部分67aの幅L6及びピン部分67bの幅L7は、ぞれぞれリード線51の芯線部分51cの太さL8よりも長い。このため、リード線51を確実に保持することができる。
【0075】
ピン部分67bは、被覆部分51bを保持し、ピン部分67aは、芯線部分51cのみを保持している。このため、ピン部分67bがリード線51を確実に保持する。ピン部分67aがリード線51との電気的接続を確実に行いつつ、リード線51のずれを確実に抑制する。
【0076】
圧電デバイス1において、リード線51は、圧電素子4の電極41,42に物理的に接続されておらず、導電部材6を介して圧電素子4の電極41,42に接続されている。導電部材6の第一部分63は圧電素子4から離間し、導電部材6の第二部分64は圧電素子4の電極41,42に物理的に接続されている。リード線51は、導電部材6の第二部分64及び圧電素子4から離間して導電部材6の第一部分63に物理的に接続されている。このため、リード線51が物理的に接続されている部分に伝達される振動が抑制され得る。リード線51の物理的な接続構成が圧電素子4の変位に与える影響も低減されるため、リード線51が第一部分63に強固に接続されたとしても、圧電素子4の変位が阻害され難い。したがって、この圧電デバイス1では、超音波の発信又は検出に関する品質が確保されていると共に圧電素子4の電極41,42からのリード線51の剥落が抑制され得る。
【0077】
リード線51が圧電素子4の電極41,42に物理的に接続されている場合、圧電素子4の電極41,42に対する配線部材の物理的な接続構成によって、圧電素子4の変位が変わる。たとえば、リード線51が圧電素子4の電極41,42にハンダ付けによって物理的に接続されている場合、圧電素子4の電極41,42に接するハンダの量又は形状が変われば、圧電素子4の変位も変わる。圧電素子4の変位が変わると、圧電デバイス1が超音波を発する場合には圧電デバイス1から発せられる超音波の波形が変わり、圧電デバイス1が超音波を検出する場合には受けた超音波の検出結果が変わる。圧電素子4の電極41,42に対する接続構成の製造精度が向上すれば、圧電デバイス1の製品間における圧電素子の変位のばらつきが解決される。
【0078】
圧電デバイス1において、導電部材6の第二部分64が圧電素子4の電極41,42に物理的に接続されている。このため、リード線51が電極41,42に物理的に接続されている場合よりも、電極41,42に対する接続構成の製造精度が向上する。したがって、圧電デバイス1の製品間における圧電素子の変位のばらつきも低減される。
【0079】
第一部分63及び第二部分64は、それぞれ板形状を呈する板部65,66を含んでいる。第一部分63の板部65と第二部分64の板部66とは、互いに交差する方向に延在している。第一部分63の板部65は、リード線51に物理的に接続されている。第二部分64の板部66は、電極41,42に物理的に接続されている。このため、第二部分64の板部66が圧電素子4の電極41,42に物理的に接続されているため、圧電デバイス1の製品間における圧電素子4の電極41,42と導電部材6との接続状態のばらつきがさらに抑制される。
【0080】
第一部分63は、リード線51を把持する保持部67を含んでいる。このため、ハンダ付けなしでリード線51が物理的に接続され得る。このため、圧電素子4の変位の阻害がさらに抑制され得る。
【0081】
第一部分63は、一対の主面40a,40bの対向方向、又は、対向方向から見て圧電素子4の重心から離れる方向に延在している。このため、導電部材6の第一部分63における振動波の反射が抑制される。
【0082】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0083】
音響整合部材2は、金属以外の材料からなってもよい。音響整合部材2は、たとえば、エポキシ樹脂で形成されていてもよい。音響整合部材2は、たとえば、エポキシ樹脂にガラスビーズを混入した複合材料の発泡成形によって形成されていてもよい。音響整合部材2では、たとえば、底部22及び側部23が異なる材料からなってもよい。この場合、たとえば、底部22が金属以外の材料からなり、側部23が金属からなってもよい。
【0084】
たとえば、本実施形態では、圧電素子4が接着層を介して第一主面22a上に配置されているが、底部22が絶縁性材料からなる場合、圧電素子4が第一主面22a上に配置されていてもよい。
【0085】
本実施形態では、圧電デバイス1が2つの導電部材6を備える場合について説明した。しかし、圧電デバイス1が備える導電部材6は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。導電部材6が1つの場合は、一方のリード線51が導電部材6に物理的に接続され、他方のリード線51が圧電素子4の電極に物理的に接続されてもよい。
【0086】
本実施形態では、導電部材6における保持部67によって、リード線51の芯線部分51cが板部65に物理的に接続されている構成について説明した。しかし、リード線51の芯線部分51cは、ハンダ付けなどによって板部65に物理的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…圧電デバイス、2…音響整合部材(ケース)、4…圧電素子、6…導電部材、7…樹脂部材(保持部材)、23a…内面、40…圧電素体、40b…主面、41,42…電極、51…リード線、51a…先端、51b…被覆部分、51c…芯線部分、53…第一部分、54…第二部分、55…第三部分、63…第一部分、64…第二部分、67…保持部、67a,67b…ピン部分、68…係合部、73…凹部、S…収容空間。