IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-端子付き電線 図1
  • 特許-端子付き電線 図2
  • 特許-端子付き電線 図3
  • 特許-端子付き電線 図4
  • 特許-端子付き電線 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020155134
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049098
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】窪田 基樹
(72)【発明者】
【氏名】金村 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】山中 航
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-147223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 43/048
H01R 24/22
H01R 24/38-24/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線に接続される端子と、を備え、
前記電線は、導体と、前記導体の外周を覆う被覆と、を有し、
前記電線は、前記導体の外周面が露出した導体露出部を含み、
前記端子は、前記電線の前記被覆を保持するインシュレーションバレルと、前記インシュレーションバレルよりも前方で前記電線の前記導体露出部に接続されるワイヤバレルと、を有し、
前記ワイヤバレルは、ワイヤバレル基部と、前記ワイヤバレル基部の幅方向の一方側の端部から他方側に延びて前記導体露出部の外周を覆う一側ワイヤバレル片と、前記ワイヤバレル基部の前記他方側の端部から延びて、前記他方側において前記一側ワイヤバレル片の外周に重なる他側ワイヤバレル片と、を有し、
前記ワイヤバレルの前記幅方向の中心は、前記インシュレーションバレルが保持する前記電線の前記幅方向の中心に対し、前記他方側にずれており、
前記インシュレーションバレルは、前記ワイヤバレル基部の後方に連なるインシュレーションバレル基部と、前記インシュレーションバレル基部の前記一方側の端部から延びて前記被覆の外周の前記一方側を覆う一側インシュレーションバレル片と、前記インシュレーションバレル基部の前記他方側の端部から延びて前記被覆の外周の前記他方側を覆う他側インシュレーションバレル片と、を有し、
前記一側インシュレーションバレル片および前記他側インシュレーションバレル片の各々の先端は、前記被覆に係止される端子付き電線。
【請求項2】
前記導体露出部の中心の高さ位置において、前記導体露出部の前記一方側には前記一側ワイヤバレル片が一重に配置され、前記導体露出部の前記他方側には前記一側ワイヤバレル片と前記他側ワイヤバレル片または前記ワイヤバレル基部とが前記幅方向に二重に配置されている請求項1に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~2には、端子に電線を圧着した端子付き電線が開示されている。例えば、特許文献1の端子付き電線は、ワイヤバレルとインシュレーションバレルとを有する。ワイヤバレルは、幅方向両側のそれぞれから延びる延出部を有している。一方の延出部は電線に巻き付けられる。他方の延出部は上記一方の延出部の周面に巻き付けられる。特許文献1の第5図に示す態様の場合、端子の幅方向の一方側では一方の延出部のみが一重に配置されるのに対し、端子の幅方向の他方側では両延出部が幅方向に重なって二重に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-147223号公報(第5図)
【文献】特開2003-317882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合、ワイヤバレルの厚みは、幅方向の他方側の方が一方側よりも大きくなる。このため、電線の幅方向の中心は、インシュレーションバレルに保持される位置とワイヤバレルで接続される位置とで幅方向に大きくずれるおそれがある。その結果、電線を流れる電流に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、端子に圧着される電線のずれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子付き電線は、電線と、前記電線に接続される端子と、を備え、前記電線は、導体と、前記導体の外周を覆う被覆と、を有し、前記電線は、前記導体の外周面が露出した導体露出部を含み、前記端子は、前記電線の前記被覆を保持するインシュレーションバレルと、前記インシュレーションバレルよりも前方で前記電線の前記導体露出部に接続されるワイヤバレルと、を有し、前記ワイヤバレルは、ワイヤバレル基部と、前記ワイヤバレル基部の幅方向の一方側の端部から他方側に延びて前記導体露出部の外周を覆う一側ワイヤバレル片と、前記ワイヤバレル基部の前記他方側の端部から延びて、前記他方側において前記一側ワイヤバレル片の外周に重なる他側ワイヤバレル片と、を有し、前記ワイヤバレルの前記幅方向の中心は、前記インシュレーションバレルが保持する前記電線の前記幅方向の中心に対し、前記他方側にずれている端子付き電線である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、端子に圧着される電線のずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る端子付き電線の斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る端子付き電線の側断面図である。
図3図3は、実施形態1に係る端子付き電線の平断面図である。
図4図4は、端子付き電線におけるワイヤバレルを含む部分の横断面図である。
図5図5は、端子付き電線におけるインシュレーションバレルを含む部分の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子付き電線は、
(1)電線と、前記電線に接続される端子と、を備え、前記電線は、導体と、前記導体の外周を覆う被覆と、を有し、前記電線は、前記導体の外周面が露出した導体露出部を含み、前記端子は、前記電線の前記被覆を保持するインシュレーションバレルと、前記インシュレーションバレルよりも前方で前記電線の前記導体露出部に接続されるワイヤバレルと、を有し、前記ワイヤバレルは、ワイヤバレル基部と、前記ワイヤバレル基部の幅方向の一方側の端部から他方側に延びて前記導体露出部の外周を覆う一側ワイヤバレル片と、前記ワイヤバレル基部の前記他方側の端部から延びて、前記他方側において前記一側ワイヤバレル片の外周に重なる他側ワイヤバレル片と、を有し、前記ワイヤバレルの前記幅方向の中心は、前記インシュレーションバレルが保持する前記電線の前記幅方向の中心に対し、前記他方側にずれている。
【0010】
この端子付き電線では、幅方向の他方側において、一側ワイヤバレル片と他側ワイヤバレル片が電線の径方向に重なる。このため、ワイヤバレルに覆われる導体露出部の幅方向の中心が、ワイヤバレルの幅方向の中心から一方側にずれてしまう。しかし、ワイヤバレルの幅方向の中心は、インシュレーションバレルの幅方向の中心に対し、他方側にずらしてある。このため、ワイヤバレルに覆われる導体露出部の幅方向の中心と、インシュレーションバレルが保持する電線の幅方向の中心とのずれが解消するか、あるいは小さくなる。したがって、この端子付き電線によれば、端子に接続される電線のずれを抑制することができる。
【0011】
(2)前記インシュレーションバレルは、前記ワイヤバレル基部の後方に連なるインシュレーションバレル基部と、前記インシュレーションバレル基部の一方側の端部から延びて前記被覆の外周の前記一方側を覆う一側インシュレーションバレル片と、前記インシュレーションバレル基部の前記他方側の端部から延びて前記被覆の外周の前記他方側を覆う他側インシュレーションバレル片と、を有し、前記一側インシュレーションバレル片および前記他側インシュレーションバレル片の各々の先端は、前記被覆に係止されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、一側インシュレーションバレル片および他側インシュレーションバレル片の各々の先端が被覆に係止されるため、高い保持力で電線を保持することができる。さらに、この構成によれば、一側インシュレーションバレル片および他側インシュレーションバレル片が互いに電線の径方向に重ならない。このため、インシュレーションバレルが保持する電線の幅方向の中心が、インシュレーションバレルの幅方向の中心に対してずれることを抑制することができる。
【0013】
(3)前記導体露出部の中心の高さ位置において、前記導体露出部の前記一方側には前記一側ワイヤバレル片が一重に配置され、前記導体露出部の前記他方側には前記一側ワイヤバレル片と前記他側ワイヤバレル片または前記ワイヤバレル基部とが前記幅方向に二重に配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、導体露出部の中心の高さ位置において、導体露出部の幅方向の中心のずれが、一側ワイヤバレル片と他側ワイヤバレル片のそれぞれの板厚分となるため、ずれを抑制するための調整が容易になる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
<実施形態1>
実施形態1は、端子付き電線10を例示する。端子付き電線10は、図1に示すように、電線11および端子12を備え、電線11が端子12に圧着された構成をなしている。なお、以下の説明では、端子付き電線10において、図示しない相手側端子が接続される側を前方側とし、その反対側を後方側とする。また、図2図4図5にあらわれる上下方向をそのまま上下方向とする。また、前方側から見た左右方向を左右方向とする。なお、左右方向が「幅方向」の一例に相当し、左方側が「幅方向の一方側」の一例に相当し、右方側が「幅方向の他方側」の一例に相当する。また、本実施形態では、上下方向が端子付き電線10の高さ方向となる。
【0017】
電線11は、図2および図3に示すように、同軸ケーブルである。電線11は、中心から外周に向けて、中心導体20、絶縁体21、第1シールド導体22、第2シールド導体23および被覆24を有する。中心導体20、第1シールド導体22および第2シールド導体23は、「導体」の一例に相当する。第1シールド導体22および第2シールド導体23は、「シールド導体」の一例に相当する。中心導体20は、例えば複数の素線を撚り合わせた導電性の芯線である。中心導体20は、高周波信号を伝送する。絶縁体21は、中心導体20の外周を覆う。第1シールド導体22および第2シールド導体23は、絶縁体21の外周を覆う。第1シールド導体22は、第2シールド導体23の内側に配置される。第1シールド導体22は、例えば金属箔(例えば銅箔)として構成されている。第2シールド導体23は、例えば素線を網状に編成してなる導電性の編組線として構成されている。第1シールド導体22および第2シールド導体23は、電磁波を遮断する機能を有する。被覆24は、絶縁性を有し、第2シールド導体23の外周を覆う。
【0018】
電線11は、後方側から前方側に向けて、非露出部25、シールド導体露出部26および中心導体露出部27を有する。シールド導体露出部26は、「導体露出部」の一例に相当する。非露出部25は、導体(本実施形態では、中心導体20、第1シールド導体22および第2シールド導体23)の外周面が露出していない部位である。つまり、非露出部25は、最外層が被覆24である部位である。シールド導体露出部26は、第2シールド導体23の外周面が露出した部位である。中心導体露出部27は、中心導体20の外周面が露出した部位である。シールド導体露出部26および中心導体露出部27は、電線11の先端部に配置される。中心導体露出部27は、シールド導体露出部26よりも先端側に配置される。電線11の先端部において、被覆24を除去することでシールド導体露出部26が形成される。シールド導体露出部26の先端部において、絶縁体21、第1シールド導体22および第2シールド導体23を除去することで中心導体露出部27が形成される。
【0019】
端子12は、内導体端子30、誘電体31および外導体端子32を有する。内導体端子30は、導電性の金属材料からなり、前後方向に長い形状をなしている。内導体端子30は、端子接続部33および中心導体接続部34を有する。端子接続部33は、前後方向に開放された円筒状をなしており、図示しない相手側端子に接続される。中心導体接続部34は、端子接続部33よりも後方に配置され、電線11の中心導体露出部27が圧着等により接続される。
【0020】
誘電体31は、絶縁性の合成樹脂材料からなる。誘電体31は、前後方向に開放された円筒状をなしており、内導体端子30の外周側に配置される。
【0021】
外導体端子32は、導電性を有し、金属板を折り曲げ加工等することによって形成される。外導体端子32は、筒部40、第1連結部41、底壁部42、側壁部43および開口部44を有する。筒部40は前後方向に開放された円筒状をなしている。筒部40は、誘電体31を介して内導体端子30の端子接続部33の外周を覆う。筒部40の後端には、第1連結部41を介して底壁部42および側壁部43が連なる。底壁部42は、前後方向および左右方向に沿った平面状をなしている。底壁部42の面に対して直交する方向が、端子付き電線10の高さ方向となる。側壁部43は、底壁部42の左右両側から立ち上がった形態をなし、前後方向および上下方向に沿った平面状をなしている。側壁部43の面と平行な方向で且つ前後方向に対して直交する方向が、端子付き電線10の高さ方向となる。側壁部43は、中心導体接続部34の左右両側に配置される。開口部44は、底壁部42を上下方向に貫通した形態をなしている。開口部44は、中心導体接続部34の下方に配置される。中心導体接続部34は端子12の上下に露出している。なお、中心導体接続部34の上下は、中心導体接続部34に中心導体露出部27が圧着された後に、図示しない金属製のカバーによって覆われる。
【0022】
外導体端子32は、第1スタビライザ45および第2スタビライザ46を有する。第1スタビライザ45は、左側の側壁部43の上端から上方に延出し、外側に折り返した形態をなしている。第2スタビライザ46は、右側の側壁部43の上端から上方に延出し、外側に折り返した形態をなしている。第1スタビライザ45および第2スタビライザ46は、図示しないハウジングに係止されることにより、抜け止め状態で保持される。
【0023】
外導体端子32は、第2連結部47、ワイヤバレル48、第3連結部49およびインシュレーションバレル50を有する。第2連結部47は、底壁部42および側壁部43の後端とワイヤバレル48の前端とを連結する部位である。第2連結部47は、上方に開放された弧状の横断面形状をなしており、図3に示すように、後方に向けて小さくなっている。第3連結部49は、ワイヤバレル48とインシュレーションバレル50とを連結する部位である。第3連結部49は、上方に開放された弧状の横断面形状をなしており、図3に示すように、後方に向けて大きくなっている。
【0024】
ワイヤバレル48は、図4に示すように、電線11のシールド導体露出部26に圧着される部位である。ワイヤバレル48は、電線11が圧着される前の段階において、上方に開放されたオープンバレル状をなしている。ワイヤバレル48は、ワイヤバレル基部51、一側ワイヤバレル片52および他側ワイヤバレル片53を有する。ワイヤバレル基部51は、第2連結部47を介して、底壁部42および側壁部43に連なる。
【0025】
ワイヤバレル基部51は、上方に開放された弧状の横断面形状をなしており、形状および大きさが前後方向に一定である。ワイヤバレル基部51の上面には、電線11のシールド導体露出部26が配置される。ワイヤバレル基部51は、電線11のシールド導体露出部26の下側部分を覆う。
【0026】
一側ワイヤバレル片52は、ワイヤバレル基部51の左端から延びて、シールド導体露出部26の上側部分に巻き付けられる。一側ワイヤバレル片52は、ワイヤバレル基部51の左端から右方へ弧状に延びた形状をなしており、シールド導体露出部26の上側部分を覆う。一側ワイヤバレル片52の先端54は、第3連結部49におけるワイヤバレル48との付け根部分49Aの高さ位置よりも下方に配置されている。
【0027】
他側ワイヤバレル片53は、ワイヤバレル基部51の右端から延びて、一側ワイヤバレル片52の外周面に巻き付けられる。他側ワイヤバレル片53は、ワイヤバレル基部51の右端から左方へ弧状に延びた形状をなしており、一側ワイヤバレル片52の外周面に重なる。他側ワイヤバレル片53は、ワイヤバレル48の左右方向の中心WCよりも右方において、少なくとも一部が一側ワイヤバレル片52と二重に配置されている。他側ワイヤバレル片53の先端55は、ワイヤバレル48の左右方向の中心WCよりも左方に配置され、ワイヤバレル48の最左端よりも右方に配置されている。
【0028】
ワイヤバレル48によって覆われるシールド導体露出部26の左右方向の中心WDCは、ワイヤバレル48の左右方向の中心WCに対し、左方にずれている。ここで、シールド導体露出部26の左右方向の中心WDCとは、シールド導体露出部26における中心導体20の左右方向の中心のことを意味する。
【0029】
シールド導体露出部26の中心の高さ位置HCにおいて、シールド導体露出部26の左側には、一側ワイヤバレル片52が一重に配置されており、右側には、一側ワイヤバレル片52と他側ワイヤバレル片53またはワイヤバレル基部51とが左右方向に二重に配置されている。ここで、シールド導体露出部26の中心の高さ位置HCとは、シールド導体露出部26における中心導体20の中心の高さ位置のことを意味する。
【0030】
ワイヤバレル48の左右方向の最大幅寸法は、インシュレーションバレル50の左右方向の最大幅寸法よりも小さい。ワイヤバレル48の最左端とインシュレーションバレル50の最左端との左右方向の距離X1は、ワイヤバレル48の最右端とインシュレーションバレル50の最右端との左右方向の距離X2よりも長い(図3参照)。
【0031】
インシュレーションバレル50は、図5に示すように、電線11の非露出部25、つまり、被覆24に圧着される部位である。インシュレーションバレル50は、電線11に圧着される前の段階において、上方に開放されたオープンバレル状をなしている。インシュレーションバレル50は、インシュレーションバレル基部61、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63を有する。
【0032】
インシュレーションバレル基部61は、上方に開放された弧状の横断面形状をなしており、形状および大きさが前後方向に一定である。インシュレーションバレル基部61の前端は、第3連結部49を介してワイヤバレル基部51の後端に連なる。インシュレーションバレル基部61の上面には、電線11の被覆24が配置される。インシュレーションバレル基部61は、電線11の被覆24の下半分を覆う。
【0033】
一側インシュレーションバレル片62は、インシュレーションバレル基部61の左端から延びて被覆24の外周面の上側且つ左側部分を覆う。他側インシュレーションバレル片63は、インシュレーションバレル基部61の右端から延びて被覆24の外周面の上側且つ右側部分を覆う。一側インシュレーションバレル片62の先端64および他側インシュレーションバレル片63の先端65は、インシュレーションバレル50の左右方向の中心ICよりも右方において、それぞれ被覆24に係止されている。
【0034】
一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々は、図5に示すように、電線11に係止された状態において、以下の状態となる。一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々は、湾曲状をなしている。一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63は、先端64,65寄りの位置で互いに左右方向に対向した状態に配置される。一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の最高点の高さ位置は同じである。一側インシュレーションバレル片62の先端64と、他側インシュレーションバレル片63の先端65との高さ位置は同じである。
【0035】
次に、端子付き電線10の製造方法、作用および効果について説明する。
電線11においては、先端部の被覆24が除去されることでシールド導体露出部26が形成され、さらに絶縁体21、第1シールド導体22および第2シールド導体23が除去されることで、中心導体露出部27が形成される。なお、絶縁体21の外周面は、シールド導体露出部26の前側において少し露出している。
【0036】
端子12においては、金属板が折り曲げ加工等されることで、内導体端子30および外導体端子32がそれぞれ製造される。誘電体31は樹脂成型される。外導体端子32の筒部40内には、誘電体31を介して内導体端子30が配置される。端子12には、底壁部42及び側壁部43が変位規制された状態で電線11が圧着される。つまり、底壁部42及び側壁部43が、上下方向および左右方向を規定する。具体的には、外導体端子32の中心導体接続部34に、電線11の中心導体露出部27が圧着される。外導体端子32のワイヤバレル48には、電線11のシールド導体露出部26が圧着される。外導体端子32のインシュレーションバレル50には、電線11の被覆24が圧着される。
【0037】
ワイヤバレル48にシールド導体露出部26を圧着する際、まず、ワイヤバレル基部51の上面にシールド導体露出部26が配置され、一側ワイヤバレル片52がシールド導体露出部26の外周面に巻き付けられ、他側ワイヤバレル片53が一側ワイヤバレル片52の外周面に重なる。このとき、一側ワイヤバレル片52の先端は、シールド導体露出部26の左右方向の中心WCよりも右方において、他側ワイヤバレル片53の内側に配置される。このため、一側ワイヤバレル片52の先端は、他側ワイヤバレル片53から左方に押圧され、シールド導体露出部26の右側部分を左方に押圧する。その結果、シールド導体露出部26における中心導体20は、ワイヤバレル48の左右方向の中心WCに対して左方にずれてしまう。しかし、ワイヤバレル48の左右方向の中心WCは、インシュレーションバレル50が保持する電線11の左右方向の中心IDCに対し、右方にずらしてある。ここで、インシュレーションバレル50が保持する電線11の左右方向の中心IDCとは、インシュレーションバレル50が保持する電線11における中心導体20の左右方向の中心のことを意味する。このため、インシュレーションバレル50が保持する電線11の左右方向の中心IDCと、ワイヤバレル48によって覆われるシールド導体露出部26の左右方向の中心WDCとのずれが解消するか、あるいは小さくなる。その結果、電線11、詳細には中心導体20は、図3に示す平面視において全体として前後方向に直線状に配置されている。したがって、この端子付き電線10によれば、端子12に接続される電線11のずれを抑制することができる。
【0038】
特に、本実施形態1では、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々の先端64,65が、電線11の被覆24に係止される。このため、高い保持力で電線11を保持することができる。さらに、この端子付き電線10によれば、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63が互いに電線11の径方向に重ならない。このため、インシュレーションバレル50が保持する電線11の左右方向の中心IDCが、インシュレーションバレル50の左右方向の中心ICに対してずれることを抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態1では、シールド導体露出部26の中心の高さ位置HCにおいて、シールド導体露出部26の左側には一側ワイヤバレル片52が一重に配置され、シールド導体露出部26の右側には一側ワイヤバレル片52と他側ワイヤバレル片53またはワイヤバレル基部51とが左右方向に二重に配置されている。よって、シールド導体露出部26の中心の高さ位置HCにおいて、シールド導体露出部26の左右方向の中心WDCのずれが、一側ワイヤバレル片52と他側ワイヤバレル片53のそれぞれの板厚分となるため、ずれを抑制するための調整が容易になる。
【0040】
また、ワイヤバレル48にシールド導体露出部26を圧着する際、まず、ワイヤバレル基部51の上面にシールド導体露出部26が配置され、一側ワイヤバレル片52がシールド導体露出部26の外周面に巻き付けられる。このとき、一側ワイヤバレル片52によって、一側インシュレーションバレル片62も右方に引っ張られる。このため、一側インシュレーションバレル片62は、電線11の被覆24に巻き付けられる際、右方寄りの位置に配置されるおそれがある。この場合、他側インシュレーションバレル片63の先端65が一側インシュレーションバレル片62の外周面に突き当たり、電線11に係止されないおそれがある。このような問題は、一側ワイヤバレル片52の巻き付けと、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の巻き付けとを別々に行う場合であっても、同時に行う場合であっても生じるが、同時に行う場合に特に顕著となる。
【0041】
しかし、この端子付き電線10では、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々の先端64,65が、インシュレーションバレル50が保持する電線11の左右方向の中心IDCよりも右方に配置される。このため、一側インシュレーションバレル片62は、ワイヤバレル48の一側ワイヤバレル片52が電線11の外周に巻き付けられるときに、仮に一側ワイヤバレル片52から右方へ引っ張られたとしても、自身が配置されるべき位置を右方に超えにくい。よって、他側インシュレーションバレル片63の先端が一側インシュレーションバレル片62に突き当たることなく電線11の被覆24に係止されやすい。したがって、端子12が電線11を保持する保持力の低下が抑制される。
【0042】
また、電線11は、同軸ケーブルとして構成されている。このため、圧着部分においても、シールド性能にばらつきが生じないことが好ましい。そこで、端子付き電線10は、以下のように構成されている。インシュレーションバレル50に電線11の被覆24を圧着する際、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々は、湾曲状をなすように変形される。そして、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々の先端64,65は、電線11の内側に食い込ませられる。これにより、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63は、先端64,65寄りの位置で左右方向に互いに対向した状態に配置される。よって、第1シールド導体22および第2シールド導体23は、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々が互いに対向しない位置にずれて配置される構成と比較して、一側インシュレーションバレル片62および他側インシュレーションバレル片63の各々から均一な押圧力を受けることができる。その結果、第1シールド導体22および第2シールド導体23において部分的に偏った変形が抑制されるため、第1シールド導体22および第2シールド導体23の部位に応じたシールド性能のばらつきが生じにくい。
【0043】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態1では、電線を同軸ケーブルとしたが、同軸ケーブルでなくてもよい。例えば、中心導体を直接被覆で覆った電線であってもよい。
(2)上記実施形態1では、インシュレーションバレルが第3連結部を介してワイヤバレルに連結される構成としたが、ワイヤバレルに直接連結される構成としてもよい。
(3)インシュレーションバレルの形状は、上記実施形態1とは別の形状を採用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…端子付き電線
11…電線
12…端子
20…中心導体(導体)
21…絶縁体
22…第1シールド導体(導体)
23…第2シールド導体(導体)
24…被覆
25…非露出部
26…シールド導体露出部(導体露出部)
27…中心導体露出部
30…内導体端子
31…誘電体
32…外導体端子
33…端子接続部
34…中心導体接続部
40…筒部
41…第1連結部
42…底壁部
43…側壁部
44…開口部
45…第1スタビライザ
46…第2スタビライザ
47…第2連結部
48…ワイヤバレル
49…第3連結部
49A…付け根部
50…インシュレーションバレル
51…ワイヤバレル基部
52…一側ワイヤバレル片
53…他側ワイヤバレル片
54…一側ワイヤバレル片の先端
55…他側ワイヤバレル片の先端
61…インシュレーションバレル基部
62…一側インシュレーションバレル片
63…他側インシュレーションバレル片
64…一側インシュレーションバレル片の先端
65…他側インシュレーションバレル片の先端
IDC…インシュレーションバレルが保持する電線の左右方向の中心
WDC…ワイヤバレルによって覆われるシールド導体露出部の左右方向の中心
HC…シールド導体露出部の中心の高さ位置
IC…インシュレーションバレルの左右方向の中心
WC…ワイヤバレルの左右方向の中心
X1…ワイヤバレルの最左端とインシュレーションバレルの最左端との左右方向の距離
X2…ワイヤバレルの最右端とインシュレーションバレルの最右端との左右方向の距離
図1
図2
図3
図4
図5