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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240305BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F25B1/00 341V
F25B1/00 361J
F25B49/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020179220
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022070159
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】廣内 優
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196629(JP,A)
【文献】特開2015-230115(JP,A)
【文献】特開2018-115805(JP,A)
【文献】特開平10-30835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
F24F 1/00 ~ 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧縮機と室外熱交換器を有する複数の室外機と、同複数の室外機に冷媒配管で接続され室内熱交換器を有する複数の室内機と、前記複数の圧縮機から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサと、前記複数の圧縮機に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサと、前記複数の圧縮機を制御する制御手段と、
を有する空気調和装置であって、
前記制御手段は、
前記複数の室外熱交換器が凝縮器として機能するとともに前記複数の室内熱交換器が蒸発器として機能するとき、あるいは、前記複数の室外熱交換器が蒸発器として機能するとともに前記複数の室内熱交換器が凝縮器として機能するとき、
一時的に凝縮器で発揮される凝縮能力と蒸発器で発揮される蒸発能力との差が大きくなることに起因して、前記吐出圧力センサで検出した吐出圧力が所定の上限値を超えた場合、あるいは、前記吸入圧力センサで検出した吸入圧力が所定の下限値を下回った場合は、前記複数の室外機のうちの運転している室外機の圧縮機を停止させて空調運転を停止させる圧力保護停止を実行し、
前記圧力保護停止を実行した後に空調運転を再開させるとき、凝縮器で発揮される凝縮能力と蒸発器で発揮される蒸発能力との差が前記圧力保護停止を実行した際の凝縮能力と蒸発能力との差より小さくなるように、再起動させる前記室外機の台数を決定する、
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記複数の室外熱交換器が凝縮器として機能するとともに前記複数の室内熱交換器が蒸発器として機能するとき、
凝縮器で発揮される凝縮能力に対して蒸発器で発揮される蒸発能力が過多であることに起因して前記吐出圧力センサで検出した吐出圧力が所定の上限値を超えて前記圧力保護停止を実行した場合は、空調運転を再開させるときに全ての前記室外機を起動し、
蒸発器で発揮される蒸発能力に対して凝縮器で発揮される凝縮能力が過多であることに起因して前記吸入圧力センサで検出した吸入圧力が所定の下限値を下回った場合は、空調運転を再開させるときに前記複数の室外機のうちのいずれか1台を起動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記複数の室外熱交換器が蒸発器として機能するとともに前記複数の室内熱交換器が凝縮器として機能するとき、
凝縮器で発揮される凝縮能力に対して蒸発器で発揮される蒸発能力が過多であることに起因して前記吐出圧力センサで検出した吐出圧力が所定の上限値を超えて前記圧力保護停止を実行した場合は、空調運転を再開させるときに前記複数の室外機のうちのいずれか1台を起動し、
蒸発器で発揮される蒸発能力に対して凝縮器で発揮される凝縮能力が過多であることに起因して前記吸入圧力センサで検出した吸入圧力が所定の下限値を下回った場合は、空調運転を再開させるときに全ての前記室外機を起動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記圧力保護停止後に空調運転を再開させるとき、前記起動させる室外機の前記圧縮機を最低回転数とする、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多室型の空気調和装置に係り、特に、圧力保護停止後の室外機の再起動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の室外機と、複数の室内機とが液管およびガス管で接続された多室型の空気調和装置では、各室外機に能力可変型の圧縮機が複数搭載されるものがある。このような空気調和装置では、各室内機が要求する空調能力の合計値に応じて室外機の運転台数が決定される。また、運転する室外機では、当該室外機が担う能力に応じて、圧縮機の運転台数や回転数が決定される(例えば、特許文献1)。そして、駆動させる圧縮機の回転数は、次のように制御される。
【0003】
空気調和装置が冷房運転を行うときは、冷媒回路における低圧圧力である圧縮機に吸入される冷媒の圧力(吸入圧力)が、各室内機が要求する冷房能力の合計値に応じて定められる目標低圧圧力となるように圧縮機の回転数が制御される。また、空気調和装置が暖房運転を行うときは、冷媒回路における高圧圧力、例えば、圧縮機から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力が、各室内機が要求する暖房能力の合計値に応じて定められる目標高圧圧力となるように圧縮機の回転数が制御される(例えば、特許文献2)。
【0004】
ところで、圧縮機には通常、性能が補償される吐出圧力の上限値と吸入圧力の下限値とで決まる圧力の使用範囲が固有に定められている。しかし、上述した多室型の空気調和装置では、複数の室内機の運転台数が大幅に増減した際に、凝縮器として機能する熱交換器で発揮される凝縮能力と、蒸発器として機能する熱交換器で発揮される蒸発能力との能力差が一時的に大きくなることに起因して、吐出圧力や吸入圧力が上述した圧力の使用範囲を超えた値となる場合がある。
【0005】
空気調和装置で冷房運転が行われているときに、運転する室内機の台数が急激に増加した場合、つまり、室内機から要求される冷房能力の合計値が急激に大きくなった場合は、凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器の凝縮能力の合計値を要求される冷房能力に応じた値へと増加させるのに時間がかかるため、冷房運転を行う室内機の台数が急激に増加した直後では、蒸発器として機能する各室内機の室内熱交換器の蒸発能力の合計値が凝縮能力の合計値に対して一時的に過大となって蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。この場合、蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して圧縮機に吸入される冷媒の温度が高くなり、ひいては圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなって吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値、例えば、4.0MPaを超える恐れがある。一方、運転する室内機の台数が急激に減少した場合、つまり、室内機から要求される冷房能力の合計値が急激に小さくなった場合は、凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器の凝縮能力の合計値を要求される冷房能力に応じた値へと減少させるのに時間がかかるため、冷房運転を行う室内機の台数が急激に減少した直後では、凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器の凝縮能力の合計値が蒸発能力の合計値に対して一時的に過大となって凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。この場合、凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して圧縮機に吸入される冷媒の温度が低くなって吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値、例えば0.1MPaを下回る恐れがある。
【0006】
また、空気調和装置で暖房運転が行われているときに、運転する室内機の台数が急激に減少した場合、つまり、室内機から要求される暖房能力の合計値が急激に小さくなった場合は、蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器の蒸発能力の合計値を要求される暖房能力に応じた値へと減少させるのに時間がかかるため、暖房運転を行う室内機の台数が急激に減少した直後では、蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される蒸発能力の合計値が凝縮能力の合計値に対して一時的に過大となって蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。この場合、蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して圧縮機に吸入される冷媒の温度が高くなり、ひいては圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなって吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超える恐れがある。一方、運転する室内機の台数が急激に増加した場合、つまり、室内機から要求される暖房能力の合計値が急激に大きくなった場合は、蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器の蒸発能力の合計値を要求される暖房能力に応じた値へと増加させるのに時間がかかるため、暖房運転を行う室内機の台数が急激に増加した直後では、凝縮器として機能する各室内機の室内熱交換器で発揮される凝縮能力の合計値が蒸発能力の合計値に対して一時的に過大となって凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。この場合、凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して圧縮機に吸入される冷媒の温度が低くなって吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回る恐れがある。
【0007】
以上に説明したように、空気調和装置で空調運転を行っているときに、吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超える、あるいは、吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回ると、圧縮機が故障する恐れがある。そこで、圧縮機の吐出圧力や吸入圧力が上述した使用範囲を逸脱する値となれば、圧縮機の故障を防ぐために圧縮機を停止させる所謂圧力保護停止を行うことが、一般的に行われている。
【0008】
なお、圧縮機が一旦停止した後に再起動する際、圧縮機が停止した時点から所定時間、例えば3分が経過した後の吐出圧力が所定の吐出圧力値、例えば3.5MPa未満となっていなければ再起動は行わない。吐出圧力が所定の吐出圧力値以上の値であるときに圧縮機を再起動させると、圧縮機の回転数によっては吐出圧力が急激に上昇して再び圧力の使用範囲の上限値を超えて圧力保護停止に至ることを避けるためである。また、圧縮機が一旦停止した後に再起動する際、圧縮機が停止した時点から上記所定時間が経過した後の吸入圧力が所定の吸入圧力値、例えば0.2MPa超となっていなければ再起動は行わない。吸入圧力が所定の吸入圧力値以下の値であるときに圧縮機を再起動させると、圧縮機の回転数によっては吸入圧力が急激に低下して再び圧力の使用範囲の下限値を超えて圧力保護停止に至ることを避けるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開2004/88212号公報
【文献】特開2010-203621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えることによって圧縮機が圧力保護停止をした場合、圧力保護停止をする前の吐出圧力は上限値以上の値であるため、圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した時点の吐出圧力は、圧力保護停止した時点の吐出圧力が大きな値であるほど上述した所定の吐出圧力値未満の値となるまで低下していない可能性が高い。圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した時点で吐出圧力が所定の吐出圧力値未満の値となっていない場合は、この後に吐出圧力が所定の吐出圧力値未満となった時点で圧縮機を再起動させるため、再起動時の吐出圧力が所定の吐出圧力値付近の値であり、圧縮機の回転数によってはすぐに吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えて再び圧力保護停止に至る。そして、以後はこの圧力保護停止と再起動を繰り返して空調運転が継続して行えない恐れがある。
【0011】
また、吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回ることによって圧縮機が圧力保護停止をした場合、圧力保護停止をする前の吸入圧力は下限値以下の値であるため、圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した時点の吸入圧力は、圧力保護停止した時点の吸入圧力が小さな値であるほど述した所定の吸入圧力値超の値となるまで上昇していない可能性が高い。圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した時点で吸入圧力が所定の吸入圧力値超の値となっていない場合は、この後に吸入圧力が所定の吸入圧力値超となった時点で再起動するため、再起動時の吸入圧力が所定の吸入圧力値付近の値であり、圧縮機の回転数によってはすぐに吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を超えて再び圧力保護停止に至る。そして、以後はこの圧力保護停止と再起動を繰り返して空調運転が継続して行えない恐れがある。
【0012】
本発明は以上述べた問題点を解決するものであって、圧縮機が圧力保護停止をした後の再起動時に、時間を置かずに再び圧力保護停止となることを防ぐ空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の空気調和装置は、圧縮機と室外熱交換器を有する複数の室外機と、この複数の室外機に冷媒配管で接続され室内熱交換器を有する複数の室内機と、圧縮機から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサと、圧縮機に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサと、圧縮機を制御する制御手段とを有する。制御手段は、複数の室外熱交換器が凝縮器として機能するとともに複数の室内熱交換器が蒸発器として機能するとき、あるいは、複数の室外熱交換器が蒸発器として機能するとともに複数の室内熱交換器が凝縮器として機能するとき、一時的に凝縮器で発揮される凝縮能力と蒸発器で発揮される蒸発能力との差が大きくなること起因して、吐出圧力センサで検出した吐出圧力が所定の上限値を超えた場合、あるいは、吸入圧力センサで検出した吸入圧力が所定の下限値を下回った場合は、複数の室外機のうちの運転している室外機の圧縮機を停止させて空調運転を停止させる圧力保護停止を実行する。そして、制御手段は、圧力保護停止を実行した後に空調運転を再開させるとき、凝縮器で発揮される凝縮能力と蒸発器で発揮される蒸発能力との差が、圧力保護停止を実行した際の凝縮能力と蒸発能力との差より小さくなるように、再起動させる室外機の台数を決定する。
【発明の効果】
【0014】
上記のような本発明の空気調和装置では、圧縮機が圧力保護停止をした後の再起動時に、時間を置かずに再び圧力保護停止となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における空気調和装置の冷媒回路図であり、(A)は冷媒回路の全体図、(B)は室外機制御手段の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態における、室外機の構成を説明する図面である。
図3】本発明の実施形態における、再起動時制御テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、50台の室内機と4台の室外機とが冷媒配管で接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える多室型空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例
【0017】
図1(A)に示すように、本実施形態における多室型の空気調和装置1は、4台の室外機2a~2dと、4台の室外機2a~2dに液管8、液分管8a~8d、ガス管9、ガス分管9a~9d、および、分流器110,120で接続された50台の室内機5-1~5-50(図1では、これらのうちの2台の室内機5-1と室内機5-50のみを描画している)とを備えている。より詳細には、各室外機2a~2dの閉鎖弁25a~25bと分流器110とが液分管8a~8dで接続され、分流器110と各室内機5の液管接続部53とが液管8で接続されている。また、各室外機2a~2dの閉鎖弁26a~26bと分流器120とがガス分管9a~9dで接続され、分流器120と各室内機5のガス管接続部54とがガス管9で接続されている。このように、4台の室外機2a~2dと50台の室内機5とが液管8、液分管8a~8d、ガス管9、ガス分管9a~9d、および、分流器110,120で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が形成されている。
【0018】
<各室外機の構成>
まずは、図2を用いて、4台の室外機2a~2dについて説明する。4台の室外機2a~2dは、第1圧縮機20-1a~20-1dと、第2圧縮機20-2a~20-2dと、オイルセパレータ21a~21dと、四方弁22a~22dと、室外熱交換器23a~23dと、室外機膨張弁24a~24dと、液分管8a~8dがそれぞれ接続された閉鎖弁25a~25dと、ガス分管9a~9dがそれぞれ接続された閉鎖弁26a~26dと、アキュムレータ27a~27dと、室外機ファン28a~28dとを備えている。そして、室外機ファン28a~28dを除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路30a~30dを形成している。
【0019】
なお、室外機2a~2dの構成は本実施形態では全て同じであるため、以下の説明では、図2は室外機2aのみの描画として室外機2aの構成についてのみ説明を行い、その他の室外機2b~2dについては説明を省略する。なお、室外機2aの各構成に付与した番号の末尾をaからb~dにそれぞれ変更したものが、室外機2aの各構成と対応する室外機2b~2dの各構成となる。
【0020】
第1圧縮機20-1aは、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。第1圧縮機20-1aの冷媒吐出口は、吐出管40の一端に吐出分管40-1aで接続されている。吐出管40aの他端は、後述するオイルセパレータ21aに接続されるため、第1圧縮機20-1aの冷媒吐出口は、吐出分管40-1aおよび吐出管40aを介してオイルセパレータ21aに接続される。また、第1圧縮機20-1aの冷媒吸入口は、吸入管42aの一端に吸入分管42-1aで接続されている。吸入管42aの他端は、後述するアキュムレータ27aに接続されるため、第1圧縮機20-1aの冷媒吸入口は、吸入分管42-1aおよび吸入管42aを介してアキュムレータ27aに接続される。
【0021】
第2圧縮機20-2aは、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。第2圧縮機20-2aの冷媒吐出口は、吐出管40の一端に吐出分管40-2aで接続されている。吐出管40aの他端は、後述するオイルセパレータ21aに接続されるため、第2圧縮機20-2aの冷媒吐出口は、吐出分管40-2aおよび吐出管40aを介してオイルセパレータ21aに接続される。また、第2圧縮機20-2aの冷媒吸入口は、吸入管42の一端に吸入分管46-2aで接続されている。吸入管42aの他端は、後述するアキュムレータ27aに接続されるため、第2圧縮機20-2aの冷媒吸入口は、吸入分管42-2aおよび吸入管42aを介してアキュムレータ27aに接続される。
【0022】
なお、本実施形態では、第1圧縮機20-1aと第2圧縮機20-2aは、同じ能力を発揮できるものである。また、第1圧縮機20-1aと第2圧縮機20-2aは、冷房運転時は後述する吸入圧力センサ32aで検出した吸入圧力を用いて求めた低圧飽和温度が、室内機5-1~5-50のそれぞれで要求される冷房能力の合計値に応じて定められる目標低圧飽和温度となるように各々の回転数が制御され、暖房運転時は後述する吐出圧力センサ31aで検出した吐出圧力を用いて求めた高圧飽和温度が、室内機5-1~5-50のそれぞれで要求される暖房能力の合計値に応じて定められる目標高圧飽和温度となるように各々の回転数が制御される。
【0023】
オイルセパレータ21aは、円筒形状の密閉容器を有する遠心分離式のオイルセパレータである。オイルセパレータ21aには油戻し管47aの一端が接続されており、油戻し管47aの他端は吸入管42aに接続されている。そして、油戻し管47aにはキャピラリーチューブ29aが設けられている。また、オイルセパレータ21aは、後述する四方弁22aのポートaと流出管41aで接続されている。オイルセパレータ21aは、第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各々から吐出され吐出分管40-1a、吐出分管40-2a、および、吐出管40aを介して流入した冷凍機油を含む冷媒を冷媒と冷凍機油とに分離し、分離された冷凍機油を油戻し管47a、吸入管42a。吸入分管42-1a、および、吸入分管42-2aを介して第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各々に戻すとともに、分離された冷媒を流出管41aへと流出させる。なお、油戻し管47aへは、冷凍機油とともに冷媒も流入するが、油戻し管47aに設けられたキャピラリーチューブ29aにより第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各々に戻る冷媒量が規制される。
【0024】
四方弁22aは、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したようにオイルセパレータ21aと流出管41aで接続されている。ポートbは、室外熱交換器23aの一方の冷媒出入口と冷媒配管43aで接続されている。ポートcは、アキュムレータ27aの冷媒流入口と冷媒配管46aで接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26aと室外機ガス管45aで接続されている。
【0025】
室外熱交換器23aは、冷媒と、後述する室外機ファン28aの回転により室外機2aの内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。上述したように、室外熱交換器23aの一方の冷媒出入口と四方弁22aのポートbが冷媒配管43aで接続されている。また、室外熱交換器23aの他方の冷媒出入口と閉鎖弁25aが室外機液管44aで接続されている。室外熱交換器23aは、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は凝縮器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は蒸発器として機能する。
【0026】
室外機膨張弁24aは、室外機液管44aに設けられている。室外機膨張弁24aは、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整されることで、室外熱交換器23aに流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23aから流出する冷媒量が調整される。室外機膨張弁24aの開度は、空気調和装置1が暖房運転を行っている場合は、室外熱交換器23aから流出する冷媒の過熱度が予め定められた目標冷媒過熱度(例えば、5deg)となるように、その開度が調整される(以降、このような室外機膨張弁の開度調整を過熱度制御と記載する場合がある)。また、室外機膨張弁24aの開度は、冷房運転を行っている場合は全開とされる。
【0027】
アキュムレータ27aは、前述したように、冷媒流入口が四方弁22aのポートcと冷媒配管46aで接続されるとともに、冷媒流出口が第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aの各冷媒吸入口と吸入分管46-1a、吸入分管46-2a、および、吸入管42aで接続されている。アキュムレータ27aは、冷媒配管46aからアキュムレータ27aの内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離してガス冷媒のみを第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入させる。
【0028】
室外機ファン28aは樹脂材で形成されており、室外熱交換器23aの近傍に配置されている。室外機ファン28aは、図示しないファンモータによって回転することで、室外機2aの図示しない筐体に設けられた吸込口から室外機2aの内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23aにおいて冷媒と熱交換した外気を室外機2aの図示しない筐体に設けられた吹出口から室外機2aの外部へ放出する。
【0029】
以上説明した構成の他に、室外機2aには各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管40aには、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出される冷媒の圧力である吐出圧力(以降、高圧圧力と記載する場合がある)を検出する吐出圧力センサ31aと、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33aが設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口近傍には、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入される冷媒の圧力である吸入圧力(以降、低圧圧力と記載する場合がある)を検出する吸入圧力センサ32aと、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入される冷媒の温度を検出する吸込温度センサ34aとが設けられている。
【0030】
室外機液管44aにおける室外熱交換器23aと室外機膨張弁24aとの間には、室外熱交換器23aに流入する冷媒の温度、あるいは、室外熱交換器23aから流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35aが設けられている。そして、室外機2aの図示しない筐体の吸込口付近には、室外機2aの内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36aが備えられている。
【0031】
また、室外機2には、本発明の制御手段である室外機制御手段200aが備えられている。室外機制御手段200aは、室外機2aの図示しない筐体の内部に設けられる電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210aと、記憶部220aと、通信部230aと、センサ入力部240aとを備えている。
【0032】
記憶部220aは、例えばフラッシュメモリであり、室外機2aの制御プログラムや前述した各種センサから取り込んだ検出信号に対応した検出値、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aや室外機ファン28aの駆動状態、室外機膨張弁24aの開度、室内機5-1~5-50の各々から受信した運転情報(運転/停止情報、冷房/暖房等の運転モード、室内機5-1~5-50のそれぞれが要求する冷房能力あるいは暖房能力などを含む)、冷房運転時の低圧圧力の目標値となる目標低圧飽和温度などを記憶する。通信部230aは、室内機5-1~5-50の各々と通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240aは、前述した室外機2aの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210aに出力する。
【0033】
CPU210aは、センサ入力部240aを介して各種センサでの検出値を定期的(例えば、30秒毎)に取り込むとともに、室内機5-1~5-50のそれぞれから送信される運転情報を含む信号を、通信部230aを介して取り込む。CPU210aは、これら入力された各種情報に基づいて、室外機膨張弁24aの開度調整、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aや室外機ファン28aの駆動制御などを行う。なお、室外機制御手段200aが、本発明の制御手段に相当する。
【0034】
<各室内機の構成>
次に、図1(A)を用いて、50台の室内機5-1~5-50について説明する。50台の室内機5-1~5-50は全て同じ構成を有しており、室内熱交換器51と、室内機膨張弁52と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内機ファン55とを備えている。そして、室内機ファン55を除くこれら各構成装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
【0035】
室内熱交換器51は、冷媒と、後述する室内機ファン55の回転により図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部53とが室内機液管71で接続され、他方の冷媒出入口とガス管接続部54とが室内機ガス管72で接続されている。室内熱交換器51は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部53やガス管接続部54は、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0036】
室内機膨張弁52は、室内機液管71に設けられている。室内機膨張弁52は電子膨張弁であり、室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合すなわち室内機5が冷房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(ガス管接続部54側)での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。また、室内機膨張弁52は、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合すなわち室内機5が暖房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(液管接続部53側)での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度や目標冷媒過冷却度とは、室内機5-1~5-50の各々で十分な冷房能力あるいは暖房能力を発揮するのに必要な冷媒過熱度および冷媒過冷却度である。
【0037】
室内機ファン55は樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内機ファン55は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ放出する。
【0038】
以上説明した構成の他に、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機液管71における室内熱交換器51と室内機膨張弁52との間における室内熱交換器51の近傍には、冷房運転時は室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を、また、暖房運転時は室内熱交換器51から流出する冷媒の温度をそれぞれ検出する液側温度センサ61が設けられている。室内機ガス管72における室内熱交換器51の近傍には、冷房運転時は室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を、また、暖房運転時は室内熱交換器51に流入する冷媒の温度をそれぞれ検出するガス側温度センサ62が設けられている。また、室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度を検出する室内温度センサ63が備えられている。なお、液側温度センサ61と室外機制御手段200とが本発明の液側圧力検出手段である。
【0039】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1(A)および図2を用いて説明する。以下の説明ではまず、空気調和装置1が暖房運転を行う場合について説明し、次に、空気調和装置1が冷房運転を行う場合について説明する。なお、図1(A)および図2における実線矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示しており、破線矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。また、室外機2a~2dにおける冷媒の流れや各装置の動作については各室内機2a~2dで同じであるため、以下の説明では代表として室外機2aにおける冷媒の流れや各装置の動作を説明する。さらには、以下の説明では、第1圧縮機21-1aと第2圧縮機21-2aとがともに駆動する場合を説明するが、室内機5-1~5-50のそれぞれから要求される空調能力の総和が小さく、第1圧縮機21-1aあるいは第2圧縮機21-2aのいずれか一方の駆動で要求される能力が賄える場合でも、冷媒の流れや圧縮機を除く他の各装置の動作は同じである。
【0040】
<暖房運転>
図2に示すように、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は、四方弁22aが実線で示す状態、すなわち、四方弁22aのポートaとポートdとが連通するように、また、ポートbとポートcとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器23aが蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。
【0041】
冷媒回路10が暖房サイクルとして機能する状態で第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aが駆動すると、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷媒は、吐出分管40-1aおよび吐出分管40-2aから吐出管40aへと流れてオイルセパレータ21aへと流入し、オイルセパレータ21aから流出管41aへと流れて四方弁22aに流入する。そして、四方弁22aから流出した冷媒は、室外機ガス管45aを流れて、閉鎖弁26aを介してガス分管9aへと流入する。なお、オイルセパレータ21aでは、冷媒とともに第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、図1(A)に一点鎖線矢印で示すように、オイルセパレータ21aから流出して油戻し管47aを流れ、吸入管42a、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aを介して第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aへと戻される。
【0042】
ガス分管9aを流れる冷媒は、分流器120を介してガス管9へと流れ、ガス管9から各ガス管接続部54を介して室内機5-1~5-50に分流する。室内機5-1~5-50に流入した冷媒は、各室内機ガス管72を流れて各室内熱交換器51に流入する。各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により各室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。
このように、各室内熱交換器51が凝縮器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-50が設置された室内の暖房が行われる。
【0043】
各室内熱交換器51から各室内機液管71に流入した冷媒は、各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過冷却度は、室内機5-1~5-50の各々で要求される暖房能力に基づいて定められるものである。また、暖房能力は、各室内機5-1~5-50において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0044】
各室内機膨張弁52で減圧された冷媒は、各室内機液管71から各液管接続部53を介して液管8に流出する。液管8で合流した冷媒は分流器110を介して液分管8aへと流れ、閉鎖弁25aを介して室外機2aに流入する。室外機2aに流入した冷媒は、室外機液管44aを流れて室外機膨張弁24aを通過する際にさらに減圧される。室外機膨張弁24aの開度は、吐出温度センサ33aで検出する吐出温度が目標吐出温度となるように調整される。
【0045】
室外機膨張弁24aで減圧された冷媒は、室外機液管44を流れて室外熱交換器23aに流入し、室外機ファン28aの回転によって室外機2aの内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23aから冷媒配管43aへと流入した冷媒は、四方弁22a、冷媒配管46a、アキュムレータ27a、吸入管42a、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aの順に流れ、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入されて再び圧縮される。
【0046】
<冷房運転>
空気調和装置1が冷房運転を行う場合は、図2に示すように、四方弁22aが破線で示す状態、すなわち、四方弁22aのポートaとポートbとが連通するように、また、ポートcとポートdとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が蒸発器として機能するとともに、室外熱交換器23aが凝縮器として機能する冷房サイクルとなる。
【0047】
冷媒回路10が冷房サイクルとして機能する状態で第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aが駆動すると、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷媒は、吐出分管40-1aおよび吐出分管40-2aから吐出管40を流れてオイルセパレータ21aへと流入し、オイルセパレータ21aから流出管41aへと流れて四方弁22aに流入する。四方弁22aから流出した冷媒は、冷媒配管43aを流れて室外熱交換器23aへと流入する。室外熱交換器23aへと流入した冷媒は、室外機ファン28aの回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23aから室外機液管44aへと流出した冷媒は、開度が全開とされている室外機膨張弁24aを通過し、閉鎖弁25aを介して液分管8aに流出する。なお、オイルセパレータ21aでは、冷媒とともに第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、図2に一点鎖線矢印で示すようにオイルセパレータ21aから流出して油戻し管47aを流れ、吸入管42、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aを介して第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aへと戻される。
【0048】
液分管8aを流れる冷媒は、分流器110を介して液管8へと流れ、液管8から各液管接続部53を介して室内機5-1~5-50に流入する。室内機5-1~5-50に流入した冷媒は各室内機液管71を流れ、各室内熱交換器51の各々の冷媒出口での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過熱度は、室内機5-1~5-50の各々で要求される冷房能力に基づいて定められるものである。また、冷房能力は、各室内機5-1~5-50において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0049】
各室内機液管71から各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により室内機5-1~5-50の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、各室内熱交換器51が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-50が設置された室内の冷房が行われる。
【0050】
各室内熱交換器51から各室内機ガス管72に流出した冷媒は、各ガス管接続部54を介してガス管9に流出する。ガス管9で合流した冷媒は、分流器120を介してガス分管9aへと流れ、閉鎖弁26aを介して室外機2aに流入する。室外機2aに流入した冷媒は、室外機ガス管45a、四方弁22a、冷媒配管46a、アキュムレータ27a、吸入管42、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aの順に流れ、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入されて再び圧縮される。
【0051】
<圧力保護停止後の室外機の再起動に関わる制御について>
次に、図1乃至図3を用いて、本実施形態の空気調和装置1が空調運転を行っているときに圧力保護停止に至り、その後空気調和装置1が再起動する際の制御について詳細に説明する。ここで、圧力保護停止とは、室外機2a~2dの第1圧縮機20-1a~20-1dや第2圧縮機20-2a~20-2dの吐出圧力や吸入圧力が、各圧縮機に固有に定められ性能が保証される圧力の使用範囲を逸脱する値となれば、圧縮機の故障を防ぐために圧縮機を停止させる動作である。
【0052】
本実施形態の空気調和装置1のように、複数(本実施形態では4台)の室外機に複数(本実施形態では50台)が接続されている場合、空調運転中に室内機の運転台数が急激に増減すれば、室外機2a~2dの第1圧縮機20-1a~20-1dや第2圧縮機20-2a~20-2dの吐出圧力や吸入圧力が、圧力の使用範囲を逸脱する恐れがある。
以下、冷房運転時と暖房運転時に分けて、吐出圧力や吸入圧力が圧力の使用範囲を逸脱して場合について説明する。なお、本実施形態の第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの圧力の使用範囲は、0.1MPa超4.0MPa未満としている。
【0053】
<冷房運転時に圧力保護停止となる場合>
空気調和装置1で冷房運転が行われているときに、室内機5-1~5-10のうち冷房運転する室内機の台数が急激に増加、例えば、冷房運転を行う室内機が5台から50台に増加すれば、冷房運転を行う室内機から要求される冷房能力の合計値が急激に大きくなる。この場合、運転させる室外機2a~2dの台数も増加させる、例えば、運転させる室外機の台数を1台から4台に増加させ、かつ、冷房運転を行う室内機から要求される冷房能力の合計値に応じて、運転させる室外機の圧縮機の各回転数を制御する。このように、冷房運転時に室内機の運転台数が急激に増加した直後は、凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される凝縮能力の合計値を室内機から要求される冷房能力の合計値へと増加させるのに時間がかかるため、冷房運転を行う室内機の台数が急激に増加した直後では、蒸発器として機能する各室内機の室内熱交換器で発揮される蒸発能力の合計値が凝縮能力の合計値に対して一時的に過大となって蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。このとき、蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して運転させる室外機の圧縮機に吸入される冷媒の温度が高くなり、ひいては圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなって吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値(本実施形態では、4.0MPa。以下、同様)を超える恐れがある。
【0054】
一方、空気調和装置1で冷房運転が行われているときに、室内機5-1~5-10のうち冷房運転する室内機の台数が急激に減少、例えば、冷房運転を行う室内機が50台から5台に減少すれば、冷房運転を行う室内機から要求される冷房能力の合計値が急激に小さくなる。この場合、運転させる室外機2a~2dの台数も減少させる、例えば、運転させる室外機の台数を4台から1台に減少させ、かつ、冷房運転を行う室内機から要求される冷房能力の合計値に応じて、運転させる室外機の圧縮機の各回転数を制御する。このように、冷房運転時に室内機の運転台数が急激に減少した直後は、凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される凝縮能力の合計値を室内機から要求される冷房能力の合計値へと減少させるのに時間がかかるため、冷房運転を行う室内機の台数が急激に減少した直後では、凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される凝縮能力の合計値が蒸発能力の合計値に対して一時的に過大となって凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。このとき、凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して運転させる室外機の圧縮機に吸入される冷媒の温度が低くなって吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値(本実施形態では、0.1MPa。以下、同様)を下回る恐れがある。
【0055】
<暖房運転時に圧力保護停止となる場合>
空気調和装置1で暖房運転が行われているときに、室内機5-1~5-10のうち暖房運転する室内機の台数が急激に減少、例えば、暖房運転を行う室内機が50台から5台に減少すれば、暖房運転を行う室内機から要求される暖房能力の合計値が急激に小さくなる。この場合、運転させる室外機2a~2dの台数も減少させる、例えば、運転させる室外機の台数を4台から1台に減少させ、かつ、暖房運転を行う室内機から要求される暖房能力の合計値に応じて、運転させる室外機の圧縮機の各回転数を制御する。このように、暖房運転時に室内機の運転台数が急激に減少した直後は、蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される蒸発能力の合計値を室内機から要求される暖房能力の合計値へと減少させるのに時間がかかるため、暖房運転を行う室内機の台数が急激に減少した直後では、蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される蒸発能力の合計値が凝縮能力の合計値に対して一時的に過大となって蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。このとき、蒸発能力の合計値と凝縮能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して運転させる室外機の圧縮機に吸入される冷媒の温度が高くなり、ひいては圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなって吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超える恐れがある。
【0056】
一方、空気調和装置1で暖房運転が行われているときに、室内機5-1~5-10のうち暖房運転する室内機の台数が急激に増加、例えば、暖房運転を行う室内機が5台から50台に増加すれば、暖房運転を行う室内機から要求される暖房能力の合計値が急激に大きくなる。この場合、運転させる室外機2a~2dの台数も増加させる、例えば、運転させる室外機の台数を1台から4台に増加させ、かつ、暖房運転を行う室内機から要求される暖房能力の合計値に応じて、運転させる室外機の圧縮機の各回転数を制御する。このように、暖房運転時に室内機の運転台数が急激に増加した直後は、蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される蒸発能力の合計値を室内機から要求される暖房能力の合計値へと増加させるのに時間がかかるため、暖房運転を行う室内機の台数が急激に増加した直後では、凝縮器として機能する各室内機の室内熱交換器で発揮される凝縮能力の合計値が蒸発能力の合計値に対して一時的に過大となって凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなる。このとき、凝縮能力の合計値と蒸発能力の合計値との能力差が一時的に大きくなることに起因して運転させる室外機の圧縮機に吸入される冷媒の温度が低くなって吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回る恐れがある。
【0057】
<圧力保護停止について>
以上に説明したように、空気調和装置1の冷房運転時あるいは暖房運転時に、凝縮能力に対し蒸発能力が過多となって吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超える場合や、蒸発能力に対し凝縮能力が過多となって吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回る場合は、駆動している圧縮機が故障する恐れがある。そこで、圧縮機の吐出圧力や吸入圧力が上述した使用範囲を逸脱する値となれば、圧縮機の故障を防ぐために圧縮機を停止させる圧力保護停止を行う。
【0058】
なお、圧縮機が一旦停止した後に再起動する際、圧縮機が停止した時点から所定時間、例えば3分が経過した後の吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値より低い所定の吐出圧力値、例えば、圧力の使用範囲の上限値が4.0MPaである場合、3.5MPa未満となっていなければ再起動は行わず、吐出圧力が上述した所定の吐出圧力値未満となった時点で再起動する。吐出圧力が所定の吐出圧力値以上の値であるときに圧縮機を再起動させると、圧縮機の回転数によっては吐出圧力が急激に上昇して再び圧力の使用範囲の上限値を超えて圧力保護停止に至ることを避けるためである。また、圧縮機が一旦停止した後に再起動する際、圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した後の吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値より高い所定の吸入圧力値、例えば、圧力の使用範囲の下限値が0.1MPaである場合、0.2MPa超となっていなければ再起動は行わず、吸入圧力が上述した所定の吸入圧力値超となった時点で再起動する。吸入圧力が所定の吸入圧力値以下の値であるときに圧縮機を再起動させると、圧縮機の回転数によっては吸入圧力が急激に低下して再び圧力の使用範囲の下限値を超えて圧力保護停止に至ることを避けるためである。
【0059】
ここで、凝縮能力に対し蒸発能力が過多となったことが原因で、吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えて圧縮機が圧力保護停止をした場合、圧力保護停止をする前の吐出圧力は上限値以上の値であるため、圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した時点の吐出圧力は、圧力保護停止した時点の吐出圧力が大きな値であるほど上述した所定の吐出圧力値未満の値となるまで低下していない可能性が高い。圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した後に吐出圧力が所定の吐出圧力値未満の値となっていない場合は、前述したようにこの後に吐出圧力が所定の吐出圧力値未満の値となった時点で圧縮機を再起動させるため、再起動時の吐出圧力が所定の吐出圧力値付近の値であり、圧縮機の回転数によってはすぐに吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えて再び圧力保護停止に至る。そして、以後はこの圧力保護停止と再起動を繰り返して空調運転が継続して行えない恐れがある。
【0060】
また、蒸発能力に対し凝縮能力が過多となったことが原因で、吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回ることによって圧縮機が圧力保護停止をした場合、圧力保護停止をする前の吸入圧力は下限値以下の値であるため、圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した時点の吸入圧力は、圧力保護停止した時点の吸入圧力が小さな値であるほど上述した所定の吸入圧力値超の値となるまで上昇していない可能性が高い。圧縮機が停止した時点から所定時間が経過した後に吸入圧力が所定の吸入圧力値超となっていない場合は、前述したようにこの後に吸入圧力が所定の吸入圧力値超の値となった時点で再起動するため、再起動時の吸入圧力が所定の吸入圧力値付近の値であり、圧縮機の回転数によってはすぐに吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を超えて再び圧力保護停止に至る。そして、以後はこの圧力保護停止と再起動を繰り返して空調運転が継続して行えない恐れがある。
【0061】
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、凝縮能力と蒸発能力との差に起因して圧力保護停止となった場合は、凝縮能力と蒸発能力との差を小さくして圧力保護停止後の差起動時に時間を置かずに再び圧力保護停止に至らないようにするために、運転する室外機の台数および運転する室外機における圧縮機の回転数を制御して、空気調和装置1を再起動する。具体的には、図3に示す再起動時制御テーブル300に則って、圧力保護停止後の再起動を行う。
【0062】
以下、図3に示す再起動時制御テーブル300を用いて、空気調和装置1の制御手段が実行する、凝縮能力と蒸発能力との差に起因して圧力保護停止となった後の空気調和装置1の再起動に関する制御について、詳細に説明する。なお、図3に示す再起動時制御テーブル300では、凝縮能力に対し蒸発能力が過多となったことが原因で、吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えて圧縮機が圧力保護停止をした場合を「高圧保護停止」とし、蒸発能力に対し凝縮能力が過多となったことが原因で、吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回ることによって圧縮機が圧力保護停止をした場合を「低圧保護停止」としている。
【0063】
また、以下の説明では、室外機2aを親機とし、この室外機2aの室外機制御手段200aが、吐出圧力センサ31aで検出した吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えた場合に高圧保護停止を実行し、吸入圧力センサ32aで検出した吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回った場合に低圧保護制御を実行するものとする。さらに、室外機制御手段200aは、高圧保護停止や低圧保護停止を実行する際に、その原因が凝縮能力と蒸発能力との差に起因するものであるか否かを判断し、凝縮能力と蒸発能力との差に起因するものであるときは、以下に説明する空気調和装置1の再起動時の制御を実行する。ここで、圧力保護停止が凝縮能力と蒸発能力との差に起因するものであるか否かの判断は、例えば、圧力保護停止をした際、その直前の運転している室内機5-1~5-50が要求する空調能力の合計値の増減率が、予め試験などを行って定めた所定の割合以上であるか否かで判断すればよく、冷媒回路10において一時的に凝縮能力と蒸発能力との差が大きくなることが検出できるものであればよい。
【0064】
<冷房運転時:高圧保護停止後の再起動>
空気調和装置1が冷房運転を行っているときに、駆動している圧縮機が高圧保護停止した場合、つまり、凝縮能力に対し蒸発能力が過多となったことが原因で吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えた場合は、室外機制御手段200のCPU210aは、空気調和装置1の再起動時に、再起動時制御テーブル300に記載のように、全ての室外機2a~2dを起動させるとともに、室外機2a~2d毎に第1圧縮機20-1a~20-1dあるいは第2圧縮機20-2a~20-2dのうちのいずれか1台を当該圧縮機の許容回転数範囲の下限値(以降、最低回転数と記載する)、例えば20rpsで起動する。
【0065】
全ての室外機2a~2dを起動させることにより、室外熱交換器23a~23dの全てが凝縮器として機能する。前述したように、冷房運転時の高圧保護停止は、冷房運転する室内機の台数が急激に増加しこれに応じて運転させる室外機の台数も増加させる際に、一時的に凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される凝縮能力に対して蒸発器として機能する各室内機の室内熱交換器で発揮される蒸発能力が過多となるときに発生する。このため、冷房運転時に高圧保護停止から空気調和装置1を再起動させる際は、凝縮器として機能する室外熱交換器の台数を増加させて熱交換面積を大きくすることで、各室外熱交換器で発揮される凝縮能力を大きくする。また、起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることにより、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量に抑えられるので、冷房運転時に蒸発器として機能する室内熱交換器51で発揮される蒸発能力が、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量でない場合と比べて小さくなる。
【0066】
このように、冷房運転時における高圧保護停止後の空気調和装置1の再起動では、全ての室外機2a~2dを起動させて凝縮能力を大きくするとともに、起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることで蒸発能力を小さくする。この結果、冷房運転時における高圧保護停止後の空気調和装置1の再起動において、凝縮能力と蒸発能力との差が小さくなって、再起動後に再び高圧保護停止に至ることを防止できる。
【0067】
<冷房運転時:低圧保護停止後の再起動>
空気調和装置1が冷房運転を行っているときに、駆動している圧縮機が低圧保護停止した場合、つまり、蒸発能力に対し凝縮能力が過多となったことが原因で吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回った場合は、CPU210aは、空気調和装置1の再起動時に、再起動時制御テーブル300に記載のように、室外機2a~2dのうちいずれか1台、例えば、室外機2aを起動させるとともに、室外機2aにおいて第1圧縮機20-1adあるいは第2圧縮機20-2aのうちのいずれか1台を当該圧縮機の許容回転数範囲の下限値で起動する。
【0068】
室外機を1台だけ起動させることにより、室外熱交換器23aのみが凝縮器として機能する。前述したように、冷房運転時の低圧保護停止は、冷房運転する室内機の台数が急激に減少しこれに応じて運転させる室外機の台数も減少させる際に、一時的に蒸発器として機能する各室内機の室内熱交換器で発揮される蒸発能力に対して凝縮器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される凝縮能力が過多となるときに発生する。このため、冷房運転時に低圧保護停止から空気調和装置1を再起動させる際は、凝縮器として機能する室外熱交換器の台数を減少させて熱交換面積を小さくすることで、室外熱交換器で発揮される凝縮能力を小さくする。また、起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることにより、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量に抑えられるので、室外熱交換器で発揮される凝縮能力が、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量でない場合と比べて小さくなる。
【0069】
このように、冷房運転時における低圧保護停止後の空気調和装置1の再起動では、1台の室外機のみを起動させるとともに起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることで凝縮能力を小さくする。この結果、冷房運転時における低圧保護停止後の空気調和装置1の再起動において、凝縮能力と蒸発能力との差が小さくなって、再起動後に再び低圧保護停止に至ることを防止できる。
【0070】
<暖房運転時:高圧保護停止後の再起動>
空気調和装置1が暖房運転を行っているときに、駆動している圧縮機が高圧保護停止した場合、つまり、凝縮能力に対し蒸発能力が過多となったことが原因で吐出圧力が圧力の使用範囲の上限値を超えた場合は、室外機制御手段200のCPU210aは、空気調和装置1の再起動時に、再起動時制御テーブル300に記載のように、室外機2a~2dのうちいずれか1台、例えば、室外機2aを起動させるとともに、室外機2aにおいて第1圧縮機20-1adあるいは第2圧縮機20-2aのうちのいずれか1台を当該圧縮機の許容回転数範囲の下限値で起動する。
【0071】
室外機を1台だけ起動させることにより、室外熱交換器23aのみが蒸発器として機能する。前述したように、暖房運転時の高圧保護停止は、暖房運転する室内機の台数が急激に減少しこれに応じて運転させる室外機の台数も減少させる際に、一時的に凝縮器として機能する各室内機の室内熱交換器で発揮される凝縮能力に対して蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される蒸発能力が過多となるときに発生する。このため、暖房運転時に高圧保護停止から空気調和装置1を再起動させる際は、蒸発器として機能する室外熱交換器の台数を減少させて熱交換面積を小さくすることで、室外熱交換器で発揮される蒸発能力を小さくする。また、起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることにより、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量に抑えられるので、室外熱交換器で発揮される蒸発能力が、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量でない場合と比べて小さくなる。
【0072】
このように、暖房運転時における高圧保護停止後の空気調和装置1の再起動では、1台の室外機のみを起動させるとともに起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることで蒸発能力を小さくする。この結果、暖房運転時における高圧保護停止後の空気調和装置1の再起動において、凝縮能力と蒸発能力との差が小さくなって、再起動後に再び低圧保護停止に至ることを防止できる。
【0073】
<暖房運転時:低圧保護停止後の再起動>
空気調和装置1が暖房運転を行っているときに、駆動している圧縮機が低圧保護停止した場合、つまり、蒸発能力に対し凝縮能力が過多となったことが原因で吸入圧力が圧力の使用範囲の下限値を下回った場合は、CPU210aは、空気調和装置1の再起動時に、再起動時制御テーブル300に記載のように、全ての室外機2a~2dを起動させるとともに、各室外機2a~2dにおいて第1圧縮機20-1a~20-1dあるいは第2圧縮機20-2a~20-2dのうちのいずれか1台を当該圧縮機の許容回転数範囲の下限値で起動する。
【0074】
全ての室外機2a~2dを起動させることにより、室外熱交換器23a~23dの全てが蒸発器として機能する。前述したように、暖房運転時の低圧保護停止は、暖房運転する室内機の台数が急激に増加しこれに応じて運転させる室外機の台数も増加させる際に、一時的に蒸発器として機能する各室外機の室外熱交換器で発揮される蒸発能力に対して凝縮器として機能する各室内機の室内熱交換器で発揮される凝縮能力が過多となるときに発生する。このため、暖房運転時に低圧保護停止から空気調和装置1を再起動させる際は、蒸発器として機能する室外熱交換器の台数を増加させて熱交換面積を大きくすることで、各室外熱交換器で発揮される蒸発能力を大きくする。また、起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることにより、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量に抑えられるので、暖房運転時に凝縮器として機能する室内熱交換器51で発揮される凝縮能力が、冷媒回路10を循環する冷媒量が最小量でない場合と比べて小さくなる。
【0075】
このように、暖房運転時における低圧保護停止後の空気調和装置1の再起動では、全ての室外機2a~2dを起動させて蒸発能力を大きくするとともに、起動させる圧縮機の回転数を最低回転数とすることで凝縮能力を小さくする。この結果、暖房運転時における高圧保護停止後の空気調和装置1の再起動において、凝縮能力と蒸発能力との差が小さくなって、再起動後に再び高圧保護停止に至ることを防止できる。
【0076】
以上に説明した本発明の実施形態では、空気調和装置1が空調運転を行っているときに、凝縮能力と蒸発能力との差に起因して圧力保護停止に至った後の再起動時に、凝縮能力と蒸発能力との差が小さくなるように、起動させる室外機の台数、および、起動させる室外機に搭載される圧縮機の回転数を最低回転数とする。これにより、圧力保護停止後に空気調和装置1を再起動させる際に、凝縮能力と蒸発能力との差に起因して再び圧力保護停止となることを防止できるので、圧力保護停止と再起動を繰り返すことによって空気調和装置1による空調運転が頻繁に中断されることがなく、安定した空調運転を行える。
【符号の説明】
【0077】
1 空気調和装置
2a~2d 室外機
5-1~5-10 室内機
20-1a~20-1d 第1圧縮機
20-2a~20-2d 第2圧縮機
22a~22d 四方弁
23a~23d 室外熱交換器
24a~24d 室外機膨張弁
31a~31d 吐出圧力センサ
32a~32d 吸入圧力センサ
51 室内熱交換器
52 室内機膨張弁
200a~200d 室外機制御手段
210a~210d CPU
300 再起動時制御テーブル
図1
図2
図3