(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】移動体検出装置、及び管制システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240305BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240305BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/16 D
G08G1/04 C
G08G1/09 Q
(21)【出願番号】P 2020180641
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武男
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095503(JP,A)
【文献】特開2011-164064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体同士が干渉しないように移動体の交通管制を行う管制装置とデータ通信を行うことができない非コネクテッド移動体を撮像した画像から、前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を含む移動体情報を指定された精度で検出する移動体検出部と、
前記非コネクテッド移動体の走行経路上に設定された
地点であって、前記非コネクテッド移動体が他の移動体と干渉する可能性がある判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度に応じて信頼度目標を設定し、前記精度を前記信頼度目標に近づけるように前記移動体検出部に指示する制御を行う信頼度制御部と、
を備えた移動体検出装置。
【請求項2】
前記移動体検出部で検出された前記非コネクテッド移動体の位置を前記画像の画像座標系から、移動体の経路が点列で表された地図データにおける地図座標系に変換する座標変換部と、
前記地図データから点列毎の走路情報を取得する走路情報取得部と、
前記座標変換部で地図座標系に変換された前記非コネクテッド移動体の位置、前記非コネクテッド移動体の速度、及び前記走路情報取得部で取得した前記経路の走路情報から前記非コネクテッド移動体の走行経路を予測し、予測した走行経路を表す経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する走行経路予測部と、
前記走行経路予測部で予測した走行経路を表す各々の経由点のうち、何れかの経由点を前記判定地点として設定する判定地点設定部と、
前記判定地点設定部で設定された前記判定地点における干渉時間に基づき、前記判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する接近度評価部と、
を備え、
前記信頼度制御部は、前記接近度評価部で評価された接近度に応じて前記信頼度目標を設定する制御を行う
請求項1記載の移動体検出装置。
【請求項3】
前記判定地点設定部は、前記非コネクテッド移動体の走行経路を表す各々の経由点のうち、前記非コネクテッド移動体の走行経路と、前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の走行経路と、に基づいて前記管制装置で特定された前記非コネクテッド移動体と前記他の移動体との干渉地点を前記判定地点として設定する
請求項2記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記接近度評価部は、前記非コネクテッド移動体の前記判定地点における干渉時間、及び前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の前記判定地点における干渉時間から、前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する
請求項2記載の移動体検出装置。
【請求項5】
前記走路情報取得部は、前記移動体検出部で前記画像から検出された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に含まれる誤差の度合いを表す信頼度が点列毎に付与された前記地図データから、点列毎の走路情報を前記信頼度と共に取得し、
前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する
請求項4記載の移動体検出装置。
【請求項6】
前記走路情報取得部から前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を取得すると共に、前記信頼度制御部から前記信頼度目標を取得し、前記信頼度目標に応じて、前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を補正する信頼度補正部を備え、
前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度補正部で補正された前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する
請求項5記載の移動体検出装置。
【請求項7】
光、音、振動、空気の流れ、圧力、及び熱の少なくとも1つの再生エネルギーを利用して、自装置で消費する電力以上の電力を発電する動力生成部を備える
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の移動体検出装置。
【請求項8】
移動体同士が干渉しないように移動体の交通管制を行う管制装置と、
移動体の経路に沿って設置され、前記管制装置とデータ通信を行うことができない非コネクテッド移動体の画像を撮像する撮像センサと、
前記画像から、前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を含む移動体情報を指定された精度で検出する移動体検出部、及び前記非コネクテッド移動体の走行経路上に設定された
地点であって、前記非コネクテッド移動体が他の移動体と干渉する可能性がある判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度に応じて信頼度目標を設定し、前記精度を前記信頼度目標に近づけるように前記移動体検出部に指示する制御を行う信頼度制御部を備えた移動体検出装置と、
を含む管制システム。
【請求項9】
前記移動体検出装置は、
前記移動体検出部で検出された前記非コネクテッド移動体の位置を前記画像の画像座標系から、移動体の経路が点列で表された地図データにおける地図座標系に変換する座標変換部と、
前記地図データから点列毎の走路情報を取得する走路情報取得部と、
前記座標変換部で地図座標系に変換された前記非コネクテッド移動体の位置、前記非コネクテッド移動体の速度、及び前記走路情報取得部で取得した前記経路の走路情報から前記非コネクテッド移動体の走行経路を予測し、予測した走行経路を表す経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する走行経路予測部と、
前記走行経路予測部で予測した走行経路を表す各々の経由点のうち、何れかの経由点を前記判定地点として設定する判定地点設定部と、
前記判定地点設定部で設定された前記判定地点における干渉時間に基づき、前記判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する接近度評価部と、
を備え、
前記信頼度制御部は、前記接近度評価部で評価された接近度に応じて前記信頼度目標を設定する制御を行う
請求項8記載の管制システム。
【請求項10】
前記管制装置は、前記非コネクテッド移動体の走行経路と、前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の走行経路と、に基づいて、前記非コネクテッド移動体と前記他の移動体との干渉地点を特定し、
前記移動体検出装置の前記判定地点設定部は、前記非コネクテッド移動体の走行経路を表す各々の経由点のうち、前記干渉地点に対応した経由点を前記判定地点として設定する
請求項9記載の管制システム。
【請求項11】
前記移動体検出装置の前記接近度評価部は、前記非コネクテッド移動体の前記判定地点における干渉時間、及び前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の前記判定地点における干渉時間から、前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する
請求項9記載の管制システム。
【請求項12】
前記移動体検出装置の前記走路情報取得部は、前記移動体検出部で前記画像から検出された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に含まれる誤差の度合いを表す信頼度が点列毎に付与された前記地図データから、点列毎の走路情報を前記信頼度と共に取得し、
前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する
請求項11記載の管制システム。
【請求項13】
前記移動体検出装置は、前記走路情報取得部から前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を取得すると共に、前記信頼度制御部から前記信頼度目標を取得し、前記信頼度目標に応じて、前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を補正する信頼度補正部を備え、
前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度補正部で補正された前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する
請求項12記載の管制システム。
【請求項14】
前記移動体検出装置は、光、音、振動、空気の流れ、圧力、及び熱の少なくとも1つの再生エネルギーを利用して、自装置で消費する電力以上の電力を発電する動力生成部を備える
請求項8~請求項13の何れか1項に記載の管制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体検出装置、及び管制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、路側に設置したカメラによって検出した各々の車両の現在位置及び速度を用いて、各々の車両の合流地点への到着時刻を予測し、道路上に設置した表示装置を通じて車両の運転手に加減速の指示情報を提示する合流情報提供装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラで撮像した画像を画像処理することによって車両のような移動体を検出する場合、例えば位置や速度といった物体の状態を表す情報を検出することができる。こうした場合において、検出した移動体の状態を表す情報の確からしさ、すなわち移動体情報の信頼度を高くしようとすると、画像処理に伴うプロセッサの演算量が増加し、これに伴い消費電力も増加する。
【0005】
一方、例えば合流地点で交差する道路のうち、片方の道路にしか車両が走行していない場合や、交差する各々の道路を走行する車両の合流地点への到達時間がまったく異なる場合のように、明らかに車両同士が合流地点で干渉する危険性がない場合には、検出する移動体情報の信頼度は低くても構わない。
【0006】
これに対して、特許文献1に記載の合流情報提供装置では、車両同士が干渉する危険性の有無に関わらず、常に検出可能な最高の信頼度で画像から移動体情報を検出しようとしているため、明らかに車両同士が合流地点で干渉する危険性がない場合には無駄な電力を消費していることになる。
【0007】
本発明は、上記に示した問題点を鑑みてなされたものであり、検出可能な最高の信頼度で画像から移動体情報を検出し続ける場合と比較して、移動体同士が干渉する危険性が認められる状況での画像から検出した移動体情報の信頼度を低下させることなく、消費電力を低減することができる移動体検出装置、及び管制システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る移動体検出装置は、移動体同士が干渉しないように移動体の交通管制を行う管制装置とデータ通信を行うことができない非コネクテッド移動体を撮像した画像から、前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を含む移動体情報を指定された精度で検出する移動体検出部と、前記非コネクテッド移動体の走行経路上に設定された判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度に応じて信頼度目標を設定し、前記精度を前記信頼度目標に近づけるように前記移動体検出部に指示する制御を行う信頼度制御部と、を備える。
【0009】
第2態様に係る移動体検出装置は、第1態様に係る移動体検出装置において、前記移動体検出部で検出された前記非コネクテッド移動体の位置を前記画像の画像座標系から、移動体の経路が点列で表された地図データにおける地図座標系に変換する座標変換部と、前記地図データから点列毎の走路情報を取得する走路情報取得部と、前記座標変換部で地図座標系に変換された前記非コネクテッド移動体の位置、前記非コネクテッド移動体の速度、及び前記走路情報取得部で取得した前記経路の走路情報から前記非コネクテッド移動体の走行経路を予測し、予測した走行経路を表す経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する走行経路予測部と、前記走行経路予測部で予測した走行経路を表す各々の経由点のうち、何れかの経由点を前記判定地点として設定する判定地点設定部と、前記判定地点設定部で設定された前記判定地点における干渉時間に基づき、前記判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する接近度評価部と、を備え、前記信頼度制御部は、前記接近度評価部で評価された接近度に応じて前記信頼度目標を設定する制御を行う。
【0010】
第3態様に係る移動体検出装置は、第2態様に係る移動体検出装置において、前記判定地点設定部が、前記非コネクテッド移動体の走行経路を表す各々の経由点のうち、前記非コネクテッド移動体の走行経路と、前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の走行経路と、に基づいて前記管制装置で特定された前記非コネクテッド移動体と前記他の移動体との干渉地点を前記判定地点として設定する。
【0011】
第4態様に係る移動体検出装置は、第2態様に係る移動体検出装置において、前記接近度評価部が、前記非コネクテッド移動体の前記判定地点における干渉時間、及び前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の前記判定地点における干渉時間から、前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する。
【0012】
第5態様に係る移動体検出装置は、第4態様に係る移動体検出装置において、前記走路情報取得部が、前記移動体検出部で前記画像から検出された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に含まれる誤差の度合いを表す信頼度が点列毎に付与された前記地図データから、点列毎の走路情報を前記信頼度と共に取得し、前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する。
【0013】
第6態様に係る移動体検出装置は、第5態様に係る移動体検出装置において、前記走路情報取得部から前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を取得すると共に、前記信頼度制御部から前記信頼度目標を取得し、前記信頼度目標に応じて、前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を補正する信頼度補正部を備え、前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度補正部で補正された前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する。
【0014】
第7態様に係る移動体検出装置は、第1態様~第6態様の何れかの態様に係る移動体検出装置において、光、音、振動、空気の流れ、圧力、及び熱の少なくとも1つの再生エネルギーを利用して、自装置で消費する電力以上の電力を発電する動力生成部を備える。
【0015】
第8態様に係る管制システムは、移動体同士が干渉しないように移動体の交通管制を行う管制装置と、移動体の経路に沿って設置され、前記管制装置とデータ通信を行うことができない非コネクテッド移動体の画像を撮像する撮像センサと、前記画像から、前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を含む移動体情報を指定された精度で検出する移動体検出部、及び前記非コネクテッド移動体の走行経路上に設定された判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度に応じて信頼度目標を設定し、前記精度を前記信頼度目標に近づけるように前記移動体検出部に指示する制御を行う信頼度制御部を備えた移動体検出装置と、を含む。
【0016】
第9態様に係る管制システムは、第8態様に係る管制システムにおいて、前記移動体検出装置が、前記移動体検出部で検出された前記非コネクテッド移動体の位置を前記画像の画像座標系から、移動体の経路が点列で表された地図データにおける地図座標系に変換する座標変換部と、前記地図データから点列毎の走路情報を取得する走路情報取得部と、前記座標変換部で地図座標系に変換された前記非コネクテッド移動体の位置、前記非コネクテッド移動体の速度、及び前記走路情報取得部で取得した前記経路の走路情報から前記非コネクテッド移動体の走行経路を予測し、予測した走行経路を表す経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する走行経路予測部と、前記走行経路予測部で予測した走行経路を表す各々の経由点のうち、何れかの経由点を前記判定地点として設定する判定地点設定部と、前記判定地点設定部で設定された前記判定地点における干渉時間に基づき、前記判定地点に対する前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する接近度評価部と、を備え、前記信頼度制御部は、前記接近度評価部で評価された接近度に応じて前記信頼度目標を設定する制御を行う。
【0017】
第10態様に係る管制システムは、第9態様に係る管制システムにおいて、前記管制装置が、前記非コネクテッド移動体の走行経路と、前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の走行経路と、に基づいて、前記非コネクテッド移動体と前記他の移動体との干渉地点を特定し、前記移動体検出装置の前記判定地点設定部は、前記非コネクテッド移動体の走行経路を表す各々の経由点のうち、前記干渉地点に対応した経由点を前記判定地点として設定する。
【0018】
第11態様に係る管制システムは、第9態様に係る管制システムにおいて、前記移動体検出装置の前記接近度評価部が、前記非コネクテッド移動体の前記判定地点における干渉時間、及び前記非コネクテッド移動体と異なる他の移動体の前記判定地点における干渉時間から、前記非コネクテッド移動体の接近度を評価する。
【0019】
第12態様に係る管制システムは、第11態様に係る管制システムにおいて、前記移動体検出装置の前記走路情報取得部が、前記移動体検出部で前記画像から検出された前記非コネクテッド移動体の位置及び速度に含まれる誤差の度合いを表す信頼度が点列毎に付与された前記地図データから、点列毎の走路情報を前記信頼度と共に取得し、前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する。
【0020】
第13態様に係る管制システムは、第12態様に係る管制システムにおいて、前記移動体検出装置が、前記走路情報取得部から前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を取得すると共に、前記信頼度制御部から前記信頼度目標を取得し、前記信頼度目標に応じて、前記地図データの点列を構成する各点に付与された前記信頼度を補正する信頼度補正部を備え、前記走行経路予測部は、予測した前記非コネクテッド移動体の走行経路上における各経由点での前記信頼度補正部で補正された前記信頼度を反映した前記非コネクテッド移動体の位置及び速度を用いて、前記非コネクテッド移動体の走行経路上における経由点毎に前記非コネクテッド移動体の干渉時間を予測する。
【0021】
第14態様に係る管制システムは、第8態様~第13態様の何れかの態様に係る管制システムにおいて、前記移動体検出装置が、光、音、振動、空気の流れ、圧力、及び熱の少なくとも1つの再生エネルギーを利用して、自装置で消費する電力以上の電力を発電する動力生成部を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検出可能な最高の信頼度で画像から移動体情報を検出し続ける場合と比較して、移動体同士が干渉する危険性が認められる状況での画像から検出した移動体情報の信頼度を低下させることなく、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】管制システムのシステム構成例を示す図である。
【
図2】遵守車両の制御装置における機能構成例を示す図である。
【
図3】遵守車両及び非コネクテッド車両が有する運転機能の相違点をまとめた図である。
【
図4】移動体検出装置及び管制装置の機能構成例を示す図である。
【
図5】管制走行ルート地図の内容例を示す図である。
【
図8】移動体検出装置の撮像センサによって撮像される画像例について説明する図である。
【
図9】画像における車両の位置を、管制走行ルート地図上の経由点に写像した写像例を示す図である。
【
図10】非コネクテッド車両の走行経路の一例を示す図である。
【
図11】遵守車両の大域経路の一例を示す図である。
【
図12】管制装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
【
図13】移動体検出装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
【
図14】遵守車両の制御装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
【
図15】管制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図16】干渉地点における車両の干渉時間の一例を示す図である。
【
図17】状態s
x=0に設定された干渉地点での仮想交通ルールを模式化した模式図である。
【
図18】状態s
x=1に設定された干渉地点での仮想交通ルールを模式化した模式図である。
【
図19】走行制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図20】移動体検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図22】管制システムの変形例に係る移動体検出装置及び管制装置の機能構成例を示す図である。
【
図23】判定地点における車両同士の干渉状況を説明する図である。
【
図25】信頼度生成装置の機能構成例を示す図である。
【
図28】画像から車両の速度を算出する例を示す図である。
【
図29】管制システムの他の変形例に係る移動体検出装置及び管制装置の機能構成例を示す図である。
【
図30】移動体検出装置に動力生成部を追加した場合の機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る管制システム1のシステム構成例を示す図である。管制システム1は、管制システム1による管制対象となる車両7、それぞれ経路6に沿って設置される複数の無線通信装置3及び移動体検出装置9、並びに管制装置10を含み、各々の無線通信装置3及び移動体検出装置9は、通信網5を通じて管制装置10と接続されている。
【0026】
車両7が備える運転に関する機能である運転機能の相違により、車両7は複数の種類に分類される。例えば車両7のうち、無線設備を備え、走行中に例えば最も近い場所に設置されている何れか1つの無線通信装置3に無線接続することで、通信網5を通じて管制装置10とデータ通信を行う車両7はコネクテッド車両に分類され、無線設備を備えておらず、管制装置10とデータ通信を行うことができない車両7は非コネクテッド車両に分類される。
【0027】
無線通信装置3は、コネクテッド車両と管制装置10の間のデータ中継装置としての役割を果たす。無線通信装置3は、コネクテッド車両との無線通信が可能な範囲内であればその設置場所に制約はないが、例えば車道と並行して設けられた歩道や車道の中央分離帯、及び信号設備のように、車道からできるだけ近い場所に設置されることが好ましい。また、無線通信装置3の設置台数に制約はない。
【0028】
通信網5は、無線通信装置3及び移動体検出装置9で収集した車両7の各種情報を管制装置10に伝送すると共に、管制装置10で生成されたコネクテッド車両の管制情報を、管制装置10が指定した無線通信装置3に伝送する。管制情報は管制装置10からの指示によってすべての無線通信装置3に伝送され、各々のコネクテッド車両に通知されることもある。なお、通信網5は、有線回線であっても無線回線であってもよい。
【0029】
管制装置10は、車両7同士の交通効率を低下させることなく、車両7同士が接触する危険性が認められる予め定めた範囲(以降、「干渉範囲」という)まで接近するような箇所、すなわち干渉地点Xで干渉を回避させる交通管制を行う装置である。ここで「干渉」とは、車両7同士が接触する状況を示すだけでなく、車両7同士が干渉範囲まで接近する状況をいう。
【0030】
管制装置10は、管制対象となる各々の車両7から、車両7の状態を表す移動体情報を受信し、各々の車両7が行う移動に関する判断を制約する制約条件(以降、「仮想交通ルール」という)を、車両7同士が干渉地点Xで干渉しないように制約条件の受信機能を有する車両7毎に生成して、制約条件の受信機能を有する各車両7に送信する。
【0031】
車両7の状態とは、車両7の動き、車両7に対して行われた制御内容、及び車両7に備わっている各機能の動作状況等、計測及び収集可能な車両7に関する項目を項目毎に表した情報の集合体である。
【0032】
なお、管制装置10が車両7に送信する仮想交通ルールは、車両7の管制情報の一例であり、詳細内容については後ほど説明する。
【0033】
管制装置10は、コネクテッド車両であれば無線通信装置3を通じて移動体情報を受信することができるが、非コネクテッド車両の場合には無線設備を備えていないため、無線通信装置3を通じて移動体情報を受信することができない。
【0034】
したがって、管制装置10は、移動体検出装置9を通じて非コネクテッド車両の移動体情報を取得する。
【0035】
移動体検出装置9は無線通信装置3と同様に、例えば車道と並行して設けられた歩道や車道の中央分離帯、及び信号設備のように非コネクテッド車両の移動体情報が得られる範囲に設置される。移動体検出装置9は、例えば光学的に撮像を行う撮像センサ9Aを用いて、車線における非コネクテッド車両や非コネクテッド車両周辺の交通環境を撮像し、非コネクテッド車両に関する移動体情報を収集する装置である。本実施の形態における移動体検出装置9の取り付け位置、撮像方向、及び撮像される画像の撮像範囲(視野角)は固定とする。なお、以降では後述する
図8において、画像に対して符号50を付しているため、画像を「画像50」と表すことにする。
【0036】
コネクテッド車両は、運転機能の相違によって更に複数の種類の車両に分類されることがあるが、一例として、本実施の形態に係るコネクテッド車両は遵守車両とする。
【0037】
遵守車両とは、管制装置10から仮想交通ルールを受信し、車両7に取り付けられたセンサ等から得られる交通環境情報を参照しながら、受信した仮想交通ルールを満たし、かつ、車両7同士の干渉を自律的に回避するように、車両7自らの判断によって車両7を制御しながら走行する自動運転機能を備えた車両7のことである。なお、本実施の形態に係る自動運転とは、運転手ではなく自動運転機能が走行に関する責任を負うレベル3以上の区分に分類される運転を指す。
【0038】
以降では、特に断りがない場合、管制装置10が交通管制を行う範囲内に遵守車両と非コネクテッド車両が走行している例について説明する。遵守車両及び非コネクテッド車両を区別して説明する必要がない場合には総称して「車両7」と表し、区別して説明する場合には、それぞれ遵守車両7Aと非コネクテッド車両7Dのように表す。非コネクテッド車両7Dは非コネクテッド移動体の一例である。また、車両7のうち注目する2台の車両を「車両P」及び「車両Q」で表すことがある。
【0039】
図2は、遵守車両7Aの制御装置20における機能構成例を示す図である。
【0040】
図2に示すように、遵守車両7Aの制御装置20は、位置推定部21、状態管理部22、無線通信部23、局所経路計画部24、及び制御部25の各機能部と、車両走行ルート地
図26を含む。
【0041】
位置推定部21は遵守車両7Aの位置を推定する。具体的には、位置推定部21は、遵守車両7Aに取り付けられた例えばレーザレンジファインダやカメラのように、遵守車両7Aが走行する周辺環境の形状や、道路上の状況を捉える外界センサ91から外形形状データを取得し、取得した外形形状データと、例えば予め用意している環境外形データ(自己位置推定用地図)をマッチングさせ、一致する地点を遵守車両7Aの現在位置として推定するマップマッチングを用いて遵守車両7Aの位置を推定する。位置推定部21における遵守車両7Aの位置の推定方法に制約はなく、例えばGPS(Global Positioning System)を用いた遵守車両7Aの位置の推定等、他の推定方法を用いてもよい。位置推定部21は、推定した遵守車両7Aの位置を位置情報として状態管理部22及び局所経路計画部24に通知する。
【0042】
状態管理部22は、例えばナンバー情報及び車体番号のように遵守車両7Aを一意に識別するために用いられる情報を含んだ車両固有情報を管理する。また、状態管理部22は、例えば位置情報によって表される遵守車両7Aの位置、並びに、姿勢、速度、及び制御内容等を計測するセンサ(「内界センサ90」と呼ばれる)や外界センサ91で取得した周囲の交通環境に関するセンサ値を時系列に沿って収集し、遵守車両7Aの状態として管理する。
【0043】
状態管理部22は、車両固有情報と遵守車両7Aの状態を移動体情報として定期及び随時の少なくとも一方のタイミングで、無線通信部23及び局所経路計画部24に通知する。
【0044】
無線通信部23は、状態管理部22から受け付けた移動体情報を、無線通信装置3を通じて管制装置10に送信すると共に、無線通信装置3を通じて管制装置10から受信した管制情報を遅滞なく局所経路計画部24に通知する。
【0045】
局所経路計画部24は、位置推定部21から受け付けた位置情報、状態管理部22から受け付けた移動体情報、無線通信部23から受け付けた管制情報、及び車両走行ルート地
図26を用いて局所経路を計画し、制御部25に通知する。
【0046】
局所経路計画部24は、遵守車両7Aが管制情報に含まれる仮想交通ルールを満たし、かつ、管制情報で指定された大域経路に沿って走行するという条件の下で、移動体情報に含まれる遵守車両7Aに取り付けられた外界センサ91の計測データから走行中の車道の状況を判断し、大域経路に対応した車道のどの位置を実際に走行しなければならないのかといった実経路を決定する。その上で、局所経路計画部24は、決定した実経路に沿って車両7を走行させるために従うべき各時刻における遵守車両7Aの速度や姿勢を設定する。
【0047】
このように、遵守車両7Aが仮想交通ルールを満たしながら、管制装置10によって指定された大域経路に沿って走行するという条件の下で決定した実経路を「局所経路」と呼び、局所経路には、局所経路に沿って遵守車両7Aを走行させるための制御内容が付加される。なお、大域経路の詳細内容については後ほど説明する。
【0048】
車両走行ルート地
図26は、遵守車両7Aが走行する車線を表す地図情報を含んでおり、局所経路の決定や、局所経路に沿って遵守車両7Aを走行させるための各時刻における遵守車両7Aの制御内容の設定に用いられる。
【0049】
制御部25は局所経路計画部24から局所経路を受け付けると、局所経路に含まれる制御内容に従い遵守車両7Aのハンドル、アクセル、ブレーキ等を制御し、局所経路に沿った遵守車両7Aの自律走行を実現する。
【0050】
制御部25が実施した制御に伴うハンドル、アクセル、ブレーキ等の操作量といった遵守車両7Aの制御内容は、各種制御量を計測するそれぞれの内界センサ90を通じて状態管理部22に通知され、遵守車両7Aの状態として状態管理部22で管理される。
【0051】
なお、遵守車両7Aは管制装置10から大域経路を受信しなくても、外界センサ91の計測データから走行中の車道の状況を判断し、仮想交通ルールを満たすような実経路を決定することができるが、ここでは一例として、遵守車両7Aは管制装置10から大域経路を受信して実経路、すなわち局所経路を決定するものとする。
【0052】
一方、非コネクテッド車両7Dの場合、管制装置10とデータ通信を行う通信機能を備えていなければ、どのような機能構成であっても構わない。
【0053】
図3は、遵守車両7A及び非コネクテッド車両7Dが有する運転機能の相違点をまとめた図である。
【0054】
図3において、“〇”は対応する機能を備えていることを表し、“×”は対応する機能を備えていないことを表す。“〇/×”は対応する機能を備えていても備えていなくてもどちらでもよいことを表し、“-”は原則不要な機能であることを表す。仮想交通ルール伝達機能とは、管制装置10から受信した仮想交通ルールを、視覚、聴覚、及び触覚の少なくとも1つを利用して車両7の運転手に伝達する機能である。
【0055】
非コネクテッド車両7Dは管制装置10との通信機能を備えていないため、通信機能の存在を前提とした仮想交通ルール受信、仮想交通ルール伝達機能、及び大域経路取得の各機能は備えていない。また、非コネクテッド車両7Dは、例えば自動運転機能のように必ずしも通信機能の存在を前提としていない機能については、該当する機能を備えていても備えていなくてもどちらでもよい。
【0056】
以降では、説明の便宜上、移動体情報を区別して説明する必要がある場合、遵守車両7Aの移動体情報を「移動体情報A」、非コネクテッド車両7Dの移動体情報を「移動体情報D」ということにする。
【0057】
図4は、移動体検出装置9及び管制装置10の機能構成例を示す図である。まず、移動体検出装置9の機能について説明する。
【0058】
図4に示すように、移動体検出装置9は撮像センサ9A、移動体検出部9B、座標変換部9C、走路情報取得部9D、走行経路予測部9E、判定地点設定部9F、接近度評価部9G、及び信頼度制御部9Hを含む。
【0059】
撮像センサ9Aは、非コネクテッド車両7Dや非コネクテッド車両7D周辺の交通環境を撮像した画像50を生成し、画像50を移動体検出部9Bに通知する。撮像センサ9Aは複数の撮像素子で構成され、各々の撮像素子がそれぞれ画像50の画素に対応した画素値を出力する。
【0060】
なお、撮像センサ9Aは、例えば指示されたタイミングで画像50の撮像を行う。例えば、1秒間隔で画像50の撮像を行う指示を受け付けた場合、撮像センサ9Aは1秒間隔で画像50の撮像を行うことになる。なお、撮像間隔を短く設定していけば、撮像センサ9Aが撮像する画像50は動画となる。
【0061】
移動体検出部9Bは、撮像センサ9Aで撮像された画像50から公知の移動体検出手法、例えばディープラーニングを用いた機械学習やパターンマッチングを用いて移動体(本実施の形態の場合、非コネクテッド車両7D)を検出し、画像50から得られる非コネクテッド車両7Dの位置及び速度を含む移動体情報Dを、後述する信頼度制御部9Hによって指定された精度で検出する。なお、移動体検出部9Bは信頼度制御部9Hからの指示により、撮像センサ9Aによる撮像のタイミングを制御することができる。
【0062】
移動体検出部9Bは、画像50から検出した移動体情報D(画像50上の移動体情報Dともいう)を座標変換部9Cに通知する。
【0063】
座標変換部9Cは、移動体検出部9Bから受け付けた画像50上における非コネクテッド車両7Dの位置が、後述する管制走行ルート地
図17上ではどの地点に対応するのかを表すために、画像50上の座標系(画像座標系)で表される非コネクテッド車両7Dの位置を、管制走行ルート地
図17上の座標系(地図座標系)で表される地点に座標変換する。
【0064】
こうした座標変換は、撮像センサ9Aで撮像された各々の画像50から検出された非コネクテッド車両7Dの位置に対して行われるため、時系列に沿った管制走行ルート地
図17上での非コネクテッド車両7Dの位置が得られる。
【0065】
また、画像50から検出された非コネクテッド車両7Dの速度も、管制走行ルート地
図17上に座標変換された非コネクテッド車両7Dの位置に基づいて、管制走行ルート地
図17上の各地点に対応した速度に変換される。
【0066】
座標変換部9Cは、管制走行ルート地
図17上での各地点における非コネクテッド車両7Dの速度、及び時系列に沿った管制走行ルート地
図17上での非コネクテッド車両7Dの位置を地図上の移動体情報Dとして走行経路予測部9Eに通知する。
【0067】
一方、走路情報取得部9Dは、例えば管制装置10に含まれる管制走行ルート地
図17を読み込み、管制走行ルート地
図17から車線8に関する走路情報を取得し、走行経路予測部9Eに通知する。
【0068】
図5は、地図データの一例である管制走行ルート地
図17の内容例を示す図である。管制走行ルート地
図17は、交通規則が変化しない区間を最小単位とした、各区間における走路情報の集合によって表現される道路構造データベースである。
【0069】
管制走行ルート地
図17を構成する区間(
図5の例の場合、地点K1から地点K2までの区間、地点K2から地点K3までの区間、地点K3から地点K7までの区間、地点K2から地点K5までの区間、地点K4から地点K5までの区間、及び地点K5から地点K6までの区間の6区間)には、それぞれ区間における制限速度、車線数、幅員、及び区間における車線が優先車線であるのか、それとも非優先車線であるのかといった車線優先度等の交通規則情報が設定されている。
【0070】
更に、管制走行ルート地
図17を構成する各区間は、仮想的に設定された経由点4の集合である経由点列によって車両7の経路6を表している。経由点4とは、経路6上における車両7の位置を表す指標の1つであり、各々の経由点4には経由点IDが一意に設定されているため、経由点IDから経路6上における車両7の位置が特定される。この経由点4が、管制走行ルート地
図17における「地点」に相当する。管制走行ルート地
図17における経由点4の位置情報は、3次元空間を規定する地図座標系によって表される。
【0071】
また、管制走行ルート地
図17の各々の経由点4には、例えば車両7が経路6上を安全に走行することができる最大加減速度が予め設定されていると共に、干渉地点Xを予め規定している干渉地点情報が含まれる。管制走行ルート地
図17を構成する各区間の制限速度、車線数、幅員、交通規則情報、最大加減速度、及び干渉地点X等の情報は、例えば車線8の交通量のように秒単位や分単位で変化する動的な情報ではなく、車線8の構造が変更されるまで変化しない情報、すなわち車線8の静的な状況を表す走路情報の一例である。
【0072】
図6は、干渉地点Xの例を示す図である。干渉地点Xには例えば
図6(A)に示すように、優先車線8Aと非優先車線8Bが交差する交差点や、一般道や高速道路でみられるような、
図6(B)に示す優先車線8Aと非優先車線8Bが合流する合流点が含まれる。干渉地点Xとは、車両7同士が干渉範囲まで接近するような箇所のことであるため、干渉地点Xは必ずしも点で表されるわけではなく、一定の大きさを有する領域で表されることもある。すなわち干渉地点Xは干渉領域の一例である。
【0073】
図7は、干渉地点情報の一例を示す図であり、干渉地点情報は、例えば干渉地点X毎に干渉地点Xを一意に識別するための干渉地点ID、干渉地点Xの位置、干渉地点Xに対応する経由点4を一意に識別するための経由点ID、並びに、干渉地点Xの1つ手前の経由点4の位置及び経由点IDを、同じ干渉地点Xを共有する優先車線8Aと非優先車線8Bのそれぞれについて規定した情報である。
【0074】
前述した遵守車両7Aにおける車両走行ルート地
図26も管制走行ルート地
図17と同じ情報で構成されるが、車両走行ルート地
図26は、車両7が実際に走行する上で必要になるような、管制走行ルート地
図17には含まれない情報を含んでもよい。
【0075】
なお、管制走行ルート地
図17に必ずしも干渉地点情報が含まれている必要はなく、例えば管制走行ルート地
図17に含まれる経由点列の情報から干渉地点情報を生成してもよい。また、移動体検出装置9は管制装置10の管制走行ルート地
図17から走路情報を取得するのではなく、予め移動体検出装置9の内部に管制装置10と同じ管制走行ルート地
図17を備えてもよい。
【0076】
座標変換部9Cから地図上の移動体情報Dを受け付け、走路情報取得部9Dから車線8の走路情報を受け付けた走行経路予測部9Eは、それぞれ管制走行ルート地
図17上における非コネクテッド車両7Dの位置及び速度、並びに、車線8の走路情報から、画像50が検出された非コネクテッド車両7Dの走行経路を予測すると共に、予測した走行経路を表す経由点4毎に非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを予測する。なお、走行経路とは、車両7が今後走行すると考えられる経路6のことをいう。
【0077】
経由点4における非コネクテッド車両7Dの干渉時間tとは、非コネクテッド車両7Dが経由点4を通過すると考えられる期間のことである。この期間に他の車両7が経由点4を通過すると非コネクテッド車両7Dと他の車両7が干渉することから「干渉時間t」という。
【0078】
なお、干渉時間tが例えば12時30分15秒というように特定の時間ではなく、12時30分15秒から12時31分50秒までの間というように期間によって表されるのは、撮像センサ9Aで撮像した画像50から検出した移動体情報Dには誤差が含まれているためである。
【0079】
図8は、移動体検出装置9の撮像センサ9Aによって撮像される画像50について説明する図である。
図8のうち、
図8(A)は車線8を走行する車両P及び車両Qを移動体検出装置9で撮像している状況を示している図であり、
図8(B)は、
図8(A)に示した状況で撮像された画像50の一例を示している。
【0080】
撮像センサ9A上に被写体の像を結像させるため、移動体検出装置9には撮像センサ9Aのレンズが装着されているが、レンズに歪みがあると車両Pと車両Qの大きさが同じであっても、レンズを通して撮像された画像50内での車両Pと車両Qの大きさが異なる場合がある。また、移動体検出装置9から車両P及び車両Qまでのそれぞれの距離が異なる場合にも、車両Pと車両Qの大きさが同じであっても画像50内での車両Pと車両Qの大きさが異なる場合がある。
【0081】
そのため、
図8(B)の画像50の例では、実際には同じ大きさの車両Pと車両Qであっても、車両Qが車両Pより小さく表示されている。なお、枠55P及び枠55Qは、それぞれ移動体検出装置9の移動体検出部9Bで画像50から検出した車両P及び車両Qの位置を表す枠線である。車両P及び車両Qの具体的な位置は、例えば枠55P及び枠55Qにそれぞれ存在する2本の対角線の交点の座標で表してもよい。画像50には座標軸X1及び座標軸Y1で表される画像座標系が適用されている。
【0082】
実際には同じ大きさの車両Pと車両Qであっても、車両Pに比べて車両Qが画像50内で小さく表示されているということは、撮像センサ9Aにおいて車両Qを撮像している画素1つあたりの撮像範囲の幅が、車両Pを撮像している画素1つあたりの撮像範囲の幅よりも長いことを表している。こうした撮像センサ9Aの各々の画素が撮像する撮像範囲の幅を「画素の解像度」という。画像50内の各々の画素に対応する撮像センサ9Aの画素の解像度は、画像50内のどの場所を撮像しているかによって画素毎に異なる。1つの画素の撮像範囲が狭いほど、予め定めた大きさの範囲をより多くの画素で撮像することになるため、画像50上では大きく撮像される(
図8(B)の車両P)。一方、1つの画素の撮像範囲が広いほど、予め定めた大きさの範囲をより少ない画素で撮像することになるため、画像50上では小さく撮像される(
図8(B)の車両Q)。
【0083】
すなわち画像50において、車両Qよりも大きく表示された車両Pは、車両Qよりも高解像度で撮像されているため、画像50から検出した車両Pの位置と、車線8上における実際の車両Pの位置との誤差は、車両Qの位置の誤差よりも小さくなる。
【0084】
したがって、移動体検出装置9の移動体検出部9Bで画像50から検出した車両P及び車両Qの位置を、移動体検出装置9の座標変換部9Cで管制走行ルート地
図17上の地点に座標変換する場合、
図8(B)の画像50内で車両Qに比べて大きく表示されている車両Pの座標変換後における管制走行ルート地
図17上での位置の誤差は、車両Qの座標変換後における管制走行ルート地
図17上での位置の誤差に比べて小さくなる傾向がある。
【0085】
図9は、
図8(B)に示した画像50における車両P及び車両Qの位置を、それぞれ管制走行ルート地
図17上の最も近い経由点4に写像した例を示す図である。一例として、経由点4Aが座標変換後の車両Pの位置を表し、経由点4Bが座標変換後の車両Qの位置を表しているものとする。画像50から検出した車両Pの位置の誤差の関係から、実際の車両Pの位置は、車両Qの位置を表す経由点4Bを囲む領域Z
qよりも狭い領域Z
p内に含まれることになる。すなわち地図座標系における車両Pの位置の誤差は、車両Qの位置の誤差よりも小さくなる。なお、地図座標系は座標X2、Y2、及びZ2を用いた三次元座標系として表されるが、説明の便宜上、
図9では地面に沿った面であるX2-Y2平面上での経路6を表している。
【0086】
このように、撮像センサ9Aで撮像した画像50から検出した移動体情報Dには誤差が含まれるため、その誤差の範囲と、非コネクテッド車両7Dの速度の変動を考慮すれば、経由点4における非コネクテッド車両7Dの干渉時間tは幅を持った期間で表される。
【0087】
なお、画像50からは非コネクテッド車両7Dが今後どのような走行経路を走行するかはわからないため、走行経路予測部9Eは、管制走行ルート地
図17上の車線8が分岐する場合には車線8が分岐する毎に枝分かれするすべての経路6の組み合わせを非コネクテッド車両7Dの走行経路として取り扱う。
【0088】
図10は、車両Pが非コネクテッド車両7Dである場合の走行経路の一例を示す図である。
図10に示すように、管制走行ルート地
図17において車両Pの走行先が2つに分岐している場合、走行経路予測部9Eは、車両Pが分岐点で何れの方向に分岐するか不明であるため、経路6P-1及び経路6P-2を共に車両Pの走行経路として予測する。
【0089】
走行経路予測部9Eは予測した非コネクテッド車両7Dの走行経路上における経由点4毎の干渉時間tを接近度評価部9Gに通知すると共に、予測した非コネクテッド車両7Dの走行経路を判定地点設定部9Fに通知する。また、走行経路予測部9Eは、予測した非コネクテッド車両7Dの走行経路、及び非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを、通信網5を通じて管制装置10に送信する。
【0090】
これにより、管制装置10では後ほど説明するように、遵守車両7Aの走行経路と移動体情報A、及び非コネクテッド車両7Dの走行経路と移動体情報Dから、遵守車両7Aと非コネクテッド車両7Dとの干渉地点Xを特定する。特定された遵守車両7Aと非コネクテッド車両7Dとの干渉地点Xは、通信網5を通じて管制装置10から移動体検出装置9の判定地点設定部9Fに送信される。
【0091】
干渉地点Xを受信した判定地点設定部9Fは、管制装置10から受信した干渉地点Xに基づいて、非コネクテッド車両7Dの走行経路を表す各々の経由点4のうち、何れかの経由点4を判定地点Yとして設定する。判定地点Yとは、非コネクテッド車両7Dの接近状態を判定するための対象となる経由点4のことである。具体的には、判定地点Yとは、非コネクテッド車両7Dが走行経路を安全に走行する上で、非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを可能な範囲で精度よく予測する必要がある経由点4のことである。
【0092】
判定地点設定部9Fは、設定した判定地点Yを接近度評価部9Gに通知する。
【0093】
接近度評価部9Gは、非コネクテッド車両7Dの走行経路上における経由点4毎の干渉時間tのうち、判定地点設定部9Fから受け付けた判定地点Yに対応した経由点4の干渉時間tに基づき、判定地点Yに対する非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する。
【0094】
接近度とは、非コネクテッド車両7Dの判定地点Yに対する接近状態を表す値であり、例えば接近度が大きいほど、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yに近づいている状態を表す。接近度評価部9Gは、評価した接近度を信頼度制御部9Hに通知する。
【0095】
信頼度制御部9Hは、接近度評価部9Gから接近度を受け付けると、接近度に応じて信頼度目標を設定し、移動体検出部9Bに対して、非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度を信頼度目標に近づけるように指示する制御を行う。
【0096】
信頼度目標とは、移動体検出部9Bが画像50から検出する非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度の目標値であり、移動体検出部9Bは、指示された信頼度目標の値が大きいほど、画像50から検出する移動体情報Dの検出精度を高くする。
【0097】
このように、信頼度制御部9Hは、接近度に応じて変化する信頼度目標を用いて、移動体検出部9Bにおける移動体情報Dの検出精度を制御する。
【0098】
なお、移動体検出装置9は、必ずしも撮像センサ9Aを備える必要はなく、移動体検出装置9から撮像センサ9Aだけを分離し、撮像センサ9Aを取り除いた移動体検出装置9の移動体検出部9Bに撮像センサ9Aで撮像した画像50を入力するようにしてもよい。
【0099】
次に、管制装置10の機能について説明する。
【0100】
図4に示すように、管制装置10は、目的地設定部11、通信部12、大域経路計画部13、干渉地点特定部15、及び仮想交通ルール生成部16の各機能部と、管制走行ルート地
図17を含む。
【0101】
通信部12は、遵守車両7Aから無線通信装置3を通じて移動体情報Aを受信すると共に、後述する仮想交通ルール生成部16で生成した仮想交通ルールを含む管制情報を、管制情報の送信先として指定された各々の遵守車両7Aに送信する。
【0102】
遵守車両7Aは、管制装置10によって指定された大域経路に沿って走行する車両7であるため、管制装置10が大域経路を計画する必要がある。
【0103】
そのため、目的地設定部11は、遵守車両7Aが向かおうとしている目的地と遵守車両7Aの車両固有情報を受け付け、遵守車両7Aの車両固有情報と目的地を対応付けて大域経路計画部13に通知する。
【0104】
遵守車両7Aの目的地及び車両固有情報は管制装置10の操作者が目的地設定部11に設定してもよいが、遵守車両7Aから目的地を含む移動体情報Aを受信し、目的地設定部11が、受信した移動体情報Aに含まれる車両固有情報と目的地を対応付けて大域経路計画部13に通知してもよい。
【0105】
大域経路計画部13は、目的地設定部11から受け付けた遵守車両7Aの車両固有情報と目的地、通信部12から受け付けた移動体情報Aに含まれる遵守車両7Aの位置情報と車両固有情報、及び管制走行ルート地
図17に基づいて、遵守車両7A毎に管制走行ルート地
図17上で遵守車両7Aの現在位置から目的地までの経路6である大域経路を探索する。すなわち大域経路は、管制走行ルート地
図17を構成する各区間の経由点列をつないだ経路6として表される。
【0106】
図11は、共に遵守車両7Aである車両P及び車両Qの大域経路の一例を示す図である。複数の経路6の中から車両Pの現在位置と車両Pの目的地をつなぐ1つの経路6Pが車両Pの大域経路として計画され、車両Qの現在位置と車両Qの目的地をつなぐ1つの経路6Qが車両Qの大域経路として計画された状況を表している。
【0107】
大域経路計画部13における遵守車両7Aの大域経路の探索に用いる探索方法はどのような方法であってもよく、例えばダイクストラ探索といった公知の探索方法が用いられる。
【0108】
大域経路計画部13は、計画した大域経路を干渉地点特定部15に通知する。
【0109】
干渉地点特定部15は、大域経路計画部13から受け付けた遵守車両7Aの大域経路と、移動体検出装置9から受信した非コネクテッド車両7Dの走行経路及び移動体情報Dに基づいて、遵守車両7Aの大域経路と非コネクテッド車両7Dの走行経路が干渉する干渉地点Xを特定する。干渉地点特定部15は、特定した干渉地点Xと遵守車両7Aの大域経路を仮想交通ルール生成部16に通知する。
【0110】
仮想交通ルール生成部16は、通信部12から受け付けた遵守車両7Aの移動体情報A、及び干渉地点特定部15から受け付けた遵守車両7Aの大域経路と大域経路における干渉地点Xの位置情報を用いて、遵守車両7Aに対する仮想交通ルールを生成する。
【0111】
具体的には、仮想交通ルール生成部16は、遵守車両7Aの大域経路における干渉地点Xで干渉しあう遵守車両7Aと非コネクテッド車両7Dについて、各々の干渉地点Xにおける干渉時間tを推定し、各干渉地点Xにおいて、車両7同士の交通効率を低下させることなく干渉地点Xでの車両7同士の干渉が回避されるような通過優先順位を遵守車両7Aに対して規定する。
【0112】
仮想交通ルール生成部16は、遵守車両7Aに対して大域経路と仮想交通ルールを含んだ管制情報を生成し、通信部12に対して遵守車両7Aと対応付けられた管制情報の送信依頼を行う。これにより、無線通信装置3から遵守車両7Aと対応付けられた管制情報が送信されることになる。
【0113】
なお、管制走行ルート地
図17は必ずしも管制装置10に含まれている必要はなく、通信網5を通じて外部装置から取得するようにしてもよい。また、仮想交通ルールについての詳細な生成方法については後ほど説明することにする。
【0114】
次に、移動体検出装置9、及び管制装置10における各々の電気系統の要部構成例について説明する。
【0115】
図12は、管制装置10における電気系統の要部構成例を示す図である。
図12に示すように、管制装置10は例えばコンピュータ30を用いて構成される。
【0116】
コンピュータ30は、
図4に示した管制装置10に係る各機能部の処理を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)31、コンピュータ30を管制装置10として機能させる管制プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)32、CPU31の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)33、不揮発性メモリ34、及び入出力インターフェース(I/O)35を備える。そして、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、及びI/O35がバス36を介して各々接続されている。
【0117】
不揮発性メモリ34は、不揮発性メモリ34に供給される電力が遮断されても、記憶したデータが維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるが、ハードディスクを用いてもよい。また、不揮発性メモリ34は、必ずしもコンピュータ30に内蔵されている必要はなく、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカードのようにコンピュータ30に着脱可能な可搬型の記憶媒体を用いてもよい。管制走行ルート地
図17は、例えば不揮発性メモリ34に記憶される。
【0118】
I/O35には、例えば通信ユニット37、入力ユニット38、及び表示ユニット39が接続される。
【0119】
通信ユニット37は通信網5に接続され、無線通信装置3及び移動体検出装置9や、通信網5と接続された外部装置との間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0120】
入力ユニット38は、管制装置10の操作者からの指示を受け付けてCPU31に通知するユニットであり、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、及びマウス等が用いられる。指示が音声で行われる場合には、入力ユニット38としてマイクが用いられることがある。
【0121】
表示ユニット39は、CPU31によって処理された情報を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、及びプロジェクタ等が用いられる。
【0122】
管制装置10が無人のデータセンター等に設置されている場合のように情報の表示を必要としない状況では、表示ユニット39がI/O35に接続されないこともある。また、必要に応じてプリンタユニットのような他のユニットをI/O35に接続してもよい。
【0123】
図13は、移動体検出装置9における電気系統の要部構成例を示す図である。
図13に示すように、移動体検出装置9は例えばコンピュータ40を用いて構成される。
【0124】
コンピュータ40は、
図4に示した移動体検出装置9に係る各機能部の処理を担うプロセッサの一例であるCPU41、コンピュータ40を移動体検出装置9として機能させる検出プログラムを記憶するROM42、CPU41の一時的な作業領域として使用されるRAM43、不揮発性メモリ44、並びに、撮像センサ9A及び通信ユニット9Jが接続されたI/O45を備える。そして、CPU41、ROM42、RAM43、不揮発性メモリ44、及びI/O45がバス46を介して各々接続されている。
【0125】
通信ユニット9Jは通信網5に接続され、管制装置10や通信網5と接続された外部装置との間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0126】
図14は、遵守車両7Aの制御装置20における電気系統の要部構成例を示す図である。遵守車両7Aの制御装置20も移動体検出装置9や管制装置10と同様に、例えばコンピュータ80を用いて構成される。
【0127】
コンピュータ80は、
図2に示した遵守車両7Aの制御装置20に係る各機能部の処理を担うプロセッサの一例であるCPU81、コンピュータ80を遵守車両7Aの制御装置20として機能させる制御プログラムを記憶するROM82、CPU81の一時的な作業領域として使用されるRAM83、不揮発性メモリ84、及びI/O85を備える。そして、CPU81、ROM82、RAM83、不揮発性メモリ84、及びI/O85がバス86を介して各々接続されている。
【0128】
I/O85には、例えば通信ユニット87、入力ユニット88、表示ユニット89、内界センサ90、外界センサ91、及び走行装置92が接続される。
【0129】
通信ユニット87は無線通信装置3との間でデータ通信を行う通信プロトコルを備える。
【0130】
入力ユニット88は、遵守車両7Aの運転手からの指示を受け付けてCPU81に通知するユニットであり、例えばボタン、タッチパネル、及びポインティングデバイス等が用いられる。指示が音声で行われる場合には、入力ユニット88としてマイクが用いられることがある。
【0131】
表示ユニット89は、CPU81によって処理された情報を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びプロジェクタ等が用いられる。
【0132】
走行装置92は、CPU81の指示に従い、例えばハンドル、アクセル、及びブレーキのように遵守車両7Aの走行状態に影響を与える操作装置の操作量を調整する装置であると共に、操作装置の操作量を遵守車両7Aの状態としてCPU81に通知する。内界センサ90及び外界センサ91の機能については、既に説明した通りである。
【0133】
次に、車両7の交通管制を行う管制装置10の動作について説明する。
【0134】
図15は、各車両7から移動体情報を受け付けた場合に、管制装置10のCPU31によって実行される管制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0135】
管制処理を規定する管制プログラムは、例えば管制装置10のROM32に予め記憶されている。管制装置10のCPU31は、ROM32に記憶される管制プログラムを読み込み、管制処理を実行する。
【0136】
なお、以降では説明の便宜上、2台の車両7(車両P及び車両Q)に注目して管制装置10の動作について説明するが、管制対象となる車両7が3台以上の場合であっても、各々の車両7について同様の処理を行えばよい。また、一例として、車両P及び車両Qの少なくとも一方は遵守車両7Aとする。
【0137】
ステップS10において、CPU31は、受け付けた移動体情報の内容に基づいて、車両P及び車両Qの種類を判定する。例えばCPU31は、無線通信装置3から受信した移動体情報Aに対応する車両7は遵守車両7Aであると判定すればよい。また、CPU31は、移動体検出装置9から受信した移動体情報Dに対応する車両7は非コネクテッド車両7Dであると判定すればよい。
【0138】
なお、CPU31は、移動体情報Dと共に移動体検出装置9から非コネクテッド車両7Dの走行経路を受信する。
【0139】
ステップS20において、CPU31は、遵守車両7Aから受信した移動体情報Aに含まれる車両7の位置情報と遵守車両7Aの目的地に基づいて、遵守車両7Aの大域経路を生成する。
【0140】
ステップS30において、CPU31は、車両Pの経路6を示す経由点4が、車両Qの経路6を示す経由点4から干渉範囲以内まで接近するような地点、すなわち車両Pと車両Qの干渉地点Xを特定する。具体的には、CPU31は、車両Pの大域経路若しくは走行経路(単に「車両Pの経路6」という)と、車両Qの大域経路若しくは走行経路(単に「車両Qの経路6」という)が交差または合流する地点の経由点4や、車両Pの経路6と車両Qの経路6が干渉範囲以内まで接近して並走するような領域の経由点4を、車両Pと車両Qの干渉地点Xとして特定する。
【0141】
その上で、CPU31は、車両P及び車両Qの何れか一方の経路6が移動体検出装置9から取得した非コネクテッド車両7Dの走行経路である場合、特定した干渉地点Xを移動体検出装置9に送信する。
【0142】
なお、
図7に示したような干渉地点情報を参照することができる場合、CPU31は、車両Pと車両Qの各々の経路6に、干渉地点情報で干渉地点Xとして設定されている同一の経由点が含まれていれば、当該経由点4によって表される地点を車両Pと車両Qの干渉地点Xとしてもよい。
【0143】
ステップS40において、CPU31は、ステップS30で特定した車両Pと車両Qの各干渉地点Xについて、車両Pと車両Qの移動体情報を用いて車両Pと車両Qの干渉時間tを算出する。
【0144】
干渉時間tは、車両P及び車両Qのそれぞれの現在位置から干渉地点Xまでの経路6に沿った距離(以降、「干渉地点Xまでの距離」という)と、車両P及び車両Qのそれぞれの速度から算出することができる。しかしながら、既に説明したように、移動体検出装置9が画像50から算出した非コネクテッド車両7Dの位置及び速度には検出誤差が含まれる。また、遵守車両7Aであっても交通事情等により一定の速度で走行することはできないため、実際には車両P及び車両Qの速度は変動し、速度から推定される各時刻における予想位置も変動する。
【0145】
したがって、“v”を車両P及び車両Qにおけるそれぞれの速度、“l”を干渉地点Xまでの距離、“δ1”及び“δ2”を車両P及び車両Qの速度変化に対応する正数のマージン、“ε”を他の値よりも0に近い正定数とすれば、車両P及び車両Qの速度の変動量を考慮した干渉地点Xにおける干渉時間tは(1)式で算出される。
【0146】
【0147】
なお、tbeginは車両P及び車両Qが最も早く干渉地点Xを通過する場合の時刻であり、tendは、車両P及び車両Qが最も遅く干渉地点Xを通過する場合の時刻である。このように、車両P及び車両Qの干渉地点Xにおける干渉時間tは、tbegin以上tend未満の期間で表される。以降では、車両Pの干渉地点Xにおける干渉時間tを「干渉時間tp」と表し、車両Qの干渉地点Xにおける干渉時間tを「干渉時間tq」と表す。また、tbeginを干渉時間tの開始時間といい、tendを干渉時間tの終了時間という。
【0148】
図16は、特定の干渉地点Xに対する車両Pの干渉時間t
pと、車両Qの干渉時間t
qの一例を示す図である。
【0149】
このようにして、CPU31は干渉地点Xについて、車両Pの干渉時間tp及び車両Qの干渉時間tqを算出する。
【0150】
ステップS50において、CPU31は、ステップS30で特定した車両Pと車両Qの干渉地点Xにおける通過優先順位を設定する。
【0151】
通過優先順位が上、すなわち通過優先順位が優先に設定された車両7は、干渉地点Xを優先的に通過することができ、通過優先順位が下、すなわち通過優先順位が非優先に設定された車両7は、通過優先順位が優先に設定された車両7の干渉地点Xにおける干渉時間tの間は、当該干渉地点Xに進入しないようにする制約が設定される。
【0152】
このように、干渉地点Xにおける通過優先順位と干渉時間tを対応付け、車両Pと車両Qが走行することができる時間と場所を制約することで、干渉地点Xにおいて車両Pと車両Qの干渉が回避されることになる。
【0153】
干渉地点Xにおける通過優先順位と、通過優先順位が優先に設定された車両7の干渉時間tの対応付け、すなわち通過優先順位が非優先に設定された車両7にとっての干渉地点Xへの進入禁止時間が仮想交通ルールとなる。仮想交通ルールは、車両7が干渉地点Xで他の車両7と干渉しないように、干渉時間tと干渉地点Xの位置情報を用いて車両7が走行することができる時間と場所を制約することから時空間制約の一例である。
【0154】
以降では、干渉地点Xにおいて通過優先順位が優先に設定されているのか、それとも非優先に設定されているのかを表す状態を“sx”で表す。干渉地点Xにおける状態sxは“0”または“1”の値をとり、CPU31は、干渉地点Xにおいて車両Pが優先の場合には状態sx=0に設定し、車両Qが優先の場合には状態sx=1に設定する。
【0155】
図17は、状態s
x=0に設定された干渉地点Xでの仮想交通ルールを模式化した模式図である。
【0156】
この場合、車両Pの干渉時間tpがtp
begin以上tp
end未満までの期間で表されるとすれば、車両Pは、干渉時間tpの間は干渉地点Xを車両Qに優先して通過することができる。しかしながら、車両Qは、干渉時間tpに干渉地点Xに進入すると車両Pと干渉する恐れがあるため、干渉時間tpの間は干渉地点Xへ進入しないようにする必要がある。
【0157】
一方、
図18は、状態s
x=1に設定された干渉地点Xでの仮想交通ルールを模式化した模式図である。
【0158】
この場合、車両Qの干渉時間tqがtq
begin以上tq
end未満までの期間で表されるとすれば、車両Qは、干渉時間tqの間は干渉地点Xを車両Pに優先して通過することができる。しかしながら、車両Pは、干渉時間tqに干渉地点Xに進入すると車両Qと干渉する恐れがあるため、干渉時間tqの間は干渉地点Xへ進入しないようにする必要がある。
【0159】
すなわち干渉地点Xでの通過優先順位が非優先に設定された車両7は、同じ干渉地点Xにおいて通過優先順位が優先に設定された車両7の干渉時間tに当該干渉地点Xへ進入しないようにすれば、車両7同士の干渉を回避して目的地まで到達することができる。
【0160】
このように、仮想交通ルールは、干渉地点Xにおける状態sxと干渉地点Xにおける進入禁止時間(干渉地点Xにおいて通過優先順位が優先に設定されている車両7の干渉時間t)の組み合わせを干渉地点X毎に設定した情報によって表される。
【0161】
干渉地点Xにおいて、車両P及び車両Qの通過優先順位をどのように決定するかは、目的関数C(S)を評価することによって行われる。
【0162】
目的関数C(S)は干渉地点Xで干渉する車両7の種類の組み合わせ毎に予め用意されており、不揮発性メモリ34に記憶される。CPU31は、ステップS10で判定した車両P及び車両Qの種類の組み合わせに対応した目的関数C(S)を用いて、車両P及び車両Qの通過優先順位を決定する。目的関数C(S)は、車両7が移動することによって発生する交通コストを表す関数である。交通コストとは、個々の車両7に対するコストだけでなく、車両7が走行することで他の車両7の走行に与える影響も加味したコストであり、車両7の交通効率を表す。
【0163】
したがって、CPU31は、目的関数C(S)が最小となるような状態ベクトルSを設定する。目的関数C(S)が最小になれば交通コストも最小となるため、管制システム1が管制を行う範囲の交通効率が向上する。
【0164】
なお、目的関数C(S)における状態ベクトルSは、管制システム1が管理する範囲内に車両Pと車両Qの干渉地点XがN地点(Nは正の整数)ある場合において、各干渉地点Xにおける状態sxを要素としたベクトルである。すなわち状態ベクトルSはS=(s1, s2,・・, si,・・,sN)で表される。
【0165】
ここでは一例として、車両Pが遵守車両7Aで、車両Qが非コネクテッド車両7Dである場合の干渉地点Xにおける通過優先順位の決定方法について説明する。
【0166】
この場合、CPU31は、例えば(2)式で表されるような目的関数C2(S)を用いる。
【0167】
【0168】
ここで、Csingle(S)は、各干渉地点Xを通過する車両P及び車両Qに対する管制制御を特徴付けるコストである。Cconsistency(S)は、車両P及び車両Qに設定される通過優先順位の時間方向の一貫性に関するコストである。Cmulti(S)は、干渉地点X間の整合性や相互作用に関するコストである。ωc及びωmは、目的関数C2(S)に対してCconsistency(S)、及びCmulti(S)が与える影響度を調整するための重みである。
【0169】
Cfunc1(S)は、車両Qが干渉地点Xに近い位置にいる場合において、車両Qの通過優先順位と干渉回避の妥当性を表したコストであり、(3)式及び(4)式で表される。
【0170】
【0171】
すなわち車両Qが干渉地点Xから離れている場合には、干渉地点Xにおける干渉時間tが早い車両7を優先的に通過させるとコストが低く設定される一方で、管制装置10によって交通管制を行うことができない車両Qが干渉地点Xに近づいている場合には、車両Qの通過を優先させるとコストが低く設定される。これは、車両Qが干渉地点Xに近づいている場合には、運転手が手動で運転している車両Qの通過を優先させた方が、遵守車両7Aである車両Pを優先させた場合よりも干渉を回避することができる可能性が高くなるためである。車両Qが干渉地点Xに近い位置にいるとは、干渉地点Xから車両Qまでの距離lqが、手動運転では干渉の回避に急な操作が必要になると考えられる予め定めた閾値D1以下になっている状況をいう。また、(2)式においてωf1は、目的関数C2(S)に対してCfunc1(S)が与える影響度を調整するための重みである。
【0172】
なお、非コネクテッド車両7Dの場合、移動体情報Dは移動体検出装置9の撮像センサ9Aで撮像された画像50から推定され、撮像センサ9Aの画素には解像度の違いが発生している。したがって、移動体情報Dから算出した干渉地点Xにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tは、移動体情報Aから算出した遵守車両7Aの干渉時間tよりも誤差が大きくなる傾向を示す。
【0173】
そこで、(2)式のCsingle(S)の代わりに、Csingle(S)を修正したC^
single(S)を用いてもよい。C^
single(S)は(5)式で表される。
【0174】
【0175】
ここで、σは移動体情報Dを用いて算出した非コネクテッド車両7Dにおける干渉時間tの予測誤差であり正数で表される。すなわち移動体情報Dを用いて非コネクテッド車両7Dが最も早く干渉地点Xを通過する時刻として算出した時刻tq
beginよりも更に予測誤差σだけ早く干渉地点Xを通過しても、また、非コネクテッド車両7Dが最も遅く干渉地点Xを通過する時刻として算出したtq
endよりも更に予測誤差σだけ遅く干渉地点Xを通過しても車両P及び車両Qが干渉しないように、当初算出した干渉時間tよりも更に幅を持たせた干渉時間tに基づいて、Csingle(S)を補正する。
【0176】
図15のステップS60において、CPU31は遵守車両7Aに対して、ステップS30で特定した車両Pと車両Qの干渉地点X、ステップS40で算出した各干渉地点Xにおける干渉時間t、及びステップS50で設定した各干渉地点Xにおける状態s
xを用いて仮想交通ルールを生成する。具体的には、CPU31は、各干渉地点Xの位置を表す位置情報(例えば干渉地点ID)と、各干渉地点Xにおける状態s
xと、状態s
x及び干渉時間tから得られる各干渉地点Xへの進入禁止時間を対応付けた仮想交通ルールを生成する。
【0177】
ステップS70において、CPU31は、大域経路及び仮想交通ルールを含む管制情報を生成し、生成した管制情報を、無線通信装置3を通じて遵守車両7Aに送信する制御を行う。
【0178】
この場合、CPU31は、最新の移動体情報Aから遵守車両7Aの位置を把握し、遵守車両7Aの現在位置に最も近い無線通信装置3から管制情報が送信されるように、管制情報を送信する無線通信装置3を指定する。無線通信装置3の位置情報は、例えば不揮発性メモリ34に予め記憶されている。以上により、
図15に示した管制処理を終了する。
【0179】
一方、
図19は、管制装置10から管制情報を受信した場合に、遵守車両7Aの制御装置20におけるCPU81によって実行される走行制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0180】
遵守車両7Aの走行制御処理を規定する制御プログラムは、例えば遵守車両7Aの制御装置20におけるROM82に予め記憶されている。遵守車両7Aの制御装置20におけるCPU81は、ROM82に記憶される制御プログラムを読み込み、遵守車両7Aの走行制御処理を実行する。
【0181】
ステップS100において、CPU81は、自身の遵守車両7Aにおける最新の位置情報を取得する。
【0182】
ステップS110において、CPU81は、自身の遵守車両7Aにおける最新の移動体情報を取得する。
【0183】
ステップS120において、CPU81は、ステップS100で取得した遵守車両7Aの位置情報、ステップS110で取得した遵守車両7Aの移動体情報A、及び管制装置10から受信した管制情報を用いて局所経路を生成する。
【0184】
具体的には、CPU81は、移動体情報Aに含まれる車線8上の状況を表す外界センサ91のセンサ値や、遵守車両7Aの状態を表す内界センサ90のセンサ値から、他の車両7と干渉しないように走行することができる大域経路に沿った実経路、すなわち局所経路を決定する。この際、CPU81は、管制情報に含まれる仮想交通ルールを参照して、非優先に設定されている干渉地点Xでは干渉地点Xと対応付けられている進入禁止時間に当該干渉地点Xへ進入しないような局所経路を遵守車両7Aが走行するように、目標位置、目標姿勢、及び目標速度といった遵守車両7Aの制御内容を決定する。
【0185】
CPU81は、遵守車両7Aの目標位置及び目標姿勢から局所経路を計算した上で、仮想交通ルールを満たすように遵守車両7Aが局所経路を走行するための目標速度を計算してもよい。また、CPU81は、遵守車両7Aの目標位置、目標姿勢、及び目標速度を一緒に計算してもよい。
【0186】
CPU81は、局所経路をパラメトリック曲線で表現し、パラメトリック曲線の曲率やパラメトリック曲線上を安全に走行することのできる速度等の制約条件を満たすようにパラメトリック曲線を最適化してもよい。
【0187】
ステップS130において、CPU81は、ステップS120で生成した局所経路に沿って遵守車両7Aを移動させるための制御内容に従い、例えばハンドル、アクセル、ブレーキといった遵守車両7Aの走行を制御する走行装置の操作量を制御し、計画した局所経路通りに遵守車両7Aを走行させる。
【0188】
以上により、
図19に示す遵守車両7Aの走行制御処理を終了する。
【0189】
次に、移動体検出装置9の機能について説明する。
【0190】
図20は、撮像センサ9Aで画像50を撮像した場合に、移動体検出装置9のCPU41によって実行される移動体検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0191】
移動体検出処理を規定する移動体検出プログラムは、例えば移動体検出装置9のROM42に予め記憶されている。移動体検出装置9のCPU41は、ROM42に記憶される移動体検出プログラムを読み込み、移動体検出処理を実行する。
【0192】
まず、ステップS300において、CPU41は、例えば公知の移動体検出手法を用いて画像50に車両7が含まれるか否かを判定する。
【0193】
画像50に車両7が含まれていれば、CPU41は、画像50の撮像間隔、及び時間的に隣り合う画像50に含まれる車両7の位置の変化量に基づき、車両7の位置及び速度を含む移動体情報を指定された精度で検出する。
【0194】
移動体情報の検出精度は、例えば撮像センサ9Aで撮像する画像50の解像度や撮像間隔を調整することで制御可能である。画像50の解像度を高くしたり、画像50の撮像間隔を短くしたりするほど、車両7の位置及び速度を詳細に検出することができるため、移動体情報の検出精度は高くなる。
【0195】
また、画像50から車両7の移動体情報を検出する場合に、車両7の状態を表す微分方程式の解を求める等、演算を繰り返し行って方程式の解を収束させる繰り返し処理が必要になることがあるが、繰り返し処理における演算の繰り返し回数を調整することによっても、移動体情報の検出精度を制御することができる。演算の繰り返し回数を多くするほど、移動体情報の真値と画像50から検出した移動体情報との誤差が少なくなり、移動体情報の検出精度は高くなる。
【0196】
CPU41は、指定された検出精度に対応した検出設定、すなわち指定された検出精度を実現する画像50の解像度、撮像間隔、及び移動体情報の検出に係る演算の繰り返し回数等の組み合わせを規定する予め設定された検出設定を参照して、画像50の解像度、撮像間隔、及び演算の繰り返し回数等を検出設定で指定された値に調整することで移動体情報の検出精度を制御する。
【0197】
こうして画像50から検出した車両7の位置は画像座標系上での位置であるため、ステップS310において、CPU41は、画像座標系における車両7の位置を、地図座標系上の位置に座標変換する。
【0198】
その後、CPU41は、座標変換後の地図座標系上の車両7が非コネクテッド車両7Dであるか否かを判定する。そのため、CPU41は、管制装置10から遵守車両7Aの移動体情報Aに含まれる位置情報を収集する。
【0199】
CPU41は、車両7の位置と、管制装置10から受信した遵守車両7Aの位置情報で表される位置が、同じ車両7であると認められる車両一致判定範囲以内にある場合、車両7は遵守車両7Aであると判定する。すなわちCPU41は、車両7の位置と、管制装置10から受信した遵守車両7Aの位置情報で表される位置との距離が車両一致判定範囲を超えている場合に、車両7が非コネクテッド車両7Dであると判定する。
【0200】
ステップS320において、CPU41は、管制走行ルート地
図17から取得した車線8の走路情報、及び管制走行ルート地
図17上における非コネクテッド車両7Dの位置及び速度から、画像50が検出された非コネクテッド車両7Dの走行経路を予測する。
【0201】
図10に示したように、管制走行ルート地
図17において経路6が2つに分岐している場合、非コネクテッド車両7Dは分岐点で何れの方向に分岐するか不明であるため、CPU41は、分岐する両方の経路6を車両Pの走行経路として予測する。しかしながら、例えば分岐点の手前の地点で非コネクテッド車両7Dの速度が減速した場合、分岐点を直進するよりも折れ曲がる蓋然性が高いことから、CPU41は、折れ曲がる方向に進む経路6だけを非コネクテッド車両7Dの走行経路として予測してもよい。
【0202】
ステップS330において、CPU41は、ステップS320で予測した走行経路上における経由点4毎の非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを予測する。具体的には、CPU41は、管制走行ルート地
図17上における非コネクテッド車両7Dの現在位置、非コネクテッド車両7Dの速度、並びに、予測した走行経路上における非コネクテッド車両7Dの速度や走行位置を規制する最大加減速度、制限速度、車線数、及び交通規則情報といった走路情報を用いて、走行経路上における経由点4毎の非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを予測する。
【0203】
なお、CPU41は、走行経路上における経由点4毎の非コネクテッド車両7Dの干渉時間tではなく、走行経路上における経由点4毎に、非コネクテッド車両7Dが経由点4に存在する確率を予測してもよい。
【0204】
ステップS340において、CPU41は通信ユニット9Jを通じて、ステップS320で予測した非コネクテッド車両7Dの走行経路、及び非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを管制装置10に送信する。
【0205】
これにより、既に
図15で説明したように,管制装置10で遵守車両7Aと移動体検出装置9で検出された非コネクテッド車両7Dとの干渉地点Xが特定され、管制装置10から移動体検出装置9に非コネクテッド車両7Dの干渉地点Xが送信される。
【0206】
管制装置10から干渉地点Xを受信すると、ステップS350において、CPU41は、管制装置10から受信した干渉地点Xに基づいて、非コネクテッド車両7Dの走行経路を表す各々の経由点4のうち、何れかの経由点4を判定地点Yとして設定する。
【0207】
CPU41は、干渉地点Xを判定地点Yに設定してもよく、干渉地点Xから予め定めた範囲内(「干渉地点Xの近傍」という)にある走行経路上の経由点4を判定地点Yに設定してもよい。例えばCPU41は、非コネクテッド車両7Dの現在位置から見て干渉地点Xの手前にある走行経路上の経由点4を判定地点Yに設定してもよい。
【0208】
ステップS360において、CPU41は、判定地点Yにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tと、基準時間Tを比較することで非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する。「基準時間T」とは、接近度の程度を表すための基準となる時間である。
【0209】
図21は、判定地点Yに対する非コネクテッド車両7Dの接近度の評価例を示す図である。
【0210】
図21(A)に示すように、CPU41は判定地点Yの干渉時間tに基づき、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yを最も早く通過する場合の時間を表す干渉時間tの開始時間t
beginと現在時刻t
0との差が基準時間Tを超える場合、非コネクテッド車両7Dは判定地点Yに接近していないと評価する。その上で、干渉時間tの開始時間t
beginと現在時刻t
0との差が基準時間Tの場合にCPU41が設定する接近度を「基準接近度」とすれば、CPU41は、この場合の接近度を開始時間t
beginと現在時刻t
0との差が大きくなるにつれて基準接近度より低く設定する。
【0211】
また、
図21(B)に示すように、CPU41は判定地点Yの干渉時間tに基づき、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yを最も早く通過する場合の干渉時間tの開始時間t
beginと現在時刻t
0との差が基準時間T未満しかない場合、非コネクテッド車両7Dは判定地点Yに接近していると評価し、この場合の接近度を開始時間t
beginと現在時刻t
0との差が小さくなるにつれて基準接近度より高く設定する。
【0212】
ステップS360で非コネクテッド車両7Dが判定地点Yに接近していると評価した場合、非コネクテッド車両7Dが遵守車両7Aと干渉する可能性のある判定地点Yを安全に走行するためには、判定地点Yにおける干渉時間tを可能な範囲で精度よく予測する必要がある。そのためには、非コネクテッド車両7Dの位置及び速度を含む移動体情報Dを可能な範囲で精度よく予測する必要がある。
【0213】
一方、ステップS360で非コネクテッド車両7Dは判定地点Yに接近していないと評価した場合、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yを通過するまでに余裕があり、非コネクテッド車両7Dが走行経路を安全に走行する上で差し迫った危険はない。したがって、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yに接近している場合よりも、判定地点Yにおける干渉時間tの予測精度は低くて構わない。
【0214】
したがって、ステップS370において、CPU41は、接近度の値に比例した信頼度目標を設定する。
【0215】
既に説明したように、信頼度目標は画像50から検出する移動体情報Dの検出精度の度合いを表し、信頼度目標が大きい値に設定されるほど、画像50から検出する移動体情報Dの検出精度が高くなる。
【0216】
具体的には、CPU41は、画像50から検出する移動体情報Dの検出精度が、設定した信頼度目標に対応する検出精度となるように、検出設定を参照して画像50の解像度、撮像間隔、及び移動体情報Dの検出に係る演算の繰り返し回数等を信頼度目標に対応した値に調整することで移動体情報Dの検出精度を制御する。
【0217】
したがって、接近度が基準接近度より大きい値に設定されている場合には、接近度が基準接近度の場合に設定される信頼度目標(「基準信頼度目標」という)で画像50から非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを検出する場合よりも画像50の解像度が高くなると共に、撮像間隔が短くなり、移動体情報Dの検出に係る演算の繰り返し回数も多くなる。これに伴い、CPU41や撮像センサ9Aの負荷が増加し、CPU41や撮像センサ9Aの消費電力も増加することになるが、非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度は高くなる。
【0218】
なお、撮像センサ9Aの単位時間あたりの負荷は、画像50の解像度が高くなるほど高くなり、撮像間隔が短くなるほど高くなる。CPU41の単位時間あたりの負荷も、画像50の解像度が高くなるほど高くなり、撮像間隔が短くなるほど高くなる。また、CPU41の演算量が多くなるほど高くなる。
【0219】
一方、接近度が基準接近度より小さい値に設定されている場合には、基準検出精度で画像50から非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを検出する場合よりも画像50の解像度が低くなると共に、撮像間隔が長くなり、移動体情報Dの検出に係る演算の繰り返し回数も少なくなる。これに伴い、CPU41や撮像センサ9Aの負荷が減少し、CPU41や撮像センサ9Aの消費電力も低減することになるが、非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度は低くなる。
【0220】
CPU41が非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度に関して上記のような制御を行うことで、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yを通過するまで基準時間T以上ある場合や、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yを通過した後は、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yに接近している状態よりもCPU41や撮像センサ9Aの負荷が減少する。したがって、移動体検出装置9における最高の検出精度で画像50から非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを検出し続ける場合と比較して、移動体検出装置9の消費電力を低減することができる。しかも、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yに接近するほど、画像50から検出する非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度が高くなるため、移動体検出装置9における最高の検出精度で画像50から非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを検出し続ける場合と比較しても、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yに接近した状況で画像50から検出した移動体情報Dの信頼度は低下することがない。
【0221】
なお、非コネクテッド車両7Dが撮像センサ9Aの撮像範囲外まで走行して画像50から非コネクテッド車両7Dが検出されなくなった場合には、再び画像50に非コネクテッド車両7Dが含まれるようになるまで画像50から非コネクテッド車両7Dを検出する必要がない。したがって、CPU41は、画像50から検出する非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度が設定可能な範囲で最低の検出精度となるように信頼度目標を設定すればよい。
【0222】
また、CPU41は、画像50の解像度、撮像間隔、及び移動体情報Dの検出に係る演算の繰り返し回数等を制御するのに加え、管制装置10に画像50から検出した非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを送信する間隔を制御して、管制装置10との通信負荷を低減することで、移動体検出装置9の消費電力を低減してもよい。
【0223】
以上により、
図20に示した移動体検出処理を終了する。
【0224】
<管制システムの変形例1>
上記では、判定地点Yにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tと、基準時間Tを比較することで非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する管制システム1について説明したが、判定地点Yに対する非コネクテッド車両7Dの接近度の評価方法はこれに限られない。ここでは、判定地点Yにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tと、判定地点Yにおける非コネクテッド車両7Dと異なる他の車両7(例えば遵守車両7A)の干渉時間tから非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する例について説明する。
【0225】
図22は、管制システム1の変形例1に係る移動体検出装置9及び管制装置10の機能構成例を示す図である。
【0226】
図22に示す管制システム1の機能構成例が
図4に示した管制システム1の機能構成例と異なる点は、管制装置10の仮想交通ルール生成部16から遵守車両7Aの走行経路上における経由点4毎の干渉時間tが移動体検出装置9の接近度評価部9Gに送信されている点である。
【0227】
なお、管制装置10のCPU31は、
図15に示した管制処理のステップS30において、特定した干渉地点Xを遵守車両7Aの大域経路と共に移動体検出装置9に送信するものとする。また、管制装置10のCPU31は、
図15に示した管制処理のステップS40において、干渉地点Xの干渉時間tだけでなく遵守車両7Aの大域経路上における経由点4毎の通過時間を干渉時間tとして移動体検出装置9に送信するものとする。
【0228】
これに対して、移動体検出装置9のCPU41は、
図20に示した移動体検出処理のステップS350で判定地点Yを設定した後、ステップS360において、判定地点Yにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tと、判定地点Yにおける遵守車両7Aの干渉時間tを比較することで、非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する。
【0229】
図23は、判定地点Yにおける車両Pと車両Qの干渉状況を説明する図である。説明の便宜上、
図23の車両Pを非コネクテッド車両7Dとし、車両Qを遵守車両7Aとする。
【0230】
図23(A)に示すように、判定地点Yにおける車両Pの干渉時間tと車両Qの干渉時間tが離れており、車両Pが判定地点Yを車両Qより先に通過することが明らかな場合、又は、車両Pが判定地点Yを車両Qより後に通過することが明らかな場合には、CPU41は、非コネクテッド車両7Dの接近度を低く設定する。
【0231】
また、
図23(B)に示すように判定地点Yにおける車両Pの干渉時間tと車両Qの干渉時間tが接近しており、車両Pと車両Qが判定地点Yで干渉する恐れがある場合には、CPU41は、非コネクテッド車両7Dの接近度を高く設定する。
【0232】
図24は、非コネクテッド車両7Dの接近度の設定例を具体的に示した図であり、
図24(A)が
図23(A)に示した判定地点Yにおける車両Pと車両Qの干渉時間tの時間的なずれを表し、
図24(B)が
図23(B)に示した判定地点Yにおける車両Pと車両Qの干渉時間tの時間的なずれを表している。
【0233】
図24(A)に示すように、CPU41は、判定地点Yにおける車両Pの干渉時間tと車両Qの干渉時間tが重複していない場合に、非コネクテッド車両7Dは判定地点Yに接近していないと評価する。この場合、CPU41は、車両Pの干渉時間tと車両Qの干渉時間tが離れるほど接近度を基準接近度より低く設定する。
【0234】
一方、
図24(B)に示すように、CPU41は、判定地点Yにおける車両Pの干渉時間tと車両Qの干渉時間tが重複している場合に、非コネクテッド車両7Dは判定地点Yに接近していると評価する。この場合、CPU41は、車両Pの干渉時間tと車両Qの干渉時間tの重複範囲が広くなるほど接近度を基準接近度より高く設定する。
【0235】
このように判定地点Yに対する非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する本変形例1に係る管制システム1によれば、非コネクテッド車両7Dの判定地点Yに対する干渉時間tの開始時間tbeginと現在時刻t0との差が基準時間T未満になったとしても、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yで他の車両7と干渉する恐れがない場合には、接近度が基準接近度未満に設定される。
【0236】
したがって、本変形例1に係る管制システム1は、判定地点Yにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tと、基準時間Tを比較することで非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する場合に比べて、更に移動体検出装置9の消費電力を低減することができる。しかも、非コネクテッド車両7Dが判定地点Yで他の車両7と干渉する恐れがある場合には、非コネクテッド車両7Dの接近度が基準接近度より高く設定されるため、画像50から検出する移動体情報Dの信頼度は確保される。
【0237】
<管制システムの変形例2>
管制走行ルート地
図17で表される経路6上の各経由点4において、各々の経由点4に対応した場所を撮像する撮像センサ9Aにおける画素の解像度の違いにより、画像50から検出される非コネクテッド車両7Dの位置や速度といった移動体情報Dにどの程度の誤差が発生するかという誤差情報は、移動体検出装置9を用いて車両7同士が干渉しないように交通管制を行う管制装置10が交通管制を行う上で考慮しなければならない情報である。
【0238】
こうした誤差情報は、非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度に影響を与えることから、移動体情報Dの信頼度を表す一例でもある。
【0239】
ここでは、経路6上の経由点4毎に移動体情報Dが有する誤差情報、すなわち信頼度が付与された管制走行ルート地
図17(以降、「信頼度付き管制走行ルート地
図17A」という)を用いて予測した非コネクテッド車両7Dの走行経路上における経由点4毎の干渉時間tから非コネクテッド車両7Dの接近度を評価する例について説明する。
【0240】
まず、管制走行ルート地
図17の経由点4に付加される信頼度の生成方法について説明する。
【0241】
図25は、管制走行ルート地
図17の経由点4に付加される信頼度を生成する信頼度生成装置60の機能構成例を示す図である。
【0242】
図25に示すように、信頼度生成装置60は、物体検出部62、誤差推定部64、解像度算出部65、座標逆変換部67、及び信頼度算出部68の各機能部と、撮像センサ9A、撮像画像DB61、正解座標DB63、管制走行ルート地
図17、及び信頼度DB69を含む。
【0243】
このうち撮像センサ9A、撮像画像DB61、物体検出部62、正解座標DB63、管制走行ルート地
図17、及び信頼度DB69は必ずしも信頼度生成装置60に含まれる必要はなく、外部の装置に備えられているものを利用してもよい。また「DB」はデータベース(Database)の略語である。撮像センサ9Aは、管制システム1で用いられる設置済みの移動体検出装置9の撮像センサ9Aを用いることが好ましいが、移動体検出装置9と異なる別の装置の撮像センサ9Aを用いてもよい。ここでは一例として、管制システム1で用いられる設置済みの移動体検出装置9の撮像センサ9Aを用いるものとする。
【0244】
撮像センサ9Aで車線8を走行する1台の車両7を撮像した後、撮像センサ9Aで撮像された画像50が撮像画像DB61に記憶される。
【0245】
物体検出部62は撮像画像DB61から1つの画像50を取得し、移動体検出装置9の移動体検出部9Bと同様に公知の移動体検出手法を用いて、取得した画像50から車両7を検出する。
【0246】
誤差推定部64は、物体検出部62で画像50から検出された車両7の位置と、画像50における車両7の正解位置情報を用いて、物体検出部62で検出された画像50上における車両7の位置の検出誤差を推定する。
【0247】
車両7を撮像した撮像センサ9Aにおける画素の解像度の違いにより、画像50から得られる車両7の見かけ上の位置と実際の位置に対応した画像50上の位置の間には誤差が生じる。したがって、誤差推定部64は、画像50から検出した位置に車両7がいる場合に、画素の解像度の違いがなければ実際には画像50上のどの位置に車両7が表示されるかといった車両7の実際の位置情報を用いて、物体検出部62で検出された画像50上における車両7の位置の検出誤差を推定する。車両7の位置に対応した画像50内での実際の位置情報が正解位置情報であり、正解位置情報は車両7の位置毎に予め作成されて正解座標DB63に記憶されている。
【0248】
図26は、車両7の位置の検出誤差例を示す図である。
図26(A)は、画像50から検出した車両7の位置を枠55で表した図である。
図26(B)は、画像50から検出した車両7の位置に対応した正解位置情報を示す図であり、枠55Aが
図26(A)の画像50から検出した車両7の正解位置を示している。
【0249】
したがって、
図26(C)に示すように、誤差推定部64は画像50から検出した車両7の位置と、正解位置情報で表される車両7の正解位置を比較し、その差分を画像50から検出した車両7の位置の検出誤差とする。画像50における車両7の位置の検出誤差は、画像50から検出した車両7の位置と正解位置との差分に対応した画素数によって表される。
【0250】
一方、解像度算出部65は、解像度を撮像センサ9Aの画素毎に算出する。そのため、解像度算出部65は、撮像センサ9Aの撮像範囲に含まれる経路6上の各経由点4における位置情報を管制走行ルート地
図17から取得し、地図座標系で表される各経由点4の位置情報を座標逆変換部67に通知する。
【0251】
座標逆変換部67は、地図座標系で表された位置を画像座標系で表される位置に変換する機能部であり、これにより、管制走行ルート地
図17から取得した経路6上の各経由点4の位置が、画像50内の位置に変換される。本実施の形態では、地図座標系で表された位置を画像座標系で表される位置に変換することを「逆変換」という。
【0252】
図27は座標の逆変換例を示した図である。
図27(A)は、地図座標系で表される経路6上の経由点4の例を示す図である。
図27(B)は、
図27(A)における経路6上の経由点4が存在する範囲の画像50を移動体検出装置9で撮像した場合に、経路6上の各経由点4が画像50内のどの位置に表示されるのかを表す画像50の例である。
【0253】
解像度算出部65は、座標逆変換部67から画像50上における経由点4の位置情報を受け付けると、経由点4の撮像を担う撮像センサ9Aの画素の解像度(以降、「経由点4の解像度」ともいう)を経由点4毎に算出する。これにより、管制走行ルート地
図17上の経路6に対応する画素の解像度が得られる。
【0254】
具体的には、経由点4の解像度を算出するためには地図座標系で表された管制走行ルート地
図17上の位置と、画像座標系で表された画像50上の位置の写像関係を定義する必要がある。この写像関係は、撮像センサ9Aにおける内部パラメータと外部パラメータから計算することが可能である。また、移動体検出装置9の撮像範囲内にマークを置いて移動体検出装置9でマークを撮像し、実空間でのマークの位置、すなわち、地図座標系でのマークの位置と、画像50内でのマークの位置、すなわち、画像座標系でのマークの位置を記録し、この対応付けから地図座標系と画像座標系の写像関係を定義してもよい。
【0255】
解像度算出部65は予め定義された地図座標系と画像座標系の写像関係を参照して、それぞれ地図座標系で表される車両7が位置する経由点4(特定経由点4)の位置と、経路6に沿って特定経由点4と隣接する隣接経由点4の位置を、画像座標系で表される画像50内の位置に逆変換する。その上で解像度算出部65は、地図座標系における特定経由点4と隣接経由点4の経由点間距離を管制走行ルート地
図17の情報を用いて算出し、経由点間距離を画像50内における特定経由点4と隣接経由点4に対応した各々の画素間の距離で除すことで特定経由点4の解像度を算出する。なお、画像50内の画素間の距離は、例えば各々の画素を結ぶ直線と接触する画素数で表される。
【0256】
車両7は経路6に沿って移動することから、経路6上における各経由点4の解像度を算出すれば十分であるが、画像50に含まれる各画素の解像度を算出することもできる。例えば解像度算出部65は、解像度の算出対象である画素(特定画素)と、特定画素に隣接する隣接画素が表す画像座標系上の位置を、地図座標系と画像座標系の写像関係を参照してそれぞれ地図座標系上の地点に変換し、地図座標系における特定画素に対応した地点と隣接画素に対応した地点の距離を算出すれば、この距離が特定画素の解像度となる。したがって、解像度算出部65は、画像50内の各々の画素について上記の演算を繰り返すことで、画像50内のすべての画素の解像度を算出することができる。
【0257】
信頼度算出部68は、誤差推定部64で推定された、画像50から検出した車両7の位置の検出誤差と、解像度算出部65で算出された、画像50内における各経由点4の解像度を用いて、画像50から検出された車両7の位置に最も近い画像50上の経由点4、すなわち画像50から検出された車両7の位置に対応した経由点4を特定する。信頼度算出部68は、画像50から検出した車両7の位置の検出誤差に、当該車両7の位置に対応した経由点4の解像度を乗じることで、経由点4における車両7の位置の検出誤差を具体的な距離で表す。
【0258】
一方で、時系列に沿って撮像センサ9Aで撮像された時間的に隣接する画像50に対して、例えばオプティカルフローを適用することで画像50から車両7の速度が算出される。
【0259】
図28はオプティカルフローを用いて画像50から車両7の速度を算出する例について説明した図である。
【0260】
時系列に沿って撮像された時間的に隣接する
図28(A)に示す画像50と
図28(B)に示す画像50が存在する場合、一方の画像50に表示されている同じ車両7が、他方の画像50ではどの位置に移動しているのかといった車両7の位置の対応付けを画素単位で行い、各々の画像50の間で画素毎の対応関係を求める(
図28(C))。画素毎の対応関係から得られる車両7を表す画素の移動量の平均と画像50の撮像間隔から、車両7の速度を算出することができる。
【0261】
しかしながら、車両7に画素分解能未満の移動量があったとしても、画像50からこの移動量を検出することができないため、算出した車両7の速度には誤差が含まれる。具体的には、画像50の撮像間隔を“Tint”とした場合、車両7を表す画素の移動量の最大誤差は1/Tint[画素/秒]となる。
【0262】
したがって、信頼度算出部68は、画像50内における車両7の位置に対応した経由点4の解像度に画素の移動量の最大誤差を乗じることで、画像50から検出された車両7の位置に対応した経由点4における速度の検出誤差を算出する。
【0263】
信頼度算出部68は、車両7の位置に対応した経由点4に、信頼度算出部68で算出した車両7の位置の検出誤差と車両7の速度の検出誤差を含む信頼度を対応付けて信頼度DB69に記憶する。信頼度付き管制走行ルート地
図17Aの各経由点4には、信頼度DB69に記憶された各経由点4に対応する信頼度が付加される。
【0264】
ここでは一例として、管制走行ルート地
図17上の1つの経由点4に信頼度を対応付ける方法について説明したが、走行する車両7を繰り返し撮像センサ9Aで撮像することで、車両7の位置が異なる複数の画像50が得られる。したがって、各々の画像50における車両7の位置に対応した経由点4に信頼度生成装置60で算出した信頼度を付加することで、1台の移動体検出装置9で撮像された画像50に含まれる経路6上のすべての経由点4に信頼度が付加される。また、管制システム1に含まれるすべての移動体検出装置9の撮像センサ9Aで撮像した画像50に対して信頼度生成装置60で経由点4の信頼度を算出すれば、管制走行ルート地
図17に含まれるすべての経路6の経由点4に信頼度が付加される。
【0265】
移動体検出装置9は、このようにして生成された信頼度付き管制走行ルート地
図17Aを参照し、非コネクテッド車両7Dの走行経路上における経由点4毎の信頼度を反映した車両7の位置及び速度を用いて、走行経路上における経由点4毎に非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを予測してもよい。
【0266】
図29は、信頼度付き管制走行ルート地
図17Aを用いる移動体検出装置9及び管制装置10の機能構成例を示す図である。
【0267】
図29に示す管制システム1の機能構成例が
図22に示した管制システム1の機能構成例と異なる点は、管制走行ルート地
図17が信頼度付き管制走行ルート地
図17Aに置き換えられ、移動体検出装置9に信頼度補正部9Kが追加された点である。
【0268】
信頼度付き管制走行ルート地
図17Aの各経由点4に付与されている信頼度は、画像50から検出される車両7の位置及び速度の検出誤差を可能な範囲で正確に表している。したがって、本実施形態に係る移動体検出装置9のように、信頼度目標に応じて画像50から検出する非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dの検出精度を制御する場合には、信頼度付き管制走行ルート地
図17Aから取得した信頼度をそのまま利用すると、検出した移動体情報Dの検出精度が信頼度目標に対応した検出精度を超えてしまうことがある。
【0269】
したがって、本変形例2に係る移動体検出装置9には、信頼度付き管制走行ルート地
図17Aの各経由点4に付与されている信頼度を信頼度目標に応じて補正する信頼度補正部9Kが追加されている。
【0270】
信頼度補正部9Kは、走路情報取得部9Dを通じて信頼度付き管制走行ルート地
図17Aから経路6を構成する各経由点4に付与された信頼度を取得すると共に、信頼度制御部9Hから信頼度目標を取得し、信頼度目標に応じて各経由点4に付与された信頼度を補正する。その上で、信頼度補正部9Kは、補正した信頼度(「補正信頼度」という)を走行経路予測部9Eに通知する。
【0271】
例えば、信頼度制御部9Hから取得した信頼度目標が信頼度目標の最大値の1/2である場合、信頼度補正部9Kは、各経由点4に付与された信頼度を1/2にすればよい。各経由点4に付与された信頼度を1/2にするということは、各経由点4における位置及び速度の検出誤差を2倍にすることである。また、各経由点4に付与された信頼度と、信頼度目標を比較し、小さい方の値を補正信頼度としてもよい。
【0272】
走行経路予測部9Eは、補正信頼度を反映した非コネクテッド車両7Dの位置及び速度を用いて、走行経路を表す経由点4毎に非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを予測する。なお、補正信頼度を反映した非コネクテッド車両7Dの位置及び速度とは、補正信頼度によって表される検出誤差を考慮した、各経由点4における非コネクテッド車両7Dの位置及び速度のことである。
【0273】
このように本変形例2に係る管制システム1によれば、経由点4毎に異なる信頼度を用いて非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを予測することができるため、移動体検出装置9は、信頼度が付与されていない管制走行ルート地
図17を用いて干渉時間を予測する場合と比較して、判定地点Yにおける非コネクテッド車両7Dの干渉時間tを正確に予測することができる。その結果、移動体検出装置9は、信頼度が付与されていない管制走行ルート地
図17を用いて干渉時間を予測する場合と比較して、信頼度目標を高く設定する時間を短くすることができる場合があるため、移動体検出装置9の消費電力を更に低減することができる。
【0274】
以上、本実施形態に係る管制システム1について説明したが、移動体検出装置9は経路6に沿って複数設置されることから、商用電源で移動体検出装置9を動作させた場合、各々の移動体検出装置9の合計消費電力量は経済的に無視できない値となる。したがって、移動体検出装置9は光、音、振動、空気の流れ、圧力、及び熱の少なくとも1つの再生エネルギーを利用して、自装置で消費する電力以上の電力を発電する動力生成部9Lを備えるようにしてもよい。
【0275】
図30は、
図4に示した管制システム1の移動体検出装置9に動力生成部9Lを追加した図である。
【0276】
移動体検出装置9が動力生成部9Lを備えることによって、移動体検出装置9は商用電源を用いることなく動作することが可能となる。しかしながら、再生エネルギーを利用して発電される電力は、商用電源から得られる電力に比べて小さい。したがって、移動体検出装置9が動力生成部9Lで発電した電力を消費して動作する場合、移動体検出装置9における消費電力の低減を検討する必要がある。
【0277】
これに対して、上記に説明した移動体検出装置9を用いれば、移動体検出装置9における最高の検出精度で画像50から非コネクテッド車両7Dの移動体情報Dを検出し続ける場合と比較して、移動体検出装置9の消費電力を低減することができる。したがって、動力生成部9Lで発電される電力の範囲内で動作可能な移動体検出装置9を提供することも可能である。
【0278】
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。
【0279】
実施の形態では、一例として管制装置10における管制処理、遵守車両7Aにおける走行制御処理、及び移動体検出装置9における移動体検出処理をソフトウェアで実現する形態について説明したが、
図15、
図19、及び
図20に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、各々の処理をソフトウェアで実現した場合と比較して、処理の高速化が図られる。
【0280】
このように、管制装置10のCPU31、移動体検出装置9のCPU41、及び遵守車両7Aの制御装置20におけるCPU81を例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
【0281】
また、上述した実施の形態では、管制プログラム、移動体検出プログラム、及び制御プログラムがそれぞれROM32、ROM42、及びROM82にインストールされている形態について説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る管制プログラム、移動体検出プログラム、及び制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば管制プログラム、移動体検出プログラム、及び制御プログラムをCD(Compact Disc)またはDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、管制プログラム、移動体検出プログラム、及び制御プログラムをUSBメモリやメモリカード等の可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。
【0282】
更に、管制装置10、移動体検出装置9、及び遵守車両7Aの制御装置20は、通信網5に接続される外部装置からそれぞれ管制プログラム、移動体検出プログラム、及び制御プログラムをダウンロードするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0283】
1 管制システム、3 無線通信装置、4(4A、4B) 経由点(特定経由点、隣接経由点)、5 通信網、6(6P、6Q) 経路、7 車両、7A 遵守車両、7D 非コネクテッド車両、8 車線、8A 優先車線、8B 非優先車線、9 移動体検出装置、9A 撮像センサ、9B 移動体検出部、9C 座標変換部、9D 走路情報取得部、9E 走行経路予測部、9F 判定地点設定部、9G 接近度評価部、9H 信頼度制御部、9K 信頼度補正部、9L 動力生成部、10 管制装置、11 目的地設定部、12 通信部、13 大域経路計画部、15 干渉地点特定部、16 仮想交通ルール生成部、17 管制走行ルート地図、17A 信頼度付き管制走行ルート地図、20 制御装置、21 位置推定部、22 状態管理部、23 無線通信部、24 局所経路計画部、25 制御部、26 車両走行ルート地図、30(40、80) コンピュータ、31(41、81) CPU、32(42、82) ROM、33(43、83) RAM、34(44、84) 不揮発性メモリ、35(45、85) I/O、36(46、86) バス、37(87、9J) 通信ユニット、38(88) 入力ユニット、39(89) 表示ユニット、50 画像、55(55A、55P、55Q) 枠、60 信頼度生成装置、61 撮像画像DB、62 物体検出部、63 正解座標DB、64 誤差推定部、65 解像度算出部、67 座標逆変換部、68 信頼度算出部、69 信頼度DB、90 内界センサ、91 外界センサ、92 走行装置、P(Q) 車両、T 基準時間、X 干渉地点、Y 判定地点、t 干渉時間