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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車両のシャッタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240305BHJP
   B60R 19/52 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60K11/04 J
B60R19/52 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020195808
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2021147031
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020044168
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 康太
(72)【発明者】
【氏名】前田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 拓也
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/021963(WO,A1)
【文献】特開2015-217825(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017105568(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(C)のグリル開口部(2)から導入される空気が流れる熱交換器(5)に対向するように配置され、前記熱交換器における空気の流れ状態を変化させることが可能な車両のシャッタ装置であって、
枠状に形成されるとともに、前記グリル開口部から導入される空気が枠内の空間を流れるフレーム(20)と、
前記フレームの枠内の空間に配置されるとともに、前記フレームにより回転可能に支持され、回転動作により前記フレームの枠内の空間を開閉する複数のブレード(32)と、
複数のブレードのそれぞれに対して空気流れ方向の下流側に対向するように配置されるストッパ部(24,24a,24b)と、を備え、
前記ブレードは、
前記フレームの枠内の空間を開閉する部分となる平板部(320)と、
前記平板部の中間部分に設けられ、前記ストッパ部に対向するように配置される円柱状の軸部(324)と、を有し、
前記ストッパ部には、複数の前記ブレードのそれぞれの前記軸部が挿入される複数の挿入溝がくし歯状に並べて形成されている
車両のシャッタ装置。
【請求項2】
前記ストッパ部は、複数の前記ブレードのそれぞれと接触しないように配置されている
請求項1に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項3】
前記ストッパ部は、複数の前記ブレードのそれぞれと接触するように配置されている
請求項1に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項4】
前記ストッパ部は、複数の前記ブレードのそれぞれの中央部分に対して空気流れ方向の下流側に対向するように配置されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項5】
前記ストッパ部を複数備える
請求項4に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項6】
前記フレームは、複数の前記ブレードの一端部を支持する第1フレーム片(23)と、複数の前記ブレードの他端部を支持する第2フレーム片(211)と、を有し、
複数の前記ストッパ部は、前記第1フレーム片と前記第2フレーム片との間を等分するように配置されている
請求項5に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項7】
前記ストッパ部は、複数のブレードのそれぞれの端部に対して空気流れ方向の下流側に対向するように配置されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項8】
前記ストッパ部は、前記フレームに一体的に形成されている
請求項1~7のいずれか一項に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項9】
前記ストッパ部は、前記フレームとは別体からなる
請求項1~7のいずれか一項に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項10】
前記ストッパ部は、
複数の前記挿入溝が形成されるストッパ本体部(241)と、
前記ストッパ本体部に一体的に形成されて、前記挿入溝に挿入された前記軸部を抜け止めする抜け止め部(242)と、を有している
請求項1~9のいずれか一項に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項11】
前記抜け止め部は、前記ストッパ本体部から前記軸部の両側部のそれぞれに沿って空気流れ方向の上流側に向かって延びる一対の延伸部(242a,242b)を有し、
一対の前記延伸部は、前記軸部に対して空気流れ方向の上流側に対向する先端部をそれぞれ有しており、
一対の前記延伸部のそれぞれの先端部により、前記挿入溝に挿入された前記軸部が抜け止めされている
請求項10に記載の車両のシャッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、グリル開口部からエンジンルーム内に導入される空気が、エンジン冷却水が流れるラジエータの放熱や、車両用空調装置の凝縮器の放熱に利用されている。このような車両には、グリル開口部からエンジンルームへの空気の流れを一時的に遮断することの可能なシャッタ装置が設けられているものがある。シャッタ装置は、例えばエンジンの冷間始動時にエンジンルームへの空気の流入を一時的に遮断することにより、エンジンの早期の暖機を可能とする。また、シャッタ装置は、例えば車両の高速走行時にエンジンルームへの空気の流入を一時的に遮断することにより、車両の空力性能を向上させる。このようなシャッタ装置としては例えば特許文献1に記載のシャッタ装置がある。
【0003】
特許文献1に記載のシャッタ装置は、回転軸を両端に有する複数のブレードと、各ブレードの回転軸を回転可能に支持するフレームとを有している。各ブレードは、その回転軸を中心に回転することにより開閉動作する。このシャッタ装置では、複数のブレードが開状態であるとき、空気が通過することが可能であり、複数のブレードが閉状態であるとき、フレームを通じた空気の流れが遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-55719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両のエンジンルーム内に設置される機器の増加等の要因により、エンジンルーム内のスペースが縮小しているという事情がある。そのため、車両のシャッタ装置に関しても、その搭載スペースの縮小化が要求されている。この要求を満足するために発明者らはシャッタ装置の薄型化を検討している。
【0006】
一方、車両の洗浄の際に車両に対して前方又は斜め前方から高圧洗浄液が吹きかけられた場合、グリル開口部からエンジンルーム内に入り込んだ高圧洗浄液がシャッタ装置のブレードに衝突することにより、ブレードに外力が加わる可能性がある。また、車両の走行時に発生する走行風がグリル開口部からエンジンルーム内に入り込むことによってもシャッタ装置のブレードに外力が加わる可能性がある。シャッタ装置の薄型化に伴ってブレードの剛性が低下すると、ブレードに加わる外力によりブレードが車両後方に向かって撓み易くなる。ブレードが撓むように変形すると、ブレードにおいてフレームにより支持されている部分がフレームから抜けることにより、フレームからブレードが脱落するおそれがある。
【0007】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フレームからのブレードの脱落を抑制することが可能な車両のシャッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両のシャッタ装置は、車両(C)のグリル開口部(2)から導入される空気が流れる熱交換器(5)に対向するように配置され、熱交換器における空気の流れ状態を変化させることが可能である。シャッタ装置は、フレーム(20)と、複数のブレード(32)と、ストッパ部(24,24a,24b)と、を備える。フレームは、枠状に形成されるとともに、グリル開口部から導入される空気が枠内の空間を流れる。複数のブレードは、フレームの枠内の空間に配置されるとともに、フレームにより回転可能に支持され、回転動作によりフレームの枠内の空間を開閉する。ストッパ部は、複数のブレードのそれぞれに対して空気流れ方向の下流側に対向するように配置される。ブレードは、フレームの枠内の空間を開閉する部分となる平板部(320)と、平板部の中間部分に設けられ、ストッパ部に対向するように配置される円柱状の軸部(324)と、を有する。ストッパ部には、複数のブレードのそれぞれの軸部が挿入される複数の挿入溝がくし歯状に並べて形成されている。
【0009】
この構成によれば、高圧洗浄液の衝突や車両の走行風の衝突によりブレードが空気流れ方向の下流側に向かって変形した場合、ストッパ部にブレードが当たることにより、それ以上のブレードの変形が抑制される。よって、ブレードにおいてフレームにより支持されている部分がフレームから抜け難くなるため、フレームからのブレードの脱落を抑制することができる。
【0010】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の車両のシャッタ装置によれば、フレームからのブレードの脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、車両の概略構成を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態のシャッタ装置の斜視構造を示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態の下側ブレードの側面構造を示す側面図である。
図4図4は、第1実施形態のシャッタ装置における下側ブレードとフレームとの係合部分周辺の断面構造を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態のシャッタ装置におけるリンク部材とシャフトとの接続部分周辺の拡大構造を示す拡大図である。
図6図6は、第1実施形態の上側ブレードの側面構造を示す側面図である。
図7図7は、第1実施形態のストッパ部の斜視構造を示す斜視図である。
図8図8は、第1実施形態のストッパ部において下側ブレードが挿入される部分周辺の斜視構造を示す斜視図である。
図9図9は、第1実施形態のストッパ部において下側ブレードが挿入される部分の断面構造を示す断面図である。
図10図10(A)~(C)は、第1実施形態のシャッタ装置の動作例を示す断面図である。
図11図11は、第1実施形態の第1変形例のストッパ部において下側ブレードが挿入される部分の断面構造を示す断面図である。
図12図12は、第1実施形態の第2変形例のストッパ部において下側ブレードが挿入される部分の断面構造を示す断面図である。
図13図13は、第1実施形態の第2変形例のシャッタ装置における下側ブレード及びストッパ部の断面構造を示す断面図である。
図14図14は、第1実施形態の第3変形例のシャッタ装置の斜視構造を示す斜視図である。
図15図15は、第1実施形態の第3変形例のシャッタ装置における下側ブレード及びストッパ部の断面構造を示す断面図である。
図16図16は、第1実施形態の第4変形例の下側ブレードの軸部及びストッパ部の係合部分の斜視断面構造を示す断面図である。
図17図17は、第1実施形態の第4変形例の下側ブレードの軸部及びストッパ部の係合部分の断面構造を示す断面図である。
図18図18は、第2実施形態のストッパ部において下側ブレードが挿入される部分の斜視断面構造を示す断面図である。
図19図19は、第2実施形態のストッパ部において下側ブレードが挿入される部分の断面構造を示す断面図である。
図20図20は、第2実施形態のシャッタ装置の動作例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、車両のシャッタ装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、第1実施形態のシャッタ装置が搭載される車両の概略構成について説明する。
【0014】
図1に示されるように車両Cのボディ1の前方にはグリル開口部2が設けられている。グリル開口部2は車両ボディ1の前方の空気をエンジンルーム3内に導入するために設けられている。エンジンルーム3には、車両Cのエンジン4の他、コンデンサ5やラジエータ6が配置されている。コンデンサ5は、車両Cに搭載される空調装置の冷凍サイクルの構成要素であって、冷凍サイクル内を循環する冷媒と、グリル開口部2から導入される空気との間で熱交換を行うことにより冷媒の放熱を行う。ラジエータ6は、エンジン4を冷却する冷却水と、グリル開口部2から導入される空気との間で熱交換を行うことにより冷却水の放熱を行う。コンデンサ5及びラジエータ6はグリル開口部2とエンジン4との間に配置されている。コンデンサ5はラジエータ6よりも車両前方に配置されている。本実施形態ではコンデンサ5が熱交換器に相当する。
【0015】
コンデンサ5の車両前方にはシャッタ装置10が対向するように配置されている。シャッタ装置10は、コンデンサ5、ラジエータ6、及びエンジンルーム3における空気の流れ状態を変化させることが可能である。具体的には、シャッタ装置10は、グリル開口部2から導入される空気がコンデンサ5、ラジエータ6、及びエンジンルーム3に流れる開状態と、それらへの空気の流れが遮断されている閉状態とに切り替え可能に構成されている。シャッタ装置10は、例えばエンジン4の冷間始動時に閉状態になることにより、エンジン4の早期の暖機を可能とする。また、シャッタ装置10は、例えば車両Cの高速走行時に開状態になることにより、車両Cの空力性能を向上させる。
【0016】
次に、シャッタ装置10の具体的な構造について説明する。
図2に示されるように、シャッタ装置10は、フレーム20と、複数のブレード30と、アクチュエータ装置40とを備えている。
【0017】
フレーム20は、矩形枠状に形成されたフレーム本体部21と、フレーム本体部21の枠内に十字状に配置される縦フレーム補強部22及び横フレーム補強部23とを有している。
フレーム本体部21は、上側フレーム片210、下側フレーム片211、左側フレーム片212、及び右側フレーム片213を有している。フレーム本体部21の枠内の空間には、図1に示されるグリル開口部2から導入される空気が流れる。
【0018】
以下では、上側フレーム片210及び下側フレーム片211の長手方向をX軸方向とも称し、左側フレーム片212及び右側フレーム片213の長手方向をZ軸方向とも称する。また、Z軸方向の一方向であるZ1方向を「上方」と称し、Z軸方向の他方向であるZ2方向を「下方」と称する。さらに、X軸方向及びZ軸方向の両方に直交する方向をY軸方向とも称する。Y軸方向は、空気の流れ方向にも相当するため、以下では、Y軸方向を「空気流れ方向Y」とも称する。
【0019】
縦フレーム補強部22はフレーム本体部21を補強するために設けられている。横フレーム補強部23はフレーム本体部21を補強し、且つブレード30を保持するために設けられている。縦フレーム補強部22はフレーム本体部21の上側フレーム片210の中間部分と下側フレーム片211の中間部分との間を架け渡すように設けられている。横フレーム補強部23はフレーム本体部21の右側フレーム片213の中間部分と左側フレーム片212の中間部分との間を架け渡すように設けられている。縦フレーム補強部22及び横フレーム補強部23により、フレーム本体部21の枠内の空間が4つの領域に区画されている。
【0020】
複数のブレード30は、フレーム20の枠内の4つの領域にそれぞれ配置されている。フレーム20の枠内の4つの領域において、複数のブレード30は、Z軸方向に長手方向を有するように配置されるとともに、X軸方向に並べて配置されている。以下では、便宜上、図2に示される複数のブレード30のうち、フレーム本体部21の上側フレーム片210と横フレーム補強部23との間に配置されるブレード30を「上側ブレード31」と称し、下側フレーム片211と横フレーム補強部23との間に配置されるブレード30を「下側ブレード32」と称する。
【0021】
図3に示されるように、下側ブレード32は、フレーム20の枠内の空間を開閉する部分となる平板部320と、平板部320の上端部に形成される回転軸321及び動力伝達軸322と、平板部320の下端部に形成される係合部323とを有している。
係合部323には、その底面から上方に延びるように凹状の挿入穴323aが形成されている。図4に示されるように、係合部323の挿入穴323aには、下側フレーム片211に形成される突出部211aが挿入されて係合される。この下側フレーム片211の突出部211aと下側ブレード32の挿入穴323aとからなる係合構造により、下側ブレード32の下端部が下側フレーム片211により回転可能に支持されている。
【0022】
図3に示される回転軸321及び動力伝達軸322は横フレーム補強部23に対向するように配置される。具体的には、回転軸321は横フレーム補強部23に形成される溝に挿入されることにより回転可能に支持される。また、図5に示されるように、横フレーム補強部23にはリンク部材80が組み付けられている。リンク部材80はX軸方向に延びるように形成されている。下側ブレード32の上端部に形成される動力伝達軸322はリンク部材80に連結されている。
【0023】
図6に示されるように、上側ブレード31は下側ブレード32と略同一の構造を有している。すなわち、上側ブレード31は、平板部310と、平板部310の下端部に設けられる回転軸311及び動力伝達軸312と、平板部310の上端部に設けられる係合部313とを有している。係合部313に形成される挿入穴313aと、上側フレーム片210に形成される突出部とが係合することにより、上側ブレード31の上端部が上側フレーム片210により回転可能に支持される。図5に示されるように、上側ブレード31の回転軸311は横フレーム補強部23に形成される溝に挿入されることにより回転可能に支持される。上側ブレード31の動力伝達軸312はリンク部材80に連結されている。
【0024】
図5に示されるように、フレーム本体部21の右側フレーム片213には、横フレーム補強部23との連結部分から上方に延びるようにシャフト70が配置されている。シャフト70の上端部は、図2に示されるアクチュエータ装置40に連結される。なお、図2ではリンク部材80及びシャフト70の図示が省略されている。
【0025】
アクチュエータ装置40は、上側フレーム片210の一端部の上面にねじ等により固定される。アクチュエータ装置40は電力の供給に基づいてシャフト70を回転させる。シャフト70の回転に基づいてリンク部材80が横フレーム補強部23に対してX軸方向に相対変位することにより、リンク部材80から上側ブレード31及び下側ブレード32のそれぞれの動力伝達軸312、322にX軸方向の外力が付与される。これにより上側ブレード31及び下側ブレード32に回転力が付与されて、上側ブレード31及び下側ブレード32が回転動作する。上側ブレード31及び下側ブレード32の回転動作により、フレーム本体部21の枠内の空間が開閉される。
【0026】
具体的には、複数のブレード30が開状態であるとき、各ブレード30の間に隙間が形成されるため、その隙間を通じてグリル開口部2からコンデンサ5、ラジエータ6、及びエンジンルーム3に空気が流れ込むことが可能となる。複数のブレード30が閉状態であるとき、各ブレード30の間の隙間が閉塞されるため、グリル開口部2からコンデンサ5、ラジエータ6、及びエンジンルーム3への空気の流れが遮断される。
【0027】
ところで、本実施形態のシャッタ装置10では、その薄型化に伴い上側ブレード31及び下側ブレード32のそれぞれの板厚が薄くなっているため、各ブレード31、32の剛性が低くなっている。特に、図2に示されるように、上側ブレード31と比較すると下側ブレード32の全長が長くなっているため、下側ブレード32の剛性の低下が顕著である。シャッタ装置10では、例えば車両Cの洗浄の際に高圧洗浄液がグリル開口部2からエンジンルーム3に入り込むことにより、あるいは車両Cの走行時に発生する走行風がグリル開口部2からエンジンルーム3に向かって流れることにより、下側ブレード32に対して空気流れ方向Yの下流側に向かう方向の外力が加わる。この外力により、剛性の低い下側ブレード32が空気流れ方向Yの下流側に向かって変形する可能性がある。具体的には、下側ブレード32は、フレーム20に支持されている両端部を基点として空気流れ方向Yの下流側に向かって湾曲するように変形する可能性がある。このような変形が下側ブレード32に発生すると、図4に示される下側ブレード32の係合部323が下側フレーム片211の突出部211aから抜けることにより、下側ブレード32がフレーム20から脱落するおそれがある。
【0028】
そこで、本実施形態のシャッタ装置10では、図2に示されるようにフレーム20にストッパ部24を形成した上で、このストッパ部24により下側ブレード32を変形し難くすることにより、フレーム20からの下側ブレード32の脱落を抑制している。
次に、フレーム20からの脱落を抑制するための下側ブレード32及びフレーム20の構造について詳しく説明する。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態のフレーム20には、フレーム本体部21の下側フレーム片211と横フレーム補強部23との間の中央部分を横切るようにストッパ部24が設けられている。ストッパ部24は、X軸方向に延びるように形成される棒状の部材からなり、フレーム本体部21の右側フレーム片213の中間部分と縦フレーム補強部22の中間部分との間を架け渡すように、またフレーム本体部21の左側フレーム片212の中間部分と縦フレーム補強部22の中間部分との間を架け渡すように設けられている。図7に示されるように、ストッパ部24には、その長手方向に所定の間隔を有して複数の挿入溝240がくし歯状に形成されている。挿入溝240は、空気流れ方向Yの上流側に向かって開口する半円弧状の凹状溝として形成されている。
【0030】
図3に示されるように、下側ブレード32の平板部310の中央部分には円柱状の軸部324が形成されている。この下側ブレード32がフレーム20に組み付けられると、図8に示されるように下側ブレード32の軸部324がストッパ部24に対向する位置に配置される。下側ブレード32の軸部324は、空気流れ方向Yの上流側における挿入溝240の開口部分から挿入溝240の内部に挿入される。図9に示されるように、ストッパ部24は複数の下側ブレード32の軸部324と接触しないように配置されている。
【0031】
なお、ストッパ部24の挿入溝240の深さを「R」とし、下側ブレード32の軸部324の半径を「r」とし、空気流れ方向Yにおいてストッパ部24の挿入溝240と下側ブレード32の軸部324との間に形成される隙間の長さを「a」とするとき、それらは以下の式f1の関係を満たしている。
【0032】
R≧r+a (f1)
次に、本実施形態のシャッタ装置10の動作例について説明する。
高圧洗浄液が下側ブレード32に衝突したり、あるいは車両Cの走行風が下側ブレード32に衝突したりすることにより下側ブレード32が空気流れ方向Yの下流側に向かって変形したとする。このとき、図10(A)に示されるように、下側ブレード32の軸部324がストッパ部24の挿入溝240の内壁面に接触すると、それ以上の下側ブレード32の変形が抑制される。
【0033】
同様に、空気流れ方向Yの斜め下流側に向かって下側ブレード32が変形した場合であっても、図10(B),(C)に示されるように、下側ブレード32の軸部324がストッパ部24の挿入溝240の内壁面に衝突することにより、それ以上の下側ブレード32の変形が抑制される。
【0034】
図10(A)~(C)に示されるように、下側ブレード32の軸部324がストッパ部24に衝突することで下側ブレード32の変形が抑制されることで、下側ブレード32の係合部323が下側フレーム片211の突出部211aから抜け難くなる。そのためフレーム20からの下側ブレード32の脱落を回避することができる。
【0035】
以上説明した本実施形態のシャッタ装置10によれば、以下の(1)~(7)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)シャッタ装置10は、複数の下側ブレード32のそれぞれに対して空気流れ方向Yの下流側に向かって対向するように配置されるストッパ部24を備えている。この構成によれば、下側ブレード32が空気流れ方向Yの下流側に向かって変形した際にストッパ部24に下側ブレード32が当たることにより下側ブレード32のそれ以上の変形が抑制される。これにより、下側ブレード32において下側フレーム片211により支持されている部分である係合部323が下側フレーム片211の突出部211aから抜け難くなるため、フレーム20からの下側ブレード32の脱落を抑制することができる。
【0036】
(2)図9に示されるように、ストッパ部24は、下側ブレード32が変形していない状態であるときに、複数の下側ブレード32のそれぞれの軸部324と接触しないように配置されている。この構成によれば、下側ブレード32が変形していない状況では下側ブレード32とストッパ部24とが干渉することがないため、より適切に下側ブレード32を回転させることができる。したがって、シャッタ装置10の開閉動作を適切に行うことができる。
【0037】
(3)ストッパ部24は、複数の下側ブレード32のそれぞれの中央部分に対して空気流れ方向Yの下流側に対向するように配置されている。この構成によれば、下側ブレード32において最も変形量が大きくなる部分の変形をストッパ部24により抑制することができるため、より的確に下側ブレード32の変形を抑制することができる。結果的に、より的確にフレーム20からの下側ブレード32の脱落を抑制することができる。
【0038】
(4)ストッパ部24はフレーム20に一体的に形成されている。この構成によれば、ストッパ部24をフレーム20とは別の部材により形成する場合と比較すると、部品点数の増加を回避することができる。
(5)下側ブレード32は、フレーム20の枠内の空間を開閉する部分となる平板部320と、平板部320の中央部分に設けられる円柱状の軸部324とを有する。軸部324はストッパ部24に対向するように配置されている。この構成によれば、仮に下側ブレード32の変形により下側ブレード32の軸部324がストッパ部24に当たった場合であっても、下側ブレード32の軸部324がストッパ部24に対して回転し易い。そのため、下側ブレード32の回転動作を確保し易くなる。
【0039】
(6)ストッパ部24には、下側ブレード32の軸部324が空気流れ方向Yの上流側から挿入可能な挿入溝240が形成されている。この構成によれば、空気流れ方向Yの斜め下流側に向かって下側ブレード32が変形した場合であっても、図10(B),(C)に示されるように下側ブレード32の軸部324がストッパ部24の内壁面に衝突することにより下側ブレード32の変形が抑制される。結果的に、より的確にフレーム20からの下側ブレード32の脱落を抑制することができる。
【0040】
(7)ストッパ部24には、複数の挿入溝240が、くし歯状に並べて配置されている。この構成によれば、複数の下側ブレード32の変形を抑制することが可能なストッパ部24を容易に実現することができる。
(第1変形例)
次に、第1実施形態のシャッタ装置10の第1変形例について説明する。
【0041】
図11に示されるように、本変形例のストッパ部24は、下側ブレード32が変形していない状態であるときに、複数の下側ブレード32のそれぞれの軸部324と接触するように配置されている。この構成によれば、より的確に下側ブレード32の変形を抑制することができるため、フレーム20からの下側ブレード32の脱落を一層抑制することができる。
【0042】
(第2変形例)
次に、第1実施形態のシャッタ装置10の第2変形例について説明する。
ストッパ部24に形成される挿入溝240の形状は適宜変更可能である。例えば図12に示されるように、挿入溝240はU字状に形成されていてもよい。なお、本変形例では、図13に示されるように、Z軸方向における横フレーム補強部23とストッパ部24との間の長さを「L11」とし、ストッパ部24と下側フレーム片211との間の長さを「L12」とするとき、各長さL11,L12が等しくなる位置にストッパ部24が配置されている。
【0043】
(第3変形例)
次に、第1実施形態のシャッタ装置10の第3変形例について説明する。
図14に示されるように、本変形例のフレーム20には2つのストッパ部24a,24bが設けられている。各ストッパ部24a,24bは第1変形例のストッパ部24と同様の構造を有している。ストッパ部24a,24bは、フレーム本体部21の下側フレーム片211と横フレーム補強部23との間においてZ軸方向に等間隔で並ぶように配置されている。
【0044】
具体的には、図15に示されるように、Z軸方向における横フレーム補強部23とストッパ部24aとの間の長さを「L21」とし、各ストッパ部24a,24bの間の長さを「L22」とし、ストッパ部24bと下側フレーム片211との間の長さを「L23」とするとき、各長さL21~L23が等しくなる位置にストッパ部24a,24bが配置されている。すなわち、ストッパ部24a,24bは横フレーム補強部23と下側フレーム片211との間を等分するように配置されている。本変形例では、横フレーム補強部23が第1フレーム片に相当し、下側フレーム片211が第2フレーム片に相当する。
【0045】
この構成によれば、複数のストッパ部24a,24bが下側ブレード32の変形を抑制するため、より的確に下側ブレード32の変形を抑制することができる。結果的に、フレーム20からの下側ブレード32の脱落を一層抑制することができる。
(第4変形例)
次に、第1実施形態のシャッタ装置10の第4変形例について説明する。
【0046】
図16及び図17に示されるように、本変形例のストッパ部24は、ストッパ本体部241と、抜け止め部242とを有している。
ストッパ本体部241は、複数の挿入溝240がくし歯状に並べて形成されている部分である。
【0047】
抜け止め部242は、ストッパ本体部241に一体的に形成されており、挿入溝240に挿入された下側ブレード32の軸部324を抜け止めする部分である。具体的には、抜け止め部242は、ストッパ本体部241から軸部324の両側部のそれぞれに沿って空気流れ方向Yの上流側に向かって延びる一対の延伸部242a,242bを有している。一対の延伸部242a,242bは、X軸方向において軸部324を挟んで、くわがた状に対向するように配置されている。一対の延伸部242a,242bのそれぞれの先端部は軸部324に対して空気流れ方向Yの上流側に対向している。一対の延伸部242a,242bのそれぞれの先端部が軸部324に対して空気流れ方向Yの上流側に対向することにより、挿入溝240に挿入された軸部324が抜け止めされている。
【0048】
このストッパ部24では、延伸部242a,242bのそれぞれの先端部間に形成される開口部分から下側ブレード32の軸部324が挿入される。具体的には、下側ブレード32の軸部324を延伸部242a,242bのそれぞれの先端部間に形成される開口部分に押し込むと、延伸部242a,242bが弾性変形して、下側ブレード32の軸部324が挿入溝240に挿入される。
【0049】
この構成によれば、ストッパ部24の挿入溝240から下側ブレード32の軸部324が抜け難くなるため、より的確にフレーム20からの下側ブレード32の脱落を抑制することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のシャッタ装置10について説明する。以下、第1実施形態のシャッタ装置10との相違点を中心に説明する。
【0050】
図18及び図19に示されるように、本実施形態の下側ブレード32の軸部324は、平板部320の下端部と係合部323との間に形成されている。ストッパ部24は、フレーム本体部21の下側フレーム片211の僅かに上方に配置されており、複数の下側ブレード32のそれぞれの軸部324に対向している。本実施形態のストッパ部24は、第1実施形態のストッパ部24と同様に、くし歯状に配置される複数の挿入溝240を有している。各挿入溝240には、複数の下側ブレード32のそれぞれの軸部324が挿入されている。
【0051】
次に、本実施形態のシャッタ装置10の動作例について説明する。
高圧洗浄液が下側ブレード32に衝突したり、あるいは車両Cの走行風が下側ブレード32に衝突したりすることにより下側ブレード32が空気流れ方向Yの下流側に向かって変形したとする。このとき、図20に示されるように下側ブレード32の軸部324がストッパ部24の挿入溝240の内壁面に接触すると、それ以上の下側ブレード32の変形が抑制される。本実施形態のシャッタ装置10では、図20に示されるように、下側ブレード32の係合部323の近傍の変形をストッパ部24により抑制することができるため、第1実施形態のシャッタ装置10と比較すると、下側ブレード32が変形した際の係合部323の変位量がより小さくなる。したがって、下側ブレード32の係合部323が下側フレーム片211の突出部211aからより抜け難くなる。
【0052】
以上説明した本実施形態のシャッタ装置10によれば、以下の(8)に示される作用及び効果を得ることができる。
(8)ストッパ部24は、複数の下側ブレード32のそれぞれの端部に対して空気流れ方向Yの下流側に対向するように配置されている。この構成によれば、下側ブレード32の係合部323が下側フレーム片211の突出部211aから更に抜け難くなるため、より的確にフレーム20からの下側ブレード32の脱落を回避することができる。
【0053】
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態のシャッタ装置10では、ストッパ部24が、平板部310の中央部分に限らず、平板部310の中央部分からずれた部位に対向するように配置されていてもよい。要は、ストッパ部24は、複数の下側ブレード32のそれぞれの中間部分に対して空気流れ方向Yの下流側に対向するように配置されていればよい。
【0054】
・各実施形態のシャッタ装置10では、下側ブレード32に軸部324が形成されていなくてもよい。この場合、ストッパ部24は、下側ブレード32の平板部320に対向するように配置されることとなる。
・各実施形態のシャッタ装置10では、ストッパ部24が、下側ブレード32に限らず、上側ブレード31に対向するように配置されていてもよい。
【0055】
・各実施形態のストッパ部24は、フレーム20とは別体で形成されていてもよい。この構成によれば、フレーム20に対して後付けでストッパ部24を設けることができるため、利便性を向上させることができる。
・各実施形態のシャッタ装置10はコンデンサ5とラジエータ6の間に配置されていてもよい。また、各実施形態のシャッタ装置10はラジエータ6よりも車両後方側に配置されていてもよい。
【0056】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0057】
C:車両
2:グリル開口部
5:コンデンサ(熱交換器)
10:シャッタ装置
20:フレーム
23:横フレーム補強部(第1フレーム片)
24:ストッパ部
32:下側ブレード
211:下側フレーム片(第2フレーム片)
240:挿入溝
320:平板部
324:軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20