特許 7447777 コネクタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-03-04

(45)【発行日】2024-03-12

(54)【発明の名称】コネクタ

(51)【国際特許分類】

   H01R 13/42 20060101AFI20240305BHJP

   H01R 4/50 20060101ALN20240305BHJP

【ＦＩ】

H01R13/42 E

H01R4/50 A

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2020205648

(22)【出願日】2020-12-11

(65)【公開番号】P2022092760

(43)【公開日】2022-06-23

【審査請求日】2023-04-25

(73)【特許権者】

【識別番号】000183406

【氏名又は名称】住友電装株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000497

【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】池田 篤哉

【審査官】鎌田 哲生

(56)【参考文献】

【文献】特開平１１－３２９５８９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１４５２０８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００４－１５８３１６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平１０－０５０３８１（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２００７／０１６７０７６（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｈ０１Ｒ ４／４８－ ４／５６

Ｈ０１Ｒ １３／４０－１３／５３３

Ｈ０５Ｋ ５／００－ ５／０６

Ｈ０５Ｋ ７／１２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

ハウジングと、前記ハウジングの後部に配置されるリアホルダと、前記ハウジング内に収容される端子と、を備え、
前記ハウジングは、幅方向に並ぶ複数のキャビティと、前記幅方向の両端側に設けられるハウジング側係合部と、を有し、
前記リアホルダは、前記幅方向に並んで前記キャビティと連通する複数の挿通孔と、前記幅方向の両端側に設けられて前記ハウジング側係合部と接するホルダ側係合部と、を有し、
前記端子は、前記挿通孔から前記キャビティにかけて配置される電線に接続され、
前記ハウジング側係合部と前記ホルダ側係合部のうち、一方は他方を外側から覆うように配置され、
前記一方の内面には、前後方向に延びるガイド受け部が設けられ、前記他方の外面には、前記前後方向に延びて前記ガイド受け部と嵌合するガイド部が設けられ、
前記ガイド受け部は、前記一方の内面に凹んで奥端側が高さ方向に拡大した溝状をなし、
前記ガイド部は、前記他方の外面から突出して先端側が前記高さ方向に拡大した突状をなしている、コネクタ。

【請求項2】

ハウジングと、前記ハウジングの後部に配置されるリアホルダと、前記ハウジング内に収容される端子と、を備え、
前記ハウジングは、幅方向に並ぶ複数のキャビティと、前記幅方向の両端側に設けられるハウジング側係合部と、を有し、
前記リアホルダは、前記幅方向に並んで前記キャビティと連通する複数の挿通孔と、前記幅方向の両端側に設けられて前記ハウジング側係合部と接するホルダ側係合部と、を有し、
前記端子は、前記挿通孔から前記キャビティにかけて配置される電線に接続され、
前記ハウジング側係合部と前記ホルダ側係合部のうち、一方は他方を外側から覆うように配置され、
前記一方の内面には、前後方向に延びるガイド受け部が設けられ、前記他方の外面には、前記前後方向に延びて前記ガイド受け部と嵌合するガイド部が設けられ、
前記ハウジングは、前記幅方向の両端側に側壁を有し、前記一方となる前記ハウジング側係合部は、前記側壁から後方に突出する突出部を有し、
前記リアホルダは、前記幅方向の両端側に側面を有し、前記他方となる前記ホルダ側係合部は、前記側面に、前方に開口して前記ハウジング側係合部を受ける凹部を有している、コネクタ。

【請求項3】

前記突出部の内面にはロック受け部が設けられ、前記凹部の内面には前記ロック受け部を係止するロック部が設けられ、
前記突出部は、支点部を支点として撓み変形可能とされ、
前記ガイド受け部と前記ガイド部は、前記支点部よりも前方において嵌合する前側嵌合領域を有している、請求項２に記載のコネクタ。

【請求項4】

前記ハウジングは、前記幅方向で隣接する前記キャビティの間を仕切る隔壁を有し、前記リアホルダは、前記隔壁の端部と対向する位置に、前記キャビティの後部開口を覆う覆い壁を有し、
前記覆い壁は、前記隔壁の端部が嵌合する凹所を有している、請求項１から請求項３のいずれか一項に記載のコネクタ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、コネクタに関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１に開示されたコネクタは、ハウジングと、ハウジングの後部に配置されるリアホルダと、を備えている。ハウジングは、複数のキャビティを有している。各キャビティには端子が収容される。リアホルダは、各キャビティと連通する複数の挿通孔を有している。リアホルダの挿通孔内には電線が挿入される。電線の先端部は、キャビティ内に位置して端子に接続される。同様のコネクタは、特許文献２にも開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１９－１４５２０８号公報

【文献】特開２０２０－７４３４６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

仮に、キャビティと挿通孔が前後方向に同軸に並ばず、前後方向と交差する方向（高さ方向、幅方向）に位置ずれし、その位置ずれ量が大きいと、電線の先端部が端子の端縁などと干渉し、端子と接続可能な位置に至ることができない。その結果、コネクタの組み立て作業が中断されるといった問題が生じる。

【0005】

そこで、本開示は、効率良く組み立てることが可能なコネクタを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示のコネクタは、ハウジングと、前記ハウジングの後部に配置されるリアホルダと、前記ハウジング内に収容される端子と、を備え、前記ハウジングは、幅方向に並ぶ複数のキャビティと、前記幅方向の両端側に設けられるハウジング側係合部と、を有し、前記リアホルダは、前記幅方向に並んで前記キャビティと連通する複数の挿通孔と、前記幅方向の両端側に設けられて前記ハウジング側係合部と接するホルダ側係合部と、を有し、前記端子は、前記挿通孔から前記キャビティにかけて配置される電線に接続され、前記ハウジング側係合部と前記ホルダ側係合部のうち、一方は他方を外側から覆うように配置され、前記一方の内面には、前後方向に延びるガイド受け部が設けられ、前記他方の外面には、前記前後方向に延びて前記ガイド受け部と嵌合するガイド部が設けられている、コネクタである。

【発明の効果】

【0007】

本開示によれば、効率良く組み立てることが可能なコネクタを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】図１は、実施形態１にかかるコネクタにおいて、サブユニットがメインハウジングに収容された状態を示す側断面図である。

【図2】図２は、サブユニットの斜視図である。

【図3】図３は、ハウジングの斜視図である。

【図4】図４は、リアホルダの斜視図である。

【図5】図５は、リアホルダが仮係止位置に向かう過程で、突出部が第１ロック部と干渉して撓み変形するときに、ガイド部とガイド受け部とが前側嵌合領域において嵌合している状態を示す部分拡大平断面図である。

【図6】図６は、リアホルダがハウジングに対して仮係止位置にあるときに、電線が挿通孔内に挿入され、電線の先端部において露出する芯線が端子内に配置された状態を示す側断面図である。

【図7】図７は、リアホルダが仮係止位置から本係止位置に向かう過程で、突出部が第２ロック部と干渉して撓み変形するときに、ガイド部とガイド受け部とが前側嵌合領域において嵌合している状態を示す部分拡大平断面図である。

【図8】図８は、リアホルダが本係止位置に至り、突出部が弾性復帰し、ロック受け部とロック部が係止した状態を示す部分拡大平断面図である。

【図9】図９は、ガイド部とガイド受け部とが嵌合した状態の全体を示す側断面図である。

【図10】図１０は、突出部のガイド受け部と本体部のガイド部が嵌合した状態を示す部分拡大横断面図である。

【図11】図１１は、側壁のガイド受け部と覆い壁のガイド部が嵌合した状態を示す部分拡大横断面図である。

【図12】図１２は、実施形態２にかかるコネクタにおいて、ガイド部とガイド受け部とが嵌合した状態を示す部分拡大横断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

［本開示の実施形態の説明］
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
（１）ハウジングと、前記ハウジングの後部に配置されるリアホルダと、前記ハウジング内に収容される端子と、を備え、前記ハウジングは、幅方向に並ぶ複数のキャビティと、前記幅方向の両端側に設けられるハウジング側係合部と、を有し、前記リアホルダは、前記幅方向に並んで前記キャビティと連通する複数の挿通孔と、前記幅方向の両端側に設けられて前記ハウジング側係合部と接するホルダ側係合部と、を有し、前記端子は、前記挿通孔から前記キャビティにかけて配置される電線に接続され、前記ハウジング側係合部と前記ホルダ側係合部のうち、一方は他方を外側から覆うように配置され、前記一方の内面には、前後方向に延びるガイド受け部が設けられ、前記他方の外面には、前記前後方向に延びて前記ガイド受け部と嵌合するガイド部が設けられている。
ガイド部とガイド受け部とが嵌合することで、挿通孔とキャビティとを精度良く連通させることができる。その結果、電線と端子との相対的な位置ずれを抑制することができ、コネクタを効率良く組み立てることが可能となる。

【0010】

（２）前記ハウジングは、前記幅方向の両端側に側壁を有し、前記一方となる前記ハウジング側係合部は、前記側壁から後方に突出する突出部を有し、前記リアホルダは、前記幅方向の両端側に側面を有し、前記他方となる前記ホルダ側係合部は、前記側面に、前方に開口して前記ハウジング側係合部を受ける凹部を有していることが好ましい。
ハウジング側係合部は、ハウジングの側壁を利用することにより、ハウジングの幅寸法の増加を抑制した状態で突出部を設けることができる。また、ホルダ側係合部も、リアホルダの側面に凹部を有するため、リアホルダの幅寸法の増加を招くことがない。その結果、コネクタが全体として幅方向に大型化するのを抑制することができる。

【0011】

（３）前記突出部の内面にはロック受け部が設けられ、前記凹部の奥面には前記ロック受け部を係止するロック部が設けられ、前記突出部は、支点部を支点として撓み変形可能とされ、前記ガイド受け部と前記ガイド部は、前記支点部よりも前方において嵌合する前側嵌合領域を有していると良い。
ハウジング側係合部の突出部とホルダ側係合部の凹部とには、ガイド部とガイド受け部とからなるガイド構造に加え、ロック受け部とロック部とからなるロック構造が設けられる。このため、ガイド構造とロック構造とが別々の部位に設けられる場合に比べ、コネクタの構造を簡素化することができる。
一方、突出部が支点部を支点として撓み変形すると、ガイド部とガイド受け部との嵌合が外れる懸念がある。しかるに上述した構成によれば、支点部よりも前方の前側嵌合領域によって、ガイド部とガイド受け部との嵌合を維持することができる。

【0012】

（４）前記ガイド受け部は、前記一方の内面に凹んで奥端側が高さ方向に拡大した溝状をなし、前記ガイド部は、前記他方の外面から突出して先端側が前記高さ方向に拡大した突状をなしていると良い。
上述した形状のガイド部とガイド受け部とが嵌合することで、挿通孔とキャビティとをより精度良く連通させることができる。

【0013】

（５）前記ハウジングは、前記幅方向で隣接する前記キャビティの間を仕切る隔壁を有し、前記リアホルダは、前記隔壁の端部と対向する位置に、前記キャビティの後部開口を覆う覆い壁を有し、前記覆い壁は、前記隔壁の端部が嵌合する凹所を有していると良い。
隔壁の端部が凹所に嵌合することで、覆い壁と隔壁との相対的な位置ずれを抑制することができ、ガイド部とガイド受け部とによる位置ずれ抑制機能を補完することができる。

【0014】

［本開示の実施形態の詳細］
本開示の実施形態にかかるコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【0015】

（実施形態１）
実施形態１にかかるコネクタ１０は、図１に示すように、ハウジング２０と、リアホルダ５０と、端子８０と、を備える。ハウジング２０とリアホルダ５０は互いに組み付けられ、サブユニット１００を構成する。サブユニット１００は、メインハウジング２００に収容される。メインハウジング２００は、図示しない相手側ハウジングに嵌合可能とされている。以下の説明において、前後方向は、相手側コネクタが嵌合する側を前側とする。図１の右側が前側になる。上下方向は、図１の上下方向を基準とし、高さ方向と称することもある。左右方向は、図１の紙面厚み方向を基準とし、幅方向と称することもある。これらの方向の基準は便宜上設定したに過ぎず、実際の使用態様を限定するものではない。

【0016】

＜ハウジング＞
ハウジング２０は合成樹脂製であって、図３に示すように、幅方向に長い扁平なハウジング本体２１を有している。ハウジング本体２１は、矩形板状の底壁２２（図１を参照）と、底壁２２の幅方向の両端から起立する一対の側壁２３と、各側壁２３の間に位置し、底壁２２の上面から起立する複数の隔壁２４と、を有している。各隔壁２４および側壁２３は、前後方向に長い矩形板状をなしている。側壁２３の板厚（幅寸法）は、隔壁２４の板厚（幅寸法）よりも大きい。各隔壁２４は、底壁２２の上面において幅方向に一定の間隔を置いて配置されている。

【0017】

ハウジング本体２１は、幅方向の両端に位置する隔壁２４と側壁２３との間および各隔壁２４の間に、幅方向に並ぶ複数のキャビティ２５を有している。側壁２３の上端および各隔壁２４の上端は、ハウジング本体２１の前部において、架設部２６によって連結されている。架設部２６は、ハウジング本体２１に全幅にわたって形成されている。架設部２６には、各キャビティ２５と対応する位置に係止孔２７が矩形状に開口して設けられている。各キャビティ２５は、架設部２６を除いて上方に開放されている。

【0018】

ハウジング本体２１は、底壁２２の前端において、各キャビティ２５と対応する位置に当て壁２８を有している。各キャビティ２５の前面開口は、当て壁２８によって部分的に閉塞されている。ハウジング本体２１のキャビティ２５内には端子８０が挿入される。端子８０は、当て壁２８に当たることで、正規挿入位置よりも前方に移動するのが規制される。また、端子８０は、後述する係止部８３を係止孔２７内に嵌合させることで、正規挿入位置よりも後方に移動するのが規制される。

【0019】

また、ハウジング２０は、ハウジング本体２１の幅方向の両端側において、各側壁２３から後方に突出する一対の突出部２９を有している。突出部２９は、側壁２３から連続する板状をなし、側壁２３と同一の高さ寸法を有している。突出部２９は、前後方向の途中に、支点部３１（図５および図７を参照）を有している。突出部２９は、支点部３１を支点として幅方向に撓み変形可能とされている。

【0020】

各突出部２９は、互いに対向する内面に、凹状のガイド受け部３２を有している。図３に示すように、ガイド受け部３２は、前後方向に延びて突出部２９の後端に開口している。ガイド受け部３２は、側壁２３の内面側にも連続して設けられ、側壁２３の内面に閉塞端を有している。突出部２９とガイド受け部３２は、ハウジング側係合部３３を構成している。

【0021】

ガイド受け部３２は、図１０に示すように、突出部２９の内面における上下両端部を除く部分において、凹み方向の奥側に、上下方向および前後方向に沿って配置される凹壁面３４を有し、高さ方向の両端側に、左右方向および前後方向に沿って配置される一対の凹側面３５を有している。

【0022】

突出部２９の凹壁面３４の上端部には、図１１に示すように、側壁２３の凹壁面３４が段差なく連なる。同じく、突出部２９の上側の凹側面３５には、側壁２３の上側の凹側面３５が段差なく連なる。側壁２３の下側の凹側面３５は、突出部２９の下側の凹側面３５よりも上方に配置される。

【0023】

各突出部２９は、図３に示すように、突出部２９の凹壁面３４に、凹状のロック受け部３６を有している。ロック受け部３６は、突出部２９の内面と対向する方向から見て矩形の外形をなし、突出部２９の下端に開口し、突出部２９の外面側に閉塞されている。ロック受け部３６の後縁は、上下方向に沿った抜け止め縁３７として構成される。図９に示すように、リアホルダ５０がハウジング２０に保持された状態で抜け止め縁３７と係止することにより、リアホルダ５０の、ハウジング２０からの抜け出しが規制される。また、突出部２９の後端は、リアホルダ５０が後述する本係止位置から仮係止位置に移動するのを規制する規制縁３８として構成される。

【0024】

＜リアホルダ＞
リアホルダ５０は合成樹脂製であって、図４に示すように、全体として幅方向に長い扁平な形状をなしている。リアホルダ５０は、平面視および底面視で矩形の外形をなしている。リアホルダ５０は、各キャビティ２５と前後方向に連通する複数の挿通孔５１を有している。各挿通孔５１は、断面円形をなし、端子８０を挿通可能な大きさの開口径を有している。図４に示すように、リアホルダ５０の上面の前部には、幅方向に並ぶ複数のロック突起５６が設けられている。図１に示すように、ロック突起５６は、メインハウジング２００に設けられたランス２０１に係止される。

【0025】

リアホルダ５０は、幅方向の両端側に、一対の側面５７（図４では一方のみ図示）を有している。各側面５７は、前部に、凹部５８を有している。図４に示すように、凹部５８は、上下方向および前後方向に沿って配置される内面６１と、内面６１の後端に連なって上下方向および左右方向に沿って配置される段差面６２と、を有している。図８に示すように、段差面６２の左右寸法は、突出部２９の板厚と同じか、突出部２９の板厚よりも大きい。突出部２９は、内面６１を外側から覆うように凹部５８内に嵌合する。

【0026】

図４に示すように、リアホルダ５０の前端部には、凹部５８の内面６１から各挿通孔５１にかけて貫通する切欠部５９が設けられている。切欠部５９は、側面視して矩形凹状をなし、リアホルダ５０の前面に開口している。リアホルダ５０の前端部は、切欠部５９を介して上下で対向する壁のうち、上側の壁に、覆い壁６３を有している。覆い壁６３は、リアホルダ５０の本体部６５から前方に突出している。

【0027】

図６に示すように、覆い壁６３の下面と挿通孔５１の内壁上面との間には、上下方向に沿った押圧面６４が設けられている。押圧面６４は、端子８０の後述するスライド部８２を前方に押圧するための面になる。

【0028】

図４に示すように、リアホルダ５０は、凹部５８の内面６１に、本体部６５から覆い壁６３にかけて前後方向に延びる扁平突状のガイド部６６を有している。ガイド部６６は、リアホルダ５０の幅方向の両端側に設けられている。凹部５８とガイド部６６は、ホルダ側係合部６７を構成している。

【0029】

図１０に示すように、ガイド部６６は、凹部５８の内面６１における上下両端部を除く部分において、突出方向の先端側に、上下方向および前後方向に沿って配置される凸壁面６８を有し、高さ方向の両端側に、左右方向および前後方向に沿って配置される一対の凸側面６９を有している。図４に示すように、凸壁面６８の前端部は、切欠部５９によって切り欠かれた形状になっている。

【0030】

本体部６５の凸壁面６８の上端部には、図１１に示すように、覆い壁６３の凸壁面６８が段差なく連なる。同じく、本体部６５の上側の凸側面６９は、覆い壁６３の上側の凸側面６９に段差なく連なる。図４に示すように、覆い壁６３の下側の凸側面６９は、切欠部５９の上縁を構成している。

【0031】

リアホルダ５０は、覆い壁６３の下面に、幅方向に並ぶ複数の凹所７１を有している。各凹所７１は、覆い壁６３の内面において、前後方向に延びる溝状をなし、前端が覆い壁６３の前端に開口している。図１１に示すように、覆い壁６３の凹所７１には、ハウジング本体２１の隔壁２４の上端部が嵌合する。

【0032】

図４に示すように、リアホルダ５０は、本体部６５の凸壁面６８に、複数のリブ状のロック部７２、７３を有している。各ロック部は、第１ロック部７２と、第１ロック部７２よりも後方に位置する第２ロック部７３と、により構成される。

【0033】

リアホルダ５０は、ハウジング２０に対して仮係止位置と本係止位置との間を前後方向に移動可能に組み付けられる。リアホルダ５０が仮係止位置にあるときには、第１ロック部７２がロック受け部３６内に入り込んで抜け止め縁３７に係止可能に配置されるとともに、第２ロック部７３が規制縁３８に係止可能に配置される。これにより、リアホルダ５０が仮係止位置に移動を規制された状態に保持される。リアホルダ５０が本係止位置にあるときには、第１ロック部７２がロック受け部３６内の前端側に移動するとともに、第２ロック部７３がロック受け部３６内の後端側に入り込む（図９を参照）。これにより、リアホルダ５０が本係止位置に移動を規制された状態に保持される。

【0034】

＜端子および電線＞
端子８０は金属製であって、図６に示すように、端子本体８１と、端子本体８１に対して前後方向に移動可能に組み付けられるスライド部８２と、を有している。端子本体８１は、角筒状をなし、上面に、係止孔２７に嵌まる係止部８３を突出させている。端子本体８１は、後端部に、上下で対向する一対の接続片８４を有している。各接続片８４は、初期位置（図６を参照）と初期位置から接近した接続位置（図１を参照）との間を弾性変形可能とされている。スライド部８２は、端子本体８１の後端部を覆うように配置される。スライド部８２は、上下で対向する壁に、一対の当接部８５を有している。スライド部８２が端子本体８１に正規に組み付けられたときに、各当接部８５が各接続片８４に接触し、各接続片８４が初期位置から接続位置へと変位させられる。

【0035】

電線９０は、芯線９１の外周を被覆９２で包囲した被覆電線である。電線９０の先端部は、被覆９２の除去によって芯線９１が露出している。電線９０の先端部において露出する芯線９１は、初期位置にある各接続片８４間に挿入され（図６を参照）、接続位置にある各接続片８４に電気的に接続される（図１を参照）。

【0036】

＜コネクタの組み立て方法および作用＞
まず、ハウジング２０のキャビティ２５内に、端子８０が挿入されて収容される。続いて、ハウジング２０に、後方からリアホルダ５０が組み付けられる。リアホルダ５０の組み付け過程においては、凹部５８の前方から凹部５８内に突出部２９が嵌合するとともに、ガイド受け部３２の後方からガイド受け部３２内にガイド部６６が嵌合する。これにより、リアホルダ５０の組み付けがガイドされる。

【0037】

リアホルダ５０の組み付けが進むと、図５に示すように、突出部２９の後端部が第１ロック部７２と干渉し、突出部２９が支点部３１を支点として撓み変形させられる。このとき、突出部２９のガイド受け部３２と覆い壁６３のガイド部６６は、支点部３１よりも前方において、互いに嵌合する領域である前側嵌合領域４０を形成する。このため、突出部２９が撓み変形した状態にあっても、ガイド部６６とガイド受け部３２との嵌合を維持することができ、リアホルダ５０の組み付け作業を円滑に進めることができる。

【0038】

突出部２９の後端部が第１ロック部７２を乗り越えると、突出部２９が弾性復帰し、ロック受け部３６内に第１ロック部７２が入り込む。これにより、リアホルダ５０がハウジング２０に対して仮係止位置に保持される。仮係止位置では、リアホルダ５０の各挿通孔５１とハウジング２０の各キャビティ２５とが前後方向に連通して配置される。

【0039】

リアホルダ５０が仮係止位置にあるときに、図１０および図１１に示すように、ガイド部６６の各凸側面６９がガイド受け部３２の各凹側面３５に接触可能に対向する。これにより、リアホルダ５０がハウジング２０に対して高さ方向に位置ずれするのが規制される。また、リアホルダ５０の幅方向の両端側においては、ガイド部６６の凸壁面６８がガイド受け部３２の凹壁面３４に接触可能に対向する。これにより、リアホルダ５０がハウジング２０に対して幅方向に位置ずれするのが規制される。さらに、図１１に示すように、覆い壁６３の各凹所７１に各隔壁２４の上端部が嵌合することにより、リアホルダ５０がハウジング２０に対して幅方向に位置ずれするのがより良好に規制される。

【0040】

このように、リアホルダ５０が仮係止位置にあるときに、リアホルダ５０がハウジング２０に対して幅方向および高さ方向に位置ずれするのが規制される結果、リアホルダ５０の各挿通孔５１とハウジング２０の各キャビティ２５とが前後方向に同軸に精度良く位置決めされて連通する。

【0041】

続いて、リアホルダ５０の各挿通孔５１内に、後方から電線９０が挿入される。電線９０の先端部（露出する芯線９１）は、挿通孔５１からキャビティ２５側に移動し、図６に示すように、端子８０内に挿入されて、端子本体８１の各接続片８４間に配置される。上述したように、挿通孔５１とキャビティ２５とが同軸に精度良く位置決めされているので、電線９０の先端部は挿通孔５１からキャビティ２５側に円滑に移動することができる。

【0042】

次いで、仮係止位置にあるリアホルダ５０がハウジング２０に対して本係止位置に向けて押し込まれる。リアホルダ５０が本係止位置に向かう過程で、図７に示すように、突出部２９の後端部が第２ロック部７３と干渉し、突出部２９が支点部３１を支点として撓み変形させられる。このときにも、ガイド受け部３２とガイド部６６が前側嵌合領域４０で嵌合状態を維持することができるため、リアホルダ５０が本係止位置に向けて円滑に移動することができる。

【0043】

突出部２９の後端部が第２ロック部７３を乗り越えると、突出部２９が弾性復帰し、図８および図９に示すように、ロック受け部３６内に第２ロック部７３が入り込む。これにより、リアホルダ５０がハウジング２０に対して本係止位置に保持される。リアホルダ５０が本係止位置にあるときに、図２に示すように、突出部２９は全体が凹部５８内に嵌合してリアホルダ５０の外形内に収まる。

【0044】

また、リアホルダ５０が本係止位置に向かう過程で、リアホルダ５０の押圧面６４がスライド部８２を押圧し、スライド部８２が端子本体８１に対してスライドする。この間、スライド部８２の各当接部８５が端子本体８１の各接続片８４と接触し、各接続片８４が接続位置に向けて変位する。各接続片８４が接続位置に至ると、電線９０の先端部において露出する芯線９１が各接続片８４に挟まれて電気的に接続される（図１を参照）。この端子８０は、バレル部などの圧着構造を有していない。このため、端子８０を小型化することができ、ひいてはコネクタ１０を小型化することができる。

【0045】

図１に示すように、上述した工程を経て組み付けられたサブユニット１００は、メインハウジング２００に収容される。サブユニット１００は、メインハウジング２００のユニット収容部２０２内に挿入され、ランス２０１によって抜け止め状態に係止される。その後、メインハウジング２００が図示しない相手側ハウジングと嵌合することにより、端子本体８１内に、相手側ハウジングに収容された図示しない相手側端子が挿入され、端子８０および相手側端子が電気的に接続される。

【0046】

以上説明したように、本実施形態１によれば、ハウジング側係合部３３の突出部２９がホルダ側係合部６７の凹部５８を覆った状態で、ガイド部６６とガイド受け部３２とが嵌合する。このため、リアホルダ５０がハウジング２０に対して位置ずれするのが抑制され、リアホルダ５０の各挿通孔５１とハウジング２０の各キャビティ２５とを同軸状に精度良く連通させることができる。その結果、端子８０内に電線９０を挿入する作業を円滑に行うことができ、コネクタ１０を効率良く組み立てることができる。

【0047】

ハウジング側係合部３３の突出部２９は側壁２３から前方に突出する形状であり、ホルダ側係合部６７の凹部５８はリアホルダ５０の側面５７に凹む形状である。このため、ハウジング２０およびリアホルダ５０が幅方向に大型化するのを回避することができる。

【0048】

また、ハウジング側係合部３３の突出部２９にはガイド受け部３２に加えてロック受け部３６が設けられ、ホルダ側係合部６７の凹部５８にはガイド部６６に加えてロック部７２、７３が設けられている。よって、ロック受け部３６が突出部２９以外の部分に設けられ、ロック部７２、７３が凹部５８以外の部分に設けられる場合に比べ、コネクタ１０の構造を簡素化することができる。

【0049】

一方、ロック部７２、７３とロック受け部３６との干渉時に、突出部２９が支点部３１を支点として撓み変形すると、ガイド部６６とガイド受け部３２との嵌合が外れる懸念がある。しかるに本実施形態１によれば、支点部３１よりも前方に形成される前側嵌合領域４０によって、ガイド部６６とガイド受け部３２との嵌合を維持することができる。
さらに、覆い壁６３の凹所７１内には隔壁２４の上端部が嵌合するため、覆い壁６３と隔壁２４との相対的な位置ずれを抑制することができる。

【0050】

（実施形態２）
次に、本開示の実施形態２を図１２を用いて説明する。実施形態２は、実施形態１に対し、ガイド部６６Ａおよびガイド受け部３２Ａのそれぞれの構造を異にする。その他は、実施形態１と同様であるため、重複する説明を省略する。

【0051】

ガイド受け部３２Ａは、ハウジング２０の幅方向の両端側において、ハウジング側係合部３３の突出部２９の内面に、入口側が狭く、奥側が広がるように開口している。具体的には、ガイド受け部３２Ａは、突出部２９の内面における上下両端部を除く部分において、凹み方向の奥側に、上下方向および前後方向に沿って配置される凹壁面３４Ａを有し、高さ方向の両端側に、凹み方向の奥側へ向けて高さ方向に拡開するように傾斜するアリ溝面３９を有している。

【0052】

ガイド部６６Ａは、リアホルダ５０の幅方向の両端側において、ホルダ側係合部６７の凹部５８の内面６１に、付け根側が細く、先端側が広がるように突出している。具体的には、ガイド部６６Ａは、凹部５８の内面６１における上下両端部を除く部分において、突出方向の先端側に、上下方向および前後方向に沿って配置される凸壁面６８Ａを有し、高さ方向の両端側に、突出方向の先端側へ向けて高さ方向に拡開するように傾斜するアリ面７９を有している。

【0053】

リアホルダ５０がハウジング２０に組み付けられると、ガイド部６６Ａとガイド受け部３２Ａとが嵌合し、ガイド部６６Ａのアリ面７９とガイド受け部３２Ａのアリ溝面３９が上下方向および左右方向と交差する方向に沿って接触可能に対向する。これにより、リアホルダ５０は、ハウジング２０に対して高さ方向および幅方向に位置ずれするのがより良好に抑制される。その結果、挿通孔５１とキャビティ２５とが同軸状に位置決めされる精度をいっそう高めることができる。

【0054】

［本開示の他の実施形態］
今回開示された実施形態１、２はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態１、２の場合、ハウジング側係合部がホルダ側係合部を外側から覆う形状であったが、他の実施形態としては、実施形態１、２とは逆に、ホルダ側係合部がハウジング側係合部を外側から覆う形状であっても良い。例えば、実施形態１、２とは逆に、ホルダ側係合部が突出部を有し、ハウジング側係合部が凹部を有していても良い。
上記実施形態１、２の場合、ガイド部が凹部に突状に形成され、ガイド受け部が突出部に凹状に形成されていたが、他の実施形態としては、実施形態１、２とは逆に、ガイド部が凹部に凹状に形成され、ガイド受け部が突出部に突状に形成されていても良い。
上記実施形態１、２の場合、リアホルダの側面に凹部が設けられていたが、他の実施形態としては、リアホルダの側面に凹部が設けられていなくても良い。
上記実施形態１の場合、ロック部が第１ロック部と第２ロック部とを有していたが、他の実施形態としては、ロック部は単一種のロック部で構成されていても良い。
上記実施形態１の場合、リアホルダが本係止位置に向かう過程でスライド部を押圧し、端子本体に対してスライド部をスライドさせる構造であったが、他の実施形態としては、リアホルダがスライド部を押圧する機能を備えていなくても良い。リアホルダは、ハウジングから端子が抜け出すのを規制できる構造であれば良い。なお、端子は電線の端末部に圧着して接続される構造であっても良い。
上記実施形態２の場合、凹壁面およびアリ溝面が突出部の内面側に設けられ、凸壁面およびアリ面が凹部の内面側に設けられていたが、他の実施形態としては、凹壁面およびアリ溝面が側壁の内面側に設けられ、凸壁面およびアリ面が覆い壁の幅方向の両端側に設けられていても良い。

【符号の説明】

【0055】

１０…コネクタ
２０…ハウジング
２１…ハウジング本体
２２…底壁
２３…側壁
２４…隔壁
２５…キャビティ
２６…架設部
２７…係止孔
２８…当て壁
２９…突出部
３１…支点部
３２、３２Ａ…ガイド受け部
３３…ハウジング側係合部
３４、３４Ａ…凹壁面
３５…凹側面
３６…ロック受け部
３７…抜け止め縁
３８…規制縁
３９…アリ溝面
４０…前側嵌合領域
５０…リアホルダ
５１…挿通孔
５６…ロック突起
５７…側面
５８…凹部
５９…切欠部
６１…内面
６２…段差面
６３…覆い壁
６４…押圧面
６５…本体部
６６、６６Ａ…ガイド部
６７…ホルダ側係合部
６８、６８Ａ…凸壁面
６９…凸側面
７１…凹所
７２…第１ロック部（ロック部）
７３…第２ロック部（ロック部）
７９…アリ面
８０…端子
８１…端子本体
８２…スライド部
８３…係止部
８４…接続片
８５…当接部
９０…電線
９１…芯線
９２…被覆
１００…サブユニット
２００…メインハウジング
２０１…ランス
２０２…ユニット収容部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】