(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】蓄電素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20240305BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240305BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20240305BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240305BHJP
H01M 50/54 20210101ALN20240305BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/536
H01M50/55 101
H01G11/76
H01G11/84
H01M50/54
(21)【出願番号】P 2020551093
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039225
(87)【国際公開番号】W WO2020071516
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2018190054
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 悟
(72)【発明者】
【氏名】相田 広徳
(72)【発明者】
【氏名】前田 晃希
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-161757(JP,A)
【文献】特開2018-147832(JP,A)
【文献】特開2016-219123(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047790(WO,A1)
【文献】特開2001-338632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01G 11/76
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子と、電極体と、前記電極端子及び前記電極体を接続する集電体とを備える蓄電素子であって、
前記集電体は、
前記電極端子と接続される端子接続部と、
前記集電体と前記電極体との並び方向である第一方向において前記電極体
と接続される電極接続部と、
前記端子接続部及び前記電極接続部を繋ぐ中間部と、を有し、
前記中間部は、前記第一方向から見て前記端子接続部と重なる位置に配置され、
前記電極接続部と前記端子接続部とは、前記第一方向における前記中間部の一方側に配置される
蓄電素子。
【請求項2】
前記電極接続部は、前記第一方向から見て、前記端子接続部と重ならない位置に配置される
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記第一方向と直交する、異なる2つの方向を第二方向及び第三方向とし、
前記電極接続部は、前記中間部の
前記第二方向に配置され、
前記中間部は、前記端子接続部の
前記第三方向の端部に接続されている
請求項1または2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記中間部は、前記電極接続部との接続部分において、前記電極接続部に向けて屈曲または湾曲された曲げ部を有し、
前記曲げ部は、前記第一方向から見て、前記端子接続部と重なる位置に配置される
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
さらに、
前記電極接続部及び前記中間部の少なくとも一方が、前記第一方向において前記端子接続部から離れる方向に移動するのを規制する規制部を備える
請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
電極端子と、電極体と、前記電極端子及び前記電極体を接続する集電体とを備える蓄電素子の製造方法であって、
前記集電体は、
前記電極端子と接続される端子接続部と、
前記集電体と前記電極体との並び方向である第一方向において前記電極体
と接続される電極接続部と、
前記端子接続部及び前記電極接続部を繋ぐ中間部と、を有し、
前記蓄電素子の製造方法は、
前記中間部を、前記第一方向から見て前記端子接続部と重なる位置に配置し、かつ、前記電極接続部と前記端子接続部とを、前記第一方向における前記中間部の一方側に配置するように、前記集電体を折り曲げる折曲工程を含む
蓄電素子の製造方法。
【請求項7】
前記折曲工程では、第一折曲工程及び第二折曲工程の順に2段階で前記集電体を折り曲げ、
前記第一折曲工程では、前記電極接続部及び前記中間部の少なくとも一方を前記第一方向の両側から支持しつつ、前記端子接続部を前記中間部に近づけ、
前記第二折曲工程では、前記電極接続部及び前記中間部の少なくとも一方を前記第一方向の前記端子接続部とは反対側から支持しつつ、前記端子接続部を前記中間部にさらに近づける
請求項6に記載の蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極端子と、電極体と、電極端子及び電極体を接続する集電体とを備える蓄電素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極端子と、電極体と、電極端子及び電極体を接続する集電体とを備える蓄電素子が広く知られている。特許文献1には、電極端子と、複数の電極板(電極体)と、電極端子と複数の電極板とにその両端が接合され、電極端子と複数の電極板とを電気的に接続する積層された複数の接続板材(集電体)とを備え、積層された複数の接続板材は、電極端子と複数の電極板との間において蛇行状に折畳まれてなる二次電池(蓄電素子)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の蓄電素子では、エネルギー密度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、エネルギー密度の向上を図ることができる蓄電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極端子と、電極体と、前記電極端子及び前記電極体を接続する集電体とを備える蓄電素子であって、前記集電体は、前記電極端子と接続される端子接続部と、前記電極体と第一方向において接続される電極接続部と、前記端子接続部及び前記電極接続部を繋ぐ中間部と、を有し、前記中間部は、前記第一方向から見て前記端子接続部と重なる位置に配置され、前記電極接続部と前記端子接続部とは、前記第一方向における前記中間部の一方側に配置される。
【0007】
本発明は、このような蓄電素子として実現できるだけでなく、当該蓄電素子に備えられる集電体、集電体及び規制部、または、それらの製造方法としても実現できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エネルギー密度の向上を図ることができる蓄電素子等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蓄電素子を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る正極集電体の構成を示す斜視図及び正面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る正極集電体と正極端子及び電極体との接続構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る蓄電素子の製造方法(正極集電体の折曲工程)を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の変形例1に係る正極集電体と正極端子及び電極体との接続構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施の形態の変形例2に係る正極集電体の構成を示す斜視図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記従来の蓄電素子では、エネルギー密度が低下するおそれがある。つまり、上記従来の蓄電素子では、集電体が蛇行状に折畳まれることで、電極端子と電極体とを接続する構成であるため、電極体が電極端子から離れた位置に配置されることとなる。これにより、電極体の大きさが制限されるため、エネルギー密度が低下する。
【0011】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極端子と、電極体と、前記電極端子及び前記電極体を接続する集電体とを備える蓄電素子であって、前記集電体は、前記電極端子と接続される端子接続部と、前記電極体と第一方向において接続される電極接続部と、前記端子接続部及び前記電極接続部を繋ぐ中間部と、を有し、前記中間部は、前記第一方向から見て前記端子接続部と重なる位置に配置され、前記電極接続部と前記端子接続部とは、前記第一方向における前記中間部の一方側に配置される。
【0012】
これによれば、蓄電素子において、集電体は、端子接続部と電極接続部と中間部とを有しており、中間部は、第一方向から見て端子接続部と重なる位置に配置され、電極接続部と端子接続部とは、第一方向における中間部の一方側に配置されている。中間部が第一方向から見て端子接続部と重ねられて配置される場合には、電極接続部が第一方向において端子接続部から離れて配置されるおそれがある。電極接続部が第一方向において端子接続部から離れて配置されれば、電極体が第一方向において電極端子から離れた位置に配置されることとなり、電極体の大きさが制限される。このため、電極接続部と端子接続部とを、第一方向における中間部の一方側に配置する。これにより、電極体を第一方向において電極端子に近付けることができるため、より大きな電極体を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0013】
前記電極接続部は、前記第一方向から見て、前記端子接続部と重ならない位置に配置されてもよい。
【0014】
これによれば、集電体において、電極接続部は、第一方向から見て端子接続部と重ならない位置に配置されている。このように、電極接続部を第一方向から見て端子接続部と重ならない位置に配置することで、電極接続部を第一方向において端子接続部に近付けることができる。このため、電極体を第一方向において電極端子に近付けることができるため、より大きな電極体を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0015】
前記電極接続部は、前記中間部の、前記第一方向と交差する第二方向に配置され、前記中間部は、前記端子接続部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の端部に接続されていてもよい。
【0016】
これによれば、集電体において、電極接続部は、中間部の第二方向に配置され、中間部は、端子接続部の第三方向の端部に接続されている。このように、電極接続部を、中間部の第二方向に配置することで、電極接続部の、第一方向から見て中間部と重ならない部分を、第一方向において端子接続部に近付けることができる。このため、電極体を第一方向において電極端子に近付けることができるため、より大きな電極体を配置できる。端子接続部の第三方向の端部に中間部を接続することで、電極接続部を電極体に接続しやすい場合がある。これにより、集電体と電極体との接続を容易にしつつ、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0017】
前記中間部は、前記電極接続部との接続部分において、前記電極接続部に向けて屈曲または湾曲された曲げ部を有し、前記曲げ部は、前記第一方向から見て、前記端子接続部と重なる位置に配置されてもよい。
【0018】
これによれば、集電体において、中間部は、電極接続部との接続部分に曲げ部を有しており、曲げ部は、端子接続部と重なる位置に配置されている。このように、中間部の曲げ部を端子接続部に重ねることで、中間部が端子接続部の位置から曲がる形状となるため、電極接続部の大きさを大きくできる。これにより、より大きな電極接続部に電極体を接続できるため、電極体と集電体とをより安定して接続できる。
【0019】
さらに、前記電極接続部及び前記中間部の少なくとも一方が、前記第一方向において前記端子接続部から離れる方向に移動するのを規制する規制部を備えてもよい。
【0020】
これによれば、蓄電素子は、集電体の電極接続部及び中間部の少なくとも一方が、第一方向において端子接続部から離れるのを規制する規制部を備えている。このように、電極接続部及び中間部の少なくとも一方が、第一方向において端子接続部から離れるのを規制することで、電極体が第一方向において電極端子から遠ざかるのを抑制できる。これにより、電極体を第一方向において電極端子に近付けることができるため、より大きな電極体を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0021】
本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、電極端子と、電極体と、前記電極端子及び前記電極体を接続する集電体とを備える蓄電素子の製造方法であって、前記集電体は、前記電極端子と接続される端子接続部と、前記電極体と第一方向において接続される電極接続部と、前記端子接続部及び前記電極接続部を繋ぐ中間部と、を有し、前記蓄電素子の製造方法は、前記中間部を、前記第一方向から見て前記端子接続部と重なる位置に配置し、かつ、前記電極接続部と前記端子接続部とを、前記第一方向における前記中間部の一方側に配置するように、前記集電体を折り曲げる折曲工程を含む。
【0022】
これによれば、蓄電素子の製造方法において、折曲工程では、集電体の中間部を集電体の端子接続部と重なる位置に配置し、かつ、集電体の電極接続部と端子接続部とを、第一方向における中間部の一方側に配置するように、集電体を折り曲げる。電極接続部を中間部の当該一方側に配置することで、電極体を電極端子に近付けることができるため、より大きな電極体を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0023】
前記折曲工程では、第一折曲工程及び第二折曲工程の順に2段階で前記集電体を折り曲げ、前記第一折曲工程では、前記電極接続部及び前記中間部の少なくとも一方を前記第一方向の両側から支持しつつ、前記端子接続部を前記中間部に近づけ、前記第二折曲工程では、前記電極接続部及び前記中間部の少なくとも一方を前記第一方向の前記端子接続部とは反対側から支持しつつ、前記端子接続部を前記中間部にさらに近づけてもよい。
【0024】
これによれば、折曲工程において、第一折曲工程及び第二折曲工程の順に2段階で集電体を折り曲げることで、集電体の折り曲げ作業を効率よく行うことができる。これにより、容易に、エネルギー密度の向上を図ることができる蓄電素子を製造することができる。
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る蓄電素子について説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0026】
以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、電極体が有する一対のタブ束の並び方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、容器の厚さ方向、または、電極体の極板の積層方向をY軸方向と定義する。電極端子と集電体と電極体との並び方向、蓄電素子の容器本体と蓋との並び方向、容器の短側面の長手方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。以下の説明において、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
【0027】
(実施の形態)
[1 蓄電素子の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
図1は、本実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
【0028】
蓄電素子10は、電気を充電し、電気を放電できる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、スノーモービル、農業機械、建設機械等の移動体の駆動用またはエンジン始動用のバッテリ等として用いられる。
【0029】
蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。さらに、蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状、円柱形状、長円柱形状等であってもよいし、ラミネート型の蓄電素子とすることもできる。
【0030】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子210と、正極上部ガスケット300と、負極上部ガスケット310とを備えている。
図2に示すように、容器100内方には、正極下部ガスケット400、負極下部ガスケット500、正極集電体600、負極集電体610、及び、電極体700が収容されている。容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、省略して図示している。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択できる。上記の構成要素の他、電極体700の側方若しくは上方等に配置されるスペーサ、または、電極体700等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
【0031】
容器100は、矩形筒状で底を備える容器本体110と、容器本体110の開口を閉塞する板状部材である蓋体120とで構成された直方体形状(箱型)のケースである。容器100は、電極体700等を内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等されることにより、内部を密封できる構成となっている。容器100の材質は特に限定されないが、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0032】
蓋体120には、容器100の内圧が上昇したときに容器100内部のガスを排出するガス排出弁121が配置されている。容器100には、内部に電解液を注入するための注液部が形成されていてもよい。
【0033】
電極体700は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる平板状かつ矩形状の正極集電箔と、正極集電箔の表面に形成された正極活物質層とを有している。負極板は、銅または銅合金等からなる平板状かつ矩形状の負極集電箔と、負極集電箔の表面に形成された負極活物質層とを有している。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
【0034】
正極集電箔及び負極集電箔は、ともに、上方(Z軸方向プラス側)に突出する矩形状のタブを有している。複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを挟んで積層されることにより、正極板及び負極板ともに複数のタブが積層される。その結果、電極体700には、正極側のタブ束710と負極側のタブ束720とが形成されている。
【0035】
正極板及び負極板は、矩形状を有していることとしたが、正極板及び負極板の形状は、矩形状には限定されず、矩形状以外の多角形状、長楕円形状、長円形状等でもよい。正極板及び負極板のタブについても、矩形状には限定されず、矩形状以外の多角形状、半円形状、半長円形状、半楕円形状等、どのような形状でもかまわない。積層された正極板及び負極板は、電極体700の周囲またはX軸方向両側に絶縁テープが配置されて、積層方向(Y軸方向)に挟まれることで、固定されていてもよい。または、ヒートプレス等によって、当該正極板及び負極板が積層方向に固定されていてもよい。
【0036】
正極端子200は、正極集電体600を介して、電極体700の正極板に電気的に接続される電極端子である。負極端子210は、負極集電体610を介して、電極体700の負極板に電気的に接続される電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子210は、電極体700に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、電極体700に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。正極端子200及び負極端子210は、かしめ等によって、正極集電体600及び負極集電体610に接続され、かつ、蓋体120に取り付けられている。
【0037】
具体的には、正極端子200は、下方(Z軸方向マイナス側)に延びる円柱形状の軸部201(リベット部)を有している。軸部201が、正極上部ガスケット300の円形状の貫通孔301と、蓋体120の円形状の貫通孔123と、正極下部ガスケット400の円形状の貫通孔401と、正極集電体600の円形状の貫通孔601とに挿入されて、かしめられる。これにより、正極端子200は、正極上部ガスケット300、正極下部ガスケット400及び正極集電体600とともに、蓋体120に固定される。負極側についても同様である。正極端子200及び負極端子210は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等で形成されている。
【0038】
正極集電体600は、電極体700の正極板と正極端子200とを電気的に接続する平板状の導電部材である。負極集電体610は、電極体700の負極板と負極端子210とを電気的に接続する平板状の導電部材である。具体的には、正極集電体600は、電極体700の正極側のタブ束710と溶接等により接合されるとともに、上述の通り、正極端子200とかしめ等により接合される。負極集電体610は、電極体700の負極側のタブ束720と溶接等により接合されるとともに、上述の通り、負極端子210とかしめ等により接合される。正極集電体600は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極集電体610は、銅または銅合金等で形成されている。
【0039】
正極集電体600及び負極集電体610は、電極体700と容器100の蓋体120との間に配置される。具体的には、正極集電体600は、電極体700の正極側のタブ束710と正極下部ガスケット400との間に配置され、負極集電体610は、電極体700の負極側のタブ束720と負極下部ガスケット500との間に配置される。つまり、正極集電体600は、蓋体120とで正極下部ガスケット400を挟む位置に配置され、負極集電体610は、蓋体120とで負極下部ガスケット500を挟む位置に配置される。正極集電体600及び負極集電体610の構成の詳細な説明については、後述する。
【0040】
正極上部ガスケット300は、容器100の蓋体120と正極端子200との間に配置された、平板状の電気的絶縁性の封止部材である。負極上部ガスケット310は、容器100の蓋体120と負極端子210との間に配置された、平板状の電気的絶縁性の封止部材である。具体的には、正極上部ガスケット300は、正極端子200の下部及び側部を覆うように形成され、負極上部ガスケット310は、負極端子210の下部及び側部を覆うように形成されている。
【0041】
正極下部ガスケット400は、蓋体120と正極集電体600との間に配置された、平板状の電気的絶縁性の封止部材である。負極下部ガスケット500は、蓋体120と負極集電体610との間に配置された、平板状の電気的絶縁性の封止部材である。
【0042】
正極上部ガスケット300、負極上部ガスケット310、正極下部ガスケット400及び負極下部ガスケット500は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及び、それらの複合材料等の樹脂等によって形成されている。
【0043】
[2 正極集電体及び負極集電体の構成の説明]
次に、正極集電体600及び負極集電体610の構成について、詳細に説明する。正極集電体600と負極集電体610とは、同様の構成(YZ平面に対して対称な形状)を有するため、以下では、正極集電体600について詳細に説明し、負極集電体610の説明は簡略化または省略する。
【0044】
図3は、本実施の形態に係る正極集電体600の構成を示す斜視図及び正面図である。具体的には、
図3の(a)は、正極集電体600を斜め上方から見た場合の斜視図、つまり、
図2に示した正極集電体600を拡大して示す拡大斜視図である。
図3の(b)は、
図3の(a)の正極集電体600をY軸方向マイナス側から見た場合の正面図である。
図4は、本実施の形態に係る正極集電体600と正極端子200及び電極体700との接続構成を示す斜視図である。具体的には、
図4の(a)は、正極集電体600の端子接続部602と正極端子200とが接続された状態での構成を斜め下方から見た場合の斜視図である。
図4の(b)は、正極集電体600の電極接続部603と電極体700のタブ束710とが接続された状態での構成を斜め下方から見た場合の斜視図である。
図4の(b)では、説明の便宜のため、電極体700は、省略して図示している。
【0045】
正極集電体600は、一端が正極端子200と接続され、他端が電極体700と接続される部材である。具体的には、
図3に示すように、正極集電体600は、正極端子200と接続される端子接続部602と、電極体700と接続される電極接続部603と、端子接続部602及び電極接続部603の間に配置される中間部604とを有している。つまり、1枚のL字形状の平板状部材が折り曲げられて、端子接続部602と中間部604と電極接続部603とを有する正極集電体600が形成されている。
【0046】
端子接続部602は、正極端子200とかしめ等によって接続(接合)される矩形状かつ平板状の部位であり、XY平面に平行に配置されている。つまり、上述の通り、端子接続部602は、貫通孔601を有しており、Z軸方向(以下、第一方向ともいう)に向いた(Z軸方向に面した)状態で、貫通孔601に正極端子200の軸部201が挿入される。
図4の(a)に示すように、軸部201のZ軸方向マイナス側の端部がかしめられることにより、かしめ部201aが形成されて、正極端子200と端子接続部602とがZ軸方向において接合される。端子接続部602と正極端子200とを接続(接合)する手法は、かしめ接合には限定されず、超音波接合、レーザ溶接、抵抗溶接等の溶接、または、ねじ締結等のかしめ以外の機械的接合等が用いられてもよい。
【0047】
図3に戻り、電極接続部603は、電極体700のタブ束710と溶接等によって接続(接合)される矩形状かつ平板状の部位であり、XY平面に平行に配置されている。具体的には、
図4の(a)に示した中間部604及び電極接続部603がY軸方向に向いた(Y軸方向に面した)状態で、電極接続部603のY軸方向プラス側の面である電極接続部第一面603aに、電極体700のタブ束710(図示せず)が溶接により接合される。電極接続部第一面603aと当て板(図示せず)とでタブ束710を挟んだ状態で、溶接が行われる。
図4の(b)に示すように、中間部604及び電極接続部603が、Y軸方向マイナス側に折り曲げられる。これにより、電極接続部第一面603aがZ軸方向マイナス側の面となり、電極接続部603は、Z軸方向に向いた(Z軸方向に面した)状態で、Z軸方向(第一方向)において電極体700のタブ束710と接合された構成となる。
【0048】
言い換えれば、電極体700のタブ束710は、Z軸方向に延設された状態で電極接続部第一面603aに接合され、接合後に、Y軸方向に折り曲げられて、Y軸方向に延設された状態となる。電極接続部603と電極体700のタブ束710とを接続(接合)する手法は、超音波接合、レーザ溶接、抵抗溶接等、どのような溶接が用いられてもよいし、かしめ接合またはねじ締結等の機械的接合等が用いられてもよい。
【0049】
図3に戻り、中間部604は、端子接続部602及び電極接続部603を繋ぐ略矩形状かつ略平板状の部位であり、XY平面に平行に配置されている。具体的には、中間部604は、端子接続部602のZ軸方向マイナス側、及び、電極接続部603のX軸方向マイナス側に配置されている。つまり、中間部604は、Z軸方向(第一方向)から見て端子接続部602と重なる位置に配置され、X軸方向において電極接続部603と並ぶように配置されている。中間部604は、端子接続部602との接続部分605と、電極接続部603との接続部分606とを有している。
【0050】
接続部分605は、端子接続部602のY軸方向プラス側の端部に接続され、Y軸方向プラス側に凸形状となるように湾曲した、YZ平面での断面形状がU字状となる部位である。つまり、接続部分605は、上述の通り、中間部604が端子接続部602に対して折り曲げられて形成される曲げ部であり、折り曲げやすいように、中間部604の他の部位及び端子接続部602よりも厚みが薄く形成されている。具体的には、接続部分605は、中間部604が端子接続部602に対して、Z軸方向マイナス側及びY軸方向マイナス側に折り曲げられて形成される。これにより、中間部604は、端子接続部602のY軸方向プラス側(以下、第三方向ともいう)の端部に接続されて、端子接続部602のZ軸方向マイナス側に配置されることとなる。接続部分605は、湾曲ではなく屈曲された部位であってもよい。
【0051】
接続部分606は、電極接続部603のX軸方向マイナス側の端部に接続され、X軸方向マイナス側に向けてZ軸方向マイナス側に傾斜した、XZ平面での断面形状が略S字状となる部位である。つまり、接続部分606は、中間部604が電極接続部603に対して、Z軸方向マイナス側及びX軸方向マイナス側に2回折り曲げられて形成された傾斜部である。これにより、中間部604は、電極接続部603のX軸方向マイナス側及びZ軸方向マイナス側に配置されることとなる。
【0052】
言い換えれば、電極接続部603は、中間部604のX軸方向プラス側(以下、第二方向ともいう)に配置されている。具体的には、電極接続部603は、中間部604及び端子接続部602よりも、X軸方向プラス側に配置されている。つまり、電極接続部603は、Z軸方向(第一方向)から見て、中間部604及び端子接続部602と重ならない位置に配置されている。電極接続部603と端子接続部602とは、Z軸方向(第一方向)における中間部604の一方側(Z軸方向プラス側)に配置されている。電極接続部603は、Z軸方向(第一方向)において、中間部604よりも端子接続部602側に配置されている、とも言える。つまり、電極接続部603は、Z軸方向(第一方向)において、中間部604よりも、端子接続部602または蓋体120に近い位置(または正極下部ガスケット400に近い位置)に配置されている。本実施の形態では、電極接続部603は、Z軸方向において、端子接続部602と同じ位置に配置されている。
【0053】
具体的には、電極接続部603のZ軸方向マイナス側の面である電極接続部第一面603aは、中間部604のZ軸方向マイナス側の面である中間部第一面604aよりも、Z軸方向プラス側に配置されている。つまり、電極接続部第一面603aは、端子接続部602のZ軸方向マイナス側の面である端子接続部第一面602aと、同一平面上(Z軸方向において同じ位置)に配置されている。電極接続部603のZ軸方向プラス側の面である電極接続部第二面603bは、端子接続部602のZ軸方向プラス側の面である端子接続部第二面602bと、同一平面上(Z軸方向において同じ位置)に配置されている。
【0054】
電極接続部603が、端子接続部602よりも、Z軸方向マイナス側またはZ軸方向プラス側に配置されることで、電極接続部第一面603aが、端子接続部第一面602aよりも、Z軸方向マイナス側またはZ軸方向プラス側に配置されていてもよい。または、電極接続部603が、端子接続部602とは異なる厚みを有していることで、電極接続部第一面603aが、端子接続部第一面602aよりも、Z軸方向マイナス側またはZ軸方向プラス側に配置されていてもよい。同様に、電極接続部第二面603bについても、端子接続部第二面602bよりも、Z軸方向マイナス側またはZ軸方向プラス側に配置されていてもよい。
【0055】
次に、蓄電素子10の製造方法(正極集電体600の折曲工程)について、説明する。
図5は、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法(正極集電体600の折曲工程)を説明する図である。具体的には、
図5の(a)は、正極集電体600を折り曲げる前の状態を示す側面図であり、
図5の(b)は、正極集電体600を折り曲げている途中の状態を示す側面図であり、
図5の(c)は、正極集電体600を折り曲げた後の状態を示す側面図である。上記では、Z軸方向を第一方向とも呼ぶこととしたが、
図5に示す正極集電体600の折曲工程においては、Y軸方向を第一方向とも呼ぶこととする。
図5では、説明の便宜のため、正極端子200、正極上部ガスケット300及び正極下部ガスケット400の図示は省略し、蓋体120、正極集電体600及び電極体700を模式的に示している。
【0056】
図5の(a)に示すように、正極集電体600の端子接続部602と電極接続部603及び中間部604とが直交した状態で、端子接続部602が蓋体120に接合され、電極接続部603が電極体700のタブ束710に接合される。この状態において、第一折曲工程として、電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方をY軸方向(第一方向)の両側から支持しつつ、端子接続部602を中間部604に近づける。本実施の形態では、中間部604を、Y軸方向の両側から治具等により力F1で押さえて支持する。端子接続部602を力F2でZ軸方向マイナス側に押して、接続部分605を折り曲げることにより、端子接続部602を、接続部分605を中心に回転させて中間部604に近づける。中間部604に代えて、または、中間部604に加えて、電極接続部603をY軸方向の両側から支持してもよい。
【0057】
このようにして、
図5の(b)に示すように、接続部分605に起因するスプリングバック量がピークを越えるまで、端子接続部602が50°~70°程度回転するように接続部分605を折り曲げて、端子接続部602を中間部604に近づける。その後、第二折曲工程として、電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方をY軸方向(第一方向)の端子接続部602とは反対側から支持しつつ、端子接続部602を中間部604にさらに近づける。本実施の形態では、中間部604を、Y軸方向プラス側から治具等により力F3で押さえて支持する。端子接続部602を力F4でY軸方向プラス側に押して、接続部分605をさらに折り曲げることにより、端子接続部602を、接続部分605を中心に回転させて中間部604にさらに近づける。中間部604に代えて、または、中間部604に加えて、電極接続部603をY軸方向プラス側から支持してもよい。
【0058】
これにより、
図5の(c)に示すように、端子接続部602が、Y軸方向に向いた(Y軸方向に面した)状態、言い換えれば、電極接続部603及び中間部604と平行な状態となる。この状態では、中間部604が、Y軸方向から見て端子接続部602と重なる位置に配置され、電極接続部603と端子接続部602とが、Y軸方向における中間部604の一方側(Y軸方向マイナス側)に配置される。つまり、折曲工程では、第一折曲工程及び第二折曲工程の順に、2段階で正極集電体600を折り曲げる。この折曲工程では、中間部604を、Y軸方向(第一方向)から見て端子接続部602と重なる位置に配置し、かつ、電極接続部603と端子接続部602とを、Y軸方向(第一方向)における中間部604の一方側(Y軸方向マイナス側)に配置するように、正極集電体600を折り曲げる。電極接続部603を、Y軸方向(第一方向)において中間部604よりも端子接続部602側に配置するように、正極集電体600を折り曲げる、とも言える。
【0059】
この後、正極集電体600は、蓋体120とともにY軸方向プラス側に倒されて(タブ束710が折り曲げられて)、
図4の(b)に示したようなZ軸方向に向いた(Z軸方向に面した)状態となる。このように、正極集電体600は、Y軸方向に向いた状態からZ軸方向に向いた状態に変化するため、第一方向の定義も、Y軸方向からZ軸方向に変化する。上記の力F1~F4は、正極集電体600を上述の通り折り曲げることができればどのような値の力でもよく、正極集電体600の材質等に応じて適宜決定される。
【0060】
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、正極集電体600は、端子接続部602と電極接続部603と中間部604とを有しており、中間部604は、第一方向(Z軸方向)から見て端子接続部602と重なる位置に配置され、電極接続部603と端子接続部602とは、第一方向における中間部604の一方側に配置されている。中間部604が第一方向から見て端子接続部602と重ねられて配置される場合には、電極接続部603が第一方向において端子接続部602から離れて配置されるおそれがある。電極接続部603が第一方向において端子接続部602から離れて配置されれば、電極体700が第一方向において正極端子200から離れた位置に配置されることとなり、電極体700の大きさが制限される。このため、電極接続部603と端子接続部602とを、第一方向における中間部604の一方側に配置する。これにより、電極体700を第一方向において正極端子200に近付けることができるため、より大きな電極体700を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0061】
正極集電体600において、電極接続部603は、第一方向から見て端子接続部602と重ならない位置に配置されている。このように、電極接続部603を第一方向から見て端子接続部602と重ならない位置に配置することで、電極接続部603を第一方向において端子接続部602に近付けることができる。このため、電極体700を第一方向において正極端子200に近付けることができるため、より大きな電極体700を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0062】
正極集電体600において、電極接続部603は、中間部604の第二方向(X軸方向プラス側)に配置され、中間部604は、端子接続部602の第三方向(Y軸方向プラス側)の端部に接続されている。このように、電極接続部603を、中間部604の第二方向に配置することで、電極接続部603の、第一方向から見て中間部604と重ならない部分を、第一方向において端子接続部602に近付けることができる。このため、電極体700を第一方向において正極端子200に近付けることができる。
【0063】
端子接続部602の第三方向の端部に中間部604を接続することで、電極接続部603を電極体700に容易に接続できる。つまり、端子接続部602のX軸方向マイナス側の端部に中間部604が接続されていると、中間部604が端子接続部602に対してL字状に90°開いた状態で電極接続部603に電極体700のタブ束710を接続する場合に、タブ束710を90°ねじる必要がある。これに対し、端子接続部602の第三方向の端部に中間部604を接続することで、中間部604を端子接続部602に対して開いた状態でもタブ束710を90°ねじる必要がないため、電極接続部603にタブ束710を容易に接続できる。これにより、集電体600と電極体700との接続を容易にしつつ、より大きな電極体700を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0064】
正極集電体600は、板状部材が折り曲げられた構造を有しており、中間部604を介して端子接続部602に対する電極接続部603の位置を、ある程度任意に移動させることができる。このため、電極接続部603の位置の自由度が高いため、電極接続部603と電極体700との接続を容易に行うことができる。さらに、電極接続部603を電極体700に近付けることができるため、タブ束710の突出長さを短くできる。タブ束710の突出長さを短くできると、容器100内においてタブ束710が占有するスペースが減るため、より大きな電極体700を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0065】
蓄電素子10の製造方法において、折曲工程では、正極集電体600の中間部604を正極集電体600の端子接続部602と重なる位置に配置し、かつ、正極集電体600の電極接続部603と端子接続部602とを、第一方向における中間部604の一方側に配置するように、正極集電体600を折り曲げる。電極接続部603を中間部604の当該一方側に配置することで、電極体700を正極端子200に近付けることができるため、より大きな電極体700を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0066】
折曲工程では、第一折曲工程及び第二折曲工程の順に2段階で正極集電体600を折り曲げることで、正極集電体600の折り曲げ作業を効率よく行うことができる。これにより、容易に、エネルギー密度の向上を図ることができる蓄電素子10を製造することができる。
【0067】
上記では正極側(正極集電体600側)の構成についての効果の説明を行ったが、負極側(負極集電体610側)の構成についても同様の効果を奏する。以下についても、同様である。
【0068】
[4 変形例の説明]
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。
図6は、本実施の形態の変形例1に係る正極集電体600と正極端子200及び電極体700との接続構成を示す斜視図である。具体的には、
図6の(a)は、
図4の(a)に対応する図であり、
図6の(b)は、
図4の(b)に対応する図である。
【0069】
図6に示すように、本変形例では、上記実施の形態における正極下部ガスケット400に代えて、正極下部ガスケット400aが配置されている。具体的には、本変形例における正極下部ガスケット400aは、上記実施の形態における正極下部ガスケット400の構成に加えて、規制部403を有している。その他の構成については、上記実施の形態と同様である。
【0070】
規制部403は、正極集電体600の電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方が、Z軸方向(第一方向)において、端子接続部602から離れる方向(Z軸方向マイナス側)に移動するのを規制する部位である。
【0071】
具体的には、
図6の(a)に示すように、規制部403は、正極下部ガスケット400aのX軸方向プラス側の部位のZ軸方向マイナス側の面に設けられ、X軸方向マイナス側に向けて突出する突起(爪)である。
図6の(b)に示すように、規制部403は、電極接続部603及び中間部604が端子接続部602に対して折り曲げられた場合に、電極接続部603のX軸方向プラス側の端部のZ軸方向マイナス側に配置される。これにより、規制部403は、電極接続部603のX軸方向プラス側の端部と係合し、電極接続部603がZ軸方向(第一方向)において端子接続部602から離れる方向(Z軸方向マイナス側)に移動するのを規制する。
【0072】
規制部403は、電極接続部603のY軸方向プラス側またはY軸方向マイナス側の端部に配置されてもよいし、中間部604のX軸方向マイナス側またはY軸方向マイナス側の端部に配置されてもよい。または、正極下部ガスケット400aは、これらのいずれかの端部に配置される複数の規制部403を有していてもよい。
【0073】
電極接続部603の移動を効果的に規制する等の観点からは、規制部403は、電極接続部603のX軸方向プラス側またはY軸方向マイナス側の端部に配置されるのが好ましい。電極接続部603に接合されたタブ束710の損傷を抑制する等の観点からは、規制部403は、中間部604のX軸方向マイナス側またはY軸方向マイナス側の端部に配置されるのが好ましい。電極接続部603及び中間部604が端子接続部602に対して開くのを効果的に抑制する等の観点からは、規制部403は、電極接続部603のY軸方向マイナス側または中間部604のY軸方向マイナス側の端部に配置されるのが好ましい。
【0074】
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、正極下部ガスケット400aは、正極集電体600の電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方が、第一方向(Z軸方向)において端子接続部602から離れるのを規制する規制部403を備えている。このように、電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方が、第一方向において端子接続部602から離れるのを規制することで、電極体700が第一方向において正極端子200から遠ざかるのを抑制できる。特に、正極集電体600は、板状部材が接続部分605で折り曲げられた構造であるため、接続部分605に起因するスプリングバックにより、電極接続部603及び中間部604が端子接続部602から離れる方向に移動しやすい。このため、規制部403によって電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方が端子接続部602から離れるのを規制する意義が特に大きい。これにより、電極体700を第一方向において正極端子200に近付けることができるため、より大きな電極体700を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0075】
規制部403は、電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方に係合する突起でなくともよく、電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方と互いに嵌合する嵌合部であってもよい。規制部403は、正極下部ガスケット400aではなく、端子接続部602、蓋体120、または、かしめ部201a等に設けられていてもよい。規制部403は、電極接続部603及び中間部604の少なくとも一方と、端子接続部602または正極下部ガスケット400a等とを接着する接着剤または両面テープ、かしめ接合する接合部、ねじ締結する締結部、溶接接合する溶接部、溶着接合する溶着部等であってもよい。
【0076】
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。
図7は、本実施の形態の変形例2に係る正極集電体600aの構成を示す斜視図及び正面図である。具体的には、
図7の(a)は、正極集電体600aが開いた状態、つまり、
図4の(a)に示したような状態を斜め下方から見た場合の斜視図である。
図7の(b)は、正極集電体600aが閉じた状態、つまり、
図4の(b)に示したような状態を正面から見た場合の正面図であり、
図3の(b)に対応する図である。
【0077】
図7の(a)に示すように、本変形例における正極集電体600aは、上記実施の形態における正極集電体600と異なり、中間部604の端子接続部602との接続箇所に、X軸方向マイナス側に凹む凹部607が形成されている。これにより、本変形例における接続部分605aは、上記実施の形態における接続部分605よりも、X軸方向の長さが短くなっている。つまり、本変形例では、上記実施の形態よりも、接続部分606及び電極接続部603がX軸方向マイナス側に配置されている。
【0078】
このような構成により、接続部分606が有する曲げ部606a及び606bについても、X軸方向マイナス側に配置されることで、
図7の(b)に示すように、曲げ部606aが、Z軸方向(第一方向)から見て、端子接続部602と重なる位置に配置されることとなる。曲げ部606a及び606bは、接続部分606において、中間部604から電極接続部603に向けて屈曲または湾曲された部位である。つまり、曲げ部606aは、接続部分606のX軸方向マイナス側の湾曲した部位であり、曲げ部606bは、接続部分606のX軸方向プラス側の湾曲した部位である。その他の構成については、上記実施の形態と同様である。
【0079】
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、正極集電体600aにおいて、中間部604は、電極接続部603との接続部分606に曲げ部606aを有しており、曲げ部606aは、端子接続部602と重なる位置に配置されている。このように、中間部604の曲げ部606aを端子接続部602に重ねることで、中間部604が端子接続部602の位置から曲がる形状となるため、電極接続部603の大きさを大きくできる。これにより、より大きな電極接続部603に電極体700を接続できるため、電極体700と正極集電体600とをより安定して接続できる。本変形例において電極接続部603を上記実施の形態と同じ大きさにする場合には、正極集電体600aの小型化を図ることができるため、省スペース化を図ることができる。
【0080】
本変形例において、電極接続部603を、Z軸方向マイナス側に少し移動するように配置し、かつ、X軸方向マイナス側にさらに移動するように配置することで、曲げ部606bについても、Z軸方向から見て端子接続部602と重なる位置に配置することもできる。電極接続部603がZ軸方向から見て端子接続部602と重なる位置に配置されるまで、電極接続部603をX軸方向マイナス側にさらに移動させることもできる。さらに、中間部604をZ軸方向マイナス側に少し移動させることで、電極接続部603がZ軸方向から見て中間部604と重なる位置に配置されるまで、電極接続部603をX軸方向マイナス側にさらに移動させることもできる。これらの場合、電極接続部603または中間部604がZ軸方向マイナス側に少し移動するため、電極体700の大きさが多少は制限されるおそれがあるが、電極接続部603の大きさをさらに大きくしたり、X軸方向における省スペース化をさらに図ったりできる。
【0081】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。以下では、正極集電体について説明するが、負極集電体610についても同様である。
【0082】
上記実施の形態及びその変形例では、正極集電体600、600aの電極接続部603は、電極体700のタブ束710との接合後に、端子接続部602に向けて折り曲げられることとした。しかし、電極接続部603は、折り曲げられた状態で、タブ束710と接合されてもよい。
【0083】
上記実施の形態及びその変形例では、正極集電体600、600aの中間部604の接続部分605、605aは、端子接続部602のY軸方向プラス側の端部に接続されていることとした。しかし、接続部分605、605aは、端子接続部602のY軸方向マイナス側の端部またはX軸方向マイナス側の端部に接続されていてもよい。ただし、中間部604が端子接続部602のX軸方向マイナス側の端部で接続されている場合には、上述の通り電極接続部603に電極体700のタブ束710を接続するのが困難になる場合があるため、接続部分605、605aは、端子接続部602のY軸方向プラス側の端部またはY軸方向マイナス側の端部に接続されているのが好ましい。
【0084】
上記実施の形態及びその変形例において、正極集電体600、600aの中間部604には、かしめ部201aが内方に配置される凹部または貫通孔が形成されていてもよい。これによって、中間部604を端子接続部602に近付けることができるため、より大きな電極体700を配置でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0085】
上記実施の形態及びその変形例では、電極体700は、複数枚の平板状極板を積層したスタック型の電極体であることとした。しかし、電極体700の形状は特に限定されず、電極体700は、正極板と負極板との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成された巻回型の電極体であってもよい。電極体700は、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体であってもよい。電極体700の個数は1つには限定されず、2つ以上設けられていてもよい。
【0086】
上記実施の形態及びその変形例では、正極側(正極集電体600、600a側)及び負極側(負極集電体610側)の双方が、上記構成を有していることとした。しかし、正極側または負極側が上記構成を有していなくてもよい。
【0087】
上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0088】
本発明は、このような蓄電素子として実現できるだけでなく、当該蓄電素子に備えられる集電体(正極集電体、負極集電体)、または、当該集電体及び規制部403としても実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0090】
10 蓄電素子
200 正極端子
201 軸部
201a かしめ部
210 負極端子
400、400a 正極下部ガスケット
403 規制部
500 負極下部ガスケット
600、600a 正極集電体
602 端子接続部
602a 端子接続部第一面
602b 端子接続部第二面
603 電極接続部
603a 電極接続部第一面
603b 電極接続部第二面
604 中間部
604a 中間部第一面
605、605a、606 接続部分
606a、606b 曲げ部
610 負極集電体
700 電極体
710、720 タブ束