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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20240305BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240305BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240305BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240305BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240305BHJP
【FI】
B32B3/30
C09D201/00
C09D175/04
C09D5/02
C09D7/61
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020559967
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047432
(87)【国際公開番号】W WO2020116514
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018229369
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019069011
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】神永 純一
(72)【発明者】
【氏名】星 沙耶佳
(72)【発明者】
【氏名】尾村 悠希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠也
(72)【発明者】
【氏名】越山 良樹
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-071425(JP,A)
【文献】特開2001-048994(JP,A)
【文献】特開2017-071693(JP,A)
【文献】特開2001-009983(JP,A)
【文献】特開2002-113826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08J 7/04- 7/06
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む基材フィルムと、
酸素バリア性を有し、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に接して位置するガスバリア層と、
を備え、
前記ガスバリア層はアルカリ金属ポリシリケートを含有せず、
前記ガスバリア層の表面は、
平面部と、
前記平面部から突出した複数の突起部と、を有し、
前記ガスバリア層の厚さ(μm)をd、前記複数の突起部それぞれの高さ(μm)をfとしたときに、
下記式(1)を満たす突起部の数が0~200個/mmであり、
下記式(2)を満たす突起部の数が20個/mm以上であり、
前記式(2)を満たす突起部の、高さ0.2μmの位置における断面の直径が0.4~10μmである、
ガスバリア性フィルム。
d×2≦f (1)
0.2≦f<d×2 (2)
【請求項2】
前記基材フィルムがアンチブロッキング剤をさらに含み、
前記突起部が、前記アンチブロッキング剤に由来する、
請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記ガスバリア層が、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜である、
請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記コーティング剤が、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂をさらに含む、
請求項3に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、またはポリアミド系樹脂フィルムである、
請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
樹脂を含む基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一方の表面に接して位置する、ウェットコート法により設けられた酸素バリア性皮膜であるガスバリア層と、
を備え、
前記ガスバリア層はアルカリ金属ポリシリケートを含有せず、
前記基材フィルムの前記ガスバリア層と接する表面は、平面部と、前記平面部から突出した複数の突起部とを備え、
前記基材フィルムの前記ガスバリア層と接する表面の無作為に選択された0.66mm以上の領域について、前記複数の突起部それぞれの高さを3D測定レーザー顕微鏡測定により計測し、高さ0.3μm以上の突起部の平均高さ(μm)をhとしたときに、前記ガスバリア層の厚さt(μm)が、下記式(3)を満たす、
ガスバリア性フィルム。
0.25×h+0.15≦t≦0.8×h (3)
【請求項7】
前記基材フィルムの前記ガスバリア層と接する表面において、高さが前記ガスバリア層の5倍以上ある突起部の数が10個/mm以下である、請求項6に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムがアンチブロッキング剤をさらに含み、
前記突起部が、前記アンチブロッキング剤に由来する、
請求項6または7に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア層が、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜である、
請求項6~8のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項10】
前記コーティング剤が、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂をさらに含む、
請求項9に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項11】
前記基材フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、またはポリアミド系樹脂フィルムである、
請求項6~10のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項12】
前記ガスバリア層が水性ポリウレタン樹脂を含む、
請求項1または6に記載のガスバリア性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。本願は、2018年12月6日に出願された日本国特願2018-229369、および2019年3月29日に出願された日本国特願2019-69011に対し優先権を主張し、その内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や品質を維持するため、内容物を変性させる気体(水蒸気、酸素、その他)の進入を防ぐ性質、つまりガスバリア性が求められる。
【0003】
従来、これら包装材料には、ガスバリア性を有するフィルム材料(ガスバリア性フィルム)が用いられている。ガスバリア性フィルムとしては、ガスバリア性を有する材料からなるガスバリア層を樹脂基材の表面に設けたものが知られている。ガスバリア層としては、金属箔や無機蒸着膜、ウェットコート法により形成された皮膜等が知られている。前記皮膜としては、酸素バリア性を示すものとして、水溶性高分子、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂を含むコーティング剤から形成された樹脂膜や、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された無機層状鉱物複合樹脂膜が知られている(特許文献1)。
【0004】
無機蒸着膜や無機層状鉱物複合樹脂膜を形成する基材の表面平滑性を高めたり、基材表面の突起を少なくしたりすることで、ガスバリア性が向上することが報告されている(特許文献2~3)。
無機層状鉱物複合樹脂膜の表面平滑性を高めることで、ガスバリア性が向上することが報告されている(特許文献4~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国第6191221号公報
【文献】日本国2001-316489号公報
【文献】日本国2001-48994号公報
【文献】日本国平9-324061号公報
【文献】日本国平9-150484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、基材の表面平滑性を高めたり、基材表面の突起を少なくしたりすると、ガスバリア性フィルムをロール状に巻き取った際に、フィルムの表裏面が密着してブロッキングが発生し、コーティング、巻き替え、スリット、印刷、ラミネート等の後加工工程において、膜傷、破れ、断紙等の不良を発生する場合がある。その結果、スリット等の後加工が困難となる。
【0007】
ブロッキングを防止するためには、無機粒子や有機粒子をアンチブロッキング剤として基材表層に添加して、基材表面に突起を設けておくことが一般的である。しかし、このような基材表面にウェットコート法により皮膜を形成する場合、皮膜の厚さが薄いと、突起の部分で皮膜にピンホール欠陥が生じ、ガスバリア性が安定して発現しない。したがって、皮膜を過剰な厚さで設けなければならず、コーティング剤の乾燥負荷の増大やコーティング剤の材料コストの増大といった問題が生じる。
【0008】
本発明は、ガスバリア性に優れ、かつブロッキングの発生が抑制されたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、ガスバリア性および耐ブロッキング性に優れ、かつウェットコート法による皮膜の形成時の乾燥負荷や材料コストが極力抑えられたガスバリア性フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、樹脂を含む基材フィルムと、酸素バリア性を有し、基材フィルムの少なくとも一方の面に接して位置するガスバリア層とを備えるガスバリア性フィルムである。ガスバリア層はアルカリ金属ポリシリケートを含有しない。
ガスバリア層の表面は、平面部と、平面部から突出した複数の突起部と、を有する。ガスバリア層の厚さ(μm)をd、複数の突起部それぞれの高さ(μm)をfとしたときに、下記式(1)を満たす突起部の数が0~200個/mmであり、下記式(2)を満たす突起部の数が20個/mm以上であり、式(2)を満たす突起部の、高さ0.2μmの位置における断面の直径が0.4~10μmである
d×2≦f (1)
0.2≦f<d×2 (2)
【0010】
本発明の他のガスバリア性フィルムは、樹脂を含む基材フィルムと、ウェットコート法により設けられた酸素バリア性皮膜であるガスバリア層とを備える。ガスバリア層は、基材フィルムの少なくとも一方の表面に接して位置する。ガスバリア層はアルカリ金属ポリシリケートを含有しない。
基材フィルムのガスバリア層と接する表面は、平面部と、平面部から突出した複数の突起部とを備える。
基材フィルムのガスバリア層と接する表面の無作為に選択された0.66mm以上の領域について、複数の突起部それぞれの高さを3D測定レーザー顕微鏡測定により計測し、高さ0.3μm以上の突起部の平均高さ(μm)をhとしたときに、ガスバリア層の厚さt(μm)は、下記式(3)を満たす。
0.25×h+0.15≦t≦0.8×h (3)
【発明の効果】
【0011】
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性に優れ、かつブロッキングの発生が抑制されている。
本発明に係る他のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性および耐ブロッキング性に優れる。また、ウェットコート法による皮膜が過剰な厚さで形成されていないので、皮膜形成時の乾燥負荷や材料コストが極力抑えられている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係るガスバリア性フィルムの模式断面図である。
図2】3D測定レーザー顕微鏡測定による、実施例のガスバリア性フィルムのガスバリア層表面の突起高さの等高図である。
図3】本発明の第二実施形態に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式断面図である。
図4】同ガスバリア性フィルムの他の一例を示す模式断面図である。
図5図3または図4の模式断面図の部分拡大図である。
図6】実施例で使用した基材フィルムのコロナ処理面の突起高さの等高図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のガスバリア性フィルムについて、実施形態を示して説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明者らは、前記した問題の解決のため、ガスバリア性フィルムの基材表面のアンチブロッキング剤の存在箇所を、集束イオン/電子ビーム加工装置で切削して断面を露出させ、その断面を電子顕微鏡で観察し、基材表面からのアンチブロッキング剤の突出状態と、酸素バリア性皮膜の厚さと、アンチブロッキング剤の上での酸素バリア性皮膜の欠損の有無およびそのサイズとの関係を把握し、本発明に至った。
【0014】
図1は、本発明の第一実施形態に係るガスバリア性フィルム10の模式断面図である。
ガスバリア性フィルム10は、基材フィルム1とガスバリア層5とを備える。
ガスバリア層5は、基材フィルム1の少なくとも第一面1a(一方の面)に接して位置している。
ガスバリア層5は、基材フィルム1の第一面1aのみに設けられていてもよいし、第一面1aおよびその反対側の第二面(図示略)の両方に設けられていてもよい。
【0015】
(基材フィルム)
基材フィルム1は樹脂を含む。
樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セロファン等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、炭素数2~10のオレフィンの単独重合体および共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド等の芳香族ポリアミド等が挙げられる。ビニル系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリル系単量体の単独重合体および共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルの総称であり、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルも同様である。
これらの樹脂は、1種または2種以上が組み合わせられて用いられる。
【0016】
基材フィルム1は、アンチブロッキング剤3を含む。アンチブロッキング剤3は、基材フィルム1中に分散している。
基材フィルム1の第一面1aおよび第二面にはそれぞれ局所的に、アンチブロッキング剤3に由来する複数の突起部が存在する。第一面1aおよび第二面において、アンチブロッキング剤3は露出していてもよいし樹脂で覆われていてもよい。
アンチブロッキング剤3は、ガスバリア性フィルム10の表面(ガスバリア層5の表面または基材フィルム1の表面)に突起部を生じさせてガスバリア性フィルム10のブロッキングの発生を抑制し、ガスバリア性フィルム10の加工適性を向上させる。
【0017】
アンチブロッキング剤3は、固体粒子であり、有機系粒子、無機系粒子等が挙げられる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機系粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機系粒子としては、シリカ、ゼオライト、タルク、珪藻土、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのアンチブロッキング剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アンチブロッキング剤3の平均粒径は、例えば、0.4~10μmである。本明細書における平均粒径とは、コールターカウンター法により測定される中位径である。
【0018】
基材フィルム1は、アンチブロッキング剤3以外の他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、フィラー、界面活性剤、金属酸化物等の静電気防止剤が挙げられる。
【0019】
基材フィルム1としては、単一の樹脂で構成された単層フィルム、複数の樹脂で構成された単層または積層フィルム、樹脂層と他の基材(金属、木材、紙、セラミックス等)とが積層された積層フィルム等が挙げられる。
複数の樹脂で構成された積層フィルムの一例として、第一面1a側から、樹脂およびアンチブロッキング剤を含む第1の表層、樹脂を含みアンチブロッキング剤を含まない基層、樹脂およびアンチブロッキング剤を含む第2の表層がこの順に積層したフィルムが挙げられる。
【0020】
基材フィルム1としては、入手の容易さ、水蒸気バリア性の点で、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特に、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステル系樹脂フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、またはポリアミド系樹脂フィルム(特に、ナイロンフィルム)が好ましい。
【0021】
基材フィルム1は、未延伸フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸配向フィルムであってもよい。
基材フィルム1は、表面処理(コロナ放電処理、低温プラズマ処理等)やアンカーコートまたはアンダーコート処理が施されたフィルムであってもよい。例えば、基材フィルム1のガスバリア層5を形成する面に、コロナ処理や低温プラズマ処理を施すことにより、コーティング剤に対する良好な濡れ性と、ガスバリア層5に対する接着強度とを向上できる。
【0022】
基材フィルム1の厚さは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格や用途に応じて適宜選択される。基材フィルム1の厚さは、実用的には3μm~200μmであり、好ましくは5μm~120μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。
【0023】
(ガスバリア層)
ガスバリア層5は、ウェットコート法により形成される酸素バリア性皮膜として公知のものであってよい。
ガスバリア層5は、ウェットコート法により基材フィルム1の第一面1aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。本明細書において、塗膜とは湿潤膜であり、皮膜とは乾燥膜である。
【0024】
ガスバリア層5としては、水溶性高分子と、無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜(無機層状鉱物複合樹脂膜)が好ましい。ガスバリア層として無機層状鉱物複合樹脂膜を有するガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示す、包装材料として充分な他材料への密着強度や膜凝集強度を有する、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと耐延伸性を有する、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクがない等の利点がある。コーティング剤については後で詳しく説明する。
【0025】
ガスバリア層5の表面は、平面部5aと、平面部5aから突出した複数の突起部5b,5cとを備える。
複数の突起部5b,5cは、基材フィルム1に含まれるアンチブロッキング剤3に由来する。すなわち、前記したように、基材フィルム1の第一面1aには、アンチブロッキング剤3に由来する複数の突起部が存在する。そのため、第一面1aにコーティング剤を塗布すると、第一面1aに沿ってコーティング剤の塗膜が形成され、第一面1aの複数の突起部に対応する位置に複数の突起部5b,5cを有するガスバリア層5が形成される。
【0026】
図1に示すように、ガスバリア層5の厚さ(μm)をd、複数の突起部5b,5cそれぞれの高さ(μm)をfとしたときに、突起部5bは下記式(1)を満たし、突起部5cは下記式(2)を満たす。
d×2≦f (1)
0.2≦f<d×2 (2)
【0027】
ガスバリア層5の表面において、式(1)を満たす突起部5bの数は、0~200個/mmであり、0~100個/mmが好ましい。突起部5bの数が0個/mmであることは、突起部5bが存在しないことを示す。
図1に示す突起部5bは、高さfがd×2μm以上であるので、突起部5bのところでガスバリア層5の厚さが薄くなり、酸素バリア性を損なうおそれがある。突起部5bの数が200個/mm以下であれば、酸素バリア性が優れる。
【0028】
ガスバリア層5の表面において、式(2)を満たす突起部5cの数は、20個/mm以上であり、30個/mm以上が好ましい。
突起部5cは、高さfが0.2μm以上であるので、ガスバリア層5の表面でのガスバリア性フィルム10のブロッキングを抑制する。また、高さfが(d×2)μm未満であるので、ガスバリア層5の酸素バリア性を損ないにくい。突起部5cの数が20個/mm以上であれば、ガスバリア性フィルム10のブロッキングを抑制でき、ガスバリア性フィルム10の加工適性が優れる。
突起部5cの数の上限は特に限定されないが、例えば200個/mmである。
【0029】
突起部5b,5cの数は、基材フィルム1におけるアンチブロッキング剤3の平均粒径および含有量、ガスバリア層5の厚さd等により調整できる。
本明細書においてガスバリア層5の厚さdとは、ガスバリア層5の平面部5aにおける厚さを意味する。厚さdは、ガスバリア性フィルム10を厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定される。
突起部5b,5cの高さfとは、ガスバリア性フィルム10の厚さ方向において平面部5aの高さを基準とした突起部5b,5cの頂点の高さである。
ガスバリア層5の表面における突起部5b,5cの数の測定方法は以下の通りである。
【0030】
<突起部の数の測定方法>
3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXT OLS4000)を用いて、以下の条件で、ガスバリア層5表面の無作為に選択した領域について、突起の頂点と平面部5aの高さを測定する。平面部5aの高さ+0.2μm以上の高さの突起を突起部5b,5cと判定し、ガスバリア層5の厚さdの2倍以上の高さがある突起部5bの数と、ガスバリア層5の厚さdの2倍未満の突起部5cの数をカウントし、単位面積あたりの値に換算する。
・レンズ:対物レンズ、倍率50倍(MPLAPONLEXT50)
・測定面積:514μm×1285μm
・フィルタ:表面補正
・モード:プロファイルモードにて、突起の頂点と平面部の高さを測定
【0031】
前記した突起部の数の測定においては、図2に示すような、ガスバリア層5の表面の等高図が得られる。図2においては、高さが高い場所ほど明度が高くなるように表示している。
【0032】
突起部5cの、高さ0.2μm(平面部5aの高さ+0.2μmの位置)での断面の直径は、0.4~10μmが好ましく、1~6μmがより好ましい。前記直径が前記下限値以上であれば、突起部が脱落しにくく、前記上限値以下であれば、ガスバリア性フィルムの見た目によるゆがみや印刷不良が少なくなる。
突起部5bが存在する場合、突起部5bの、高さ0.2μm(平面部5aの高さ+0.2μmの位置)での断面の直径は、0.4~10μmが好ましく、1~6μmがより好ましい。前記直径が前記下限値以上であれば、突起部が脱落しにくく、前記上限値以下であれば、ガスバリア性フィルムの見た目によるゆがみや印刷不良が少なくなる。
突起部5b,5cの断面の直径は、前記した3D測定レーザー顕微鏡により測定される。詳しくは後述する実施例に記載のとおりである。
突起部5b,5cの断面が不定形であった場合、3D測定レーザー顕微鏡で測定される突起部5b,5cの断面の面積から換算した円相当径(Heywood径)を直径とする。
【0033】
ガスバリア層5の厚さdは、ガスバリア層5の表面における突起部5b,5cの数、要求される酸素バリア性に応じて設定される。ガスバリア層5の厚さdは、0.2~5μmが好ましく、0.2~2μmがより好ましく、0.3~1μmがさらに好ましい。ガスバリア層5の厚さdが前記下限値以上であれば、充分な酸素バリア性が得られやすい。また、均一な塗膜を形成しやすく、基材フィルム1の表面の突起部による酸素バリア性への影響を抑制できる。ガスバリア層5の厚さdが前記上限値以下であれば、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
【0034】
(ガスバリア性フィルムの製造方法)
ガスバリア性フィルム10は、基材フィルム1の少なくとも第一面1a(第一面1aのみ、または第一面1aおよび第二面の両方)にガスバリア層5を形成することにより製造できる。
基材フィルム1としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
ガスバリア層5は、前記したように、ウェットコート法により基材フィルム1の少なくとも第一面1aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。
ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知のウェットコート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥温度は、例えば、50~200℃が好ましい。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば、1秒~5分間が好ましい。
【0035】
(コーティング剤)
コーティング剤の好ましい一態様は、前記したように、水溶性高分子と、無機層状鉱物とを含むコーティング剤である。
本態様のコーティング剤は、典型的には、水性媒体をさらに含む。
本態様のコーティング剤は、水性ポリウレタン樹脂をさらに含むことが好ましい。
本態様のコーティング剤は、必要に応じて、ガスバリア性や包装材料としての強度を損なわない範囲で、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0036】
<水溶性高分子>
水溶性高分子とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質である高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力に比べ水分子との分子間力が強くなり、高分子鎖の絡み合いが解かれ、水に均一に分散している状態を指す。
【0037】
水溶性高分子としては、無機層状鉱物の単位結晶間に進入し、配位(インターカレーション)することが可能な化合物であれば特に限定されない。
水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコールおよびその誘導体等)、他のビニル系重合体(ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそのエステル、塩およびそれらの共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびその共重合体等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、でんぷん類(酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリン等)、極性基を有する共重合ポリエステル(スルホイソフタル酸構造を含むポリエステル等)、ウレタン系高分子(ただし、後述する水性ポリウレタン樹脂を除く。)、または、これらの各種重合体のカルボキシル基等が変性した官能基変性重合体等が挙げられる。
水溶性高分子は、皮膜凝集強度を考慮すると、重合度が200以上であることが好ましい。
本態様のコーティング剤に含まれる水溶性高分子は1種でもよく2種以上でもよい。
【0038】
水溶性高分子は、少なくとも、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましく、鹸化度が95%以上かつ重合度が300以上のポリビニルアルコール樹脂を含むことがより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、300~2400が好ましく、450~2000がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂は、鹸化度や重合度が高いほど、吸湿膨潤性が低くなる。ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が95%以上であれば、充分なガスバリア性が得られやすい。重合度が2400以下であれば、コーティング剤の粘度が充分に低く、他の成分と均一に混合することが容易であり、ガスバリア性や密着強度の低下といった不具合が生じにくい。
【0039】
<無機層状鉱物>
無機層状鉱物とは、極薄(例えば、厚さ10~500nm)の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。無機層状鉱物は、ガスバリア層のガスバリア性をより高める目的で用いられる。
無機層状鉱物としては、水中で膨潤およびへき開の双方または一方の性質を有する化合物が好ましく、中でも、水への膨潤性を有する粘土化合物が好ましい。より具体的には、無機層状鉱物は、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収および膨潤の双方または一方の性質を有する粘土化合物が好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si4+がO2-に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+等が、O2-およびOHに対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
【0040】
無機層状鉱物の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物等の含水ケイ酸塩が挙げられ、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等のカオリナイト族粘土鉱物;アンチゴライト、クリソタイル等のアンチゴライト族粘土鉱物;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物;バーミキュライト等のバーミキュライト族粘土鉱物;白雲母、金雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等の雲母またはマイカ族粘土鉱物;等が挙げられる。これらの無機層状鉱物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機層状鉱物としては、モンモリロナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母等のマイカ族粘土鉱物が特に好ましい。
【0041】
無機層状鉱物(C)の大きさは、平均粒径が10μm以下で、かつ、厚さが500nm以下であることが好ましい。平均粒径、厚さがそれぞれ前記上限値以下であれば、コーティング剤から形成されるガスバリア層の中で無機層状鉱物が均一に整列しやすくなり、ガスバリア性、膜凝集強度が向上する。
無機層状鉱物の平均粒径の下限は、例えば1μmである。
無機層状鉱物の厚さの下限は、例えば1nmである。
無機層状鉱物の平均粒径は、レーザー回折・分散法により測定される。
無機層状鉱物の厚さは、X線回折法により測定される。
【0042】
<水性媒体>
水性媒体としては、水、水溶性または親水性の有機溶剤、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。水性媒体としては、水、または水を主成分として含む混合溶媒が好ましい。
水性媒体中の水の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
水溶性または親水性の有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリル等の二トリル類等が挙げられる。
【0043】
<水性ポリウレタン樹脂>
水性ポリウレタン樹脂は、酸基を有するポリウレタン樹脂(以下、「酸基含有ポリウレタン樹脂」とも記す。)とポリアミン化合物とを含む。水性ポリウレタン樹脂は、ガスバリア層に柔軟性と、ガスバリア性、特に酸素バリア性を付与するために用いられる。
水性ポリウレタン樹脂では、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、架橋剤としてのポリアミン化合物とを結合させることにより、ガスバリア性を発現させている。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物との結合は、イオン結合(例えば、カルボキシル基と第3級アミノ基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
【0044】
水性ポリウレタン樹脂を構成する酸基含有ポリウレタン樹脂は、酸基を有することから、アニオン性および自己乳化性を有しており、アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂とも称される。
酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸基は、ポリウレタン樹脂の末端または側鎖に位置してもよいが、少なくとも側鎖に位置していることが好ましい。酸基は、通常、中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成していてもよい。なお、酸基は、水性ポリウレタン樹脂を構成するポリアミン化合物のアミノ基(イミノ基または第三級窒素原子)と結合可能である。
【0045】
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、水溶性または水分散性を付与できる範囲で選択することができる。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、5~100mgKOH/gが好ましく、10~70mgKOH/gがより好ましく、15~60mgKOH/gがさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が前記下限値以上であれば、水性ポリウレタン樹脂と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性を向上しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が前記上限値以下であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、JIS K0070に準じた方法により測定される。
【0046】
酸基含有ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基(尿素基)濃度の合計(合計濃度)は、ガスバリア性の観点から、15質量%以上が好ましく、20~60質量%がより好ましい。合計濃度が前記下限値以上であれば、ガスバリア性がより優れる。合計濃度が前記上限値以下であれば、ガスバリア層が剛直で脆くなることを抑制しやすい。
ウレタン基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレタン基の分子量(59g/当量)の割合を意味する。
ウレア基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)の割合を意味する。
なお、酸基含有ポリウレタン樹脂として混合物を用いる場合、ウレタン基濃度およびウレア基濃度は、反応成分の仕込みベース、すなわち各成分の使用割合をベースとして算出できる。
【0047】
酸基含有ポリウレタン樹脂は、少なくとも剛直な単位(炭化水素環で構成された単位)と短鎖単位(例えば、炭化水素鎖で構成された単位)とを有していることが好ましい。すなわち、酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位は、ポリイソシアネート成分、ポリヒドロキシ酸成分、ポリオール成分や鎖伸長剤成分(特に、少なくともポリイソシアネート成分)に由来して、炭化水素環(芳香族および非芳香族炭化水素環のうち少なくとも1つ)を含むことが好ましい。
【0048】
酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、10~70質量%が好ましく、15~65質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。炭化水素環で構成された単位の割合が前記下限値以上であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。炭化水素環で構成された単位の割合が前記上限値以下であれば、ガスバリア層が剛直で脆くなることを抑制しやすい。
【0049】
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、適宜選択可能であるが、800~1,000,000が好ましく、800~200,000がより好ましく、800~100,000がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が前記下限値以上であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が前記上限値以下であれば、コーティング剤の粘度の上昇を抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0050】
酸基含有ポリウレタン樹脂は、ガスバリア性を高めるため、結晶性であってもよい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、100~200℃が好ましく、110~180℃がより好ましく、120~150℃がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点が前記下限値以上であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0051】
水性ポリウレタン樹脂は、中和剤を含み、酸基含有ポリウレタン樹脂が水性媒体中に溶解あるいは分散した状態で形成されることが好ましい。
水性媒体は前記したとおりである。
水性ポリウレタン樹脂は、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が溶解した水溶液の形態であってよく、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が分散した水分散体の形態であってもよい。
【0052】
水分散体において、分散粒子(ポリウレタン樹脂粒子)の平均粒子径は特に限定されず、20~500nmが好ましく、25~300nmがより好ましく、30~200nmがさらに好ましい。分散粒子の平均粒子径が前記下限値以上であれば、ガスバリア性を向上しやすい。分散粒子の平均粒子径が前記上限値以下であれば、分散粒子と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性の低下を抑制しやすく、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。
分散粒子の平均粒子径は、水を分散媒とし、固形分濃度が0.03~0.3質量%の状態で、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製 FPAR-10)にて計測される値である。
【0053】
水性ポリウレタン樹脂では、架橋剤としてのポリアミン化合物と、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とを結合させることにより、ガスバリア性を発現させる。なお、ポリアミン化合物と酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基との結合は、イオン結合(例えば、第三級アミノ基とカルボキシル基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
そのため、ポリアミン化合物としては、酸基と結合し、かつ酸素バリア性を向上できるものであれば特に限定されるものではなく、2以上の塩基性窒素原子を有する種々の化合物が用いられる。塩基性窒素原子は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と結合しうる窒素原子であり、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等のアミノ基における窒素原子が挙げられる。
【0054】
ポリアミン化合物としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を2以上有するポリアミン化合物が挙げられる。
ポリアミン化合物の具体例としては、例えば、アルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類、複数の塩基性窒素原子を有するケイ素化合物等が挙げられる。アルキレンジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~10のアルキレンジアミン等が挙げられる。ポリアルキレンポリアミン類としては、例えばテトラアルキレンポリアミン等が挙げられる。複数の塩基性窒素原子(アミノ基などの窒素原子を含む)を有するケイ素化合物としては、例えば2-〔N-(2-アミノエチル)アミノ〕エチルトリメトキシシラン、3-〔N-(2-アミノエチル)アミノ〕プロピルトリエトキシシラン等の、複数の塩基性窒素原子を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0055】
ポリアミン化合物のアミン価は、100~1900mgKOH/gが好ましく、150~1900mgKOH/gがより好ましく、200~1900mgKOH/gがさらに好ましく、200~1700mgKOH/gが特に好ましく、300~1500mgKOH/gが最も好ましい。ポリアミン化合物のアミン価が前記下限値以上であれば、ガスバリア性を向上しやすい。ポリアミン化合物のアミン価が前記上限値以下であれば、水性ポリウレタン樹脂の水分散安定性に優れる。
【0056】
ポリアミン化合物のアミン価は、以下の方法により測定される。
試料を0.5~2g精秤する(試料量Sg)。精秤した試料にエタノール30gを加え溶解させる。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え0.2mol/Lのエタノール性塩酸溶液(力価f)で滴定を行う。溶液の色が緑から黄の間の色に変化した点を終点とし、このときの滴定量(AmL)を計量し、以下の計算式1を用いてアミン価を求める。
計算式1:アミン価(mgKOH/g)=A×f×0.2×56.108/S
【0057】
水性ポリウレタン樹脂において、ポリアミン化合物の含有量は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、ポリアミン化合物の塩基性窒素原子とのモル比(酸基/塩基性窒素原子)が10/1~0.1/1となる量が好ましく、5/1~0.2/1となる量がより好ましい。酸基/塩基性窒素原子が前記範囲内であれば、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物の架橋反応が適切におこり、ガスバリア層に優れた酸素バリア性が発現する。
【0058】
水性ポリウレタン樹脂は、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
水性ポリウレタン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、アセトン法、プレポリマー法等の、通常のポリウレタン樹脂の水性化技術が適用可能である。ウレタン化反応では、必要に応じてアミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒等のウレタン化触媒を用いてもよい。
例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分および鎖伸長剤成分のうち少なくとも1つと、を反応させることにより、水性ポリウレタン樹脂を調製できる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性または水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、中和剤で中和して水性媒体に溶解または分散した後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、水性ポリウレタン樹脂を調製できる。
【0059】
<他の成分>
他の成分としては、例えば、ポリイソシアネート、カルボジイミド、エポキシ化合物、オキサゾリドン化合物、アジリジン系化合物などの反応性硬化剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0060】
<各成分の含有割合>
コーティング剤中の水溶性高分子の含有量は、コーティング剤中の全固形分に対して、25~80質量%が好ましく、30~75質量%がより好ましく、35~70質量%がさらに好ましい。水溶性高分子の含有量が前記下限値以上であれば、無機層状鉱物を分散しやすい。水溶性高分子の含有量が前記上限値以下であれば、無機層状鉱物の分散を均一にしやすい。
【0061】
コーティング剤中の無機層状鉱物の含有量は、コーティング剤中の全固形分に対して、3~20質量%が好ましく、5~16質量%がより好ましく、7~12質量%がさらに好ましい。無機層状鉱物の含有量が前記下限値以上であれば、ガスバリア層のガスバリア性を向上しやすい。無機層状鉱物の含有量が前記上限値以下であれば、ガスバリア層の柔軟性を向上しやすい。
【0062】
コーティング剤中、水溶性高分子と無機層状鉱物と水性ポリウレタン樹脂との合計の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。この合計の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0063】
本態様のコーティング剤は、水溶性高分子と、無機層状鉱物と、必要に応じて水性ポリウレタン樹脂と、必要に応じて他の成分と、必要に応じてさらなる水性媒体等を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
【0064】
(作用効果)
以上説明したガスバリア性フィルム10にあっては、ガスバリア層5の表面における突起部5bの数が0~200個/mmであり、突起部5cの数が20個/mm以上であるので、ガスバリア性に優れ、かつブロッキングの発生が抑制されている。ブロッキングの発生が抑制されているので、加工適性に優れ、スリットやラミネート等の後加工を施しやすい。
【0065】
本実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、基材フィルム1がアンチブロッキング剤3を含み、突起部5b,5cがアンチブロッキング剤3に由来する例を示したが、基材フィルム1がアンチブロッキング剤を含まず、突起部5b,5cがアンチブロッキング剤3に由来しないものであってもよい。例えば突起部5b,5cが、ガスバリア層5中に含まれる異物に由来するものであってもよい。ブロッキングの抑制効果に優れる点では、基材フィルム1がアンチブロッキング剤3を含み、突起部5b,5cがアンチブロッキング剤3に由来することが好ましい。
【0066】
ガスバリア性フィルムは、必要に応じて、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。
ガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表面に位置することが好ましい。ガスバリア性フィルムが熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、ヒートシールによって密封可能なものとなる。
熱融着層は、例えば、基材フィルム1の少なくとも第一面1aにガスバリア層5を設けた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。
【0067】
本発明の第二実施形態について説明する。
図3は、本実施形態に係るガスバリア性フィルム110を示す模式断面図である。
ガスバリア性フィルム110は、基材フィルム101と、基材フィルム101の第一面101a(一方の面)に接して位置するガスバリア層105とを備える。
ガスバリア層105は、基材フィルム101の第一面101aのみに設けられている。
【0068】
図4は、本実施形態の他のガスバリア性フィルム110Aを示す模式断面図である。
ガスバリア性フィルム110Aは、基材フィルム101と、基材フィルム101の第一面101a(一方の面)およびその反対側の第二面101b(他方の面)それぞれに接して位置する2つのガスバリア層105とを備える。
【0069】
(基材フィルム)
基材フィルム101は樹脂を含む。
樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、セロファン等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、炭素数2~10のオレフィンの単独重合体および共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド等の芳香族ポリアミド等が挙げられる。ビニル系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリル系単量体の単独重合体および共重合体が挙げられ、具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルの総称であり、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルも同様である。これらの樹脂は、1種または2種以上が組み合わせられて用いられる。
【0070】
基材フィルム101は、アンチブロッキング剤103を含む。アンチブロッキング剤103は、基材フィルム101中に分散している。
基材フィルム101の第一面101aおよび第二面101bにはそれぞれ局所的に、アンチブロッキング剤103に由来する複数の突起部が存在する。第一面101aおよび第二面101bにおいて、アンチブロッキング剤103は露出していてもよいし樹脂で覆われていてもよい。突起部については後で詳しく説明する。
アンチブロッキング剤103は、ガスバリア性フィルム110の表面(ガスバリア層105の表面または基材フィルム101の表面)に突起部を生じさせてガスバリア性フィルム110の耐ブロッキング性を高め、ガスバリア性フィルム110の加工適性を向上させる。
【0071】
アンチブロッキング剤103は、固体粒子であり、有機粒子、無機粒子等が挙げられる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機粒子としては、シリカ、ゼオライト、タルク、珪藻土、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのアンチブロッキング剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アンチブロッキング剤103の平均粒径は、例えば、0.4~10μmである。平均粒径は、コールターカウンターにより測定される中位径である。
【0072】
基材フィルム101は、アンチブロッキング剤103以外の他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、フィラー、界面活性剤、金属酸化物等の静電気防止剤、滑剤、スリップ剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、充填剤、防曇剤、紫外線吸収剤、核剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0073】
基材フィルム101としては、単一の樹脂で構成された単層フィルム、複数の樹脂で構成された単層または積層フィルム、樹脂層と他の基材(金属、木材、紙、セラミックス等)とが積層された積層フィルム等が挙げられる。
複数の樹脂で構成された積層フィルムの一例として、第一面101a側から、樹脂およびアンチブロッキング剤を含む第1の表層、樹脂を含みアンチブロッキング剤を含まない基層、樹脂およびアンチブロッキング剤を含む第2の表層がこの順に積層したフィルムが挙げられる。
【0074】
基材フィルム101としては、入手の容易さ、水蒸気バリア性の点で、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特に、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステル系樹脂フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、またはポリアミド系樹脂フィルム(特に、ナイロンフィルム)が好ましく、ポリオレフィン系樹脂フィルムが特に好ましい。
【0075】
基材フィルム101は、未延伸フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸配向フィルムであってもよい。
基材フィルム101は、表面処理(コロナ放電処理、低温プラズマ処理等)、アンカーコートまたはアンダーコート処理が施されたフィルムであってもよい。例えば、基材フィルム101のガスバリア層105を形成する面に、コロナ処理や低温プラズマ処理を施すことにより、コーティング剤に対する良好な濡れ性と、ガスバリア層105に対する接着強度とを向上できる。
【0076】
図5に示すように、基材フィルム101の第一面101aは、平面部101a1と、局所的に平面部101a1から突出した複数の突起部101a2とを備える。
複数の突起部101a2は主にアンチブロッキング剤3に由来するものであるが、アンチブロッキング剤3以外の突起部を含んでいても構わない(図示略)。
【0077】
第一面101aにおいて、複数の突起部101a2のうち高さ0.3μm以上の突起部の平均高さhは、0.5~2.5μmが好ましく、0.6~2.0μmがより好ましい。平均高さhが前記範囲の下限値以上であれば、耐ブロッキング性がより優れる。平均高さhが前記範囲の上限値以下であれば、基材フィルム101の透明性が優れる。また、基材フィルム101からアンチブロッキング剤が脱落しにくい。
【0078】
突起部101a2の高さは、基材フィルム101の厚さ方向において平面部101a1の高さを基準とした突起部101a2の頂点の高さである。
高さ0.3μm以上の突起部101a2の平均高さhは、以下の測定方法により算出される。
【0079】
<平均高さhの測定方法>
第一面101aの無作為に選択された0.66mm以上の領域について、複数の突起部101a2それぞれの高さを3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXT OLS4000)により計測する。具体的には、以下の条件で、突起の頂点と平面部101a1の高さを測定する。そして、平面部101a1の高さ+0.3μm以上の高さの突起を突起部101a2と判定し、測定領域内の全ての突起部101a2の高さの平均値(μm)を算出してhとする。
・レンズ:対物レンズ、倍率50倍(MPLAPONLEXT50)
・測定面積:514μm×1285μm
・フィルタ:表面補正
・モード:プロファイルモードにて、突起の頂点と平面部の高さを測定。
突起部101a2の高さの平均値は、h=Σhi/nにより算出される。ここで、nは、前記領域内の高さ0.3μm以上の突起部101a2の数(個)を示し、hiは、n個の突起部101a2のうちi番目(iは1~nの整数)の突起部101a2の高さを示す。
【0080】
前記した突起部の高さの測定においては、図6に示すような、基材フィルム101の表面の等高図が得られる。図6においては、高さが高い場所ほど明度が高くなるように表示している。
【0081】
基材フィルム101の第一面101aに存在する高さ0.3μm以上の突起部101a2の数は、10~1000個/mmが好ましく、50~300個/mmがより好ましい。高さ0.3μm以上の突起部101a2の数が前記範囲の下限値以上であれば、耐ブロッキング性がより優れ、前記範囲の上限値以下であれば、ガスバリア性がより優れる。
突起部101a2の大きさは、アンチブロッキング剤の平均粒径等によりコントロールすることが出来る。高さ0.3μm以上の突起部101a2の数は、アンチブロッキング剤の添加量等によりコントロールすることが出来る。
【0082】
ガスバリア層の厚さ(μm)をtとしたときに、基材フィルム101の第一面101aに存在する高さ(5×t)μm以上の突起部101a2の数は、10個/mm以下が好ましく、7個/mm以下がより好ましい。下限は特に限定されず、0個/mmであってもよい。高さ5tμm以上の突起部101a2は、ガスバリア層105に比較的大面積の欠陥を生じさせるおそれがある。高さ5tμm以上の突起部101a2の数が前記上限値以下であれば、欠陥の合計面積を充分に小さくでき、ガスバリア性がより優れる。
【0083】
基材フィルム101の第一面101aに存在する、高さ0.3μm以上の突起部101a2の総数に対する高さ(5×t)μm以上の突起部101a2の数の割合は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。下限は特に限定されず、0%であってもよい。高さ(5×t)μm以上の突起部101a2の割合が低いほど、ガスバリア層105の欠陥の合計面積を小さくでき、ガスバリア性がより優れる。
【0084】
第二面101bが図4に示すようにガスバリア層105と接する場合、第二面101bも、第一面101aと同様に、平面部と複数の突起部とを備える。高さ0.3μm以上の突起部の平均高さhおよび数、高さ(5×t)μm以上の突起部の数それぞれの好ましい範囲も第一面101aと同様である。
第二面101bが図3に示すようにガスバリア層105と接しない場合、第二面101bは、平面部と複数の突起部とを備えるものであってもよく、平面部を備え、複数の突起部を備えていないものであってもよい。
【0085】
基材フィルム101の厚さは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格や用途に応じて適宜選択される。基材フィルム101の厚さは、実用的には3μm~200μmであり、好ましくは5μm~120μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。
基材フィルム101の厚さとは、第一面101aの平面部101a1および第二面101bの平面部における厚さ(第一面101aの平面部101a1から第二面101bの平面部までの最短距離)である。厚さは、基材フィルム101またはガスバリア性フィルム110を厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定される。
【0086】
(ガスバリア層)
ガスバリア層105は、ウェットコート法により形成される酸素バリア性皮膜として公知のものであってよい。
ガスバリア層105は、ウェットコート法により基材フィルム1の第一面101aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。塗膜は湿潤膜であり、皮膜は乾燥膜である。
【0087】
ガスバリア層105としては、水溶性高分子と、無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された皮膜(無機層状鉱物複合樹脂膜)が好ましい。ガスバリア層として無機層状鉱物複合樹脂膜を有するガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れた酸素バリア性を示す、包装材料として充分な他材料への密着強度や膜凝集強度を有する、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと耐延伸性を有する、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクがない等の利点がある。コーティング剤については後で詳しく説明する。
【0088】
ガスバリア層105の表面(基材フィルム1側とは反対側の表面)は、基材フィルム101の第一面101aに対応して、平面部105aと、局所的に平面部105aから突出した複数の突起部とを備える。ガスバリア層105の表面の複数の突起部はそれぞれ、第一面101aの複数の突起部101a2に対応する位置に形成されている。
【0089】
ガスバリア層105の厚さt(μm)は、下記式(3)を満たす。hは、基材フィルム101の第一面101aに存在する高さが0.3μm以上の突起部101a2の平均高さ(μm)である。
0.25×h+0.15≦t≦0.8×h (3)
ここで、ガスバリア層105の厚さtとは、ガスバリア層105の平面部105aにおける厚さである。厚さtは、ガスバリア性フィルム110を厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定される。
【0090】
ガスバリア層105の厚さtが(0.25×h+0.15)μm以上であれば、突起部1a2におけるガスバリア層105のピンホール欠陥が少なくなり、安定して優れた酸素バリア性が得られる。ガスバリア層105の厚さtが(0.8×h)μm以下であれば、コーティング剤の塗布量が多いことによる、乾燥負荷や材料コストを抑えることができる。また、ガスバリア性フィルム10が耐ブロッキング性に優れ、加工適性が良好になる。
【0091】
ガスバリア層105の厚さtは、前記の式(1)を満たせば特に限定されるものではないが、0.3~1.5μmが好ましく、0.4~1.0μmがより好ましい。厚さtが前記範囲の下限値以上であれば、より安定して優れた酸素バリア性が得られる。厚さtが前記範囲の上限値以下であれば、コーティング剤の塗布量が充分に少なく、乾燥負荷や材料コストをより抑えることができる。
【0092】
(ガスバリア性フィルムの製造方法)
ガスバリア性フィルム110は、基材フィルム101の少なくとも第一面101a(第一面101aのみ、または第一面101aおよび第二面101bの両方)にガスバリア層105を形成することにより製造できる。
基材フィルム101としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
ガスバリア層105は、前記したように、ウェットコート法により基材フィルム101の少なくとも第一面101aにコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。
ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知のウェットコート法を用いることができる。
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥温度は、例えば、50~200℃が好ましい。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば、1秒~5分間が好ましい。
【0093】
(コーティング剤)
コーティング剤の好ましい一態様は、前記したように、水溶性高分子と、無機層状鉱物とを含むコーティング剤である。
本態様のコーティング剤は、典型的には、水性媒体をさらに含む。
本態様のコーティング剤は、水性ポリウレタン樹脂をさらに含むことが好ましい。
本態様のコーティング剤は、必要に応じて、ガスバリア性や包装材料としての強度を損なわない範囲で、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0094】
<水溶性高分子>
水溶性高分子とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質である高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態を指す。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力に比べ水分子との分子間力が強くなり、高分子鎖の絡み合いがとかれ、水に均一に分散している状態を指す。
【0095】
水溶性高分子としては、無機層状鉱物の単位結晶間に侵入し、配位(インターカレーション)することが可能な化合物が好ましい。
水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体等)、他のビニル系重合体(ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそのエステル、塩およびそれらの共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびその共重合体等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、でんぷん類(酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリン等)、極性基を有する共重合ポリエステル(スルホイソフタル酸構造を含むポリエステル等)、ウレタン系高分子(ただし、後述する水性ポリウレタン樹脂を除く。)、または、これらの各種重合体のカルボキシル基等が変性した官能基変性重合体等が挙げられる。
水溶性高分子は、皮膜凝集強度を考慮すると、重合度が200以上であることが好ましい。
本態様のコーティング剤に含まれる水溶性高分子は1種でもよく2種以上でもよい。
【0096】
水溶性高分子は、少なくともポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましく、鹸化度が95%以上かつ重合度が300以上のポリビニルアルコール樹脂を含むことがより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、300~2400が好ましく、450~2000がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂は、鹸化度や重合度が高いほど、吸湿膨潤性が低くなる。ポリビニルアルコール樹脂の鹸化度が95%以上であれば、充分なガスバリア性が得られやすい。重合度が2400以下であれば、コーティング剤の粘度が充分に低く、他の成分と均一に混合することが容易であり、ガスバリア性や密着強度の低下といった不具合が生じにくい。
【0097】
<無機層状鉱物>
無機層状鉱物とは、極薄(例えば、厚さ10~500nm)の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物を指す。無機層状鉱物は、ガスバリア層のガスバリア性をより高める目的で用いられる。
無機層状鉱物としては、水中で膨潤およびへき開の双方または一方の性質を有する化合物が好ましく、中でも、水への膨潤性を有する粘土化合物が好ましい。より具体的には、無機層状鉱物は、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収および膨潤の双方または一方の性質を有する粘土化合物が好ましい。かかる粘土化合物は、一般には、Si4+がO2-に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、Fe3+等がO2-およびOHに対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。この粘土化合物は、天然の化合物であっても、合成された化合物であってもよい。
【0098】
無機層状鉱物の代表的なものとしては、フィロケイ酸塩鉱物等の含水ケイ酸塩が挙げられ、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等のカオリナイト族粘土鉱物;アンチゴライト、クリソタイル等のアンチゴライト族粘土鉱物;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト族粘土鉱物;バーミキュライト等のバーミキュライト族粘土鉱物;白雲母、金雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等の雲母またはマイカ族粘土鉱物;等が挙げられる。これらの無機層状鉱物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機層状鉱物としては、モンモリロナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、水膨潤性雲母等のマイカ族粘土鉱物が特に好ましい。
【0099】
無機層状鉱物の大きさは、平均粒径が10μm以下で、かつ、厚さが500nm以下であることが好ましい。平均粒径、厚さがそれぞれ前記上限値以下であれば、コーティング剤から形成されるガスバリア層の中で無機層状鉱物が均一に整列しやすくなり、ガスバリア性、膜凝集強度が高いものとなる。
無機層状鉱物の平均粒径の下限は、例えば1μmである。
無機層状鉱物の厚さの下限は、例えば1nmである。
無機層状鉱物の平均粒径は、レーザー回折・散乱法により測定される。
無機層状鉱物の厚さは、X線回折法により測定される。
【0100】
<水性媒体>
水性媒体としては、水、水溶性または親水性の有機溶剤、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。水性媒体としては、水、または水を主成分として含む混合溶媒が好ましい。
水性媒体中の水の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
水溶性または親水性の有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリル等の二トリル類等が挙げられる。
【0101】
<水性ポリウレタン樹脂>
水性ポリウレタン樹脂は、酸基を有するポリウレタン樹脂(以下、「酸基含有ポリウレタン樹脂」とも記す。)とポリアミン化合物とを含む。水性ポリウレタン樹脂は、ガスバリア層に柔軟性と、ガスバリア性、特に酸素バリア性を付与するために用いられる。
水性ポリウレタン樹脂では、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、架橋剤としてのポリアミン化合物とを結合させることにより、ガスバリア性を発現させている。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物との結合は、イオン結合(例えば、カルボキシル基と第3級アミノ基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
【0102】
水性ポリウレタン樹脂を構成する酸基含有ポリウレタン樹脂は、酸基を有することから、アニオン性および自己乳化性を有しており、アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂とも称される。
酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸基は、ポリウレタン樹脂の末端または側鎖に位置してもよいが、少なくとも側鎖に位置していることが好ましい。酸基は、通常、中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成していてもよい。なお、酸基は、水性ポリウレタン樹脂を構成するポリアミン化合物のアミノ基(イミノ基または第三級窒素原子)と結合可能である。
【0103】
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、水溶性または水分散性を付与できる範囲で選択することができる。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、5~100mgKOH/gが好ましく、10~70mgKOH/gがより好ましく、15~60mgKOH/gがさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が前記下限値以上であれば、水性ポリウレタン樹脂と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性を向上しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価が前記上限値以下であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、JIS K0070に準じた方法により測定される。
【0104】
酸基含有ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基(尿素基)濃度の合計(合計濃度)は、ガスバリア性の観点から、15質量%以上が好ましく、20~60質量%がより好ましい。合計濃度が前記下限値以上であれば、ガスバリア性がより優れる。合計濃度が前記上限値以下であれば、ガスバリア層が剛直で脆くなることを抑制しやすい。
ウレタン基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレタン基の分子量(59g/当量)の割合を意味する。
ウレア基濃度とは、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位の分子量に対する、ウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)の割合を意味する。
なお、酸基含有ポリウレタン樹脂として混合物を用いる場合、ウレタン基濃度およびウレア基濃度は、反応成分の仕込みベース、すなわち各成分の使用割合をベースとして算出できる。
【0105】
酸基含有ポリウレタン樹脂は、少なくとも剛直な単位(炭化水素環で構成された単位)と短鎖単位(例えば、炭化水素鎖で構成された単位)とを有していることが好ましい。すなわち、酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位は、ポリイソシアネート成分、ポリヒドロキシ酸成分、ポリオール成分や鎖伸長剤成分(特に、少なくともポリイソシアネート成分)に由来して、炭化水素環(芳香族および非芳香族炭化水素環のうち少なくとも1つ)を含むことが好ましい。
【0106】
酸基含有ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、10~70質量%が好ましく、15~65質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。炭化水素環で構成された単位の割合が前記下限値以上であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。炭化水素環で構成された単位の割合が前記上限値以下であれば、ガスバリア層が剛直で脆くなることを抑制しやすい。
【0107】
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、適宜選択可能であるが、800~1,000,000が好ましく、800~200,000がより好ましく、800~100,000がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が前記下限値以上であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が前記上限値以下であれば、コーティング剤の粘度の上昇を抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0108】
酸基含有ポリウレタン樹脂は、ガスバリア性を高めるため、結晶性であってもよい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、100~200℃が好ましく、110~180℃がより好ましく、120~150℃がさらに好ましい。酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点が前記下限値以上であれば、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。
酸基含有ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0109】
水性ポリウレタン樹脂は、中和剤を含み、酸基含有ポリウレタン樹脂が水性媒体中に溶解あるいは分散した状態で形成されることが好ましい。
水性媒体は前記したとおりである。
水性ポリウレタン樹脂は、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が溶解した水溶液の形態であってよく、水性媒体に酸基含有ポリウレタン樹脂が分散した水分散体の形態であってもよい。
【0110】
水分散体において、分散粒子(ポリウレタン樹脂粒子)の平均粒子径は特に限定されず、20~500nmが好ましく、25~300nmがより好ましく、30~200nmがさらに好ましい。分散粒子の平均粒子径が前記下限値以上であれば、ガスバリア性を向上しやすい。分散粒子の平均粒子径が前記上限値以下であれば、分散粒子と他の材料との均一分散性やコーティング剤の分散安定性の低下を抑制しやすく、ガスバリア性の低下を抑制しやすい。
分散粒子の平均粒子径は、水を分散媒とし、固形分濃度が0.03~0.3質量%の状態で、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製 FPAR-10)にて計測される値である。
【0111】
水性ポリウレタン樹脂では、架橋剤としてのポリアミン化合物と、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とを結合させることにより、ガスバリア性を発現させる。なお、ポリアミン化合物と酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基との結合は、イオン結合(例えば、第三級アミノ基とカルボキシル基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
そのため、ポリアミン化合物としては、酸基と結合し、かつ酸素バリア性を向上できるものであれば特に限定されるものではなく、2以上の塩基性窒素原子を有する種々の化合物が用いられる。塩基性窒素原子は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と結合しうる窒素原子であり、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等のアミノ基における窒素原子が挙げられる。
【0112】
ポリアミン化合物としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を2以上有するポリアミン化合物が挙げられる。
ポリアミン化合物の具体例としては、例えば、アルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類、複数の塩基性窒素原子を有するケイ素化合物等が挙げられる。アルキレンジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~10のアルキレンジアミン等が挙げられる。ポリアルキレンポリアミン類としては、例えばテトラアルキレンポリアミン等が挙げられる。複数の塩基性窒素原子(アミノ基などの窒素原子を含む)を有するケイ素化合物としては、例えば2-〔N-(2-アミノエチル)アミノ〕エチルトリメトキシシラン、3-〔N-(2-アミノエチル)アミノ〕プロピルトリエトキシシラン等の、複数の塩基性窒素原子を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0113】
ポリアミン化合物のアミン価は、100~1900mgKOH/gが好ましく、150~1900mgKOH/gがより好ましく、200~1900mgKOH/gがさらに好ましく、200~1700mgKOH/gが特に好ましく、300~1500mgKOH/gが最も好ましい。ポリアミン化合物のアミン価が前記下限値以上であれば、ガスバリア性を向上しやすい。ポリアミン化合物のアミン価が前記上限値以下であれば、水性ポリウレタン樹脂の水分散安定性に優れる。
【0114】
ポリアミン化合物のアミン価は、以下の方法により測定される。
試料を0.5~2g精秤する(試料量Sg)。精秤した試料にエタノール30gを加え溶解させる。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え0.2mol/Lのエタノール性塩酸溶液(力価f)で滴定を行う。溶液の色が緑から黄の間の色に変化した点を終点とし、このときの滴定量(AmL)を計量し、上述した計算式1を用いてアミン価を求める。
【0115】
水性ポリウレタン樹脂において、ポリアミン化合物の含有量は、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基と、ポリアミン化合物の塩基性窒素原子とのモル比(酸基/塩基性窒素原子)が10/1~0.1/1となる量が好ましく、5/1~0.2/1となる量がより好ましい。酸基/塩基性窒素原子が前記範囲内であれば、酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物の架橋反応が適切におこり、ガスバリア層に優れた酸素バリア性が発現する。
【0116】
水性ポリウレタン樹脂は、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
水性ポリウレタン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、アセトン法、プレポリマー法等の、通常のポリウレタン樹脂の水性化技術が適用可能である。ウレタン化反応では、必要に応じてアミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒等のウレタン化触媒を用いてもよい。
例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分および鎖伸長剤成分のうち少なくとも1つと、を反応させることにより、水性ポリウレタン樹脂を調製できる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性または水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、中和剤で中和して水性媒体に溶解または分散した後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、水性ポリウレタン樹脂を調製できる。
【0117】
<他の成分>
他の成分としては、例えば、ポリイソシアネート、カルボジイミド、エポキシ化合物、オキサゾリドン化合物、アジリジン系化合物等の反応性硬化剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0118】
<各成分の含有割合>
コーティング剤中の水溶性高分子の含有量は、コーティング剤中の全固形分に対して、25~80質量%が好ましく、30~75質量%がより好ましく、35~70質量%がさらに好ましい。水溶性高分子の含有量が前記下限値以上であれば、無機層状鉱物を分散しやすい。水溶性高分子の含有量が前記上限値以下であれば、無機層状鉱物の分散を均一にしやすい。
【0119】
コーティング剤中の無機層状鉱物の含有量は、コーティング剤中の全固形分に対して、3~20質量%好ましく、5~16質量%がより好ましく、7~12質量%がさらに好ましい。無機層状鉱物の含有量が前記下限値以上であれば、ガスバリア層のガスバリア性を向上しやすい。無機層状鉱物の含有量が前記上限値以下であれば、ガスバリア層の柔軟性を向上しやすい。
【0120】
コーティング剤中、水溶性高分子と無機層状鉱物と水性ポリウレタン樹脂との合計の含有量(固形分)は、コーティング剤中の全固形分に対して、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。この合計の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0121】
本態様のコーティング剤は、水溶性高分子と、無機層状鉱物と、必要に応じて水性ポリウレタン樹脂と、必要に応じて他の成分と、必要に応じてさらなる水性媒体等を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
【0122】
(作用効果)
以上説明したガスバリア性フィルム110にあっては、高さ0.3μm以上の突起部101a2の平均高さ(μm)をhとしたとき、ガスバリア層105の厚さ(μm)tが0.25×h+0.15≦t≦0.8×hを満たすことから、ガスバリア性および耐ブロッキング性に優れ、かつガスバリア層105形成時の乾燥負荷や材料コストが極力抑えられている。
すなわち、ガスバリア層105の厚さtを、優れた酸素バリア性が安定して発現する範囲で極力薄くしているので、ガスバリア層105の形成時に過剰なコーティング剤や乾燥エネルギーを必要としない。また、ガスバリア層105の厚さtが充分に薄いため、ガスバリア層105の表面に、突起部101a2に対応する突起部を有し、この突起部によってブロッキングの発生が抑制されている。ブロッキングの発生が抑制されているので、コーティング、巻き替え、スリット、印刷、ラミネート等の後加工適性に優れる。
【0123】
本実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0124】
ガスバリア性フィルムは、必要に応じて、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。
ガスバリア性フィルムがヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の最表面に位置することが好ましい。ガスバリア性フィルムが熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルムが、ヒートシールによって密封可能なものとなる。
熱融着層は、例えば、基材フィルム101の少なくとも第一面101aにガスバリア層105を設けた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。
【実施例
【0125】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の各例で用いた材料を以下に示す。
【0126】
<使用材料>
基材1:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011、厚さ20μm、A.J.Plast社製、片面がコロナ処理面)。
基材2:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:TIMCP、厚さ19μm、Max Speciality Films Limited社製、片面がコロナ処理面)。
基材3:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ12μm、東レ社製、片面がコロナ処理面)。
基材4:以下の手順で作製した、アンチブロッキング剤を含まない二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)。
プロピレン単独重合体として、(株)住友化学社製FS2011DG3を用い、表層1層/基層1層/裏層1層の構成で、スクリュー押出機で溶融押出し、テンターを用い、縦方向(MD)に5倍、横方向(TD)に10倍延伸して、厚さ20μmの同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの片面(塗工面)にコロナ処理を施し、基材4とした。
基材5:以下の手順で作製した、アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)。
プロピレン単独重合体として、(株)住友化学社製FS2011DG3を用い、表層1層/基層1層/裏層1層の構成で、表層と裏層にはアンチブロッキング剤として日本触媒社製MA1002を樹脂(100質量%)に対して3000ppmの割合で添加し、スクリュー押出機で溶融押出し、テンターを用い、縦方向(MD)に5倍、横方向(TD)に10倍延伸して、厚さ20μmの同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの片面(塗工面)にコロナ処理を施し、基材5とした。
【0127】
水性ポリウレタン樹脂の水性分散体(A):酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂の水性分散体(商品名:タケラック(登録商標)WPB-341、三井化学社製)。
水溶性高分子(B):鹸化度98~99%、重合度1000のポリビニルアルコール(商品名:ポバールPVA-110、クラレ社製)。
無機層状鉱物(C):水膨潤性合成雲母(商品名:NTS-5、トピー工業社製)。
【0128】
<実施例1~3、比較例1~2>
水性ポリウレタン樹脂の水性分散体(A)と水溶性高分子(B)と無機層状鉱物(C)とを、固形分比率(A):(B):(C)が20:70:10となるように配合し、80℃にて加熱、混合した後、室温(30℃)まで冷却し、全水性媒体溶媒中の10質量%がイソプロパノール、最終的な固形分濃度が9質量%となるように、イオン交換水とイソプロパノールで希釈し、コーティング剤を調製した。
得られたコーティング剤を、表1に示す基材のコロナ処理面に、グラビアコート法により、乾燥後の膜厚が0.5μmになるよう塗布し、90℃のオーブンを10秒間通過させて乾燥してガスバリア層を形成し、実施例1~3、比較例1~2のガスバリア性フィルムを得た。
【0129】
<実施例4>
乾燥後の膜厚が0.8μmになるようにコーティング剤を塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例4のガスバリア性フィルムを得た。
【0130】
<評価>
各例のガスバリア性フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
図2に、突起数の測定において測定された、実施例1のガスバリア性フィルムのガスバリア層表面の突起高さの等高図を示す。
【0131】
(突起の数および高さ0.2μm断面の直径の測定)
3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXT OLS4000)を用いて以下の条件で、ガスバリア層表面の無作為に選択した領域について、突起の頂点と平面部の高さを測定した。平面部の高さ+0.2μm以上の高さの突起を突起部と判定し、ガスバリア層の厚さdの2倍以上の高さがある突起部(以下、「高さ(d×2)以上の突起部」とも記す。)の数と、ガスバリア層の厚さdの2倍未満の突起部(以下、「高さ(d×2)未満の突起部」とも記す。)の数をカウントし、単位面積あたりの値に換算した。ガスバリア層の厚さdは、ガスバリア性フィルムを厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して測定した。突起部と判定したすべての突起部に対して、プロファイルモードで平面部から+0.2μmの高さの突起部の幅を測定して、突起部の高さ0.2μm断面の直径とした。測定された全ての高さ(d×2)以上の突起部の直径の平均値を、高さ(d×2)以上の突起部の直径とした。測定された全ての高さ(d×2)未満の突起部の直径の平均値を、高さ(d×2)未満の突起部の直径とした。
・レンズ:対物レンズ、倍率50倍(MPLAPONLEXT50)
・測定面積:514μm×1285μm
・フィルタ:表面補正
・モード:プロファイルモードにて、突起の頂点と平面部の高さ、及び平面部から0.2μmの高さの突起部の幅を測定
【0132】
(面粗さの測定)
ISO 25178表面性状に定義される三次元非接触表面形状計測システム(Vertscan R3300h Lite、菱化システム社製)を用いて、以下の条件で、ガスバリア層の表面の三次元表面粗さの指標として算術平均高さSa(nm)を測定した。
測定領域:1408.31μm×1885.82μm
測定モード:Phase
バンドパスフィルター:520nm
中心面補正:4次
測定回数:3回
測定環境:温度23℃、湿度47%RH
【0133】
(酸素透過度の測定)
ガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(MOCON社製OXTRAN-2/20)を用いて、30℃、相対湿度60%の雰囲気下で酸素透過度(cm/(m・day・MPa))を測定した。
【0134】
(耐ブロッキング性の評価)
ガスバリア性フィルムを、50×50mmのサイズに切り、6枚を重ねて永久歪試験機(テスター産業製CO-201)を用いて加重200kg、50℃の条件下で48時間保管した。その後、ブロッキングが起きなければ○(good)、フィルム同士が張り付いてブロッキングしていれば×(bad)として、耐ブロッキング性を判定した。
【0135】
【表1】
【0136】
実施例1~4のガスバリア性フィルムは、30℃、相対湿度60%の雰囲気下における酸素透過度の値が8~28cm/(m・day・MPa)と良好なガスバリア性が得られた。また、耐ブロッキング性が良好であった。
一方、比較例1~2のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層表面の算術平均高さSaは実施例1~4と同等であった。しかし、高さ(d×2)未満の突起部が20個/mm未満の比較例1のガスバリア性フィルムは、耐ブロッキング性に劣っていた。高さ(d×2)以上の突起部が200個/mm超の比較例2のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性に劣っていた。
【0137】
続いて、第二の検討に係る実施例および比較例について説明する。
【0138】
<基材フィルム>
基材6:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011、厚さ20μm、A.J.Plast社製、片面がコロナ処理面)。
基材7:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011GL2、厚さ20μm、A.J.Plast社製、片面がコロナ処理面)。
基材8:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:TIMCP、厚さ19μm、Max Speciality Films Limited社製、片面がコロナ処理面)。
基材9:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:4825A36T、厚さ20μm、南亞塑膠工業社製、片面がコロナ処理面)。
基材10:アンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ12μm、東レ社製、片面がコロナ処理面)。
【0139】
各基材フィルム(基材6~10)のコロナ処理面について、高さ0.3μm以上の突起部の高さおよび数、ならびに表面粗さを後述する方法で測定した。各基材フィルムのコロナ処理面の高さ0.3μm以上の突起部の平均高さhおよび数、ならびに算術平均高さSaを表2~6に示す。
【0140】
(高さ0.3μm以上の突起部の平均高さhおよびその数の測定)
3D測定レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXT OLS4000)を用いて以下の条件で、前記基材フィルムのコロナ処理面の無作為に選択された0.66mm以上の領域について、突起の頂点と平面部の高さを測定した。平面部の高さ+0.3μm以上の高さの突起を突起部と判定し、測定領域(0.66mm)内の突起部の高さの平均値(平均高さh)を算出した。さらに高さ0.3μm以上の突起部の数をカウントし、1mm当たりの個数に換算した。
・レンズ:対物レンズ、倍率50倍(MPLAPONLEXT50)
・測定面積:514μm×1285μm
・フィルタ:表面補正
・モード:プロファイルモードにて、突起の頂点と平面部の高さを測定。
図6に、基材6のコロナ処理面の突起高さを測定した等高図を示す。
【0141】
(表面粗さの測定)
ISO 25178表面性状に定義される三次元非接触表面形状計測システム(Vertscan R3300h Lite、菱化システム社製)を用いて、以下の条件で、前記基材フィルムのコロナ処理面の三次元表面粗さの指標として算術平均高さSa(nm)を測定した。
測定領域:1408.31μm×1885.82μm
測定モード:Phase
バンドパスフィルター:520nm
中心面補正:4次
測定回数:3回
測定環境:温度23℃、湿度47%RH
【0142】
(コーティング剤)
コーティング剤は、実施例1~4に係るものと同一のものを用いた。
【0143】
<例1-1>
コーティング剤を、上述した基材6のコロナ処理面に、グラビアコート法により、乾燥後の膜厚が約0.3μmになるよう塗布し、90℃のオーブンを10秒間通過させて乾燥してガスバリア層を形成し、例1-1のガスバリア性フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムを包埋樹脂で埋めてミクロトームで断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてガスバリア性フィルムの断面観察を行った。得られたSEM画像から、平面部におけるガスバリア層の厚さを10点測定して平均値をとり、ガスバリア層の厚さtとして表2に示した。
【0144】
「酸素透過度測定」
得られたガスバリア性フィルムについて、酸素透過度測定装置(MOCON社製OXTRAN-2/20)を用いて、30℃、相対湿度60%の雰囲気下で酸素透過度(cm/(m・day・MPa))を測定した。結果を表2に示す。
【0145】
「耐ブロッキング性評価」
得られたガスバリア性フィルムを、50×50mmのサイズに切り、6枚を重ねて永久歪試験機(テスター産業製CO-201)を用いて加重200kg、50℃の条件下で48時間保管した。その後、ブロッキングが起きていなければ○(good)、フィルム同士が張り付いてブロッキングしていれば×(bad)として、耐ブロッキング性を判定した。結果を表2に示す。
【0146】
<例1-2>
乾燥後の膜厚が約0.5μmになるように塗布量を変更した以外は例1-1と同様にして、例1-2のガスバリア性フィルムを得、例1-1と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表2に示す。
【0147】
<例1-3>
乾燥後の膜厚が約0.7μmになるように塗布量を変更した以外は例1-1と同様にして、例1-3のガスバリア性フィルムを得、例1-1と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表2に示す。
【0148】
<例1-4>
乾燥後の膜厚が約1.0μmになるように塗布量を変更した以外は例1-1と同様にして、例1-4のガスバリア性フィルムを得、例1-1と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表2に示す。
【0149】
<例1-5>
乾燥後の膜厚が約1.5μmになるように塗布量を変更した以外は例1-1と同様にして、例1-5のガスバリア性フィルムを得、例1-1と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表2に示す。
【0150】
<例2-1~2-5>
基材6の代わりに基材7を用いた以外は例1-1~1-5と同様にして、例2-1~2-5のガスバリア性フィルムを得た。各例について、例1-1~1-5と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表3に示す。
【0151】
<例3-1~3-5>
基材6の代わりに基材8を用いた以外は例1-1~1-5と同様にして、例3-1~3-5のガスバリア性フィルムを得た。各例について、例1-1~1-5と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表4に示す。
【0152】
<例4-1~4-5>
基材6の代わりに基材9を用いた以外は例1-1~1-5と同様にして、例4-1~4-5のガスバリア性フィルムを得た。各例について、例1-1~1-5と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表5に示す。
【0153】
<例5-1~5-5>
基材6の代わりに基材10を用いた以外は例1-1~1-5と同様にして、例5-1~5-5のガスバリア性フィルムを得た。各例について、例1-1~1-5と同様のガスバリア層の厚さ測定と酸素透過度測定、耐ブロッキング性評価を行った。結果を表6に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
【表6】
【0159】
例1-1~1-5、2-1~2-5、3-1~3-5、4-1~4-5、5-1~5-5のうち、例1-3~1-4、2-2~2-3、3-2、4-2、5-1~5-2が実施例であり、他の例は比較例である。
表2~6中、高さ5tμm以上の突起部の割合は、高さ0.3μm以上の突起部の総数に対する割合である。
【0160】
ガスバリア層の厚さtが0.25×h+0.15≦t≦0.8×hを満たす実施例のガスバリア性フィルムは、30℃、相対湿度60%の雰囲気下における酸素透過度の値が20cm/(m・day・MPa)以下であり、ガスバリア性に優れていた。また、耐ブロッキング性も良好であった。
一方、ガスバリア層の厚さtが(0.25×h+0.15)未満の比較例のガスバリア性フィルムは、30℃、相対湿度60%の雰囲気下における酸素透過度の値が30cm/(m・day・MPa)以上であり、ガスバリア性が劣っていた。ガスバリア層の厚さtが(0.8×h)超の比較例のガスバリア性フィルムは、耐ブロッキング性評価でブロッキングが発生し、後工程の加工適性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明のガスバリア性フィルムは、高湿度雰囲気下でも優れたガスバリア性を安定的に示し、また、包装用材料として充分な密着強度や膜凝集強度を有する。さらに、酸素バリア性皮膜の薄膜化による原材料コストの削減が可能となる。
本発明のガスバリア性フィルムは、例えば包装用材料として好適に利用可能である。本発明のガスバリア性フィルムを包装用材料として用いることで、内容物の品質保持性を高めることができる。
本発明のガスバリア性フィルムは、ブロッキングの発生が抑制されており、加工適性に優れる。
本発明のガスバリア性フィルムは、使用する基材フィルムに合わせて適正な膜厚のガスバリア層を設けることで、材料コストや生産エネルギーを適正化できる。本発明のガスバリア性フィルムは、例えば安価な包装材料として好適に利用可能であり、内容物の品質保持性を高めることができる。
【符号の説明】
【0162】
1 基材フィルム
3 アンチブロッキング剤
5 ガスバリア層
5a 平面部
5b、5c 突起部
10 ガスバリア性フィルム
101 基材フィルム
101a 第一面
101a1 平面部
101a2 突起部
101b 第二面
103 アンチブロッキング剤
105 ガスバリア層
105a 平面部
110、110A ガスバリア性フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6