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特許7447803アドビリン機能促進剤としての環状アミン誘導体並びに新規環状アミン誘導体及びその医薬用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】アドビリン機能促進剤としての環状アミン誘導体並びに新規環状アミン誘導体及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20240305BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240305BHJP
   C07D 401/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K31/496
A61K31/5377
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P25/02
A61P43/00 105
C07D401/06 CSP
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020562403
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051104
(87)【国際公開番号】W WO2020138281
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018243042
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 和美
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 浩史
(72)【発明者】
【氏名】下田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】西 建也
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181860(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136944(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/147160(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07D 401/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、アドビリン機能促進剤。
【化1】

[式中、*を付した炭素は不斉炭素であり、Aは、下記一般式(IIa)又は(IIb)で示される基を表し、
【化2】

は、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、ジフルオロメチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基を表し、Rは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Rは、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、Xは、-O-又は-N(R)-を表す。]
【請求項2】
Aは、一般式(IIa)で示される基である、請求項1記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項3】
Aは、一般式(IIb)で示される基である、請求項1記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項4】
Xは、-N(R)-である、請求項3記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項5】
は、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基である、請求項1~4のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項6】
は、水素原子又は塩素原子である、請求項1~4のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項7】
*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置である、請求項1~4のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項8】
アドビリン及び/又はアドビリン複合体へ結合することでアドビリンの機能を促進するための、請求項1~7のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項9】
アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善するための、請求項1~8のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項10】
神経軸索伸展を促進するための、請求項1~8のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項11】
アドビリン及び/又はアドビリン複合体に結合してアクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善し、神経軸索伸展を促進するための、請求項1~7のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項12】
手根管症候群、回内筋症候群、前骨間神経麻痺、尺骨神経管症候群、肘部管症候群、後骨間神経麻痺、橈骨神経麻痺、胸郭出口症候群、腋窩神経麻痺、肩甲上神経麻痺、梨状筋症候群、腰神経叢麻痺、足根管症候群、大腿神経麻痺、坐骨神経麻痺、脛骨神経麻痺、総腓骨神経麻痺、深腓骨神経麻痺、伏在神経麻痺、頸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、顔面神経麻痺、動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、外転神経麻痺、ベル麻痺、及びラムゼイ・ハント症候群からなる群より選択される神経軸索損傷に関する疾患の治療剤、又は、巨細胞血管炎、高安動脈炎、結節性多発動脈炎、川崎病、多発血管炎性肉芽腫、顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、クリオグロブリン血症、IgA血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎、全身性エリトマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、ベーチェット病、細菌・ウイルス感染症、サルコイドーシス、及び悪性腫瘍からなる群より選択されるいずれかの疾患を原因とする神経軸索損傷の治療剤である、請求項1~11のいずれか一項記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項13】
前記細菌・ウイルス感染症が、ライム病、HIV感染症又はハンセン病である、請求項12記載のアドビリン機能促進剤。
【請求項14】
3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-プロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、3-(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン及び1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンからなる群から選択される一の化合物である環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項15】
請求項14記載の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドビリン機能促進剤としての環状アミン誘導体並びに新規環状アミン誘導体及びその医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アドビリンは、末梢神経において主に発現し、神経軸索伸展に重要な役割を担っている(非特許文献1及び非特許文献2)。アドビリンを欠損するマウスでは、神経回路の再生時における神経軸索伸展の不全が認められ、神経軸索の長さも短い(非特許文献2)。また、アドビリンを欠損するマウスで神経結紮又は抗がん処置等により神経軸索損傷を誘発すると、正常マウスと比べて神経軸索損傷に関連する症状の悪化が認められる(非特許文献2及び非特許文献3)。一方、アドビリンを過剰発現させた神経細胞では、神経軸索を含む神経突起の数及び長さが増加する(非特許文献3)。すなわち、アドビリンは、神経再生時における神経軸索伸展促進作用を有することが知られている。
【0003】
神経軸索が伸展するためには、神経軸索先端の成長円錐において、単量体アクチンの重合及びアクチンフィラメント脱重合(以下、アクチンフィラメント代謝回転)が正常に調節される必要がある(非特許文献4)。上記アドビリンは、神経軸索先端の成長円錐に存在していることが知られている(非特許文献3)。また、アドビリンは、アクチン結合タンパク質として、アクチンフィラメント代謝回転を調節する機能を有することが知られている(非特許文献5)。
【0004】
末梢神経の軸索損傷は、末梢神経損傷とも言われるが、外科的手術、毒物、血行障害、交通事故等に起因する外傷又は放射線治療等によって引き起こされ、運動麻痺、知覚麻痺又は自律神経等の障害を起こす。末梢神経の軸索損傷後には神経軸索再生が起こることが知られているが、異常を含む機能回復不全になることが多い。実際の神経軸索再生は時間を要し、その間に神経軸索周辺の組織や神経軸索末端と接合する標的組織が変性することにより、神経軸索末端と標的組織又は標的細胞との再接合が正確に行われなくなり、有効で正常な神経再支配が行われなくなることがその原因の一つと言われている。再接合の不正確性は、神経と筋肉組織等の標的組織との間だけでなく、感覚神経間及び運動神経間においても生じ、感覚神経間では異常知覚が、運動神経間では不随意な異常運動が認められる(非特許文献6)。また特に、神経軸索及び神経鞘の断裂した神経断裂では、自然治癒が期待できず、有効な治療薬もないため、神経修復術や機能再建手術等の外科的療法がおこなわれるが、患者の負担が大きいことが問題である(非特許文献7)。したがって、末梢神経の軸索損傷後の異常を含む機能回復不全を治療及び予防するための、神経軸索伸展を促進する有効な治療薬が切望されている。
【0005】
特許文献1及び2には、環状アミン誘導体が鎮痛作用を有していること及び末梢神経障害を治療又は予防できることが開示されているが、アドビリン機能を促進する効果及び神経軸索損傷を治療する効果については開示されていない。また、アドビリン機能を促進する化合物は、知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/136944号
【文献】国際公開第2018/181860号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Ravenallら、European Journal of Neuroscience、2002年、第15巻、p.281-290
【文献】Hasegawaら、The Journal of Neuroscience、2007年、第27巻、p.14404-14414
【文献】Chuangら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2018年、第115巻、p.E8557-E8566
【文献】Blanquieら、Current Opinion in Neurobiology、2018年、第51巻、p.60-69
【文献】Raoら、The Journal of Clinical Investigation、2017年、第127巻、p.4257-4269
【文献】西脇ら、リハビリテーション医学、2002年、第39巻、p.257-266
【文献】金谷、The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine、2014年、第51巻、p52-60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、低分子化合物からなり、神経軸索損傷の治療に有用なアドビリン機能促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩が、アドビリン機能を促進する作用を有することを見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、アドビリン機能促進剤を提供する。
【化1】
[式中、*を付した炭素は不斉炭素であり、Aは、下記一般式(IIa)又は(IIb)で示される基を表し、
【化2】
は、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、ジフルオロメチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基を表し、Rは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Rは、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、Xは、-O-又は-N(R)-を表す。]
【0011】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIa)で示される基であることが好ましく、その際、Rは、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であることがより好ましい。
【0012】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIb)で示される基であることが好ましく、その際、Xは、-N(R)-であることがより好ましく、Rは、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であることがさらに好ましい。
【0013】
また、上記の環状アミン誘導体において、Rは、水素原子又は塩素原子であることがより好ましい。
【0014】
さらに、上記の環状アミン誘導体において、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることがより好ましい。
【0015】
これらに限定することで、アドビリン機能促進作用をより高めることができる。
【0016】
本発明は、アドビリン及び/又はアドビリン複合体へ結合することでアドビリンの機能を促進するための、上記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、アドビリン機能促進剤を提供する。
【0017】
また、本発明は、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善するための、上記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、アドビリン機能促進剤を提供する。
【0018】
また、本発明は、神経軸索伸展を促進するための、上記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、アドビリン機能促進剤を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、アドビリン及び/又はアドビリン複合体に結合してアクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善し、神経軸索伸展を促進するための、上記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、アドビリン機能促進剤を提供する。
【0020】
また、本発明は、神経軸索損傷治療剤である、上記一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、アドビリン機能促進剤を提供する。
【0021】
また、本発明は、3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-プロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、3-(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン及び1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンからなる群から選択される一の化合物である環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
【0022】
また、本発明は、3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-プロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、3-(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン及び1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンからなる群から選択される一の化合物である環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、医薬を提供する。
【0023】
また、本発明は、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、及び薬理学的に許容される賦形剤等を含有する、神経軸索損傷を治療するための医薬組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、神経軸索損傷の治療に使用するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
【0025】
また、本発明は、神経軸索損傷を治療するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0026】
また、本発明は、神経軸索損傷を治療するための医薬の製造における、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0027】
また、本発明は、神経軸索損傷を治療する方法であって、治療の必要のある患者に治療有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、神経軸索損傷を治療する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を神経細胞に接触させることを含む方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、神経軸索損傷を治療する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を、これを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0030】
また、上記の神経軸索損傷の原因は、これだけに限定されないが、外科的手術、毒物、血行障害、交通事故等に起因する外傷又は放射線治療等が挙げられる。
【0031】
また、本発明は、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、及び薬理学的に許容される賦形剤等を含有する、神経軸索損傷に関する疾患を治療するための医薬組成物を提供する。
【0032】
また、本発明は、神経軸索損傷に関する疾患の治療に使用するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
【0033】
また、本発明は、神経軸索損傷に関する疾患を治療するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0034】
また、本発明は、神経軸索損傷に関する疾患を治療するための医薬の製造における、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0035】
また、本発明は、神経軸索損傷に関する疾患を治療する方法であって、治療の必要のある患者に治療有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0036】
また、本発明は、神経軸索損傷に関する疾患を治療する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を神経細胞に接触させることを含む方法を提供する。
【0037】
また、本発明は、神経軸索損傷に関する疾患を治療する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を、これを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0038】
また、本発明は、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、及び薬理学的に許容される賦形剤等を含有する、アドビリン機能を促進するための、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善するための、又は、神経軸索伸展を促進するための、医薬組成物を提供する。
【0039】
また、本発明は、アドビリン機能の促進、アクチンフィラメント代謝回転調節異常の改善、又は、神経軸索伸展の促進に使用するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
【0040】
また、本発明は、アドビリン機能を促進するための、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善するための、又は、神経軸索伸展を促進するための、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0041】
また、本発明は、アドビリン機能を促進するための、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善するための、又は、神経軸索伸展を促進するための医薬の製造における、上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩の使用を提供する。
【0042】
また、本発明は、アドビリン機能を促進する、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善する、又は、神経軸索伸展を促進する方法であって、これを必要とする患者に治療有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0043】
また、本発明は、アドビリン機能を促進する、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善する、又は、神経軸索伸展を促進する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を神経細胞に接触させることを含む方法を提供する。
【0044】
また、本発明は、アドビリン機能を促進する、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善する、又は、神経軸索伸展を促進する方法であって、有効量の上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を、これを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0045】
本発明の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩によれば、アクチンフィラメント代謝回転調節分子の一つであるアドビリンの機能を促進することができ、神経軸索損傷に関する疾患に対する医薬として利用できる。
【0046】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願第2018-243042号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】アクチンフィラメントに対するアドビリンの機能を示す図である。
図2】ラットの各組織から調製して得られた膜画分に対する実施例7の化合物の特異的結合を示す図である。
図3】ラット脊髄神経結紮モデルにおける実施例7の化合物のアクチンフィラメント代謝回転調節異常の改善作用を示す図である。
図4】神経軸索損傷を誘導したラット後根神経節初代培養細胞における実施例7の化合物の神経軸索伸展作用を細胞形態変化として示す画像である。
図5】神経軸索損傷を誘導したラット後根神経節初代培養細胞における実施例7の化合物の神経軸索伸展促進作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書で使用する次の用語は、特に断りがない限り、下記の定義の通りである。
【0049】
本発明の一実施形態に係る環状アミン誘導体は、下記の一般式(I)で示されることを特徴としている。
【化3】
[式中、*を付した炭素は不斉炭素であり、Aは、下記一般式(IIa)又は(IIb)で示される基を表し、
【化4】
は、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、ジフルオロメチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基を表し、Rは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Rは、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、Xは、-O-又は-N(R)-を表す。]
【0050】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIa)で示される基であることが好ましく、その際、Rは、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であることが好ましい。
【0051】
上記の環状アミン誘導体において、Aが一般式(IIb)で示される基であることが好ましく、その際、Xは、-N(R)-であることが好ましく、Rは、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であることが好ましい。
【0052】
上記の環状アミン誘導体において、Rは、水素原子又は塩素原子であることが好ましい。
【0053】
上記の環状アミン誘導体において、*を付した不斉炭素の立体化学は、S配置であることが好ましい。
【0054】
本発明の上記の環状アミン誘導体に係る一実施形態では、Aは、一般式(IIa)で示される基であり、Rは、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、Rは、水素原子又は塩素原子であり、Rは、メチル基又はエチル基である。本実施形態では、*を付した不斉炭素の立体化学がS配置であることが好ましい。
【0055】
本発明の上記の環状アミン誘導体に係る一実施形態では、Aは、一般式(IIb)で示される基であり、Xは、-N(R)-であり、Rは、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、Rは、水素原子又は塩素原子であり、Rは、メチル基又はエチル基である。本実施形態では、*を付した不斉炭素の立体化学がS配置であることが好ましい。
【0056】
本発明の上記の環状アミン誘導体に係る一実施形態では、Aは、一般式(IIb)で示される基であり、Xは、-O-であり、Rは、メチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メトキシエチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、Rは、水素原子又は塩素原子であり、Rは、メチル基又はエチル基である。本実施形態では、*を付した不斉炭素の立体化学がS配置であることが好ましい。
【0057】
本発明の上記の環状アミン誘導体に係る一実施形態では、3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-プロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、3-(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン及び1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンからなる群から選択される一の化合物である。
【0058】
上記の一般式(I)で示される環状アミン誘導体(以下、環状アミン誘導体(I))の好ましい具体例を表1及び表2に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
なお、環状アミン誘導体(I)に、鏡像異性体、立体異性体等の異性体が存在する場合には、いずれか一方の異性体及びそれらの混合物が環状アミン誘導体(I)に含まれる。また、環状アミン誘導体(I)に、鏡像異性体、立体異性体等の異性体が存在する場合には、環状アミン誘導体(I)は、いずれか一方の異性体又はそれらの混合物を含む混合物であってもよい。また、環状アミン誘導体(I)に、コンホメーションによる異性体が存在する場合には、いずれか一方の異性体及びそれらの混合物が環状アミン誘導体(I)に含まれる。目的とする異性体は、公知の方法又はそれに準ずる方法によって得ることができる。例えば、環状アミン誘導体(I)に鏡像異性体が存在する場合には、環状アミン誘導体(I)から分割された一方の鏡像異性体も環状アミン誘導体(I)に包含される。
【0062】
目的とする鏡像異性体は、公知の手段(例えば、光学活性な合成中間体を用いるか、又は、最終物のラセミ混合物に対し、公知の方法又はそれに準ずる方法(例えば、光学分割)を用いる)により得ることができる。
【0063】
また、環状アミン誘導体(I)には、環状アミン誘導体(I)のプロドラッグ又はその薬理学的に許容される塩が含まれる。環状アミン誘導体(I)のプロドラッグとは、生体内で酵素的又は化学的に、環状アミン誘導体(I)に変換される化合物である。環状アミン誘導体(I)のプロドラッグの活性本体は、環状アミン誘導体(I)であるが、環状アミン誘導体(I)のプロドラッグそのものが活性を有していてもよい。
【0064】
環状アミン誘導体(I)のプロドラッグとしては、例えば、環状アミン誘導体(I)の水酸基が、アルキル化、リン酸化又はホウ酸化された化合物が挙げられる。これらの化合物は、公知の方法に従って、環状アミン誘導体(I)から合成することができる。
【0065】
また、環状アミン誘導体(I)のプロドラッグは、公知文献(「医薬品の開発」、広川書店、1990年、第7巻、p.163~198及びProgress in Medicine、第5巻、1985年、p.2157~2161)に記載の生理的条件で、環状アミン誘導体(I)に変化するものであってもよい。
【0066】
環状アミン誘導体(I)は、同位元素で標識されていてもよく、標識される同位元素としては、例えば、H、H、13C、14C、15N、15O及び/又は18Oが挙げられる。
【0067】
環状アミン誘導体(I)の薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩若しくは臭化水素酸塩等の無機酸塩又はシュウ酸塩、マロン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、キシナホ酸塩、パモ酸塩、アスコルビン酸塩、アジピン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩若しくはケイ皮酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0068】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩には、その水和物及び溶媒和物が含まれる。
【0069】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩に結晶多形が存在する場合には、全ての結晶多形及びそれらの混合物が、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩に含まれる。
【0070】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、例えば、公知文献(国際公開第2016/136944号)に記載の方法に従って合成することができる。
【0071】
「アドビリン」は、アイソフォーム、アナログ、バリアント、フラグメント又は機能的誘導体を包含する。アドビリンは、advillin遺伝子の転写産物であり、別名p92又はAVILと示されることもあり、ゲルソリンファミリーのメンバーの一つである。また、ヒトにおいて、アドビリンは二つのアイソフォームが存在し、819個のアミノ酸又は821個のアミノ酸からなるタンパク質である。
【0072】
「アドビリン」とは、図1に示す通り、アクチンフィラメントに作用し、2重らせん構造のアクチンフィラメントを切断する機能を有する分子である。
【0073】
「アドビリン機能促進」とは、アドビリンが有する生物学的機能の維持、持続、増強及び/又は低下した状態を正常化することを言う。また、アドビリン機能促進には、アクチンフィラメント代謝回転調節の異常を改善及び/又は正常化することが挙げられる。したがって、末梢神経の軸索損傷によりアクチンフィラメントが増加した状況では、アドビリン機能促進により、アクチンフィラメントが減少し、相対的な単量体アクチン量が増加する。さらに、アドビリン機能促進には、神経軸索伸展を促進することも含まれる。
【0074】
「アドビリン複合体」とは、アドビリンに相互作用及び/又は結合するタンパク質等の分子とアドビリンとが形成した集合体のことを言う。
【0075】
環状アミン誘導体(I)がアドビリン及び/又はアドビリン複合体に結合することは、例えば、公知文献(Aonoら、2018年、Biochemical and Biophysical Research Communications、第505巻、p.1203-1210)に記載の磁性微粒子であるFG beads(登録商標)を用いたアフィニティ精製により評価できる。また、アドビリン及び/又はアドビリン複合体を認識する抗体を用いた免疫沈降法やアフィニティ精製の他、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用して分子の相互作用を解析することにより評価できる。
【0076】
「アクチンフィラメント代謝回転」とは、単量体アクチンの重合とアクチンフィラメントの脱重合との過程を経る双方向性の代謝回転のことを言う。
【0077】
「アクチンフィラメント代謝回転調節異常」とは、上記の「アクチンフィラメント代謝回転」におけるアクチン重合、アクチンフィラメント脱重合のバランスが崩れ、一方向性の過程が優位になることを言う。
【0078】
「アクチンフィラメント代謝回転調節異常の改善」とは、上記の「アクチンフィラメント代謝回転調節異常」における一方向性の過程が優位な状態を正常化する又は正常に近づけることを意味する。すなわち、アクチンフィラメント量、及びアクチンフィラメント量と単量体アクチン量との比を正常化する又は正常に近づけることを意味する。
【0079】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩がアクチンフィラメント代謝回転調節異常を改善する作用を有することは、細胞(例えば、ヒト初代培養後根神経節神経細胞、ラット及びマウス等の哺乳動物由来の初代培養後根神経節神経細胞、ラット副腎褐色細胞由来PC12細胞又はラット後根神経節神経由来F11細胞等)を用いて、細胞内のアクチンフィラメント量を測定することにより評価できる。細胞内のアクチンフィラメント量の測定方法としては、例えば、アクチンフィラメントに結合する蛍光標識されたファロイジンを用いた蛍光染色により測定することができる(Carlsonら、NeuroToxicology、2001年、第22巻、p.819-827)。
【0080】
また、「細胞内アクチンフィラメント減少作用」とは、細胞内のアクチンフィラメント量を減少させる措置を施さない場合と比較して細胞内のアクチンフィラメント量を減少させる作用を意味し、好ましくは、細胞内のアクチンフィラメント量を減少させる措置を施さない場合の細胞内のアクチンフィラメント量のうち5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は100%を減少させる作用である。
【0081】
さらに、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩がアクチンフィラメント代謝回転調節の異常を改善する作用を有することは、アクチンフィラメント代謝回転調節異常に関連する疾患のサンプル、例えば、神経軸索損傷患者又は神経軸索損傷動物モデル等の組織等を用いて、アクチンフィラメント量と単量体アクチン量の比を測定することにより評価できる。神経軸索損傷動物モデルとしては、例えば、ラット脊髄神経結紮モデル(Kimら、Pain、1992年、第50巻、p.355-363)が挙げられる。アクチンフィラメント量と単量体アクチン量の比は、組織又は細胞破砕液の超遠心によりアクチンフィラメントと単量体アクチンとを分離した後、各アクチンをウェスタンブロット法により定量して算出できる(Kimら、The Journal of Physiology、2015年、第593巻、p.1873-1886)。
【0082】
「神経軸索」とは、神経細胞体から伸びる長い突起のことを言い、神経突起とも言う。神経軸索は神経線維を形成する。神経軸索の末端は分枝して次の神経細胞や標的組織に接合し、神経の興奮を伝える。
【0083】
「神経軸索損傷」とは、神経軸索が一部又は完全に崩壊又は断裂し、損傷部位から組織側の軸索が変性、脱落した状態を言う。
【0084】
「神経軸索伸展」とは、神経細胞の軸索が伸展することを言う。神経軸索伸展を促進することにより、神経軸索損傷後の標的組織と神経軸索との再接合及び/又は神経回路を再構築させることが期待できる。
【0085】
また、神経軸索損傷の原因としては以下に限定されるものではないが、例えば、外科的手術、毒物、血行障害、交通事故等に起因する外傷又は放射線治療等が挙げられる。
【0086】
上記の毒物としては、外因性及び内因性の神経毒が挙げられる。例えば、外因性の毒素としては、テトロドトキシン、バトラコトキシン、モーロトキシン、アジトキシン、カリブドトキシン、マーガトキシン、スロトキシン、スキラトキシン、ヘフトキシン、カルシセプチン、タイカトキシン又はカルシクルジン等が挙げられる。内因性の毒素としては、グルタミン酸、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)又はカイニン酸等が挙げられる。また、ガス(例えば、一酸化炭素)、金属(例えば、水銀)、メタノール又はエタノール等が挙げられる。また、除草剤や殺虫剤等の農薬(例えば、ロてノン又はパラコート等)も毒物として挙げられる。さらに、我が国においては、毒物及び劇物取締法において、人体に有害な毒物として、毒物および劇物のリストが公開されており、これらに記載の毒物も挙げられる。
【0087】
神経軸索損傷に関する疾患(原因となる疾患を含む)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、手根管症候群、回内筋症候群、前骨間神経麻痺、尺骨神経管症候群(ギオン管症候群)、肘部管症候群、後骨間神経麻痺、橈骨神経麻痺、胸郭出口症候群、腋窩神経麻痺、肩甲上神経麻痺、梨状筋症候群、腰神経叢麻痺、足根管症候群、大腿神経麻痺、坐骨神経麻痺、脛骨神経麻痺、総腓骨神経麻痺、深腓骨神経麻痺(前足根管症候群)、伏在神経麻痺(ハンター管症候群)、頸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、顔面神経麻痺、動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、外転神経麻痺、巨細胞血管炎、高安動脈炎、結節性多発動脈炎、川崎病、多発血管炎性肉芽腫(ウェゲナー肉芽腫症)、顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(アレルギー性肉芽腫性血管炎、チャーグ・ストラウス症候群)、クリオグロブリン血症、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)、皮膚白血球破砕性血管炎、全身性エリトマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、ベーチェット病、ベル麻痺、ラムゼイ・ハント症候群、細菌・ウイルス感染症(ライム病、HIV感染症又はハンセン病等)、サルコイドーシス、悪性腫瘍等が挙げられる。
【0088】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が神経軸索伸展促進作用を持つことは、ヒト神経細胞の軸索が損傷された組織、神経軸索損傷動物モデル又は神経細胞(例えば、大脳皮質由来神経細胞若しくは後根神経節由来細胞等)を用いて、伸展した神経突起の長さ又は密度等を測定することにより評価できる(Yangら、Free Radical Biology and Medicine、2018年、第120巻、p.13-24)。
【0089】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル又はヒト)、特にヒトにおける神経軸索損傷の治療又は予防するための医薬として用いることができる。
【0090】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を医薬として用いる場合、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を、そのまま若しくは医薬として許容される担体を配合して、経口的又は非経口的に投与することができる。
【0091】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠及びフィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤及びマイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤が挙げられる。また、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を非経口投与する場合の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、坐剤、塗布剤又は貼付剤が挙げられる。さらには、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を適当な基剤(例えば、酪酸の重合体、グリコール酸の重合体、酪酸-グリコール酸の共重合体、酪酸の重合体とグリコール酸の重合体との混合物又はポリグリセロール脂肪酸エステル)と組み合わせて、徐放性製剤とすることも有効である。
【0092】
上記の剤形の製剤の調製は、製剤分野において一般的に用いられる公知の製造方法に従って行うことができる。この場合、必要に応じて、製剤分野において一般的に用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤等を含有させて製造することができる。
【0093】
錠剤の調製は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤又は滑沢剤を含有させて行うことができる。丸剤及び顆粒剤の調製は、例えば、賦形剤、結合剤又は崩壊剤を含有させて行うことができる。また、散剤及びカプセル剤の調製は、例えば、賦形剤を含有させて行うことができる。シロップ剤の調製は、例えば、甘味剤を含有させて行うことができる。乳剤又は懸濁剤の調製は、例えば、界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤を含有させて行うことができる。
【0094】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、デンプン、ショ糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム又は硫酸カルシウムが挙げられる。
【0095】
結合剤としては、例えば、デンプンのり液、アラビアゴム液、ゼラチン液、トラガント液、カルボキシメチルセルロース液、アルギン酸ナトリウム液又はグリセリンが挙げられる。
【0096】
崩壊剤としては、例えば、デンプン又は炭酸カルシウムが挙げられる。
【0097】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム又は精製タルクが挙げられる。
【0098】
甘味剤としては、例えば、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン又は単シロップが挙げられる。
【0099】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ソルビタンモノ脂肪酸エステル又はステアリン酸ポリオキシル40が挙げられる。
【0100】
懸濁化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース又はベントナイトが挙げられる。
【0101】
乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン又はポリソルベート80が挙げられる。
【0102】
さらに、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬を、上記の剤形に調製する場合には、製剤分野において一般的に用いられる着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤又は粘稠剤等を添加することができる。
【0103】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬の1日あたりの投与量は、患者の状態若しくは体重、化合物の種類又は投与経路等によって異なるが、例えば、成人(体重約60kg)に経口投与する場合には、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分量として1~1000mgの範囲で、1~3回に分けて投与することが好ましく、成人(体重約60kg)に非経口投与する場合には、注射剤であれば、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分量として体重1kgあたり0.01~100mgの範囲で静脈注射により投与することが好ましい。
【0104】
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、治療若しくは予防効果の補完又は増強、あるいは投与量の低減のために、他の薬剤と適量配合又は併用しても構わない。環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、他の薬剤と同時に投与されてもよく、任意の順序で連続的に投与されてもよい。他の薬剤としては、これだけに限定されないが、神経軸索損傷を治療する薬剤と併用することもできる。
【実施例
【0105】
以下、実施例、比較例及び参考例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
以下の記載において、NMRデータ中に示される溶媒名は、測定に使用した溶媒を示している。また、400 MHz NMRスペクトルは、JNM-AL400型核磁気共鳴装置(日本電子社製)を用いて測定した。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として、δ(単位:ppm)で表し、シグナルはそれぞれs(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、quint(五重線)、sept(七重線)、m(多重線)、br(幅広)、dd(二重二重線)、dt(二重三重線)、ddd(二重二重二重線)、dq(二重四重線)、td(三重二重線)、tt(三重三重線)で表した。ESI-MSスペクトルは、Agilent Technologies 1200 Series、G6130A(AgilentTechnology社製)を用いて測定した。溶媒は全て市販のものを用いた。フラッシュカラムクロマトグラフィーはYFLC W-prep2XY(山善社製)を用いた。
【0107】
環状アミン誘導体(I)の原料及び中間体は、以下の参考例に記載する方法で合成した。なお、参考例化合物の合成に使用される化合物で合成法の記載のないものについては、市販の化合物を使用した。
【0108】
(参考例1)ベンジル (S)-2-(3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロポキシ)アセテートの合成:
【化5】
(S)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(0.100g、0.357mmol)のテトラヒドロフラン(0.800mL)溶液に水素化ナトリウム(55%、0.0202mg、0.464mmol)を0℃で加えた。同温度で10分間撹拌した後、反応液にブロモ酢酸ベンジル(0.0620mL、0.390mmol)を加え、室温で更に15時間撹拌した。反応液に塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、ベンジル (S)-2-(3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロポキシ)アセテート(0.568g、0.133mmol、37%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.30-1.57 (2H, m), 1.73-1.90 (2H, m), 2.24-2.37 (7H, m), 2.48-2.58 (1H, m), 2.95-3.13 (2H, m), 3.28-3.36 (1H, m), 3.70 (3H, d, J=1.6 Hz), 3.93-4.17 (3H, m), 4.48-4.54 (1H, m), 5.12-5.14 (2H, m), 5.30-5.36 (1H, m), 6.80 (1H, s), 6.96 (1H, s), 7.31-7.39 (5H, m).
ESI-MS: m/z= 429 (M+H)+.
【0109】
(参考例2)エチル 1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキシレートの合成:
【化6】
1-メチル-1H-イミダゾール(1.00g、12.2mmol)のアセトニトリル(4.0mL)溶液に、トリエチルアミン(3.40mL、24.4mmol)、クロロギ酸エチル(2.34mL、24.4mmol)を0℃で加え、反応液を室温にて16時間撹拌を行った。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、エチル 1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキシレート(1.50g、9.73mmol、80%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.42 (3H, t, J=7.2 Hz), 4.01 (3H, s), 4.40 (2H, q, J=7.2 Hz), 7.01-7.03 (1H, m), 7.13-7.15 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 155 (M+H)+.
【0110】
(参考例3)エチル 3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロパノエートの合成:
【化7】
エチル 1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキシレート(1.50g、9.73mmol)のメタノール(15.0mL)溶液に、水酸化ナトリウム水溶液(1.0N、14.6mL、14.6mmol)を室温で加え、反応液を同じ温度で3時間撹拌した。反応液を0℃まで冷却した。反応液に塩酸(1.0N)を加え中和後、減圧濃縮した。トルエンで共沸し、エタノールを加えた。析出物をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた粗生成物にアセトニトリル(7.0mL)、カルボニルジイミダゾール(1.54g、9.52mmol)を室温で加え、反応液を同じ温度で2.5時間撹拌した(反応液A)。別途、マグネシウムクロリド(0.997g、10.5mmol)をアセトニトリル(7.0mL)に溶解し、マロン酸エチルカリウム塩(1.70g、9.99mmol)、トリエチルアミン(2.98mL、21.4mmol)を室温で加え、反応液を同じ温度で2.5時間撹拌した(反応液B)。反応液Aを反応液Bに室温で加え、反応液を80℃にて2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した。反応液に塩酸(1.0N)を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、エチル 3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロパノエート(0.721g、3.67mmol、38%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.27 (3H, t, J=7.2 Hz), 4.01 (3H, s), 4.13 (2H, s), 4.21 (2H, q, J=7.2 Hz), 7.05-7.07 (1H, m), 7.15-7.17 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 197 (M+H)+.
【0111】
(参考例4)4-(モルホリン-4-イル)ピペリジンの合成:
【化8】
1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジノン(1.51g、7.58mmol)のジクロロメタン(25.0mL)溶液に、モルホリン(0.792g、9.09mmol)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(1.93g、9.09mmol)及び酢酸(0.0460g、0.758mmol)を0℃で加え、室温にて16時間撹拌を行った。反応液を0℃まで冷却した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣を塩酸(1.0N)に溶解し、酢酸エチルで抽出した。水層に48%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性とした後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をメタノール(25.0mL)に溶解し、濃塩酸(5.0mL)を加えた後に40℃で12時間撹拌した。反応液を濃縮乾固した後に蒸留水に溶解した。48%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性とした後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。4-(モルホリン-4-イル)ピペリジン(1.52g、5.63mmol、74%)を黄色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.34 (2H, dd, J=12.0, 4.0 Hz), 1.40 (2H, dd, J=12.0, 4.0 Hz), 1.85 (2H, d, J=12.4 Hz), 2.28 (1H, tt, J=11.2, 4.0 Hz), 3.53-3.63 (6H, m), 3.15 (2H, d, J=12.4 Hz), 3.73 (4H, t, J=4.4 Hz).
ESI-MS: m/z= 171 (M+H)+
【0112】
(参考例5)1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1,3-ジオンの合成:
【化9】
エチル 3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロパノエート(0.200g、1.02mmol)のトルエン(0.460mL)溶液に、4-(モルホリン-4-イル)ピペリジン(0.158g、0.928mmol)を室温で加え、反応液を110℃にて16時間撹拌を行った。反応液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1,3-ジオン(0.285g、0.890mmol、96%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.40-1.64 (2H, m), 1.82-1.92 (2H, m), 2.37-2.47 (1H, m), 2.52-2.58 (4H, m), 3.05-3.15 (1H, m), 3.69-3.76 (5H, m), 3.82-3.90 (1H, m), 4.01 (3H, s), 4.16-4.31 (2H, m), 4.58-4.65 (1H, m), 7.04-7.06 (1H, m), 7.13-7.15 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 321 (M+H)+.
【0113】
(参考例6)1-プロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化10】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(1.00g、10.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)溶液に1-ヨードプロパン(1.22mL、12.5mmol)と炭酸カリウム(2.16g、15.6mmol)を加え、60℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-プロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.786g、5.69mmol、55%)を黄色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 0.93 (3H, t, J=7.4 Hz), 1.77-1.85 (2H, m), 4.37 (2H, t, J=7.2 Hz), 7.16 (1H, s), 7.28 (1H, s), 9.82 (1H, s).
【0114】
(参考例7)1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化11】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(1.00g、10.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)溶液に2-ヨードプロパン(1.26mL、12.5mmol)と炭酸カリウム(2.16g、15.6mmol)を加え、60℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.703g、5.09mmol、49%)を黄色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.47 (6H, t, J=6.6 Hz), 5.48 (1H, q, J=6.6 Hz), 7.30 (1H, s), 7.33 (1H, s), 9.83 (1H, s).
【0115】
(参考例8)5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化12】
(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)メタノール(0.300g、2.05mmol)のジクロロメタン(20.0mL)溶液にデスマーチン試薬(1.04g、2.46mmol)を0℃で加え、同温度で3時間撹拌した。反応液に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.235g、1.62mmol、79%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.98 (3H, s), 7.24 (1H, s), 9.70 (1H, s).
【0116】
(参考例9)1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化13】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(1.00g、10.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)溶液に2-ブロモエチルメチルエーテル(1.20mL、12.5mmol)と炭酸カリウム(2.16g、15.6mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.468g、3.12mmol)を加え、60℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.535g、3.47mmol、33%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.32 (3H, s), 3.67 (2H, t, J=5.0 Hz), 4.59 (2H, t, J=5.0 Hz), 7.23-7.30 (2H, m), 9.81 (1H, s).
【0117】
(参考例10)1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドの合成:
【化14】
1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.500g、5.20mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(5.20mL)溶液に1,1,1-トリフルオロ-3-ヨードプロパン(0.710mL、6.24mmol)と炭酸カリウム(1.08g、7.81mmol)を加え、60℃で5時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.0863g、0.449mmol、8.6%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.60-2.72 (2H, m), 4.61 (2H, t, J=6.8 Hz), 7.18 (1H, s), 7.32 (1H, s), 9.83 (1H, s).
【0118】
(参考例11)1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)エタノンの合成:
【化15】
4-ジメチルアミノピペリジン(1.00g、7.79mmol)のジクロロメタン(7.8mL)溶液にピリジン(0.922mL、9.75mmol)及び無水酢酸(0.946mL、11.7mmol)を0℃で加え、反応液を室温にて16時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)エタノン(0.869g、6.78mmol、87%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.30-1.47 (2H, m), 1.79-1.92 (2H, m), 2.10 (3H, s), 2.25-2.40 (7H, m), 2.53-2.63 (1H, m), 3.01-3.11 (1H, m), 3.81-3.90 (1H, m), 4.58-4.66 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 171 (M+H)+.
【0119】
(参考例12)4-(1-メチルピペラジン-4-イル)ピペリジンの合成:
【化16】
1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジノン(1.50g、7.53mmol)のジクロロメタン(25.0mL)溶液に、1-メチルピペラジン(0.905g、9.03mmol)、酢酸(0.497g、8.28mmol)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(1.92g、9.03mmol)を0℃で加え、反応液を室温にて16時間撹拌した。反応液を0℃まで冷却した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣を塩酸(1.0N)に溶解し、酢酸エチルで抽出した。水層に48%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性とした後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をメタノール(25.0mL)に溶解し、濃塩酸(5.0mL)を加えた後に40℃で12時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後に蒸留水に溶解した。48%水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性とした後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮し、4-(1-メチルピペラジン-4-イル)ピペリジン(0.826g、4.51mmol、60%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.35 (2H, dd, J=12.0, 3.6 Hz), 1.41 (2H, dd, J=12.0, 3.6 Hz), 1.85 (2H, d, J=12.8 Hz), 1.96-2.06 (2H, br), 2.28 (3H, s), 2.32 (1H, tt, J=11.6, 3.6 Hz), 3.37-3.70 (8H, m), 3.14 (2H, d, J=12.8 Hz).
ESI-MS: m/z= 169 (M+H)+.
【0120】
(参考例13)粗4-ジエチルアミノピペリジンの合成:
【化17】
ベンジル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシレート(0.500g、2.14mmol)のジクロロメタン(12.0mL)溶液に、ジエチルアミン(0.276mL、2.68mmol)、酢酸(0.0120mL、0.214mmol)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(0.681g、3.22mmol)を0℃で加え、反応液を室温にて16時間撹拌をした。反応液を0℃まで冷却した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製した。得られた粗精製物をメタノール(8.0mL)に溶解し、パラジウム/炭素(10%wet、0.180g、0.169mmol)を室温で加え、水素雰囲気下、16時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮し、4-ジエチルアミノピペリジンの粗生成物を得た。
【0121】
(参考例14)1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1,3-ジオンの合成:
【化18】
1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)エタノン(1.00g、5.87mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、7.05mL、14.1mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度でエチル 1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキシレート(1.09g、7.05mmol)のテトラヒドロフラン溶液(9.0mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1,3-ジオン(0.990g、3.56mmol、61%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.32-1.5 (2H, m), 1.80-1.94 (2H, m), 2.22-41 (7H, m), 2.60-2.70 (1H, m), 3.03-3.13 (1H, m), 3.80-3.89 (1H, m), 4.01 (3H, s), 4.23 (2H, dd, J=15.6, 36.8 Hz), 4.55-4.67 (1H, m), 7.05 (1H, s), 7.14 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 279 (M+H)+.
【0122】
(参考例15)1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパン-1,3-ジオンの合成:
【化19】
エチル 3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロパノエート(0.200g、1.02mmol)のトルエン(0.46mL)溶液に、4-(1-メチルピペラジン-4-イル)ピペリジン(0.170g、0.927mmol)を室温で加え、反応液を110℃にて16時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパン-1,3-ジオン(0.290g、0.870mmol、94%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.38-1.60 (2H, m), 1.82-1.90 (2H, m), 1.95-2.10 (1H, m), 2.27 (3H, s), 2.36-2.68 (9H, m), 3.02-3.12 (1H, m), 3.79-3.88 (1H, m), 3.98 (3H, s), 4.13-4.28 (2H, m), 4.57-4.90 (1H, m), 7.02-7.04 (1H, m), 7.11-7.13 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 334 (M+H)+.
【0123】
(参考例16)1-(4-(ジエチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1,3-ジオンの合成:
【化20】
エチル 3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロパノエート(0.150g、0.765mmol)のトルエン(0.38mL)溶液に、粗4-ジエチルアミノピペリジン(0.143g、0.917mmol)を室温で加え、反応液を110℃にて10時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジエチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1,3-ジオン(0.0750g、0.245mmol、32%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.02 (6H, t, J=6.8 Hz), 1.37-1.58 (2H, m), 1.73-1.98 (2H, m), 2.48-2.78 (6H, m), 3.01-3.11 (1H, m), 3.80-3.88 (1H, m), 4.00 (3H, s), 4.14-4.28 (2H, m), 4.60-4.70 (1H, m), 7.03-7.05 (1H, m), 7.12-7.14 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 307 (M+H)+.
【0124】
(参考例17)1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オンの合成:
【化21】
1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)エタノン(0.0500g、0.294mmol)のテトラヒドロフラン(0.8mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.162mL、0.323mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.0390g、0.352mmol)のテトラヒドロフラン溶液(0.4mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(0.0220g、0.0785mmol、27%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.32-1.53 (2H, m), 1.82-1.92 (2H, m), 2.27-2.41 (7H, m), 2.60-2.72 (1H, m), 2.98-3.23 (3H, m), 3.77 (3H, s), 3.99-4.08 (1H, m), 4.58-4.82 (2H, m), 5.18-5.26 (1H, m), 6.86 (1H, s), 6.93 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 281 (M+H)+.
【0125】
(実施例1)3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1-オンの合成:
【化22】
1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1,3-ジオン(0.285g、0.890mmol)のメタノール(4.50mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.0370g、0.979mmol)を室温で加え、反応液を同じ温度で3時間撹拌を行った。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、減圧濃縮した。残渣に蒸留水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-モルホリノピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン(0.0711g、0.221mmol、25%)(以下、実施例1の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.08-1.50 (7H, m), 1.60-1.76 (2H, m), 2.36-2.46 (5H, m), 2.75-3.05 (3H, m), 3.64 (3H, s), 3.92-4.02 (1H, m), 4.32-4.42 (1H, m), 4.99-5.08 (1H, m), 5.34-5.49 (1H, m), 6.70-6.72 (1H, m), 7.01-7.03 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 323 (M+H)+.
【0126】
(実施例2)1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-プロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンの合成:
【化23】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.300g、1.76mmol)のテトラヒドロフラン(6.00mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.969mL、1.94mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-プロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.292g、2.12mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2.8mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-プロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(0.296g、0.960mmol、55%)(以下、実施例2の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 0.85 (3H, t, J=7.4 Hz), 1.00-1.40 (2H, m), 1.61-1.80 (4H, m), 2.10-2.33 (7H, m), 2.45-2.59 (1H, m), 2.73-2.88 (1H, m), 2.93-3.13 (2H, m), 3.86-4.00 (3H, m), 4.25-4.35 (1H, m),4.98-5.05 (1H, m), 5.34-5.40 (1H, m), 6.72 (1H, s), 7.07 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 309 (M+H)+.
【0127】
(実施例3)1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンの合成:
【化24】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.300g、1.76mmol)のテトラヒドロフラン(6.00mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.969mL、1.94mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.292g、2.12mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2.8mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(0.302g、0.979mmol、56%)(以下、実施例3の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.04-1.41 (8H, m), 1.62-1.80 (2H, m), 2.16 (6H, s), 2.25-2.34 (1H, m), 2.48-2.59 (2H, m), 2.76-2.88 (1H, m), 2.95-3.16 (2H, m), 3.90-4.00 (1H, m), 4.27-4.38 (1H, m), 5.05-5.12 (1H, m), 5.36-5.42 (1H, m), 6.77 (1H, s), 7.20 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 309 (M+H)+.
【0128】
(実施例4)3-(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンの合成:
【化25】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.231g、1.36mmol)のテトラヒドロフラン(5.10mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.745mL、1.49mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.235g、1.63mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.70mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、3-(5-クロロ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(0.159g、0.505mmol、37%)(以下、実施例4の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.04-1.21 (1H, m), 1.28-1.40 (1H, m), 1.64-1.80 (2H, m), 2.15 (6H, s), 2.24-2.35 (1H, m), 2.44-2.60 (1H, m), 2.78-2.88 (1H, m), 2.95-3.11 (2H, m), 3.59 (3H, s), 3.90-3.98 (1H, m), 4.27-4.35 (1H, m), 5.00-5.10 (1H, m), 5.50-5.58 (1H, m), 6.85 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 315 (M+H)+.
【0129】
(実施例5)1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンの合成:
【化26】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.300g、1.76mmol)のテトラヒドロフラン(6.00mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.969mL、1.94mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.292g、2.12mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2.80mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(2-メトキシエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(0.193g、0.594mmol、34%)(以下、実施例5の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.04-1.40 (2H, m), 1.62-1.80 (2H, m), 2.10-2.35 (7H, m), 2.46-2.59 (1H, m), 2.80-2.90 (1H, m), 2.95-3.10 (2H, m), 3.24 (3H, s), 3.61 (2H, t, J=5.5 Hz), 3.90-4.00 (1H, m), 4.10-4.38 (3H, m), 5.05-5.11 (1H, m), 5.38-5.42 (1H, m), 6.73 (1H, s), 7.07 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 325 (M+H)+.
【0130】
(実施例6)1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オンの合成:
【化27】
1-(4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル)エタノン(0.0760g、0.448mmol)のテトラヒドロフラン(1.80mL)溶液にリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液(2.0M、0.246mL、0.492mmol)を-78℃で滴下し、同じ温度で1時間撹拌した。反応液に同じ温度で1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(0.0860g、0.448mmol)のテトラヒドロフラン溶液(0.70mL)を加え、1時間撹拌後、0℃で更に1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、炭酸カリウム水溶液を順に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(0.0845g、0.233mmol、52%)(以下、実施例6の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.03-1.40 (2H, m), 1.63-1.79 (2H, m), 2.10-2.33 (7H, m), 2.47-2.59 (1H, m), 2.78-2.90 (3H, m), 2.95-3.13 (2H, m), 3.90-3.98 (1H, m), 4.21-4.36 (3H, m), 5.03-5.10 (1H, m), 5.49-5.54 (1H, m), 6.77 (1H, s), 7.17 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 363 (M+H)+.
【0131】
(実施例7)(S)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オンの合成:
【化28】
1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(3.32g)をHPLC精製にて光学分割し、溶出液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、(S)-1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(0.467g、>99%ee)(以下、実施例7の化合物)を白色固体として得た。
HPLC保持時間:8.4min、機器:株式会社島津製作所製LC-10ADvpシステム、カラム:CHIRALCEL OZ-H、4.6×250mm(株式会社ダイセル製)、溶媒:0.01%エチレンジアミン含有メタノール(v/v)、流量:0.5mL/min、検出法:UV220nm、カラム温度:40℃.
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.32-1.53 (2H, m), 1.82-1.92 (2H, m), 2.27-2.41 (7H, m), 2.60-2.72 (1H, m), 2.98-3.23 (3H, m), 3.77 (3H, s), 3.99-4.08 (1H, m), 4.58-4.82 (2H, m), 5.18-5.26 (1H, m), 6.86 (1H, s), 6.93 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 281 (M+H)+.
【0132】
(実施例8)3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパン-1-オンの合成:
【化29】
1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパン-1,3-ジオン(0.290g、0.870mmol)のメタノール(4.4mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.0360g、0.957mmol)を室温で加え、反応液を同じ温度で3時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、減圧濃縮した。残渣に蒸留水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパン-1-オン(0.140g、0.417mmol、48%)(以下、実施例8の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.45-1.66 (4H, m), 1.87-1.95 (2H, m), 2.26-2.30(3H, s), 2.38-2.70 (8H, m), 2.98-3.23 (3H, m), 3.77 (3H, s), 4.00-4.10 (1H, m), 4.60-4.70 (2H, m), 5.17-5.25 (1H, m), 6.85-6.88 (1H, m), 6.92-6.95 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 336 (M+H)+.
【0133】
(実施例9)1-(4-(ジエチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オンの合成:
【化30】
1-(4-(ジエチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1,3-ジオン(0.0800g、0.261mmol)のメタノール(1.3mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.0109g、0.287mmol)を室温で加え、反応液を同じ温度で3時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、減圧濃縮した。残渣に蒸留水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を10%塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル、クロロホルム/メタノール)で精製し、1-(4-(ジエチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(0.0561g、0.182mmol、70%)(以下、実施例9の化合物)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 0.94 (6H, t, J=6.8 Hz), 1.05-1.75 (5H, m), 2.42-3.10 (8H, m), 3.64 (3H, s), 3.93-4.02 (1H, m), 4.32-4.43 (1H, m), 5.00-5.08 (1H, m), 5.34-5.42 (1H, m), 6.69-6.71 (1H, m), 7.01-7.03 (1H, m).
ESI-MS: m/z= 309 (M+H)+.
【0134】
(実施例10)ラットの各組織から調製して得られた膜画分に対する環状アミン誘導体(I)の結合評価:
ラットの各組織から調製して得られた膜画分に対するHで標識された環状アミン誘導体(I)の結合性を評価することにより、環状アミン誘導体(I)の分子標的を含む組織を明らかにした。
【0135】
環状アミン誘導体(I)としては、実施例7の化合物を用いた。
【0136】
雄性SDラット(日本チャールズリバー株式会社製)を7週齢で使用した。ラットをイソフルランで麻酔し、内壁をヘパリンナトリウム注(エイワイファーマ株式会社製)で処理したシリンジを用いて腹大動脈より放血致死させた。放血致死後60分以内に大脳、小脳、脳幹、脳幹、脊髄、後根神経節、坐骨神経、皮膚、心臓、筋肉、肝臓、腎臓及び小腸を摘出した。大脳は両側の大脳半球を採取した。小脳は全脳より採取した。脳幹は全脳より大脳及び小脳を取り除いた部分を採取した。脊髄は胸髄および腰髄の一部を摘出し、硬膜を剥離し、残余の神経根を取り除いて採取した。後根神経節は両側の腰部神経節(L3~L6)を採取した。坐骨神経は両側の坐骨神経を摘出し、脂肪等の付着組織を取り除いて採取した。皮膚は前後肢足蹠部の皮膚の一部を採取した。心臓は摘出した全量を採取した。筋肉は大腿四頭筋の一部を採取した。肝臓は外側左葉を採取した。腎臓は摘出した全量を採取した。小腸は内容物を洗浄し、十二指腸及び空腸周辺部約5cmを採取した。採取した組織は直ちにドライアイスにて凍結し、-80℃にて保存した。後根神経節、坐骨神経、筋肉及び皮膚は10匹の個体から採取した組織を混合し、1サンプルとして扱った。その他の組織は3匹から採取した組織を混合して1サンプルとして扱った。
【0137】
採取した組織にホモジナイズバッファー(スクロース(1M)、Tris-HCl(0.5M)及び1×プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマアルドリッチ社製)、pH7.6)を加えてホモジナイザーを用いて、各組織のホモジネート試料を調製した。各ホモジネート試料を1000×g、4℃で10分間遠心し、未破砕組織を除去した。上清を10万×g、4℃で60分間超遠心し、得られた沈殿をKrebs-Ringer炭酸水素バッファー(シグマアルドリッチ社製)にて懸濁し、BCAプロテインアッセイキット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)でタンパク質量を定量した。
【0138】
膜画分とHで標識された実施例7の化合物の反応はマイクロチューブ中で、すべて上記Krebs-Ringer炭酸水素バッファーを用いて行った。各組織の膜画分のタンパク質溶液(0.2mg/mL、200μL)に実施例7の化合物溶液(非標識体、400μM、100μL)を添加したものをサンプルA群とし、Krebs-Ringer炭酸水素バッファー(100μL)を添加したものをサンプルB群とした。
【0139】
上記のサンプルA群及びB群に対し、オクチル-β-D-チオグルコピラノシド(0.4%(w/v))を含むHで標識された実施例7の化合物(80nM、100μL)を添加し、速やかに37℃のインキュベーター中に移動して反応を開始させた。1時間インキュベーションした後、氷上にて5分間以上冷却を行い、反応を停止させた。あらかじめ0.05%ポリエチレンイミン溶液に浸したグラスフィルター(パーキンエルマー株式会社製)に反応溶液を加えた後、急速減圧して吸引濾過し、グラスフィルター上に膜画分を吸着させた。グラスフィルターをKrebs-Ringer炭酸水素バッファー6回洗浄後、Hionic-Fluor(パーキンエルマー株式会社製)を10mL添加し、結合したHで標識された実施例7の化合物の放射能について、壊変率(以下、dpmと記す)を液体シンチレーション法により測定した。特異的結合(dpm/μg)は、サンプルB群に対するdpmの測定値の平均値からサンプルA群に対するdpmの測定値の平均値を引いた差を、タンパク質量で除した値(dpm/μg)として算出した。
【0140】
ラットの各組織から調製して得られた膜画分と、Hで標識された実施例7の化合物の結合性評価の結果を図2に示す。図2の縦軸は特異的結合(dpm/μg)を示す(平均値、各群2例)。横軸は、左から大脳、小脳、脳幹、脊髄、後根神経節、坐骨神経、心臓、肝臓、腎臓、小腸、筋肉、皮膚の各組織から調製して得られた膜画分を示す。
【0141】
その結果、各組織から調製して得られた膜画分に対する実施例7の化合物の特異的結合は、後根神経節から調製して得られた膜画分で顕著であった。次いで坐骨神経から調製して得られた膜画分の特異的結合は、後根神経節から調製して得られた膜画分の特異的結合の42%であった。脊髄から調製して得られた膜画分の特異的結合は、後根神経節から調製して得られた膜画分の特異的結合の23%であった。脳幹から調製して得られた膜画分の特異的結合は、後根神経節から調製して得られた膜画分の特異的結合の4.2%であり、脳を含むその他の組織から調製して得られた膜画分の特異的結合は、後根神経節から調製して得られた膜画分の特異的結合の1%未満であった。実施例7の化合物が後根神経節、坐骨神経といった末梢神経又は脊髄から調製して得られた膜画分に対して特異的に結合したことから、実施例7の化合物の分子標的は、末梢神経又は脊髄に存在し、環状アミン誘導体(I)は末梢神経又は脊髄に存在する膜に結合して作用することが見出された。
【0142】
(実施例11)環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩の結合分子の同定:
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩の結合分子を同定するために、環状アミン誘導体(I)を固定化したFG beadsを用いたアフィニティ精製及び網羅的同定を行った。
【0143】
環状アミン誘導体(I)とアミノ基リンカーを有するFG beadsとをアミド結合により固定化するため、カルボキシル基を有する環状アミン誘導体を合成した。
【0144】
上記のカルボキシル基を有する環状アミン誘導体としては、下記の化学式で示される、(S)-2-(3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロポキシ)酢酸(以下、ビーズ固定化用化合物)を用い、以下の方法により合成した。
【0145】
ビーズ固定化用化合物の合成:
【化31】
ベンジル (S)-2-(3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロポキシ)アセテート(0.0550g、0.128mmol)のエタノール(2.50mL)溶液に、パラジウム-炭素(10%wet、14.0mg)を室温で加え、水素雰囲気下、6時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮し、(S)-2-(3-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-オキソプロポキシ)酢酸(0.0404g、0.119mmol、93%)を無色油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.30-1.69 (2H, m), 1.88-2.10 (2H, m), 2.40-2.63 (7H, m), 2.88-3.20 (3H, m), 3.21-3.41 (1H, m), 3.74-3.98 (5H, m), 4.09-4.27 (1H, m), 4.63-4.78 (1H, m), 5.20-5.26 (1H, m), 6.84 (1H, s), 6.95 (1H, s).
ESI-MS: m/z= 339 (M+H)+.
【0146】
NH beads(5mg、多摩川精機株式会社製)に、ビーズ固定化用化合物を固定した。まず、N,N-ジメチルホルムアミド(160μL)にビーズ固定化用化合物溶液(20mM、200μL)、スクシンイミド溶液(200mM、20μL)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド溶液(200mM、20μL)を添加し、マイクロチューブミキサーを用いて室温で2時間反応させ、活性化したビーズ固定化用化合物溶液を作製した。次いでNH beadsに、N,N-ジメチルホルムアミド(900μL)及び上記の活性化したビーズ固定化用化合物溶液(100μL)を加え、マイクロチューブミキサーで室温、一晩反応させた。さらに、N,N-ジメチルホルムアミド(500μL)で3回洗浄後、20%になるように無水酢酸を加え、マイクロチューブミキサーで室温、2時間反応させた。最終的に、50%メタノール(500μL)で3回洗浄し、環状アミン誘導体固定化ビーズとした。
【0147】
上記の環状アミン誘導体固定化ビーズと反応させるタンパク質溶液は、ラット後根神経節から調製した。ラット後根神経節は6週齢の雄性SDラット(日本チャールスリバー株式会社製)から分離した。ラットをウレタンにて麻酔し、腹大動脈を切開して放血により安楽死させた。後背部を切開した後、脊柱を摘出し氷冷した。脊柱背側を切り取り、脊柱腹側から脊髄を除去した後、神経線維束を伴った後根神経節(T11から13及びL3から6、両側)を精密ピンセットで摘出した。摘出した後根神経節を氷冷したLeibovitz’s L-15培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に浸漬させ、実体顕微鏡下で神経線維束を除去し、後根神経節を分離した。分離した後根神経節は液体窒素で凍結させ、-80℃に保存した。後根神経節は21匹の個体から採取した組織を混合し、1サンプルとして扱った。
【0148】
後根神経節をアッセイバッファー(NaCl(140mM)、KCl(5mM)、CaCl・2HO(1.2mM)、MgCl・6HO(2mM)、D(+)-グルコース(14mM)、Hepes(10mM)及びプロテアーゼインヒビターカクテル(シグマアルドリッチ社製)、pH7.4)中で、ダウンス型ホモジナイザーを用いてホモジナイズし、後根神経節破砕液を調製した。後根神経節破砕液に界面活性剤n-Dodecyl-β-D-Maltopyranoside(シグマアルドリッチ社製)を1%になるように加え、4℃で1時間インキュベーションした。20,400×gで30分間遠心分離し、上清を40倍希釈してアミコンウルトラ3kDa(メルクミリポア社製)で濃縮した。
【0149】
環状アミン誘導体固定化ビーズと上記タンパク質溶液を混合し、4℃で一晩反応させた。ビーズをアッセイバッファーで3回洗浄後、PBS(-)で1回洗浄した後、PBS(-)に懸濁した。ビーズに結合したタンパク質をショットガン解析(LC-MS/MS)で網羅的に同定した。
【0150】
化合物を固定化していないビーズでは結合せず、環状アミン誘導体固定化ビーズに結合するタンパク質を表3に示す。エントリーID(ラット)及びタンパク質名は、タンパク質データベースUniprot(http://www.uniprot.org/)より引用した。ただし、表3中、エントリーID F1LTJ5のタンパク質名について、UniprotではUncharacterized Proteinであったが、PANTHER Classification Systemにおいて、基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質のオルソログであったことから、タンパク質名は基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質とした。
【0151】
【表3】
【0152】
同定された分子8種のうち、アドビリンは、他の組織に比較して末梢神経組織に高く発現することが報告されている(Ravenallら、European Journal of Neuroscience、2002年、第27巻、p.14404-14414)。実施例10において、実施例7の化合物の分子標的は、末梢神経に多く存在する分子であることが示されていることから、環状アミン誘導体(I)の分子標的は、アドビリンである可能性が示された。
【0153】
また、アドビリンは、本実施例で同定されたミオシン等と複合体を形成することが報告されている(Chuangら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2018年、第115巻、p.E8557-E8566)。したがって、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、アドビリン及び/又は本実施例で同定されたタンパク質等で構成されるアドビリン複合体に結合し、アドビリンの機能を調節する可能性が示された。
【0154】
(実施例12)ラット後根神経節神経細胞株における細胞内アクチンフィラメント減少作用:
環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩のF11細胞(ラット後根神経節神経株化細胞)における細胞内アクチンフィラメント量に対する作用を検討した。
【0155】
被験物質としては、実施例1、2、3、4、5、6、7、8及び9の化合物を用いた。
【0156】
比較例の化合物としては、表4に示す、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-(1-エチル-1H-イミダゾール-2-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(以下、比較例1の化合物)、1-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(以下、比較例2の化合物)、1-((R)-3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(以下、比較例3の化合物)及び1-((R)-3-(3-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-1-オン(以下、比較例4の化合物)を用いた。比較例1、2、3及び4の化合物は、公知文献(国際公開第2016/136944号)に記載の方法に従って合成した。
【0157】
【表4】
【0158】
F11細胞を培養フラスコから剥離するため、細胞に0.25%Trypsin/EDTA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を加え、室温で数分インキュベーションした。その後、10%ウシ胎児血清含有DMEM培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を加え懸濁し、1,500rpmで1分間遠心した。遠心上清を除去した後、0.5%ウシ胎児血清含有DMEM培地を加えて細胞を懸濁し、ラミニンコート(2μg/cm、シグマアルドリッチ社製)したポリ-D-リジンコート96ウェルプレート(BD バイオサイエンス社製)に播種し、37℃、5% CO環境下で培養した。細胞播種から2時間後、N,N-ジブチルアデノシン3’,5’-リン酸(終濃度1mM、シグマアルドリッチ社製)及びリコンビナントラットGDNF(終濃度50ng/mL、ぺプロテック社製)を添加し、37℃、5% CO環境下で7日間培養して分化させた。
【0159】
培養開始7日間後、オキサリプラチン(最終濃度15μM)を含む0.5%ウシ胎児血清含有DMEM培地に交換し、5日間培養することで、神経軸索損傷を誘導した。実施例又は比較例の各化合物はオキサリプラチンと同様、培地に含ませて処置した(最終濃度10μM)。
【0160】
オキサリプラチン及び各化合物処置5日間後、細胞をPBS(-)で3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(和光純薬社製)を添加して室温で10分間静置し、細胞を固定した。Acti-stain 670 ファロイジン(サイトスケルトン社製)を加え、室温で30分間インキュベーションしてアクチンフィラメントを染色した。IN Cell Analyzer 2200(GEヘルスケア社製)を用いて細胞の画像を取得し、IN Cell Investigator Developer Toolboxを用いて画像解析を行った。細胞内アクチンフィラメント量は、アクチンフィラメントに結合した蛍光標識されたファロイジンの蛍光量(Density)で示した。
【0161】
オキサリプラチンを単独で処置した群(以下、オキサリプラチン単独処置群)は、オキサリプラチンを処置しない群に比べ、細胞内アクチンフィラメント量が5%増加し、統計学的に有意な増加を示したことから、アクチンフィラメント代謝回転調節異常を誘発していることを確認した(p<0.05、Studentのt検定)。このオキサリプラチン単独処置群の細胞内アクチンフィラメント量に対する、各化合物による細胞内アクチンフィラメント減少率を算出した。
【0162】
F11細胞における各化合物の細胞内アクチンフィラメント減少効果を表5に示した。表中の「細胞内アクチンフィラメント減少率」は、オキサリプラチン単独処置群の細胞内アクチンフィラメント量に対し、各化合物処置により減少した細胞内のアクチンフィラメント量の比率(%)を示す(平均値、各群の例数は1例(1ウェル)として5例)。表中の「被験化合物」は、各化合物による化合物処置群を示す。
【0163】
【表5】
【0164】
溶媒処置群と比較して、実施例1、2、3、4、5、6、7、8及び9の化合物は、細胞内のアクチンフィラメント量を5%以上減少させた。一方で、比較例1、2、3及び4の化合物の細胞内のアクチンフィラメント量の減少率は、5%以下であった。
【0165】
(実施例13)ラット脊髄神経結紮モデルにおけるアクチンフィラメント代謝回転調節異常改善作用:
ラット脊髄神経結紮モデルの坐骨神経における、アクチンフィラメント量と単量体アクチン量の比に対する環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩の作用を検討した。
【0166】
雄性SDラット(日本チャールズリバー株式会社製)を6週齢で使用した。ラット脊髄神経結紮モデルは、イソフルラン吸入麻酔下にてラットの右側腰背部を切開して脊髄椎弓を切除し、脊髄神経のL5及びL6の神経根を完全結紮した後、筋層及び皮膚を縫合することにより作製した。陰性対照(偽手術群)は、右側のL5及びL6の神経を露出させ、結紮は行わずに筋層及び皮膚を同様に縫合した。神経結紮後1週間が経過したラットを以下の実験に使用した。
【0167】
ラット脊髄神経結紮モデルに実施例7の化合物を6、20又は60mg/kgの3用量で、1日1回、2日間経口投与し、最終投与3時間後にイソフルラン麻酔下にて坐骨神経を採取し、安楽死させた。採取した坐骨神経は、-80℃で凍結保存した。対照として、溶媒である蒸留水を投与した偽手術群及び脊髄神経結紮モデルの蒸留水投与群(蒸留水投与群)を設け、それぞれ上記同様の処置により坐骨神経を採取した後、安楽死させた。
【0168】
アクチンフィラメント及び単量体アクチンの定量には、G-actin/F-actin in vivo assay kit(サイトスケルトン社製)を用いた。凍結組織はプロテアーゼインヒビター及びATP(1mM)含有lysis and F-actin stabilization buffer(サイトスケルトン社製)を加え、ホモジナイズした。ホモジネートを37℃で10分間インキュベーションし、350×gで5分間遠心した。その上清を100,000×g,37℃で1時間遠心した。遠心後に得られた上清を単量体アクチンサンプルとし、沈殿物をアクチンフィラメントサンプルとした。アクチンフィラメントサンプルは、氷上で1時間インキュベーションし、15分に1回ピペッティングした。単量体アクチンサンプル及びアクチンフィラメントサンプル中のアクチン量は、ウェスタンブロット法により測定した。単量体アクチンサンプル及びアクチンフィラメントサンプルにSDSサンプルバッファーを加えて熱変性処置した後、SDS-PAGEプレキャストゲル(バイオラッド社製)にアプライして電気泳動し、タンパク質を分離した。ゲル中のタンパク質を電気的にPVDFメンブレンに移動・固定化してブロット(ブロットメンブレン)を作製した(トランスブロット Turbo ブロッティングシステム、バイオラッド社製)。ブロットメンブレンをブロッキング(Block One、ナカライテスク社製)後、アクチンに対する抗体(抗アクチンウサギポリクローナル抗体)を添加し、室温で1時間インキュベーションした。ブロットメンブレンを洗浄後、抗ウサギHRP標識二次抗体(GEヘルスケア社製)を添加し、室温で30分間インキュベーションした。ブロットメンブレンを洗浄後、検出試薬(ECL Prime、GEヘルスケア社製)を加え、CCDイメージャー(バイオラッド社製)を用いて化学発光を検出した。Image Labソフトウェア(バイオラッド社製)を用いてアクチンのバンドの発光強度を定量した。
【0169】
実施例7の化合物のラット脊髄神経結紮モデルの坐骨神経におけるアクチンフィラメント/単量体アクチン比の評価結果を図3に示す。図3aには、坐骨神経より単離されたアクチンフィラメントサンプル(上段)及び単量体アクチンサンプル(下段)中に存在するアクチンタンパク質を、ウェスタンブロット法により検出した画像を示す。各アクチンタンパク質のバンドの発光強度を定量し、単量体アクチンに対するアクチンフィラメントの比(以下、アクチンフィラメント/単量体アクチン比)を算出して図3bに示す。図3bの縦軸はアクチンフィラメント/単量体アクチン比(平均値±標準誤差)を示す。横軸の、「蒸留水偽手術」は、偽手術群(6例)を示し、「蒸留水」は、脊髄神経結紮モデルの蒸留水投与群(7例)を示し、「実施例7の化合物」は、脊髄神経結紮モデルの実施例7の化合物の投与群を示し、「6」は、脊髄神経結紮モデルの実施例7の化合物の6mg/kg投与群(6例)を示し、「20」は脊髄神経結紮モデルの実施例7の化合物の20mg/kg投与群(6例)を示し、「60」は脊髄神経結紮モデルの実施例7の化合物の60mg/kg投与群(7例)を示す。図中の「#」は、偽手術群と比較して統計学的に有意(#:p<0.05、Studentのt検定)な差であることを示し、図中の「*」は、脊髄神経結紮モデルの蒸留水投与群と比較して統計学的に有意(*:p<0.025、Williamsの多重比較、片側)な差であることを示す。
【0170】
蒸留水を投与したラット脊髄神経結紮モデル群(蒸留水投与群)では偽手術群に比べてアクチンフィラメント/単量体アクチン比が有意に上昇した。実施例7の化合物の投与群ではアクチンフィラメント/単量体アクチン比が実施例7の化合物の投与用量の増加に伴って低下し、60mg/kg投与群では蒸留水投与群と比べて有意な減少が認められた。すなわち、実施例7の化合物は、脊髄神経結紮による坐骨神経のアクチンフィラメント代謝回転調節の異常を改善する作用を持つことが明らかとなった。
【0171】
実施例11に示された環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩の分子標的の一つであるアドビリンの機能として、アクチンへの結合を介してアクチンフィラメント代謝回転を調節する機能が報告されている(Hasegawaら、The Journal of Neuroscience、2007年、第27巻、p.14404-14414)。したがって、実施例11、12及び13より、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、アドビリン及び/又はアドビリン複合体への結合作用とともに、アドビリン及び/又はアドビリン複合体の機能を促進し、アクチンフィラメント代謝回転調節異常の改善作用を示すことが明らかとなった。
【0172】
(実施例14)ラット後根神経節初代培養細胞における神経軸索伸展促進作用の評価:
ラット後根神経節初代培養細胞における神経突起伸展に対する環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩の作用を検討した。
【0173】
雄性SDラット(日本チャールズリバー株式会社製)を4~7週齢で使用した。ラットをウレタンの腹腔内投与により麻酔した。麻酔がかかったことを確認した後、速やかに腹大動脈を切開し、放血により安楽死させた。後背部を切開した後、脊柱を摘出し、氷冷した。脊柱背側を切り取り、脊柱腹側から脊髄を除去し、脊柱腹側の後根神経節を露出させた。ピンセットで後根神経節(L3から6、両側)を摘出し、氷冷したLeibovitz’s L-15(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)培地に浸漬し、実体顕微鏡下で神経線維束を除去した。神経線維束を除去した後根神経節は、眼科バサミで細かく切れ込みを入れて後根神経節片とした。
【0174】
後根神経節片を約3mLのコラゲナーゼA(ロシュモレキュラーシステム社製)溶液に浸漬し、37℃で20分間インキュベーションした。インキュベーション後、200×g、25℃で5分間遠心分離して上清のコラゲナーゼA溶液を除去し、トリプシン溶液を約1mL添加し、37℃で5分間インキュベーションした。次いで10%ウシ胎児血清を含むDMEM(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を約3mL添加し、200×g、室温で5分間遠心分離後に上清を除去した。上清を除去後、沈殿に2%B27サプリメントを含有するNeurobasal-A Medium(以下、培養培地、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を約5mL添加し、マイクロピペットで分散させた後、70μmセルストレイナー(BDファルコン社製)にてデブリスを除去した細胞を回収し、さらに5mLの培養培地でセルストレイナー上のデブリスを洗浄して細胞を回収した。回収した細胞を200×g、室温で5分間、遠心分離し、上清を除去した。
【0175】
上清除去後、培養培地を5mL添加し、細胞ペレットを懸濁した。この細胞懸濁液を、ラミニンコート(6μg/cm、シグマアルドリッチ社製)したポリ-D-リジンコート96ウェルプレート(BD バイオサイエンス社製)に100μLずつ播種し、37℃、5%COのCOインキュベーター内で培養した。
【0176】
培養2時間後、オキサリプラチン(最終濃度3μM)を含む培養培地に交換し、7日間培養することで、神経軸索損傷を誘導した。実施例7の化合物は、オキサリプラチン処置と同時に培養培地に含ませて処置した(最終濃度10、30又は100μM)。
【0177】
培養開始1週間後、細胞をPBS(-)で3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液で10分間処理した。PBS(-)で3回洗浄後、20%ブロッキングワン(ナカライテスク社製)、0.1%トリトンX-100/PBS(-)で1時間処理した。PBS(-)で1回洗浄後、抗βIIIチューブリンマウスモノクローナル抗体(プロメガ社製)を、5%ブロッキングワンを含む0.1%トリトンX-100/PBS(-)で500倍希釈し、4℃で一晩処理した。一晩処理後、PBS(-)で3回洗浄し、2次抗体(CF488A抗マウスIgGロバ抗体、Biotium社製)を、5% ブロッキングワンを含む0.1%トリトンX-100/PBS(-)で希釈し、室温で1時間処理した。次いでPBS(-)で3回洗浄後、PBS(-)で1000倍希釈したDAPI(同仁化学研究所社製)を5分間処理し、PBS(-)で3回洗浄した。
【0178】
IN Cell Analyzer 2200(GEヘルスケア社製)を用いて細胞の画像を取得し、IN Cell Investigator Developer Toolboxを用いて画像解析を行った。解析結果は、神経突起として認識された領域の長さ(Fiber length)を神経細胞数で除した数値を1細胞当たりの神経突起の長さとして示し、神経突起の長さを増加させる作用を神経軸索伸展作用として評価した。
【0179】
図4に無処置群(蒸留水処置)、オキサリプラチン単独処置群、及びオキサリプラチン及び実施例7の化合物の100μM処置群の各条件の平均的な細胞例の画像を示した。図4に示す通り、オキサリプラチンの単独処置により神経突起の長さが短縮する像が観察され、実施例7の化合物(100μM)処置によりオキサリプラチン単独処置群と比較して神経突起の長さの増加が認められた。
【0180】
各画像の神経突起の長さの解析結果を図5に示す。図5の縦軸は、神経突起の長さ(μm/神経細胞)を示す(平均値±標準誤差、各群5例)。横軸の、「蒸留水」は無処置群を示し、「オキサリプラチン+蒸留水」はオキサリプラチン単独処置群を示し、「オキサリプラチン+実施例7の化合物」は、オキサリプラチン及び実施例7の化合物の投与群を示し、「10」は、オキサリプラチン及び実施例7の化合物の10μM処置群を示し、「30」は、オキサリプラチン及び実施例7の化合物の30μM処置群を示し、「100」は、オキサリプラチン及び実施例7の化合物の100μM処置群を示す。図中の「#」は、無処置群と比較して統計学的に有意(#:p<0.05、Studentのt検定)な差であることを示し、図中の「*」は、オキサリプラチン単独処置群と比較して統計学的に有意(*:p<0.025、Williamsの多重比較、片側)な差であることを示す。
【0181】
図5に示す通り、オキサリプラチンの単独処置によって神経突起の長さが有意に短縮したが、実施例7の化合物(10、30及び100μM)処置により、オキサリプラチン単独処置群と比較して、実施例7の化合物の用量の増加に伴う神経突起の長さの増加が認められた。実施例7の化合物の100μM処置群では、オキサリプラチン単独処置群に比べて有意な増加が認められた。すなわち、実施例7の化合物は、オキサリプラチンで神経軸索損傷を誘発されたラット後根神経節初代培養細胞において、神経軸索伸展促進作用を有することが明らかとなった。
【0182】
実施例11で示された環状アミン誘導体(I)の分子標的であるアドビリンの機能として、神経軸索を伸展する機能が報告されている(Hasegawaら、The Journal of Neuroscience、2007年、第27巻、p.14404-14414)。したがって、実施例11及び実施例14より、環状アミン誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、アドビリン及び/又はアドビリン複合体への結合作用とともに、神経軸索伸展促進作用を有することが示された。
【0183】
以上の結果より、本発明の請求の範囲の環状アミン誘導体(I)は、アドビリン機能促進作用を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の環状アミン誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、アドビリン機能促進作用を有することから、神経軸索損傷に関する疾患に対する医薬として利用できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5