(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240305BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20240305BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20240305BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20240305BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240305BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
H03H9/145 C
H03H9/64 Z
H03H3/08
B81B3/00
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2020567546
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 US2019036433
(87)【国際公開番号】W WO2019241174
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレスキ ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ヤンドラパッリ ソウミャ
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ブライアント
(72)【発明者】
【氏名】ターナー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジェッソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンチェフ ヴェントシスラフ
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-096677(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003273(WO,A1)
【文献】特表2017-526254(JP,A)
【文献】特表2013-528996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0212127(US,A1)
【文献】特開2017-220910(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021948(WO,A1)
【文献】特開2014-013991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B1/00-7/04
B81C1/00-99/00
H03H3/007-3/10
9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、少なくとも二酸化シリコン又は窒化シリコンを含む中間層とを含む基板と、
前記中間層に設けられた1つまたは複数のキャビティと、
それぞれの前記キャビティにまたがる、1つまたは複数のダイアフラムと、前記ダイアフラムに対応する部分を少なくとも除く部分が直接前記中間層に取り付けられる、単結晶圧電プレートと、
前記単結晶圧電プレートに形成された導体パターンであって、前記導体パターンは、シャント共振器および直列共振器を含むそれぞれ複数の音響共振器の複数のインターディジタル変換器(IDT)を含み、複数の前記IDTの各々のインターリーブされたフィンガーは、前記1つまたは複数のダイアフラムのそれぞれのダイアフラム上に配置される、導体パターンと、
前記シャント共振器の前記IDTのフィンガー間の第1の厚さを有する第1の誘電体層と、
前記直列共振器の前記IDTのフィンガー間の第2の厚さを有する第2の誘電体層と、
を含むフィルタデバイスであって、
前記単結晶圧電プレートおよび複数の全ての前記IDTは、前記IDTに適用される無線周波数信号がそれぞれのダイアフラムの内部でそれぞれの1次剪断音響モードを励起するように構成され、
前記第1の厚さは、前記第2の厚さよりも大きい、
フィルタデバイス。
【請求項2】
前記直列共振器の共振周波数と前記シャント共振器の共振周波数との差は、前記第1の厚さと前記第2の厚さとの差によって部分的に決まる、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項3】
前記第1の厚さは500nm以下であり、前記第2の厚さは0以上である、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項4】
励起された1次剪断音響モードの各々の音響エネルギーの流れの方向は、前記単結晶圧電プレートの表面に実質的に垂直である、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項5】
前記単結晶圧電プレートの前面と背面との間の厚さは、200nm以上1000nm以下である、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項6】
複数の前記IDTの各々は、前記単結晶圧電プレートの厚さの2倍以上25倍以下のそれぞれのピッチを有する、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項7】
前記第1
の誘電体層および
前記第2の誘電体層は、少なくとも1つの二酸化シリコンまたは窒化シリコンを含む、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項8】
前記導体パターンは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ベリリウム、金のうちの1つを含む、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項9】
前記単結晶圧電プレートのz軸は、前記単結晶圧電プレートの前面および背面に垂直である、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項10】
複数の全ての前記IDTのフィンガーは、前記単結晶圧電プレートのx軸に平行である、請求項9に記載のフィルタデバイス。
【請求項11】
複数の共振器は2つ以上のシャント共振器を含み、
前記第1の誘電体層は、2つ以上の全ての前記シャント共振器のフィンガー間に配置される、
請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項12】
複数の共振器は2つ以上の直列共振器を含み、
前記第2の誘電体層は、2つ以上の全ての前記直列共振器のフィンガー間に配置される、
請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項13】
基板に取り付けられた圧電プレート上にフィルタデバイスを製造する方法であって、
前記圧電プレートのそれぞれの部分が、キャビティ上に懸架された1つまたは複数のダイアフラムを形成するように、前記基板が含むベースと、前記ベースの上であって少なくとも二酸化シリコン又は窒化シリコンを含む中間層のうち、前記中間層に1つまたは複数のキャビティを形成することと、
シャント共振器および直列共振器を含むそれぞれ複数の共振器の複数のインターディジタル変換器(IDT)を含む導体パターンであって、複数のIDTの各々のインターリーブされたフィンガーが、1つまたは複数のダイアフラムのそれぞれのダイアフラム上に配置されている、導体パターンを形成することと、
第1の厚さを有する第1の誘電体層であって、前記シャント共振器のIDTのフィンガー間の第1の誘電体層を形成することと、
第2の厚さを有する第2の誘電体層であって、前記直列共振器のIDTのフィンガー間の第2の誘電体層を形成することと、
を含み、
前記圧電プレートおよび複数の全ての前記IDTは、前記IDTに適用される無線周波数信号がそれぞれのダイアフラムにおいてそれぞれの1次剪断音響モードを励起するように構成され、
前記第1の厚さは、前記第2の厚さよりも大きい、
方法。
【請求項14】
前記直列共振器の共振周波数と前記シャント共振器の共振周波数との差に応じて、前記第1の厚さと前記第2の厚さとの差が生じるように前記第1の誘電体層及び
前記第2の誘電体層を形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の厚さは500nm以下であり、前記第2の厚さは0以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
励起された1次剪断音響モードの各々の音響エネルギーの流れの方向は、前記圧電プレートの表面に実質的に垂直である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前
記圧電プレートの前面と背面との間の厚さは、200nm以上1000nm以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
複数の前記IDTの各々は、前
記圧電プレートの厚さの2倍以上25倍以下のそれぞれのピッチを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1
の誘電体層および
前記第2の誘電体層は、少なくとも1つの二酸化シリコンまたは窒化シリコンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記導体パターンは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ベリリウム、金のうちの1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記圧電プレートは、前
記圧電プレートの前面および背面に垂直であるz軸を有している、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
複数の全ての前記IDTのフィンガーは、前記圧電プレートのx軸に平行になるように形成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の共振器は2つ以上のシャント共振器を含み、
前記第1の誘電体層は、2つ以上の全ての前記シャント共振器のフィンガー間に配置される、
請求項13に記載の方法。
【請求項24】
複数の共振器は2つ以上の直列共振器を含み、
前記第2の誘電体層は、2つ以上の全ての前記直列共振器のフィンガー間に配置される、
請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響波共振器を使用する無線周波数フィルタ、特に通信機器で使用するためのフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)フィルタは、一部の周波数を通過させ、他の周波数を停止させるように構成された2ポートデバイスであり、「通過」は比較的低い信号損失で送信することを意味し、「停止」はブロックまたは大幅に減衰させることを意味する。フィルタを通過する周波数の範囲は、フィルタの「通過帯域」と呼ばれる。このようなフィルタによって停止される周波数の範囲は、フィルタの「阻止帯域」と呼ばれる。一般的なRFフィルタは、少なくとも1つの通過帯域と、少なくとも1つの阻止帯域を有する。通過帯域または阻止帯域の特定の要件は、特定のアプリケーションに依存する。例えば、「通過帯域」は、フィルタの挿入損失が1dB、2dB、または3dBなどの定義された値よりも優れている周波数範囲として定義され得る。「阻止帯域」は、フィルタの拒否がアプリケーションに応じて20dB、30dB、40dB、またはそれ以上などの定義された値よりも大きい周波数範囲として定義され得る。
【0003】
RFフィルタは、情報が無線リンクを介して送信される通信システムで使用される。例えば、RFフィルタは、セルラーベースステーション、携帯電話およびコンピューティングデバイス、衛星トランシーバーおよび地上局、IoT(Internet of Things)デバイス、ラップトップコンピューターおよびタブレット、固定ポイント無線リンク、および他の通信システムのRFフロントエンドにある。RFフィルタは、レーダー、電子および情報戦システムでも使用される。
【0004】
RFフィルタは通常、特定のアプリケーションごとに、挿入損失、拒否、絶縁、電力処理、直線性、サイズおよびコストなどの性能パラメータ間の最良の妥協点を実現するために多くの設計上のトレードオフを必要とする。特定の設計および製造方法と機能強化は、これらの要件の1つまたは複数を同時に実現できる。
【0005】
無線システムにおけるRFフィルタの性能の向上は、システム性能に幅広い影響を与える可能性がある。RFフィルタの改善を活用して、セルサイズの拡大、バッテリ寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、コストの削減、セキュリティの強化、信頼性の向上などのシステム性能の改善を実現できる。これらの改善は、無線システムの多くのレベルで、例えばRFモジュール、RFトランシーバー、モバイルまたは固定サブシステム、またはネットワークレベルなど、個別にまたは組み合わせて実現できる。
【0006】
より広い通信チャネル帯域幅への欲求は、必然的により高い周波数の通信帯域の使用へとつながる。現在のLTETM(Long Term Evolution)仕様では、3.3GHz~5.9GHzの周波数帯域が定義されている。これらの周波数帯域は現在使用されていない。無線通信の将来の提案には、最大28GHzの周波数のミリ波通信帯域が含まれる。
【0007】
現在の通信システム用の高性能RFフィルタは、一般に、弾性表面波(SAW)共振器、バルク音響波(BAW)共振器、フィルムバルク音響波共振器(FBAR)、およびその他のタイプの音響共振器を含む音響波共振器を組み込んでいる。ただし、これらの既存のテクノロジーは、将来の通信ネットワークで提案されているより高い周波数での使用には適していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のフィルタデバイスは、基板と、平行な前面および背面を有し、背面が基板に取り付けられた圧電プレートと、前面上に形成された導体パターンであり、それぞれ複数の共振器の複数のインターディジタル変換器(IDT)を含む導体パターンと、を含むフィルタデバイスであって、複数のIDTの各々のインターリーブされたフィンガーが、基板に形成された1つまたは複数のキャビティ上に懸架された圧電プレートのそれぞれの部分に配置され、複数の共振器は、シャント共振器および直列共振器を含み、シャント共振器のIDTのフィンガー間に堆積された第1の誘電体層の第1の厚さは、直列共振器のIDTのフィンガー間に堆積された第2の誘電体層の第2の厚さよりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)の概略的平面図および2つの概略的断面図を含む。
【
図2】
図2は、
図1のXBARの一部の概略的拡大断面図である。
【
図4】
図4は、XBARにおける水平剪断音響モードを示す図である。
【
図5】
図5は、シミュレートされたXBARのアドミタンスのチャートである。
【
図6】
図6は、異なる誘電体層を有する3つのシミュレートされたXBARのアドミタンスを比較するチャートである。
【
図7】
図7は、異なる誘電体層の厚さを有する4つのシミュレートされたXBARのアドミタンスを比較するチャートである。
【
図8】
図8は、XBARの共振周波数に対する圧電プレートの厚さの影響を示すプロットである。
【
図9】
図9は、XBARの共振周波数に対する前面誘電体層の厚さの影響を示すプロットである。
【
図10】
図10は、XBARの共振周波数に対するIDTフィンガーピッチの効果を示すプロットである。
【
図11】
図11は、LiNbO
3およびLiTaO
3プレート上のXBARのアドミタンスを比較するチャートである。
【
図12】
図12は、XBARの測定されたアドミタンスのチャートである。
【
図13】
図13は、XBARの測定されたアドミタンスの別のチャートである。
【
図14】
図14は、XBARを使用するフィルタの概略的回路図およびレイアウトである。
【
図17】
図17は、XBARを製造するためのプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この説明全体を通して、図に表示される要素には3桁または4桁の参照指定子が割り当てられる。ここで、最下位2桁は要素に固有であり、最上位1桁または2桁は要素が最初に導入された図番号である。図と併せて説明されていない要素は、同じ参照指定子を有する前述の要素と同じ特性および機能を有すると推定され得る。
【0011】
[装置の説明]
図1は、横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)100の簡略化された概略的上面図および直交断面図を示す。共振器100などのXBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、およびマルチプレクサを含むさまざまなRFフィルタで使用し得る。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタでの使用に特に適している。
【0012】
XBAR100は、それぞれ平行な前面112および背面114を有する圧電プレート110の表面上に形成された薄膜導体パターンから構成される。圧電プレートは、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ酸ランタンガリウム、窒化ガリウム、または窒化アルミニウムなどの圧電材料の薄い単結晶層である。圧電プレートは、前面と背面に対するX、Y、Z結晶軸の方向が既知で一貫しているようにカットされる。この特許で提示されている例では、圧電プレートはZカットされている。つまり、Z軸は表面に垂直である。ただし、XBARは、他の結晶学的配向を有する圧電プレート上に製造され得る。
【0013】
圧電プレート110の背面114は、圧電プレート110に機械的支持を提供する基板120に取り付けられている。基板120は、例えば、シリコン、サファイア、石英、または他のいくつかの材料であり得る。圧電プレート110は、ウェーハボンディングプロセスを用いて基板120に接合するか、または基板120上に成長させるか、または他の何らかの方法で基板に取り付け得る。圧電プレートは、基板に直接取り付けてよく、または1つまたは複数の中間材料層を介して基板に取り付けてよい。
【0014】
XBAR100の導体パターンは、インターディジタル変換器(IDT)130を含む。IDT130は、第1のバスバー132から延びるフィンガー136などの第1の複数の平行なフィンガーと、第2のバスバー134から延びる第2の複数のフィンガーとを含む。第1および第2の複数の平行なフィンガーがインターリーブされる。インターリーブされたフィンガーは、一般にIDTの「アパーチャ」と呼ばれる距離APでオーバーラップする。IDT130の最も外側のフィンガー間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。
【0015】
第1および第2のバスバー132、134は、XBAR100の端子として機能する。IDT130の2つのバスバー132、134の間に適用された無線周波数またはマイクロ波信号は、圧電プレート110内の音波を励起する。さらに詳細に論じられるように、励起された音波は、圧電プレート110の表面に対して法線方向に伝播するバルク剪断波であり、これはまた、IDTフィンガーによって生成された電界の方向に垂直または横方向である。したがって、XBARは、横方向に励起されたフィルムバルク波共振器と見なされる。
【0016】
IDT130を含む圧電プレート110の部分が、基板120に接触することなくキャビティ125上に懸架されるように、キャビティ125が基板120内に形成される。「キャビティ」は、「固体内の空の空間」という従来の意味を有する。キャビティ125は、基板120を完全に貫通する穴(断面A-Aおよび断面B-Bに示されるように)または基板120のくぼみであり得る。キャビティ125は、例えば、圧電プレート110および基板120が取り付けられる前または後に基板120を選択的にエッチングすることによって形成し得る。
図1に示すように、キャビティ125は、IDT130のアパーチャAPおよび長さLよりも広い範囲を有する長方形の形状を有する。XBARのキャビティは、規則的なポリゴンや不規則なポリゴンなど、さまざまな形状をしていてよい。XBARのキャビティは、直線または曲線の4辺より多い場合と少ない場合がある。
【0017】
図1の提示を容易にするために、IDTフィンガーの幾何学的ピッチおよび幅は、XBARの長さ(寸法L)およびアパーチャ(寸法AP)に関して大幅に誇張されている。一般的なXBARは、IDT110に10本を超える平行なフィンガーを有する。XBARは、IDT110に数百、場合によっては数千の平行フィンガーを有し得る。同様に、断面図のフィンガーの太さは大幅に誇張されている。
【0018】
図2は、XBAR100の詳細な概略的断面図を示す。圧電プレート110は、厚さtsの圧電材料の単結晶層である。tsは、例えば、100nmから1500nmであり得る。3.4GHz~6GHzのLTE
TMバンド(例えば、バンド42、43、46)のフィルタで使用する場合、厚さtsは、例えば、200nm~1000nmであり得る。
【0019】
前面誘電体層214は、圧電プレート110の前面に任意選択で形成し得る。XBARの「前面」は、定義上、基板とは反対側を向いている表面である。前面誘電体層214は、厚さtfdを有する。前面誘電体層214は、IDTフィンガー238の間に形成される。
図2には示されていないが、前面誘電体層214は、IDTフィンガー238上に堆積されてもよい。背面誘電体層216は、圧電プレート110の背面に任意選択で形成され得る。背面誘電体層216は、厚さtbdを有する。表側および裏側の誘電体層214、216は、二酸化ケイ素または窒化ケイ素などの非圧電誘電体材料であってよく、tfdおよびtbdは、例えば、0~500nmであり得る。tfdおよびtbdは、通常、圧電プレートの厚さtsよりも小さく、tfdおよびtbdは、必ずしも等しくなく、表側および裏側の誘電体層214、216は、必ずしも同じ材料である必要はない。表側および裏側の誘電体層114、216のいずれかまたは両方は、2つ以上の材料の複数の層から形成され得る。
【0020】
IDTフィンガー238は、アルミニウムまたは実質的にアルミニウム合金、銅または実質的に銅合金、ベリリウム、金、または他のいくつかの導電性材料であり得る。フィンガーと圧電プレート110との間の接着を改善するために、および/またはフィンガーを不動態化またはカプセル化するために、クロムまたはチタンなどの他の金属の薄い(導体の総厚に対して)層をフィンガーの下および/または上に形成し得る。IDTのバスバー(
図1の132、134)は、フィンガーと同じまたは異なる材料で作り得る。
【0021】
寸法pは、IDTフィンガーの中心間の間隔または「ピッチ」であり、これはIDTのピッチおよび/またはXBARのピッチと呼ばれる場合がある。寸法wは、IDTフィンガーの幅または「マーク」である。XBARのIDTは、表面音響波(SAW)共振器で使用されるIDTとは大幅に異なる。SAW共振器では、IDTのピッチは、共振周波数での音響波長の半分である。さらに、SAW共振器IDTのマーク対ピッチ比は通常、0.5に近い(つまり、マークまたはフィンガーの幅は、共振時の音響波長の約4分の1である)。XBARでは、IDTのピッチpは通常、フィンガーの幅wの2~20倍である。さらに、IDTのピッチpは、典型的には、圧電スラブ212の厚さtsの2から20倍である。XBARのIDTフィンガーの幅は、共振時の音響波長の4分の1に制限されていない。例えば、XBARのIDTフィンガーの幅は500nm以上であり得るので、IDTは光学リソグラフィーを使用して製造することができる。IDTフィンガーの厚さtmは、100nmから幅wにほぼ等しい値まであり得る。IDTのバスバー(
図1の132、134)の厚さは、IDTフィンガーの厚さtmと同じか、それより大きくてよい。
【0022】
図3Aおよび
図3Aは、
図1で定義された断面A-Aに沿った2つの代替の断面図を示す。
図3Aでは、圧電プレート310が基板320に取り付けられている。基板320を完全には貫通しないキャビティ325が、XBARのIDTを含む圧電プレート310の部分の下の基板に形成される。キャビティ325は、例えば、圧電プレート310を取り付ける前に基板320をエッチングすることによって形成され得る。あるいは、キャビティ325は、圧電プレート310に設けられた1つまたは複数の開口部を通って基板に到達する選択的エッチャントで基板320をエッチングすることによって形成され得る。
【0023】
図3Bに示すように、基板320は、ベース322および、圧電プレート310とベース322との間に配置された中間層324を含む。例えば、ベース322はシリコンであり得て、中間層324は二酸化シリコンまたは窒化シリコンまたは他の何らかの材料であり得る。XBARを含む圧電プレート310の部分の下の中間層324にキャビティ325が形成される。キャビティ325は、例えば、圧電プレート310を取り付ける前に中間層324をエッチングすることによって形成され得る。あるいは、キャビティ325は、圧電プレート310に設けられた1つまたは複数の開口部を通って基板に到達する選択的エッチャントで中間層324をエッチングすることによって形成され得る。
【0024】
図3Cは、別のXBAR350の概略的平面図である。XBAR350は、圧電プレート310上に形成されたIDTを含む。圧電プレート310は、基板内のキャビティ380上に配置される。この例では、キャビティ380は、キャビティのエッジのいずれも平行ではなく、またそれらがIDTの導体に平行でもないような不規則な多角形を有する。キャビティは、直線または曲線のエッジを持つ異なる形状を有し得る。
【0025】
図4は、XBARにおいて関心のある主要な音響モードの図解である。
図4は、圧電プレート410および3つのインターリーブされたIDTフィンガー430を含むXBAR400の小さな部分を示す。インターリーブされたフィンガー430にRF電圧が適用される。この電圧は、フィンガー間に時間とともに変化する電界を生成する。「電界」とラベル付けされた矢印によって示されるように、電界の方向は、圧電プレート410の表面に対して横方向、または平行である。圧電プレートの誘電率が高いので、電界は、空気に比べてプレートに非常に集中する。横方向電界は、圧電プレート410において剪断変形を導入し、したがって剪断モード音波を強く励起する。この文脈では、「剪断変形」は、材料内の平行な平面が平行のままであり、相互に平行移動しながら一定の距離を維持する変形として定義される。「剪断音波」は、媒体の剪断変形をもたらす媒体内の音波として定義される。XBAR400の剪断変形は、曲線460によって表され、隣接する小さな矢印は、原子運動の方向および大きさの概略的な表示を提供する。原子運動の程度、ならびに圧電プレート410の厚さは、視覚化を容易にするために大幅に誇張されている。原子運動は主に横方向(すなわち、
図4に示されるように水平)であるが、励起された剪断音波の音響エネルギーの流れの方向は、矢印465によって示されるように、主に垂直(圧電プレートの表面に垂直)である。
【0026】
図4に示すように、IDTフィンガー430の直下には本質的に電界がなく、したがって、音響モードは、フィンガーの下の領域470において最小限にのみ励起される。これらの領域では、エバネセントな音響運動が発生する可能性がある。音響振動はIDTフィンガー430の下で励起されないので、IDTフィンガー430に結合される音響エネルギーは低く(例えば、SAW共振器内のIDTのフィンガーと比較して)、これはIDTフィンガーにおける粘性損失を最小限に抑える。
【0027】
剪断音響波共振に基づく音響共振器は、現在の最先端のフィルムバルク音響共振器(FBAR)および、厚み方向に電界をかけるしっかりと取り付けられた共振器バルク音響波(SMR B AW)デバイスよりも優れた性能を達成できる。このようなデバイスでは、音響モードは、原子運動と厚さ方向の音響エネルギーの流れの方向とで圧縮される。さらに、剪断波XBAR共振の圧電結合は、他の音響共振器と比較して高くなることが可能である(>20%)。したがって、高い圧電結合により、かなりの帯域幅を有するマイクロ波およびミリ波フィルタの設計と実装が可能になる。
【0028】
図5は、有限要素法(FEM)シミュレーション技術を使用してシミュレートされたXBARの周波数の関数としてのアドミタンスの正規化された大きさ(対数目盛)のプロット510を有するチャート500である。シミュレートされたXBARでは、圧電プレートは、Zカットされた(つまり、プレートに垂直なZ軸)ニオブ酸リチウムである。IDTフィンガーはアルミニウムである。IDTは、圧電プレートのy軸がIDTフィンガーに垂直になるように配置される。圧電プレートを支持する基板は、シリコンを完全に貫通して形成されたキャビティを有するシリコンである(
図1に示すように)。圧電プレートとIDTフィンガーの損失は、標準の材料パラメータを使用してシミュレートされた。シミュレートされた物理的寸法は次のとおりである。ts=400nm;tfd=0;tbd=0;tm=100nm;p=5μm;w=500nm。アドミタンスは、1対のIDTフィンガーと1メートルのアパーチャに対して正規化されている。N IDTフィンガーおよびアパーチャA(m単位)を有するXBARのアドミタンスは、
図5に提供される正規化されたアドミタンスを(N-1)・Aにより乗算することによって推定することができる。
【0029】
シミュレートされたXBARは、4693MHzの周波数FRで共振を示し、5306MHzの周波数FARで反共振を示す。共振時のQ、QRは2645であり、反共振時のQ、QARは4455である。FARとFRとの絶対差は約600MHzであり、フラクショナルディスタンスは約0.12である。音響結合は、およそ24%と見積もることができる。2次共振は、FR未満およびFARを超える周波数でのアドミタンス曲線において明らかである。
【0030】
音響RFフィルタには通常、複数の音響共振器が組み込まれている。通常、これらの共振器は、少なくとも2つの異なる共振周波数を有する。例えば、よく知られている「ラダー」フィルタアーキテクチャを使用するRFフィルタには、シャント共振器と直列共振器とが含まれる。シャント共振器は通常、フィルタの通過帯域よりも下の共振周波数と、通過帯域内の反共振周波数とを有する。直列共振器は通常、通過帯域内の共振周波数と、通過帯域よりも上の反共振周波数とを有する。多くのフィルタでは、各共振器は固有の共振周波数を有する。同じ圧電プレート上に作成されたXBARに対して異なる共振周波数を取得する機能により、XBARを使用したRFフィルタの設計および製造が大幅に簡素化される。
【0031】
図6は、異なる誘電体層を有する3つのXBARの、周波数の関数としての正規化されたアドミタンスを比較するグラフ600である。アドミタンスデータは、前の例と同じ材料および寸法(誘電体層を除く)を使用したXBAR構造の2次元シミュレーションから得られる。アドミタンスは、1対のIDTフィンガーと1mのアパーチャに対して正規化されている。実線610は、tfd=tbd=0であるXBAR(すなわち、誘電体層のないXBAR)の単位アパーチャあたりの正規化されたアドミタンスのプロットである。このXBARの正規化されたアドミタンスは、
図5の正規化されたアドミタンスプロットに匹敵するが、シミュレーション方法の違いによるわずかな違いがある。破線620は、IDTフィンガー間の圧電スラブの前面に100nmのSiO
2を有するXBAR(tfd=100nmおよびtbd=0)の正規化されたアドミタンスのプロットである。圧電プレートの前面にSiO
2層を追加すると、誘電体層のないXBARと比較して、共振周波数が約500MHz、すなわち約11%低下する。一点鎖線630は、IDTフィンガー間の圧電スラブの前面に100nmのSiO
2を有し、圧電スラブの背面に100nmのSiO
2を有するXBAR(tfd=tbd=100nm)の正規化されたアドミタンスのプロットである。圧電プレートの両面にSiO
2層を追加すると、誘電体層のないXBARと比較して、共振周波数が約900MHz、すなわち20%低下する。
【0032】
図7は、異なる前面誘電体層の厚さを有する4つのXBARのアドミタンスを周波数の関数として比較したグラフ700である。アドミタンスデータは、次のパラメータを使用したXBARの3次元シミュレーションから得られる。ts=400nm;tfd=0、30、60、90nm;tbd=0;tm=100nm;p=4.2μm;w=500nm;AP=20μm;およびN(IDTフィンガーの総数)=51。基板は、Zカットのニオブ酸リチウムであり、IDT導体はアルミニウムであり、誘電体層はSiO
2である。
【0033】
実線710は、tfd=0であるXBAR(すなわち、誘電体層のないXBAR)のアドミタンスのプロットである。破線720は、tfd=30nmを有するXBARのアドミタンスのプロットである。30nmの誘電体層を追加すると、誘電体層のないXBARと比較して、共振周波数が約145MHz低下する1点鎖線730は、tfd=60nmを有するXBARのアドミタンスのプロットである。60nmの誘電体層を追加すると、誘電体層のないXBARと比較して、共振周波数が約305MHz低下する。2点鎖線740は、tfd=90nmを有するXBARのアドミタンスのプロットである。90nmの誘電体層を追加すると、誘電体層のないXBARと比較して、共振周波数が約475MHz低下する。2次共振の周波数および大きさは、1次剪断モード共振とは異なる影響を受ける。
【0034】
重要なことに、さまざまな厚さの誘電体層の存在は、各XBARの共振と反共振との間のほぼ一定の周波数オフセットによって証明されるように、圧電結合にほとんどまたはまったく影響を与えない。
【0035】
図8、
図9、
図10は、シミュレーションによって決定された、XBARの物理的特性に対する共振周波数の依存性を示すグラフである。具体的には、
図8は、IDTフィンガーピッチp=3ミクロンを有し、前面または背面の誘電体層がない(tfd=tbd=0)圧電プレートの厚さtsの関数としての共振周波数のグラフである。
図9は、圧電プレートの厚さts=400nmおよびIDTフィンガーピッチp=3ミクロンについての前面誘電体層の厚さtfdの関数としての共振周波数のグラフである。
図10は、圧電プレートの厚さts=400nmおよびtfd=tbd=0を有するIDTフィンガーピッチpの関数としての共振周波数のグラフである。すべての場合において、圧電基板はZカットのニオブ酸リチウムであり、IDTフィンガーは幅w=500nm、厚さtm=100nmのアルミニウムであった。前面誘電体層が存在する場合、それはSiO
2である。
【0036】
図11は、異なる圧電プレート材料を有する2つのXBARのアドミタンスを周波数の関数として比較したグラフ1100である。アドミタンスデータは、次のパラメータを使用したXBARの3次元シミュレーションから得られる。ts=415nm;tfd=120nm;tbd=0;tm=460nm;p=4.5μm;w=700nm;AP=71μm;およびN(IDTフィンガーの総数)=221。基板はZカットのニオブ酸リチウムまたはZカットのタンタル酸リチウムであり、IDT電極は銅であり、誘電体層はSiO
2である。
【0037】
実線1110は、ニオブ酸リチウムプレート上のXBARのアドミタンスのプロットである。破線1120は、タンタル酸リチウムプレート上のXBARのアドミタンスのプロットである。特に、タンタル酸リチウムXBARの共振周波数と反共振周波数との差は約5%であり、すなわち、ニオブ酸リチウムXBARの周波数差の半分である。タンタル酸リチウムXBARの周波数差が小さいのは、材料の圧電結合が弱いためである。ニオブ酸リチウムXBARの共振周波数の測定温度係数は、摂氏1度あたり約71ppmである。タンタル酸リチウムXBARの周波数の温度係数(TCF)は、ニオブ酸リチウムXBARの約半分になる。タンタル酸リチウムXBARは、ニオブ酸リチウムXBARを使用して可能な大きいフィルタ帯域幅を必要とせずTCFの低減が有利なアプリケーションで使用し得る。
【0038】
図12は、厚さ400nmのZカットニオブ酸リチウムプレート上に作製された実験的XBARの測定されたアドミタンスを示すチャートである。IDTのピッチは5μmであり、アパーチャは40μmであり、IDTフィンガーは101本であった。IDTフィンガーは、厚さ100nmのアルミニウムであった。デバイスには誘電体層が含まれていなかった。実線1210は、周波数の関数としてのアドミタンスの大きさである。共振周波数は4617MHzであり、反共振周波数は5138MHzである。周波数差は521MHzであり、すなわち共振周波数の11%以上である。測定データは、測定システムの影響について補正されていない。通常、測定システムを補正すると、反共振周波数が増加し、反共振周波数と共振周波数との差が大きくなる。
【0039】
図13は、400nmの厚さのZカットニオブ酸リチウムプレート上に作製された別の実験的XBARの測定されたアドミタンスを示すチャートである。IDTのピッチは5μmであり、アパーチャは20μmであり、フィンガーは51本であった。IDTフィンガーは厚さ100nmのアルミニウムであった。デバイスには誘電体層が含まれていなかった。実線1310は、周波数の関数としてのアドミタンスの大きさである。1次XBAR共振の3次および5次高調波は、それぞれ約13.5GHzおよび22.5GHzで表示される。共振は、60GHzまでの周波数で他のXBARで測定されている。
【0040】
図14は、XBARを使用する高周波バンドパスフィルタ1200の概略的回路図およびレイアウトである。フィルタ1400は、3つの直列共振器1410A、1410B、1410Cおよび2つのシャント共振器1420A、1420Bを含む従来のラダーフィルタアーキテクチャを有する。3つの直列共振器1410A、1410B、および1410Cは、第1のポートと第2のポートとの間に直列に接続されている。
図14に示すように、第1および第2のポートは、それぞれ「イン」および「アウト」とラベル付けされている。しかしながら、フィルタ1400は対称であり、いずれのポートもフィルタの入力または出力として機能する。2つのシャント共振器1420A、1420Bは、直列共振器間のノードから接地に接続されている。すべてのシャント共振器および直列共振器は、XBARである。
【0041】
フィルタ1400の3つの直列共振器1410A、1410B、1410Cおよび2つのシャント共振器1420A、1420Bは、シリコン基板(図示せず)に結合された圧電材料の単一プレート1430上に形成される。各共振器は、それぞれのIDT(図示せず)を含み、IDTの少なくともフィンガーが基板のキャビティ上に配置されている。この文脈および同様の文脈では、「それぞれ」という用語は、「物事をそれぞれに関連付ける」ことを意味する、つまり、1対1の対応である。
図14に示すように、キャビティは、破線の長方形(長方形1435など)として概略的に示されている。この例では、各IDTはそれぞれのキャビティ上に配置されている。他のフィルタでは、2つ以上の共振器のIDTが単一のキャビティ上に配置され得る。
【0042】
図15は、5つのXBARを組み込んだ第1のバンドパスフィルタをシミュレートした結果を示すチャートである。第1のフィルタの概略図は、
図14のフィルタ1400と同じである。XBARは、厚さ0.4ミクロンのZカットニオブ酸リチウムプレート上に形成される。基板はシリコンであり、IDT導体はアルミニウムであり、誘電体層はない。共振器の他の物理的パラメータを次の表に示す(すべての寸法はミクロン単位である)。
【0043】
【0044】
第1のフィルタの性能は、3D有限要素モデリングツールを使用してシミュレートされた。曲線1510は、周波数の関数としての第1のフィルタの、入出力伝達関数である、S21の大きさのプロットである。フィルタの帯域幅は約800MHzであり、5.15GHzを中心としている。シミュレートされたフィルタ性能には、抵抗損失および粘性損失が含まれる。さまざまな共振器の共振周波数の調整は、IDTフィンガーのピッチと幅のみを変更することによって実現される。
【0045】
図16は、5つのXBARを使用して第2のフィルタをシミュレートした結果を示すチャートである。第2のフィルタの概略図は、
図14のフィルタ1400と同じである。XBARは、Zカットのニオブ酸リチウム(厚さ0.4μm)圧電プレート上に形成される。基板はシリコンであり、IDT電極は銅である。共振器の共振周波数の調整は、IDTフィンガーのピッチと幅を変更することによって、およびシャント共振器に前面誘電体層を設けて周波数を下げることによって実現される。共振器の他の物理的パラメータを次の表に示す(すべての寸法はミクロン単位である)。
【0046】
【0047】
フィルタの性能は、3D有限要素モデリングツールを使用してシミュレートされた。曲線1610は、周波数の関数としてのシミュレートされたフィルタ1400の、入出力伝達関数である、S21のプロットである。フィルタの帯域幅は約800MHzであり、中心は4.75GHzである。シミュレートされた性能には、抵抗損失または粘性損失は含まれていない。
【0048】
第1および第2のフィルタ(S21透過機能が
図15および
図16に示されている)は、XBARを使用するフィルタの例である。フィルタは、2つより多いまたは少ないシャット共振器、3つより多いまたは少ない直列共振器、および5つより多いまたは少ない合計共振器を使用し得る。フィルタは、XBARに加えて、コンデンサ、インダクタ、遅延線などのリアクティブコンポーネントを使用し得る。これらのフィルタの個々の共振器をさらに微調整すると、フィルタの性能が向上し得る。
【0049】
[方法の説明]
図17は、XBARまたはXBARを組み込んだフィルタを作製するための方法1700の簡略化されたフローチャートである。方法1700は、基板および圧電材料のプレートを備えた1705で開始し、完成したXBARまたはフィルタを備えた1795で終了する。
図17のフローチャートには、主要なプロセスステップのみが含まれている。さまざまな従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、監視、試験など)は、
図17に示されるステップの前、間、後、および最中に実行され得る。
【0050】
圧電プレートは、例えば、前に提示された例で使用されるようなZカットニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムであり得る。圧電プレートは、他の材料および/または他のカットであり得る。基板は、好ましくはシリコンであり得る。基板は、エッチングまたは他の処理によって深いキャビティの形成を可能にするいくつかの他の材料であり得る。
【0051】
1710で、圧電プレートが基板に結合される。圧電プレートと基板とは、ウェーハボンディングプロセスによって結合され得る。通常、基板と圧電プレートとの合わせ面は、高度に研磨されている。酸化物または金属などの中間材料の1つまたは複数の層が、圧電プレートおよび基板の片方または両方の合わせ面上に形成または堆積され得る。片方または両方の合わせ面は、例えば、プラズマ処理を使用して活性化し得る。次に、圧電プレートと基板または中間材料層との間に分子結合を確立するために、合わせ面をかなりの力で一緒に押圧し得る。
【0052】
プロセス1700の変形は、基板上にその場で圧電プレートを成長させることである。 そのプロセスのバリエーションでは、ボンディングは不要であり、1710でのアクションは、「基板上に圧電プレートを成長させる」と再定義される。
【0053】
1720で、1つまたは複数のキャビティが基板に形成される。フィルタデバイス内の共振器ごとに別個のキャビティが形成され得る。1つまたは複数のキャビティは、基板の裏側から圧電プレートに穴を開けるために、異方性または配向依存性のドライまたはウェットエッチングを使用して形成され得る。あるいは、圧電プレートの開口部を通して導入されたエッチャントを使用して基板をエッチングすることによって、基板のくぼみの形のキャビティが形成され得る。
【0054】
プロセス1700の変形は、圧電プレートを基板に取り付ける前に、基板に1つまたは複数のキャビティを形成することである。そのプロセスバリエーションでは、1720および1730でのアクションは、1710でのアクションの前に発生する。
【0055】
1730で、背面誘電体層を形成し得る。1720で形成されたキャビティが基板を貫通する穴である場合、背面誘電体層は、スパッタリング、蒸着、または化学蒸着などの従来の堆積技術を使用して、キャビティを通して堆積され得る。1720で形成されたキャビティが基板を完全に貫通しない窪みである場合、圧電プレートを基板にボンディングする前に、圧電プレートまたは基板上に背面誘電体層を形成しなければならない。その場合、1730でのアクションは、1710でのアクションの前に発生する。
【0056】
圧電プレートの前面に1つまたは複数の導体層を堆積してパターン化することにより、各XBARのIDTを含む導体パターンが1740で形成される。導体層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、または他の導電性金属であり得る。任意選択で、他の材料の1つまたは複数の層を、導体層の下(すなわち、導体層と圧電プレートの間)および/または導体層の上に配置し得る。導体層と圧電プレートとの間の接着を改善するために、例えば、チタン、クロム、または他の金属の薄膜を使用し得る。金、アルミニウム、銅、または他のより高い導電率の金属の伝導増強層が、導体パターンの部分(例えば、IDTバスバーおよびIDT間の相互接続)上に形成され得る。
【0057】
導体パターンは、圧電プレートの表面上に導体層、および任意選択で1つまたは複数の他の金属層を順番に堆積することにより、1740で形成され得る。次に、パターン化されたフォトレジストを介してエッチングすることにより、過剰な金属を除去し得る。導体層は、例えば、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、湿式化学エッチング、および他のエッチング技術によってエッチングすることができる。
【0058】
あるいは、導体パターンは、リフトオフ処理を使用して1740で形成され得る。フォトレジストを圧電プレート上に堆積し、パターン化して導体パターンを定義することができる。導体層および、任意選択で1つまたは複数の他の層が、圧電プレートの表面上に順番に堆積され得る。次に、フォトレジストを除去し得て、これにより、余分な材料が除去され、導体パターンが残る。
【0059】
圧電プレートの表側に誘電体材料の1つまたは複数の層を堆積させることにより、前面誘電体層が1750で形成され得る。1つまたは複数の誘電体層は、スパッタリング、蒸着、または化学蒸着などの従来の蒸着技術を使用して堆積され得る。1つまたは複数の誘電体層は、導体パターンの上を含む、圧電プレートの表面全体にわたって堆積され得る。あるいは、誘電体層の堆積を、IDTのインターリーブされたフィンガー間のみなど、圧電プレートの選択された領域に制限するために、1つまたは複数のリソグラフィー処理(フォトマスクを使用)を使用し得る。圧電プレートの異なる部分に異なる厚さの誘電体材料を堆積させるために、マスクを使用してもよい。
【0060】
表側および裏側の誘電体層が1750および1730で形成された後、フィルタデバイスは1760で完成され得る。1760で発生する可能性のあるアクションには、IDT導体パターン以外の導体を形成するために追加の金属層を堆積およびパターン化すること;デバイスの全部または一部に、SiO2またはSi3O4などのカプセル化/不動態化層を堆積すること;デバイスと外部回路との間を接続するためのボンディングパッドまたははんだバンプまたは他の手段を形成こと;複数のデバイスを含むウェーハから個々のデバイスを切り出すこと;その他のパッケージング手順;およびテスト、が含まれる。1760で発生する可能性のある別のアクションは、デバイスの前面から金属または誘電体を追加または除去することにより、デバイス内の共振器の共振周波数を調整することである。フィルタデバイスが完了した後、プロセスは1795で終了する。
【0061】
[結びのコメント]
この説明全体を通して、示される実施形態および実施例は、開示または請求される装置および手順に対する制限ではなく、模範と見なされるべきである。本明細書に提示される例の多くは、方法動作またはシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの行為およびそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせることができることを理解されたい。フローチャートに関しては、追加のより少ないステップをとることができ、示されているステップを組み合わせて、またはさらに改良して、本明細書に記載の方法を達成することができる。一実施形態に関連してのみ論じられる動作、要素、および特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0062】
本明細書で使用される場合、「複数」は2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、アイテムの「セット」は、そのようなアイテムの1つまたは複数を含み得る。本明細書で使用される場合、書面による説明または特許請求の範囲において、「含む」、「含む」、「運ぶ」、「有する」、「含む」、「関与する」などの用語は、オープンであると理解されるべきであり、つまり、これに限定されない。クレームに関して、それぞれ「からなる」および「本質的にからなる」の移行句のみが、閉じたまたは半閉じた移行句である。クレーム要素を変更するためのクレームでの「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、いかなる先順位、優先順位、またはあるクレーム要素の別のクレーム要に対する順序、または方法の動作が実行される一時的な順序を意味するものではなく、ただし、クレーム要素を区別するために、特定の名前を持つ1つのクレーム要素を同じ名前を持つ別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用される(ただし、序数の用語を使用するため)。本明細書で使用される場合、「および/または」は、リストされたアイテムが代替物であることを意味するが、代替物はまた、リストされたアイテムの任意の組み合わせを含む。