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特許7447819フリッカ測定装置、フリッカ測定方法及びフリッカ測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】フリッカ測定装置、フリッカ測定方法及びフリッカ測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 17/04 20060101AFI20240305BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20240305BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20240305BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H04N17/04 C
G01J1/44 M
G01M11/00 T
G02F1/133 505
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020572107
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049721
(87)【国際公開番号】W WO2020166201
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2019022667
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】西川 宜弘
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116820(JP,A)
【文献】特開2011-221218(JP,A)
【文献】特開2009-163090(JP,A)
【文献】特開2011-248077(JP,A)
【文献】特開2004-317450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 17/00
H04N 5/66
H04N 9/12
G01J 1/44
G01M 11/00
G02F 1/13
G09G 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物のフリッカを測定するフリッカ測定装置であって、
データを保存するための記憶部と、
光電変換素子を含み、前記被測定物から出射される光を受光して受光光量に対応する受光信号を出力する受光部と、
測定開始時点から前記被測定物が定常状態となった定常時点までの間に、前記受光部から出力された前記受光信号を複数回取得し、取得した前記受光信号に基づき前記被測定物のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記受光信号の取得時点に対応付けて前記記憶部に保存する測定処理部と、
前記記憶部に保存された前記各フリッカ値を用いてフリッカシフト時間を求める演算処理部と、
を備え、
前記測定開始時点に求められた前記フリッカ値が初期フリッカ値と定義され、
前記定常時点に求められた前記フリッカ値が定常フリッカ値と定義され、
前記測定開始時点又は前記定常時点の一方が基準時点と定義され、
前記基準時点に求められた前記初期フリッカ値又は前記定常フリッカ値が基準フリッカ値と定義され、
前記演算処理部は、前記初期フリッカ値から前記定常フリッカ値までの前記フリッカ値の変化量である全体変化量を求め、前記基準フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点と前記基準時点との間の経過時間を、前記フリッカシフト時間として求める、
フリッカ測定装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、前記所定比率が第1比率である第1フリッカシフト時間と、前記所定比率が前記第1比率と異なる第2比率である第2フリッカシフト時間と、を求める、
請求項1に記載のフリッカ測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、前記光電変換素子を複数含み、前記複数の光電変換素子に対応して複数の前記受光信号をそれぞれ出力し、
前記複数の光電変換素子は、二次元的に並んで配置され、それぞれ、前記被測定物の互いに異なる測定位置から出射される光を受光し、
前記測定処理部は、前記複数の受光信号に基づき、前記複数の測定位置のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記測定位置に対応付けて前記記憶部に保存し、
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間をそれぞれ求める、
請求項1又は2に記載のフリッカ測定装置。
【請求項4】
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間の平均値、最大値、最小値、及びばらつき値のうち少なくとも1つを求める、
請求項3に記載のフリッカ測定装置。
【請求項5】
表示部をさらに備え、
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間の最大値及び最小値を求め、前記最大値、前記最小値、前記最大値の測定位置、及び前記最小値の測定位置を、前記表示部に表示する、
請求項3又は4に記載のフリッカ測定装置。
【請求項6】
表示部をさらに備え、
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間に基づき、前記フリッカシフト時間のばらつきを表すばらつき値を求めて前記表示部に表示する、
請求項3~5のいずれか1項に記載のフリッカ測定装置。
【請求項7】
前記測定処理部は、前記測定開始時点から所定時間が経過した時点に、前記被測定物が前記定常状態となったと判定する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のフリッカ測定装置。
【請求項8】
前記測定処理部は、今回取得した前記受光信号に基づくフリッカ値と、前回取得した前記受光信号に基づくフリッカ値との差を算出し、算出した前記差が所定の閾値以下になると、前記被測定物が前記定常状態となったと判定する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のフリッカ測定装置。
【請求項9】
被測定物のフリッカを測定するフリッカ測定方法であって、
光電変換素子を含む受光部が、前記被測定物から出射される光を受光して受光光量に対応する受光信号を出力する信号出力ステップと、
測定開始時点から前記被測定物が定常状態となった定常時点までの間に、前記受光部から出力された前記受光信号を複数回取得し、取得した前記受光信号に基づき前記被測定物のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記受光信号の取得時点に対応付けて記憶部に保存する測定処理ステップと、
前記記憶部に保存された前記各フリッカ値を用いてフリッカシフト時間を求める演算処理ステップと、
を備え、
前記測定開始時点に求められた前記フリッカ値が初期フリッカ値と定義され、
前記定常時点に求められた前記フリッカ値が定常フリッカ値と定義され、
前記測定開始時点又は前記定常時点の一方が基準時点と定義され、
前記基準時点に求められた前記初期フリッカ値又は前記定常フリッカ値が基準フリッカ値と定義され、
前記演算処理ステップは、前記初期フリッカ値から前記定常フリッカ値までの前記フリッカ値の変化量である全体変化量を求め、前記基準フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点と前記基準時点との間の経過時間を、前記フリッカシフト時間として求める、
フリッカ測定方法。
【請求項10】
被測定物のフリッカを測定するフリッカ測定装置のコンピュータに、
光電変換素子を含む受光部が、前記被測定物から出射される光を受光して受光光量に対応する受光信号を出力する信号出力ステップと、
測定開始時点から前記被測定物が定常状態となった定常時点までの間に、前記受光部から出力された前記受光信号を複数回取得し、取得した前記受光信号に基づき前記被測定物のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記受光信号の取得時点に対応付けて記憶部に保存する測定処理ステップと、
前記記憶部に保存された前記各フリッカ値を用いてフリッカシフト時間を求める演算処理ステップと、
を実行させ、
前記測定開始時点に求められた前記フリッカ値が初期フリッカ値と定義され、
前記定常時点に求められた前記フリッカ値が定常フリッカ値と定義され、
前記測定開始時点又は前記定常時点の一方が基準時点と定義され、
前記基準時点に求められた前記初期フリッカ値又は前記定常フリッカ値が基準フリッカ値と定義され、
前記演算処理ステップは、前記初期フリッカ値から前記定常フリッカ値までの前記フリッカ値の変化量である全体変化量を求め、前記基準フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点と前記基準時点との間の経過時間を、前記フリッカシフト時間として求める、
フリッカ測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の被測定物に生じるフリッカを測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等の被測定物の表示部に生じるフリッカを測定するフリッカ測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。フリッカの測定方式としては、種々の方式が知られている。例えば特許文献1には、コントラスト方式と、電子情報技術産業協会(JEITA)方式とが挙げられている。その他に、International Committee for Display Metrologyにより規定されたICDM規格が知られている。
【0003】
一方、近年、表示装置としては、液晶ディスプレイが汎用されている。液晶ディスプレイでは、直流で駆動されると寿命が短くなるので、交流で駆動されている。この交流電圧駆動では、フレーム毎に極性が反転する。交流電圧の印加方式には、行ライン反転駆動方式、ドット反転駆動方式等がある。
【0004】
行ライン反転駆動方式は、フレーム毎に行方向の画素に印加する極性を互い違いに正極と負極とに反転させる方式である。この方式は、小型の液晶ディスプレイで多く用いられている。ドット反転駆動方式は、フレーム毎に行方向及び列方向に隣り合う画素に印加する極性を互い違いに正極と負極とに反転させる方式である。この方式は、大型の液晶ディスプレイで多く用いられている。上記特許文献1では、以下のように、液晶ディスプレイに特有のフリッカが説明されている。
【0005】
図13図14は、液晶ディスプレイに同じ画面を表示し続けている状態において、フレーム毎に画素に印加される極性の反転を概略的に示すタイミングチャートである。図13図14では、極性が正のフレームと極性が負のフレームとが交互に表れている。図13に示されるように、基準電位と極性変化の波形の振幅中心とが等しい場合、極性が正のフレームと極性が負のフレームとでは、映像信号のレベルの絶対値が等しくなる。このため、極性の反転は人間の目に感知されない。
【0006】
これに対して、図14に示されるように、製造ばらつき等に起因して、基準電位と極性変化の波形の振幅中心とが異なる場合がある。この場合、極性が正のフレームと極性が負のフレームとでは、映像信号のレベルの絶対値が異なる。このため、垂直同期信号の周波数の二分の一の周波数で映像信号が変化することになる。例えば、垂直同期信号の周波数が60Hzの場合、映像信号の変化の周波数は、30Hzとなる。30Hzは、人間の目が応答できる周波数の最大値以下であるので、人間の目に画面のちらつき、つまりフリッカとして認識される。フリッカが発生すると、表示部が非常に見づらくなる。液晶ディスプレイでは、各画素を構成する液晶材料特性のばらつき、駆動回路と各画素を接続する配線の差異等に基づき、各画素において発生するフリッカ値は、異なる値であることが多い。すなわち、液晶ディスプレイの表示画面において、フリッカ値が空間的に異なっている。
【0007】
近年、携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ等の電池を電源とする携帯機器に使用される液晶ディスプレイでは、液晶ディスプレイの消費電力を低減して電池駆動時間を延ばすために、垂直同期信号の周波数が60Hzより低下させた機器が実用化されている。しかしながら、非特許文献1には、液晶ディスプレイでは垂直同期信号の周波数が低くなるほど、フリッカ値が増大することが報告されている。非特許文献2には、液晶ディスプレイでは時間の経過とともに、フリッカ値が変化することが報告されている。
【0008】
上述のように、液晶ディスプレイでは、時間的にも空間的にも、フリッカ値が変化するため、フリッカ値の変化をそのまま示すと、煩雑になってしまう。そこで、液晶ディスプレイ等の被測定物に生じるフリッカ値の時間的変化を、より簡潔に表すことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017/038675号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Isamu Miyake, etc. “Photo-alignment and n-FFS LCD Technologies with IGZO-TFT Applied to Generation Eight Factory”,(米), SID 2016 DIGEST p.592-595, 2016
【文献】Kun-Tsai Huang, etc. “Study on the Correlation of Flicker Shift Phenomenon and Ion Accumulation Mechanism in FFS Mode LCD Panel”,(米), SID 2017 DIGEST p.1834-1837, 2017
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされた発明であり、被測定物に生じるフリッカ値の時間的変化を、より簡潔に表すことが可能なフリッカ測定装置、フリッカ測定方法、フリッカ測定プログラムを提供することを目的とする。
【0012】
上述した目的を実現するために、本発明の一側面を反映したフリッカ測定装置は、被測定物から出射される光を受光して受光光量に対応する受光信号を出力し、測定開始時点から前記被測定物が定常状態となった定常時点までの間に、出力された前記受光信号を複数回取得し、取得した前記受光信号に基づき前記被測定物のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記受光信号の取得時点に対応付けて記憶部に保存し、前記記憶部に保存された前記各フリッカ値を用いてフリッカシフト時間を求める演算処理を行い、前記測定開始時点に求められた前記フリッカ値が初期フリッカ値と定義され、前記定常時点に求められた前記フリッカ値が定常フリッカ値と定義され、前記測定開始時点又は前記定常時点の一方が基準時点と定義され、前記基準時点に求められた前記初期フリッカ値又は前記定常フリッカ値が基準フリッカ値と定義され、前記演算処理では、前記初期フリッカ値から前記定常フリッカ値までの前記フリッカ値の変化量である全体変化量を求め、前記基準フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点と前記基準時点との間の経過時間を、前記フリッカシフト時間として求める。
【0013】
発明の1又は複数の実施形態により与えられる利点及び特徴は以下に与えられる詳細な説明及び添付図面から十分に理解される。これら詳細な説明及び添付図面は、例としてのみ与えられるものであり本発明の限定の定義として意図されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フリッカ測定装置の電気的構成例を概略的に示すブロック図である。
図2】フリッカ測定装置の光学系を概略的に示す図である。
図3】フリッカ測定装置による被測定部のフリッカ測定状態を概略的に示す図である。
図4】表示部における測定位置の具体的な一例を概略的に示す図である。
図5図4に示される測定位置におけるフリッカ値の時間変化の具体例を概略的に示す図である。
図6図5におけるフリッカ値等を測定位置毎に表形式で示す図である。
図7】1つの測定位置におけるフリッカ値の時間変化の一例を示す図である。
図8】フリッカ値の時間変化を液晶材料毎に示す図である。
図9】フリッカ値の空間分布を概略的に示す図である。
図10】フリッカ値の時間変化の一例を概略的に示す図である。
図11】1つの測定位置におけるフリッカ値の時間変化の一例を示す図である。
図12】フリッカ測定装置においてフリッカシフト時間を求める手順の一例を概略的に示すフローチャートである。
図13】フレーム毎に画素に印加される極性の反転を概略的に示すタイミングチャートである。
図14】フレーム毎に画素に印加される極性の反転を概略的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の基礎となった知見)
図8は、液晶ディスプレイにおけるフリッカ値の時間変化の一例を液晶材料毎に示す図である。図8において、横軸は時間[秒]を表し、縦軸はフリッカ値[dB]を表す。図9は、液晶ディスプレイにおけるフリッカ値の空間分布の一例を概略的に示す図である。図10は、液晶ディスプレイにおけるフリッカ値の時間変化の一例を概略的に示す図である。図11は、1つの測定位置におけるフリッカ値の時間変化の一例を示す図である。図11において、横軸は時間[秒]を表し、縦軸はフリッカ値[dB]を表す。図8図11を用いて、本発明の基礎となった知見が説明される。
【0016】
図8に示されるように、液晶材料M1のフリッカ値は、測定開始当初は急峻に増大し、その後、緩やかに増大する一方、液晶材料M2,M3のフリッカ値は、測定開始当初は急峻に減少し、その後、緩やかに減少する。このように、図8でも、上述のようにフリッカ値は時間的に変化しているが、図8からは、さらに、フリッカ値の時間的な変化の様子が液晶材料毎に異なっていることが分かる。
【0017】
図9図10では、フリッカ値の大小が濃度で示されている。すなわち、図9図10の液晶ディスプレイ20では、外周の高濃度領域のフリッカ値[dB]が最も高い値となり、その内側の低濃度領域のフリッカ値[dB]が次に高い値となり、中央の高濃度領域のフリッカ値[dB]が最も低い値となっている。図9に示されるように、液晶ディスプレイ20のフリッカ値は、空間的な分布を有している。
【0018】
図10では、測定開始から、0分後、5分後、10分後、15分後、20分後、30分後のフリッカ値が、それぞれ示されている。図10から分かるように、空間的な分布を有する液晶ディスプレイ20のフリッカ値は、それぞれ、時間的な変化も異なっている。このように、フリッカ値は、時間的な変化と空間的な分布とを有する。
【0019】
例えば図9図10の測定位置は、y方向(縦方向)に30箇所、x方向(横方向)に40箇所で、合計1200箇所である。したがって、図8に示されるような曲線で、図9図10におけるフリッカ値の時間的な変化を測定位置毎に表すと、1200本の曲線が図示されることとなる。このため、液晶ディスプレイ20におけるフリッカ値の変化を容易に把握することが困難となる。そこで、空間的な分布を有するフリッカ値の時間的な変化が好適に表されるような指標に基づき、液晶ディスプレイ20におけるフリッカ値を管理することが望まれる。
【0020】
図11において、測定開始時点(基準時点の一例に相当)のフリッカ値FV_IN(初期フリッカ値の一例に相当)は、時点t0のフリッカ値FVであり、定常時点(基準時点の一例に相当)のフリッカ値FV_ST(定常フリッカ値の一例に相当)は、時点tE(つまり測定終了時)のフリッカ値FVである。本実施形態では、測定終了時には、フリッカ値FVが変化しない定常状態になっていると見なされている。全体変化量FDは、測定開始時点のフリッカ値FV_INから定常時点のフリッカ値FV_STまでの、フリッカ値FVの変化量であり、
FD
=FV_ST-FV_IN (式1)
によって求められる。
【0021】
50%変化値FV_50%は、測定開始時点のフリッカ値FV_INから、全体変化量FDの50%のフリッカ値が変化した時点(所定比率時点の一例に相当)のフリッカ値FVである。90%変化値FV_90%は、測定開始時点のフリッカ値FV_INから、全体変化量FDの90%のフリッカ値が変化した時点(所定比率時点の一例に相当)のフリッカ値FVである。
【0022】
図11の例では、FV_IN=-45.00[dB]、FV_ST=-52.64[dB]である。したがって、全体変化量FDは、上記(式1)により、
FD
=FV_ST-FV_IN=-7.64
である。
【0023】
よって、50%変化値FV_50%は、小数点以下第3位で四捨五入すると、
FV_50%
=FV_IN+FD×0.5=-48.82
である。90%変化値FV_90%は、小数点以下第3位で四捨五入すると、
FV_90%
=FV_IN+FD×0.9=-51.88
である。
【0024】
図11において、50%フリッカシフト時間FS_50%は、測定開始時点から、フリッカ値FVが50%変化値FV_50%に等しくなる時点までの経過時間であり、90%フリッカシフト時間FS_90%は、測定開始時点から、フリッカ値FVが90%変化値FV_90%になる時点までの経過時間である。
【0025】
本発明者は、50%フリッカシフト時間FS_50%及び90%フリッカシフト時間FS_90%を以上のように定義し、これらにより液晶ディスプレイ20におけるフリッカ値を管理する発明を想到した。
【0026】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素には同じ符号が用いられ、詳細な説明は、適宜、省略される。
【0027】
図1は、本実施形態のフリッカ測定装置の電気的構成例を概略的に示すブロック図である。図2は、本実施形態のフリッカ測定装置の光学系を概略的に示す図である。図3は、本実施形態のフリッカ測定装置による被測定部のフリッカ測定状態を概略的に示す図である。図12は、フリッカ測定装置においてフリッカシフト時間を求める手順の一例を概略的に示すフローチャートである。
【0028】
図3に示されるように、本実施形態のフリッカ測定装置100は、被測定物5の表示部10における所定の二次元領域(本実施形態では、表示部10の全体)に設定された複数の所定の測定位置におけるフリッカを測定する。図1図2に示されるように、本実施形態のフリッカ測定装置100は、二次元センサ107と、光学フィルタ110と、光学系115と、レンズ駆動部117と、距離センサ120と、表示部125と、入力部130と、制御回路140と、を備える。制御回路140は、中央演算処理装置(CPU)150と、メモリ160と、周辺回路(図示省略)と、を含む。
【0029】
メモリ160(記憶部の一例に相当)は、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)等を含む。メモリ160は、例えばハードディスクドライブ(HDD)を含んでもよい。メモリ160の例えばROMは、CPU150を動作させる本実施形態の制御プログラム(フリッカ測定プログラムの一例に相当)を記憶する。CPU150は、メモリ160に記憶された本実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、測定処理部151、演算処理部152として機能する。測定処理部151、演算処理部152の機能は、後述される。
【0030】
二次元センサ107(受光部の一例に相当)は、行方向X及び列方向Y(図2)に二次元的に配列された複数の光電変換素子1071~107N(例えばフォトダイオード)を含み、制御回路140に電気的に接続されている。光学系115は、1または複数のレンズにより構成され、二次元センサ107の受光面に被測定物5の像を結像する。光学フィルタ110は、本実施形態では、二次元センサ107と光学系115との間に配置される。レンズ駆動部117は、光学系115の光軸方向に光学系115の測定範囲調整用のレンズを移動させる。
【0031】
二次元センサ107の光電変換素子1071~107Nは、それぞれ、光学系115及び光学フィルタ110を透過した、被測定物5の表示部10における複数の測定位置からの光を受光し、受光光量に応じた受光信号を制御回路140へ出力する。二次元センサ107は、例えば相補型金属酸化物半導体(CMOS)イメージセンサである。
【0032】
光学フィルタ110は、
(光電変換素子1071~107Nの分光感度特性)×(光学フィルタ110の分光透過特性)
=(二次元センサ107の分光応答度)
=標準比視感度V(λ) (式2)
を満たすような分光透過特性を有する。光学フィルタ110は、吸収型又は蒸着型のフィルタであり、公知の手法により(式2)を満たすような分光透過特性を有するように形成される。なお、図2では、光学フィルタ110は、二次元センサ107の前に配置されているが、光学系115と被測定物5との間に配置されてもよい。
【0033】
距離センサ120は、制御回路140に電気的に接続されており、測定処理部151により制御されて、被測定物5とフリッカ測定装置100との距離であるWDを検出する。距離センサ120は、検出したWDを制御回路140に出力する。測定処理部151は、距離センサ120により検出されたWDに応じて、レンズ駆動部117を動作させて、光学系115を構成する1または複数のレンズの光軸方向における位置を調整することにより、測定範囲(画角)を調整する。距離センサ120は、例えばレーザ距離センサで構成される。距離センサ120は、レーザ距離センサに限られず、超音波センサ又は赤外線センサ等のWDを検出可能な他のセンサで構成されてもよい。
【0034】
WDは、本実施形態では、図2に示されるように、被測定物5の表示部10の表面と、二次元センサ107の受光面との間の水平方向に沿った距離に設定されているが、これに限られない。代替的に、WDは、被測定物5の表示部10の表面と、フリッカ測定装置100の筐体の表面との間の水平方向に沿った距離に設定されてもよい。
【0035】
なお、測定処理部151は、例えばレンズ駆動部117が無くて画角固定の光学系115が用いられている場合には、距離センサ120によって検出されたWDに応じて、フリッカ測定装置100の筐体を被測定物5に近づけたり遠ざけたりするようにユーザに促すメッセージを表示部125に表示してもよい。
【0036】
表示部125は、例えば液晶ディスプレイパネルを含む。表示部125は、CPU150の測定処理部151により制御されて、例えばフリッカの測定結果を表示する。なお、表示部125は、液晶ディスプレイパネルに限られず、有機EL(electroluminescence)パネルなどの他の表示パネルを含んでもよい。
【0037】
入力部130は、ユーザによって操作される操作ボタンを含み、ユーザの操作内容を示す操作信号を制御回路140に出力する。入力部130は、測定時間を設定するための測定時間設定ボタン、測定開始を指示するための測定開始ボタン等を含む。なお、表示部125がタッチパネル式ディスプレイの場合には、操作ボタンに代えて、タッチパネル式ディスプレイが入力部130を兼用してもよい。
【0038】
CPU150の測定処理部151は、二次元センサ107の光電変換素子1071~107Nから出力される受光信号に基づき、所定の手順でフリッカ値を求める。測定処理部151は、特許文献1に挙げられているコントラスト方式又はJEITA方式に従うフリッカ値を求めてもよく、或いは、上記ICDM規格に従うフリッカ値を求めてもよい。
【0039】
例えば、入力部130の測定時間設定ボタンを用いて測定時間T1(本実施形態では例えばT1=2000[秒])がユーザによって設定され、入力部130の測定開始ボタンを用いて測定開始がユーザによって指示されると、二次元センサ107の光電変換素子1071~107Nは、それぞれ受光信号の出力を開始する(図12のステップS100)。測定時間T1は、時点t0(図11の測定開始時点)から時点tE(図11の測定終了時点)までの時間である。上述のように、本実施形態では、測定時間T1が経過すると、被測定物5のフリッカ値FVが変化しない定常状態になっていると見なされている。ユーザは、入力部130を用いて、被測定物5の種別に応じて、フリッカ値FVが定常状態になっていると見なせるような測定時間T1を設定する。
【0040】
測定処理部151は、例えば、所定時間T2(本実施形態では例えばT2=10秒)毎に、二次元センサ107の光電変換素子1071~107Nから出力される受光信号を取得し、受光信号の取得毎にフリッカ値を求め、求めたフリッカ値を、測定時点及び測定位置に対応付けて、メモリ160の例えばRAMに保存する(図12のステップS105)。すなわち、測定処理部151は、例えば、フリッカ値FV(xi,yj,t)をメモリ160に保存する。フリッカ値FV(xi,yj,t)は、測定位置(xi,yj)、測定時点tにおけるフリッカ値であり、i=1~Nx、j=1~Nyである。例えば、上記図9図10では、Nx=40、Ny=30である。測定開始時点t0、測定終了時点tEとすると、測定時点tは、t0≦t≦tEの範囲であり、測定時間T1は、T1=tE-t0によって求められる。
【0041】
演算処理部152は、測定処理部151により求められたフリッカ値から、上記50%フリッカシフト時間、上記90%フリッカシフト時間を算出する(図12のステップS110)。演算処理部152は、まず、測定位置(xi,yj)におけるフリッカ値の全体変化量FD(xi,yj)を求める。全体変化量FD(xi,yj)は、上記(式1)に従って、
FD(xi,yj)
=FV(xi,yj,tE)-FV(xi,yj,t0)
によって求められる。
【0042】
次に、演算処理部152は、測定位置(xi,yj)における50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%及び90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%を求める。上記図11を用いて説明されたように、50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%は、測定開始時点から、フリッカ値FV(xi,yj)がFV(xi,yj,t0)+0.5×FD(xi,yj)に等しくなる時点までの経過時間であり、90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%は、測定開始時点から、フリッカ値FV(xi,yj)がFV(xi,yj,t0)+0.9×FD(xi,yj)に等しくなる時点までの経過時間である。
【0043】
次に、演算処理部152は、全ての測定位置(xi,yj)における50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の平均値AV_50%及び90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の平均値AV_90%をそれぞれ求める。これらは、
AV_50%
=ΣxΣy[FS(xi,yj)_50%]/(Nx×Ny) (式3)
AV_90%
=ΣxΣy[FS(xi,yj)_90%]/(Nx×Ny) (式4)
によって求められる。(式3)、(式4)において、Σxは、x軸方向のフリッカ値の加算を表し、Σyは、y軸方向のフリッカ値の加算を表し、Nxは、x軸方向の測定位置の個数を表し、Nyは、y軸方向の測定位置の個数を表す。
【0044】
次に、演算処理部152は、全ての測定位置(xi,yj)における50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の最大値FSmax_50%及び90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の最大値FSmax_90%をそれぞれ求める。これらは、
FSmax_50%
=max[FS(xi,yj)_50%] (式5)
FSmax_90%
=max[FS(xi,yj)_90%] (式6)
によって求められる。
【0045】
次に、演算処理部152は、全ての測定位置(xi,yj)における50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の最小値FSmin_50%及び90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の最小値FSmin_90%をそれぞれ求める。これらは、
FSmin_50%
=min[FS(xi,yj)_50%] (式7)
FSmin_90%
=min[FS(xi,yj)_90%] (式8)
によって求められる。
【0046】
次に、演算処理部152は、全ての測定位置(xi,yj)における50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%のばらつき値VA_50%及び90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%のばらつき値VA_90%をそれぞれ求める。これらは、
VA_50%
=FSmax_50%-FSmin_50% (式9)
VA_90%
=FSmax_90%-FSmin_90% (式10)
によって求められる。すなわち、本実施形態では、ばらつき値は、最大値と最小値との差分と定義されている。
【0047】
次に、演算処理部152は、50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%及び90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の平均値、最大値、最小値、ばらつき値を、それぞれ表示部125に表示する。
【0048】
図4は、表示部10における測定位置の具体的な一例を概略的に示す図である。図5は、図4に示される測定位置におけるフリッカ値の時間変化の具体例を概略的に示す図である。図6は、図5におけるフリッカ値等を測定位置毎に表形式で示す図である。図4図6を用いて、演算処理部152により算出される50%フリッカシフト時間FS_50%等の具体例が説明される。
【0049】
図4の例では、5箇所の測定位置F(x1,y1)、F(x3,y1)、F(x2,y2)、F(x1,y3)、F(x3,y3)が設定されている。測定処理部151によって測定された、各測定位置における測定開始時点のフリッカ値FV(xi,yj,t0)は、小数点以下第1位を四捨五入すると、図6に示されるように、それぞれ、-34,-41,-44,-31,-26[dB]であり、各測定位置における定常時点のフリッカ値FV(xi,yj,tE)は、小数点以下第1位を四捨五入すると、それぞれ、-47,-46,-48,-48,-47[dB]である。
【0050】
したがって、演算処理部152によって算出される全体変化量FD(xi,yj)は、上記(式1)に従って求められ、小数点以下第1位を四捨五入すると、図6に示されるように、それぞれ、-13,-5,-4,-16,-21[dB]である。
【0051】
測定開始時点のフリッカ値FV(xi,yj,t0)から、全体変化量FD(xi,yj)の50%のフリッカ値が変化した時点のフリッカ値である50%変化値FV_50%は、小数点以下第1位を四捨五入すると、図6に示されるように、それぞれ、-41,-43,-46,-39,-37[dB]である。したがって、図5から得られる50%フリッカ時間FS(xi,yj)_50%は、それぞれ、図6に示されるように、230,340,330,260,140[秒]である。
【0052】
測定開始時点のフリッカ値FV(xi,yj,t0)から、全体変化量FD(xi,yj)の90%のフリッカ値が変化した時点のフリッカ値である90%変化値FV_90%は、小数点以下第1位を四捨五入すると、図6に示されるように、それぞれ、-46,-46,-48,-46,-45[dB]である。したがって、図5から得られる90%フリッカ時間FS(xi,yj)_90%は、それぞれ、図6に示されるように、1200,1340,1360,1440,1000[秒]である。
【0053】
50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の平均値AV_50%は、上記(式3)によって求められ、図6に示されるように、260[秒]である。90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の平均値AV_90%は、上記(式4)によって求められ、図6に示されるように、1268[秒]である。
【0054】
50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の最大値FSmax_50%は、上記(式5)によって求められ、図6に示されるように、340[秒]である。90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の最大値FSmax_90%は、上記(式6)によって求められ、図6に示されるように、1440[秒]である。
【0055】
50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の最小値FSmin_50%は、上記(式7)によって求められ、図6に示されるように、140[秒]である。90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の最小値FSmin_90%は、上記(式8)によって求められ、図6に示されるように、1000[秒]である。
【0056】
50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%のばらつき値VA_50%は、上記(式9)によって求められ、図6に示されるように、200[秒]である。90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%のばらつき値VA_90%は、上記(式10)によって求められ、図6に示されるように、440[秒]である。
【0057】
以上説明されたように、本実施形態では、50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%及び90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%が、それぞれ算出され、その平均値AV_50%及び平均値AV_90%がそれぞれ算出されている。したがって、本実施形態によれば、被測定物5のフリッカ値の時間変化を表す指標として、50%フリッカシフト時間の平均値AV_50%及び90%フリッカシフト時間の平均値AV_90%を用いることができる。このため、被測定物5のフリッカ値の時間変化を簡潔に表すことができる。例えば、図5に示されるように複数の測定位置におけるフリッカ値の時間変化をそのまま図示すると、測定位置の個数の曲線が重なって煩雑になるが、本実施形態によれば、このような煩雑さを避けることができる。
【0058】
本実施形態では、図11に示されるように、50%フリッカシフト時間FS_50%には、フリッカ値FVが急峻に変化する時間帯のみが含まれ、90%フリッカシフト時間FS_90%には、フリッカ値FVが急峻に変化する時間帯だけでなく、緩やかに変化する時間帯も含まれている。このため、本実施形態によれば、50%フリッカシフト時間FS_50%及び90%フリッカシフト時間FS_90%を用いることにより、互いに異なる特徴を含むフリッカ値の時間変化を表すことができる。
【0059】
本実施形態では、50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の最大値及び最小値の差分がばらつき値VA_50%として算出され、90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の最大値及び最小値の差分がばらつき値VA_90%として算出されている。ばらつき値VA_50%、VA_90%が大きいということは、被測定物5の空間的なフリッカの時間的変化特性が、均一になっていないということを意味する。したがって、本実施形態によれば、被測定物5の空間的なフリッカ特性を、容易に把握することができる。
【0060】
(その他)
(1)上記実施形態では、50%フリッカシフト時間FS_50%は、測定開始時点から、フリッカ値FVが50%変化値FV_50%に等しくなる時点までの経過時間であると定義されている。言い換えると、50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%は、測定開始時点から、フリッカ値FV(xi,yj)が、FV(xi,yj,t0)+0.5×FD(xi,yj)に等しくなる時点までの経過時間と定義されている。90%フリッカシフト時間FS_90%は、測定開始時点から、フリッカ値FVが90%変化値FV_90%に等しくなる時点までの経過時間であると定義されている。言い換えると、90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%は、測定開始時点から、フリッカ値FV(xi,yj)が、FV(xi,yj,t0)+0.9×FD(xi,yj)に等しくなる時点までの経過時間と定義されている。しかし、これらの定義に限られない。
【0061】
図7は、1つの測定位置におけるフリッカ値の時間変化の一例を示す図である。図7において、横軸は時間[秒]を表し、縦軸はフリッカ値[dB]を表す。図7を用いて、フリッカシフト時間の異なる定義が説明される。
【0062】
図7では、上記実施形態と異なり、定常時点tE(つまり測定終了時点)を起点としてフリッカシフト時間が定義されている。すなわち、図7では、50%変化値FV_50%は、定常時点tEのフリッカ値FV_STに対して、全体変化量FDの50%のフリッカ値が変化した時点(所定比率時点の一例に相当)のフリッカ値FVである。この定義から分かるように、図7の実施形態における50%変化値FV_50%は、上記実施形態(例えば図11)における50%変化値FV_50%と同じ値である。50%フリッカシフト時間FS_50%は、フリッカ値FVが50%変化値FV_50%に等しくなる時点から、定常時点tE(つまり測定終了時点)までの経過時間である。
【0063】
図7では、90%変化値FV_90%は、定常時点tEのフリッカ値FV_STに対して、全体変化量FDの90%のフリッカ値が変化した時点(所定比率時点の一例に相当)のフリッカ値FVである。この定義から分かるように、図7の実施形態における90%変化値FV_90%と測定開始時点t0のフリッカ値FV_INとの差は、上記実施形態(例えば図11)における90%変化値FV_90%と定常時点tEのフリッカ値FV_STとの差に等しい。90%フリッカシフト時間FS_90%は、フリッカ値FVが90%変化値FV_90%に等しくなる時点から、定常時点tE(つまり測定終了時点)までの経過時間である。
【0064】
図7の定義によれば、50%フリッカシフト時間FS_50%は、フリッカ値FVが緩やかに変化する時間帯のみを含み、90%フリッカシフト時間FS_90%は、フリッカ値FVが緩やかに変化する時間帯だけでなく、急峻に変化する時間帯も含んでいる。このため、図7の実施形態でも、上記実施形態と同様に、互いに異なる特徴を含むフリッカ値の時間変化が表されている。
【0065】
(2)上記実施形態では、50%フリッカシフト時間FS_50%としているが、50%に限られず、90%フリッカシフト時間FS_90%としているが、90%に限られない。50%に代えて、例えば40~60%の範囲内でもよく、90%に代えて、例えば80~95%の範囲内でもよい。但し、例えば50%に代えて60%、及び90%に代えて80%のように両者が比較的近い値よりも、離れた値の方が、より異なる特徴を表すことができると考えられるため、好ましい。
【0066】
(3)上記実施形態において、演算処理部152は、さらに、最大値の測定位置(xi,yj)を表示部125に表示してもよい。これによって、ユーザは、フリッカ値を低減するために改善すべき位置を把握することができる。演算処理部152は、最大値及び最小値の測定位置(xi,yj)を、それぞれ表示部125に表示してもよい。これによって、ユーザは、フリッカ値のばらつきを低減するために改善すべき位置を把握することができる。
【0067】
(4)上記実施形態では、50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の最大値及び最小値の差分がばらつき値VA_50%として算出され、90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の最大値及び最小値の差分がばらつき値VA_90%として算出されている。代替的に、50%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_50%の分散又は標準偏差がばらつき値として算出されてもよく、90%フリッカシフト時間FS(xi,yj)_90%の分散又は標準偏差がばらつき値として算出されてもよい。但し、上記実施形態のように最大値及び最小値の差分の方が、ばらつき値を短時間で容易に算出することができる。
【0068】
(5)上記実施形態では、フリッカ値FVが定常状態になっていると見なせるような測定時間T1がユーザによって設定されているが、これに限られない。測定処理部151は、フリッカ値FVの算出毎に、前回のフリッカ値FVと比較し、変化量(差)が閾値(例えば1%)以下になると、定常状態になったと判定して、フリッカ値の測定を終了するようにしてもよい。
【0069】
(6)上記実施形態では、測定処理部151は、所定時間T2毎に二次元センサ107の受光信号を取得してフリッカ値FVを求めているが、所定時間T2を途中で変更してもよい。すなわち、測定処理部151は、測定開始当初(例えば図5では測定開始から500[秒]まで)は、10[秒]毎に二次元センサ107の受光信号を取得してフリッカ値FVを求め、それ以降(例えば図5では500[秒]から2000[秒]まで)は、30[秒]毎に二次元センサ107の受光信号を取得してフリッカ値FVを求めてもよい。
【0070】
ユーザが、入力部130を用いて所定時間T2を設定可能に構成し、測定処理部151は、ユーザによって設定された所定時間T2毎に、二次元センサ107の受光信号を取得してフリッカ値FVを求めるようにしてもよい。
【0071】
(7)上記実施形態では、メモリ160の例えばROMが、CPU150を動作させる上記実施形態の制御プログラムを記憶しているが、制御プログラムを記憶する媒体は、メモリ160に限られない。
【0072】
例えば、コンパクトディスク(CD)-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ユニバーサルシリアルバス(USB)メモリ等の着脱可能な記録媒体に、上記実施形態の制御プログラムを記憶させてもよい。フリッカ測定装置100は、上記着脱可能な記録媒体の記憶内容を読み取り可能な構成を有してもよい。
【0073】
(8)上記実施形態では光学フィルタ110を備えているが、光学フィルタを備えなくてもよい。例えば、被測定物5の表示部10に表示される色によっては、二次元センサ107の分光応答度を標準比視感度V(λ)に一致させる必要がない場合もあり、その場合には光学フィルタを備えなくてもよい。
【0074】
(9)上記実施形態では、フリッカ測定装置100が制御回路140を備えているが、これに限られない。例えば、外部のパーソナルコンピュータとフリッカ測定装置100とを無線又は有線で通信可能に構成し、フリッカ測定装置100に代えて、パーソナルコンピュータが、表示部125、入力部130及び制御回路140を備えてもよい。このような構成でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。フリッカ測定装置100の構成を簡素化することができる。
【0075】
(10)上記実施形態では、フリッカ測定装置100は、被測定物5の表示部10における所定の二次元領域に設定された複数の所定の測定位置におけるフリッカを測定する装置であるが、これに限られない。フリッカ測定装置は、被測定物5の表示部10における単一の測定位置のフリッカを測定する装置であってもよい。
【0076】
以上のように、各実施形態によれば、被測定物におけるフリッカ値の時間的な変化を、より簡潔に表すことができる。
【0077】
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0078】
第1態様に係るフリッカ測定装置は、
被測定物のフリッカを測定するフリッカ測定装置であって、
データを保存するための記憶部と、
光電変換素子を含み、前記被測定物から出射される光を受光して受光光量に対応する受光信号を出力する受光部と、
測定開始時点から前記被測定物が定常状態となった定常時点までの間に、前記受光部から出力された前記受光信号を複数回取得し、取得した前記受光信号に基づき前記被測定物のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記受光信号の取得時点に対応付けて前記記憶部に保存する測定処理部と、
前記記憶部に保存された前記各フリッカ値を用いてフリッカシフト時間を求める演算処理部と、
を備え、
前記測定開始時点に求められた前記フリッカ値が初期フリッカ値と定義され、
前記定常時点に求められた前記フリッカ値が定常フリッカ値と定義され、
前記測定開始時点又は前記定常時点の一方が基準時点と定義され、
前記基準時点に求められた前記初期フリッカ値又は前記定常フリッカ値が基準フリッカ値と定義され、
前記演算処理部は、前記初期フリッカ値から前記定常フリッカ値までの前記フリッカ値の変化量である全体変化量を求め、前記基準フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点と前記基準時点との間の経過時間を、前記フリッカシフト時間として求めるものである。
【0079】
第2態様に係るフリッカ測定方法は、
被測定物のフリッカを測定するフリッカ測定方法であって、
光電変換素子を含む受光部が、前記被測定物から出射される光を受光して受光光量に対応する受光信号を出力する信号出力ステップと、
測定開始時点から前記被測定物が定常状態となった定常時点までの間に、前記受光部から出力された前記受光信号を複数回取得し、取得した前記受光信号に基づき前記被測定物のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記受光信号の取得時点に対応付けて記憶部に保存する測定処理ステップと、
前記記憶部に保存された前記各フリッカ値を用いてフリッカシフト時間を求める演算処理ステップと、
を備え、
前記測定開始時点に求められた前記フリッカ値が初期フリッカ値と定義され、
前記定常時点に求められた前記フリッカ値が定常フリッカ値と定義され、
前記測定開始時点又は前記定常時点の一方が基準時点と定義され、
前記基準時点に求められた前記初期フリッカ値又は前記定常フリッカ値が基準フリッカ値と定義され、
前記演算処理ステップは、前記初期フリッカ値から前記定常フリッカ値までの前記フリッカ値の変化量である全体変化量を求め、前記基準フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点と前記基準時点との間の経過時間を、前記フリッカシフト時間として求めるものである。
【0080】
第3態様に係るフリッカ測定プログラムは、
被測定物のフリッカを測定するフリッカ測定装置のコンピュータに、
光電変換素子を含む受光部が、前記被測定物から出射される光を受光して受光光量に対応する受光信号を出力する信号出力ステップと、
測定開始時点から前記被測定物が定常状態となった定常時点までの間に、前記受光部から出力された前記受光信号を複数回取得し、取得した前記受光信号に基づき前記被測定物のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記受光信号の取得時点に対応付けて記憶部に保存する測定処理ステップと、
前記記憶部に保存された前記各フリッカ値を用いてフリッカシフト時間を求める演算処理ステップと、
を実行させ、
前記測定開始時点に求められた前記フリッカ値が初期フリッカ値と定義され、
前記定常時点に求められた前記フリッカ値が定常フリッカ値と定義され、
前記測定開始時点又は前記定常時点の一方が基準時点と定義され、
前記基準時点に求められた前記初期フリッカ値又は前記定常フリッカ値が基準フリッカ値と定義され、
前記演算処理ステップは、前記初期フリッカ値から前記定常フリッカ値までの前記フリッカ値の変化量である全体変化量を求め、前記基準フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点と前記基準時点との間の経過時間を、前記フリッカシフト時間として求めるものである。
【0081】
第1態様又は第2態様又は第3態様によれば、測定開始時点から定常時点までの間に求められた複数のフリッカ値が、受光信号の取得時点に対応付けて記憶部に保存される。初期フリッカ値から定常フリッカ値までのフリッカ値の変化量である全体変化量が求められる。基準フリッカ値からのフリッカ値の変化量が全体変化量の所定比率となる所定比率時点が求められる。所定比率時点と基準時点との間の経過時間が、フリッカシフト時間として求められる。このようにフリッカシフト時間が求められているため、被測定物におけるフリッカ値の時間的な変化を、より簡潔に表すことができる。
【0082】
上記第1態様において、例えば、前記基準時点は、前記測定開始時点であり、前記基準フリッカ値は、前記初期フリッカ値であり、前記演算処理部は、前記初期フリッカ値からの前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記測定開始時点から前記所定比率時点までの経過時間を、前記フリッカシフト時間として求めてもよい。
【0083】
上記第1態様において、例えば、前記基準時点は、前記定常時点であり、前記基準フリッカ値は、前記定常フリッカ値であり、前記演算処理部は、前記定常フリッカ値から遡った前記フリッカ値の変化量が前記全体変化量の所定比率となる所定比率時点を求め、前記所定比率時点から前記定常時点までの経過時間を、前記フリッカシフト時間として求めてもよい。
【0084】
上記第1態様において、例えば、
前記演算処理部は、前記所定比率が第1比率である第1フリッカシフト時間と、前記所定比率が前記第1比率と異なる第2比率である第2フリッカシフト時間と、を求めてもよい。
【0085】
この態様では、所定比率が第1比率と第2比率との2種類のフリッカシフト時間が求められる。したがって、この態様によれば、2種類のフリッカシフト時間として、フリッカ値の変化度合の緩急が、互いに異なる期間を含むフリッカシフト時間を、求めることができる。このため、被測定物におけるフリッカ値の時間的な変化を、より簡潔に表すことができる。
【0086】
上記第1態様において、例えば、
前記受光部は、前記光電変換素子を複数含み、前記複数の光電変換素子に対応して複数の前記受光信号をそれぞれ出力し、
前記複数の光電変換素子は、二次元的に並んで配置され、それぞれ、前記被測定物の互いに異なる測定位置から出射される光を受光し、
前記測定処理部は、前記複数の受光信号に基づき、前記複数の測定位置のフリッカ値をそれぞれ求め、求めた前記フリッカ値をそれぞれ前記測定位置に対応付けて前記記憶部に保存し、
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間をそれぞれ求めてもよい。
【0087】
この態様では、複数の測定位置におけるフリッカシフト時間がそれぞれ求められる。したがって、この態様によれば、被測定物におけるフリッカ値の時間変化が、測定位置によって、どのように異なっているかを把握することができる。
【0088】
上記第1態様において、例えば、
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間の平均値、最大値、最小値、及び最頻度値のうち少なくとも1つを求めてもよい。
【0089】
この態様によれば、複数の測定位置におけるフリッカシフト時間の平均値、最大値、最小値、及び最頻度値のうちの少なくとも1つが求められるので、被測定物の全体を評価する指標を得ることができる。
【0090】
上記第1態様において、例えば、
表示部をさらに備え、
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間の最大値及び最小値を求め、前記最大値、前記最小値、前記最大値の測定位置、及び前記最小値の測定位置を、前記表示部に表示してもよい。
【0091】
この態様では、複数の測定位置におけるフリッカシフト時間の最大値、最小値、及びそれらの各測定位置が、表示部に表示される。したがって、この態様によれば、被測定物のフリッカ値におけるばらつきの上下の位置を把握することができる。
【0092】
上記第1態様において、例えば、
表示部をさらに備え、
前記演算処理部は、前記複数の測定位置における前記フリッカシフト時間に基づき、前記フリッカシフト時間のばらつきを表すばらつき値を求めて前記表示部に表示してもよい。
【0093】
この態様では、複数の測定位置におけるフリッカシフト時間に基づき、フリッカシフト時間のばらつきを表すばらつき値が求められて表示部に表示される。したがって、この態様によれば、被測定物におけるフリッカ値の時間変化のばらつき度合を把握することができる。上記ばらつき値は、複数の測定位置におけるフリッカシフト時間の分散又は標準偏差であってもよい。代替的に、上記ばらつき値は、複数の測定位置におけるフリッカシフト時間の最大値と最小値との差分であってもよい。
【0094】
上記第1態様において、例えば、
前記測定処理部は、前記測定開始時点から所定時間が経過した時点に、前記被測定物が前記定常状態となったと判定してもよい。
【0095】
この態様によれば、被測定物が定常状態となったことを、より簡易に判定できる。
【0096】
上記第1態様において、例えば、
前記測定処理部は、今回取得した前記受光信号に基づくフリッカ値と、前回取得した前記受光信号に基づくフリッカ値との差を算出し、算出した前記差が所定の閾値以下になると、前記被測定物が前記定常状態となったと判定してもよい。
【0097】
この態様によれば、被測定物が定常状態となったことを、より正確に判定できる。
【0098】
本発明の実施形態が詳細に図示され、かつ、説明されたが、それは単なる図例及び実例であって限定ではない。本発明の範囲は、添付されたクレームの文言によって解釈されるべきである。
【0099】
2019年2月12日に提出された日本国特許出願番号2019-022667の全体の開示は、その全体において参照によりここに組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示のフリッカ測定装置、フリッカ測定方法およびフリッカ測定プログラムは、被測定物のフリッカを測定する装置に用いられる。
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