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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
F01N3/023 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021001390
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106419
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳央
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀樹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160208(JP,A)
【文献】特開2013-117191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気流路に配置されたDPFと、
前記排気流路に対する燃料の添加により前記DPFの再生を行う添加部と、
前記内燃機関の冷却水の温度を計測する水温センサと、
前記排気流路を流れる前記内燃機関の排気ガスの温度を計測する排気温センサと、
前記DPFへの水の付着の有無を判定する判定部と、
前記判定部が前記DPFへの水の付着があると判定した場合に、前記添加部による前記燃料の添加を禁止し、前記判定部が前記DPFへの水の付着がないと判定した場合に、前記添加部による前記燃料の添加を許可する制御部と、を備え
前記判定部は、前記内燃機関の始動時において前記水温センサにより計測された前記冷却水の温度が前記内燃機関の始動前における停止期間の長短を示す指標である第1温度未満である場合に、前記内燃機関の外部からの侵入水が前記DPFに付着していると判定し、
前記判定部は、前記排気温センサにより計測された前記排気ガスの温度が第2温度未満である状態が前記排気ガスに含まれる水分の凝縮の有無を示す指標である所定時間を経過したときに、前記排気流路で発生した凝縮水が前記DPFに付着していると判定し、
前記第2温度は、前記第1温度よりも大きい、排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記添加部は、前記排気流路における前記DPFの上流側に配置された添加弁を有する、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記排気流路における前記DPFの下流側に設けられ、前記内燃機関の外部から前記排気流路への水の侵入を防止する水侵入防止部を更に備える、請求項1又は2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
記判定部は、前記排気温センサにより計測された前記排気ガスの温度が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過したときに、前記DPFへの水の付着がないと判定する、請求項1~のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記排気温センサは、前記排気流路における前記DPFの上流側に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排気ガス浄化装置として、例えば特許文献1に記載のDPFを備える排気ガス浄化装置がある。この従来の排気ガス浄化装置では、DPFに付着した水の凍結によるDPFの損傷を防止するために、内燃機関の停止の前に排気温度を上昇させることでDPFに付着した水を蒸発させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-190341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような排気ガス浄化装置では、内燃機関の停止後又は内燃機関の運転中に、水が再びDPFに付着する場合がある。DPFに水が付着した状態で、燃料の添加によりDPFを再生させると、燃料がDPFに蓄積しやすくなることが想定される。燃料がDPFに蓄積し、かつDPFに水が付着した状態では、DPFの温度が上昇した場合に、燃料の急激な燃焼によりDPFが損傷するおそれがある。
【0005】
本開示は、再生時におけるDPFの損傷を防止できる排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る排気ガス浄化装置は、内燃機関の排気流路に配置されたDPFと、排気流路に対する燃料の添加によりDPFの再生を行う添加部と、DPFへの水の付着の有無を判定する判定部と、判定部がDPFへの水の付着があると判定した場合に、添加部による燃料の添加を禁止し、判定部がDPFへの水の付着がないと判定した場合に、添加部による燃料の添加を許可する制御部と、を備える。
【0007】
この排気ガス浄化装置では、制御部は、DPFへの水の付着がないと判定された場合には、排気流路に対する燃料の添加を許可する一方、DPFへの水の付着があると判定された場合には、排気流路に対する燃料の添加を禁止している。これにより、燃料がDPFに蓄積しにくくなるため、燃料の添加によりDPFの再生を行ったとしても、DPFにおいて燃料の急激な燃焼が起きにくくなる。よって、この排気ガス浄化装置によれば、再生時におけるDPFの損傷を防止できる。
【0008】
添加部は、排気流路におけるDPFの上流側に配置された添加弁を有してもよい。これにより、排気流路に対する燃料の添加を効率化でき、DPFの再生を効率化できる。
【0009】
排気ガス浄化装置は、内燃機関の冷却水の温度を計測する水温センサを更に備え、判定部は、内燃機関の始動時において水温センサにより計測された冷却水の温度が第1温度未満であるときに、DPFへの水の付着があると判定してもよい。内燃機関の始動時における冷却水の温度が所定温度未満である場合には、内燃機関が始動される前に、内燃機関が停止した期間が比較的長かったと想定される。そのような場合には、内燃機関が停止している間に内燃機関の外部から侵入した水がDPFに付着する可能性がある。上記の構成によれば、内燃機関の始動時における冷却水の温度を把握することで、DPFへの水の付着があることを容易に判定できる。
【0010】
排気ガス浄化装置は、排気流路を流れる内燃機関の排気ガスの温度を計測する排気温センサを更に備え、判定部は、排気温センサにより計測された排気ガスの温度が第2温度未満である状態が所定時間を経過したときに、DPFへの水の付着があると判定してもよい。排気ガスの温度が所定温度未満の状態が所定時間を経過した場合には、排気ガスに含まれる水分が凝縮すると想定される。そのような場合には、当該凝縮した水分がDPFへ付着する可能性がある。上記の構成によれば、排気ガスの温度変化を把握することで、DPFへの水の付着があることを容易に判定できる。
【0011】
排気ガス浄化装置は、排気流路におけるDPFの下流側に設けられ内燃機関の外部から排気流路への水の侵入を防止する水侵入防止部を更に備えてもよい。これにより、内燃機関の外部から排気流路への水の侵入を防止でき、DPFへの水の付着を防止できる。
【0012】
排気ガス浄化装置は、排気流路を流れる内燃機関の排気ガスの温度を計測する排気温センサを更に備え、判定部は、排気温センサにより計測された排気ガスの温度が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過したときに、DPFへの水の付着がないと判定してもよい。排気ガスの温度が所定温度よりも大きい状態が所定時間を経過すれば、DPFに付着した水が蒸発すると想定される。そのため、排気ガスの温度変化を把握することで、DPFへの水の付着がないことを容易に判定できる。これにより、DPFへの水の付着がない場合に、燃料の添加によりDPFの再生を行うことで、再生時におけるDPFの損傷を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、再生時におけるDPFの損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る排気ガス浄化装置の概略構成を示す図である。
図2】排気ガス浄化装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3】判定部での処理の一例を示すフローチャートである。
図4】制御部での処理の一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る排気ガス浄化装置の概略構成を示す図である。
図6】判定部での処理の一例を示すフローチャートである。
図7】排気ガスの温度の推定に用いられるマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る排気ガス浄化装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、第1実施形態に係る排気ガス浄化装置10Aは、車両1に搭載されている。車両1は、例えば乗用車又はフォークリフト等である。車両1は、エンジン(内燃機関)2と、インテークマニホールド3と、エキゾーストマニホールド4と、排気管5と、排気ガス浄化装置10Aと、を備えている。
【0017】
エンジン2は、例えば、コモンレール式の4気筒直列ディーゼルエンジンである。エンジン2は、シリンダブロック及びシリンダヘッド等を有している。エンジン2には、各燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ(図示省略)が設けられている。インジェクタは、コモンレールに接続されている。インジェクタには、コモンレールに貯留された高圧燃料が供給される。燃料は、例えば軽油である。
【0018】
インテークマニホールド3は、エンジン2の燃焼室に連通されている。インテークマニホールド3は、空気をエンジン2の燃焼室に流入させる。エキゾーストマニホールド4は、エンジン2の燃焼室に連通されている。エキゾーストマニホールド4は、エンジン2の燃焼室から排気された排気ガスを流出させる。排気管5は、エキゾーストマニホールド4に連通されている。排気管5は、エキゾーストマニホールド4から流出された排気ガスをエンジン2の外部へ流出させる。エキゾーストマニホールド4の流路及び排気管5の流路5aは、エンジン2の排気流路を構成する。
【0019】
排気ガス浄化装置10Aは、DOC[Diesel Oxidation Catalyst]11と、DPF[Diesel Particulate Filter]12と、水温センサ13と、複数の排気温センサ14と、添加部15と、ECU[Electronic Control Unit]16と、を備えている。
【0020】
DOC11は、エンジン2の排気流路に配置されている。DOC11は、排気管5の流路5aに配置されている。DOC11は、排気ガスに含まれるHC及びCO等を酸化することで、排気ガスを浄化する。DPF12は、エンジン2の排気流路に配置されている。DPF12は、排気管5の流路5aに配置されている。DPF12は、排気流路におけるDOC11の下流側に配置されている。DPF12は、排気ガスに含まれる粒子状物質[PM:Particulate Matter]を捕集することで、排気ガスからPMを取り除く。
【0021】
水温センサ13は、エンジン2の冷却水が循環する流路に設けられている。水温センサ13は、エンジン2の冷却水の温度を計測する。水温センサ13は、冷却水の温度に関する信号をリアルタイムでECU16へ送信する。複数の排気温センサ14のそれぞれは、排気管5に設けられている。複数の排気温センサ14のそれぞれは、排気流路におけるDOC11の上流側、DOC11とDPF12との間、排気流路におけるDPF12の下流側に配置されている。排気温センサ14は、排気流路を流れるエンジン2の排気ガスの温度を計測する。排気温センサ14は、排気ガスの温度に関する信号をリアルタイムでECU16へ送信する。
【0022】
添加部15は、排気管5に設けられた燃料添加弁151を有している。燃料添加弁151は、排気流路におけるDOC11の上流側に配置されている。添加部15は、排気流路に対する燃料の添加によりDPF12の強制再生を行う。具体的には、添加部15は、DPF12に堆積したPMの量が所定値以上になると、ECU16の制御により流路5aに燃料を噴射する。流路5aに燃料が噴射されると、DPF12の温度が上昇し、DPF12に堆積したPMが燃焼する。これにより、DPF12が再生される。添加部15により添加される燃料は、上記のインジェクタに供給される燃料と同じである。
【0023】
ECU16は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]及びCAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECU16では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU16は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0024】
図2は、排気ガス浄化装置10Aの機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、ECU16は、機能的構成として、判定部161と、制御部162と、を有している。水温センサ13及び排気温センサ14のそれぞれは、計測された温度に関する信号を判定部161へ送信する。判定部161は、水温センサ13及び排気温センサ14からの信号に基づいて、DPF12への水の付着の有無を判定する。
【0025】
具体的には、判定部161は、エンジン2の始動時において水温センサ13により計測された冷却水の温度が第1温度未満であるときに、DPF12への水の付着があると判定する。以下、「エンジン2の始動時において水温センサ13により計測された冷却水の温度」を単に「始動時の水温」という。第1温度は、例えば60℃程度である。
【0026】
始動時の水温は、エンジン2が停止した期間の長短を判定するための1つの指標である。始動時の水温が第1温度未満である場合には、エンジン2が始動される前に、エンジン2が停止した期間が比較的長かったと想定される。そのような場合には、エンジン2が停止している間に排気ガスが排気流路を流れないため、例えば雨水等がエンジン2の外部から排気流路へ侵入し、DPF12に付着している可能性がある。
【0027】
また、判定部161は、複数の排気温センサ14により計測された排気ガスの温度の平均値が第2温度未満である状態が所定時間を経過したときに、DPF12への水の付着があると判定する。以下、「複数の排気温センサ14により計測された排気ガスの温度の平均値」を単に「排気温」という。第2温度は、排気ガスに含まれる水分が凝縮する程度の値を有している。第2温度は、例えば200℃程度である。第2温度についての所定時間は、排気ガスに含まれる水分が凝縮する程度の値を有している。当該所定時間は、例えば20分程度である。
【0028】
排気温の変化は、エンジン2の排気ガスに含まれる水分の凝縮の有無を判定するための1つの指標である。排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過した場合には、排気ガスに含まれる水分が凝縮すると想定される。そのような場合には、当該凝縮した水分(凝縮水)がDPF12に付着している可能性がある。凝縮水は、DPF12内で発生する場合、及び、排気ガスに含まれ、DPF12の上流側又は下流側からDPF12へ流れることでDPF12に付着する場合が想定される。
【0029】
判定部161は、始動時の水温が第1温度よりも大きく、且つ、排気温が第2温度よりも大きい場合、又は排気温が第2温度未満である状態が所定時間(例えば20分)を経過していない場合に、DPF12への水の付着がないと判定する。
【0030】
判定部161は、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過したときに、DPF12への水の付着がないと判定する。第3温度は、DPF12に付着した水が蒸発する程度の値を有している。第3温度は、第2温度よりも大きい。第3温度は、例えば250℃程度である。第3温度についての所定時間は、DPF12に付着した水が蒸発する程度の値を有している。当該所定時間は、例えば15分程度である。
【0031】
排気温の変化は、DPF12に付着した水が蒸発したか否かを判定するための1つの指標である。排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過した場合には、DPF12に付着した水が蒸発したと想定される。なお、上記の第1温度、第2温度、第3温度及び各所定時間は、エンジン2の主要緒元、エンジン2の運転状況、外気環境(温度及び湿度等)又は開発者の経験等に基づいて、予め設定される。
【0032】
制御部162は、判定部161の判定結果に基づいて、添加部15を制御する。具体的には、制御部162は、DPF12に堆積したPMの量が所定値以上になったとしても、判定部161がDPF12への水の付着があると判定した場合には、添加部15による燃料の添加を禁止し(燃料添加禁止フラグをONにする)、閉弁に関する信号を添加部15へ送信する。これにより、添加部15は、燃料の添加を実施しない。制御部162は、判定部161がDPF12への水の付着がないと判定した場合には、添加部15による燃料の添加を許可し(燃料添加禁止フラグをOFFにする)、開弁に関する信号を添加部15へ送信する。これにより、添加部15は、DPF12に堆積したPMの量が所定値以上になった場合に、燃料の添加を実施する。
【0033】
次に、ECU16での処理について説明する。図3は、判定部161での処理の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、始動時の水温が第1温度未満であるか否かが判定される(ステップS1)。ステップS1において、始動時の水温が第1温度未満であると判定された場合、燃料添加禁止フラグがONとされる(ステップS2)。これにより、添加部15による燃料の添加が禁止される。
【0034】
続いて、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過したか否かが判定される(ステップS3)。ステップS3において、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過したと判定された場合、燃料添加禁止フラグがOFFとされ(ステップS4)、処理が終了される。これにより、添加部15による燃料の添加が許可される。一方、ステップS3において、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過していないと判定された場合、再びステップS1の処理が実行される。
【0035】
ステップS1において、始動時の水温が第1温度未満ではないと判定された場合、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過したか否かが判定される(ステップS5)。ステップS5において、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過したと判定された場合、ステップS2の処理が実行される。一方、ステップS5において、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過していないと判定された場合、ステップS2及びステップS3の処理が実行されず、ステップS4の処理が実行される。
【0036】
図4は、制御部162での処理の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、燃料添加禁止フラグがOFFであるか否かが判定される(ステップS11)。ステップS11において、燃料添加禁止フラグがOFFであると判定された場合、DPF12の強制再生が実行され(ステップS12)、処理が終了される。一方、ステップS11において、燃料添加禁止フラグがOFFではないと判定された場合、再びステップS11の処理が実行される。
【0037】
以上、説明したように、排気ガス浄化装置10Aでは、制御部162が、DPF12への水の付着がないと判定された場合には、排気流路に対する燃料の添加を許可する一方、DPF12への水の付着があると判定された場合には、排気流路に対する燃料の添加を禁止している。これにより、燃料がDPF12に蓄積しにくくなるため、燃料の添加によりDPF12の再生を行ったとしても、DPF12において燃料の急激な燃焼が起きにくくなる。よって、排気ガス浄化装置10Aによれば、再生時におけるDPF12の損傷(例えば、クラック又は溶損等)を防止できる。
【0038】
添加部15は、排気流路におけるDPF12の上流側に配置された燃料添加弁151を有している。これにより、排気流路に対する燃料の添加を効率化でき、DPF12の再生を効率化できる。
【0039】
排気ガス浄化装置10Aは、エンジン2の冷却水の温度を計測する水温センサ13を備えている。判定部161は、始動時の水温が第1温度未満であるときに、DPF12への水の付着があると判定する。これにより、始動時の水温を把握することで、DPF12への水の付着があることを容易に判定できる。
【0040】
排気ガス浄化装置10Aは、排気流路を流れるエンジン2の排気ガスの温度を計測する排気温センサ14を備えている。判定部161は、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過したときに、DPF12への水の付着があると判定する。これにより、排気温の変化を把握することで、DPF12への水の付着があることを容易に判定できる。
【0041】
判定部161は、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過したときに、DPF12への水の付着がないと判定する。これにより、排気温の変化を把握することで、DPF12への水の付着がないことを容易に判定できる。そのため、DPF12への水の付着がない場合に、燃料の添加によりDPF12の再生を行うことで、再生時におけるDPF12の損傷を確実に防止できる。
【0042】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る排気ガス浄化装置の概略構成を示す図である。図5に示すように、第2実施形態に係る排気ガス浄化装置10Bは、水温センサ13を備えていない点、及び水侵入防止部6を更に備えている点で第1実施形態に係る排気ガス浄化装置10Aと主に異なっている。
【0043】
水侵入防止部6は、排気管5に設けられている。水侵入防止部6は、排気流路におけるDPF12の下流側に設けられている。水侵入防止部6は、エンジン2の外部から排気流路への水の侵入を防止する。具体的には、水侵入防止部6は、第1防止部61と、第2防止部62と、を有している。
【0044】
第1防止部61は、排気管5の後端部によって構成されている。第1防止部61は、水平方向に延びている。第1防止部61は、排気流路における上流側から下流側に向かうほど鉛直方向における下方に向かって傾斜していてもよい。第1防止部61は、排気管5の後端部が、例えば排気流路における上流側から下流側に向かうほど鉛直方向における上方に向かって傾斜している場合に比べ、排気管5の後端から排気流路への水の侵入を防止できる。
【0045】
第2防止部62は、排気管5の流路5aに設けられている。第2防止部62は、DPF12と第1防止部61との間に配置されている。第2防止部62は、板状を呈している。第2防止部62は、排気管5の後端から排気流路(DPF12)への水の侵入を防止できる構造を有している。
【0046】
次に、排気ガス浄化装置10BのECU16での処理について説明する。図6は、排気ガス浄化装置10Bの判定部161での処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過したか否かが判定される(ステップS21)。ステップS21において、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過したと判定された場合、燃料添加禁止フラグがONとされる(ステップS22)。これにより、添加部15による燃料の添加が禁止される。
【0047】
続いて、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過した否かが判定される(ステップS23)。ステップS23において、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過したと判定された場合、燃料添加禁止フラグがOFFとされ(ステップS24)、処理が終了される。これにより、添加部15による燃料の添加が許可される。一方、ステップS23において、排気温が第3温度よりも大きい状態が所定時間を経過していないと判定された場合、再びステップS21の処理が実行される。
【0048】
ステップS21において、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過していないと判定された場合、ステップS22及びステップS23の処理が実行されず、ステップS24の処理が実行される。
【0049】
以上説明したように、排気ガス浄化装置10Bは、排気流路におけるDPF12の下流側に設けられエンジン2の外部から排気流路への水の侵入を防止する水侵入防止部6を備えている。これにより、エンジン2の外部から排気流路への水の侵入を防止でき、DPF12への水の付着を防止できる。また、排気温の変化のみを把握することで、DPF12への水の付着があることを容易に判定できる。つまり、DPF12への水の付着の有無を判定するための水温センサ13による水温の計測を省略できる。
【0050】
[変形例]
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。各実施形態において、排気温が排気温センサ14によって計測されたが、排気温は、例えばマップに基づいて推定されてもよい。図7は、排気ガスの温度の推定に用いられるマップを示す図である。図7に示すように、当該マップによれば、エンジン2の負荷(第1負荷~第4負荷)及びエンジン2の回転数を把握することで、排気ガスの温度を推定できる。このようなマップを用いる場合には、DPF12への水の付着の有無を判定するための排気温センサ14による排気温の計測を省略できる。なお、図7に示すマップは、エンジン2の冷却水の温度が所定の値(例えば80℃程度)を有する場合におけるマップである。
【0051】
各実施形態において、添加部15が、排気管5に設けられた燃料添加弁151を有していたが、添加部15としてエンジン2に設けられたインジェクタが用いられてもよい。排気流路への燃料の添加は、インジェクタによるポスト噴射により実現できる。また、添加部15により添加される燃料は、インジェクタに供給される燃料と同じであったが、添加部15が、排気管5に設けられた燃料添加弁151を有している場合には、添加部15により添加される燃料は、インジェクタに供給される燃料と異なってもよい。添加部15により添加される燃料は、例えば、ガソリン等であってもよい。
【0052】
第1実施形態において、判定部161が、始動時の水温が第1温度未満であるか否かを判定し(第1判定)、且つ、排気温が第2温度未満である状態が所定時間を経過したか否かを判定した(第2判定)が、判定部161は、第1判定及び第2判定のいずれか一方のみを実行してもよい。判定部161は、DPF12への水の付着の有無を判定すればよい。
【0053】
第2実施形態において、水侵入防止部6が、第1防止部61及び第2防止部62を有していたが、水侵入防止部6は、第1防止部61及び第2防止部62のいずれか一方のみを有していてもよい。
【符号の説明】
【0054】
2…エンジン(内燃機関)、6…水侵入防止部、10A,10B…排気ガス浄化装置、12…DPF、15…添加部、161…判定部、162…制御部、13…水温センサ、14…排気温センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7