(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光学式選別機
(51)【国際特許分類】
B07C 5/342 20060101AFI20240305BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240305BHJP
【FI】
B07C5/342
G06T7/00 600
(21)【出願番号】P 2021012212
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】定丸 雅明
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533075(JP,A)
【文献】特開2011-041872(JP,A)
【文献】特開平11-090345(JP,A)
【文献】特開2000-197855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0358677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 1/00-99/00
G06T 7/00- 7/90
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式選別機であって、
移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、
前記光源から照射され、前記被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、
前記光学センサによって取得される信号に基づいて前記被選別物の不良部分を検出するように構成された検出部と、
前記不良部分に向けてエアを噴射して、前記不良部分を有する被選別物を選別するように構成された選別部と、
前記エアの噴射を制御するように構成された噴射制御部と
を備え、
前記噴射制御部は、前記不良部分のディメンションの値が第1の値であるときに、前記被選別物に対する第1の噴射範囲に前記エアを噴射し、所定の条件を満たすときに、前記被選別物に対する第2の噴射範囲に前記エアを噴射する噴射範囲制御を実行するように構成され、
前記第2の噴射範囲は、前記第1の噴射範囲よりも広く、
前記所定の条件は、前記ディメンションの値が前記第1の値よりも小さい第2の値であることを含む
光学式選別機。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式選別機であって、
前記噴射範囲制御は、前記ディメンションの値が前記第2の値であるときに、前記ディメンションの値が前記第1の値であるときよりも、前記エアの噴射期間を長い時間に設定する第1の制御を含む
光学式選別機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学式選別機であって、
前記選別部は、前記エアを選択的に噴射可能な複数のノズルであって、前記被選別物の移送方向に直交する方向である直交方向に配列された複数のノズルを備え、
前記噴射範囲制御は、前記ディメンションの値が前記第1の値であるときに、前記複数のノズルのうちの一つのノズルから前記エアを噴射し、前記ディメンションの値が前記第2の値であり、かつ、前記不良部分のうちの所定部分が、前記一つのノズルの前記直交方向における前記エアの噴射範囲の中心から所定距離以上、前記直交方向に離れているときに、前記複数のノズルのうちの、前記一つのノズルと、該一つのノズルに隣接するノズルと、から前記エアを噴射する第2の制御を含む
光学式選別機。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式選別機であって、
前記複数のノズルの各々には、前記直交方向における前記被選別物の各検出位置に関しての噴射担当範囲が可変に対応付けられ、
前記噴射制御部は、さらに、前記複数のノズルの各々が、対応する噴射担当範囲内に前記不良部分のうちの前記所定部分が位置するときに前記エアを噴射するように、前記エアの噴射を制御するように構成され、
前記複数のノズルにそれぞれ対応する複数の噴射担当範囲は、前記ディメンションの値が前記第1の値であるときに、互いにオーバラップしないように設定されるとともに、前記ディメンションの値が前記第2の値であるときに、前記複数の噴射担当範囲のうちの任意の隣接する二つの噴射担当範囲が部分的に互いにオーバラップするように設定され、
前記不良部分のうちの前記所定部分が、前記隣接する二つの噴射担当範囲のオーバラップ領域内に位置するときに、前記隣接する二つの噴射担当範囲に対応する二つのノズルから前記エアが噴射される
光学式選別機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の光学式選別機であって、
前記検出部は、さらに、前記不良部分の中心を検出するように構成され、
前記噴射制御部は、さらに、前記不良部分の前記中心を基準として前記噴射範囲制御を行うように構成された
光学式選別機。
【請求項6】
請求項2を従属元に含む請求項5に記載の光学式選別機であって、
前記第1の制御は、前記不良部分の前記中心に対して前記エアを噴射するタイミングが前記噴射期間の中央に位置するように、前記噴射期間の開始および終了のタイミングを設定することを含む
光学式選別機。
【請求項7】
請求項3を従属元に含む請求項5、または、請求項3を従属元に含む請求項6に記載の光学式選別機であって、
前記不良部分のうちの前記所定部分は、前記不良部分の前記中心である
光学式選別機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式選別機に関する。
【背景技術】
【0002】
被選別物に光源から光を照射した際に光学センサによって得られる光情報を使用して、被選別物に含まれる異物や不良品を判別して除去する光学式選別機が従来から知られている。光学センサによって得られた光情報(例えば、色階調値)は閾値と比較され、その比較結果に基づいて、被選別物が良品であるか、それとも、異物または不良品であるかが判定される。異物または不良品であると判定された被選別物は、典型的には、エア噴射によって吹き飛ばされ、それによって、被選別物は、良品と、異物および不良品と、に選別される。
【0003】
このような光学式選別機に関して、下記の特許文献1は、被選別物の不良部分の幅が大きいほど、エアの噴射期間を長く設定する技術を開示している。この技術は、幅が大きい不良部分を有する被選別物は大きい粒子(換言すれば、重量が大きい粒子)であると推定して、大きな重量に起因して吹き飛ばしにくい粒子を、長く設定された噴射期間で確実に吹き飛ばすことを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光学式選別機は、選別精度の向上のために改良の余地を残している。
【0006】
例えば、被選別物が米粒であり、米粒の端に小さな着色部分が存在する場合、上記の技術では、エアの噴射期間が短く設定されてしまう。この場合、着色部分を狙ってエアが噴射されると、噴射されたエアが米粒の端部に僅かに接触することに起因して、良品と区別されるのに十分な程度には当該米粒の軌道を変更できないといった事象(以下、小接触事象とも呼ぶ)が発生するおそれがある。このような事象は、選別精度の低下を招くことになる。
【0007】
一方、着色部分を有する米粒全体の中心を検出し、この中心を狙ってエアが噴射される場合には、上記の事象は発生しにくくなる。しかしながら、米粒の中心検出は、複雑な信号処理を必要とするので、信号処理の負荷が大きくなり、その結果、処理時間が長くなる恐れがある。しかも、米粒の中心検出は、米粒の外郭を検出することを必要とするが、複数の米粒が互いに接触した状態で移送される場合、1粒の外郭を正確に検出することは難しい。米粒の外郭を正確に検出できない場合には、選別精度が低下することになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
本発明の第1の形態によれば、光学式選別機が提供される。この光学式選別機は、移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、光源から照射され、被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、光学センサによって取得される信号に基づいて被選別物の不良部分を検出するように構成された検出部と、不良部分に向けてエアを噴射して、不良部分を有する被選別物を選別するように構成された選別部と、エアの噴射を制御するように構成された噴射制御部と、を備えている。噴射制御部は、不良部分のディメンションの値が第1の値であるときに、被選別物に対する第1の噴射範囲にエアを噴射し、所定の条件を満たすときに、被選別物に対する第2の噴射範囲にエアを噴射する噴射範囲制御を実行するように構成される。第2の噴射範囲は、第1の噴射範囲よりも広い。所定の条件は、ディメンションの値が第1の値よりも小さい第2の値であることを含む。
【0010】
「被選別物に関連付けられた光」とは、被選別物で反射した光である反射光であってもよいし、被選別物を透過した光である透過光であってもよいし、あるいは、反射光と透過光との両方であってもよい。「不良部分」とは、品質が望ましくない部分(これは、被選別物の全体であってもよいし、あるいは、一部であってもよい)と異物(この場合、異物の全体が不良部分である)とのうちの一方または両方を意味する。不良部分の「ディメンション」とは、不良部分の面積、長さ、および幅のうちのいずれか、または、これらの任意の組み合わせを意味する。被選別物に対するエアの「噴射範囲」とは、ある瞬間においてエアが噴射される範囲に限らず、移送中の被選別物とともに移動する座標系における範囲を意味する。例えば、移送中の被選別物と、エアが噴射される領域と、の相対的な位置関係は、被選別物の移送に伴って刻々と変化するが、被選別物とともに移動する座標系においてエアが一瞬でも当たる座標領域の全体が被選別物に対するエアの「噴射範囲」となり得る。
【0011】
この光学式選別機によれば、所定の条件を満たす場合には、被選別物に対するエアの噴射範囲は、不良部分のディメンションが第1の値であるときよりも、第1の値よりも小さい第2の値であるときに、広く設定される。換言すれば、不良部分が所定程度小さいときには、被選別物に対するエアの噴射範囲が拡張される。したがって、小さな不良部分が被選別物の端に存在する場合に不良部分に向けてエアを噴射したとしても、小接触事象が生じにくい。したがって、選別精度を向上させることができる。
【0012】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、噴射範囲制御は、ディメンションの値が第2の値であるときに、ディメンションの値が第1の値であるときよりも、エアの噴射期間を長い時間に設定する第1の制御を含む。この形態によれば、被選別物の移送方向におけるエアと被選別物との接触範囲を拡張できるので、小接触事象が生じにくくなる。したがって、選別精度を向上させることができる。第1の制御は、エアの噴射期間を変更することによって噴射範囲を変更する制御であると捉えることもできる。
【0013】
本発明の第3の形態によれば、第1または第2の形態において、選別部は、エアを選択的に噴射可能な複数のノズルであって、被選別物の移送方向に直交する方向である直交方向に配列された複数のノズルを備えている。噴射範囲制御は、ディメンションの値が第1の値であるときに、複数のノズルのうちの一つのノズルからエアを噴射し、ディメンションの値が第2の値であり、かつ、不良部分のうちの所定部分(例えば、任意の部分、または、中心)が、一つのノズルの直交方向におけるエアの噴射範囲の中心から所定距離以上、直交方向に離れているときに、複数のノズルのうちの、一つのノズルと、一つのノズルに隣接するノズルと、からエアを噴射する第2の制御を含む。この形態によれば、不良部分が所定程度小さく、かつ、隣接する二つのノズルのそれぞれの直交方向における噴射範囲の境界付近に不良部分の所定部分が存在する場合には、隣接する二つのノズルからエアが噴射され、直交方向におけるエアと被選別物との接触範囲を拡張できるので、小接触事象が生じにくくなる。したがって、選別精度を向上させることができる。第2の制御は、複数のノズルのうちのエアを噴射すべきノズルの数を変更することによって噴射範囲を変更する制御であると捉えることもできる。
【0014】
本発明の第4の形態によれば、第3の形態において、複数のノズルの各々には、直交方向における被選別物の各検出位置に関しての噴射担当範囲が可変に対応付けられる。噴射制御部は、さらに、複数のノズルの各々が、対応する噴射担当範囲内に不良部分のうちの所定部分が位置するときにエアを噴射するように、エアの噴射を制御するように構成される。複数のノズルにそれぞれ対応する複数の噴射担当範囲は、ディメンションの値が第1の値であるときに、互いにオーバラップしないように設定されるとともに、ディメンションの値が第2の値であるときに、複数の噴射担当範囲のうちの任意の隣接する二つの噴射担当範囲が部分的に互いにオーバラップするように設定される。不良部分のうちの所定部分が、隣接する二つの噴射担当範囲のオーバラップ領域内に位置するときに、隣接する二つの噴射担当範囲に対応する二つのノズルからエアが噴射される。この形態によれば、単純な演算で第3の形態を実現可能である。
【0015】
本発明の第5の形態によれば、第1ないし第4のいずれかの形態において、検出部は、さらに、不良部分の中心を検出するように構成される。噴射制御部は、さらに、不良部分の中心を基準として噴射範囲制御を行うように構成される。この形態によれば、より精度良く、噴射範囲制御を行うことができる。
【0016】
本発明の第6の形態によれば、第2の形態を含む第5の形態において、第1の制御は、不良部分の中心に対してエアを噴射するタイミングが噴射期間の中央に位置するように、噴射期間の開始および終了のタイミングを設定することを含む。この形態によれば、不良部分が被選別物のうちの移送方向における一方側に位置している場合において、不良部分が移送方向のどちら側に偏っていても、当該不良部分を有する被選別物にエアを確実に当てることができる。したがって、選別精度を向上させることができる。
【0017】
本発明の第7の形態によれば、第3の形態を含む第5の形態、または、第3の形態を含む第6の形態において、不良部分のうちの所定部分は、不良部分の中心である。この形態によれば、互いに隣接する二つのノズルからエアが噴射される機会が限定される。このため、二つのノズルから噴射されたエアが、不良部分を有する被選別物と一緒に、その近傍の他の被選別物の軌道も変更してしまうことを抑制できる。したがって、歩留りが向上する。
【0018】
本発明の第8の形態によれば、第3または第4の形態において、不良部分のうちの所定の部分は、不良部分のうちの任意の部分である。つまり、第2の制御において、ディメンションの値が第2の値であり、かつ、不良部分のうちのいずれかの部分が、一つのノズルの直交方向におけるエアの噴射範囲の中心から所定距離以上、直交方向に離れていれば、複数のノズルのうちの、一つのノズルと、一つのノズルに隣接するノズルと、からエアが噴射される。この形態によれば、第7の形態と比べて、互いに隣接する二つのノズルからエアが噴射される機会が増える。このため、不良部分を有する被選別物の除去率が向上する。したがって、より良質な製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による光学式選別機の概略構成を示す模式図である。
【
図2】一実施形態による選別処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態によるノズル決定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】不良部分のディメンションに応じたノズルの決定方法を示す模式図であり、不良部分のディメンションの値が閾値よりも大きい場合を示している。
【
図6】不良部分のディメンションに応じたノズルの決定方法を示す模式図であり、不良部分のディメンションの値が閾値以下である場合を示している。
【
図7】一実施形態による噴射期間決定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態としての光学式選別機(以下、単に選別機と呼ぶ)10の概略構成を示す模式図である。本実施形態では、選別機10は、被選別物90としての米粒(より具体的には、玄米または精白米)から異物(例えば、小石、泥、ガラス片など)および不良品(例えば、未熟粒、着色粒など)を選別するために使用される。ただし、被選別物90は、玄米または精白米に限られるものではなく、任意の粒状物であってもよい。例えば、被選別物90は、籾、麦粒、豆類(大豆、ひよこ豆、枝豆など)、樹脂(ペレット等)、ゴム片等であってもよい。
【0021】
図1に示すように、選別機10は、光源30a,30bと、光学センサ40a,40bと、選別部50と、貯留タンク71と、フィーダ72と、シュート73と、良品排出樋74と、不良品排出樋75と、コントローラ80と、を備えている。コントローラ80は、選別機10の動作全般を制御する。コントローラ80は、検出部81および噴射制御部82としても機能する。コントローラ80の機能は、所定のプログラムをCPUが実行することによって実現されてもよいし、専用回路によって実現されてもよいし、これらの組み合わせによって実現されてもよい。コントローラ80の各機能は、一体的な一つの装置によって実現されてもよい。例えば、コントローラ80の各機能が、一つのCPUによって実現されてもよい。あるいは、コントローラ80の各機能は、少なくとも二つの装置に分散配置されてもよい。コントローラ80の機能の詳細については後述する。
【0022】
貯留タンク71は、被選別物90を一時的に貯留する。フィーダ72は、貯留タンク71に貯留された被選別物90を、被選別物移送手段の一例としてのシュート73上に供給する。シュート73上に供給された被選別物90は、シュート73上を下方に向けて滑走し、シュート73下端から落下する。シュート73は、多数の被選別物90を同時に落下させることができる所定幅を有している。以下の説明では、シュート73から落下した後に被選別物90が移送される方向(換言すれば、被選別物90の落下方向)を移送方向D1とも呼ぶ。また、移送方向D1に直交する方向(換言すれば、シュート73の幅方向)を直交方向D2とも呼ぶ。
【0023】
光源30aは、被選別物90の移送経路95(換言すれば、被選別物90の落下軌跡)に対して一方側(フロント側とも呼ぶ)に配置されており、光源30bは、被選別物90の移送経路95に対して他方側(リア側とも呼ぶ)に配置されている。光源30a,30bは、移送経路95上を移送中の被選別物90(つまり、シュート73から滑り落ちた被選別物90)に光31a,31bをそれぞれ照射する。本実施形態では、光源30a,30bの各々は、赤色光を放出する複数のLEDと、緑色光を放出する複数のLEDと、青色光を放出する複数のLEDと、を備える光源ユニットである。ただし、光源30a,30bの仕様(例えば、数、発光形式、光31a,31bの波長領域など)は、特に限定されない。例えば、光源30a,30bとして、可視光を放出するLEDに代えて、または、加えて、近赤外光を放出するLEDが使用されてもよい。また、光源30a,30bの一方が省略されてもよい。
【0024】
光学センサ40aはフロント側に配置されており、光学センサ40bはリア側に配置されている。光学センサ40a,40bは、光源30a,30bから照射され、被選別物90に関連付けられた光を検出する。具体的には、フロント側の光学センサ40aは、フロント側の光源30aから照射され、被選別物90で反射した光31aと、リア側の光源30bから照射され、被選別物90を透過した光31bと、を検出可能である。リア側の光学センサ40bは、リア側の光源30bから照射され、被選別物90で反射した光31bと、フロント側の光源30aから照射され、被選別物90を透過した光31aと、を検出可能である。
【0025】
光学センサ40a,40bの各々は、本実施形態では、カラーCCDセンサであり、直線状に配列された複数の受光素子を備えている。複数の受光素子は、直交方向D2(つまり、シュート73の幅方向)に配列されている。このため、光学センサ40a,40bは、シュート73の所定幅にわたって移送される多数の被選別物90を同時に撮像することができる。光学センサ40a,40bの仕様は、特に限定されず、光源30a,30bの仕様に応じて任意に決定され得る。また、光学センサ40a,40bの一方が省略されてもよい。
【0026】
光学センサ40a,40bからの出力、すなわち、検出された光の強度を表すアナログ信号は、AC/DCコンバータ(図示省略)によって、所定のゲインで増幅され、さらに、デジタル信号に変換される。このデジタル信号(換言すれば、アナログ信号に対応する階調値)は、コントローラ80に入力される。コントローラ80は、入力された光の検出結果(つまり画像)に基づいて、被選別物90の不良部分を検出する。本実施形態では、この不良部分には、米のうちの、品質が高い米とは色彩が異なる部分と、異物(つまり、米粒ではないもの)の全体と、が含まれる。ただし、不良部分は、これらのうちの一方であってもよい。品質が高い米とは色彩が異なる部分は、例えば、着色粒、死米、被害粒または未熟粒の粒全体または一部分である。
【0027】
選別部50は、検出された不良部分に向けてエアを噴射して、不良部分を有する被選別物90を選別する。具体的には、選別部50は、複数のノズル51と、ノズル51に対応する数(本実施形態では、ノズル51と同数であるが、ノズル51の数と異なっていてもよい)の電磁バルブ52と、を備えている。複数のノズル51は、直交方向D2(つまり、シュート73の幅方向)に配列されている。
【0028】
複数のノズル51は、複数の電磁バルブ52をそれぞれ介して、コンプレッサ(図示せず)に接続されている。コントローラ80からの制御信号に応じて複数の電磁バルブ52が選択的に開かれることによって、複数のノズル51は、不良部分を有する被選別物90に向けてエア53を選択的に噴射する。より具体的には、複数のノズル51の各々には、直交方向D2における被選別物90の各検出位置に関しての噴射担当範囲が対応付けられる。そして、複数のノズル51の各々は、対応する噴射担当範囲内に不良部分のうちの所定部分(本実施形態では中心)が位置するときにエア53を噴射する。このようなエア53の噴射の制御は、コントローラ80の噴射制御部82の処理として実行される。このように、複数のノズル51の各々には、直交方向D2における被選別物90の各検出位置に関しての、エア53の噴射を担当すべき範囲が割り当てられている。実際には、噴射担当範囲は、コントローラ80に入力される画像上の直交方向D2の位置によって定義される。詳しくは後述するが、この噴射担当範囲は、本実施形態では可変に設定される。
【0029】
不良部分を有する被選別物90は、エア53によって吹き飛ばされ、シュート73からの落下軌道(つまり、移送経路95)から逸脱して不良品排出樋75に導かれる(
図1に被選別物91として示す)。一方、不良部分を有していない被選別物90(以下、良品とも呼ぶ)には、エア53は噴射されない。このため、良品は、落下軌道を変えることなく、良品排出樋74に導かれる(
図1に被選別物92として示す)。なお、シュート73から落下した後の被選別物90に向けてエア53を噴射する構成に代えて、シュート73上を滑走中の被選別物90に向けてエア53を噴射して、被選別物90の移送経路を変更してもよい。また、被選別物移送手段として、シュート73に代えて、ベルトコンベヤが使用されてもよい。この場合、ベルトコンベヤの一端から落下する被選別物に向けてエアが噴射されてもよい。あるいは、ベルトコンベヤ上で搬送中の被選別物に向けてエアが噴射されてもよい。
【0030】
本実施形態による被選別物90の選別処理には、被選別物90に対するエア噴射範囲を可変に設定する噴射範囲制御が含まれる。そのような選別処理の詳細について以下に説明する。
図2は、コントローラ80によって実行される選別処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、所定サイズの画像データがコントローラ80へ入力されるたびに繰り返し実行される。選別処理が開始されると、まず、コントローラ80は、検出部81の処理として、入力された画像データに基づいて被選別物90の不良部分を検出する(ステップS110)。不良部分の検出は、不良部分であるか否かを判定するために予め定められた閾値と、画像データの階調値と、を比較することによって行われる。画像データを構成する各画素の階調値を、閾値以下であるか否かに基づいて2値化すれば、不良部分を容易に検出できる。例えば、RGBの各色の画像データが取得される場合には、色ごとに設定された閾値をそれぞれ用いて、2値化が行われてもよい。この場合、不良部分を表す画素は、いずれかの色に関して不良部分と判断された画素の集合体である。
【0031】
次いで、コントローラ80は、ステップS110で不良部分が検出されたか否かを判断する(ステップS120)。判断の結果、不良部分が検出されなければ(ステップS120:NO)、コントローラ80は、選別処理を終了する。
【0032】
一方、不良部分が検出されれば(ステップS120:YES)、コントローラ80は、処理をステップS130に進める。ステップS110において複数の不良部分が検出される場合には、ステップS130以降の処理は、不良部分ごとに実行される。画像上において、単一の不良部分は、不良部分を表す階調値を有する連続する複数の画素から構成され、不良部分を表す階調値を有する連続しない画素群は、互いに別の不良部分であると判断される。
【0033】
ステップS130では、コントローラ80は、検出部81の処理として、検出された不良部分について、そのディメンションの値を検出する。ディメンションとは、不良部分の面積、長さ、および幅のうちのいずれか、または、これらの任意の組み合わせを意味する。本実施形態では、ディメンションは、不良部分の面積である。
図3は、単一の不良部分を表す画像の一例を示している。
図3において、格子の各々は、画像データを構成する画素を表している。説明の便宜上、直交方向D2と平行にX軸を定義し、移送方向D1と平行にY軸を設定する。不良部分を表す画素をハッチング(シングルハッチングまたはクロスハッチング)で示している。
図3に示す例では、不良部分は、23個の画素によって構成されており、コントローラ80は、不良部分の面積の値を23として検出する。
【0034】
代替実施形態において、ディメンションが長さL1と幅W1との組み合わせとして定義される場合には、コントローラ80は、
図3に示す不良部分に基づいて、長さL1の値5と、幅W1の値7と、を検出してもよい。この代替実施形態では、長さL1は、移送方向D1における不良部分の最大範囲に基づいて定まり、幅W1は、直交方向D2における不良部分の最大範囲に基づいて定まる。
【0035】
次いで、コントローラ80は、検出部81の処理として、不良部分の中心を検出する(ステップS140)。本実施形態では、コントローラ80は、長さL1を規定する画素位置の中心に位置し、かつ、幅W1を規定する画素位置の中心に位置する画素を、不良部分の中心として検出する。
図3の例では、長さL1は画素位置Y2~Y6によって規定され、幅W1は画素位置X2~X8によって規定されるので、(x,y)=(X5,Y4)の画素(クロスハッチングで示す)が中心として検出される。長さL1を規定する画素位置の数が偶数である場合には、それらの中央に位置する二つの画素位置のうちの任意の画素位置に基づいて、中心が決定されてもよい。幅W1を規定する画素位置の数が偶数である場合も同様である。
【0036】
中心の検出は、この手法に限らず、公知の任意の手法によって行われ得る。例えば、コントローラ80は、不良部分を構成する画素群から、不良部分の外郭を構成する画素を時計回りに一つずつ取り除いていき、最後に残った画素を不良部分の中心として検出してもよい。
【0037】
次いで、コントローラ80は、噴射制御部82の処理として、ノズル決定処理を実行する(ステップS150)。ノズル決定処理とは、不良部分を有する被選別物90を選別するために、複数のノズル51のうちのいずれのノズル51を使用してエア53を噴射するのかを決定する処理である。ノズル決定処理は、不良部分のディメンションの値がどの程度であるかを条件の一つとして、被選別物90に対する直交方向D2のエア噴射範囲を決定する制御(以下、第2の制御とも呼ぶ)のために行われる。第2の制御は、上述した噴射範囲制御のうちの一つである。本実施形態では、ステップS150は、不良部分の中心を基準として実行される。以下、ノズル決定処理の詳細について説明する。
【0038】
図4は、一実施形態によるノズル決定処理の流れを示すフローチャートを示している。この処理では、コントローラ80は、まず、ステップS130で検出したディメンションの値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS151)。本実施形態では、ディメンションは面積として定義されるので、閾値は、面積の値に関して予め設定される。ディメンションの値が閾値以下であることは、不良部分が所定程度小さいことを意味している。閾値は、例えば、被選別物90の標準的なディメンションの1/3程度に設定されてもよい。この場合、ステップS151では、不良部分が、被選別物90の標準的な大きさの約1/3以下であるか否かが実質的に判断されることになる。
【0039】
判断の結果、ディメンションの値が閾値よりも大きければ(ステップS151:NO)、コントローラ80は、オーバラップ領域なしの噴射担当範囲を設定する(ステップS152)。「オーバラップ領域なし」とは、各ノズル51に割り当てられた噴射担当範囲同士がオーバラップしないことを意味している。
図5は、このようにして噴射担当範囲が設定される場合のノズル51と噴射担当範囲との対応関係の一例を示している。
図5では、説明の便宜上、直交方向D2に配列された多数のノズル51のうちの配列の途中の3つのノズル51のみをノズル51a~51cとして示している。ノズル51a~51cには、電磁バルブ52a~52cがそれぞれ接続されている。
図5において、格子の各々は、コントローラ80に入力された画像85を構成する画素を表している。
図5に示すように、ノズル51a~51cには、噴射担当範囲86a~86cがそれぞれ対応付けられている。噴射担当範囲86a~86cは、互いにオーバラップしないように設定されている。図示は省略しているが、実際には、画像85上の直交方向D2に並ぶ全ての画素位置(換言すれば、直交方向D2における被選別物90の全ての検出位置)は、多数のノズル51に対応する噴射担当範囲のいずれかに属することになる。
【0040】
一方、ディメンションの値が閾値以下であれば(ステップS151:YES)、コントローラ80は、オーバラップ領域ありの噴射担当範囲を設定する(ステップS153)。「オーバラップ領域あり」とは、各ノズル51に割り当てられた複数の噴射担当範囲のうちの任意の隣接する二つの噴射担当範囲が部分的にオーバラップすることを意味している。
図6は、このようにして噴射担当範囲が設定される場合のノズル51と噴射担当範囲との対応関係の一例を示している。この例でも、
図5と同様に、3つのノズル51a~51cのみを示している。
図6において、ノズル51a,51cと、それらに対応付けられた噴射担当範囲86a,86cと、の対応関係は、1点鎖線で表しており、ノズル51bと、それに対応付けられた噴射担当範囲86bと、の対応関係は、点線で表している。
図6に示すように、隣接する二つのノズル51a,51bに対応する二つの噴射担当範囲86a,86bは、オーバラップ領域87aで互いにオーバラップしている。同様に、隣接する二つのノズル51b,51cに対応する二つの噴射担当範囲86b,86cは、オーバラップ領域87bで互いにオーバラップしている。
【0041】
代替実施形態において、ディメンションが長さL1と幅W1との組み合わせとして定義される場合には、ステップS151で使用される閾値は、長さL1および幅W1の両方に関して予め設定される。この場合、ステップS151では、長さL1が第1の閾値以下であることと、幅W1が第2の閾値以下であることと、の少なくとも一方が満たされる場合に、処理がステップS153に進められてもよい。さらなる代替実施形態では、ステップS151では、長さL1が第1の閾値以下であり、かつ、幅W1が第2の閾値以下である場合にのみ、処理がステップS153に進められてもよい。被選別物90(ひいては、不良部分)は、どのような向きになった状態で移送されるかは分からないが、ディメンションを長さL1および幅W1の両方で定義しておけば、移送時の被選別物90の向きに関係なく、不良部分の大きさを正確に把握できる。
【0042】
次いで、コントローラ80は、ステップS152またはステップS153で設定された噴射担当範囲のうちから、ステップS140で検出された不良部分の中心が属する噴射担当範囲に対応するノズル51を、当該不良部分を有する被選別物90を選別するためにエア53を噴射すべきノズル(以下、要噴射ノズルとも呼ぶ)として決定する(ステップS154)。換言すれば、不良部分の中心を基準として、要噴射ノズルが決定される。
【0043】
図5に示す例では、不良部分の中心84は噴射担当範囲86bに存在する。このため、噴射担当範囲86bに対応するノズル51bが要噴射ノズルとして決定される。
図6に示す例では、不良部分の中心84は、オーバラップ領域87a内に位置する。つまり、不良部分の中心84は、噴射担当範囲86a内に位置するとともに、噴射担当範囲86b内にも位置する。このため、噴射担当範囲86a,86bに対応するノズル51a,51bが要噴射ノズルとして決定される。
【0044】
このように、ノズル決定処理では、処理がステップS152からステップS154に進んだ場合には、直交方向D2における中心の位置がどこであっても、ステップS154では単一のノズル51が決定される。一方、処理がステップS153からステップS154に進んだ場合、中心が直交方向D2においてオーバラップ領域内に位置するときは、ステップS154では二つのノズル51が決定され、中心が直交方向D2においてオーバラップ領域内に位置しないときは、ステップS154では単一のノズル51が決定される。
【0045】
上述したノズル決定処理によれば、ディメンションの値が閾値よりも大きいときに、単一のノズル51を要噴射ノズルとして決定し、ディメンションの値が閾値以下であり、かつ、不良部分がいずれかのノズル51の直交方向D2におけるエア53の噴射範囲の中心から所定距離以上、直交方向D2に離れているときに、上記の単一のノズル51と、それに隣接するノズル(より具体的には、上記の単一のノズル51に隣接する二つのノズル51のうちの直交方向D2において不良部分の中心に近い方のノズル51)と、を要噴射ノズルとして決定する処理を単純な演算で実現できる。
【0046】
ここで説明を
図2の選別処理に戻す。ノズル決定処理が終了すると、コントローラ80は、噴射制御部82の処理として、噴射期間決定処理を実行する(ステップS160)。噴射期間決定処理とは、エア53の噴射期間(すなわち、噴射を継続する時間)を決定する処理である。噴射期間決定処理は、不良部分のディメンションの値がどの程度であるかを条件として、被選別物90に対する移送方向D1のエア噴射範囲を決定する制御(以下、第1の制御とも呼ぶ)のために行われる。ここでのエア噴射範囲とは、移送中の被選別物90とともに移動する座標系における範囲を意味する。第1の制御は、上述した噴射範囲制御のうちの一つである。以下、噴射期間決定処理の詳細について説明する。
【0047】
図7は、一実施形態による噴射期間決定処理の流れを示すフローチャートである。この処理では、コントローラ80は、まず、ステップS130で検出したディメンションの値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS161)。ステップS161で使用される閾値は、典型的には、ステップS151で使用される閾値と同一である。ただし、両者は異なっていてもよい。
【0048】
判断の結果、ディメンションの値が閾値よりも大きければ(ステップS161:NO)、コントローラ80は、噴射期間をT1に設定する(ステップS162)。一方、ディメンションの値が閾値以下であれば(ステップS161:YES)、コントローラ80は、噴射期間を、期間T1よりも長い期間T2に設定する(ステップS163)。
【0049】
ここで説明を
図2の選別処理に戻す。噴射期間決定処理が終了すると、コントローラ80は、噴射制御部82の処理として、ステップS150で決定したノズル51(要噴射ノズル)から、ステップS160で決定した噴射期間でエア53を噴射するように、電磁バルブ52を制御し(ステップS170)、選別処理を終了する。要噴射ノズルの数が複数である場合には、それらの要噴射ノズルからは同時にエア53が噴射されることとなる。
【0050】
ステップS170によるエア53の噴射に関して、本実施形態では、不良部分の中心を基準として、噴射遅れ時間が設定される。具体的には、不良部分の中心に対してエア53を噴射するタイミングが噴射期間の中央に位置するように、噴射遅れ時間が設定される。換言すれば、噴射期間が期間T1,T2のいずれに設定される場合であっても、不良部分の中心に対してエア53を噴射するタイミングが噴射期間の中央に位置するように、噴射期間の開始および終了のタイミングが設定される。こうすれば、不良部分が被選別物90のうちの移送方向D1におけるどちら側に偏っている場合であっても、当該不良部分を有する被選別物90にエア53を確実に当てることができる。
【0051】
上述した選別機10によれば、被選別物90の外郭や中心を検出することなく、被選別物90の不良部分のディメンションの値に基づいて、エア53の噴射範囲を適切に制御しつつ、不良部分に向けてエア53が噴射される。被選別物90の外郭や中心を検出する必要が無いので、信号処理の負荷が比較的小さくなり、処理の高速化を行える。また、複数の被選別物90が接触した状態で移送されても、選別精度が低下しない。
【0052】
エア53の噴射範囲に関しては、第1の制御によって、不良部分のディメンションの値が閾値以下である場合に、移送方向D1におけるエア53と被選別物90との接触範囲が拡張される。また、第2の制御によって、不良部分のディメンションの値が閾値以下であり、かつ、不良部分がいずれかのノズル51の直交方向D2におけるエア53の噴射範囲の中心から所定距離以上、直交方向D2に離れているときに、直交方向D2におけるエア53と被選別物90との接触範囲が拡張される。したがって、小接触事象が生じにくくなり、選別精度を向上させることができる。
【0053】
図8および
図9は、選別機10のそのような効果を示す模式図である。
図8および
図9において、格子の各々は、画像85を構成する画素を表している。ハッチング部分は、不良部分を表し、黒い四角は、不良部分の中心を表している。また、
図8および
図9の左側は、不良部分のディメンションの値が閾値よりも大きい場合を表し、右側は、不良部分のディメンションの値が閾値以下である場合を表している。また、
図8および
図9において、矢印による範囲表示は、一つのノズル51の噴射範囲を示している。
【0054】
図8の左側に示すように、不良部分がある程度大きく、かつ、移送方向D1における被選別物90の一方側の端部付近に不良部分が位置している場合、被選別物90に対する噴射範囲A1(これは、第1の制御によって拡張されていない)は、被選別物90と十分な広さで重複するので、小接触事象は生じにくい。また、
図8の右側に示すように、不良部分が小さく、かつ、移送方向D1における被選別物90の一方側の端部付近に不良部分が位置している場合、従来の選別処理における噴射範囲A11と被選別物90との重複部分は比較的小さいので、小接触事象が生じるおそれがある。一方、本実施形態によれば、第1の制御によってエア53の噴射期間が
図8の左側の場合と比べて長く設定され、その結果、移送方向D1方向に拡張された噴射範囲A2が設定される。したがって、被選別物90とエア53との接触範囲が拡張され、小接触事象の発生が抑制される。
【0055】
また、
図9の左側に示すように、不良部分がある程度大きく、かつ、直交方向D2における被選別物90の一方側の端部付近に不良部分が位置している場合、被選別物90に対する噴射範囲A1(これは、第1の制御または第2の制御によって拡張されていない)は、被選別物90と十分な広さで重複するので、小接触事象は生じにくい。また、
図9の右側に示すように、不良部分が小さく、かつ、直交方向D2における被選別物90の一方側の端部付近に不良部分が位置している場合、従来の選別処理における噴射範囲A11と被選別物90との重複部分は非常に小さいので、小接触事象が生じるおそれがある。一方、本実施形態によれば、第1の制御によってエア53の噴射期間が
図9の左側の場合と比べて長く設定されるとともに、第2の制御によって要噴射ノズルが二つに増えるので、移送方向D1および直交方向D2の両方に拡張された噴射範囲A2が設定される。したがって、被選別物90とエア53との接触範囲が拡張され、小接触事象の発生が抑制される。
【0056】
代替実施形態では、第1の制御において、不良部分のディメンションの値が閾値以下である場合(
図7のステップS161:YES)、ディメンションの値が小さいほど噴射期間が段階的に長くなるように、噴射期間が可変に設定されてもよい。この場合、噴射期間は、線形的に変化するように設定されてもよいし、階段状に変化するように設定されてもよい。
【0057】
代替実施形態では、第2の制御において、不良部分のディメンションの値が閾値以下である場合(
図4のステップS151:YES)、ディメンションの値が小さいほどオーバラップ領域(
図6の例では、オーバラップ領域87a,87b)が段階的に大きくなるように、オーバラップ領域が可変に設定されてもよい。この場合、オーバラップ領域は、線形的に変化するように設定されてもよいし、階段状に変化するように設定されてもよい。
【0058】
代替実施形態では、第1の制御は、不良部分の中心を基準として行われる構成に限られない。第1の制御において、不良部分のうちの所定部分に対してエア53を噴射するタイミングが噴射期間の中央に位置するように、噴射期間の開始および終了のタイミングが設定されてもよい。第1の制御の基準となる所定部分は、上述の実施形態では、不良部分の中心として設定されたが、代替実施形態では、不良部分のうちから予め任意に選択され、設定され得る。
【0059】
代替実施形態では、第2の制御は、不良部分の中心を基準として行われる構成に限られない。第2の制御において、ステップS154(
図4参照)に代えて、不良部分のうちの所定部分(換言すれば、所定画素)が属する噴射担当範囲86に対応するノズル51が要噴射ノズルとして決定されてもよい。所定部分は、不良部分のうちの任意の部分として設定されてもよい。つまり、不良部分のうちのいずれかの部分が属する全ての噴射担当範囲86に対応するノズル51が要噴射ノズルとして決定されてもよい。この場合、例えば、不良部分の全体が二つの噴射担当範囲86に亘って存在している場合、不良部分の中心がオーバラップ領域に存在するか否かにかかわらず、二つの噴射担当範囲86に対応する二つのノズル51からエア53が噴射されることになる。この代替実施形態によれば、互いに隣接する二つのノズル51からエアが噴射される機会が増え、不良部分を有する被選別物90の除去率が向上する。したがって、より良質な製品を得ることができる。ユーザが歩留りを優先するか、それとも品質を優先するか、に応じて、この代替実施形態による構成と、
図4に示した構成と、の間で制御モードを切換え可能にコントローラ80が構成されてもよい。ただし、第2の制御の基準となる所定部分は、不良部分のうちから予め任意に選択され、設定され得る。
【0060】
代替実施形態では、不良部分のディメンションの検出(
図2のステップS130)において、画像のうちの移送方向D1の端部に不良部分を表す画素が存在する場合、コントローラ80は、当該画像の一つ前、または、一つ後に入力される画像も参照して、複数の画像間での不良部分の連続性を判断してもよい。連続性がある場合には、複数の画像に亘って不良部分の外郭を決定し、それに基づいて不良部分のディメンションが検出されてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0062】
例えば、上述したフローチャートは、一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、フローチャートを構成する各処理は、処理順序の変更や、等価な処理への変更が可能である。
【0063】
さらに、上述した第1の制御および第2の制御のうちの一方のみが単独で採用されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10...光学式選別機
30a,30b...光源
31a,31b...光
40a,40b...光学センサ
50...選別部
51,51a,51b,51c...ノズル
52,52a,52b,52c...電磁バルブ
53...エア
71...貯留タンク
72...フィーダ
73...シュート
74...良品排出樋
75...不良品排出樋
80...コントローラ
81...検出部
82...噴射制御部
84...中心
85...画像
86a,86b,86c...噴射担当範囲
87a,87b...オーバラップ領域
90,91,92...被選別物
95...移送経路