(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】塗装排気処理設備および塗装排気処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/72 20060101AFI20240305BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20240305BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240305BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20240305BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B01D53/72 ZAB
F24F3/044
F24F5/00 Z
B01D53/83
B01D45/12
(21)【出願番号】P 2021017067
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】浦本 祐一
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-051932(JP,A)
【文献】特開昭50-036363(JP,A)
【文献】特開2007-247922(JP,A)
【文献】特開2004-066505(JP,A)
【文献】特開2019-155281(JP,A)
【文献】特開2007-177779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/031205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/72
F24F 3/044
F24F 5/00
B01D 53/83
B01D 45/12
B05B 14/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物の塗装処理を行う塗装ブースと、
上記塗装ブースで塗装処理された上記被塗物の乾燥処理を行う乾燥炉と、
上記塗装ブースの塗装排気を吸着処理及び脱着処理によってVOC希薄ガスとVOC濃縮ガスとに分離する吸着脱着装置と、
上記吸着脱着装置で分離された上記VOC希薄ガスを空調処理する空調装置と、
上記吸着脱着装置で分離された上記VOC濃縮ガスを上記乾燥炉の塗装排気に含まれるVOCとともに燃焼させる燃焼装置と、
を備え、
上記空調装置で生成された空調風が上記塗装ブースに供給され、上記燃焼装置で生成された燃焼ガスが上記吸着脱着装置で脱着処理用ガスとして使用されるように構成されて
おり、
上記乾燥炉の上記塗装排気を吸気する吸気部と、上記吸気部で吸気した上記塗装排気を旋回させながら冷却する旋回分離部と、上記旋回分離部で上記塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスをサイクロン排気として排気する排気部と、を有するサイクロン装置を備え、
上記サイクロン装置の上記排気部から排気された上記サイクロン排気が上記燃焼装置に供給されるように構成されている、塗装排気処理設備。
【請求項2】
上記燃焼装置は、上記VOC濃縮ガス及び上記サイクロン排気を燃料として回転駆動されるガスタービンと、上記ガスタービンの動力で駆動される発電機と、を有し、上記発電機が上記空調装置と上記サイクロン装置とで兼用の電動式の冷却器の電源として使用されるように構成されている、請求項1に記載の塗装排気処理設備。
【請求項3】
被塗物の塗装処理を行う塗装ブースの塗装排気を吸着脱着装置における吸着処理及び脱着処理によってVOC希薄ガスとVOC濃縮ガスとに分離し、
分離した上記VOC希薄ガスを空調装置で空調処理して上記塗装ブースに供給し、
分離した上記VOC濃縮ガスを、上記塗装ブースで塗装処理された上記被塗物の乾燥処理を行う乾燥炉の塗装排気に含まれるVOCとともに燃焼装置で燃焼させ、上記燃焼装置で生成した燃焼ガスを上記吸着脱着装置で脱着処理用ガスとして使用
し、
サイクロン装置に上記乾燥炉の上記塗装排気を吸気して旋回させながら冷却し、上記塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスをサイクロン排気として上記サイクロン装置から排気して上記燃焼装置に供給する、塗装排気処理方法。
【請求項4】
上記燃焼装置は、上記VOC濃縮ガス及び上記サイクロン排気を燃料として回転駆動されるガスタービンと、上記ガスタービンの動力で駆動される発電機と、を有し、上記発電機を上記空調装置と上記サイクロン装置とで兼用の電動式の冷却器の電源として使用する、請求項
3に記載の塗装排気処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装排気を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディやその関連部品などの塗装設備では、防錆や美観の向上を図る目的で被塗物の表面に塗装処理が施される。この塗装処理は、塗装ブースで行われるのが一般的である。このとき、塗装ブースは、被塗物の塗装品質を確保するために、空調装置から供給される空調風によって温度、湿度、清浄度などの条件が一定以上のレベルとなるように維持される。
【0003】
塗装ブースで生じる常温の塗装排気には、塗料に起因する揮発性有機化合物(以下、「VOC(Volatile Organic Compounds)」ともいう。)が含まれている。塗装処理におけるエネルギー効率を高めるためには、この塗装排気を再び塗装ブースに戻すのが好ましいが、塗装ブースでVOCが濃縮するのを避けることを考慮した場合、塗装排気をそのまま塗装ブースに戻すのが難しい。そこで、例えば、下記の特許文献1に開示の排気リサイクルシステムのような構造を利用することができる。この場合、塗装ブースの塗装排気を浄化空気に処理して塗装ブースに戻すことができる。これにより、塗装排気を燃焼処理してそのまま屋外排気するような場合に比べて、塗装処理におけるエネルギー効率を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記塗装設備では、塗装ブースで塗装処理された後のワークは、乾燥炉の炉内空間で加熱によって乾燥処理される。このとき、乾燥炉の炉内空間で生じる高温の塗装排気にも、塗装ブースの場合と同様に塗料に起因するVOCが含まれている。VOCは乾燥によって臭気を伴う性質を有するため、この塗装排気を乾燥炉からそのまま屋外に排出するのが難しい。このため、乾燥炉の塗装排気に含まれるVOCを除去する処理を要する。
【0006】
そこで、本発明者は、塗装ブースと乾燥炉のそれぞれで発生する不要なVOCを効率良く処理するという共通の課題に鑑みて、塗装ブースにおける塗装処理で生じる塗装排気の処理のみならず、その後の乾燥炉における乾燥処理で生じる塗装排気の処理をも包括的に考慮した塗装排気処理技術を構築することに着目した。
【0007】
本発明は、被塗物の塗装処理及び乾燥処理で生じる塗装排気を効率良く処理するのに有効な塗装排気処理技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
被塗物の塗装処理を行う塗装ブースと、
上記塗装ブースで塗装処理された上記被塗物の乾燥処理を行う乾燥炉と、
上記塗装ブースの塗装排気を吸着処理及び脱着処理によってVOC希薄ガスとVOC濃縮ガスとに分離する吸着脱着装置と、
上記吸着脱着装置で分離された上記VOC希薄ガスを空調処理する空調装置と、
上記吸着脱着装置で分離された上記VOC濃縮ガスを上記乾燥炉の塗装排気に含まれるVOCとともに燃焼させる燃焼装置と、
を備え、
上記空調装置で生成された空調風が上記塗装ブースに供給され、上記燃焼装置で生成された燃焼ガスが上記吸着脱着装置で脱着処理用ガスとして使用されるように構成されており、
上記乾燥炉の上記塗装排気を吸気する吸気部と、上記吸気部で吸気した上記塗装排気を旋回させながら冷却する旋回分離部と、上記旋回分離部で上記塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスをサイクロン排気として排気する排気部と、を有するサイクロン装置を備え、
上記サイクロン装置の上記排気部から排気された上記サイクロン排気が上記燃焼装置に供給されるように構成されている、塗装排気処理設備、
にある。
【0009】
本発明の別態様は、
被塗物の塗装処理を行う塗装ブースの塗装排気を吸着脱着装置における吸着処理及び脱着処理によってVOC希薄ガスとVOC濃縮ガスとに分離し、
分離した上記VOC希薄ガスを空調装置で空調処理して上記塗装ブースに供給し、
分離した上記VOC濃縮ガスを、上記塗装ブースで塗装処理された上記被塗物の乾燥処理を行う乾燥炉の塗装排気に含まれるVOCとともに燃焼装置で燃焼させ、上記燃焼装置で生成した燃焼ガスを上記吸着脱着装置で脱着処理用ガスとして使用し、
サイクロン装置に上記乾燥炉の上記塗装排気を吸気して旋回させながら冷却し、上記塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスをサイクロン排気として上記サイクロン装置から排気して上記燃焼装置に供給する、塗装排気処理方法、
にある。
【発明の効果】
【0010】
上記の各態様において、塗装ブースの塗装排気に含まれるVOCは、吸着脱着装置における吸着処理及び脱着処理によって、VOC濃度が低い希薄ガスと、VOC濃度が高いVOC濃縮ガスと、に分離される。
【0011】
ここで、VOC希薄ガスは、空調装置で空調処理して塗装ブースに空調風として供給される。このため、塗装ブースでは塗装排気の一部を循環利用することができ、塗装排気を燃焼処理してそのまま屋外排気するような場合に比べてエネルギー効率を高めることができる。
【0012】
一方で、VOC濃縮ガスは、乾燥炉の塗装排気に含まれるVOCとともに燃焼装置で燃焼される。そして、燃焼装置で生成した燃焼ガスが脱着処理で脱着処理用ガスとして使用される。このため、塗装ブース及び乾燥炉のそれぞれで生じるVOCを燃焼装置で分解処理するとともに、燃焼装置で生成した燃焼ガスを、VOCをVOC希薄ガスとVOC濃縮ガスとに分離するときに使用する脱着処理用ガスとして有効利用することができる。
【0013】
したがって、上記の各態様では、塗装ブースにおける塗装処理で生じる塗装排気の処理のみならず、その後の乾燥炉における乾燥処理で生じる塗装排気の処理をも包括的に考慮した塗装排気処理が可能になる。
【0014】
以上のごとく、上記の各態様によれば、被塗物の塗装処理及び乾燥処理で生じる塗装排気を効率良く処理するのに有効な塗装排気処理技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】
図3中のサイクロン容器においてヤニが分離される様子を示す斜視図。
【
図7】実施形態1の塗装排気設備におけるガスフローを示す図。
【
図8】実施形態2の塗装排気設備の濃縮装置の内部構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記の各態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0017】
上記態様の塗装排気処理設備は、上記乾燥炉の上記塗装排気を吸気する吸気部と、上記吸気部で吸気した上記塗装排気を旋回させながら冷却する旋回分離部と、上記旋回分離部で上記塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスをサイクロン排気として排気する排気部と、を有するサイクロン装置を備え、
上記サイクロン装置の上記排気部から排気された上記サイクロン排気が上記燃焼装置に供給されるように構成されているのが好ましい。
【0018】
この塗装排気処理設備によれば、乾燥炉の高温の塗装排気がサイクロン装置の吸気部から旋回分離部に吸気され、旋回分離部で旋回しながら冷却される。これにより、高温の塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスが得られる。このとき、旋回流付与によるVOCの遠心分離効果と、ヤニの冷却による凝縮分離効果と、の相乗効果によって、高温の塗装排気からVOCを効率良く分離して回収することができる。
【0019】
上記態様の塗装排気処理設備において、上記燃焼装置は、上記VOC濃縮ガス及び上記サイクロン排気を燃料として回転駆動されるガスタービンと、上記ガスタービンの動力で駆動される発電機と、を有し、上記発電機が上記空調装置と上記サイクロン装置とで兼用の電動式の冷却器の電源として使用されるように構成されているのが好ましい。
【0020】
この塗装排気処理設備によれば、別の動力源としても使用されるガスタービンを利用してVOCを燃焼させることができる。また、VOC含有ガスを冷却した状態でガスタービンに供給することでガスタービンの給気温度が上がるのを抑制でき、VOC含有ガスの燃焼時における膨張量が大きくなることでタービン効率を高めることができる。また、ガスタービンでVOC含有ガスを主燃料に対する副燃料として使用するときには、燃料の一部を賄うことができ、主燃料の使用量を削減することができる。それに加えて、ガスタービンの動力で駆動される発電機を、空調装置とサイクロン装置で兼用の冷却器の電源に使用することで必要になる買電量を削減することができる。
【0021】
上記態様の塗装排気処理方法では、サイクロン装置に上記乾燥炉の上記塗装排気を吸気して旋回させながら冷却し、上記塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスをサイクロン排気として上記サイクロン装置から排気して上記燃焼装置に供給するのが好ましい。
【0022】
この塗装排気処理方法によれば、乾燥炉の高温の塗装排気をサイクロン装置に吸気して旋回させながら冷却する。これにより、高温の塗装排気からヤニが分離されたVOC含有ガスが得られる。このとき、旋回流付与によるVOCの遠心分離効果と、ヤニの冷却による凝縮分離効果と、の相乗効果によって、高温の塗装排気からVOCを効率良く分離して回収することができる。
【0023】
上記態様の塗装排気処理方法では、上記燃焼装置は、上記VOC濃縮ガス及び上記サイクロン排気を燃料として回転駆動されるガスタービンと、上記ガスタービンの動力で駆動される発電機と、を有し、上記発電機を上記空調装置と上記サイクロン装置とで兼用の電動式の冷却器の電源として使用するのが好ましい。
【0024】
この塗装排気処理方法によれば、別の動力源としても使用されるガスタービンを利用してVOCを燃焼させることができる。また、VOC含有ガスを冷却した状態でガスタービンに供給することでガスタービンの給気温度が上がるのを抑制でき、VOC含有ガスの燃焼時における膨張量が大きくすることによってタービン効率を高めることができる。また、ガスタービンでVOC含有ガスを主燃料に対する副燃料として使用するときには、燃料の一部を賄うことができ、主燃料の使用量を削減することができる。それに加えて、ガスタービンの動力で駆動される発電機を、空調装置とサイクロン装置で兼用の冷却器の電源に使用することで必要になる買電量を削減することができる。
【0025】
以下、塗装ブース及び乾燥炉を含む塗装排気処理設備と、この塗装排気処理設備を用いて行う塗装排気処理方法の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、塗装排気処理設備を構成するサイクロン装置の設置状態において、このサイクロン装置の水平方向を矢印Xで示し、その垂直方向を矢印Yで示し、その周方向を矢印Zで示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の塗装排気処理設備1は、自動車ボディの製造に係る設備である。この塗装排気処理設備1は、概して、塗装ブース2と、乾燥炉3と、空調装置4と、フィルター装置5と、濃縮装置10と、サイクロン装置20と、燃焼装置30と、を備えている。
【0028】
塗装ブース2は、自動車ボディである被塗物Wの表面を塗装処理するために区画された処理空間2aを有する。この塗装ブース2では、常温状態で処理空間2aに置かれた被塗物Wに向けて塗料噴射装置(図示省略)から塗料が噴射される。処理空間2aでは、塗料に起因するガスが発生する。このガスは、典型的には、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドを主成分とする揮発性有機化合物(VOC)と塗料ミストとを含有している。塗装処理後の被塗物Wは、塗装ブース2から搬出されて乾燥炉3に搬入される。
【0029】
乾燥炉3は、塗装ブース2で塗装処理された被塗物Wを乾燥処理するために区画された炉内空間3aを有する。この乾燥炉3の炉内空間3aに搬入された被塗物Wは、高温条件下で乾燥処理がなされる。乾燥炉3は、典型的には、炉内空間3aの温度が120~170℃程度の高温状態で運転される。このため、乾燥炉3の炉内空間3aでは、塗料に起因する高温のガスが発生する。このガスは、炉内空間3aでガス化した煙状のものであり、塗装ブース2の場合と同様のVOCに加えて、ヤニを含有している。以下の説明では、ガス状や液状のヤニ成分を、便宜上、単に「ヤニ」という。
【0030】
乾燥炉3の炉内空間3aのガスの一部は、燃焼バーナー7で液化天然ガス(以下、「LNG」という。)の燃焼により得られた燃焼ガスと混合された状態で吸気ファン3bにより吸気されることによって炉内空間3aを循環する。このときの循環ガスは、熱交換器3cを経由することによって、燃焼装置30で生成された燃焼ガスとの間で熱交換されて昇温される。熱交換器3cを設けることによって、燃焼バーナー7におけるLNGの消費量を低減できる。一方で、乾燥炉3の炉内空間3aのガスの残部は、排気ファン20aによりサイクロン装置20に吸気される。
【0031】
空調装置4は、濃縮装置10で分離されたVOC希薄ガスを空調処理する機能を有する。この空調装置4は、給気ファン4aと、ヒーター4bと、クーラー4cと、清浄フィルター4dと、を備えている。給気ファン4aは、空調処理後の空調風を塗装ブース2に供給するのに使用される。ヒーター4bと、クーラー4cと、清浄フィルター4dは、温度、湿度、清浄度などの条件が一定以上のレベルとなるような空調風を生成するのに使用される。
【0032】
フィルター装置5は、塗装ブース2の処理空間2aに接続されている。このフィルター装置5は、塗料ミストを除去するためのフィルター5aを内蔵している。フィルター装置5は、塗装ブース2と排気ファン6との間に介装されている。排気ファン6は、その上流側がフィルター装置5に接続され、その下流側が濃縮装置10に接続されている。このため、塗装ブース2の処理空間2aのガスは、排気ファン6の運転によってフィルター装置5のフィルター5aに流入し、フィルター5aで塗料ミストが除去された後のミスト除去ガスが濃縮装置10に流入する。
【0033】
濃縮装置10は、塗装ブース2の塗装排気であってフィルター装置5で塗料ミストが除去された後のミスト除去ガス(VOC含有ガス)を、吸着処理及び脱着処理によってVOC希薄ガスとVOC濃縮ガスとに分離する機能を有する吸着脱着装置である。この濃縮装置10における吸着処理では、VOCを吸着材に一旦吸着させることで、VOCが低濃度に抑えられたVOC希薄ガスを生成させる。これに対して、この濃縮装置10における脱着処理では、VOCを吸着した吸着材に脱着処理用ガスを作用させて吸着材からVOCを離脱させることで、VOCが高濃度で含まれるVOC濃縮ガスを生成させる。この濃縮装置10の具体的な構造については後述する。
【0034】
濃縮装置10における吸着処理で分離されたVOC希薄ガスは、給気ファン4aにより形成されるガス流れによって空調装置4に流入して空調処理される。その後、空調装置4で生成された空調処理後の空調風、即ちVOC希薄ガスが塗装ブース2に供給されることによって、塗装ブース2の塗装排気が循環使用(リサイクル)される。このとき、塗装ブース2にVOC希薄ガスを戻すことで、塗装ブース2でVOCが濃縮するのを抑制することができる。
【0035】
濃縮装置10における脱着処理で分離されたVOC濃縮ガスは、サイクロン装置20で生成されたサイクロン排気と混合された状態で燃焼装置30に流入して燃焼処理される。詳細については後述するが、サイクロン装置20では、乾燥炉3の塗装排気がVOCを含むサイクロン排気とヤニとに分離される。その後、燃焼装置30で生成した燃焼ガスの一部は、濃縮装置10に供給されて脱着処理用ガスとして使用される。燃焼装置30で生成した燃焼ガスの残部は、LNGとともに燃焼バーナー8の燃料として使用される。
【0036】
燃焼装置30は、前述のように、濃縮装置10で分離されたVOC濃縮ガスを、サイクロン装置20で生成されたサイクロン排気(即ち、乾燥炉3の塗装排気に含まれるVOCを主体とするVOC含有ガス)とともに燃焼させるためのものである。この燃焼装置30は、ガスタービン31及び発電機32を有する「ガスタービン発電システム」及び「コージェネレーションシステム」を構成している。
【0037】
ガスタービン31は、既知の構造を有するものであり、特に図示しないものの、ガスを圧縮して効率を高める圧縮機と、この圧縮機で圧縮したガスにLNGを噴射して燃焼させる燃焼器と、この燃焼器で生成した燃焼ガスのガス圧によって回転するタービンと、を有する。タービンの回転によって得られる動力は、一部が圧縮機の駆動に利用され、残りが別機器の駆動に利用される。このように、ガスタービン31は、ガスの燃焼のみを行う専用の燃焼装置ではなく、動力を出力することができる兼用の装置として構成されている。
【0038】
ガスタービン31で生成された燃焼ガスは、500℃程度の高温ガスであり、典型的には、水と二酸化炭素を主成分とするものである。この燃焼ガスは、臭気の要因に成り得るVOCが分解・除去された後のガスであり、臭気成分を含むものではなく、熱交換器3cを経由して燃焼バーナー8及び空調装置4で使用された後に屋外排気される。この場合、別の動力源としても使用されるガスタービン31を利用してVOCを燃焼させるため、脱臭処理のみに特化した専用の高価な設備を使用する場合に比べて設備コストを低く抑えることができる。
【0039】
発電機32は、ガスタービン31で得られた動力で駆動されて発電を行うものである。この発電機32は、冷凍機9に給電可能に接続されており、冷凍機9の電源として使用される。冷凍機9は、空調装置4のクーラー4cとサイクロン装置20のそれぞれに冷却水を供給可能に構成された電動式の冷却器である。また、特に図示しないものの、この発電機32は、吸気ファン3b、給気ファン4a、排気ファン6,20aのそれぞれに給電可能に接続されており、これらのファンの電源としても使用されるように構成されている。
【0040】
図2に示されるように、実施形態1の濃縮装置10は、吸着処理及び脱着処理を連続的に行うためのものであり、ハウジング(図示省略)に筒軸L1を中心として回転可能に収容された回転体11を有する。この回転体11は、筒内空間12を有する円筒状に構成されている。回転体11を構成する周方向の複数の吸着セル部11aは、活性炭やゼオライトなどの吸着材によって構成されており、且つ筒外側方から筒内へのガス流通を許容するガス流通空間を有する。
【0041】
フィルター装置5(
図1を参照)でフィルター処理された後のVOC含有ガスをミスト除去ガスGbとしたとき、筒軸L1を中心連続的に回転する回転体11の筒外側方からミスト除去ガスGbが供給される。ミスト除去ガスGbが回転体11を筒外側方から筒内へと流れるとき、このミスト除去ガスGbに含まれているVOCは、吸着領域に位置する各吸着セル部11aの吸着材に吸着される。
【0042】
濃縮装置10では、各吸着セル部11aの吸着材でVOCが除去された後のVOC除去ガス(吸着材にVOCが吸着されなかった残りのガス)をガスGcとしたとき、このガスGcは、回転体11の筒内空間12を筒軸L1に沿って筒外へと流出する。回転体11の回転に伴って各吸着セル部11aが脱着領域に達したとき、この吸着セル部11aに筒内空間12から回転体11の径方向外方へと高温の脱着処理用ガスGdが供給される。これにより、各吸着セル部11aに吸着されていたVOCの脱着作用(剥離作用)が得られ、濃縮装置10からVOC濃縮ガスGeが排出される。
【0043】
このような濃縮装置10は、ミスト除去ガスGbをVOC希薄ガスGcとVOC濃縮ガスGeとに分離するための構造が簡単であり、この分離のための処理を安価に行うことを可能とする。また、燃焼装置30を利用して得られる高温の脱着処理用ガスGdを脱着処理に使用するため、VOCの脱着作用(剥離作用)を高めることができる。
【0044】
図3に示されるように、サイクロン装置20は、吸気部21と、旋回分離部23と、排気部22と、を有する。
【0045】
吸気部21は、乾燥炉3の炉内空間3aから塗装排気Giを旋回分離部23に吸気するための部位である。塗装排気Giは、VOCを含有する高温ガスである。排気部22は、旋回分離部23からサイクロン排気Gjを排気するための部位である。サイクロン排気Gjは、VOCを含有し且つヤニが除去された後のガスである。ヤニは、塗料に含まれている硬化剤(イソシアネート)やブロック剤(アルコール類、オキシム類)が酸化・重合することによって形成されたものである。このヤニは、高温状態で気化してヒューム状物質となる一方で、低温状態になると凝縮して液化或いは固化する特性を有する。
【0046】
旋回分離部23は、吸気部21で吸気した塗装排気を旋回させながら冷却するための部位である。この旋回分離部23は、その温度が例えば80~100℃を下回るように制御されるのが好ましい。これにより、サイクロン排気Gjは、その温度が旋回分離部23で冷却前の塗装排気Giの温度を下回る。
【0047】
旋回分離部23は、サイクロン容器24を備えている。このサイクロン容器24は、自らの回転を伴わない固定式の円筒状容器であり、主に金属材料からなる。サイクロン容器24は、垂直方向Yを筒軸L2が延びる筒軸方向として配置されている。このサイクロン容器24の筒内空間である旋回処理空間25は、配管形状を有する吸気部21と、配管形状を有する排気部22と、のそれぞれに連通している。
【0048】
吸気部21は、水平方向Xに沿って延びており、旋回処理空間25に連通するようにサイクロン容器24の側壁部に接続されている。排気部22は、筒軸L2上を垂直方向Yに延びており、旋回処理空間25に連通するようにサイクロン容器24の上壁部に接続されている。
【0049】
排気ファン20aは、その吸引作用によって、サイクロン装置20の吸気部21から排気部22に向かう気流を発生させる送風装置である。このとき、この排気ファン20aは、乾燥炉3の炉内空間3aから吸気部21に向かう塗装排気Giのガス流れを形成させる機能と、排気部22から燃焼装置30に向かうサイクロン排気Gjのガス流れを形成させる機能と、を兼務するように構成されている。
【0050】
サイクロン容器24は、吸気部21が接続された大径筒部24aと、大径筒部24aよりも筒径が小さい小径筒部24dと、大径筒部24aから小径筒部24dに向けて内径が漸減するテーパー形状の円錐筒部24bと、を有する。
【0051】
サイクロン容器24の内壁面24cは、高温の塗装排気Giを冷却するための冷却面として構成されている。このため、サイクロン容器24の内壁面24cは、熱伝導性の高い材料によって構成されるのが好ましく、また必要に応じてこの内壁面24cに熱伝導性の高いコーティング層を設けることもできる。
【0052】
サイクロン容器24は、小径筒部24dが最低所に配置されるように構成されている。そして、この小径筒部24dに設けられたヤニ排出口24eがヤニ受け容器26に連通している。このため、サイクロン容器24の旋回処理空間25で旋回しながら内壁面24cで冷却されたヤニ成分は、液化してヤニNとして内壁面24cに付着してその自重により小径筒部24dまで流下する。そして、ヤニNは小径筒部24dのヤニ排出口24eを通じてヤニ受け容器26に回収されるようになっている。
【0053】
図3及び
図4に示されるように、サイクロン容器24の外周には円筒状の冷却容器27が設けられている。この冷却容器27は、水平方向Xについての断面形状が円環状であり、筒軸L2を中心としてサイクロン容器24の筒壁と同心円状の筒壁を有する。
【0054】
サイクロン容器24の外周面と冷却容器27の内周面とで区画される環状の空間は、冷媒としての冷却水Cを滞留させるための冷媒滞留空間27aとなっている。このため、サイクロン容器24は、冷媒滞留空間27aに滞留する冷却水Cとの間の熱移動を利用して冷却される。
【0055】
冷媒滞留空間27aは、冷媒流出管27bを介して冷凍機9の冷媒流入側に接続されており、且つ冷媒流入管27cを介して冷凍機9の冷媒流出側に接続されている。冷凍機9で冷却された冷却水Cは、冷媒流入管27cを通じて冷媒滞留空間27aに連続的に流入する。また、冷媒滞留空間27aで温められた冷却水Cは、冷媒流出管27bを通じて冷凍機9に連続的に回収される。これにより、冷媒滞留空間27aと冷凍機9との間で冷却水Cを循環させることができる。
【0056】
なお、冷媒滞留空間27aに滞留させる冷却媒体の種類は特に限定されるものではなく、冷却水Cを、必要に応じてフッ化炭素系冷媒、のフロン系冷媒、アルコール系冷媒、ケトン系冷媒等の冷媒に変更することもできる。
【0057】
図5に示されるように、排気ファン20aの吸引作用によって、サイクロン容器24の旋回処理空間25に吸気部21から排気部22に向かう気流が発生する。これにより、乾燥炉3の炉内空間3aからの塗装排気Giは、吸気部21を通じてサイクロン容器24の旋回処理空間25に吸気され、旋回処理空間25をサイクロン容器24の周方向Zに沿って旋回する。より具体的に説明すると、塗装排気Giは、サイクロン容器24の内壁面24cに沿って旋回流Saを形成し、流速を高めながら円錐筒部24bを大径筒部24a側から小径筒部24d側へと流れる。
【0058】
サイクロン容器24の内壁面24cは、冷却容器27の冷媒滞留空間27aに滞留した冷却水Cによって冷やされた冷却面となっているため、塗装排気Giは、旋回時に内壁面24cに接触して冷却され、この塗装排気Giに含まれているヤニNが凝縮して液化する。そして、この塗装排気Giは、比重差によって液化したヤニNとサイクロン排気Gjとに遠心分離される。
【0059】
図5及び
図6に示されるように、ヤニNは、旋回流Saによる遠心力Fを受けて内壁面24cに押し付けられて付着する。特に、大径筒部24aから小径筒部24dに向かうにつれて旋回径が小さくなるため、ヤニNに作用する遠心力Fが強まる。このため、小径筒部24dに向かうにしたがってヤニNが内壁面24cに付着し易くなる。そして、内壁面24cに付着したり旋回処理空間25を下降したりしたヤニNは、重力にしたがって小径筒部24dのヤニ排出口24eから排出されてヤニ受け容器26に回収される。
【0060】
サイクロン容器24の旋回処理空間25における塗装排気Giの流速は、旋回流Saの中心付近の領域の方がその周りの領域よりも小さい。このため、この領域においては排気ファン20aによる吸引力の影響を受け易い。従って、塗装排気Giから遠心分離された後のサイクロン排気Gjは、ヤニNに比べて比重が小さいため、旋回流Saの中心付近の領域を排気部22に向けて直線的に流れる直進流Sbを形成する。燃焼装置30に供給されるサイクロン排気Gjは、サイクロン容器24で予めヤニNが除去されるため、ガスタービン31がヤニNで汚れるのを防ぐことができる。
【0061】
次に、上記構成の塗装排気処理装置1を使用した塗装排気処理方法について、
図7を参照しながら説明する。
【0062】
図7に示されるように、塗装ブース2で生じた常温の塗装排気Gaをフィルター装置5で処理することによって塗装排気Gaから塗料ミストMを除去する。その後、ミスト除去ガスGbを濃縮装置10で処理する。これにより、塗装排気Gaに含まれるVOCを主体とするミスト除去ガスGbを、吸着処理及び脱着処理によってVOC希薄ガスGcとVOC濃縮ガスGeとに分離する。
【0063】
乾燥炉3で生じた高温の塗装排気Giをサイクロン装置20で処理することによって塗装排気GiからヤニNを除去する。サイクロン装置20でヤニNを除去した後のサイクロン排気Gjを燃焼装置30に供給する。
【0064】
濃縮装置10で分離したVOC希薄ガスGeを空調装置4に供給し、この空調装置4で空調処理した後の空調風Gfを塗装ブース2に供給する。これにより、塗装排気Gaに起因する空調風Gfを常温のまま塗装ブース2で使用でき、所望の空調条件下で被塗物Wの塗装処理を行うことができる。
【0065】
一方で、濃縮装置10で分離したVOC濃縮ガスGeを、乾燥炉3の塗装排気Giに含まれるVOCを主体とするVOC含有ガス(サイクロン装置20のサイクロン排気Gj)とともに燃焼装置30で燃焼させる。燃焼装置30では、VOC濃縮ガスGe及びサイクロン排気Gjを燃料としてガスタービン31回転駆動し、このガスタービン31の動力で発電機32を駆動する。
【0066】
そして、燃焼装置30で生成した高温の燃焼ガスGhを、熱交換器3cにおいて乾燥炉3の塗装排気Giとの間で熱交換することによって、乾燥炉3の炉内空間3aの昇温に利用する。これにより、乾燥炉3の炉内空間3aを所定温度まで昇温して被塗物Wの乾燥処理を行うことができる。
【0067】
燃焼ガスGhの一部は、濃縮装置10における脱着処理で脱着処理用ガスGdとして使用する。燃焼ガスGhの残部は、燃焼バーナー8で加温させて加温用ガスGgとして空調装置4のヒーター4bで使用する。
【0068】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0069】
実施形態1において、塗装ブース2の塗装排気Gaに含まれるVOCを主体とするミスト除去ガスGbは、濃縮装置10における吸着処理及び脱着処理によって、VOC濃度が低い希薄ガスGcと、VOC濃度が高いVOC濃縮ガスGeと、に分離される。
【0070】
ここで、VOC希薄ガスGcは、空調装置4で空調処理して塗装ブース2に空調風Gfとして供給される。このため、塗装ブース2では塗装排気Gaの一部を循環利用することができ、塗装排気Gaをそのまま屋外排気するような場合に比べてエネルギー効率を高めることができる。
【0071】
一方で、VOC濃縮ガスGeは、乾燥炉3の塗装排気Giに含まれるVOCとともに燃焼装置30で燃焼される。そして、燃焼装置30で生成した燃焼ガスGhが脱着処理で脱着処理用ガスGdとして使用される。このため、塗装ブース2及び乾燥炉3のそれぞれで生じるVOCを燃焼装置30で分解処理するとともに、燃焼装置30で生成した燃焼ガスGhを、ミスト除去ガスGbをVOC希薄ガスGcとVOC濃縮ガスGeとに分離するときに使用する脱着処理用ガスGdとして有効利用することができる。
【0072】
したがって、塗装ブース2における塗装処理で生じる塗装排気Gaの処理のみならず、その後の乾燥炉3における乾燥処理で生じる塗装排気Giの処理をも包括的に考慮した塗装排気処理が可能になる。
【0073】
従って、上述の実施形態1によれば、被塗物Wの塗装処理及び乾燥処理で生じる塗装排気を効率良く処理するのに有効な塗装排気処理技術を提供することができる。
【0074】
上述の実施形態1によれば、乾燥炉3の高温の塗装排気Giがサイクロン装置20に吸気され旋回しながら冷却される。これにより、高温の塗装排気GiからヤニNが分離されたVOC含有ガス(サイクロン排気Gj)が得られる。このとき、旋回流付与によるVOCの遠心分離効果と、ヤニNの冷却による凝縮分離効果と、の相乗効果によって、高温の塗装排気GiからVOCを効率良く分離して回収することができる。
【0075】
上述の実施形態1によれば、別の動力源としても使用されるガスタービン31を利用してVOCを燃焼させることができる。また、VOC含有ガスを冷却した状態でガスタービン31に供給することでガスタービン31の給気温度が上がるのを抑制でき、VOC含有ガスの燃焼時における膨張量が大きくなることでタービン効率を高めることができる。また、ガスタービン31でVOC含有ガスを主燃料であるLNGに対する副燃料として使用するときには、燃料の一部を賄うことができ、LNGの使用量を削減することができる。それに加えて、ガスタービン31の動力で駆動される発電機32を、空調装置4とサイクロン装置20で兼用の冷凍機9の電源に使用することで必要になる買電量を削減することができる。
【0076】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0077】
(実施形態2)
図8に示されるように、実施形態2の塗装排気処理設備101は、吸着脱着装置としての濃縮装置110の構造が実施形態1のものと相違している。
【0078】
実施形態2の濃縮装置110は、吸着処理及び脱着処理を連続的に行うものであり、ハウジング(図示省略)に筒軸L3を中心として回転可能に収容された回転体111を有する。この回転体111は、円柱状に構成されている。回転体111を構成する周方向の複数の吸着セル部111aは、活性炭やゼオライトなどの吸着材によって構成されており、且つ筒軸L3に沿う方向のガス流通を許容するガス流通空間を有する。
【0079】
濃縮装置110では、各吸着セル部111aの吸着材でVOCが除去された後のVOC除去ガスGcは、回転体111から筒軸L3に沿って流出する。回転体111の回転に伴って各吸着セル部111aが脱着領域に達したとき、この吸着セル部111aに高温の脱着処理用ガスGdが供給される。これにより、各吸着セル部111aに吸着されていたVOCの脱着作用が得られ、濃縮装置110からVOC濃縮ガスGeが排出される。
【0080】
その他の構成や方法は、実施形態1と同様である。
【0081】
実施形態2によれば、実施形態1の場合とは異なる構造の濃縮装置110を使用して、ミスト除去ガスGbをVOC希薄ガスGcとVOC濃縮ガスGeとに分離することができる。
【0082】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0083】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、各実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0084】
上述の実施形態の濃縮装置10,110では、回転体11,111の回転に伴って吸着領域と脱着領域が切り替わる場合について例示したが、これに代わる別構造を採用することもできる。例えば、互いに分離された2つの処理部を有する吸着脱着装置を使用する。この吸着脱着装置で、一方の処理部を吸着領域として吸着処理を行い、他方の処理部を脱着領域として脱着処理を行う。その後、バルブ切替によってガス供給先を一方の処理部から他方の処理部へと切り替えて、一方の処理部を吸着領域から脱着領域に変更し、且つ他方の処理部を脱着領域から吸着領域に変更する。このバルブ切替を繰り返すことによって、吸着処理及び脱着処理を連続的に行うことが可能になる。
【0085】
上述の実施形態のサイクロン装置20では、大径筒部24aと、円錐筒部24bと、小径筒部24dと、を有するサイクロン容器24を用いる場合について例示したが、このサイクロン容器24の構造はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更可能である。例えば、円錐筒部24bに相当する部位のみを有する構造や、大径筒部24a及び小径筒部24dの少なくとも一方に相当する部位のみを有する構造などを採用することもできる。また、サイクロン容器24は筒状であれば、その断面形状は、円形以外に、楕円形、三角形、四角形、多角形などであってもよい。さらに、サイクロン容器24は、筒軸L2が垂直方向Yに沿って延在した状態で配置される場合に代えて、筒軸L2が垂直方向Yに対して任意の角度で傾斜した状態で配置されてもよい。
【0086】
上述の実施形態では、分離ガスを燃焼させる燃焼装置30として、発電機32を伴うガスタービン31を使用する場合について例示したが、必要に応じて発電機32を省略することもできる。また、ガスタービン31に代えて、ガス燃焼によって出力を得ることができる内燃機関を採用することもできる。
【0087】
上述の実施形態では、塗装ブース2から排気される塗装排気Gaをフィルター装置5で処理した後に濃縮装置10,110に供給するガス供給構造について例示したが、塗装排気Gaに含まれる塗料ミストMが僅かである場合や、フィルター装置5以外の別手段によって予め塗料ミストMが除去される場合には、このガス供給構造に代えて、塗装排気Gaを濃縮装置10,110に直に供給する構造を採用することもできる。
【0088】
上述の実施形態では、乾燥炉3から排気される塗装排気Giをサイクロン装置20で処理した後に燃焼装置30に供給するガス供給構造について例示したが、塗装排気Giに含まれるヤニNが僅かである場合や、サイクロン装置20以外の別手段によって予めヤニNが除去される場合には、このガス供給構造に代えて、塗装排気Giを燃焼装置30に直に供給する構造を採用することもできる。
【0089】
上述の実施形態では、自動車ボディの製造に係る設備における塗装排気処理技術について例示したが、この塗装排気処理技術の本質的な特徴を、自動車ボディの製造とは別分野で使用される技術に適用することもできる。
【符号の説明】
【0090】
2 塗装ブース
3 乾燥炉
4 空調装置
9 冷凍機(電動式の冷却器)
10,110 濃縮装置(吸着脱着装置)
20 サイクロン装置
21 吸気部
22 排気部
23 旋回分離部
30 燃焼装置
31 ガスタービン
32 発電機
Ga 塗装ブースの塗装排気
Gh 燃焼ガス
Gi 乾燥炉の塗装排気
Gj サイクロン排気
N ヤニ