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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】尿素水供給システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240305BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240305BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/28 301C
F01N3/28 301G
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 400
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021018269
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121102
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】亀井 智昭
(72)【発明者】
【氏名】上野 友博
(72)【発明者】
【氏名】竹本 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】池田 純孝
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205363(JP,A)
【文献】特開2018-135776(JP,A)
【文献】特開2021-063489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0274420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/28
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)の排気通路(20)に設けられ、アンモニアを用いて排気中の窒素酸化物を浄化させる選択還元型の第1の触媒(21)と、第2の触媒(22)とを有する排気浄化装置(200)に用いられ、前記排気通路にアンモニアを生成するための尿素水を供給する尿素水供給システム(100)において、
前記排気通路における前記第1の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第1供給弁(11)と、
前記排気通路における前記第2の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第2供給弁(12)と、
前記尿素水を貯留する尿素水タンク(13)と、
前記尿素水タンクと、前記第1供給弁及び前記第2供給弁のそれぞれとを繋ぐように設けられ、前記尿素水が通過する供給通路(14)と、
前記尿素水タンクから前記供給通路に前記尿素水を圧送するポンプ(15)と、
前記尿素水の圧力値を検出する圧力検出部(16)と、
前記ポンプの駆動制御と前記第1供給弁及び前記第2供給弁の開閉制御とを実施する制御部(30)と、を備え、
前記供給通路は、途中で分岐しており、前記尿素水タンクから分岐点(P1)までに設けられる共通通路(14a)と、前記分岐点から前記第1供給弁までに設けられる第1供給通路(14b)と、前記分岐点から前記第2供給弁までに設けられる第2供給通路(14c)と、を有し、
前記第1供給通路の容積は、前記第2供給通路の容積よりも大きく構成されており、
前記制御部は、前記第2供給弁を閉弁させたまま前記第1供給弁を開弁させるとともに、前記尿素水を圧送するように前記ポンプを駆動させることにより、前記供給通路への尿素水の充填を開始し、その後、前記圧力検出部により検出された圧力値に基づいて、前記第1供給通路内への前記尿素水の充填完了を判定し、前記第1供給弁を閉弁させるものであって、
前記制御部は、前記第1供給弁を閉弁させた後、所定時間の経過後に、前記第2供給弁を開弁させ、前記第2供給通路内への尿素水の充填を開始させる尿素水供給システム。
【請求項2】
前記所定時間は、前記第1供給通路と前記第2供給通路との容量差に基づいて設定されている請求項に記載の尿素水供給システム。
【請求項3】
前記所定時間は、前記尿素水の温度に応じて変更される請求項1又は2に記載の尿素水供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力値が第1閾値(Th1)以上の場合、前記第1供給弁を閉弁させ、前記第2供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力値が第2閾値(Th2)より大きい場合、前記第2供給弁を閉弁させるように構成されており、
前記第2閾値は、前記第1閾値以上の値である請求項1~3のうちいずれか1項に記載の尿素水供給システム。
【請求項5】
内燃機関(10)の排気通路(20)に設けられ、アンモニアを用いて排気中の窒素酸化物を浄化させる選択還元型の第1の触媒(21)と、第2の触媒(22)とを有する排気浄化装置(200)に用いられ、前記排気通路にアンモニアを生成するための尿素水を供給する尿素水供給システム(100)において、
前記排気通路における前記第1の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第1供給弁(11)と、
前記排気通路における前記第2の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第2供給弁(12)と、
前記尿素水を貯留する尿素水タンク(13)と、
前記尿素水タンクと、前記第1供給弁及び前記第2供給弁のそれぞれとを繋ぐように設けられ、前記尿素水が通過する供給通路(14)と、
前記尿素水タンクから前記供給通路に前記尿素水を圧送するポンプ(15)と、
前記尿素水の圧力値を検出する圧力検出部(16)と、
前記ポンプの駆動制御と前記第1供給弁及び前記第2供給弁の開閉制御とを実施する制御部(30)と、を備え、
前記供給通路は、途中で分岐しており、前記尿素水タンクから分岐点(P1)までに設けられる共通通路(14a)と、前記分岐点から前記第1供給弁までに設けられる第1供給通路(14b)と、前記分岐点から前記第2供給弁までに設けられる第2供給通路(14c)と、を有し、
前記第1供給通路の容積は、前記第2供給通路の容積よりも大きく構成されており、
前記制御部は、前記第2供給弁を閉弁させたまま前記第1供給弁を開弁させるとともに、前記尿素水を圧送するように前記ポンプを駆動させることにより、前記供給通路への尿素水の充填を開始し、その後、前記圧力検出部により検出された圧力値に基づいて、前記第1供給通路内への前記尿素水の充填完了を判定し、前記第1供給弁を閉弁させるものであって、
前記制御部は、前記第1供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力値が第1閾値(Th1)以上の場合、前記第1供給弁を閉弁させ、前記第2供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力値が第2閾値(Th2)より大きい場合、前記第2供給弁を閉弁させるように構成されており、
前記第2閾値は、前記第1閾値以上の値である尿素水供給システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力変動量が第1閾値(Th11)以上の場合、前記第1供給弁を閉弁させ、前記第2供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力変動量が第2閾値(Th12)より大きい場合、前記第2供給弁を閉弁させるように構成されており、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい値である請求項1~のうちいずれか1項に記載の尿素水供給システム。
【請求項7】
内燃機関(10)の排気通路(20)に設けられ、アンモニアを用いて排気中の窒素酸化物を浄化させる選択還元型の第1の触媒(21)と、第2の触媒(22)とを有する排気浄化装置(200)に用いられ、前記排気通路にアンモニアを生成するための尿素水を供給する尿素水供給システム(100)において、
前記排気通路における前記第1の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第1供給弁(11)と、
前記排気通路における前記第2の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第2供給弁(12)と、
前記尿素水を貯留する尿素水タンク(13)と、
前記尿素水タンクと、前記第1供給弁及び前記第2供給弁のそれぞれとを繋ぐように設けられ、前記尿素水が通過する供給通路(14)と、
前記尿素水タンクから前記供給通路に前記尿素水を圧送するポンプ(15)と、
前記尿素水の圧力値を検出する圧力検出部(16)と、
前記ポンプの駆動制御と前記第1供給弁及び前記第2供給弁の開閉制御とを実施する制御部(30)と、を備え、
前記供給通路は、途中で分岐しており、前記尿素水タンクから分岐点(P1)までに設けられる共通通路(14a)と、前記分岐点から前記第1供給弁までに設けられる第1供給通路(14b)と、前記分岐点から前記第2供給弁までに設けられる第2供給通路(14c)と、を有し、
前記第1供給通路の容積は、前記第2供給通路の容積よりも大きく構成されており、
前記制御部は、前記第2供給弁を閉弁させたまま前記第1供給弁を開弁させるとともに、前記尿素水を圧送するように前記ポンプを駆動させることにより、前記供給通路への尿素水の充填を開始し、その後、前記圧力検出部により検出された圧力値に基づいて、前記第1供給通路内への前記尿素水の充填完了を判定し、前記第1供給弁を閉弁させるものであって、
前記制御部は、前記第1供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力変動量が第1閾値(Th11)以上の場合、前記第1供給弁を閉弁させ、前記第2供給弁の開弁後、前記圧力検出部により検出された前記尿素水の圧力変動量が第2閾値(Th12)より大きい場合、前記第2供給弁を閉弁させるように構成されており、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい値である尿素水供給システム。
【請求項8】
前記第1閾値及び前記第2閾値のうち少なくともいずれか一方は、前記尿素水の温度及び前記尿素水の濃度のうち少なくともいずれか一方の値に応じて変更される請求項4~7のうちいずれか1項に記載の尿素水供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水を供給する尿素水供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、選択還元(Selective Catalytic Reduction:SCR)触媒は、内燃機関の排気に含まれる窒素酸化物(NOx)等の浄化に用いられる代表的なNOx浄化触媒の1つとして知られている。SCR触媒には、NOxを浄化するための還元剤としてアンモニア(NH3)等が供給される。特許文献1には、2つのSCR触媒(NOx触媒)が並列又は直列に接続されて排気通路に配置された排気浄化装置において、各SCR触媒の上流に尿素水を供給する供給弁を有している尿素水供給システムについて開示されている。この特許文献1に記載されている通り、尿素水を供給経路に残留させたままにすることはできないので、特許文献1の尿素水供給システムは、供給しないときには供給通路から尿素水を回収し、供給する際に、供給通路に尿素水を充填するように構成されている。
【0003】
このような尿素水供給システムでは、各供給弁への供給経路の容量が異なると、充填の過不足に起因する尿素水供給の不具合が発生する可能性がある。そこで、この特許文献1では、ポンプ駆動時の2つの供給弁の開弁時間を好適に制御することにより、各供給弁への供給経路の容量が異なることに起因する尿素水供給の不具合を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6222168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1では、充填開始時に、容量の小さい第1供給通路に設けられた第1供給弁のみを開弁させている、又は第1供給弁とともに、容量の大きい第2供給通路に設けられた第2供給弁を開弁させている。そして、第2供給通路よりも先に第1供給通路に尿素水が充填されたことを、供給通路内又はポンプ内の圧力値に基づいて判断し、第1供給弁を閉弁させている。
【0006】
しかしながら、このように容量の小さい第1供給通路に対して先に尿素水を充填させる場合、容量の大きい第2供給通路に空気が残存することとなる。そして、空気は、尿素水よりも体積変化しやすいため、第2供給通路に空気が大量に残存すると、圧力の検出精度が悪くなる。具体的には、残存する空気が圧縮されて、圧力値が小さく検出される。このため、第1供給弁の閉弁タイミングに誤差が生じ、その結果、尿素水が漏れてしまうという問題が生じる。特に、第1供給通路の容量と、第2供給通路の容量との差が大きく、容量の大きい第2供給通路への充填を後回しにする場合、残存する空気量も多くなり、その影響を無視できなくなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、適切に尿素水を供給経路に充填させることができる尿素水供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、内燃機関の排気通路に設けられ、アンモニアを用いて排気中の窒素酸化物を浄化させる選択還元型の第1の触媒と、第2の触媒とを有する排気浄化装置に用いられ、前記排気通路にアンモニアを生成するための尿素水を供給する尿素水供給システムにおいて、前記排気通路における前記第1の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第1供給弁と、前記排気通路における前記第2の触媒の上流側に、前記尿素水を供給する第2供給弁と、前記尿素水を貯留する尿素水タンクと、前記尿素水タンクと、前記第1供給弁及び前記第2供給弁のそれぞれとを繋ぐように設けられ、前記尿素水が通過する供給通路と、前記尿素水タンクから前記供給通路に前記尿素水を圧送するポンプと、前記尿素水の圧力値を検出する圧力検出部と、前記ポンプの駆動制御と前記第1供給弁及び前記第2供給弁の開閉制御とを実施する制御部と、を備え、前記供給通路は、途中で分岐しており、前記尿素水タンクから分岐点までに設けられる共通通路と、前記分岐点から前記第1供給弁までに設けられる第1供給通路と、前記分岐点から前記第2供給弁までに設けられる第2供給通路と、を有し、前記第1供給通路の容積は、前記第2供給通路の容積よりも大きく構成されており、前記制御部は、前記第2供給弁を閉弁させたまま前記第1供給弁を開弁させるとともに、前記尿素水を圧送するように前記ポンプを駆動させることにより、前記供給通路への尿素水の充填を開始し、その後、前記圧力検出部により検出された圧力値に基づいて、前記第1供給通路内への前記尿素水の充填完了を判定し、前記第1供給弁を閉弁させる。
【0009】
上記構成により、第1供給弁及び第1供給通路の尿素水の充填が完了した時点において、第2供給通路の内部に残存している空気量を少なくすることができる。つまり、容量の小さい第2供給通路の側へ先に尿素水を充填する場合に比較して、容量の大きい第1供給通路の側へ先に尿素水を充填する場合のほうが、供給通路に残存する空気量を少なくすることができる。このため、尿素水の圧力値の検出誤差を小さくすることができ、第1供給通路内への尿素水の充填完了を正確に判定することができる。よって、過剰に尿素水を充填してしまうことを防止し、尿素水漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】排気浄化装置及び尿素水供給システムの概略図。
図2】充填処理の流れを示すフローチャート。
図3】(a)は、尿素水温度と尿素水密度の関係を示す図、(b)は、尿素水温度と閾値との関係を示す図。
図4】(a)は、尿素水濃度と尿素水密度の関係を示す図、(b)は、尿素水濃度と閾値との関係を示す図。
図5】(a)は、ポンプの駆動状態を示すタイムチャート、(b)は、尿素水圧力値を示すタイムチャート、(c)は、第1供給弁の開閉態様を示すタイムチャート、(d)は、第2供給弁の開閉態様を示すタイムチャート、(e)は、残留空気量の遷移を示すタイムチャート。
図6】第2実施形態における充填処理の流れを示すフローチャート。
図7】配管容量差と、第3閾値との関係を示す図。
図8】(a)は、尿素水温度と尿素水粘度の関係を示す図、(b)は、尿素水温度と第3閾値との関係を示す図。
図9】(a)は、ポンプの駆動状態を示すタイムチャート、(b)は、尿素水圧力値を示すタイムチャート、(c)は、尿素水の圧力変動量を示すタイムチャート、(d)は、第1供給弁の開閉態様を示すタイムチャート、(e)は、第2供給弁の開閉態様を示すタイムチャート、(f)は、残留空気量の遷移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、尿素水供給システムを具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、車両の尿素水供給システム100は、車両に搭載され、車両の排気浄化装置200に適用される。車両は、内燃機関10及び内燃機関10の排気通路20を備える。内燃機関10は、ディーゼルエンジンであっても、ガソリンエンジンであってもよい。
【0013】
排気浄化装置200は、アンモニアを用いて排気中の窒素酸化物(NOx)を浄化させる選択還元型の第1の触媒21と、同様に、アンモニアを用いて排気中の窒素酸化物(NOx)を浄化させる選択還元型の第2の触媒22と、を有する。排気浄化装置200は、排気通路20に設けられており、排気通路20において、内燃機関10の下流に第1の触媒21が配置され、その第1の触媒21の下流に第2の触媒22が直列に配置されている。
【0014】
なお、図1には示されていないが、第1の触媒21の上流側に、酸化機能を有する酸化触媒や、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタが設けられていてもよい。また、第1の触媒21の下流側、かつ、第2の触媒22の上流側に、酸化機能を有する酸化触媒や、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタが設けられていてもよい。また、図1には示されていないが、第1の触媒21又は第2の触媒22の下流側にそこからスリップしてくるアンモニアを酸化させるための酸化触媒(ASC触媒)が設けられていてもよい。
【0015】
尿素水供給システム100は、排気通路20において、第1の触媒21の上流側に配置される第1供給弁11と、第1の触媒21の下流側であって第2の触媒22の上流側に配置される第2供給弁12と、を備える。また、尿素水供給システム100は、尿素水を貯留する尿素水タンク13と、尿素水が通過する供給通路14と、尿素水を圧送するポンプ15と、尿素水の圧力を検出する圧力検出部としての圧力センサ16と、を備える。また、尿素水供給システム100は、尿素水タンク13に、尿素水温度センサ17と、尿素水濃度センサ18と、を備える。また、尿素水供給システム100は、各種制御を実施する制御部としてのECU30を備える。
【0016】
第1供給弁11は、排気通路20における第1の触媒21の上流側に、アンモニアの前駆体である尿素水を供給する。第1供給弁11により供給された尿素水は、排気の熱で熱分解と加水分解されてアンモニアが生成される。そのアンモニアが、第1の触媒21に流れ込み、そこに吸着することで、アンモニアと排気中のNOxとの還元反応が生じ、NOxの浄化が行われる。
【0017】
第2供給弁12は、排気通路20における第2の触媒22の上流側に、アンモニアの前駆体である尿素水を供給する。第2供給弁12により供給された尿素水により、前述同様、NOxの浄化が行われる。
【0018】
供給通路14は、尿素水タンク13と、第1供給弁11及び第2供給弁12のそれぞれとを繋ぐように設けられている。供給通路14は、途中で分岐しており、尿素水タンク13から分岐点P1までに設けられる共通通路14aと、分岐点P1から第1供給弁11までに設けられる第1供給通路14bと、分岐点P1から第2供給弁12までに設けられる第2供給通路14cと、を有する。第1供給通路14bの容積は、第2供給通路14cの容積よりも大きく構成されている。
【0019】
ポンプ15は、共通通路14aに設けられており、尿素水タンク13から尿素水をくみ上げ、尿素水タンク13から供給通路14に尿素水を圧送するように構成されている。
【0020】
圧力センサ16は、ポンプ15から圧送される尿素水の圧力値、つまり、供給通路14内の尿素水の圧力値を検出する。尿素水温度センサ17は、尿素水タンク13に貯蔵されている尿素水の温度を検出する。尿素水濃度センサ18は、尿素水タンク13に貯蔵されている尿素水の濃度を検出する。
【0021】
ECU30は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ等を備えてなる電子制御装置である。ECU30は、各種機能を備え、各種機能は、ECU30が備えるROMなどに記憶されたプログラムが実行されることで、実現される。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
【0022】
ECU30は、例えば、ポンプ15の駆動制御を実施する駆動制御部としての機能と、第1供給弁11及び第2供給弁12の開閉制御とを実施する開閉制御部としての機能と、を備える。これらのECU30の各種機能については後述する。ECU30は、圧力センサ16、尿素水温度センサ17、及び尿素水濃度センサ18に接続されており、これらの検出結果を入力する。そして、ECU30は、これらの検出結果に基づいて各種機能を実施する。
【0023】
上記尿素水供給システム100は、内燃機関10の運転(燃焼)中、排出される排気に含まれるNOxを浄化するために、尿素水を排気通路20に供給する。ここで、内燃機関10の停止中、供給弁11,12や供給通路14に尿素水が残っていると、残存尿素水が凍結し、体積が膨張することにより、供給弁11,12や供給通路14を破損させる可能性がある。また、残存尿素水によりアンモニアが発生して供給弁11,12や供給通路14等を腐食させることも考えられる。このため、尿素水供給システム100のECU30は、内燃機関10の運転が停止したとき、供給弁11,12や供給通路14に残っている尿素水を尿素水タンク13に吸い戻す吸い戻し制御を実施する。具体的には、ECU30は、供給弁11,12を開弁させた状態で、ポンプ15を逆回転駆動させて供給通路14内の尿素水を尿素水タンク13に圧送させる。これにより、供給通路14内は、空の状態、つまり、空気が充填された状態となる。
【0024】
また、尿素水供給システム100は、内燃機関10の運転が開始したとき、供給弁11,12や供給通路14に尿素水を充填する充填制御を実施する。このとき、供給弁11,12及び供給通路14の容量に対して、尿素水を過不足なく充填することが望ましい。すなわち、容量に対して、尿素水を過剰に充填すると、尿素水の漏れにつながり、尿素水が不足すると、空気が残存し、噴射量が低下したり、噴射中の圧力が低下したりするからである。
【0025】
そこで、第1実施形態において図2に示すように充填制御に係る充填処理を実施している。以下、図2に基づいて詳しく説明する。この充填処理は、所定のタイミング(例えば、内燃機関10の運転開始時)に、ECU30により実施される。
【0026】
ECU30は、充填処理を開始すると、ポンプ15を正回転駆動させて、ポンプ15から供給通路14に尿素水を圧送する(ステップS101)。次に、ECU30は、第2供給弁12を閉弁させたまま、第1供給弁11を開弁させる(ステップS102)。これにより、ポンプ15から圧送された尿素水は、共通通路14a及び第1供給通路14bに充填される。このとき、第2供給弁12は、閉弁しているので、第2供給通路14cの内部には、残留空気が存在することとなる。
【0027】
次に、ECU30は、圧力センサ16が検出した尿素水の圧力値を入力し、尿素水の圧力値が第1閾値Th1以上であるか否かを判定する(ステップS103)。なお、図3(a)に示すように尿素水密度は、尿素水温度が高くなるにつれて、低下していく。そして、尿素水密度が低下すると、尿素水の流速が低下し、尿素水の配管内圧損が低下する。このため、第1閾値Th1が常に一定の値だと、判定に誤差が生じる可能性がある。そこで、図3(b)に示すように、第1閾値Th1は、尿素水密度と同様に、尿素水温度が高くなるにつれて低下するようにECU30により変更される。
【0028】
また、図4(a)に示すように尿素水密度は、尿素水濃度に比例するように上昇する。そして、尿素水密度が上昇すると、尿素水の流速が増加し、尿素水の配管内圧損が上昇する。このため、第1閾値Th1が常に一定の値だと、誤差が生じる可能性がある。そこで、図4(b)に示すように、第1閾値Th1は、尿素水濃度に比例するようにECU30により変更される。
【0029】
ステップS103の判定結果が否定の場合、ECU30は、一定時間経過後、再びステップS103を実施する。すなわち、ECU30は、尿素水の圧力値が第1閾値Th1となるまで、待機する。
【0030】
一方、ステップS103の判定結果が肯定の場合、ECU30は、第1供給弁11を閉弁させ(ステップS104)、第2供給弁12を開弁させる(ステップS105)。これにより、第2供給弁12を介して、第2供給通路14cの内部の残留空気が排気通路20に排出され、第2供給通路14cに尿素水が充填される。
【0031】
次に、ECU30は、圧力センサ16が検出した尿素水の圧力値を入力し、尿素水の圧力値が第2閾値Th2よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。この第2閾値Th2は、第1閾値Th1以上の値が設定される。また、第2閾値Th2は、第1閾値Th1と同様に、尿素水温度及び尿素水濃度に応じてECU30により変更される。
【0032】
この判定結果が否定の場合、ECU30は、一定時間経過後、再びステップS106を実施する。すなわち、ECU30は、尿素水の圧力値が第2閾値Th2よりも大きくなるまで、待機する。一方、ステップS106の判定結果が肯定の場合、ECU30は、第2供給弁12を閉弁させ(ステップS107)、充填処理を終了する。
【0033】
次に、この充填処理を実施したときにおける作用について図5に基づいて説明する。図5(a)は、ポンプ15の駆動状態(正回転駆動)を示すタイムチャートであり、図5(b)は、尿素水の圧力値を示すタイムチャートである。図5(c)は、第1供給弁11の開閉態様を示すタイムチャートであり、図5(d)は、第2供給弁12の開閉態様を示すタイムチャートである。図5(e)は、供給通路14の内部における残留空気量の遷移を示すタイムチャートである。
【0034】
図5に示すように時点T1においてポンプ15が駆動し、第1供給弁11が開弁すると、共通通路14a及び第1供給通路14bへの尿素水の充填に伴い、尿素水の圧力値が上昇し、一定の圧力値となる(時点T2以降)。一方で、第1供給弁11を介して、供給通路14から空気が排出され、供給通路14内における残存空気量が減っていく。
【0035】
その後、第1供給弁11及び第1供給通路14bにおいて尿素水の充填が完了すると(時点T3)、尿素水の圧力値が徐々に上昇していく。このとき、第2供給通路14cの残留空気を圧縮しつつ、第2供給通路14cに尿素水が流れ込む。
【0036】
尿素水の圧力値が第1閾値Th1以上となると(時点T4)、第1供給弁11が閉弁される一方で第2供給弁12が開弁される。これにより、第2供給弁12及び第2供給通路14c内に尿素水が充填するように、尿素水が第2供給通路14cに流れ込む。その際、第2供給通路14cの残留空気が、尿素水により第2供給弁12を介して供給通路14から排気通路20に押し出され、供給通路14内における残存空気量が減っていく。このとき、一時的に尿素水の圧力が低下する。
【0037】
その後、第2供給弁12及び第2供給通路14cにおいて尿素水の充填が完了すると(時点T5)、尿素水は逃げ場を失い、尿素水の圧力値が上昇していく。尿素水の圧力値が第2閾値Th2よりも大きくなると(時点T6)、第2供給弁12が閉弁される。これにより、供給通路14への尿素水の充填が完了する。このとき、尿素水は、噴射に適する圧力状態を維持して供給通路14に充填されることとなる。
【0038】
ところで、上述したように、第1供給弁11及び第1供給通路14bにおいて尿素水の充填が完了した時点T3では、第2供給通路14cの内部に空気が残存している。第1供給通路14bへの尿素水の充填が完了すると、第2供給通路14cにも尿素水が流れ込むこととなるが、第2供給弁12は閉弁しているため、第2供給通路14cの残留空気を圧縮しながら、第2供給通路14cにも尿素水が流れ込む。そして、空気は、尿素水に比較して体積が変化しやすい(圧縮されやすい)ため、空気が残存している場合、尿素水の圧力値の検出誤差と要因となる。
【0039】
ここで、例えば、第2供給通路14cの容量が第1供給通路14bの容量よりも大きい場合、第2供給通路14cの容量が小さい場合(つまり、本実施形態の場合)に比較して多くの空気が残存し、検出誤差が大きくなりやすい。この結果、第1供給通路14bへの充填が完了したにもかかわらず、残存空気により尿素水の圧力値が低く検出されやすく、尿素水を過剰に供給し、尿素水が漏れてしまう可能性がある。
【0040】
そこで、本実施形態では、第2供給通路14cの容量を第1供給通路14bの容量よりも小さくし、第1供給弁11を開弁させて第1供給通路14bに尿素水を充填してから、第2供給弁12を開弁させて第2供給通路14cに尿素水を充填するようにしている。これにより、第1供給通路14b内への尿素水の充填完了時点において残存空気量を少なくし、第1閾値Th1と比較する際、尿素水の圧力値の検出誤差を小さくすることができる。
【0041】
なお、充填開始から、第1供給弁11及び第2供給弁12をともに開弁させることも考えられる。しかしながら、この場合、容量の小さい第2供給通路14cへの尿素水充填が完了しても、第1供給通路14b内の空気を押し出しつつ、第1供給通路14bに尿素水が流れ込むため、尿素水の圧力値の上昇が小さく、検出しにくい。このため、尿素水の圧力値の判定閾値を大きく設定すると、尿素水が過剰に充填され、尿素水が漏れやすくなるという問題が生じやすい。一方で、尿素水の圧力値の判定閾値を小さくすると、僅かな圧力変動の影響を受けやすく、例えば、僅かな詰まりの影響を受けて誤判定してしまうという問題が生じる。したがって、充填開始から、第1供給弁11及び第2供給弁12をともに開弁させる方法はあまり適切でないといえる。
【0042】
以上のように説明した第1実施形態により以下のような有利な効果を得ることができる。
【0043】
ECU30は、第2供給弁12を閉弁させたまま第1供給弁11を開弁させるとともに、尿素水を圧送するようにポンプ15を駆動させることにより、供給通路14への尿素水の充填を開始する。その後、ECU30は、圧力センサ16より検出された圧力値に基づいて、第1供給通路14b内への尿素水の充填完了を判定し、第1供給弁11を閉弁させる。
【0044】
これにより、第1供給弁11及び第1供給通路14bへの尿素水の充填が完了した時点T3において、第2供給通路14cの内部に残存している空気量を少なくすることができる。つまり、容量の小さい第2供給通路14cの側へ先に尿素水を充填する場合に比較して、本実施形態のように、容量の大きい第1供給通路14bの側へ先に尿素水を充填する場合のほうが、供給通路14に残存する空気量を少なくすることができる。このため、尿素水の圧力値の検出誤差を小さくすることができ、第1供給通路14b内への尿素水の充填完了を正確に判定することができる。よって、過剰に尿素水を充填してしまうことを防止し、尿素水漏れを抑制することができる。
【0045】
ECU30は、第1供給弁11を閉弁させると同時に、第2供給弁12を開弁させ、第2供給通路14c内への尿素水の充填を開始させる。このため、第1供給弁11の閉弁後、所定時間経過したのちに第2供給弁12を開弁させる場合に比較して、充填開始から充填完了までの時間(充填処理に係る時間)を短くすることができる。
【0046】
ECU30は、第1供給弁11の開弁後、尿素水の圧力値が第1閾値Th1以上の場合、第1供給弁11を閉弁させ、第2供給弁12の開弁後、尿素水の圧力値が第2閾値Th2より大きい場合、第2供給弁12を閉弁させる。そして、第2閾値Th2は、第1閾値Th1以上である。これにより、第1供給通路14bへの充填完了、及び第2供給通路14cへの充填完了を適切に判定することができる。
【0047】
第1閾値Th1及び第2閾値Th2は、尿素水の温度及び尿素水の濃度に応じて変更される。このため、尿素水の温度や濃度が変化しても、充填完了を適切に判定することができる。
【0048】
(第2実施形態)
第1実施形態の尿素水供給システム100は、その構成の一部を変更してもよい。ここで、第2実施形態の尿素水供給システム100について説明する。この第2実施形態では、基本構成として、第1実施形態のものを例に説明する。
【0049】
第2実施形態における充填処理を図6に基づいて説明する。この充填処理は、所定のタイミング(例えば、内燃機関10の運転開始時)に、ECU30により実施される。ECU30は、充填処理を開始すると、第1実施形態と同様に、ステップS101~ステップS104を実施する。
【0050】
ステップS104の実施後、ECU30は、第1供給弁11を閉弁してからの経過時間が、所定時間に相当する第3閾値Th3以上となったか否かを判定する(ステップS201)。この判定結果が否定の場合、一定時間経過後、ECU30は、再びステップS201を実施する。すなわち、第1供給弁11を閉弁してから所定時間経過するまで、待機する。
【0051】
この第3閾値Th3には、第1供給弁11の閉弁後、第2供給通路14cに流れ込む尿素水が第2供給弁12に達することができる程度の時間が設定され、第1供給通路14bと第2供給通路14cとの容量差や尿素水粘度等を考慮して設定されている。
【0052】
詳しく説明すると、第3閾値Th3は、第1供給通路14bと第2供給通路14cとの容量差に基づいてその値が設定されている。具体的には、図7に示すように、容量差が大きいほど、第3閾値Th3が小さく設定される。つまり、第1供給通路14bの容量が大きいほど、第1供給通路14bに尿素水を充填させるまでに時間がかかり、その間に、尿素水の一部が第2供給通路14cへと流れ込みやすくなると考えられる。また、第2供給通路14cの容量が小さいほど、第1供給弁11の閉弁後、第2供給通路14cに流れ込む尿素水が第2供給弁12に達するまでの時間が短くなると考えられる。このことから、図7に示すように、容量差が大きいほど、第3閾値Th3が小さく設定される。
【0053】
また、図8(a)に示すように尿素水粘度は、尿素水温度に反比例するように低下していく。つまり、尿素水温度が低くなるほど、尿素水粘度が大きくなる。そして、尿素水温度が高くなり、尿素水粘度が小さくなると、尿素水が流れやすくなる一方、尿素水温度が低くなり、尿素水粘度が大きくなると、尿素水は流れにくくなることがわかっている。このため、尿素水温度に応じて第3閾値Th3を変更することが望ましい。
【0054】
具体的には、尿素水温度が低くなるほど、第3閾値Th3を大きくし、尿素水温度が高くなるほど、第3閾値Th3を小さくするように変更することが望ましい。そこで、図8(b)に示すように、ECU30は、尿素水温度が低くなればなるほど、第3閾値Th3を大きくする(長くする)ように第3閾値Th3を変更している。
【0055】
ステップS201の判定結果が肯定の場合、ECU30は、第1実施形態と同様に、ステップS105以降の処理を実施する。
【0056】
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
供給通路14内に、詰まりの原因となりうる尿素水の結晶がある場合、結晶を尿素水に浸すことにより、結晶を溶かすことができる。そこで、ECU30は、第1供給弁11を閉弁させた後、所定時間(第3閾値Th3)の経過後に、第2供給弁12を開弁させ、第2供給通路14c内への尿素水の充填を開始させている。所定時間待つことにより、尿素水を第2供給弁12に到達させることが可能となる。つまり、第2供給弁12又は第2供給通路14c内に存在している結晶を尿素水に予め浸し、結晶を予め溶かしておくことができる。その後、第2供給弁12を開弁させることにより、詰まりの原因となりうる尿素水の結晶をすばやく排除することができる。また、尿素水を第2供給弁12に予め到達させることにより、第2供給弁12を開弁させる時間を短くすることができ、第2供給弁12の劣化を抑制できる。
【0058】
第3閾値Th3(所定時間)は、尿素水温度に応じて変更される。これにより、第1供給弁11の閉弁後、第2供給弁12を開弁させるまでに、尿素水を第2供給弁12に適切に到達させることが可能となる。
【0059】
また、第3閾値Th3(所定時間)は、第1供給通路14bと第2供給通路14cとの容量差に応じて設定されている。これにより、第1供給弁11の閉弁後、第2供給弁12を開弁させるまでに、尿素水を第2供給弁12に適切に到達させることが可能となる。
【0060】
(別の実施形態)
上記実施形態の構成の一部を、以下のように変更してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、尿素水の圧力値と、閾値Th1,Th2との比較により、閉弁のタイミングを判定していたが、尿素水の圧力変動量と、閾値との比較により、閉弁のタイミングを判定してもよい。尿素水の圧力変動量とは、単位時間あたりにおける圧力変動の幅のことである。
【0062】
この別例を実施したときにおける作用について図9に基づいて説明する。図9(a),図9(b)は、図5(a),図5(b)と同じ図面である。図9(c)は、尿素水の圧力変動量の遷移を示すタイムチャートである。図9(d)~図9(f)は、図5(c)~図5(e)とそれぞれ同じである。
【0063】
図9に示すように時点T1においてポンプ15が駆動し、第1供給弁11が開弁すると、共通通路14a及び第1供給通路14bへの尿素水の充填開始に伴い、尿素水の圧力変動量が上昇する。しかしながら、圧力変動の第1閾値Th11以下となるため、そのまま尿素水の充填を継続する。
【0064】
なお、第1閾値Th11は、第1供給弁11の閉弁タイミングを判定するための圧力変動量の閾値である。第1閾値Th11は、第1実施形態と同様の理由から、尿素水温度及び尿素水濃度に応じてECU30により変更される。第1閾値Th11の変更態様も、第1実施形態と同様である。
【0065】
その後(時点T2以降)、一定の圧力となり、圧力変動量がゼロとなる。一方で、第1供給弁11を介して、供給通路14から空気が排出され、供給通路14内における残存空気量が減っていく。
【0066】
その後、第1供給弁11及び第1供給通路14bにおいて尿素水の充填が完了すると(時点T3)、尿素水の圧力変動量が大きくなる。尿素水の圧力変動量が、圧力変動の第1閾値Th11以上となると(時点T4)、第1供給弁11が閉弁される一方で第2供給弁12が開弁される。これにより、第2供給弁12から残存空気が押し出され、第2供給弁12及び第2供給通路14c内に尿素水が充填するように、尿素水が第2供給通路14cに流れ込む。
【0067】
その後、第2供給弁12及び第2供給通路14cにおいて尿素水の充填が完了すると(時点T5)、尿素水の圧力変動量が上昇していく。尿素水の圧力変動量が、圧力変動量の第2閾値Th12より大きくなると(時点T6)、第2供給弁12が閉弁される。これにより、供給通路14への尿素水の充填が完了する。
【0068】
なお、第2閾値Th12は、第2供給弁12の閉弁タイミングを判定するための圧力変動量の閾値である。この第2閾値Th12は、第1実施形態と同様の理由から、尿素水温度及び尿素水濃度に応じてECU30により変更される。第2閾値Th12の変更態様も、第1実施形態と同様である。また、第2閾値Th2は、第1閾値Th1よりも大きな値が設定される。第2供給通路14cへの尿素水の充填が完了する場合、残存空気がないことから、第1供給通路14bへの尿素水の充填完了時に比較して、圧力変動量が大きく変化することが予想されるからである。
【0069】
また、この別例では、第1供給弁11の閉弁と同時に、第2供給弁12を開弁させたが、第2実施形態と同様に、第1供給弁11の閉弁後、所定時間(第3閾値Th3)を経過してから第2供給弁12を開弁させてもよい。
【0070】
このように圧力変動量を利用することにより、尿素水の温度や濃度の変化により密度が変わってしまっても、その影響を受けにくく、精度よく充填完了を判定することが可能となる。また、圧力検出部としての圧力センサ16によるバラツキ(検出誤差)の影響も抑制することができる。
【0071】
・上記実施形態において、第1閾値Th1,Th11は、尿素水温度及び尿素水濃度に応じて変更したが、変更しなくてもよい。同様に、第2閾値Th2,Th12は、尿素水温度及び尿素水濃度に応じて変更しなくてもよい。つまり、固定値であってもよい。この場合、尿素水温度センサ17や、尿素水濃度センサ18を備えなくてもよい。
【0072】
・上記第2実施形態において、第3閾値Th3を、尿素水温度に応じて変更したが、変更しなくてもよい。つまり、固定値であってもよい。この場合、尿素水温度センサ17を備えなくてもよい。
【0073】
・上記第2実施形態において、第3閾値Th3を、第1供給通路14bと第2供給通路14cとの容量差に応じて変更したが、変更しなくてもよい。
【0074】
・上記実施形態において、第1の触媒21と、第2の触媒22とは、直列に配置されていたが、並列に配置されていてもよい。つまり、内燃機関10からの排気通路20を並列に設け、それぞれに第1の触媒21と、第2の触媒22を配置してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…内燃機関、11…第1供給弁、12…第2供給弁、13…尿素水タンク、14…供給通路、14a…共通通路、14b…第1供給通路、14c…第2供給通路、15…ポンプ、20…排気通路、21…第1の触媒、22…第2の触媒、30…ECU、100…尿素水供給システム、200…排気浄化装置。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9