(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240305BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H02J1/00 309F
H02J7/00 B
H02J7/00 X
H02J7/00 302D
(21)【出願番号】P 2021020931
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 政夫
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/131380(JP,A1)
【文献】再公表特許第2018/030032(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033560(US,A1)
【文献】特開平06-316255(JP,A)
【文献】特表平10-503920(JP,A)
【文献】特開2013-044620(JP,A)
【文献】特開2009-227094(JP,A)
【文献】特開2020-055410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0179310(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の状態を検出するセンサ部(21)および前記センサ部の出力に基づいて前記車両の周辺を監視する監視機能部(31)を含む周辺監視機器(20)の電源を制御する電源制御装置であって、
前記監視機能部の動作電圧を検出する電圧検出部(53)と、
前記電圧検出部で検出された検出電圧に基づいて、前記動作電圧が正常電圧範囲および異常電圧範囲のいずれにあるかを判定する異常判定部(54)と、を備え、
前記異常判定部は、前記周辺監視機器への電源供給を開始してから所定の閾値変更条件が成立するまでの期間は、前記閾値変更条件が成立した後よりも、前記正常電圧範囲の上限閾値と下限閾値との差が小さくなるように、前記上限閾値および前記下限閾値の少なくとも一方を変化させる、電源制御装置。
【請求項2】
前記閾値変更条件は、前記周辺監視機器への電源供給を開始してから前記周辺監視機器が起動完了するまでの間に成立する条件になっている、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記閾値変更条件は、前記周辺監視機器への電源供給を開始してから所定時間が経過すると成立する条件であり、
前記所定時間は、前記周辺監視機器への電源供給を開始してから前記監視機能部の起動が完了するまでに必要とされる必要起動時間以下に設定されている、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記監視機能部は、前記周辺監視機器への電源供給を開始した後、前記監視機能部のリセットを解除するリセット解除信号を受けてから起動するように構成され、
前記閾値変更条件は、前記周辺監視機器への電源供給を開始してから前記監視機能部のリセットが解除されるまでの間に成立する条件になっている、請求項1または2に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記周辺監視機器は、前記監視機能部よりも前に起動されて、前記センサ部および前記監視機能部を制御する機器制御部(32)を含み、
前記閾値変更条件は、前記機器制御部が起動されてから前記監視機能部のリセットが解除されるまでの間において前記機器制御部が発した所定信号を前記異常判定部が受信した際に成立する条件になっている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記監視機能部および前記機器制御部は、単一の半導体チップに集積された集積回路として構成されている、請求項5に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記監視機能部および前記機器制御部は、異なる半導体チップに構成されている、請求項5に記載の電源制御装置。
【請求項8】
前記センサ部は、前記車両の周囲を撮像する車載カメラであり、
前記監視機能部は、前記車載カメラで撮像された画像を処理する画像処理部である、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の周辺を監視する周辺監視機器の電源を制御する電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ電圧が劣化等により変動しても、バッテリからスロットルモータへの給電ラインをオンオフするスイッチ素子の異常を検出することができる車載制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の周辺を監視する周辺監視機器が搭載されている車両では、周辺監視機器へ供給する電源を電源制御装置によって制御するようになっている。本発明者らは、周辺監視機器の監視機能部が正常に動作するように、監視機能部の動作電圧が正常電圧範囲および異常電圧範囲のいずれにあるかを電源制御装置で判定することを検討している。この正常電圧範囲は、安全性に配慮して監視機能部のデバイスのよりも狭い範囲にすることが望ましいが、範囲が狭すぎると、監視機能部の動作が大きく制限されてしまう。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
【0005】
本開示は、周辺監視機器の動作の制限を抑えつつ、周辺監視機器への電源を適切に供給可能な電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
車両の周辺の状態を検出するセンサ部(21)およびセンサ部の出力に基づいて車両の周辺を監視する監視機能部(31)を含む周辺監視機器(20)の電源を制御する電源制御装置であって、
監視機能部の動作電圧を検出する電圧検出部(53)と、
電圧検出部で検出された検出電圧に基づいて、動作電圧が正常電圧範囲および異常電圧範囲のいずれにあるかを判定する異常判定部(54)と、を備え、
異常判定部は、周辺監視機器への電源供給を開始してから所定の閾値変更条件が成立するまでの期間は、閾値変更条件が成立した後よりも、正常電圧範囲の上限閾値と下限閾値との差が小さくなるように、上限閾値および下限閾値の少なくとも一方を変化させる。
【0007】
本発明者らの検討によると、周辺監視機器への電源供給を開始してから所定期間が経過するまでは監視機能部の動作電圧の変動が小さく、所定期間の経過後に、監視機能部の動作電圧の変動が大きくなる傾向があることが判っている。このことを考慮すると、周辺監視機器への電源供給を開始してから閾値変更条件が成立するまでの期間は、所定の閾値変更条件が成立した後よりも、正常電圧範囲の上限閾値と下限閾値との差を小さくすることが望ましい。
【0008】
これによると、監視機能部の動作電圧の変動が小さいと予想される期間に、正常電圧範囲が狭くなるので、安全性に配慮した監視機能部の動作電圧の監視を実現することができる。加えて、監視機能部の動作電圧の変動が大きいと予想される期間に、正常電圧範囲が広くなるので、監視機能部の動作が必要以上に制限されてしまうことを抑制することができる。このように、本開示の電源制御装置によれば、周辺監視機器の動作の制限を抑えつつ、周辺監視機器への電源を適切に供給することが可能となる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る電源制御装置を適用した周辺監視システムの概略構成図である。
【
図2】リセット制御部の回路構成を示す模式図である。
【
図3】リセット制御部の動作を説明するための説明図である。
【
図4】第1実施形態の電源制御装置が実行する制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】初期処理時の正常電圧範囲および異常電圧範囲の設定を説明するための説明図である。
【
図6】第1実施形態の電源制御装置が実行する電圧監視処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の電源制御装置が実行する成否判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】閾値変更条件が成立した後の正常電圧範囲および異常電圧範囲の設定を説明するための説明図である。
【
図9】第2実施形態の電源制御装置が実行する電圧監視処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態の電源制御装置が実行する成否判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】機器制御部がリセット解除信号を受けた際に行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態の周辺監視システムの一部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0012】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態について
図1~
図8に基づいて説明する。本実施形態では、本開示の電源制御装置50を車両の周辺監視システム10に適用した例について説明する。
【0013】
周辺監視システム10は、車両の運転支援または自動運転に用いられる車載システムである。
図1に示すように、周辺監視システム10は、周辺監視機器20および電源制御装置50を備える。「周辺監視」とは、車両の周辺のうち、少なくとも1方向を監視することを意味し、その方向には、車両の前方、斜め前方、側方、斜め後方、後方が含まれる。
【0014】
周辺監視機器20は、車両の周辺を撮像する車載カメラ21を含むカメラモジュールである。車載カメラ21は、車両の周辺の状態を監視するセンサ部である。具体的には、車載カメラ21は、車両の室外を監視可能なように、車両の室内におけるウィンドシールドに対向する位置に取り付けられる。
【0015】
周辺監視機器20は、車載カメラ21に加えて、画像処理装置を構成するSoC30(SoC:System on a Chipの略称)および記憶部40を備える。本実施形態では、SoC30が周辺監視機器20の制御部を構成している。
【0016】
SoC30は、プロセッサ、メモリ等の各種機能回路を一つの半導体チップに集積した集積回路である。具体的には、SoC30には、画像処理部31、機器制御部32、第1入出力部34、ウォッチドックタイマ35、リセット端子36等の各種機能回路が単一の半導体チップに集積されている。なお、SoC30のメモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0017】
画像処理部31は、センサ部である車載カメラ21の出力に基づいて車両の周辺を監視する監視機能部である。具体的には、画像処理部31は、車載カメラ21で撮像された画像を処理して車両の周辺を監視する。画像処理部31は、電源制御装置50からの電源供給によって動作する。
【0018】
機器制御部32は、画像処理装置であるSoC30の一部を構成する。機器制御部32は、センサ部である車載カメラ21および監視機能部である画像処理部31を制御する。機器制御部32は、電源制御装置50からの電源供給によって動作する。
【0019】
第1入出力部34は、記憶部40、電源制御装置50等の他の機器と通信するための通信インターフェイスである。例えば、車載カメラ21で撮像された画像データが第1入出力部34を介してSoC30に入力される。また、例えば、SoC30の異常を示す異常データが第1入出力部34を介して記憶部40に出力される。
【0020】
ウォッチドックタイマ35は、画像処理部31および機器制御部32の出力信号に基づいてSoC30が正常に動作しているかどうかを監視する回路である。ウォッチドックタイマ35は、SoC30の異常が検知されると、SoC30が正常であることを示す信号の電源制御装置50への出力を停止する。
【0021】
リセット端子36は、電源制御装置50からリセットを要求するリセット信号やリセットを解除するリセット解除信号を受ける端子である。リセット端子36は、信号線を介して電源制御装置50のリセット制御部57に接続されている。SoC30は、電源制御装置50からリセット信号を受けると、画像処理部31および機器制御部32のリセットを行う。また、SoC30は、電源制御装置50からリセット解除信号を受けると、画像処理部31および機器制御部32を起動させる。
【0022】
本実施形態のリセット端子36は、画像処理部31および機器制御部32のリセットおよびリセット解除を個別に実施可能に構成されている。SoC30は、電源制御装置50から画像処理部31のリセットを要求する信号を受けると画像処理部31のリセットを行い、電源制御装置50から機器制御部32のリセットを要求する信号を受けると機器制御部32のリセットを行う。また、SoC30は、電源制御装置50から画像処理部31のリセットの解除を要求する信号を受けると画像処理部31を起動させ、電源制御装置50から機器制御部32のリセットの解除を要求する信号を受けると機器制御部32を起動させる。
【0023】
記憶部40は、SoC30の外部に配置される記憶媒体である。記憶部40は、不揮発性メモリを含んで構成されている。記憶部40は、電源制御装置50からの電源供給されている。記憶部40への電源供給は、SoC30への電源供給に対して独立して行われる。
【0024】
電源制御装置50は、車両のバッテリBTからSoC30の画像処理部31、機器制御部32等に電源を供給する電源部である。電源制御装置50は、PMICで構成されている。PMICは、Power Management ICの略称である。なお、電源制御装置50のメモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0025】
具体的には、電源制御装置50は、電源供給部51、電源制御部52、電圧検出部53、電圧監視部54、異常用レジスタ55、第2入出力部56、リセット制御部57を備える。
【0026】
電源供給部51は、画像処理部31、機器制御部32等の動作に適した電圧を生成して、当該電圧を画像処理部31、機器制御部32等に提供する。電源供給部51から画像処理部31、機器制御部32等に提供される電圧は、画像処理部31、機器制御部32等それぞれに適した電圧である。電源供給部51には、画像処理部31へ電源供給を行う第1電源供給部511、機器制御部32へ電源供給を行う第2電源供給部512が含まれている。
【0027】
電源制御部52は、電源供給部51を制御するものである。電源制御部52は、画像処理部31、機器制御部32等に適したタイミングで電源が供給されるように、電源供給部51を制御する。
【0028】
電圧検出部53は、バッテリBTの端子電圧およびSoC30の画像処理部31、機器制御部32等の動作電圧を検出するものである。電圧検出部53で検出された検出電圧は、電圧監視部54に提供される。
【0029】
電圧監視部54は、画像処理部31、機器制御部32等の動作電圧を監視するものである。電圧監視部54は、電圧検出部53で検出された検出電圧に基づいて、画像処理部31、機器制御部32等の動作電圧が正常電圧範囲NVおよび異常電圧範囲のいずれであるかを判定する異常判定部として機能する。
【0030】
ここで、正常電圧範囲NVは、例えば、SoC30の動作電圧として推奨される推奨電圧の範囲に設定される。また、異常電圧範囲は、正常電圧範囲NVを除く電圧範囲に設定される。異常電圧範囲には、正常電圧範囲NVの上限閾値Vuからデバイスの定格電圧までの範囲である過電圧範囲OV、および正常電圧範囲NVの下限閾値Vdからデバイスの最低動作電圧までの範囲である低電圧範囲UVが含まれる。
【0031】
異常用レジスタ55は、電源制御装置50に生じた異常を異常データとして記憶するレジスタである。電源制御装置50の異常は、例えば、動作電圧の異常や温度の異常等が挙げられる。異常データは、例えば、ビットフラグデータであって、電源制御装置50に異常が生じた際に、当該異常に対応付けされたビットがオンされる。異常用レジスタ55は、揮発性メモリである。異常用レジスタ55は、専用レジスタとして設定されていてもよいし、汎用レジスタであってもよい。
【0032】
第2入出力部56は、SoC30等の他の機器と通信するための通信インターフェイスである。例えば、SoC30のウォッチドックタイマ35からの出力信号を第2入出力部56に入力される。また、例えば、異常用レジスタ55に保持された異常データが第2入出力部56等を介して記憶部40に出力される。
【0033】
リセット制御部57は、システムに異常がある場合等にSoC30にリセットを要求する信号を出力し、システムの起動時等にSoC30のリセットの解除を要求する信号をSoC30に出力する。本実施形態のリセット制御部57は、画像処理部31および機器制御部32のリセットおよびリセット解除を個別に実施可能に構成されている。具体的には、SoC30は、画像処理部31をリセットする際にSoC30に画像処理部31のリセットを要求する信号を送信し、機器制御部32をリセットする際にSoC30に機器制御部32のリセットを要求する信号を送信する。また、SoC30は、画像処理部31のリセットを解除する際にSoC30に画像処理部31のリセット解除を要求する信号を送信し、機器制御部32のリセットを解除する際にSoC30に機器制御部32のリセット解除を要求する信号を送信する。
【0034】
図2に示すように、リセット制御部57は、オープンドレインスイッチSW、オープンドレインスイッチSWの駆動回路DCを含んでいる。リセット制御部57は、オープンドレインスイッチSW以外の他の半導体スイッチを含んで構成されていてもよい。
【0035】
リセット制御部57は、オープンドレインスイッチSWがオン(すなわち、閉状態)の場合、GNDと同電位となるLow信号をSoC30のリセット端子36に出力する。このLow信号は、SoC30のリセットを要求する信号である。リセット端子36にLow信号が入力されると、SoC30は、画像処理部31および機器制御部32の少なくとも一方のリセットを行う。
【0036】
また、リセット制御部57は、オープンドレインスイッチSWがオフ(すなわち、閉状態)の場合、Vccと同電位となるHigh信号をSoC30のリセット端子36に出力する。このHigh信号は、SoC30のリセットを解除するリセット解除信号である。リセット端子36にHigh信号が入力されると、SoC30は、画像処理部31および機器制御部32の少なくとも一方のリセット状態を解除して起動させる。
【0037】
このように構成される周辺監視システム10は、画像処理部31の動作電圧が正常電圧範囲NVおよび異常電圧範囲のいずれにあるかを電源制御装置50で判定するようになっている。この正常電圧範囲NVは、安全性に配慮して推奨電圧の範囲よりも狭い範囲にすることが望ましいが、範囲が狭すぎると、画像処理部31の動作が大きく制限されてしまう。本発明者らの検討によると、周辺監視機器20への電源供給を開始してから所定期間が経過するまでは画像処理部31の動作電圧の変動が小さく、所定期間の経過後に、画像処理部31の動作電圧の変動が大きくなる傾向があることが判っている。
【0038】
このことを加味して、電源制御装置50は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから周辺監視機器20が起動完了するまでの間に正常電圧範囲NVを変化させる制御処理を行う。この制御処理は、電源制御装置50の電圧監視部54が実行する。以下、電源制御装置50が実行する制御処理について
図4等を参照しつつ説明する。
【0039】
図4は、電源制御装置50が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。電源制御装置50は、例えば、車両のイグニッションスイッチがオンされて各種機器が起動される際に、
図4に示す制御ルーチンを実行する。
【0040】
図4に示すように、電源制御装置50は、ステップS100にて、SoC30のメモリ、フラグ等を初期値等に設定するための初期処理を実行する。この初期処理では、正常電圧範囲NVおよび異常電圧範囲を設定する。
【0041】
ここで、前述したように、周辺監視機器20への電源供給を開始してから所定期間が経過するまでは画像処理部31の動作電圧の変動が小さく、所定期間の経過後に、画像処理部31の動作電圧の変動が大きくなる傾向がある。
【0042】
このことを考慮し、周辺監視機器20への電源供給を開始してから所定の閾値変更条件が成立するまでの期間は、閾値変更条件が成立した後よりも、正常電圧範囲NVの上限閾値Vuと下限閾値Vdとの差を小さくしている。
【0043】
具体的には、初期処理では、
図5に示すように、正常電圧範囲NV、過電圧範囲OV、低電圧範囲UVが推奨電圧範囲内に収まるように、上限閾値Vuおよび下限閾値Vdが設定される。
図5に示す例では、過電圧範囲OVの上限が推奨電圧の上限となり、低電圧範囲UVの下限が推奨電圧の下限となるように、過電圧範囲OV、低電圧範囲UVが設定されている。
【0044】
続いて、電源制御装置50は、ステップS110にて、周辺監視機器20への電源供給を開始する。これにより、周辺監視機器20に含まれる各種機器には、それぞれに適した動作電圧が電源制御装置50の電源供給部51から供給される。
【0045】
続いて、電源制御装置50は、ステップS120にて、周辺監視機器20に含まれる各種機器の動作電圧を監視する電圧監視処理を開始する。以下、電圧監視処理の一例について
図6を用いて説明する。
図6に示す電圧監視処理は、電源制御装置50の電圧監視部54によって実行される。
【0046】
図6に示すように、電源制御装置50は、ステップS121にて、電圧診断処理を行う。この電圧診断処理では、電圧検出部53で各機器の動作電圧を検出する。電源制御装置50は、ステップS122にて、電圧検出部53で検出された電圧に基づいて、各種機器の動作電圧が正常電圧範囲NVおよび異常電圧範囲のいずれにあるかを判定する。この結果、電圧異常が検出されなかった場合、電源制御装置50は、ステップS123およびS124をスキップして、電圧診断処理を抜ける。一方、電圧異常が検出された場合、電源制御装置50は、ステップS123に移行する。
【0047】
電源制御装置50は、ステップS123にて、SoC30のリセットを要求するリセット信号をSoC30に送信する。具体的には、電源制御装置50は、リセット制御部57のオープンドレインスイッチSWをオンし、GNDと同電位となるLow信号をSoC30のリセット端子36に出力する。これにより、SoC30は画像処理部31および機器制御部32をリセットする。
【0048】
続いて、電源制御装置50は、ステップS124にて、SoC30のリセットを解除するリセット解除信号をSoC30に送信する。具体的には、電源制御装置50は、リセット制御部57のオープンドレインスイッチSWをオフし、Vccと同電位となるHigh信号をSoC30のリセット端子36に出力する。これにより、画像処理部31および機器制御部32が起動する。ここまでが、電圧監視処理の説明である。
【0049】
図4に戻り、電源制御装置50は、電圧監視処理を開始した後、ステップS130に移行する。電源制御装置50は、ステップS130にて、機器制御部32のリセット解除を要求する信号をSoC50に送信する。これにより、機器制御部32が起動を開始する。
【0050】
続いて、電源制御装置50は、ステップS140にて、画像処理部31のリセット解除を要求する信号をSoC30に送信する。これにより、画像処理部31が起動を開始する。
【0051】
続いて、電源制御装置50は、ステップS150にて、周辺監視機器20への電源供給を開始してから所定の閾値変更条件が成立したか否かを判定する成否判定処理を実行する。この成否判定処理については、
図7を参照しつつ説明する。
【0052】
図7に示すように、電源制御装置50は、ステップS151にて、周辺監視機器20への電源供給を開始してから画像処理部31の起動が完了するまでに必要とされる必要起動時間以下の基準時間が経過したか否かを判定する。本実施形態では、基準時間は、必要起動時間に設定されている。必要起動時間は、例えば、周辺監視機器20への電源供給を開始してから画像処理部31のリセット解除信号を送信するまでの時間に対して、画像処理部31の起動に要する平均時間を加算した時間である。
【0053】
周辺監視機器20への電源供給を開始してから基準時間が経過していない場合、電源制御装置50は、ステップS151の判定を繰り返す。一方、周辺監視機器20への電源供給を開始してから基準時間が経過した場合、電源制御装置50は、ステップS152に移行して、閾値変更条件が成立したことを示す成否判定フラグをオンして、成否判定処理を抜ける。
【0054】
成否判定処理で成否判定フラグがオンされると、電源制御装置50は、
図4のステップS160に移行する。電源制御装置50は、ステップS160にて、初期処理で推奨電圧範囲内に設定された正常電圧範囲NVを推奨電圧範囲まで拡大させる。
【0055】
具体的には、
図8に示すように、正常電圧範囲NVが推奨電圧範囲と一致するように、上限閾値Vuおよび下限閾値Vdが設定される。
図8に示す例では、過電圧範囲OVおよび低電圧範囲UVが推奨電圧範囲外となるように、過電圧範囲OV、低電圧範囲UVが設定されている。すなわち、過電圧範囲OVの下限が推奨電圧の上限を上回り、低電圧範囲UVの上限が推奨電圧の下限を下回るように、過電圧範囲OV、低電圧範囲UVが設定されている。そして、正常電圧範囲NVを拡大した後、電源制御装置50は、ステップS170に移行して、通常処理を開始する。
【0056】
以上説明した電源制御装置50は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから所定の閾値変更条件が成立するまでの期間は、閾値変更条件が成立した後よりも、正常電圧範囲NVの上限閾値Vuと下限閾値Vdとの差を小さくしている。
【0057】
これによると、画像処理部31の動作電圧の変動が小さいと予想される期間に、正常電圧範囲NVが狭くなるので、安全性に配慮した画像処理部31の動作電圧の監視を実現することができる。加えて、画像処理部31の動作電圧の変動が大きいと予想される期間に、正常電圧範囲NVが広くなるので、画像処理部31の動作が必要以上に制限されてしまうことを抑制することができる。したがって、上述の電源制御装置50によれば、周辺監視機器20の動作の制限を抑えつつ、周辺監視機器20への電源を適切に供給することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
(1)上記の閾値変更条件は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから周辺監視機器20が起動完了するまでの間に成立する条件になっている。周辺監視機器20が起動完了した後は、画像処理部31による車両の周辺の監視が開始されることで、画像処理部31の動作電圧の変動が大きくなる傾向がある。このため、閾値変更条件は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから周辺監視機器20が起動完了するまでの間に成立する条件とすることが望ましい。
【0060】
(2)本実施形態の閾値変更条件は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから基準時間が経過すると成立する条件である。この基準時間は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから画像処理部31の起動が完了するまでに必要とされる必要起動時間以下に設定されている。これによると、画像処理部31の動作電圧の変動が大きいと予想される期間になる前に、正常電圧範囲NVが広くなるので、画像処理部31の動作が必要以上に制限されてしまうことを抑制することができる。
【0061】
(3)画像処理部31および機器制御部32は、単一の半導体チップに集積された集積回路として構成されている。これによると、周辺監視機器20の小型・軽量化および高速化等を期待できる。
【0062】
(4)周辺監視機器20は、センサ部として車載カメラ21を備えるとともに、監視機能部として画像処理部31を備える。車載カメラ21で撮像された画像を処理する画像処理部31は、車両の周辺における各種情報を取得するものであり、車両の運転支援または自動運転を実現する上で重要な機器である。このような機器の動作の制限を抑えたり、電源を適切に供給したりすることは、車両の運転支援または自動運転の信頼性の向上に大きく寄与する。
【0063】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、閾値変更条件の成立前後の正常電圧範囲NVの上限閾値Vuおよび下限閾値Vdとして具体的なものを例示したが、正常電圧範囲NVの上限閾値Vuおよび下限閾値Vdは、上述したものと異なっていてもよい。また、第1実施形態では、閾値変更条件の成立前後で正常電圧範囲NVの上限閾値Vuおよび下限閾値Vdそれぞれを変化させているが、上限閾値Vuおよび下限閾値Vdのうち、一方だけを変化させるようになっていてもよい。これらは、以降の実施形態においても同様である。
【0064】
第1実施形態では、機器制御部32のリセット解除を行った後に、画像処理部31のリセット解除を行うものを例示したが、リセット解除のタイミングは、これに限定されない。電源制御装置50は、例えば、機器制御部32のリセット解除と画像処理部31のリセット解除とを同時に行うようになっていてもよい。また、電源制御装置50は、画像処理部31のリセット解除よりも前に、成否判定処理を行うようになっていてもよい。
【0065】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図9~
図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
図9は、第1実施形態で説明した
図4に対応している。
図9に示すステップS200、S210、S220の各処理は、第1実施形態において
図4を用いて説明したステップS100、S110、S120の各処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0066】
図9に示すように、電源制御装置50は、電圧監視処理の開始後、ステップS230に移行する。電源制御装置50は、ステップS230にて、機器制御部32のリセット解除を要求する信号をSoC30に送信する。
【0067】
機器制御部32は、電源制御装置50からのリセット解除信号を受信すると、
図10に示すように、ステップS300にて、起動を開始する。そして、機器制御部32は、ステップS310にて、画像処理部31のリセット解除を要求する要求信号を電源制御装置50に向けて送信する。
【0068】
電源制御装置50は、機器制御部32にリセット解除信号を送信した後、ステップS240にて、閾値変更条件が成立したか否かを判定する成否判定処理を実行する。この成否判定処理については、
図11を参照しつつ説明する。
【0069】
図11に示すように、電源制御装置50は、ステップS241にて、機器制御部32のリセット解除済みであるか否かを判定する。この結果、機器制御部32のリセット解除済みである場合には、電源制御装置50は、ステップS242に移行する。
【0070】
電源制御装置50は、ステップS242にて、画像処理部31のリセット未解除であるか否かを判定する。この結果、画像処理部31のリセット未解除である場合には、電源制御装置50は、ステップS243にて、機器制御部32から画像処理部31のリセット解除を要求する要求信号を受けたか否かを判定する。
【0071】
ステップS243の判定処理の結果、機器制御部32から要求信号を受けていた場合、電源制御装置50は、ステップS244にて、閾値変更条件が成立したことを示す成否判定フラグをオンして、成否判定処理を抜ける。
【0072】
成否判定処理で成否判定フラグをオンした後、電源制御装置50は、ステップS250にて、初期処理で推奨電圧範囲内に設定された正常電圧範囲NVを推奨電圧範囲まで拡大させる。このステップS250の処理は、第1実施形態で説明したステップS160の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
続いて、電源制御装置50は、ステップS260にて、画像処理部31のリセット解除を要求する信号をSoC30に送信する。これにより、画像処理部31が起動を開始する。そして、正常電圧範囲NVを拡大した後、電源制御装置50は、ステップS270に移行して、通常処理を開始する。
【0074】
その他は、第1実施形態と同様である。本実施形態の電源制御装置50は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0075】
(1)画像処理部31は、周辺監視機器20への電源供給を開始した後、画像処理部31のリセットを解除するリセット解除信号を受けてから起動するように構成されている。そして、閾値変更条件は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから画像処理部31のリセットが解除されるまでの間に成立する条件になっている。これによると、画像処理部31の動作電圧の変動が大きいと予想される期間になる前に、正常電圧範囲NVが広くなるので、画像処理部31の動作が必要以上に制限されてしまうことを抑制することができる。
【0076】
(2)具体的には、閾値変更条件は、機器制御部32が起動されてから画像処理部31のリセットが解除されるまでの間において機器制御部32が発した所定信号を電源制御装置50の電圧監視部54が受信した際に成立する条件になっている。このように、閾値変更条件が画像処理部31よりも前に起動される機器制御部32が発した所定信号に基づいて成立する条件になっていれば、画像処理部31の起動が完了する前に、正常電圧範囲NVを広くすることができる。これにより、画像処理部31の動作が必要以上に制限されてしまうことを抑制することができる。
【0077】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の閾値変更条件は、画像処理部31のリセットが解除されるまでの間において機器制御部32が発した所定信号を電源制御装置50の電圧監視部54が受信した際に成立する条件になっているが、これに限定されない。閾値変更条件は、例えば、画像処理部31のリセット解除信号が送信された際に成立する条件であってもよい。
【0078】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図12を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0079】
図12に示すように、周辺監視機器20の制御部は、画像処理部31および機器制御部32が異なる半導体チップで構成されている。SoC30は、画像処理部31を含むものの、機器制御部32が含まれていない。機器制御部32は、マイコン等の半導体チップで構成されている。
【0080】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の電源制御装置50は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0081】
(1)画像処理部31および機器制御部32が異なる半導体チップに構成されている場合、周辺監視機器20のコストダウン等を期待できる。また、画像処理部31および機器制御部32に対する電源供給を別個に制御することができる。
【0082】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0083】
上述の閾値変更条件は、周辺監視機器20への電源供給を開始してから周辺監視機器20の画像処理部31が起動完了するまでの間に成立する条件になっているが、これに限定されない。閾値変更条件は、例えば、周辺監視機器20が起動完了した直後または起動完了から所定時間経過後に成立する条件になっていてもよい。
【0084】
上述の実施形態では、車載カメラ21を用いて車両の周辺を監視する周辺監視システム10に本開示の電源制御装置50を適用した例を説明したが、本開示の電源制御装置50の適用対象は、これに限定されない。本開示の電源制御装置50は、例えば、ミリ波レーダや赤外線を使うLiDARを用いて車両の周辺を監視するシステムにも適用可能である。この場合、ミリ波レーダやLiDARがセンサ部を構成する。なお、LiDARは、Light Detection and Ranging 略称である。
【0085】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0086】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0087】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0088】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 周辺監視システム
20 周辺監視機器
21 車載カメラ
31 画像処理部(監視機能部)
50 電源制御装置
53 電圧検出部
54 電圧監視部