(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】温度調整装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20240305BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240305BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240305BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240305BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20240305BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20240305BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240305BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240305BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/663
H01M10/6569
H01M10/633
H01M10/617
H01M50/204 401H
(21)【出願番号】P 2021031506
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】山本 嵩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
(72)【発明者】
【氏名】富岡 沙絵子
(72)【発明者】
【氏名】梶本 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】吉原 久未
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218135(JP,A)
【文献】国際公開第2019/135001(WO,A1)
【文献】特開2003-282112(JP,A)
【文献】特開2020-087912(JP,A)
【文献】特開2012-238571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/02
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/6556
H01M 10/663
H01M 10/6569
H01M 10/633
H01M 10/617
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が備えるバッテリの温度を調整する温度調整装置であって、
前記車両が備えるラジエータを経由する第1循環経路と、
前記第1循環経路内で第1冷媒を循環させる第1ポンプと、
前記第1循環経路及び前記バッテリを経由する第2循環経路と、
前記第2循環経路内で第2冷媒を循環させる第2ポンプと、
を備え、
前記第2冷媒は、固相と液相との間で相変化する相変化材を含む、温度調整装置。
【請求項2】
前記第1循環経路は、前記第1冷媒を貯留する第1貯留部を有し、
前記第2循環経路は、前記第1貯留部と熱接触し、前記第2冷媒を貯留する第2貯留部を有する、請求項1に記載の温度調整装置。
【請求項3】
前記バッテリは複数のバッテリモジュールを有し、
少なくとも一つの前記バッテリモジュールを経由する前記第2循環経路を複数備える、請求項1又は2に記載の温度調整装置。
【請求項4】
前記第2循環経路は、前記複数のバッテリモジュールの各々毎に設けられている、請求項3に記載の温度調整装置。
【請求項5】
前記第2ポンプは、複数の前記第2循環経路の各々毎に設けられている、請求項3又は4に記載の温度調整装置。
【請求項6】
複数の前記第2循環経路の各々毎に設けられ、前記第2冷媒中の前記相変化材の濃度を調整する濃度調整器をさらに備える、請求項3~5のいずれか一つに記載の温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整装置に関し、特に、車両に搭載される走行モータを駆動するためのバッテリを温度調整対象とする温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリによって走行モータを駆動するHEV(Hybrid Electric Vehicle)又はBEV(Battery Electric Vehicle)等の車両においては、バッテリの入出力特性の向上と長寿命化とを図るべく、バッテリの温度を所定の範囲に保つ必要がある。
【0003】
下記特許文献1に開示されたバッテリの冷却構造は、バッテリの表面に沿って配置された蓄冷材と、蓄冷材の表面を覆うように配置され、蓄冷材を冷却するための冷却液が流通する冷却通路と、冷却通路内で冷却液を循環させるポンプとを備える。蓄冷材は、固相と液相との間で相変化する相変化材を含む。冷却通路は車両のラジエータを経由し、車両の走行風によって冷却液が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されたバッテリの冷却構造によると、冷却通路の上流側では冷却液によって蓄冷材を十分に冷却できるが、上流側での熱交換によって冷却液の温度が上昇するため、冷却通路の下流側では蓄冷材を十分に冷却できない。従って、冷却通路の上流側と下流側とで、相変化材の状態(固相液相割合)に不均一が生じる。その結果、冷却通路の下流側で液相化が進み、相変化材によってバッテリを十分に冷却できない事態が生じ得る。
【0006】
相変化材の状態の不均一を解消すべく、バッテリに熱接触する相変化材自体を、ラジエータを含む冷却通路内で循環させることも考えられる。しかし、一般的な車両において、ラジエータを含む冷却通路は非常に長くなり、また、ラジエータ部分を含めて冷却通路には多数の分岐部及び合流部が形成される。そのため、ラジエータを含む冷却通路内で相変化材を循環させたのでは、相変化材同士の衝突によって相変化材が破損し、その結果、バッテリの冷却効率を十分に向上できない可能性がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、相変化材によるバッテリの温度調整効率を十分に向上することが可能な温度調整装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る温度調整装置は、車両が備えるバッテリの温度を調整する温度調整装置であって、前記車両が備えるラジエータを経由する第1循環経路と、前記第1循環経路内で第1冷媒を循環させる第1ポンプと、前記第1循環経路及び前記バッテリを経由する第2循環経路と、前記第2循環経路内で第2冷媒を循環させる第2ポンプと、を備え、前記第2冷媒は、固相と液相との間で相変化する相変化材を含む。
【0009】
本態様によれば、ラジエータとバッテリとの間の冷媒循環経路は、ラジエータを経由する第1循環経路とバッテリを経由する第2循環経路とに分割され、第1循環経路内を循環する第1冷媒には相変化材が含まれない。従って、ラジエータを含む長く複雑な経路内で相変化材を循環させることに起因する相変化材の破損を、効果的に防止できる。また、第2循環経路内を循環する第2冷媒には相変化材が含まれるため、相変化材によってバッテリの温度を効率的に調整できる。その結果、相変化材によるバッテリの温度調整効率を十分に向上することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記第1循環経路は、前記第1冷媒を貯留する第1貯留部を有し、前記第2循環経路は、前記第1貯留部と熱接触し、前記第2冷媒を貯留する第2貯留部を有する。
【0011】
本態様によれば、熱接触する第1貯留部と第2貯留部とによって、第1冷媒と第2冷媒との間で効率的に熱交換を行えるため、相変化材によるバッテリの温度調整効率をさらに向上することが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記バッテリは複数のバッテリモジュールを有し、少なくとも一つの前記バッテリモジュールを経由する前記第2循環経路を複数備える。
【0013】
本態様によれば、第2循環経路を複数備えることにより、各々の第2循環経路をより短縮化及び簡易化できるため、相変化材の破損をより効果的に防止できる。
【0014】
上記態様において、前記第2循環経路は、前記複数のバッテリモジュールの各々毎に設けられている。
【0015】
本態様によれば、第2循環経路が複数のバッテリモジュールの各々毎に設けられることにより、各々の第2循環経路を最も短縮化及び簡易化できるため、相変化材の破損を最大限に防止できる。
【0016】
上記態様において、前記第2ポンプは、複数の前記第2循環経路の各々毎に設けられている。
【0017】
本態様によれば、複数の第2循環経路の各々毎に第2ポンプが設けられることにより、各バッテリモジュールの温度に応じて各第2ポンプの駆動を制御でき、その結果、複数のバッテリモジュールの温度を均一化することが可能となる。
【0018】
上記態様において、温度調整装置は、複数の前記第2循環経路の各々毎に設けられ、前記第2冷媒中の前記相変化材の濃度を調整する濃度調整器をさらに備える。
【0019】
本態様によれば、複数の第2循環経路の各々毎に濃度調整器が設けられることにより、各バッテリモジュールの温度に応じて各濃度調整器の動作を制御でき、その結果、複数のバッテリモジュールの温度を均一化することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、相変化材によるバッテリの温度調整効率を十分に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る温度調整装置の全体構成を簡略化して示すブロック図である。
【
図2】マイクロカプセル化された相変化材料の一部断面構造を示す斜視図である。
【
図4】相変化材の固相液相割合と温度との関係を示す図である。
【
図5】相変化材の濃度と温度調整可能量との関係を示す図である。
【
図10】第1循環経路に関して制御部が実行する制御内容を示すフローチャートである。
【
図11】第2循環経路に関して制御部が実行する制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0023】
[温度調整装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る温度調整装置1の全体構成を簡略化して示すブロック図である。本実施の形態の例において、温度調整装置1の温度調整対象物は、HEV(Hybrid Electric Vehicle)又はBEV(Battery Electric Vehicle)等の車両において走行モータを駆動するためのバッテリ2である。バッテリ2は、例えば、48Vの高電圧を出力するリチウムイオンバッテリであり、直列に接続された複数のバッテリモジュール(
図1には3個のバッテリモジュール2A~2Cのみを示している。)を有している。バッテリ2の入出力特性の向上と長寿命化とを図るべく、バッテリ2の温度を、所定の温度(例えば40℃)を中心とする目標温度範囲内に保つことが要求され、温度調整装置1によってバッテリ2の温度調整が行われる。
【0024】
バッテリモジュール2Aに関し、パイプ状の流路6Aが、バッテリモジュール2Aの筐体に接触して配置されている。筐体の材質は、熱伝導率の高い銅又はアルミニウム等の金属である。筐体との接触面内において流路6Aは蛇行しており、これにより筐体と流路6Aとの接触面積の増大が図られている。流路6A内には、熱媒体としての相変化材(
図2参照)が封入されている。熱伝導率の高い金属製の筐体を介してバッテリモジュール2Aと相変化材との間で熱交換が行われることにより、バッテリモジュール2Aの温度調整が行われる。すなわち、相変化材の相変化温度よりもバッテリモジュール2Aの温度が高い場合には、相変化材がバッテリモジュール2Aから熱を奪う熱交換が行われることによって、バッテリモジュール2Aは冷却され、相変化材は固相から液相に相変化する。一方、相変化材の相変化温度よりもバッテリモジュール2Aの温度が低い場合には、相変化材がバッテリモジュール2Aに熱を与える熱交換が行われることによって、バッテリモジュール2Aは加熱され、相変化材は液相から固相に相変化する。他のバッテリモジュール2B,2Cについても同様である。
【0025】
本実施の形態に係る温度調整装置1では、マイクロカプセル化された相変化材料30が水等の冷媒22に所定の濃度で混入された態様の相変化材が使用される。
【0026】
図2は、マイクロカプセル化された相変化材料30の一部断面構造を示す斜視図である。パラフィン系炭化水素又は遷移金属系セラミックス等から成る球体状のコア31が、酸化アルミニウム等から成る薄膜状のシェル32によって被覆されている。
【0027】
本実施の形態に係る温度調整装置1において、冷媒22に相変化材料30が混入されることによる相変化材の初期状態の濃度は、十分に低濃度であり、例えば3%である。
【0028】
図1を参照して、温度調整装置1は、流路5、流路6(6A~6C)、貯留部3,4、制御部10、ファン8、ラジエータ7、弁11、ヒータ12、状態検出部14、ポンプ13,16(16A~16C)、温度センサ15(15A~15C)、濃度調整部17(17A~17C)を備えている。ラジエータ7は、例えば車両のフロントグリルの内側に配置されており、車両の走行時に生じる走行風によって、流路5内の冷媒21を冷却する。また、ラジエータ7の前面又は背面には、ラジエータ7に向けて送風するファン8が配置されている。
【0029】
流路5は、ラジエータ7を経由する第1循環経路であり、ポンプ13、ヒータ12、弁11、及び貯留部3を有する。貯留部3には冷媒21が貯留されている。冷媒21には相変化材は含まれない。制御部10は、制御信号S2によって弁11を切り替える。また、制御部10は、制御信号S1,S3,S4によって、ファン8、ヒータ12、及びポンプ13の駆動を制御する。弁11の切り替えによって、流路5は、ラジエータ7を経由する流路R1と、ラジエータ7を経由しない流路R2とを有する。流路R1が選択された場合には、ポンプ13が駆動されることにより、冷媒21は貯留部3→ポンプ13→弁11→ラジエータ7→ヒータ12→貯留部3の順に循環する。流路R2が選択された場合には、ポンプ13が駆動されることにより、冷媒21は貯留部3→ポンプ13→弁11→ヒータ12→貯留部3の順に循環する。
【0030】
流路6Aは、バッテリモジュール2Aを経由する第2循環経路であり、ポンプ16A、濃度調整部17A、及び貯留部4を有する。貯留部4には相変化材(冷媒22及び相変化材料30)が貯留されている。制御部10は、制御信号S7A,S8Aによって、ポンプ16A及び濃度調整部17Aの駆動を制御する。ポンプ16Aが駆動されることにより、相変化材は貯留部4→濃度調整部17A→バッテリモジュール2A→ポンプ16A→貯留部4の順に循環する。他のバッテリモジュール2B,2Cについても同様である。なお、必ずしも全てのバッテリモジュールの各々毎に流路6が形成されている必要はなく、少なくとも一つのバッテリモジュールを経由する流路6が複数形成されていれば良い。
【0031】
貯留部4内には状態検出部14が配置されている。状態検出部14は、貯留部4内における相変化材の固相液相割合を検出して、その検出値をデータS5として出力する。状態検出部14は、例えば、貯留部4内に配置されたプローブの温度変化に基づいて相変化材の熱伝導率を測定し、熱伝導率と固相液相割合との対応関係を表す既知のテーブル情報に基づいて、相変化材の固相液相割合を検出する。データS5は制御部10に入力される。
【0032】
また、貯留部4には、貯留部4の内部空間を各バッテリモジュール2A~2Cに対応する個別空間に区画するためのフィルタ18が配置されている。フィルタ18は、冷媒22は通過するが、相変化材料30は通過しない。これにより、各バッテリモジュール2A~2Cに対応する個別空間毎に、相変化材の濃度を継続的に個別調整することが可能となる。なお、継続的な個別調整が不要な場合には、フィルタ18の配置は省略されても良い。
【0033】
温度センサ15A~15Cは、バッテリモジュール2A~2Cの温度を検出して、その検出値をデータS6A~S6Cとして出力する。データS6A~S6Cは制御部10に入力される。
【0034】
図3は、貯留部3,4を模式的に示す斜視図である。貯留部3は薄い直方体の外観形状を有している。貯留部4は、貯留部3の全面を取り囲むように、貯留部3よりも一回り大きい直方体の外観形状を有している。これにより、貯留部3,4同士の熱接触面積が増大し、貯留部3内の冷媒21と貯留部4内の相変化材との間での効率的な熱交換が実現されている。
【0035】
図4は、相変化材の固相液相割合と温度との関係を示す図である。固相と液相とが混在している状態、つまり、固相液相割合が(100/0)超かつ(0/100)未満である場合には、相変化材の温度は相変化温度TPで一定である。従って、バッテリ2の目標温度(例えば40℃)と同一又は近似する相変化温度TPを有する相変化材を選択し、かつ、相変化材の状態として固相と液相とが混在した状態(以下「固液混在状態」と称す)を保つことによって、バッテリ2の温度を目標温度付近で維持することができる。本実施の形態に係る温度調整装置1では、固相液相割合が例えば(70/30)の許容下限値VLと、例えば(30/70)の許容上限値VHとが設定されている。これにより、許容下限値VL以上かつ許容上限値VH以下の許容範囲が設定されている。相変化温度TP、許容下限値VL、及び許容上限値VHは、制御部10が参照可能な不揮発性の記憶部に予め格納されている。
【0036】
図5は、相変化材の濃度と温度調整可能量との関係を示す図である。
図5に示すように、相変化材は濃度が高くなるほど温度調整可能量が増大する。制御部10は、相変化材の現在の濃度(初期状態で3%)に対応する温度調整可能量よりも大きい温度調整可能量を相変化材に要求する場合に、相変化材の濃度を高くさせるよう濃度調整部17A~17Cを制御する。
【0037】
図6~9は、濃度調整部17A~17Cが備える濃度調整器50の構成を模式的に示す図である。濃度調整器50は、流路6に繋がる相変化材の流入口60と、流入口60に繋がる部屋62,63と、部屋62,63及び流路6に繋がる流出口61とを有している。部屋62には、マイクロカプセル化された相変化材料30を捕捉可能なフィルタ70が設けられている。相変化材の溶媒はフィルタ70を通過可能である。また、濃度調整器50は、流入口60に対して部屋62と部屋63とを切り替える弁51と、部屋62と部屋63との導通の可否を切り替える弁52と、部屋62と流出口61との導通の可否を切り替える弁53と、部屋63と流出口61との導通の可否を切り替える弁54とを有している。濃度調整器50は、制御部10から入力された制御信号S8に基づいて、弁51~54の駆動を制御する。
【0038】
図6には、弁51によって部屋62が流入口60に繋げられ、弁52が閉じられ、弁53が開けられることによって部屋62が流出口61に繋げられ、弁54が閉じられた状況(第1経路)を示している。かかる状況では、流入口60から濃度調整器50内に流入してきた相変化材料30がフィルタ70によって捕捉されることにより、流路6内を流れる相変化材の濃度は低下する。フィルタ70によって捕捉された相変化材料30は、部屋62内に貯留される。
【0039】
図7には、弁51によって部屋62が流入口60に繋げられ、弁52が開けられることによって部屋62,63間が導通され、弁53が閉じられ、弁54が開けられることによって部屋63が流出口61に繋げられた状況(第2経路)を示している。かかる状況では、第1経路(
図6)においてフィルタ70によって捕捉され部屋62内に貯留されていた相変化材料30が、部屋63及び流出口61を介して流路R内に解放されることにより、流路R内を流れる相変化材の濃度は上昇する。
【0040】
図8には、第1経路(
図9)の設定後に、弁51によって部屋63が流入口60に繋げられ、弁52,53が閉じられ、弁54が開けられることによって部屋63が流出口61に繋げられた状況(第3経路)を示している。かかる状況では、多くの相変化材料30が部屋62内に貯留された状況が維持されたまま、第1経路(
図6)及び第2経路(
図7)が迂回されることにより、流路6内を流れる相変化材の濃度が低濃度状態で維持される。本実施の形態に係る温度調整装置1では、
図8に示した状態が、相変化材の濃度が例えば3%の初期状態である。
【0041】
図9には、第2経路(
図7)の設定後に、弁51によって部屋63が流入口60に繋げられ、弁52,53が閉じられ、弁54が開けられることによって部屋63が流出口61に繋げられた状況(第3経路)を示している。かかる状況では、相変化材料30が部屋62から流路6内に解放された状況が維持されたまま、第1経路(
図6)及び第2経路(
図7)が迂回されることにより、流路6内を流れる相変化材の濃度が高濃度状態で維持される。
【0042】
濃度調整器50においては、濃度上昇用の所定数の相変化材料30が予め部屋62内に貯留されており、相変化材料30を解放するために弁52を開ける時間を制御することによって、流路6内おける相変化材の濃度を任意に調整することができる。
【0043】
[第1循環経路の制御フロー]
図10は、流路5(第1循環経路)に関して制御部10が実行する制御内容を示すフローチャートである。
【0044】
まずステップSP101において制御部10は、温度センサ15A~15CからデータS6A~S6Cを取得することにより、各バッテリモジュール2A~2Cの温度を計測する。
【0045】
次にステップSP102において制御部10は、状態検出部14からデータS5を取得することにより、貯留部4内における相変化材の固相液相割合を検出する。
【0046】
次にステップSP103において制御部10は、ステップSP101で計測したバッテリモジュール2A~2Cの温度が、いずれも目標温度範囲内であるか否かを判定する。
【0047】
バッテリモジュール2A~2Cの温度がいずれも目標温度範囲内である場合(ステップSP103:YES)は、制御部10は、ステップSP101~SP103の処理を繰り返し実行する。
【0048】
バッテリモジュール2A~2Cの温度の少なくとも一つが目標温度範囲外である場合(ステップSP103:NO)は、次にステップSP104において制御部10は、目標温度範囲外であるバッテリモジュール2A~2Cの温度が目標温度範囲より高いか否かを判定する。
【0049】
目標温度範囲外であるバッテリモジュール2A~2Cの温度が目標温度範囲より高い場合(ステップSP104:YES)は、次にステップSP105において制御部10は、制御信号S2によって弁11を駆動することにより、流路R1に切り替える。これにより、車両走行時にラジエータ7によって冷媒21が冷却される。
【0050】
次にステップSP106において制御部10は、状態検出部14からデータS5を取得することにより、その時点での相変化材の固相液相割合を検出し、当該固相液相割合が許容上限値VH超であるか否かを判定する。
【0051】
固相液相割合が許容上限値VH超である場合(ステップSP106:YES)は、次にステップSP107において制御部10は、制御信号S1によってファン8を駆動するとともに、制御信号S4によってポンプ13を駆動する。制御部10は、固相液相割合が許容上限値VH以下となるまで、ステップSP106,SP107の処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。なお、判定結果が「YES」であるステップSP106の処理が繰り返される度に、制御部10は、制御信号S1によってファン8の風量を増大させるとともに、制御信号S4によってポンプ13の流量を増大させても良い。
【0052】
固相液相割合が許容上限値VH以下である場合(ステップSP106:NO)は、制御部10は、ステップSP101以下の処理を繰り返し実行する。
【0053】
ステップSP104の判定処理において、目標温度範囲外であるバッテリモジュール2A~2Cの温度が目標温度範囲より低い場合(ステップSP104:NO)は、次にステップSP108において制御部10は、制御信号S2によって弁11を駆動することにより、流路R2に切り替える。
【0054】
次にステップSP109において制御部10は、状態検出部14からデータS5を取得することにより、その時点での相変化材の固相液相割合を検出し、当該固相液相割合が許容下限値VL未満であるか否かを判定する。
【0055】
固相液相割合が許容下限値VL未満である場合(ステップSP109:YES)は、次にステップSP110において制御部10は、制御信号S3によってヒータ12を駆動するとともに、制御信号S4によってポンプ13を駆動する。制御部10は、固相液相割合が許容下限値VL以上となるまで、ステップSP109,SP110の処理を繰り返し実行する。
【0056】
固相液相割合が許容下限値VL以上である場合(ステップSP109:NO)は、次にステップSP111において制御部10は、制御信号S3によってヒータ12の駆動を停止する。その後、制御部10は、ステップSP101以下の処理を繰り返し実行する。
【0057】
[第2循環経路の制御フロー]
図11は、流路6(第2循環経路)に関して制御部10が実行する制御内容を示すフローチャートである。この処理は、複数の流路6A~6Cの各々毎に個別に実行される。以下では代表的に流路6Aを例にとって説明するが、他の流路6B,6Cについても同様である。
【0058】
まずステップSP201において制御部10は、温度センサ15AからデータS6Aを取得することにより、バッテリモジュール2Aの温度を計測する。
【0059】
次にステップSP202において制御部10は、ステップSP201で計測したバッテリモジュール2Aの温度が、目標温度範囲内であるか否かを判定する。
【0060】
バッテリモジュール2Aの温度が目標温度範囲内である場合(ステップSP202:YES)は、制御部10は、ポンプ16Aを停止したまま、ステップSP201~SP203の処理を繰り返し実行する。
【0061】
バッテリモジュール2Aの温度が目標温度範囲外である場合(ステップSP202:NO)は、次にステップSP204において制御部10は、制御信号S7Aによってポンプ16Aを駆動する。
【0062】
次にステップSP205において制御部10は、バッテリモジュール2Aの温度と目標温度との温度差が、所定の許容値より大きいか否かを判定する。
【0063】
温度差が許容値以下である場合(ステップSP205:NO)は、制御部10は、ステップSP201以下の処理を繰り返し実行する。
【0064】
温度差が許容値より大きい場合(ステップSP205:YES)は、次にステップSP206において制御部10は、制御信号S8Aによって濃度調整部17Aを制御することにより、流路6A内における相変化材の濃度を調整する。制御部10は、温度差が大きいほど相変化材の濃度を高くする。
【0065】
次にステップSP207において制御部10は、濃度調整処理の実行が完了してから所定期間(例えば数分)が経過したか否かを判定する。制御部10は、所定期間が経過するまでステップSP207の処理を繰り返し実行する。
【0066】
所定期間が経過した場合(ステップSP207:YES)は、次にステップSP208において制御部10は、温度センサ15AからデータS6Aを取得することによりバッテリモジュール2Aの温度を計測し、当該温度が目標温度範囲内であるか否かを判定する。
【0067】
目標温度範囲内でない場合(ステップSP208:NO)は、制御部10は、ステップSP205以下の処理を繰り返し実行する。
【0068】
目標温度範囲内である場合(ステップSP208:YES)は、制御部10は、ステップSP201以下の処理を繰り返し実行する。
【0069】
[まとめ]
本実施の形態に係る温度調整装置1によれば、ラジエータ7とバッテリ2との間の冷媒循環経路は、ラジエータ7を経由する流路5(第1循環経路)とバッテリ2を経由する流路6(第2循環経路)とに分割され、流路5内を循環する冷媒21(第1冷媒)には相変化材が含まれない。従って、ラジエータ7を含む長く複雑な経路内で相変化材を循環させることに起因する相変化材の破損を、効果的に防止できる。また、流路6内を循環する冷媒22(第2冷媒)には相変化材が含まれるため、相変化材によってバッテリ2の温度を効率的に調整できる。その結果、相変化材によるバッテリ2の温度調整効率を十分に向上することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態に係る温度調整装置1によれば、熱接触する貯留部3(第1貯留部)と貯留部4(第2貯留部)とによって、冷媒21と冷媒22及び相変化材との間で効率的に熱交換を行えるため、相変化材によるバッテリ2の温度調整効率をさらに向上することが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態に係る温度調整装置1によれば、複数の流路6A~6Cを備えることにより、各流路6をより短縮化及び簡易化できるため、相変化材の破損をより効果的に防止できる。
【0072】
また、本実施の形態に係る温度調整装置1によれば、流路6A~6Cが複数のバッテリモジュール2A~2Cの各々毎に設けられることにより、各流路6を最も短縮化及び簡易化できるため、相変化材の破損を最大限に防止できる。
【0073】
また、本実施の形態に係る温度調整装置1によれば、複数の流路6A~6Cの各々毎にポンプ16A~16C(第2ポンプ)が設けられることにより、各バッテリモジュール2A~2Cの温度に応じて各ポンプ16A~16Cの駆動を制御でき、その結果、複数のバッテリモジュール2A~2Cの温度を均一化することが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態に係る温度調整装置1によれば、複数の流路6A~6Cの各々毎に濃度調整部17A~17Cが設けられることにより、各バッテリモジュール2A~2Cの温度に応じて各濃度調整器50の動作を制御でき、その結果、複数のバッテリモジュール2A~2Cの温度を均一化することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1 温度調整装置
2 バッテリ
2A~2C バッテリモジュール
5,6(6A~6C) 流路
7 ラジエータ
13,16(16A~16C) ポンプ
17(17A~17C) 濃度調整部