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特許7447869車両管理装置、車両管理方法、車両管理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車両管理装置、車両管理方法、車両管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20240305BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20240305BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W40/10
G08G1/16 D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021089555
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022031125
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2020133994
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 孝一
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/037815(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110503743(CN,A)
【文献】特開2016-084093(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110920539(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111332312(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/02
B60W 40/10
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
前記車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断部(100,3101)と、
前記基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された前記走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力部(120,3121)とを、備え
前記異常判断部は、前記車両の目標軌道と実走行位置とに関する差が許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常を前記走行異常として判断し、
前記差が前記許容範囲外に逸脱した場合に、前記走行異常が前記特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、前記指定出力部は、前記交換要求部品の指定出力を先送りする車両管理装置。
【請求項2】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
前記車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断部(100,3101)と、
前記基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された前記走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力部(120,3121)とを、備え、
前記異常判断部は、前記車両の目標速度と実走行速度とに関する差が許容範囲外に逸脱する、速度追従異常を前記走行異常として判断し、
前記差が前記許容範囲外に逸脱した場合に、前記走行異常が前記特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、前記指定出力部は、前記交換要求部品の指定出力を先送りする車両管理装置。
【請求項3】
前記別要因は、
前記車両の走行した距離又は時間の経過要因と、
前記車両における一過性の外乱要因と、
前記車両が走行する走行路の構造要因と、
前記車両における目標パラメータの生成要因と、
前記車両に搭載されたセンサ系(3)の状態要因と、のうち少なくとも一種類を含む請求項1又は2に記載の車両管理装置。
【請求項4】
前記指定出力部は、前記交換要求部品に関連して表示される交換情報(I)を、生成する請求項1~のいずれか一項に記載の車両管理装置。
【請求項5】
前記管理対象シーンは、変化前の前記走行方向に対して変化後の前記走行方向が45度以上に傾斜する、前記車両の走行シーンを含む請求項1~のいずれか一項に記載の車両管理装置。
【請求項6】
前記管理対象シーンは、変化後の前記走行方向における車線数が複数となる、前記車両の走行シーンを含む請求項1~のいずれか一項に記載の車両管理装置。
【請求項7】
前記管理対象シーンにおいて前記車両の運転を制御するための制御パラメータを、当該運転の結果に基づき学習する学習部(2140)を、さらに備える請求項1~のいずれか一項に記載の車両管理装置。
【請求項8】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理方法であって、
前記車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断工程(S101,S102)と、
前記基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された前記走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
前記異常判断工程において、前記車両の目標軌道と実走行位置とに関する差が許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常を前記走行異常として判断し、
前記差が前記許容範囲外に逸脱した場合に、前記走行異常が前記特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、前記指定出力工程において、前記交換要求部品の指定出力を先送りする車両管理方法。
【請求項9】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理方法であって、
前記車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断工程(S101,S102)と、
前記基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された前記走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
前記異常判断工程において、前記車両の目標速度と実走行速度とに関する差が許容範囲外に逸脱する、速度追従異常を前記走行異常として判断し、
前記差が前記許容範囲外に逸脱した場合に、前記走行異常が前記特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、前記指定出力工程において、前記交換要求部品の指定出力を先送りする車両管理方法。
【請求項10】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
前記命令は、
前記車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断させる異常判断工程(S101,S102)と、
前記基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された前記走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力させる指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
前記異常判断工程において、前記車両の目標軌道と実走行位置とに関する差が許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常を前記走行異常として判断させ、
前記差が前記許容範囲外に逸脱した場合に、前記走行異常が前記特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、前記指定出力工程において、前記交換要求部品の指定出力を先送りさせる車両管理プログラム。
【請求項11】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
前記命令は、
前記車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断させる異常判断工程(S101,S102)と、
前記基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された前記走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力させる指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
前記異常判断工程において、前記車両の目標速度と実走行速度とに関する差が許容範囲外に逸脱する、速度追従異常を前記走行異常として判断させ、
前記差が前記許容範囲外に逸脱した場合に、前記走行異常が前記特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、前記指定出力工程において、前記交換要求部品の指定出力を先送りさせる車両管理プログラム。
【請求項12】
プロセッサ(12)を有し、加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
前記プロセッサは、
前記車両の自動運転モードにおいて前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無を、判断することと、
判断された前記走行変動に合わせての前記基本機能系の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理を、前記車両に与えることとを、実行するように構成され
前記緩和処理を与えることは、
前記基本機能系による前記車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、前記走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定された前記リスクレベルが許容範囲内の場合に、前記緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定された前記リスクレベルが前記許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する前記緩和パラメータを指定出力することとを、含む車両管理装置。
【請求項13】
前記緩和処理を与えることは、
前記基本機能系を構成する複数部品のうち、前記走行変動を緩和するために交換による更新を要求する交換要求部品(X)を指定出力することを、含む請求項12に記載の車両管理装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、
前記車両の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される前記基本機能系の特性変化の有無を、前記交換要求部品の交換後に判断することを、さらに実行するように構成され、
前記緩和処理を与えることとは、
交換後に判断された前記特性変化に合わせての前記基本機能系の追加更新により前記走行変動を緩和するための前記緩和処理を、前記車両に与えることを、含む請求項13に記載の車両管理装置。
【請求項15】
プロセッサ(12)を有し、加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
前記プロセッサは、
前記車両の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される前記基本機能系の特性変化の有無を、判断することと、
判断された前記特性変化に合わせての前記基本機能系の更新により前記走行変動を緩和するための緩和処理を、前記車両に与えることとを、実行するように構成され
前記緩和処理を与えることは、
前記基本機能系による前記車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、前記走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定された前記リスクレベルが許容範囲内の場合に、前記緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定された前記リスクレベルが前記許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する前記緩和パラメータを指定出力することとを、含む車両管理装置。
【請求項16】
前記緩和パラメータを更新することは、
前記車両の運転結果に基づく学習結果により前記緩和パラメータを設定変更することを、含む請求項12~15のいずれか一項に記載の車両管理装置。
【請求項17】
前記特性変化の有無を判断することは、
前記特性変化の有無を、前記緩和パラメータの設定変更後に判断することを、含み、
前記緩和処理を与えることとは、
設定変更後に判断された前記特性変化に合わせての前記基本機能系の追加更新により前記走行変動を緩和するための前記緩和処理を、前記車両に与えることを、含む請求項12~16のいずれか一項に記載の車両管理装置。
【請求項18】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するためにプロセッサ(12)により実行される車両管理方法であって、
前記車両の自動運転モードにおいて前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無を、判断することと、
判断された前記走行変動に合わせての前記基本機能系の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理を、前記車両に与えることとを、含み、
前記緩和処理を与えることは、
前記基本機能系による前記車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、前記走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定された前記リスクレベルが許容範囲内の場合に、前記緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定された前記リスクレベルが前記許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する前記緩和パラメータを指定出力することとを、含む車両管理方法。
【請求項19】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するためにプロセッサ(12)により実行される車両管理方法であって、
前記車両の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される前記基本機能系の特性変化の有無を、判断することと、
判断された前記特性変化に合わせての前記基本機能系の更新により前記走行変動を緩和するための緩和処理を、前記車両に与えることとを、含み、
前記緩和処理を与えることは、
前記基本機能系による前記車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、前記走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定された前記リスクレベルが許容範囲内の場合に、前記緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定された前記リスクレベルが前記許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する前記緩和パラメータを指定出力することとを、含む車両管理方法。
【請求項20】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
前記命令は、
前記車両の自動運転モードにおいて前記基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無を、判断させることと、
判断された前記走行変動に合わせての前記基本機能系の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理を、前記車両に与えさせることとを、含み、
前記緩和処理を与えさせることは、
前記基本機能系による前記車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、前記走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定させることと、
判定された前記リスクレベルが許容範囲内の場合に、前記緩和パラメータを設定変更により更新させることと、
判定された前記リスクレベルが前記許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する前記緩和パラメータを指定出力させることとを、含む車両管理プログラム。
【請求項21】
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
前記命令は、
前記車両の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される前記基本機能系の特性変化の有無を、判断させることと、
判断された前記特性変化に合わせての前記基本機能系の更新により前記走行変動を緩和するための緩和処理を、前記車両に与えさせることとを、含み、
前記緩和処理を与えさせることは、
前記基本機能系による前記車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、前記走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定させることと、
判定された前記リスクレベルが許容範囲内の場合に、前記緩和パラメータを設定変更により更新させることと、
判定された前記リスクレベルが前記許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する前記緩和パラメータを指定出力させることとを、含む車両管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両管理装置、車両管理方法、及び車両管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、車両において目標軌道に対する追従性の低下を抑制する車両運動制御技術が、提案されている。
【0003】
また一方、特許文献2には、車両の足回り部品を交換するために利用される管理システムが、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-131042号公報
【文献】特開2001-34405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献1の如き実走行位置に基づいて自動運転モードの車両を目標追従させる技術では、車両の走行方向が変化するカーブ走行時又は右左折時において、問題の発生するおそれがある。その問題とは、例えば目標軌道と実軌道との差を取得する時間、実走行位置を推定する時間、修正軌道を引き直す時間、又は車両を修正軌道に追従させる時間等、追従制御の時間において車両が目標軌道から外れた実軌道上を走行してしまうおそれである。また、そうした追従制御の時間において、実軌道の急変又はハンチングが惹起されることで、乗員の乗り心地が悪化するおそれである。
【0006】
ここで例えば、車両歩行者との衝突回避の必要性がある走行環境、又は交通流れに対する制約が大きい走行環境等では、特に目標追従性の向上が重要な課題となる。加えて例えば、車両の運動方向を予測しながら行動する交通参加者が存在する走行環境等では、目標追従性の低下に起因する実軌道の急変又はハンチングが、交通参加者による車両運動予測の誤解を招く懸念もある。
【0007】
このような状況下での鋭意研究結果として発明者は、自動運転モードの車両では駆動、制動、及び操舵を乗員の五感で把握することが難しくなるため、それら三機能の構成部品に例えば経年劣化等の特性変化が生じると、目標追従性の低下する要因となることを見出した。
【0008】
そこで、特許文献2に準じて部品を交換するような場合、自動運転モードの車両では、乗員の五感把握を起点とする原因追求はできないため、特性変化の解消に適合した交換部品を乗員自らが指定することは難しくなる。特に駆動、制動、及び操舵に関連する部品は多岐に亘っているため、特性変化の違いに応じた交換部品の組み合わせ数は膨大となり、乗員による指定は困難を極めてしまう。しかも、交換後の運動変化に対して乗員の五感による調整機会が制限される自動運転モードの車両では、交換部品の適合度への要求が厳しくなっている。
【0009】
さらに自動運転モードの車両では、駆動、制動、及び操舵に関連する部品を交換することによる更新だけでなく、運転を制御して駆動状態、制動状態、及び操舵状態を制御するための制御パラメータを設定変更することによる更新についても、同様に更新後の適合度への要求が厳しくなっている。
【0010】
以上より本開示の課題は、目標追従性を確保するために車両の状態を適正に管理する車両管理装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、目標追従性を確保するために車両の状態を適正に管理する車両管理方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、目標追従性を確保するために車両の状態を適正に管理する車両管理プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
本開示の第一態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断部(100,3101)と、
基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力部(120,3121)とを、備え
異常判断部は、車両の目標軌道と実走行位置とに関する差が許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常を走行異常として判断し、
差が許容範囲外に逸脱した場合に、走行異常が特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、指定出力部は、交換要求部品の指定出力を先送りする。
本開示の第二態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断部(100,3101)と、
基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力部(120,3121)とを、備え、
異常判断部は、車両の目標速度と実走行速度とに関する差が許容範囲外に逸脱する、速度追従異常を走行異常として判断し、
差が許容範囲外に逸脱した場合に、走行異常が特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、指定出力部は、交換要求部品の指定出力を先送りする。
【0013】
本開示の第態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理方法であって、
車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断工程(S101,S102)と、
基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
異常判断工程において、車両の目標軌道と実走行位置とに関する差が許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常を走行異常として判断し、
差が許容範囲外に逸脱した場合に、走行異常が特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、指定出力工程において、交換要求部品の指定出力を先送りする。
本開示の第四態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理方法であって、
車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する異常判断工程(S101,S102)と、
基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力する指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
異常判断工程において、車両の目標速度と実走行速度とに関する差が許容範囲外に逸脱する、速度追従異常を走行異常として判断し、
差が許容範囲外に逸脱した場合に、走行異常が特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、指定出力工程において、交換要求部品の指定出力を先送りする。
【0014】
本開示の第態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
命令は、
車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断させる異常判断工程(S101,S102)と、
基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力させる指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
異常判断工程において、車両の目標軌道と実走行位置とに関する差が許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常を走行異常として判断させ、
差が許容範囲外に逸脱した場合に、走行異常が特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、指定出力工程において、交換要求部品の指定出力を先送りさせる。
本開示の第六態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
命令は、
車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーン(M)において、基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断させる異常判断工程(S101,S102)と、
基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品(X)を、指定出力させる指定出力工程(S103,S104)とを、含み、
異常判断工程において、車両の目標速度と実走行速度とに関する差が許容範囲外に逸脱する、速度追従異常を走行異常として判断させ、
差が許容範囲外に逸脱した場合に、走行異常が特性変化以外の別要因に関連すると予測されると、指定出力工程において、交換要求部品の指定出力を先送りさせる。
【0015】
これら第一~第態様によると、車両の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーンにおいては、駆動系、制動系、及び操舵系である基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無が、判断される。そこで第一~第態様では、基本機能系を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品が、指定出力される。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードでの車両の走行方向変化に伴って、目標追従性を左右する基本機能系の特性変化に関連した走行異常が生じたとしても、当該走行異常を解消する交換要求部品を指定出力によって通知することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0016】
本開示の第態様は、
プロセッサ(12)を有し、加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
プロセッサは、
車両の自動運転モードにおいて基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無を、判断することと、
判断された走行変動に合わせての基本機能系の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理を、車両に与えることとを、実行するように構成され
緩和処理を与えることは、
基本機能系による車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合に、緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する緩和パラメータを指定出力することとを、含む。
【0017】
本開示の第態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するためにプロセッサ(12)により実行される車両管理方法であって、
車両の自動運転モードにおいて基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無を、判断することと、
判断された走行変動に合わせての基本機能系の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理を、車両に与えることとを、含み、
緩和処理を与えることは、
基本機能系による車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合に、緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する緩和パラメータを指定出力することとを、含む。
【0018】
本開示の第態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
命令は、
車両の自動運転モードにおいて基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無を、判断させることと、
判断された走行変動に合わせての基本機能系の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理を、車両に与えさせることとを、含み、
緩和処理を与えさせることは、
基本機能系による車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定させることと、
判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合に、緩和パラメータを設定変更により更新させることと、
判定されたリスクレベルが許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する緩和パラメータを指定出力させることとを、含む。
【0019】
これら第~第態様によると、車両の自動運転モードにおいては、駆動系、制動系、及び操舵系である基本機能系の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無が、判断される。そこで第~第態様では、判断された走行変動に合わせての基本機能系の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理が、車両に与えられる。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードにおいて、目標追従性を左右する基本機能系の特性変化に関連した走行変動が生じたとしても、当該走行変動を解消するように緩和処理を遂行することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0020】
本開示の第態様は、
プロセッサ(12)を有し、加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理する車両管理装置(1)であって、
プロセッサは、
車両の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される基本機能系の特性変化の有無を、判断することと、
判断された特性変化に合わせての基本機能系の更新により走行変動を緩和するための緩和処理を、車両に与えることとを、実行するように構成され
緩和処理を与えることは、
基本機能系による車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合に、緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する緩和パラメータを指定出力することとを、含む。
【0021】
本開示の第十一態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するためにプロセッサ(12)により実行される車両管理方法であって、
車両の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される基本機能系の特性変化の有無を、判断することと、
判断された特性変化に合わせての基本機能系の更新により走行変動を緩和するための緩和処理を、車両に与えることとを、含み、
緩和処理を与えることは、
基本機能系による車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合に、緩和パラメータを設定変更により更新することと、
判定されたリスクレベルが許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する緩和パラメータを指定出力することとを、含む。
【0022】
本開示の第十二態様は、
加速を与える駆動系(7)、減速を与える制動系(8)、及び転舵を与える操舵系(9)を、基本機能系(6)として搭載した車両(2)の、状態を管理するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行させる命令を含む車両管理プログラムであって、
命令は、
車両の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される基本機能系の特性変化の有無を、判断させることと、
判断された特性変化に合わせての基本機能系の更新により走行変動を緩和するための緩和処理を、車両に与えさせることとを、含み、
緩和処理を与えさせることは、
基本機能系による車両の運転を制御するための制御パラメータのうち、走行変動を緩和するための緩和パラメータの、設定変更によるリスクレベルを判定させることと、
判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合に、緩和パラメータを設定変更により更新させることと、
判定されたリスクレベルが許容範囲外の場合に、設定変更による更新を要求する緩和パラメータを指定出力させることとを、含む。
【0023】
これら第~第十二態様によると、車両の自動運転モードにおいては、駆動系、制動系、及び操舵系である基本機能系の、走行変動を招来すると予測される特性変化の有無が、判断される。そこで第~第十二態様では、判断された特性変化に合わせての基本機能系の更新により走行変動を緩和するための緩和処理が、車両に与えられる。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードにおいて、目標追従性を左右する基本機能系の特性変化が生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を解消するように緩和処理を遂行することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両の状態を適正に管理することが、可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第一実施形態による車両管理装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】第一実施形態による車両管理装置の搭載される車両及び基本機能系の構成部品を示す模式図である。
図3】第一実施形態による車両管理装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】第一実施形態による車両管理装置の管理対象シーンを示す模式図である。
図5】第一実施形態による車両管理装置の管理対象シーンを示す模式図である。
図6】第一実施形態による車両管理装置の管理対象シーンを示す模式図である。
図7】第一実施形態による車両管理装置の管理対象シーンを示す模式図である。
図8】第一実施形態による車両管理装置の軌道追従異常について説明するための模式図である。
図9】第一実施形態による車両管理装置の速度追従異常について説明するための模式図である。
図10】第一実施形態による車両管理装置の軌道追従異常について説明するための模式図である。
図11】第一実施形態による車両管理装置の軌道追従異常について説明するための模式図である。
図12】第一実施形態による車両管理装置の速度追従異常について説明するための模式図である。
図13】第一実施形態による車両管理装置の速度追従異常について説明するための模式図である。
図14】第一実施形態による車両管理装置の速度追従異常について説明するための模式図である。
図15】第一実施形態による車両管理装置の要因予測について説明するためのフローチャートである。
図16】第一実施形態による車両管理装置の指定出力について説明するための模式図である。
図17】第一実施形態による車両管理装置の指定出力について説明するための模式図である。
図18】第一実施形態による車両管理装置の指定出力について説明するためのフローチャートである。
図19図18の変形例を示すフローチャートである。
図20】第一実施形態による車両管理装置の指定出力について説明するための模式図である。
図21】第一実施形態による車両管理装置の指定出力について説明するための模式図である。
図22】第一実施形態による車両管理方法を示すフローチャートである。
図23】第二実施形態による車両管理装置の詳細構成を示すブロック図である。
図24】第二実施形態による車両管理装置の学習について説明するための模式図である。
図25】第三実施形態による車両管理装置の機能構成を示すブロック図である。
図26】第三実施形態による車両管理方法を示すフローチャートである。
図27】第四実施形態による車両管理装置の機能構成を示すブロック図である。
図28】第四実施形態による車両管理方法を示すフローチャートである。
図29】第一~第四実施形態の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の車両管理装置1は、車両2の状態を管理する。車両2は、例えば乗用車、商用車、緊急車両、又はマイクロモビリティ等である。車両2は、自律運転制御又は高度運転支援制御による自動運転モードにおいて、定常的若しくは一時的に自動走行可能となっている。特に、自律運転制御による車両2の自動運転モードでは、システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行する等の条件付自動運転レベルに定義されるレベル3、あるいはそれ以上のレベルが実現される場合に、車両管理装置1は好適となっている。
【0026】
図2に示すように車両2には、基本機能系6として駆動系7、制動系8、及び操舵系9が搭載される。駆動系7は、車両2に加速を与えるための部品から構成される。駆動系7を構成する部品は、例えばタイヤ60、バッテリ61、アクセルペダル70、駆動用モータ71、駆動用エンジン、始動スイッチ、トランスミッション、及びシフトユニット等のうち、複数種類である。制動系8は、車両2に減速を与えるための部品から構成される。制動系8を構成する部品は、例えばタイヤ60、バッテリ61、ブレーキペダル80、摩擦制動ユニット81、油圧回路、及び回生用モータ等のうち、複数種類である。ここで摩擦制動ユニット81とは、ブレーキシューとブレーキドラムとのうち、少なくとも一方を含む。操舵系9は、車両2に転舵を与えるための部品から構成される。操舵系9を構成する部品は、例えばタイヤ60、バッテリ61、ステアリングホイール90、転舵ユニット、及びパワーステアリング用モータ等のうち、複数種類である。
【0027】
以上において、基本機能系6の各系7~9を構成する部品は、例えば上述のタイヤ60及びバッテリ61のように少なくとも二系統間で共通化されていてもよい。ここでバッテリ61は、例えば鉛蓄電池、又はリチウムイオン電池等を、含む。また、基本機能系6の各系7~9を構成する部品は、例えばボルト、ナット、ネジ、又は電気配線等のレベルまで、細分化されていてもよい。
【0028】
車両2には、図1,3に示す如きセンサ系3が搭載される。センサ系3は、車両2において自動運転モード等の運転制御に利用される各種情報を、取得する。センサ系3は、外界センサ30と内界センサ31とを含んで構成される。
【0029】
外界センサ30は、車両2の周辺環境となる外界の情報を、生成する。外界センサ30は、車両2の外界に存在する物体を検知することで、外界情報を生成してもよい。こうした物体検知タイプの外界センサ30は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。外界センサ30は、車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星又はITS(Intelligent Transport Systems)の路側機から信号受信することで、外界情報を生成してもよい。こうした信号受信タイプの外界センサ30は、例えばGNSS受信機、及びテレマティクス受信機等のうち、少なくとも一種類である。
【0030】
内界センサ31は、車両2の内部環境となる内界の情報を、生成する。内界センサ31は、車両2の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を生成してもよい。こうした物理量検知タイプの内界センサ31は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、ドップラー速度センサ、ベルヌーイ流体速度センサ、ジャイロセンサ、タイヤモニタ、及びブレーキモニタ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ31は、車両2の内界において乗員に関する特定状態を検知することで、内界情報を生成してもよい。こうした乗員状態検知タイプの内界センサ31は、例えばドライバステータスモニタ、アクチュエータセンサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0031】
ここでドライバステータスモニタは、車両2を運転する乗員の状態として、例えば顔の向き、眠気、及び姿勢等のうち、少なくとも一種類を検知する。アクチュエータセンサは、車両2において基本機能系6の走行アクチュエータに関する乗員の指示状態として、例えばペダル70,80の操作位置、ステアリングホイール90の操舵角、始動スイッチのオンオフ状態、及びシフトレバーのシフト位置等のうち、少なくとも一種類を検知する。車内機器センサは、車内機器に関する乗員の操作状態として、例えばオンオフスイッチの操作状態、タッチパネルの操作状態、及び非接触認識可能なジェスチャー操作等のうち、少なくとも一種類を検知する。
【0032】
車両2には、地図ユニット4が搭載される。地図ユニット4は、車両2において自動運転モードを含む運転制御に利用される地図情報を、非一時的に記憶する。地図ユニット4は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地図ユニット4は、自己位置を含んだ車両2の状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図ユニット4は、車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地図ユニット4は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されてもよい。
【0033】
地図ユニット4は、例えば車両2の外部との無線通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。ここで地図情報は、車両2の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を、含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を、含んでいてもよい。
【0034】
車両2には、情報提示系5が搭載される。情報提示系5は、車両2の乗員に向けて、各種情報を提示する。情報提示系5は、視覚提示ユニット50と聴覚提示ユニット51とを含んで構成される。
【0035】
視覚提示ユニット50は、乗員の視覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。視覚提示ユニット50は、例えばHUD(Head-up Display)、MFD(Multi Function Display)、コンビネーションメータ、及びナビゲーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。聴覚提示ユニット51は、乗員の聴覚を刺激することで、提示対象情報を伝達する。聴覚提示ユニット51は、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0036】
情報提示系5は、車両2への搭載ユニット50,51とは別に、例えば無線通信等の利用により車両2の外部に、設置されていてもよい。この場合における情報提示系5の設置箇所は、例えば整備工場、ディーラー、及び遠隔支援センタ等のうち、少なくとも一箇所である。加えて情報提示系5としては、車両2への搭載ユニット50,51とは別に乗員が所有する、視覚提示及び聴覚提示の可能なモバイル端末が、追加されてもよい。
【0037】
図1に示す車両管理装置1は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス、及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介して、センサ系3と地図ユニット4と情報提示系5とに接続されている。車両管理装置1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成される。車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、車両2において自動運転モードを含む運転制御を実現する、運転制御ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、車両2における基本機能系6の走行アクチュエータを個別に制御する、アクチュエータECUであってもよい。車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、自己位置を含んだ車両2の状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、車両2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、情報提示系5の情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。
【0038】
車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0039】
プロセッサ12は、メモリ10に記憶された車両プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより車両管理装置1は、車両2の状態を管理するための機能部(即ち、機能ブロック)を、複数構築する。このように車両管理装置1では、車両2の状態を管理するためにメモリ10に記憶された車両管理プログラムが複数の命令をプロセッサ12に実行させることで、複数の機能部が構築される。車両管理装置1により構築される複数の機能部には、図3に示すように、異常判断部100と指定出力部120とが含まれる。
【0040】
異常判断部100は、車両2の走行シーンのうち、図4~7に示す如き管理対象シーンMにおいて予測される走行異常の有無を、判断する。ここで管理対象シーンMは、例えば走行路の曲率形状又は交差点通過等に応じて自動運転モードでの走行方向が変化する、曲がり走行箇所での走行シーンに、定義される。具体的に管理対象シーンMは、図4~6に示すように変化前の走行方向に対して変化後の走行方向が45度以上に傾斜する、走行シーンを含む。また特に管理対象シーンMは、図7に示すように変化後の走行方向における車線数が複数となる、走行シーンを含む。
【0041】
異常判断部100の判断する走行異常とは、管理対象シーンMにおいて基本機能系6の各系7~9に惹起される特性変化と関連することが、予測される異常を、意味する。また、そうした走行異常と関連する特性変化とは、各系7~9を構成する部品の特性(即ち、性能)が、例えば経年劣化等に起因して初期特性から変動することを、意味する。これらの意味から走行異常は、想定される管理対象シーンMでの各系7~9の特性変化毎、又はそれら特性変化のうち二系統の組み合わせ毎に、例えばビッグデータ等の過去データを解析した結果から発生するとの事前予測が得られる異常の候補を、含むことになる。そこで異常判断部100は、図8,9に示す如き追従異常Rt,Rvのうち、少なくとも一方を走行異常として、その有無を判断する。
【0042】
図8に示すように軌道追従異常Rtは、車両2の目標軌道Ttと実走行位置Prとに関する差Δが許容範囲外に逸脱する、目標追従性の異常である。そこで、軌道追従異常Rtを判断する異常判断部100は、自動運転モードにおいて車両2の運転を制御する走行パラメータの目標値である、目標パラメータに基づくことで、目標軌道Ttを取得する。また、軌道追従異常Rtを判断する異常判断部100は、物体検知タイプ及び信号受信タイプのうち少なくとも一方の外界センサ30による取得情報、又はそうした取得情報と地図ユニット4の地図情報とのマッチング(例えば自己位置推定の結果等を含む)に基づくことで、実走行位置Prを取得する。
【0043】
異常判断部100は、このようにして取得した目標軌道Tt及び実走行位置Prから、軌道追従異常Rtの判断を実行する。このとき異常判断部100は、設定区間内の目標軌道Ttに対して、当該設定区間内における複数の実走行位置Prを内的補間してなる実軌道Trとの差Δの総和又は平均値を、軌道追従異常Rtの判断に用いることで、判断精度を高めてもよい。あるいは異常判断部100は、目標軌道Tt上において実走行位置Prに対応する代表点に対して、当該実走行位置Prとの差Δを、軌道追従異常Rtの判断に用いることで、判断演算リソースを節約してもよい。
【0044】
軌道追従異常Rtの差Δに対する許容範囲は、閾値以下又は閾値未満の範囲に定義される。かかる定義下において異常判断部100は、差Δが許容範囲外に逸脱する、即ち閾値超過又は閾値以上となることで、軌道追従異常Rtが有りとの仮判断を下す。このとき異常判断部100は、図10に示すように制御タイミング毎に差Δが許容範囲外となれば、仮判断を下してもよい。あるいは異常判断部100は、図11に示すように複数の制御タイミングで連続的又は平均的に差Δが許容範囲外となれば、仮判断を下してもよい。
【0045】
一方、図9に示すように速度追従異常Rvは、車両2の目標速度Vtと実走行速度Vrとに関する差δが許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常Rtとは別の目標追従性異常である。そこで、速度追従異常Rvを判断する異常判断部100は、自動運転モードにおいて車両2の運転を制御する目標パラメータに基づくことで、目標速度Vtを取得する。また、速度追従異常Rvを判断する異常判断部100は、物理量検知タイプの内界センサ31による取得情報に基づくことで、実走行速度Vrを取得する。
【0046】
異常判断部100は、このようにして取得した目標速度Vt及び実走行速度Vrから、速度追従異常Rvの判断を実行する。このとき異常判断部100は、一時系列点における目標速度Vtと実走行速度Vrとの差δを、軌道追従異常Rtの判断に用いることで、判断演算リソースを節約してもよい。あるいは異常判断部100は、設定区間内における複数時系列点での目標速度Vtと実走行速度Vrとについて、それぞれ総和又は平均した値同士の差δを、速度追従異常Rvの判断に用いることで、判断精度を高めてもよい。
【0047】
速度追従異常Rvの差δに対する許容範囲は、閾値以下又は閾値未満の範囲に定義される。かかる定義下において異常判断部100は、差δが許容範囲外に逸脱する、即ち閾値超過又は閾値以上となることで、速度追従異常Rvが有りとの仮判断を下す。このとき異常判断部100は、図12に示すように制御タイミング毎に差δが許容範囲外となれば、仮判断を下してもよい。あるいは異常判断部100は、図13に示すように複数の制御タイミングで連続的又は平均的に差δが許容範囲外となれば、仮判断を下してもよい。
【0048】
ここで、速度追従異常Rvの差δに対する許容範囲を決める閾値は、目標速度Vtと実走行速度Vrとの大小関係に応じた値に、設定されてもよい。例えば図14に示すように、Vr-Vt>0の場合を判断するための閾値は、Vr-Vt<0の場合を判断するための閾値よりも小さく設定されることで、基本機能系6の特性変化によって実走行速度Vrが目標速度Vtよりも過大となるのを抑制してもよい。
【0049】
異常判断部100は、このような追従異常Rt,Rvを判断するための差Δ,δのうち、仮判断を下した少なくとも一方である注目差(図10~14参照)が許容範囲外に逸脱した場合には、当該走行異常が特性変化以外の別要因に関連するかを予測する。その結果、別要因に関連するとの予測が成り立たない場合、走行異常が有りとの仮判断を、異常判断部100が確定する。一方、基本機能系6の特性変化ではない、別要因に関連するとの予測が成り立つ場合、異常判断部100が仮判断を破棄する。
【0050】
ここで別要因とは、図15のフローに示す複数の要因A~Eのうち、少なくとも一種類を含む。具体的に要因Aは、車両2の走行した距離又は時間の経過要因である。そこで、例えば交換要求部品X毎に使用開始から走行距離若しくは走行時間が、判断基準値以下又は判断基準値未満となる場合等に、S1では要因Aとの関連予測が成立と判断されることで、S2において異常判断部100での仮判断が破棄される。
【0051】
要因Bは、車両2における一過性の外乱要因である。そこで、例えば同一走行箇所における注目差が、天候又は路面状況に起因して非定常的に許容範囲外となった場合等に、S3では要因Bとの関連予測が成立と判断されることで、S2において異常判断部100での仮判断が破棄される。
【0052】
要因Cは、車両2が走行する走行路の構造要因である。そこで、例えば走行路の曲率が判断基準値超過又は判断基準値以上となることで、許容範囲外の注目差が発生し易い構造の場合等に、S4では要因Cとの関連予測が成立と判断されることで、S2において異常判断部100での仮判断が破棄される。
【0053】
要因Dは、車両2における目標パラメータの生成要因である。そこで、例えば目標軌道Ttに関する目標パラメータの生成から、管理対象シーンMにおける曲がり走行箇所への進入までに要する時間が、例えば障害物の存在若しくは目的地の迷い等により判断基準値超過又は判断基準値以上となる場合等に、S5では要因Dとの関連予測が成立と判断されることで、S2において異常判断部100での仮判断が破棄される。
【0054】
要因Eは、車両2に搭載されたセンサ系3の状態要因である。そこで、例えばセンサ系3の一センサによる取得情報に基づいた状態推定と、同系3の別センサによる取得情報に基づいた状態推定とのずれが、判断基準値超過又は判断基準以上となる場合等に、S6では要因Eとの関連予測が成立と判断されることで、S2において異常判断部100での仮判断が破棄される。ここで状態推定とは、例えばカルマンフィルタ等を用いて、車両2の位置又は速度に関して実行されるとよい。
【0055】
尚、こうした要因A~Eによる仮判断の破棄に際しては、例えばセンサ系3のキャリブレーション又は交換、車両2における運転制御用プログラムのアップデート又は開発元への連絡、センサ系3での検知ロジックの更新、及び目標軌道Ttの再生成等のうち、少なくとも一種類が併せて実行されてもよい。
【0056】
図3に示す指定出力部120は、基本機能系6の各系7~9を構成する複数部品の中から、異常判断部100により有判断の確定された走行異常に合わせて、図16に示す如く交換を要求する交換要求部品Xを、指定出力する。換言すれば、異常判断部100により有判断の破棄された場合に指定出力部120は、交換要求部品Xの指定出力を先送りすることとなる(先述した図15の例におけるS2参照)。
【0057】
ここで交換要求部品Xは、有判断された走行異常を正常に戻すために交換の必要な、一部品又は複数部品の組み合わせにより、指定される。具体的に走行異常が軌道追従異常Rtの場合、例えば図17に示す如き旋回中に目標軌道Ttよりも実軌道Trにおいて車両2の後部が、旋回方向外側に運動したとする。この場合には、例えば図16に示すように、制動系8の摩擦制動ユニット81を構成するブレーキシューとブレーキドラムとの組み合わせが、交換要求部品Xに指定される。
【0058】
一方、走行異常が速度追従異常Rvの場合、例えば図18のフローに示すように車両2の減速状況及び基本機能系6の劣化推定に基づき、制動系8の構成部品が交換要求部品Xとして指定される。具体的に図18の例では、S11において自然走行時の制御タイミングにVt<Vrによる許容範囲外の差δ(即ち、減速し難い状態)が確認されると、S12においてタイヤ60のすり減り劣化が内界センサ31としてのタイヤモニタにより判定される。その結果、タイヤ60のすり減り劣化が確認されると、S13において当該タイヤ60が交換要求部品Xに指定される。尚、図19に示すようにS12の判定は、必ずしも実行されなくてもよい。また図示はしないが、S11~S13の組は省かれてもよい。
【0059】
さらに図18の例では、S14において加速時の制御タイミングにVr<Vtによる許容範囲外の差δ(即ち、加速し難い状態)が確認されると、S15においてバッテリ61が交換要求部品Xに指定される。またさらに図18の例では、S16において制動時の制御タイミングにVt<Vrによる許容範囲外の差Δ(即ち、制動し難い状態)が確認されると、S17において摩擦制動ユニット81のうちブレーキシューのすり減り劣化が内界センサ31としてのブレーキモニタにより判定される。その結果、ブレーキシューのすり減り劣化が確認されると、S18において当該ブレーキシューが交換要求部品Xに指定される。尚、図19に示すようにS17の判定は、必ずしも実行されなくてもよい。また図示はしないが、S14,S15の組とS16~S18の組とのうち、少なくとも一方の組は省かれてもよい。さらに図示はしないが、回生制動時の制御タイミングにVt<Vrによる許容範囲外の差Δ(即ち、減速し難い状態)が確認された場合にも、バッテリ61が交換要求部品Xに指定されてもよい。
【0060】
指定出力部120は、このようにして指定した交換要求部品Xに関連する交換情報Iを、生成してから出力する。ここで交換情報Iは、例えば図20,21に示すように、交換要求部品Xの品名、品番、交換指示、交換手順、訓練された交換依頼先、注意事項、車種情報、及び購入又は交換の履歴等のうち、少なくとも一種類である。
【0061】
指定出力部120は、情報提示系5による情報提示態様のうち、図20に示すように少なくとも視覚提示となる表示によって、交換情報Iを出力する。ここで交換情報Iは、例えば文字、マーク、アニメーション、及び二次元コード等のうち、少なくとも一種類により表示される。こうした交換情報Iを表示する情報提示系5としては、車両2に搭載の視覚提示ユニット50は必須となるが、これに加えて、上述の如き車両2外の設置ユニットと乗員のモバイル端末とのうち、少なくとも一方が用いられてもよい。
【0062】
尚、交換情報Iのうち品番及び二次元コードは、例えば図21(a),(b)に示すように、交換要求部品X又はそのケーシングY等に掲示されていてもよい。これにより、誤交換の抑止が可能となる。
【0063】
ここまで説明した機能部100,120の共同により、車両管理装置1が車両2の状態を管理する車両管理方法のフローを、図22に従って以下に説明する。尚、本フローにおける各「S」は、車両管理プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0064】
S101において異常判断部100は、車両2の走行シーンのうち、管理対象シーンMにおいて基本機能系6の特性劣化に関連すると予測される走行異常の有無を、判断する。その結果、追従異常Rt,Rvに関連する差Δ,δのうち、少なくとも一方である走行異常の注目差が許容範囲外に逸脱している場合には、異常判断部100により走行異常が有りとの仮判断が下されることで、本フローがS102へ移行する。
【0065】
S102において異常判断部100は、仮判断の走行異常が特性変化以外の別要因に関連するか否かを、予測する。その結果、走行異常が別要因に関連するとの予測が成り立たない場合には、異常判断部100により走行異常が有りとの仮判断が確定されることで、本フローがS103へ移行する。
【0066】
S103において指定出力部120は、基本機能系6を構成する複数部品の中から、異常判断部100により走行異常の有判断が確定された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品Xを、指定出力する。
【0067】
S102において走行異常が別要因に関連するとの予測が成り立つ場合には、異常判断部100により走行異常が有りとの仮判断が破棄されることで、本フローがS104へ移行する。S104において指定出力部120は、交換要求部品Xの指定出力を先送りする。
【0068】
S104の実行後と、S101において走行異常は無しの判断が下された場合とには、本フローの今回実行が終了する。このように本フローでは、S101,S102が異常判断工程に相当し、S103,S104が指定出力工程に相当する。
【0069】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0070】
第一実施形態によると、車両2の走行シーンのうち、自動運転モードでの走行方向が変化する管理対象シーンMにおいては、駆動系7、制動系8、及び操舵系9である基本機能系6の特性変化に関連すると予測される走行異常の有無が、判断される。そこで第一実施形態では、基本機能系6を構成する複数部品の中から、判断された走行異常に合わせて交換を要求する交換要求部品Xが、指定出力される。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードでの車両2の走行方向変化に伴って、目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化に関連した走行異常が生じたとしても、当該走行異常を解消する交換要求部品Xを指定出力によって通知することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0071】
第一実施形態によると、車両2の目標軌道Ttと実走行位置Prとに関する差Δが許容範囲外に逸脱する、軌道追従異常Rtが走行異常として判断されてもよい。この場合、目標軌道Ttへの追従性低下を表す軌道追従異常Rtが生じたとしても、当該追従異常Rtに適合する交換要求部品Xを指定出力によって通知することができる。故に、車両2の状態を適正に管理して目標追従性の確保に必要な部品Xの交換を促すことが、可能となる。
【0072】
第一実施形態によると、車両2の目標速度Vtと実走行速度Vrとに関する差δが許容範囲外に逸脱する、速度追従異常Rvが走行異常として判断されてもよい。この場合、車両2の走行方向変化に際しては目標速度Vtへの追従性に依存する旋回運動性の悪化から目標軌道Ttへの追従性低下を招く速度追従異常Rvが生じたとしても、当該追従異常Rvに適合する交換要求部品Xを指定出力によって通知することができる。故に、車両2の状態を適正に管理して目標追従性の確保に必要な部品Xの交換を促すことが、可能となる。
【0073】
第一実施形態によると、目標軌道Ttと実走行位置Prとに関する差Δ及び目標速度Vtと実走行速度Vrとに関する差δのうち、少なくとも一方が許容範囲外に逸脱した場合、走行異常が特性変化以外の別要因に関連と予測されると、交換要求部品Xの指定出力は先送りされる。ここで特に別要因とは、車両2の走行した距離又は時間の経過要因Aと、車両2における一過性の外乱要因Bと、車両2が走行する走行路の構造要因Cと、車両2における目標パラメータの生成要因Dと、車両2に搭載されたセンサ系3の状態要因Eとのうち、少なくとも一種類を含む。こうしたことによれば、交換要求部品Xの指定出力を、基本機能系6の特性変化に関連する走行異常に限定して、適合させることができる。故に、車両2の状態を適正に管理して目標軌追従性の確保に必要な部品Xの交換を促す効果につき、信頼性を担保することが可能となる。
【0074】
第一実施形態によると、交換要求部品Xの指定出力に当たっては、同部品Xに関連して表示される交換情報Iが、生成される。これによれば、交換情報Iの表示によって交換要求部品Xを直接的に通知することができる。故に、車両2の状態を適正に管理して目標追従性の確保に必要な部品Xの交換を促す効果自体を、高めることが可能となる。
【0075】
第一実施形態によると、管理対象シーンMは、変化前の走行方向に対して変化後の走行方向が45度以上に傾斜する、車両2の走行シーンを含む。これによれば、目標追従性が必要となる管理対象シーンMの中でも特に、少なくとも制動系8の特性変化による影響が大きい走行シーンにおいて走行異常が生じると、当該走行異常に適合する交換要求部品Xを指定出力によって通知することができる。故に、走行方向変化に伴う安全性に配慮した車両2の状態の適正管理により、目標追従性の確保に必要な部品Xの交換を促すことが、可能となる。
【0076】
第一実施形態によると、変化後の走行方向における車線数が複数となる、車両2の走行シーンを含む。これによれば、目標追従性が必要となる管理対象シーンMの中でも特に、走行方向変化先が複数車線であることで交通参加者に誤解を与え易い走行シーンにおいて走行異常が生じると、当該走行異常に適合する交換要求部品Xを指定出力によって通知することができる。故に、交通参加者へ配慮した車両2の状態の適正管理により、目標追従性の確保に必要な部品Xの交換を促すことが、可能となる。
【0077】
(第二実施形態)
第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0078】
第二実施形態の車両管理装置1により構築される複数の機能部には、異常判断部100と指定出力部120とに加えて、図23に示すように学習部2140が含まれる。学習部2140は、管理対象シーンMを含む任意の走行シーンにおいて車両2の運転を制御するための制御パラメータである目標パラメータを、当該運転の結果に基づき学習する。ここで学習は、例えばニューラルネットワーク等の機械学習モデルを用いて、実行される。こうした学習のタイミングは、通常は走行路における車両2の走行時又は停止時となるが、例えば交換要求部品Xが実際に交換された直後の、図24に示す如きテストコースZにおける車両2の走行時又は停止時であってもよい。
【0079】
(作用効果)
以上説明した第二実施形態に特有の作用効果を、以下に説明する。
【0080】
第二実施形態によると、管理対象シーンMにおいて車両2の運転を制御する目標パラメータが、当該運転の結果に基づき学習される。これによれば、第一実施形態と同様に走行異常を解消する交換要求部品Xが指定出力によって通知される第二実施形態では、目標追従性の確保に必要な部品Xが交換されないままに不適切な目標パラメータが学習されてしまう事態を、抑制することが可能となる。さらに、部品Xが実際に交換された後には、当該交換後の部品Xに適した目標パラメータを学習することも、可能となる。
【0081】
(第三実施形態)
第三実施形態は、第一実施形態と第二実施形態とを組み合わせて、さらに実行機能を追加した変形例である。
【0082】
車両2において基本機能系6の駆動系7には、同系7による車両2の運転を制御して駆動状態を可変調整するための制御パラメータを設定する、制御系も含まれる。同様に、車両2において基本機能系6の制動系8には、同系8による車両2の運転を制御して制動状態を可変調整するための制御パラメータを設定する、制御系も含まれる。さらに、車両2において基本機能系6の操舵系9には、同系9による車両2の運転を制御して操舵状態を可変調整するための制御パラメータを設定する、制御系も含まれる。これら各系7~9の制御系は、少なくとも二系統の間において共通であってもよいし、互いに独立していてもよい。そこで各系7~9の制御系は、運転制御ECU、アクチュエータECU、及びそれら以外のECU等のうち、少なくとも一種類により構成されていてもよい。
【0083】
第三実施形態の車両管理装置1により構築される複数の機能部には、図25に示すように予測判断部3100、更新処理部3120、及び学習部2140が含まれる。予測判断部3100には、複数のサブ機能部として異常判断部3101、及び更新後判断部3102が含まれる。
【0084】
異常判断部3101は、車両2の自動運転モードにおいて基本機能系6の特性変化に関連すると予測される走行変動として、各系7~9の例えば経年劣化等による部品特性変化に関連した走行異常の有無と、予測有の場合での別要因の有無とを、第一実施形態の異常判断部100に準じて判断する。但し、異常判断部3101が走行異常を判断する管理対象シーンMとしては、曲がり走行箇所でのカーブ走行シーン以外にも、例えば駐車停車シーン、又は高速走行シーン(後者の場合はカーブ走行との組み合わせも含む)等が監視されてもよい。また、そうした追加の管理対象シーンMに応じて、追従異常Rt,Rv又はそれらの異常Rt,Rv以外となる走行異常が、判断されてもよい。
【0085】
更新後判断部3102は、車両2の自動運転モードにおいて基本機能系6の特性変化に関連すると予測される走行変動として、各系7~9の更新後における特性変化により招来が予測される走行変動の有無を、判断する。ここで系7~9の更新とは、系7~9を構成する部品の交換、系7~9の制御系による制御パラメータの設定変更、又はそれら交換及び設定変更の双方であってもよい。また、そうした系7~9の更新は、後述する更新処理部3120の更新処理による設定変更での更新又は指定出力を受けての更新、外部から通信を介した指示を受けての更新、所定の条件を満たす場合の更新、及び更新処理部3120の更新処理とは無関係な車両2のユーザ意思による更新等のうち、少なくとも一種類が挙げられるが、これら以外の更新であってもよい。さらに、いずれかの系7~9の更新後に更新後判断部3102が判断する走行変動としては、異常判断部3101の異常判断に準じて、管理対象シーンMでの走行異常が監視される。
【0086】
更新処理部3120には、複数のサブ機能部として部品指定出力部3121、リスク判定部3122、パラメータ設定変更部3123、及びパラメータ指定出力部3124が含まれる。これらのうち部品指定出力部3121、パラメータ設定変更部3123、及びパラメータ指定出力部3124は、予測判断部3100により判断された走行変動に合わせての基本機能系6の更新により、当該走行変動を緩和するための緩和処理を車両2に与えるように機能する。一方でリスク判定部3122は、パラメータ設定変更部3123とパラメータ指定出力部3124とによる各緩和処理のうち、最適な処理を選択するためのリスクレベルを判定するように機能する。
【0087】
部品指定出力部3121は、異常判断部3101により有判断の確定された走行異常である走行変動に合わせた更新として、当該走行変動を緩和するために交換を要求する交換要求部品Xを、第一実施形態の指定出力部120に準じて指定出力する。換言すれば、部品指定出力部3121は、異常判断部3101により有判断が破棄された場合には、第一実施形態の指定出力部120に準じて、交換要求部品Xの指定出力を先送りする。
【0088】
部品指定出力部3121において交換要求部品Xは、例えば車両2の運動情報等といった判断材料が不十分な場合には、大きな単位で部品が指定出力される一方、当該判断材料が十分又は詳細な場合には、小さな単位で部品が指定出力されてもよい。ここで、タイヤに関する具体例では、判断材料が不十分な場合にはタイヤ全体が指定出力される一方、判断材料が十分又は詳細な場合にはブレーキシューが指定出力される。また、車両2において左右対称の部品は、片側のみが走行異常を招来しているとしても、双方が交換要求部品Xとして指定出力されることで、車両2の安定性及び乗り心地が高められてもよい。ここで、タイヤに関する具体例では、左側のブレーキシューが走行異常を招来している場合に、当該左側のブレーキシューだけでなく、右側のブレーキシューも指定出力される。
【0089】
リスク判定部3122は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、更新後判断部3102により有判断された更新後の走行変動に合わせた追加更新として、当該走行変動を緩和するのに必要な緩和パラメータの設定変更を、計画する。そこでリスク判定部3122は、計画した緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルが許容範囲内か否かを、判定する。
【0090】
具体的にリスク判定部3122は、緩和パラメータの設定変更による変化量が閾値未満又は閾値以下となる場合にリスクレベルが許容範囲内との判定を下す一方、当該変化量が閾値以上又は閾値超過となる場合にはリスクレベルが許容範囲外との判定を下してもよい。このとき、リスク側への変化量に対する閾値よりも、安全側への変化量に対する閾値は大きく設定されてもよい。リスク判定部3122はまた、例えば人の検知に応答して車両2を制御するための緩和パラメータの設定変更等により、走行安全の観点での影響が増大すると予測される場合にも、リスクレベルが許容範囲外との判定を下してもよい。リスク判定部3122はさらに、更新後判断部3102による有判断の回数が少ない間は、例えば誤判断の可能性等を考慮して更新によるリスクレベルが許容範囲外との判定を下し、当該有判断の回数が増大すると、リスクレベルが許容範囲内との判定を下してもよい。
【0091】
パラメータ設定変更部3123は、更新後判断部3102による有判断に応じてリスク判定部3122により判定されたリスクレベルが許容範囲内となる場合に、機能する。この条件成立時のパラメータ設定変更部3123は、リスク判定部3122により設定変更の計画された緩和パラメータを、更新する。即ちパラメータ設定変更部3123は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、更新後判断部3102により有判断された走行変動に合わせた追加更新として、当該走行変動を緩和するための緩和パラメータを、設定変更する。
【0092】
具体的に、条件成立時の更新においてパラメータ設定変更部3123は、設定変更対象の緩和パラメータを、例えば車両2のラインオフ時等における初期値へ戻してもよい。条件成立時の更新においてパラメータ設定変更部3123は、先の更新が部品交換である場合に、交換部品の特性から推定又は逆算した値に調整してもよい。条件成立時の更新においてパラメータ設定変更部3123は、更新により車両2のユーザが生じる走行変化を抑えるように、段階的に設定変更を行ってもよい。条件成立時の更新においてパラメータ設定変更部3123は、例えば部品交換直後のテストコースZにおける車両2の走行時又は停止時等に、学習部2140が制御パラメータとして学習する緩和パラメータの当該学習結果により、緩和パラメータを設定変更してもよい。
【0093】
ここで特に、パラメータ設定変更部3123により設定変更するための緩和パラメータの学習においては、車両2の走行が直線走行からカーブ走行へと変化するように制御されることで、学習中の走行安全が高められてもよい。緩和パラメータの学習においては、変化前の走行方向に対して変化後の走行方向が90度以上に変化するカーブ走行が車両2に与えられることで、特に制動系8に関する緩和パラメータが減速シーンに最適化されてもよい。緩和パラメータの学習においては、変化前の走行方向に対して変化後の走行方向が45度以上に変化するカーブ走行が車両2に与えられることで、特に操舵系9の操舵タイミング又は操舵量に関する緩和パラメータが最適化されてもよい。
【0094】
パラメータ指定出力部3124は、更新後判断部3102による有判断に応じてリスク判定部3122により判定されたリスクレベルが許容範囲外となる場合に、機能する。この条件成立時のパラメータ指定出力部3124は、リスク判定部3122により設定変更の計画された緩和パラメータを、指定出力する。即ちパラメータ指定出力部3124は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、更新後判断部3102により有判断された走行変動に合わせた追加更新として、当該走行変動を緩和するための設定変更を要求する緩和パラメータを、指定出力する。
【0095】
パラメータ設定変更部3123による設定変更処理とパラメータ指定出力部3124による指定出力処理との、いずれの場合にも更新の対象は、例えば車両2の運動情報等といった判断材料が不十分な場合には上位の制御パラメータに設定される一方、当該判断材料が十分又は詳細な場合には、下位の制御パラメータに設定されてもよい。ここで具体例では、判断材料が不十分な場合には目標速度が更新の対象に設定される一方、判断材料が十分又は詳細な場合には特定区間のブレーキ量及びブレーキタイミングが更新の対象に設定される。パラメータ設定変更部3123による設定変更処理とパラメータ指定出力部3124による指定出力処理との、いずれの場合にも車両2の左右に関して設定される制御パラメータは、片側のみに更新の必要性が生じたとしても、双方が更新の対象に設定されてもよい。ここで具体例では、車両2の左側でのレーンチェンジに関する制御パラメータに更新の必要性が生じた場合に、車両2の右側でのレーンチェンジに関する制御パラメータも、更新の対象に設定される。
【0096】
ここまで説明した機能部3100,3120の共同により、車両管理装置1が車両2の状態を管理する車両管理方法のフローを、図26に従って以下に説明する。尚、本フローにおける各「S」も、車両管理プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0097】
S3101において予測判断部3100の更新後判断部3102は、車両2の自動運転モードにおいて基本機能系6の特性変化に関連すると予測される走行変動として、各系7~9の更新後における特性変化により招来が予測される走行変動の有無を、判断する。その結果、走行変動の無判断が下された場合には、本フローがS101へ移行する。これによりS101及びそれに続くS102は、予測判断部3100の異常判断部3101により、第一実施形態の異常判断部100に準じて実行される。さらにS102から分岐されるS103,S104は、更新処理部3120の部品指定出力部3121により、第一実施形態の指定出力部120に準じて実行される。
【0098】
S3101において走行変動の有判断が下された場合には、本フローがS3102へ移行する。S3102においてリスク判定部3122は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、S3101により有判断された更新後の走行変動に合わせた追加更新として、当該走行変動を緩和するのに必要な緩和パラメータの設定変更を、計画する。続くS3103においてリスク判定部3122は、計画した緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルが許容範囲内か否かを、判定する。
【0099】
S3103においてリスクレベルが許容範囲内との判定が下された場合には、本フローがS3104へ移行する。S3104においてパラメータ設定変更部3123は、S30102において設定変更の計画された緩和パラメータを、更新する。一方、S3103においてリスクレベルが許容範囲外との判定が下された場合には、本フローがS3105へ移行する。S3105においてパラメータ指定出力部3124は、S3102により設定変更の計画された緩和パラメータを、指定出力する。
【0100】
(作用効果)
以上説明した第三実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0101】
第三実施形態によると、車両2の自動運転モードにおいては、駆動系7、制動系8、及び操舵系9である基本機能系6の特性変化に関連すると予測される走行変動の有無が、判断される。そこで第三実施形態では、判断された走行変動に合わせての基本機能系6の更新により当該走行変動を緩和するための緩和処理が、車両2に与えられる。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードにおいて、目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化に関連した走行変動が生じたとしても、当該走行変動を解消するように緩和処理を遂行することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0102】
第三実施形態の緩和処理によると、基本機能系6を構成する複数部品のうち、判断された走行変動を緩和するために交換による更新を要求する交換要求部品Xが、指定出力される。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化に関連した走行変動が生じたとしても、当該走行変動を解消するための交換要求部品Xを指定出力によって通知することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0103】
第三実施形態の緩和処理によると、基本機能系6による車両2の運転を制御するための制御パラメータのうち、判断された走行変動を緩和するために設定変更による更新を要求する緩和パラメータが、指定出力される。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化に関連した走行変動が生じたとしても、当該走行変動を解消するための緩和パラメータを指定出力によって通知することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0104】
第三実施形態の緩和処理によると、基本機能系6による車両2の運転を制御するための制御パラメータのうち、判断された走行変動を緩和するための緩和パラメータが、設定変更により更新される。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系の特性変化に関連した走行変動が生じたとしても、当該走行変動を解消するように緩和パラメータを設定変更することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0105】
第三実施形態の緩和処理によると、走行変動を緩和するための緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルが、判定される。そこで、判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合には、緩和パラメータが設定変更により更新される一方、当該リスクレベルが許容範囲外の場合には、設定変更による更新を要求する緩和パラメータが指定出力される。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化に関連した走行変動が生じたとしても、当該走行変動を解消する緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルに応じて、設定変更と指定出力とが切り替えられ得る。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0106】
第三実施形態によると、車両2の運転結果に基づく学習結果により緩和パラメータが設定変更されてもよい。このような学習による設定変更の場合には、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化に関連して走行変動が生じたとしても、学習によって当該走行変動を解消するように緩和パラメータを設定変更することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0107】
(第四実施形態)
第四実施形態は、第三実施形態の変形例である。
【0108】
図27に示す第四実施形態において予測判断部4100には、複数のサブ機能部として異常判断部3101と共に、更新後判断部4102が含まれる。
【0109】
更新後判断部4102は、車両2の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される基本機能系6の特性変化として、各系7~9の更新の有無を判断する。第四実施形態においても系7~9の更新とは、系7~9を構成する部品の交換、系7~9の制御系による制御パラメータの設定変更、又はそれら交換及び設定変更の双方であってもよい。また、そうした系7~9の更新は、後述する更新処理部4120の更新処理による設定変更での更新又は指定出力を受けての更新、外部から通信を介した指示を受けての更新、所定の条件を満たす場合の更新、及び更新処理部4120の更新処理とは無関係な車両2のユーザ意思による更新等のうち、少なくとも一種類が挙げられるが、これら以外の更新であってもよい。
【0110】
そこで、このような系7~9の更新後には、更新箇所以外の任意箇所において例えば更新箇所とのバランス等から走行変動の招来される可能性があるため、更新後判断部4102は、先の更新そのものを系7~9の特性変化と擬制して有無を判断する。また、そうした更新後判断部4102による有判断は、全ての更新後に下されてもよいし、例えば更新処理部4120の指定出力を受けたことによる先の更新が差Δ又は差δの大きな劣化部品による走行異常に伴って遂行された場合等、追加更新の必要性が高くなる場合に限って下されてもよい。
【0111】
第四実施形態において更新処理部4120には、複数のサブ機能部として部品指定出力部3121と共に、リスク判定部4122、パラメータ設定変更部4123、及びパラメータ指定出力部4124が含まれる。
【0112】
リスク判定部4122は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、更新後判断部4102により有判断された特性変化としての先の更新に合わせた追加更新として、当該先の更新により招来予測される走行変動を緩和するのに必要な緩和パラメータの設定変更を、計画する。そこでリスク判定部4122は、計画した緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルが許容範囲内か否かを、判定する。尚、第四実施形態のリスク判定部4122による具体的な判定処理は、第三実施形態のリスク判定部3122に準じて遂行される。
【0113】
第四実施形態のパラメータ設定変更部4123は、更新後判断部4102による有判断に応じてリスク判定部4122により判定されたリスクレベルが許容範囲内となる場合に、機能する。この条件成立時のパラメータ設定変更部4123は、リスク判定部4122により設定変更の計画された緩和パラメータを、更新する。即ちパラメータ設定変更部4123は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、更新後判断部4102により有判断された特性変化としての先の更新に合わせた追加更新として、当該先の更新により招来予測される走行変動を緩和するための緩和パラメータを、設定変更する。尚、第四実施形態のパラメータ設定変更部4123による具体的な設定変更処理は、第三実施形態のパラメータ設定変更部3123に準じて遂行される。
【0114】
第四実施形態のパラメータ指定出力部4124は、更新後判断部4102による有判断に応じてリスク判定部4122により判定されたリスクレベルが許容範囲外となる場合に、機能する。この条件成立時のパラメータ指定出力部4124は、リスク判定部4122により設定変更の計画された緩和パラメータを、指定出力する。即ちパラメータ指定出力部4124は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、更新後判断部4102により有判断された特性変化としての先の更新に合わせた追加更新として、当該先の更新により招来予測の走行変動を緩和するために設定変更を要求する緩和パラメータを、指定出力する。尚、第四実施形態のパラメータ指定出力部4124による具体的な指定出力処理は、第三実施形態のパラメータ指定出力部3124に準じて遂行される。
【0115】
ここまで説明した機能部4100,4120の共同により、車両管理装置1が車両2の状態を管理する車両管理方法のフローを、図28に従って以下に説明する。尚、本フローにおける各「S」も、車両管理プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0116】
S4101において予測判断部4100の更新後判断部4102は、車両2の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される基本機能系6の特性変化として、各系7~9の更新の有無を判断する。その結果、更新の無判断が下された場合には、本フローがS101へ移行する。これによりS101及びそれに続くS102は、予測判断部4100の異常判断部3101により、第一実施形態の異常判断部100に準じて実行される。さらにS102から分岐されるS103,S104は、更新処理部4120の部品指定出力部3121により、第一実施形態の指定出力部120に準じて実行される。
【0117】
S4101において更新の有判断が下された場合には、本フローがS4102へ移行する。S4102においてリスク判定部4122は、各系7~9の制御系による制御パラメータのうち、S4101により有判断された先の更新に合わせた追加更新として、当該先の更新による招来予測の走行変動を緩和するのに必要な緩和パラメータの設定変更を、計画する。続くS4103においてリスク判定部4122は、計画した緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルが許容範囲内か否かを、判定する。
【0118】
S4103においてリスクレベルが許容範囲内との判定が下された場合には、本フローがS4104へ移行する。S4104においてパラメータ設定変更部4123は、S40102において設定変更の計画された緩和パラメータを、更新する。一方、S4103においてリスクレベルが許容範囲外との判定が下された場合には、本フローがS4105へ移行する。S4105においてパラメータ指定出力部4124は、S4102により設定変更の計画された緩和パラメータを、指定出力する。
【0119】
(作用効果)
以上説明した第四実施形態に特有の作用効果を、以下に説明する。
【0120】
第四実施形態によると、車両2の自動運転モードにおいては、駆動系7、制動系8、及び操舵系9である基本機能系6の、走行変動を招来すると予測される特性変化の有無が、判断される。そこで第四実施形態では、判断された特性変化に合わせての基本機能系6の更新により走行変動を緩和するための緩和処理が、車両2に与えられる。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードにおいて、目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化が生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を解消するように緩和処理を遂行することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0121】
第四実施形態によると、車両2の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される基本機能系6の特性変化の有無が、交換要求部品の交換後に判断される。そこで第四実施形態では、交換後に判断された特性変化に合わせての基本機能系6の追加更新により走行変動を緩和するための緩和処理が、車両2に与えられることとなる。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードにおいて、目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化が交換要求部品の交換により生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を解消するように緩和処理を遂行することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0122】
第四実施形態によると、車両2の自動運転モードにおいて走行変動を招来すると予測される基本機能系6の特性変化の有無が、緩和パラメータの設定変更後に判断される。そこで第四実施形態では、設定変更後に判断された特性変化に合わせての基本機能系6の追加更新により走行変動を緩和するための緩和処理が、車両2に与えられることとなる。これによれば、目標追従性が必要となる自動運転モードにおいて、目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化が緩和パラメータの設定変更により生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を解消するように緩和処理を遂行することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0123】
第四実施形態の緩和処理によると、基本機能系6による車両2の運転を制御するための制御パラメータのうち、基本機能系6に対して判断された特性変化による招来が予測される走行変動を緩和するために、設定変更による更新を要求する緩和パラメータが、指定出力される。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化が生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を解消するための緩和パラメータを指定出力によって通知することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0124】
第四実施形態の緩和処理によると、基本機能系6による車両2の運転を制御するための制御パラメータのうち、基本機能系6に対して判断された特性変化による招来が予測される走行変動を緩和するために、緩和パラメータが設定変更により更新される。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系の特性変化が生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を解消するように緩和パラメータを設定変更することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0125】
第四実施形態の緩和処理によると、走行変動を緩和するための緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルが、判定される。そこで、判定されたリスクレベルが許容範囲内の場合には、緩和パラメータが設定変更により更新される一方、当該リスクレベルが許容範囲外の場合には、設定変更による更新を要求する緩和パラメータが指定出力される。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化が生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を解消する緩和パラメータの設定変更によるリスクレベルに応じて、設定変更と指定出力とが切り替えられ得る。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0126】
第四実施形態によっても、車両2の運転結果に基づく学習結果により緩和パラメータが設定変更されてもよい。これによれば、自動運転モードにおいて目標追従性を左右する基本機能系6の特性変化が生じたとしても、当該特性変化に関連した走行変動を学習によって解消するように緩和パラメータを設定変更することができる。したがって、目標追従性を確保するために車両2の状態を適正に管理することが、可能となる。
【0127】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0128】
変形例において車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、有していてもよい。
【0129】
変形例において車両管理装置1を構成する専用コンピュータは、例えば整備工場、ディーラー、及び遠隔支援センタ等のうち、少なくとも一箇所に設置されて車両2との間で無線通信可能な、外部コンピュータであってもよい。また、この場合にS103での指定出力部120,3121は、指定した交換要求部品Xに関連する交換情報Iを、そうした外部コンピュータへ無線通信により送信することで、同部品Xの指定出力を実現してもよい。
【0130】
変形例において異常判断部100,3101は、S102での別要因の予測を実行しないことで、S101では走行異常が有りとの判断を注目差に基づき確定してもよい。また、この場合にS101での異常判断部100,3101は、注目差を判断するための閾値として、例えば図29に示す如き複数段a~dの値を用いてもよい。
【0131】
ここで図29の例では、注目差が閾値a超過又は閾値a以上となる許容範囲外のうち、同差が閾値b以下又は閾値b未満となる場合には、S103の指定出力とS104の先送りとのうち、使用状況に応じた一方が実行される。また図29の例では、注目差が閾値a,b超過又は閾値a,b以上となる許容範囲外のうち、同差が閾値c以下若しくは閾値c未満となる場合には、S103の指定出力に伴う交換期間の指定と共に、S104の先送りが実行される。さらに図29の例では、注目差が閾値a,b,c超過又は閾値a,b,c以上となる許容範囲外のうち、同差が閾値d以下若しくは閾値d未満となる場合には、S103の指定出力が自動運転モードの禁止制御と共に実行される。
【0132】
尚、図29では自動運転モードに加えて、手動運転モードも運転制御に想定される場合の例として、注目差が全閾値超過又は全閾値以上となる許容範囲外では、S103の指定出力が全運転モードの禁止制御と共に実行される。したがって、自動運転モードのみが実現される車両2では、この実行は実質的に不要となる。
【符号の説明】
【0133】
1:車両管理装置、2:車両、3:センサ系、6:基本機能系、7:駆動系、8:制動系、9:操舵系、12:プロセッサ、100,3101:異常判断部、120,3121:指定出力部、2140:学習部、3100,4100:予測判断部、3102,4102:更新後判断部、3120,4120:更新処理部、3122,4122:リスク判定部、3123,4123:パラメータ設定変更部、3124,4124:パラメータ指定出力部、I:交換情報、M:管理対象シーン、X:交換要求部品
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