(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】中継装置、車載通信システム、車載通信プログラムおよび車載通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240305BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240305BHJP
H04L 41/0813 20220101ALI20240305BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
B60R16/023 P
H04L12/28 100A
H04L41/0813
(21)【出願番号】P 2021554142
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034282
(87)【国際公開番号】W WO2021084927
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019195322
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】呉 ダルマワン
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/127790(WO,A2)
【文献】特開2019-9559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/0813
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置であって、
前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理する中継部と、
中継管理部とを備え、
前記中継部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した前記対象データを前記中継管理部へ出力し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、
前記中継管理部は、前記中継部から受けた前記対象データに基づいて、前記中継部における前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、中継装置。
【請求項2】
前記中継部は、前記中継装置における複数の通信ポートのうち、受信した前記対象フレームが経由した前記通信ポートを示すポート情報を前記中継管理部へ出力し、
前記中継管理部は、前記中継部から受けた前記ポート情報にさらに基づいて、前記設定変更に関する判断を行う、請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記中継管理部は、前記対象フレームに係るサービスの、提供元の前記機能部に関する情報または提供先の前記機能部に関する情報に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う、請求項1または請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記中継管理部は、前記対象フレームに係るサービスの提供を開始するための情報の内容に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記中継管理部は、前記対象フレームの異常の検知を行い、検知結果に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項6】
前記中継管理部は、SOME/IP(Scalable Service-Oriented Middleware on Ethernet/Internet Protocol)の通信プロトコルに従って送受信される前記対象フレームのヘッダの内容に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項7】
前記中継管理部は、前記設定変更の内容を決定し、決定内容を前記中継部に通知し、
前記中継部は、前記中継管理部から通知された前記決定内容に従って、前記中継処理の設定変更を行う、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項8】
前記中継装置は、さらに、
前記決定内容を不揮発的に記憶する記憶部を備え、
前記中継部は、前記中継装置が起動したときに、前記記憶部における前記決定内容に従って、前記中継処理の設定変更を行う、請求項7に記載の中継装置。
【請求項9】
前記中継管理部は、前記設定変更に関する判断結果に基づく情報を前記中継部経由で、前記対象フレームに係るサービスの提供元の前記機能部および前記対象フレームに係るサービスの提供先の前記機能部の少なくともいずれか一方へ通知する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項10】
複数の機能部と、
中継装置とを備え、
前記中継装置は、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理し、
前記機能部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記中継装置へ送信し、
前記中継装置は、前記対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継するとともに、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、車載通信システム
。
【請求項11】
複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置、において用いられる車載通信プログラムであって、
コンピュータを、
前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理する中継部と、
中継管理部、
として機能させるためのプログラムであり、
前記中継部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した前記対象データを前記中継管理部へ出力し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、
前記中継管理部は、前記中継部から受けた前記対象データに基づいて、前記中継部における前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、車載通信プログラム。
【請求項12】
複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置における車載通信方法であって、
前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理するステップと、
前記中継処理の設定変更に関する判断を行うステップとを含み、
前記フレームを前記中継処理するステップにおいては、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有する前記フレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、
前記設定変更に関する判断を行うステップにおいては、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、車載通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継装置、車載通信システム、車両および車載通信方法に関する。
この出願は、2019年10月28日に出願された日本出願特願2019-195322号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-9559号公報)には、以下のようなサーバが開示されている。すなわち、サーバは、TCP/IPの通信プロトコルを使用する通信システム(10)に適用され、クライアント(40~44、50~54)の購読要求に応じてクライアントにサービスを提供するサーバ(20)であって、前記サービス毎に、前記サービスを受ける優先度が前記クライアントに対応して設定された優先度テーブル(32)を記憶しているように構成されたテーブル記憶部(30)と、前記クライアントから前記サービスの購読を要求されると、前記テーブル記憶部が記憶している前記優先度テーブルに基づいて、前記クライアントからの前記サービスの購読要求を許可するか否かを決定するように構成されたサービス決定部(26、S400~S410)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の中継装置は、複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置であって、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理する中継部と、中継管理部とを備え、前記中継部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した前記対象データを前記中継管理部へ出力し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、前記中継管理部は、前記中継部から受けた前記対象データに基づいて、前記中継部における前記中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0005】
本開示の車載通信システムは、複数の機能部と、中継装置とを備え、前記中継装置は、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理し、前記機能部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記中継装置へ送信し、前記中継装置は、前記対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継するとともに、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0006】
本開示の車載通信方法は、複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置における車載通信方法であって、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理するステップと、前記中継処理の設定変更に関する判断を行うステップとを含み、前記フレームを前記中継処理するステップにおいては、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有する前記フレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、前記設定変更に関する判断を行うステップにおいては、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0007】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える中継装置として実現され得るだけでなく、中継装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、中継装置における処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載通信システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得たり、車載通信システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載通信システムにおける処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載ECUが送受信するフレームの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載ECUが送受信するフレームの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置の記憶部におけるアドレステーブルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る中継装置の記憶部における設定テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る中継装置の記憶部における設定テーブルの他の例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて中継装置が中継処理の設定を変更する動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける機能部間で送受信されるフレームの中継処理の設定を変更する処理のシーケンスの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける機能部間で送受信されるフレームの中継処理の設定を変更する処理のシーケンスの他の例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態に係る中継装置の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
近年、車載ネットワークへのサービス指向型通信の導入が進んでいる。
【0010】
特許文献1に記載の従来技術において、フレームの中継処理の効率の点でさらなる向上が求められている。従来技術を超えて、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことが可能な技術が望まれる。
【0011】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことが可能な中継装置、車載通信システム、車両および車載通信方法を提供することである。
【0012】
[本開示の効果]
本開示によれば、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施の形態に係る中継装置は、複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置であって、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理する中継部と、中継管理部とを備え、前記中継部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した前記対象データを前記中継管理部へ出力し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、前記中継管理部は、前記中継部から受けた前記対象データに基づいて、前記中継部における前記中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0015】
このように、対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う構成により、たとえば、機能部間におけるサービス指向型通信の状況に応じて、当該機能部間におけるフレームの中継処理の設定変更に関する判断を行うことができる。これにより、たとえば、サービスの提供元の機能部およびサービスの提供先の機能部間において送受信されるフレームを効率的に中継することができる。したがって、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記中継部は、前記中継装置における複数の通信ポートのうち、受信した前記対象フレームが経由した前記通信ポートを示すポート情報を前記中継管理部へ出力し、前記中継管理部は、前記中継部から受けた前記ポート情報にさらに基づいて、前記設定変更に関する判断を行う。
【0017】
このような構成により、ある機能部から対応の通信ポート経由で受信するフレームの受信頻度が所定値以上である場合、設定変更に関する判断として、たとえば当該機能部からのフレームの受信または中継を停止する判断を行うことができる。これにより、たとえば、不正アクセスされた機能部からの不正なフレームの受信または中継を停止することができるため、車載ネットワークのセキュリティを向上することができる。
【0018】
(3)好ましくは、前記中継管理部は、前記対象フレームに係るサービスの、提供元の前記機能部に関する情報または提供先の前記機能部に関する情報に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う。
【0019】
このような構成により、機能部間におけるサービス指向型通信に伴ってサービスの提供元の機能部から提供先の機能部へ送信されるデータ量等に応じた通信帯域に基づいて、提供元の機能部および提供先の機能部間における通信帯域の設定変更に関する判断を行うことができる。
【0020】
(4)好ましくは、前記中継管理部は、前記対象フレームに係るサービスの提供を開始するための情報の内容に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う。
【0021】
このような構成により、機能部間におけるサービス指向型通信の開始に伴って、提供元の機能部および提供先の機能部間における通信帯域の設定変更の要否の判断を行うことができる。
【0022】
(5)好ましくは、前記中継管理部は、前記対象フレームの異常の検知を行い、検知結果に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う。
【0023】
このような構成により、対象フレームにおける異常の検知結果に基づいて、たとえば機能部間におけるフレームの中継を停止する判断を行うことができる。
【0024】
(6)好ましくは、前記中継管理部は、SOME/IPの通信プロトコルに従って送受信される前記対象フレームのヘッダの内容に基づいて、前記設定変更に関する判断を行う。
【0025】
このような構成により、SOME/IPの通信プロトコルに従うサービス指向型通信を行う機能部間において、中継処理をより効率的に行うことができる。
【0026】
(7)好ましくは、前記中継管理部は、前記設定変更の内容を決定し、決定内容を前記中継部に通知し、前記中継部は、前記中継管理部から通知された前記決定内容に従って、前記中継処理の設定変更を行う。
【0027】
このような構成により、たとえば、対象フレームに含まれる情報に応じて中継装置の設定変更を動的に行うことができるため、車載ネットワークにおける中継処理をより一層効率的に行うことができる。
【0028】
(8)より好ましくは、前記中継装置は、さらに、前記決定内容を不揮発的に記憶する記憶部を備え、前記中継部は、前記中継装置が起動したときに、前記記憶部における前記決定内容に従って、前記中継処理の設定変更を行う。
【0029】
このような構成により、中継装置の再起動が行われた場合に、記憶部における決定内容に従って、安定した中継処理を早期に行うことができる。
【0030】
(9)好ましくは、前記中継管理部は、前記設定変更に関する判断結果に基づく情報を前記中継部経由で、前記対象フレームに係るサービスの提供元の前記機能部および前記対象フレームに係るサービスの提供先の前記機能部の少なくともいずれか一方へ通知する。
【0031】
このような構成により、設定変更に関する判断結果に基づいて、たとえば、機能部間におけるデータ伝送の頻度およびデータ量等の変更を機能部へ要求することができる。
【0032】
(10)本開示の実施の形態に係る車載通信システムは、複数の機能部と、中継装置とを備え、前記中継装置は、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理し、前記機能部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記中継装置へ送信し、前記中継装置は、前記対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継するとともに、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0033】
このように、対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う構成により、たとえば、機能部間におけるサービス指向型通信の状況に応じて、当該機能部間におけるフレームの中継処理の設定変更に関する判断を行うことができる。これにより、たとえば、サービスの提供元の機能部およびサービスの提供先の機能部間において送受信されるフレームを効率的に中継することができる。したがって、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0034】
(11)本開示の実施の形態に係る車両は、前記車載通信システムを備える。
【0035】
このような構成により、車載通信システムを備える車両において、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0036】
(12)本開示の実施の形態に係る車載通信方法は、複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置における車載通信方法であって、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理するステップと、前記中継処理の設定変更に関する判断を行うステップとを含み、前記フレームを前記中継処理するステップにおいては、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有する前記フレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、前記設定変更に関する判断を行うステップにおいては、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0037】
このように、対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う方法により、たとえば、機能部間におけるサービス指向型通信の状況に応じて、当該機能部間におけるフレームの中継処理の設定変更に関する判断を行うことができる。これにより、たとえば、サービスの提供元の機能部およびサービスの提供先の機能部間において送受信されるフレームを効率的に中継することができる。したがって、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0038】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0039】
[車載通信システム]
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【0040】
図1を参照して、車載通信システム300は、複数の車載ECU(Electronic Control Unit)111と、中継装置100とを備える。具体的には、車載通信システム300は、車載ECU111として、車載ECU111A~111Cを備える。車載通信システム300は、車両1に搭載される。車載ECU111および中継装置100は、車載ネットワーク12を構成する。中継装置100は、複数の車載ECU111を含む車載ネットワーク12に用いられる。
【0041】
車載ECU111Aは、アプリケーション112Aを含む。車載ECU111Bは、アプリケーション112Bを含む。車載ECU111Cは、アプリケーション112Cを含む。以下、アプリケーション112A,112B,112Cの各々をアプリケーション112とも称する。
【0042】
車載ECU111およびアプリケーション112は、車載ネットワーク12における機能部の一例である。
【0043】
車載ネットワーク12において、車載ECU111は、たとえばイーサネット(登録商標)ケーブル11を介して中継装置100に接続される。
【0044】
なお、車載通信システム300は、3つの車載ECU111を備える構成に限らず、2つまたは4つ以上の車載ECU111を備える構成であってもよい。また、車載通信システム300は、1つの車載ECU111に1つのアプリケーション112が搭載される構成に限らず、1つの車載ECU111に2つ以上のアプリケーション112が搭載される構成であってもよい。
【0045】
また、車載通信システム300は、1つの中継装置100を備える構成に限らず、2つ以上の中継装置100を備える構成であってもよい。
【0046】
中継装置100は、たとえば、ゲートウェイ装置であり、自己に接続される複数の車載ECU111間のデータを中継可能である。中継装置100は、たとえば、レイヤ2、およびレイヤ2よりも上位のレイヤ3に従って中継処理を行うことが可能であり、たとえば、同じVLANに属する車載ECU111間のフレームの中継処理および異なるVLANに属する車載ECU111間のフレームの中継処理を行う。
【0047】
より詳細には、中継装置100は、たとえばイーサネットの通信規格に従って、イーサネットケーブル11を介して接続された車載ECU111間でやり取りされるフレームの中継処理を行う。以下、イーサネットの通信規格に従うフレームをイーサネットフレームと称する。イーサネットフレームには、IPパケットが格納される。
【0048】
なお、車載通信システム300では、イーサネットの通信規格に従ってイーサネットフレームの中継がそれぞれ行われる構成に限らず、たとえば、CAN(Controller Area Network)、FlexRay(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport)(登録商標)およびLIN(Local Interconnect Network)等の通信規格に従ってデータの中継が行われる構成であってもよい。
【0049】
車載ECU111は、たとえば、自動運転ECU、エンジンECU、センサ、ナビゲーション装置、ヒューマンマシンインタフェース、およびカメラ等である。
【0050】
この例では、車載ECU111A,111B,111Cは、それぞれ車速センサ、エンジンECUおよび自動運転ECUである。
【0051】
以下、車載ECU111A,111B,111Cを、それぞれ車速センサ111A、エンジンECU111Bおよび自動運転ECU111Cとも称する。
【0052】
各アプリケーション112は、たとえば、アプリケーションレイヤの処理を行なうことにより、自己が搭載される車載ECU111において所定の処理を行う。たとえば、車速センサ111Aにおけるアプリケーション112Aは、所定周期で、車両1の走行速度を示す速度情報を生成する。
【0053】
たとえば、車速センサ111Aは、定期的または不定期に、車両1の速度を示す速度情報をフレームに含めて他の車載ECU111へ送信する。
【0054】
エンジンECU111Bは、中継装置100経由で車載ECU111Aから速度情報を受信し、受信した速度情報等に基づいてエンジンを制御する。
【0055】
自動運転ECU111Cは、中継装置100経由で車載ECU111Aから速度情報を受信し、受信した速度情報等に基づいて車両1の自動運転制御を行う。
【0056】
すなわち、車速センサ111Aは、速度情報を通知するというサービスを提供するサーバECUである。また、エンジンECU111Bおよび自動運転ECU111Cは、車速センサ111Aからサービスの提供を受けるクライアントECUである。
【0057】
[機能部間の通信接続]
各機能部は、所定のプロトコルに従うフレームを送受信する。たとえば、車載ECU111は、SOME/IP(Scalable Service-Oriented Middleware on Ethernet/Internet Protocol)のプロトコルに従うフレームを送受信する。
【0058】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載ECUが送受信するフレームの一例を示す図である。
図2は、車載ECU111間で送受信される、SOME/IPのプロトコルに従うフレームの一例を示している。
【0059】
図2を参照して、SOME/IPのプロトコルに従うフレームのヘッダは、メッセージID、Length、リクエストID、Protocol Version、Interface Version、Message Type、Return Code、Flags、Reserve、Length of Entries Array、Entries Array、Length of Options ArrayおよびOptions Arrayのフィールドを有する。
【0060】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載ECUが送受信するフレームの一例を示す図である。
図3は、
図2に示すフレームのEntries Arrayフィールドの詳細を示している。
【0061】
図3を参照して、SOME/IPのプロトコルに従うフレームのEntries Arrayのフィールドは、Type、Index 1st options、Index 2st options、# of opt 1、# of opt 2、Service ID、Instance ID、Major Version、TTL(Time To Live)、Reserve、Initial Data Requested Flag、Reserve2、CounterおよびEventgroupのフィールドを有する。
【0062】
車載ECU111は、SOME/IPのプロトコルに従う、他の車載ECU111との通信接続を確立するためのフレームである通信設定フレームを中継装置100経由で送受信する。
【0063】
車載ECU111は、通信設定フレームを中継装置100経由で送受信することにより他の車載ECU111との通信接続を確立し、SOME/IPのプロトコルに従うフレームを用いて当該他の車載ECU111と通信を行う。たとえば、サーバECUは、クライアントECUとの通信接続を確立し、SOME/IPのプロトコルに従うフレームを用いて当該クライアントECUへのサービスの提供を開始する。
【0064】
サーバECUおよびクライアントECU間で送受信される通信設定フレームにおけるリクエストIDのフィールドには、サービスの要求元であるクライアントECUを識別可能な情報が格納される。より詳細には、リクエストIDのフィールドには、クライアントECUのMACアドレスが格納される。
【0065】
サーバECUおよびクライアントECU間で送受信される通信設定フレームにおけるメッセージIDのフィールドには、サーバECUによるサービスの内容を識別可能な情報が格納される。より詳細には、メッセージIDのフィールドには、サーバECUが提供するサービスの内容を示す情報が格納される。
【0066】
たとえば、クライアントECUである自動運転ECU111Cは、新たな車載ECU111として車載ネットワーク12に追加されると、速度情報を送信可能なサーバECUを検索中である旨の情報を含む、通信設定フレームの一例であるサービス探索フレームを生成し、生成したサービス探索フレームを中継装置100経由で他の車載ECU111へマルチキャストする。
【0067】
サーバECUである車速センサ111Aは、中継装置100経由で自動運転ECU111Cからサービス探索フレームを受信し、自己のMACアドレスおよび自己が速度情報を送信可能である旨の情報を含む、通信設定フレームの一例であるサービス提供通知フレームを生成し、生成したサービス提供通知フレームを、サービス探索フレームに対する応答として中継装置100経由で自動運転ECU111Cへ送信する。
【0068】
自動運転ECU111Cは、中継装置100経由で車速センサ111Aからサービス提供通知フレームを受信し、自己のIDおよび速度情報の送信を要求する旨の情報を含む、通信設定フレームの一例であるサービス購読要求フレームを生成し、生成したサービス購読要求フレームを中継装置100経由で車速センサ111Aへ送信する。
【0069】
車速センサ111Aは、中継装置100経由で自動運転ECU111Cからサービス購読要求フレームを受信し、受信したサービス購読要求フレームに含まれる自動運転ECU111CのID等に基づいて、自動運転ECU111Cによるサービス購読を許可するか否か、すなわち自動運転ECU111Cへの速度情報の送信を開始するか否かを決定する。
【0070】
そして、車速センサ111Aは、決定内容を示す情報を含む、通信設定フレームの一例であるサービス購読可否フレームを生成し、生成したサービス購読可否フレームを、サービス購読要求フレームに対する応答として中継装置100経由で自動運転ECU111Cへ送信する。
【0071】
車速センサ111Aは、自動運転ECU111Cへのサービスの提供を開始することを決定した場合、定期的または不定期に、SOME/IPのプロトコルに従う、サービスを提供するためのフレームであるサービス提供フレームを中継装置100経由で自動運転ECU111Cへ送信する。より詳細には、車速センサ111Aは、定期的または不定期に、速度情報を含むサービス提供フレームを中継装置100経由で自動運転ECU111Cへ送信する。
【0072】
[中継装置]
図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成の一例を示す図である。
【0073】
図4を参照して、中継装置100は、転送制御部10と、転送管理部20と、記憶部30とを備える。転送制御部10は、通信ポート13A,13B,13C,13Dを含む。転送制御部10は、中継部の一例である。転送管理部20は、中継管理部の一例である。
【0074】
転送制御部10は、たとえば、半導体集積回路によって実現される。転送管理部20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって実現される。記憶部30は、たとえばフラッシュメモリである。
【0075】
通信ポート13A,13B,13C,13Dは、たとえば入出力ポートである。以下、通信ポート13A,13B,13C,13Dの各々を、通信ポート13とも称する。
【0076】
図1および
図4に示す例では、通信ポート13Aに配線パターンおよびイーサネットケーブル11を介して車速センサ111Aが接続され、通信ポート13Bに配線パターンおよびイーサネットケーブル11を介してエンジンECU111Bが接続され、通信ポート13Cに配線パターンおよびイーサネットケーブル11を介して自動運転ECU111Cが接続され、通信ポート13Dに配線パターンを介して転送管理部20が接続される。なお、通信ポート13A,13B,13Cは、中継装置100の外部コネクタ等であってもよい。
【0077】
[転送制御部]
転送制御部10は、機能部間で送受信されるフレームを中継処理する。より詳細には、転送制御部10は、車載ECU111から対応の通信ポート13経由で他の車載ECU111宛のフレームを受信し、当該フレームを対応の通信ポート経由で当該他の車載ECU111へ送信する。
【0078】
たとえば、記憶部30は、通信ポート13と、通信ポート13を介して接続される装置のMACアドレスとを対応付けたアドレステーブルを記憶している。
【0079】
図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置の記憶部におけるアドレステーブルの一例を示す図である。
【0080】
図5を参照して、アドレステーブルにおいて、たとえば、車速センサ111AのMACアドレスが「MAC-A」であり、エンジンECU111BのMACアドレスが「MAC-B」であり、自動運転ECU111CのMACアドレスが「MAC-C」であり、転送管理部20のMACアドレスが「MAC-D」である。
【0081】
転送制御部10は、通信ポート13A経由で車速センサ111Aから受信したフレームの宛先MACアドレスがMAC-Bである場合、記憶部30におけるアドレステーブルに従って、MAC-Bに対応する通信ポート13B経由で当該フレームをエンジンECU111Bへ送信する。
【0082】
たとえば、記憶部30は、転送制御部10において中継処理される通信ポート13間のフレームのシェーピングレートを示す設定テーブルを記憶している。
【0083】
図6は、本開示の実施の形態に係る中継装置の記憶部における設定テーブルの一例を示す図である。
【0084】
転送制御部10は、記憶部30における設定テーブルに従って、車載ECU111間で送受信されるフレームを中継処理する。
【0085】
図6を参照して、たとえば、転送制御部10は、通信ポート13A経由で車速センサ111AからエンジンECU111B宛のフレームを受信し、記憶部30における設定テーブルに従って、31Mbpsのシェーピングレートで、通信ポート13B経由で当該フレームをエンジンECU111Bへ送信する。
【0086】
また、転送制御部10は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを機能部から受信し、受信した対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した対象データを転送管理部20へ出力し、受信した対象フレームを他の前記機能部へ中継する。
【0087】
たとえば、転送制御部10は、受信したフレームのうち、対象フレームを選択的に複製して他の機能部へ中継するとともに転送管理部20へ出力する。
【0088】
より詳細には、転送制御部10は、通信ポート13C経由で自動運転ECU111Cから車速センサ111A宛のフレームを受信し、受信したフレームの、たとえばUDPヘッダのポート番号を確認する。転送制御部10は、当該フレームのポート番号が、SOME/IPのプロトコルに従うフレームに予め割り当てられているポート番号と一致する場合、受信したフレームは対象フレームであると判断する。なお、転送制御部10は、受信したフレームのMACアドレスまたはIPアドレスに基づいて、当該フレームが対象フレームであるか否かを判断する構成であってもよい。
【0089】
転送制御部10は、受信したフレームが対象フレームであると判断した場合、当該対象フレームの宛先MACアドレスとして、転送管理部20のMACアドレスであるMAC-Dを追加する。そして、転送制御部10は、記憶部30におけるアドレステーブルに従って、当該対象フレームを、通信ポート13A経由で車速センサ111Aへ送信するとともに、通信ポート13D経由で転送管理部20へ出力する。
【0090】
一方、転送制御部10は、受信したフレームが対象フレームではないと判断した場合、記憶部30におけるアドレステーブルに従って、当該フレームを、通信ポート13A経由で車速センサ111Aへ送信する。
【0091】
たとえば、転送制御部10は、中継装置100における複数の通信ポート13のうち、受信した対象フレームが経由した通信ポート13を示すポート情報を転送管理部20へ出力する。
【0092】
具体的には、転送制御部10は、通信ポート13C経由で自動運転ECU111Cから受信した車速センサ111A宛のフレームが対象フレームであると判断した場合、通信ポート13C経由で当該対象フレームを受信したことを示すポート情報を生成し、生成したポート情報を当該対象フレームに含めて転送管理部20へ出力する。
【0093】
[転送管理部]
転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームに含まれる情報に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。具体的には、転送管理部20は、設定変更に関する判断として、設定変更の要否の判断および設定変更の内容に関する判断を行う。
【0094】
より詳細には、転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームのヘッダにおけるメッセージIDに基づいて、当該対象フレームが通信設定フレームおよびサービス提供フレーム等の特定のフレームであるか否かを判断する。
【0095】
転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームが特定のフレームであると判断した場合、当該対象フレームに基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0096】
たとえば、転送管理部20は、SOME/IPの通信プロトコルに従って送受信される対象フレームのヘッダの内容に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0097】
(設定変更の例1)
たとえば、転送管理部20は、通信設定フレームに係るサービスの提供を開始するための情報の内容に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0098】
より詳細には、車載ECU111間で送受信される通信設定フレームのEntries ArrayにおけるTypeのフィールドには、通信設定フレームに係るサービスの提供を開始するための情報が格納される。
【0099】
たとえば、サーバECUからクライアントECUへ送信される通信設定フレームたとえばサービス購読可否フレームのTypeのフィールドには、サーバECUがクライアントECUによるサービス購読を許可したか否かを示す情報が格納される。
【0100】
転送管理部20は、転送制御部10から受けたサービス購読可否フレームのTypeのフィールドに格納された情報に基づいて、サーバECUがクライアントECUによるサービス購読を許可したか否かを確認し、確認結果に応じて、転送制御部10における中継処理の設定変更の要否の判断を行う。
【0101】
具体的には、転送管理部20は、サーバECUがクライアントECUのサービス購読を許可する旨を示す情報が格納されたサービス購読可否フレームを転送制御部10から受けた場合、転送制御部10における中継処理の設定変更が必要であると判断する。一方、転送管理部20は、サーバECUがクライアントECUのサービス購読を許可しない旨を示す情報が格納されたサービス購読可否フレームを転送制御部10から受けた場合、転送制御部10における中継処理の設定変更は不要であると判断する。
【0102】
また、たとえば、転送管理部20は、通信設定フレームに係るサービスの、提供元の機能部に関する情報または提供先の機能部に関する情報に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0103】
より詳細には、転送管理部20は、転送制御部10から受けた通信設定フレームのメッセージIDのフィールドに格納された情報に基づいて、サーバECUからクライアントECUへのサービスの提供の開始後にサーバECUおよびクライアントECU間で送受信されるデータの中継処理を行うために転送制御部10において必要な通信帯域を特定する。
【0104】
具体的には、転送管理部20は、転送制御部10から受けた通信設定フレームたとえばサービス購読可否フレームのメッセージIDのフィールドを確認する。
【0105】
そして、転送管理部20は、サービス購読可否フレームにおける上記メッセージIDに基づいて、サーバECUである車速センサ111AからクライアントECUである自動運転ECU111Cへのサービスの提供が開始されることを認識した場合、車速センサ111Aから送信される自動運転ECU111C宛の速度情報の中継処理を行うために転送制御部10において確保すべき通信帯域を特定する。
【0106】
たとえば、記憶部30は、サーバECUからクライアントECUへのサービスの提供に伴ってサーバECUおよびクライアントECU間で送受信されるフレームの中継処理を行うために確保すべき通信帯域を示す必要帯域情報を記憶している。
【0107】
転送管理部20は、記憶部30における必要帯域情報に基づいて、車速センサ111Aから送信される自動運転ECU111C宛の速度情報の中継処理を行うために転送制御部10において確保すべき通信帯域を特定する。
【0108】
たとえば、転送管理部20は、転送制御部10における中継処理の設定変更の内容を決定し、決定内容を転送制御部10に通知する。
【0109】
転送制御部10は、転送管理部20から通知された決定内容に従って、中継処理の設定変更を行う。
【0110】
具体的には、転送管理部20は、転送制御部10における中継処理の設定変更の内容として、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを変更すること、すなわち当該シェーピングレートを30Mbps高めることを決定し、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを30Mbps高めるべき旨を示す決定情報を転送制御部10へ出力する。
【0111】
図7は、本開示の実施の形態に係る中継装置の記憶部における設定テーブルの他の例を示す図である。
【0112】
図7を参照して、転送制御部10は、転送管理部20から決定情報を受けると、受けた決定情報に従って、記憶部30における設定テーブルにおいて、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを31Mbpsに変更する。
【0113】
転送制御部10は、記憶部30における変更後の設定テーブルに従って、車載ECU111間で送受信されるフレームを中継処理する。
【0114】
転送制御部10は、転送管理部20から受けた決定情報に従って記憶部30における設定テーブルを更新するので、次回の中継装置100の再起動時すなわち中継装置100が停止状態から起動するときに、記憶部30における決定内容に従って、中継処理の設定変更を行うことができる。
【0115】
なお、転送管理部20は、通信設定フレームに係るサービスの提供を開始するための情報の内容に基づいて、車両1の運転状況を判断し、車両1の運転状況の判断結果に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う構成であってもよい。
【0116】
より詳細には、転送管理部20は、サーバECUである車速センサ111AからクライアントECUである自動運転ECU111Cへのサービスの提供が開始されることを認識した場合、車両1の運転状況が手動運転から自動運転に切り替わると判断し、判断結果に基づいて、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを、予め設定された、自動運転モードにおけるシェーピングレートに変更する。このように、車両1の運転状況に応じて、中継処理の設定変更を行うことにより、フレームをより効率的に中継することができる。
【0117】
(設定変更の例2)
たとえば、転送管理部20は、転送制御部10から受けたポート情報にさらに基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0118】
より詳細には、転送管理部20は、転送制御部10から受けたポート情報に基づいて、通信ポート13ごとに、受信した対象フレームの受信頻度を確認する。
【0119】
そして、転送管理部20は、たとえば、通信ポート13Cを経由した対象フレームの受信頻度が所定値以上である場合、転送制御部10における中継処理の設定変更の内容として、通信ポート13Cを経由したフレームの受信を停止することを決定し、通信ポート13Cを経由したフレームの受信を停止すべき旨を示す決定情報を転送制御部10へ出力する。
【0120】
転送制御部10は、転送管理部20から決定情報を受けると、受けた決定情報に従って、通信ポート13Cと内部回路との電気的な接続を切断する等の、自動運転ECU111Cからの通信ポート13C経由でのフレームの受信を停止する設定を行う。
【0121】
(設定変更の例3)
たとえば、転送管理部20は、対象フレームの異常の検知を行い、検知結果に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0122】
より詳細には、転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームたとえばサービス提供フレームのEntries ArrayにおけるTTLのフィールドに格納された情報に基づいて、サーバECUからクライアントECUへのサービスの有効期間が満了したことを、対象フレームの異常として検知する。
【0123】
転送管理部20は、転送制御部10から受けたサービス提供フレームにおけるTTLに基づいて、サーバECUからクライアントECUへのサービスの有効期間が満了したことを認識する。
【0124】
具体的には、転送管理部20は、車速センサ111Aから自動運転ECU111C宛のサービス提供フレームにおけるTTLに基づいて、車速センサ111Aから自動運転ECU111Cへのサービスの有効期間が満了したことを認識した場合、転送制御部10における中継処理の設定変更の内容として、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを30Mbps下げることを決定する。
【0125】
そして、転送管理部20は、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを30Mbps下げるべきことを示す決定情報を転送制御部10へ出力する。
【0126】
転送制御部10は、転送管理部20から決定情報を受けると、受けた決定情報に従って、記憶部30における設定テーブルにおいて、
図6に示すように、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを1Mbpsに変更する。
【0127】
なお、転送管理部20は、通信設定フレームに係るサービスの提供を開始するための情報の内容に基づいて、車両1の運転状況を判断し、車両1の運転状況の判断結果に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う構成であってもよい。
【0128】
より詳細には、転送管理部20は、サーバECUである車速センサ111AからクライアントECUである自動運転ECU111Cへのサービスの有効期間が満了したことを認識した場合、車両1の運転状況が自動運転から手動運転に切り替わると判断し、判断結果に基づいて、通信ポート13Aから通信ポート13Cへフレームを中継する際のシェーピングレートを、予め設定された、手動運転モードにおけるシェーピングレートに変更する。このように、車両1の運転状況に応じて、中継処理の設定変更を行うことにより、フレームをより効率的に中継することができる。
【0129】
転送管理部20は、上述した設定変更の例1、例2および例3のうち少なくともいずれか1つに従って、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0130】
(機能部への通知)
たとえば、転送管理部20は、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断結果に基づく情報を、転送制御部10経由で、通信設定フレームに係るサービスの提供元の機能部および通信設定フレームに係るサービスの提供先の機能部の少なくともいずれか一方へ通知する。
【0131】
より詳細には、転送管理部20は、決定情報を転送制御部10へ出力してから所定時間経過後、現在の中継処理の設定内容を転送制御部10に問い合わせるための設定内容要求を転送制御部10へ出力する。
【0132】
転送制御部10は、転送管理部20から設定内容要求を受けると、現在の中継処理の設定内容を示す設定情報を転送管理部20へ出力する。具体的には、たとえば、転送制御部10は、記憶部30における設定テーブルを取得し、取得した設定テーブルの内容を示す設定情報を転送管理部20へ出力する。
【0133】
転送管理部20は、転送制御部10から設定情報を受けると、受けた設定情報および自己が出力した決定情報に基づいて、自己の決定内容に従って中継処理の設定内容が変更されているか否かを確認する。
【0134】
転送管理部20は、自己の決定内容に従って中継処理の設定内容が変更されていることを確認し、当該決定内容および当該決定内容に従って中継処理の設定内容が変更された旨を示す変更完了情報を、転送制御部10経由でサーバECUおよびクライアントECUへ送信する。
【0135】
たとえば、サーバECUである車速センサ111Aは、転送制御部10経由で転送管理部20から変更完了情報を受信し、クライアントECUである自動運転ECU111Cへの速度情報の送信を開始する。たとえば、車速センサ111Aは、受信した変更完了情報が示す決定内容に基づいて、自動運転ECU111Cへの速度情報の送信頻度、および自動運転ECU111Cへ送信する速度情報のデータ量を設定する。
【0136】
[動作の流れ]
車載通信システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0137】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて中継装置が中継処理の設定を変更する動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0138】
図8を参照して、まず、中継装置100は、車載ネットワーク12における機能部たとえば車載ECU111からのフレームを待ち受け(ステップS102でNO)、車載ECU111からフレームを受信し(ステップS102でYES)、受信したフレームが対象フレームであるか否かを判断する。より詳細には、中継装置100は、受信したフレームのUDPヘッダにおけるポート番号を確認し、当該フレームのポート番号が、SOME/IP等の所定の通信プロトコルに従うフレームに予め割り当てられているポート番号と一致する場合、受信したフレームは対象フレームであると判断する(ステップS104)。
【0139】
中継装置100は、受信したフレームが対象フレームではないと判断した場合(ステップS106でNO)、当該フレームを宛先の機能部たとえば車載ECU111へ送信する。すなわち、中継装置100は、当該フレームを中継処理する(ステップS108)。
【0140】
次に、中継装置100は、機能部からの新たなフレームを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0141】
一方、中継装置100は、受信したフレームが対象フレームであると判断した場合(ステップS106でYES)、対象フレームを複製する(ステップS110)。
【0142】
次に、中継装置100は、対象フレームを宛先の機能部たとえば車載ECU111へ送信する。すなわち、中継装置100は、当該対象フレームを中継処理する(ステップS112)。
【0143】
次に、中継装置100は、対象フレームが通信設定フレームおよびサービス提供フレーム等の特定のフレームであるか否かを判断する。より詳細には、中継装置100における転送制御部10は、複製した対象フレームを転送管理部20へ出力する。たとえば、転送制御部10は、受信した対象フレームが経由した通信ポート13を示すポート情報を、複製した当該対象フレームに含めて転送管理部20へ出力する。そして、転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームのヘッダに格納された情報に基づいて、当該対象フレームが特定のフレームであるか否かを判断する(ステップS114)。
【0144】
次に、中継装置100は、対象フレームが特定のフレームではないと判断した場合(ステップS116でNO)、機能部からの新たなフレームを待ち受ける。より詳細には、中継装置100における転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームを破棄し、転送制御部10からの新たな対象フレームを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0145】
一方、中継装置100は、対象フレームが特定のフレームであると判断した場合(ステップS116でYES)、当該対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う。より詳細には、たとえば、中継装置100における転送管理部20は、サービス購読可否フレームまたはサービス提供フレームのヘッダに格納された情報に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更の要否の判断および設定変更の内容に関する判断を行う。あるいは、転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームに含まれるポート情報に基づいて、ある通信ポート13を経由したサービス探索フレームの受信頻度を確認し、確認結果に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更の要否の判断および設定変更の内容に関する判断を行う(ステップS118)。
【0146】
次に、中継装置100は、中継処理の設定変更の必要がないと判断した場合(ステップS120でNO)、機能部からの新たなフレームを待ち受ける。より詳細には、中継装置100における転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象フレームを破棄し、転送制御部10からの新たな対象フレームを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0147】
一方、中継装置100は、中継処理の設定変更の必要があると判断した場合(ステップS120でYES)、中継処理の設定変更を行う。より詳細には、中継装置100における転送管理部20は、転送制御部10における中継処理の設定変更の内容を決定し、決定内容を転送制御部10に通知する。転送制御部10は、転送管理部20から通知された決定内容に従って、中継処理の設定変更を行う(ステップS122)。
【0148】
次に、中継装置100は、中継処理の設定変更が完了すると、中継処理の設定変更に関する判断結果に基づく情報を、対象フレームに係るサービスの提供元の機能部および対象フレームに係るサービスの提供先の機能部へ通知する。より詳細には、中継装置100における転送管理部20は、自己が転送制御部10に通知した決定内容に従って中継処理の設定内容が変更されていることを確認し、当該決定内容および当該決定内容に従って中継処理の設定内容が変更された旨を示す変更完了情報を、転送制御部10経由で各機能部へ送信する(ステップS124)。
【0149】
図9は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける機能部間で送受信されるフレームの中継処理の設定を変更する処理のシーケンスの一例を示す図である。
図9は、サーバECUである車速センサ111Aが、クライアントECUであるエンジンECU111Bにサービスを提供している状態を示している。
【0150】
図9を参照して、機能部の一例である車速センサ111Aは、速度情報を送信すべきタイミングで、速度情報を含むエンジンECU111B宛のサービス提供フレームを中継装置100へ送信する(ステップS202)。
【0151】
次に、中継装置100は、車速センサ111Aからサービス提供フレームを受信し、受信したサービス提供フレームを機能部の一例であるエンジンECU111Bへ送信する。すなわち、中継装置100は、車速センサ111Aからのサービス提供フレームをエンジンECU111Bへ中継する(ステップS204)。
【0152】
次に、機能部の一例である自動運転ECU111Cは、通信設定フレームの一例であるサービス探索フレームを中継装置100へ送信する(ステップS206)。
【0153】
次に、中継装置100は、自動運転ECU111Cから受信したサービス探索フレームを、他の車載ECU111たとえば車速センサ111Aへ中継する(ステップS208)。
【0154】
次に、車速センサ111Aは、サービス探索フレームに対する応答として、通信設定フレームの一例であるサービス提供通知フレームを中継装置100へ送信する(ステップS210)。
【0155】
次に、中継装置100は、車速センサ111Aから受信したサービス提供通知フレームを、自動運転ECU111Cへ中継する(ステップS212)。
【0156】
次に、自動運転ECU111Cは、通信設定フレームの一例であるサービス購読要求フレームを中継装置100へ送信する(ステップS214)。
【0157】
次に、中継装置100は、自動運転ECU111Cから受信したサービス購読要求フレームを車速センサ111Aへ中継する(ステップS216)。
【0158】
次に、車速センサ111Aは、サービス購読要求に対する応答として、通信設定フレームの一例である、サービス購読を許可する旨を示す情報が格納されたサービス購読可否フレームを中継装置100へ送信する(ステップS218)。
【0159】
次に、中継装置100は、車速センサ111Aから受信したサービス購読可否フレームを、複製するとともに自動運転ECU111Cへ中継する(ステップS220)。
【0160】
次に、中継装置100は、複製したサービス購読可否フレームのヘッダに格納された情報に基づいて、中継処理の設定変更の要否の判断および設定変更の内容に関する判断を行い、判断結果に応じて設定変更を行う(ステップS222)。
【0161】
次に、中継装置100は、中継処理の設定変更が完了すると、変更完了情報を含むフレームを車速センサ111Aへ送信する(ステップS224)。
【0162】
また、中継装置100は、変更完了情報を含むフレームを自動運転ECU111Cへ送信する(ステップS226)。
【0163】
次に、車速センサ111Aは、速度情報を送信すべき次の送信タイミングで、エンジンECU111Bおよび自動運転ECU111C宛のサービス提供フレームを中継装置100へ送信する(ステップS228)。
【0164】
次に、中継装置100は、車速センサ111Aからサービス提供フレームを受信し、受信したサービス提供フレームをエンジンECU111Bおよび自動運転ECU111Cへ送信する(ステップS230)。
【0165】
図10は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける機能部間で送受信されるフレームの中継処理の設定を変更する処理のシーケンスの他の例を示す図である。
図10は、サーバECUである車速センサ111Aが、クライアントECUであるエンジンECU111Bにサービスを提供している状態を示している。
【0166】
図10を参照して、機能部の一例である車速センサ111Aは、速度情報を送信すべきタイミングで、速度情報を含むエンジンECU111B宛のサービス提供フレームを中継装置100へ送信する(ステップS302)。
【0167】
次に、中継装置100は、車速センサ111Aからサービス提供フレームを受信し、受信したサービス提供フレームを機能部の一例であるエンジンECU111Bへ送信する。すなわち、中継装置100は、車速センサ111Aからのサービス提供フレームをエンジンECU111Bへ中継する(ステップS304)。
【0168】
次に、機能部の一例である自動運転ECU111Cは、通信設定フレームの一例であるサービス探索フレームを中継装置100へ繰り返し送信する(ステップS306)。
【0169】
次に、中継装置100は、自動運転ECU111Cから受信したサービス探索フレームを、他の車載ECU111たとえば車速センサ111Aへ中継する(ステップS308)。
【0170】
次に、中継装置100は、自動運転ECU111Cからのサービス探索フレームの受信頻度が所定値以上である場合、中継処理の設定変更に関する判断として、自動運転ECU111Cから車速センサ111Aへのフレームの中継処理を停止する判断を行い、通信ポート13Cを経由したフレームの受信を停止する設定変更を行う(ステップS310)。
【0171】
次に、自動運転ECU111Cは、サービス探索フレームを中継装置100へ繰り返し送信する。一方、中継装置100は、通信ポート13Cを経由したフレームの受信を停止する設定変更を行った後は、自動運転ECU111Cからのサービス探索フレームを受信しない(ステップS312)。
【0172】
次に、車速センサ111Aは、速度情報を送信すべき次の送信タイミングで、エンジンECU111B宛のサービス提供フレームを中継装置100へ送信する(ステップS314)。
【0173】
次に、中継装置100は、車速センサ111Aからサービス提供フレームを受信し、受信したサービス提供フレームをエンジンECU111Bへ送信する(ステップS316)。
【0174】
[変形例]
図11は、本開示の実施の形態に係る中継装置の変形例の構成を示す図である。
【0175】
図11を参照して、中継装置101は、転送制御部10と、転送管理部20と、記憶部30と、処理部40とを備える。
【0176】
処理部40は、車載ネットワーク12における機能部の一例である。処理部40は、転送制御部10の通信ポート13Aに接続される。たとえば、処理部40は、車載ネットワーク12における車載ECU111から速度情報等の情報を取得し、取得した情報を他の車載ECU111へ送信する。
【0177】
処理部40は、SOME/IPのプロトコルに従う、車載ECU111との通信接続を確立するための通信設定フレームを転送制御部10経由で送受信する。
【0178】
たとえば、処理部40は、サーバとして機能し、クライアントECUとの通信接続を確立し、SOME/IPのプロトコルに従うフレームを用いて当該クライアントECUへのサービスの提供を開始する。具体的には、処理部40は、定期的または不定期に、速度情報等の情報を含むサービス提供フレームを転送制御部10経由で車載ECU111へ送信する。
【0179】
あるいは、処理部40は、クライアントとして機能し、サーバECUとの通信接続を確立し、SOME/IPのプロトコルに従うフレームを用いて当該サーバECUからサービスの提供を受ける。具体的には、処理部40は、定期的または不定期に、速度情報等の情報を含むサービス提供フレームを転送制御部10経由で車載ECU111から受信する。
【0180】
転送制御部10は、処理部40および車載ECU111間で送受信されるフレームを中継処理する。
【0181】
たとえば、転送制御部10は、通信設定フレームおよびサービス提供フレーム等の特定の対象フレームを処理部40から受信し、受信した対象フレームの一部または全部を複製して車載ECU111へ中継するとともに転送管理部20へ出力する。あるいは、転送制御部10は、通信設定フレームおよびサービス提供フレーム等の特定の対象フレームを車載ECU111から受信し、受信した対象フレームの一部または全部を複製して処理部40へ中継するとともに転送管理部20へ出力する。
【0182】
[その他の変形例]
なお、本開示の実施の形態に係る中継装置100では、転送制御部10は、ポート情報を転送管理部20へ出力する構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送制御部10は、ポート情報を転送管理部20へ出力しない構成であってもよい。この場合であっても、転送管理部20は、上述した設定変更の例1または例3に従って、中継処理の設定変更に関する判断を行うことができる。
【0183】
また、転送制御部10は、受信した対象フレームの全部を複製して転送管理部20へ出力する構成、すなわち受信した対象フレームの宛先MACアドレスとしてMAC-Dを追加することにより、当該対象フレームを通信ポート13D経由で転送管理部20へ出力する構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送制御部10は、受信した対象フレームの一部分である対象データを複製し、複製した対象データを転送管理部20へ出力する構成であってもよい。
【0184】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置100では、転送管理部20は、通信設定フレームに係るサービスの提供を開始するための情報の内容、および通信設定フレームに係るサービスの、提供元の機能部に関する情報または提供先の機能部に関する情報に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送管理部20は、当該情報の内容、および当該提供元の機能部または当該提供先の機能部のいずれか一方のみに基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う構成であってもよい。
【0185】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置100では、転送管理部20は、SOME/IPの通信プロトコルに従って送受信される対象フレームのヘッダの内容に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送管理部20は、SOME/IP以外の他の通信プロトコルに従って送受信されるフレームのヘッダの内容に基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う構成であってもよい。
【0186】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置100では、転送制御部10は、転送管理部20から決定情報を受けて、中継処理の設定変更を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送管理部20は、中継処理の設定変更を行わない旨の判断を行ってもよい。この場合、たとえば、転送管理部20は、決定情報を転送制御部10経由で機能部へ送信する。機能部は、転送管理部20から受信した決定情報に従って、他の機能部への情報の送信に関する設定変更を行う。
【0187】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置100では、転送制御部10は、中継装置100が起動したときに、記憶部30における決定内容に従って、中継処理の設定変更を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送制御部10は、中継装置100の起動時に記憶部30における決定内容を参照しない構成であってもよい。
【0188】
また、記憶部30は、揮発性記憶領域および不揮発性記憶領域を含むメモリであってもよい。たとえば、転送制御部10は、転送管理部20から受けた決定情報に従って記憶部30の揮発性記憶領域における設定テーブルを変更した後、所定時間安定して動作した場合、変更後の設定テーブルを記憶部30の不揮発性記憶領域に保存する。あるいは、転送制御部10は、対象フレームのリクエストIDのフィールドにおける機能部のIDが、所定のIDたとえば信頼度が所定値以上の機能部のIDである場合、変更後の設定テーブルを記憶部30の不揮発性記憶領域に保存する。
【0189】
また、本開示の実施の形態に係る中継装置100では、転送管理部20は、変更完了情報を転送制御部10経由で機能部たとえば車載ECU111へ通知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送管理部20は、変更完了情報を機能部へ通知しない構成であってもよい。
【0190】
ところで、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことが可能な技術が望まれる。
【0191】
たとえば、近年、サービス指向型通信が導入された車載ネットワークの普及が進んでいる。このようなサービス指向型通信を行う機能部間での通信状況に応じて、低コストで、当該機能部間で送受信されるフレームの中継処理を効率化したり、当該機能部間の通信のセキュリティを向上したりすることが可能な技術が望まれる。
【0192】
これに対して、本開示の実施の形態に係る中継装置では、転送制御部10は、機能部間で送受信されるフレームを中継処理する。転送制御部10は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを機能部から受信し、受信した対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した対象データを転送管理部20へ出力し、受信した対象フレームを他の機能部へ中継する。転送管理部20は、転送制御部10から受けた対象データに基づいて、転送制御部10における中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0193】
このように、対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う構成により、たとえば、機能部間におけるサービス指向型通信の状況に応じて、当該機能部間におけるフレームの中継処理の設定変更に関する判断を行うことができる。これにより、たとえば、サービスの提供元の機能部およびサービスの提供先の機能部間において送受信されるフレームを効率的に中継することができる。
【0194】
したがって、本開示の実施の形態に係る中継装置では、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0195】
本開示の実施の形態に係る車載通信システム300では、中継装置100は、機能部間で送受信されるフレームを中継処理する。機能部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを中継装置100へ送信する。中継装置100は、対象フレームを機能部から受信し、受信した対象フレームを他の機能部へ中継するとともに、受信した対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0196】
このように、対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う構成により、たとえば、機能部間におけるサービス指向型通信の状況に応じて、当該機能部間におけるフレームの中継処理の設定変更に関する判断を行うことができる。これにより、たとえば、サービスの提供元の機能部およびサービスの提供先の機能部間において送受信されるフレームを効率的に中継することができる。
【0197】
したがって、本開示の実施の形態に係る車載通信システムでは、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0198】
本開示の実施の形態に係る車載通信方法は、複数の機能部を含む車載ネットワーク12に用いられる中継装置100における車載通信方法である。この車載通信方法では、まず、中継装置100が、機能部間で送受信されるフレームを中継処理する。次に、中継装置100が、中継処理の設定変更に関する判断を行う。中継装置100は、フレームを中継処理するステップにおいては、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを機能部から受信し、受信した対象フレームを他の機能部へ中継する。中継装置100は、設定変更に関する判断を行うステップにおいては、受信した対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う。
【0199】
このように、対象フレームに含まれる情報に基づいて、中継処理の設定変更に関する判断を行う方法により、たとえば、機能部間におけるサービス指向型通信の状況に応じて、当該機能部間におけるフレームの中継処理の設定変更に関する判断を行うことができる。これにより、たとえば、サービスの提供元の機能部およびサービスの提供先の機能部間において送受信されるフレームを効率的に中継することができる。
【0200】
したがって、本開示の実施の形態に係る車載通信方法では、車載ネットワークにおける中継処理をより効率的に行うことができる。
【0201】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0202】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置であって、
前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理する転送制御部と、
転送管理部とを備え、
前記転送制御部は、SOME/IPの通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した前記対象データを前記転送管理部へ出力し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、
前記転送管理部は、前記転送制御部から受けた前記対象データのうち、機能部間の通信接続を確立するための通信設定フレームに含まれるデータおよびサービスの提供元の前記機能部によるサービスを提供するためのサービス提供フレームに含まれるデータの少なくともいずれか一方に基づいて、前記転送制御部における前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、中継装置。
【0203】
[付記2]
複数の機能部と、
中継装置とを備え、
前記中継装置は、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理し、
前記機能部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記中継装置へ送信し、
前記中継装置は、前記対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行い、
前記中継装置は、前記設定変更に関する判断結果に基づく情報を、前記対象フレームに係るサービスの提供元の前記機能部および前記対象フレームに係るサービスの提供先の前記機能部へ通知し、
前記対象フレームに係るサービスの提供元の前記機能部は、前記中継装置から通知された前記情報に基づいて、前記対象フレームに係るサービスの提供先の前記機能部へのサービスの提供を開始する、車載通信システム。
【0204】
[付記3]
複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる、プロセッサおよび半導体集積回路を備える中継装置であって、
前記半導体集積回路は、前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理する転送制御部を実現し、
前記プロセッサは、転送管理部を実現し、
前記転送制御部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した前記対象データを前記転送管理部へ出力し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、
前記転送管理部は、前記転送制御部から受けた前記対象データに基づいて、前記転送制御部における前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、中継装置。
【0205】
[付記4]
複数の車載ECUと、
中継装置とを備え、
前記中継装置は、前記車載ECU間で送受信されるフレームを中継処理し、
前記車載ECUは、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記中継装置へ送信し、
前記中継装置は、前記対象フレームを前記車載ECUから受信し、受信した前記対象フレームを他の前記車載ECUへ中継し、受信した前記対象フレームに含まれる情報に基づいて、前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、車載通信システム。
【0206】
[付記5]
複数の機能部を含む車載ネットワークに用いられる中継装置であって、
前記機能部間で送受信されるフレームを中継処理する中継部と、
中継管理部とを備え、
前記中継部は、所定の通信プロトコルに従って送受信されるフレームであって、サービスの要求元を識別可能な情報と、要求されるサービスの内容を識別可能な情報とを有するフレームである対象フレームを前記機能部から受信し、受信した前記対象フレームの少なくとも一部分である対象データを複製し、複製した前記対象データを前記中継管理部へ出力し、受信した前記対象フレームを他の前記機能部へ中継し、
前記中継管理部は、前記中継部から受けた前記対象データに基づいて、車両の運転状況を判断し、前記車両の運転状況の判断結果に基づいて、前記中継部における前記中継処理の設定変更に関する判断を行う、中継装置。
【符号の説明】
【0207】
1 車両
10 転送制御部
11 イーサネットケーブル
12 車載ネットワーク
13 通信ポート
20 転送管理部
30 記憶部
40 処理部
100 中継装置
101 中継装置
111A 車速センサ(車載ECU)
111B エンジンECU(車載ECU)
111C 自動運転ECU(車載ECU)
112 アプリケーション
300 車載通信システム