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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240305BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G21/16 147
G03G15/20 555
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021573129
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2021001291
(87)【国際公開番号】W WO2021149616
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2020009990
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】小▲濱▼ 篤
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄大
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012199(JP,A)
【文献】特開平10-125451(JP,A)
【文献】特開2002-267542(JP,A)
【文献】特開2014-102429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧面を有する定着ベルトと、
前記押圧面に接する加圧ローラーと、
前記定着ベルトを加熱する加熱部と
を備え、
前記加熱部は、
前記加圧ローラーの軸方向に延びるヒーターと、
複数の温度センサーと、
前記ヒーターを、前記定着ベルトの前記押圧面の裏側に接するよう保持するヒーター保持部材と、
前記ヒーター保持部材との間に、前記複数の温度センサーを前記軸方向に離間させて保持するセンサー保持部材と
を含み、
前記ヒーターは、前記ヒーター保持部材に対向する第1面を有し、
前記ヒーター保持部材は、前記軸方向に離間する所定の複数箇所に、前記ヒーターの前記第1面を露出させる観測穴を有し、
前記ヒーター保持部材は、前記センサー保持部材を前記ヒーター保持部材に対して位置決めするための案内部を有し、
前記センサー保持部材は前記案内部に係合する係合部を有し、
前記センサー保持部材は、前記係合部と前記案内部との係合によって、前記複数の温度センサーの各々を、前記複数の観測穴の1つ1つに対応する位置に保持し、
前記加熱部は、前記複数の温度センサーに接続する第1配線及び第2配線を含み、
前記センサー保持部材は、前記第1配線及び第2配線を収容する配線収容空間を形成し、
前記センサー保持部材は、
前記配線収容空間を上側配線空間と下側配線空間とに区画する仕切り板部と、
前記第1配線及び第2配線が通過する切り欠き部と
を含み、
前記第1配線は、前記上側配線空間に配置される部分と、前記下側配線空間に配置される部分と、前記切り欠き部を通過する部分とを含み、
前記第2配線は、前記下側配線空間に配置される部分と、前記上側配線空間に配置される部分と、前記切り欠き部を通過する部分とを含む、定着装置。
【請求項2】
前記係合部が前記案内部に係合した状態において、前記複数の温度センサーの感温部の各々は、前記各観測穴を通して、前記ヒーターの前記第1面に接する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱部は、
前記加圧ローラーから前記ヒーター及び前記ヒーター保持部材が受ける押圧を受け止める補強部材と、
前記温度センサーを付勢する付勢部材と
を含み、
前記センサー保持部材は、前記付勢部材を前記軸方向に直交する方向に挿通させる貫通孔を有し、
前記付勢部材は、前記貫通孔を挿通して、前記温度センサーと前記補強部材との間に配置される、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記温度センサー1つあたりに複数個配置される、請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ヒーターは、
前記定着ベルトに対向する第2面と、
前記軸方向に延びる複数個の抵抗発熱体と
を有し、
前記複数個の抵抗発熱体は前記第2面に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記案内部は、突起であり、
前記係合部は、前記突起が嵌合する穴である、請求項1~5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記複数の温度センサーは、隣接する前記温度センサーの端子の極性が逆になるように配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の定着装置と、
シートにトナー画像を形成する画像形成部と
を備え、
前記定着装置は、前記トナー画像を前記シートに定着させる、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に搭載される加熱フィルム方式又は定着ベルト方式の定着装置が知られている。特許文献1に開示の定着装置は、加熱部である定着アセンブリと、定着アセンブリを押圧して定着ニップ部を形成する加圧ローラーとを含む。
【0003】
定着アセンブリは、筒状の定着ベルト(定着フィルム)と、定着ベルトの内面に接触する平板状のヒーターと、ヒーターを保持するヒーターホルダーと、ヒーターホルダー及びヒーターを加圧ローラーに向けて押圧する金属ステーとを備える。また、ヒーターの温度を計測する温度センサーとして、サーミスターを備える。
【0004】
サーミスターは、ヒーターホルダーに配置される。詳しくは、サーミスターは、ヒーターの温度を正確に計測するために、ヒーターホルダーに設けられた貫通穴(観測穴又は計測穴)を介して、所定の圧力でヒーターの一面に接触するよう配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-97143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、定着装置は、B5~A3等、様々な幅(搬送方向に直交する「横幅」)のシートに対するトナーの定着に用いられる。その際、通過するシートの幅がヒーターの幅より狭いと、トナーの定着に関与しないシート幅方向両端の「非通紙領域」のヒーターの温度が上がってしまう場合がある。なお、シート幅(横幅)方向は、定着装置におけるトナー圧着用の加圧ローラーの長手方向又は軸(回転軸)方向に平行な方向である。
【0007】
この問題に対応して、定着装置では、シート幅方向に詳細な温度制御を行えるよう、シート幅方向の長さの比較的短い短冊状又はブロック状等のヒーターを、シート幅方向(加圧ローラーの軸方向)に複数個並べて使用することが行われる。
【0008】
しかしながら、適切な温度制御を行うためには、複数個のヒーターの1つ1つに1個ずつ温度センサーを設置しなければならず、定着アセンブリ又は定着ユニットとも呼ばれる加熱部へ組み付ける温度センサーの個数が増えてしまう。その結果、加熱部の組み立て作業が複雑になって、工数の増加により定着装置全体のコストが上昇してしまう。
【0009】
本発明は、部品点数や作業工数の増加に伴うコストの上昇を抑制できる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の定着装置は、定着ベルトと、加圧ローラーと、加熱部とを備える。前記定着ベルトは押圧面を有する。前記加圧ローラーは前記押圧面に接する。前記加熱部は、前記定着ベルトを加熱する。前記加熱部は、ヒーターと、複数の温度センサーと、ヒーター保持部材と、センサー保持部材とを含む。前記ヒーターは、前記加圧ローラーの軸方向に延びる。前記複数の温度センサーは、前記ヒーターの温度を測定する。前記ヒーター保持部材は、前記ヒーターを、前記定着ベルトの前記押圧面の裏側に接するよう保持する。前記センサー保持部材は、前記ヒーター保持部材との間に、前記複数の温度センサーを前記軸方向に離間させて保持する。前記ヒーターは、前記ヒーター保持部材に対向する第1面を有する。前記ヒーター保持部材は、前記軸方向に離間する所定の複数箇所に、前記ヒーターの前記第1面を露出させる観測穴を有する。前記ヒーター保持部材は、前記センサー保持部材を前記ヒーター保持部材に対して位置決めするための案内部を有する。前記センサー保持部材は前記案内部に係合する係合部を有する。前記センサー保持部材は、前記係合部と前記案内部との係合によって、前記複数の温度センサーの各々を、前記複数の観測穴の1つ1つに対応する位置に保持する。
【0011】
本発明の画像形成装置は、上記の定着装置と、画像形成部とを備える。前記画像形成部は、シートにトナー像を形成する。前記定着装置は、前記トナー像を前記シートに定着させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品点数や作業工数の増加に伴うコストの上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態の定着装置を備える画像形成装置の構成を示す図である。
図2A図2Aは本発明の実施形態に係る定着装置を示す斜視図である。
図2B図2Bは本発明の実施形態に係る定着装置の加熱ユニットを示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る定着装置の加熱ユニットを示す分解斜視図である。
図4A図4Aは加熱ユニットのセンサーホルダーの上面図である。
図4B図4Bはヒーターホルダーの上面図である。
図4C図4Cはヒーターをヒーターホルダー側から見た図である。
図4D図4Dはヒーターホルダーがヒーターを保持する構造を示す図である。
図5A図5Aは加熱ユニットのセンサーホルダーの斜視図である。
図5B図5Bはセンサーホルダーの下面図である。
図5C図5Cは加熱ユニットのセンサーホルダーに収容された電気配線の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中に方向の目安として示すX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交する三次元直交座標であり、Z軸は、定着装置30の加熱部である加熱ユニット10を押圧する加圧ローラー20の押圧方向(ニップ方向)と平行である。
【0015】
図1を参照して、定着装置30を備える画像形成装置100の構成及び動作について説明する。図1は、定着装置30を備える画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、記憶媒体に保存された画像データ、又は、外部装置から送信される画像データを処理して、シートSに画像を形成する。画像データとして、原稿から読み取った画像を用いてもよい。
【0016】
画像形成装置100は、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ又はこれらの機能を兼ね備えた複合機である。以下では、画像形成装置100がモノクロプリンターである実施形態について説明する。
【0017】
図1に示すように、画像形成装置100は、給送部40と、搬送部50と、画像形成部60と、定着装置30と、排出部70とを備える。
【0018】
給送部40は、複数のシートSを収容し、搬送部50へシートSを1枚ずつ給送する。シートSは、例えば、紙製又は合成樹脂製のシートである。搬送部50は、複数の搬送ローラー対を含み、給送部40から給送されたシートSを、画像形成部60及び定着装置30を介して、排出部70まで搬送する。
【0019】
画像形成部60は、電子写真方式によってシートSにトナー像を形成する。具体的には、画像形成部60は、感光体ドラムと、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写装置と、クリーニング装置と、除電装置とを含む。
【0020】
帯電装置は、感光体ドラムを帯電させる。露光装置は、レーザー光を出力して感光体ドラムを露光し、静電潜像を形成する。現像装置は、トナーを供給して、感光体ドラム上にトナー像を形成する。補給装置は、現像装置にトナーを補給する。転写装置は、感光体ドラム上のトナー像をシートSに転写する。クリーニング装置は、転写後に感光体ドラムに残留する残留トナーを除去する。除電装置は、感光体ドラムに残留する電荷を除電する。
【0021】
定着装置30は、トナー像を加熱及び加圧して、シートSにトナー像を定着させる。トナー像が定着されたシートSは、搬送部50により排出部70に搬送される。排出部70は、画像形成装置100の外部にシートSを排出する。
【0022】
定着装置30は、画像形成装置100に装着されている。以下、図2A図2B及び図3を参照して、本実施形態に係る定着装置30を説明する。
【0023】
図2Aは、本実施形態に係る定着装置30を示す斜視図であり、図2Bは、定着装置30の加熱ユニット10を示す斜視図である。
【0024】
図2A及び図2Bに示すように、定着装置30は、定着ベルト1と、ベルト保持部材22A、22Bと、加圧ローラー20と、加熱ユニット10とを備える。加熱ユニット10は、平板状のヒーター11と、2つの温度センサー13A、13Bと、ヒーターホルダー12と、センサーホルダー15とを含む。
【0025】
なお、加熱ユニット10は、筒状の定着ベルト1の中に配置されている。加熱ユニット10は、本発明の加熱部の一例である。また、ヒーターホルダー12は、本発明のヒーター保持部材の一例であり、センサーホルダー15は、本発明のセンサー保持部材の一例である。
【0026】
加圧ローラー20は、回転軸線Ax周りに回転するとともに、定着ベルト1の外周面と当接して定着ベルト1を押圧する。加圧ローラー20は、芯金であるシャフト21と、最表面(外周面)の離型層と、その内側の円筒状弾性層とを有する。なお、本実施形態において、回転軸線AxはY軸方向に沿って延びる。
【0027】
シャフト21は、回転軸線Axに沿って延びる軸部材である。シャフト21は、例えば、ステンレススチール又はアルミニウムにより形成される。弾性層は、例えば、シリコーンゴムにより形成される。離型層は、例えば、フッ素樹脂により形成される。
【0028】
定着ベルト1は、ヒーター11により加熱されて、シートSにトナー像を定着する。定着ベルト1は、略円筒形状を有する。定着ベルト1は、円周方向に回転する無端ベルトである。また、定着ベルト1は、複数の層を有する。定着ベルト1は、例えば、ポリイミド層と、離型層とを有する。離型層は、例えば、フッ素樹脂製の耐熱性フィルムである。
【0029】
更に、定着ベルト1は、加圧ローラー20の回転軸線Ax方向(Y軸方向)の両端を、ベルト保持部材22A、22Bにより回転可能に支持されている。従って、定着ベルト1は、ベルト保持部材22A、22Bの支持形状(ここでは、半円状)に沿って、加圧ローラー20の回転に同期して回転する。
【0030】
加熱ユニット10は、図2Bに示すように、定着ベルト1によって覆われている。詳細には、加熱ユニット10及び平板状のヒーター11は、定着ベルト1を挟んで、加圧ローラー20と対向する。定着ベルト1の外周面のうち、加圧ローラー20と対向する部分が押圧面1aである。なお、押圧面1aは、図2Bにおいては、定着ベルト1の下側に隠れた面である。
【0031】
定着ベルト1の押圧面1aと加圧ローラー20との間は、シートSを挟み込んで熱と圧力とをかけるためのニップ部である。加圧ローラー20が回転すると、定着ベルト1が加圧ローラー20に従動して回転する。そして、シートSがニップ部を通過することにより、トナー像は、シートS上に溶融定着される。
【0032】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る定着装置30の加熱ユニット10の構成について説明する。なお、本実施形態の加熱ユニット10は、画像形成装置100の組み立て工程とは別の工程で組み立てられる。ユニットとして組み立てられた後、図2Bに示すように、筒状の定着ベルト1の内側(内周)に挿通されて、画像形成装置100への組み込みが準備される。
【0033】
図3は、本実施形態の定着装置30の加熱ユニット10を示す分解斜視図である。定着ベルト1の内側(内周)に配置される加熱ユニット10は、ヒーター11と、ヒーターホルダー12と、温度センサー13A、13Bと、センサーホルダー15とに加え、電気配線14A、14B、14Cと、4つのコイルばね16と、ステー17とを含む。
【0034】
なお、コイルばね16は本発明における付勢部材の一例である。また、ステー17は本発明における補強部材の一例である。また、図3において、ヒーターホルダー12に対向する平板状のヒーター11の上面が第1面11aであり、図示しない定着ベルト1に対向する下面が第2面11bである。
【0035】
ヒーター11は、例えば、細長薄板状の発熱体であり、加圧ローラー20の回転軸方向(Y軸方向)に延びる。ヒーター11は、図示しない電源に接続され、発熱して、第2面11b側の定着ベルト1を介してシートS上のトナー像を溶融定着させる。ヒーター11は、例えば、セラミックヒーターであり、セラミック基板と、セラミック基板の第2面11b側に配設された複数の抵抗発熱体とを含む。ヒーター11の厚さは、例えば、1mmである。
【0036】
ヒーターホルダー12は、平板状のヒーター11を、筒状の定着ベルト1の内側面に接するように保持する。ヒーターホルダー12は、ヒーター11を介して定着ベルト1と対向する。換言すれば、ヒーターホルダー12は、ヒーター11を介して、加熱された定着ベルト1を、定着ベルト1と加圧ローラー20との間に搬送されてきたシートSに押し付ける。
【0037】
ヒーターホルダー12は、例えば、耐熱樹脂製であり、加圧ローラー20の軸線(Y軸)に沿って延びる。なお、ヒーターホルダー12は、補強部材であるステー17と係合する。
【0038】
温度センサー13A、13Bは、ヒーター11の温度を、セラミック基板の表面温度として計測する。温度センサー13A、13Bは、例えばサーミスターである。画像形成装置100は、温度センサー13A、13Bの計測した温度に基づいて、ヒーター11による加熱を制御する。温度センサー13A、13Bがサーミスターであることにより、ヒーター11の温度を制御する精度を向上させることができる。
【0039】
なお、温度センサー13A、13Bは、サーモカット又はサーモスタットであってもよい。サーモカットの場合、ヒーター11の温度が閾値以上になると、ヒーター11への電力の供給が遮断される。サーモスタットの場合、ヒーター11の温度が閾値以上であるとヒーター11への電力の供給が遮断され、閾値未満に下がると、ヒーター11への電力供給が復帰する。
【0040】
電気配線14A、14B、14Cは、温度センサー13Aと13Bとの間、又は、温度センサー13A、13Bと画像形成装置100との間を電気的に接続する。なお、画像形成装置100はヒーター11の温度コントローラー又はヒーター11の温度を制御できる制御部を備えている。電気配線14A、14B、14Cの説明は後述する。
【0041】
センサーホルダー15は、ヒーターホルダー12とステー17との間に配置され、温度センサー13A、13Bを一括して、所定位置に保持する。また、電気配線14A、14B、14Cを、省スペースかつコンパクトに収納する。温度センサー13A、13Bの保持に関する説明は後述する。
【0042】
ステー17は、ヒーターホルダー12の外方への撓みを抑制して、ヒーターホルダー12の加圧ローラー20への押し付けを補強する。ステー17は、例えば、細長状の金属製ステー部材である。
【0043】
ステー17は、ヒーターホルダー12の長手方向(Y軸方向)に沿ってヒーターホルダー12と重なり合い、ヒーターホルダー12との間に、温度センサー13A、13Bや電気配線14A、14B、14C等を収容できる空間(以下、配線収容空間)を形成する。
【0044】
4つのコイルばね16の各々は、センサーホルダー15の貫通孔15d(15d1~15d4)を挿通して、ステー17とヒーターホルダー12との間に配置される。なお、コイルばね16が配置されるヒーターホルダー12の所定位置には、図3に示すように、温度センサー13A、13Bが載置される。そのため、実質上、4つのコイルばね16は、ステー17と温度センサー13A、13Bとの間に位置する。これにより、各コイルばね16は、温度センサー13A、13Bを、ヒーターホルダー12及びヒーター11に向けて付勢する。
【0045】
図4A図4Dを参照して、温度センサー13A、13Bの配設位置と、ヒーター11との関係について説明する。図4Aはセンサーホルダー15の上面図、図4Bはヒーターホルダー12の上面図である。図4Cは、平板状のヒーター11を上側(ヒーターホルダー12側)から見た図、図4Dはヒーターホルダー12が平板状のヒーター11を保持する構造を示す図である。
【0046】
なお、図4Cにおいて、セラミック基板の裏側(第2面11b側)に位置する抵抗発熱体R1、R2(点線で表示)の上に仮想線(二点鎖線)で描かれている矩形は、各温度センサー13A、13Bの感温部がヒーター11の第1面11aに当接する部分を示す。
【0047】
図4Bに示すように、ヒーターホルダー12は、上向きU字状のセンサー収容空間12Sを形成する。ヒーターホルダー12は、センサー収容空間12Sの内側底面12aと、2つの観測穴12c、12dと、凸状の突起部12x、12yとを有する。なお、突起部12x、12yは、本発明の案内部の一例である。
【0048】
また、図4Dに示すように、ヒーターホルダー12は、内側底面12aの裏側に、ヒーター11を保持する外側底面12bを有する。観測穴12c、12dは、センサー収容空間12Sの内側底面12a側から、外側底面12bに向けて貫通する矩形状の開口である。観測穴12c、12dは、ヒーターホルダー12がヒーター11を保持した状態において、ヒーター11の上面(第1面11a)を、センサー収容空間12Sの内側に露出させる。
【0049】
なお、図4Bに示すように、各観測穴12c、12dは、図中に一点鎖線で示すヒーターホルダー12の軸方向に沿った中央線に対して、中央線の直交方向にオフセット配置されている。これは、ヒーター11の下面(第2面11b)に配置された抵抗発熱体R1、R2が、ヒーターホルダー12の中央線に対してずれて配置されているためである。
【0050】
換言すれば、各観測穴12c、12dのオフセット配置は、図4Cに示すような各抵抗発熱体R1、R2の位置のずれに対応するものである。この構成により、各観測穴12c、12dの上に載置された温度センサー13A、13Bの感温部(プローブ部分)は、各観測穴12c、12dを挿通した時、抵抗発熱体R1、R2の真裏に相当する位置に当接することができる。その結果、各温度センサー13A、13Bは、各抵抗発熱体R1、R2の温度を個別に、正確に測定できる。
【0051】
次に、案内部としての突起部12x、12yは、図4Bに示すように、センサー収容空間12Sの内側底面12aから上に突出する円筒状もしくは円錐状である。突起部12x、12yは、センサーホルダー15側の係合部15x,15yに係合する。
【0052】
センサーホルダー15の係合部15x,15yは、図4Aに示すような貫通穴状であり、丸穴もしくは長穴状に形成されている。係合部15x,15yは、ヒーターホルダー12の突起部12x、12yに、それぞれ嵌合する。
【0053】
続いて、図5A図5Cを参照して、温度センサー13A、13Bの配設位置と、温度センサー13A、13Bを付勢する構造について説明する。図5Aはセンサーホルダー15の斜視図、図5Bはセンサーホルダー15の下面図、図5C加熱ユニット10のセンサーホルダー15に収容された電気配線の状態を示す断面図である。
【0054】
各温度センサー13A、13Bは、図5Cに示すように、配線や付勢部材等を加え、センサーとして機能する状態で、センサーホルダー15に組み付けられ、その状態でヒーターホルダー12とステー17の間の所定位置に組み込まれる。
【0055】
その結果、温度センサー13A、13Bの感温部が、ヒーターホルダー12の観測穴12c、12dを通して、平板状のヒーター11の第1面11aに接し、ヒーター11を構成する各抵抗発熱体R1、R2の温度を個別に測定することができる。
【0056】
センサーホルダー15の構成について説明する。図5A及び図5Bに示すセンサーホルダー15は、2つの温度センサー13A、13Bを保持する。その軸方向(Y軸方向)の両端部には、突起部12x、12yに係合する係合部15x,15yが形成されている。突起部12x、12yとの係合により、正確な位置決めが可能になっている。
【0057】
センサーホルダー15の詳細な構成について説明する。センサーホルダー15は、全体として、下側において温度センサー13A、13B及び電気配線14A、14B、14Cを収納する下側配線空間15Lと、上側において電気配線14A、14Bを収納する上側配線空間15Uとから構成される2層構造である。
【0058】
センサーホルダー15は、図5Aから図5Cに示すように、軸方向(長手方向)両端の係合部15xと係合部15yとの間に、仕切り板部15aと、第1センサー保持部15b1~第4センサー保持部15b4と、切り欠き部15cと、第1貫通孔15d1~第4貫通孔15d4とを有する。
【0059】
仕切り板部15aは、長手方向(Y軸方向)に延びる板状で、上下方向に、上側配線空間15Uと下側配線空間15Lとを区画する。
【0060】
4つのセンサー保持部15b1~15b4は、長手方向に直交する方向(X軸方向)に延びる壁状である。第1センサー保持部15b1と第2センサー保持部15b2との間、及び、第3センサー保持部15b3と第4センサー保持部15b4との間に、温度センサー13A及び13Bを保持する。
【0061】
なお、図5Bに示すように、各センサー保持部15b1~15b4を構成する壁には、温度センサー13A、13Bから長手方向(Y軸方向)に突出するセンサーのリード(端子)を挿通できるように、切り欠きが形成されている。
【0062】
また、図5Cに示すように、温度センサー13A、13Bは、感温部が平板状のヒーター11に接することができるよう、感温部がセンサーホルダー15から下に突出した状態で保持される。更に、温度センサー13A(図示左)と温度センサー13B(図示右)とは、リード(端子)の極性が逆になるように配置されている。
【0063】
切り欠き部15cは、左右の温度センサー13A、13Bの間の、仕切り板部15aの長手方向(X軸方向)の中央部に配置される。なお、温度センサー13A、13Bと結線済みの電気配線14A、14B、14Cをセンサーホルダー15に素早く組み込むために、切り欠き部15cは、敢えて穴状(貫通形状)とはせず、X軸方向に向けて開口する切り欠きとしている。
【0064】
4つコイルばね16を挿通する4つの貫通孔15d1~15d4は、第1センサー保持部15b1と第2センサー保持部15b2との間、及び、第3センサー保持部15b3と第4センサー保持部15b4との間に、それぞれ2つずつ、所定の間隔で設けられている。
【0065】
なお、図5Cに示すように、1つの温度センサー13Aの感温部を挟んだY軸方向両側に、貫通孔15d1、15d2が対で配置されている。また、温度センサー13Bの感温部を挟んだY軸方向両側に、貫通孔15d3、15d4が対で配置されている。そのため、ヒーターホルダー12とステー17の間に組み込まれた場合、各温度センサー13A、13Bの感温部を、ヒーター11の一面(第1面11a)に均等及び均圧で押し付けることができる。
【0066】
また、突起部12x、12yに係合するセンサーホルダー15の係合部15x,15yとしては、丸穴状もしくは長穴状の貫通穴が好ましい。特に一方の係合部15xを丸穴とし、他方の係合部15yを長穴とした場合、位置決めの正確さと、ヒーターホルダー12の案内部への嵌め入れ易さを両立できて、好適である。また、長穴により突起部12x、12yの形状誤差等を許容することができる。
【0067】
ここで、センサーホルダー15への、温度センサー13A、13B及びこれらを繋ぐ電気配線14A~14Cの組み込みについて説明する。
【0068】
まず、温度センサー13A、13Bと電気配線14A~14Cとは、加熱ユニット10とは別の工程で、結線された状態で供給される。なお、温度センサー13A、13Bのリードと各電気配線14A~14Cとを、自動機械で結線させようとする場合、部材のハンドリングやチャッキング等の工程上の制約から、温度センサー13Aと温度センサー13Bとの間には、数cm程度以上の間隔(余剰の電気配線)が必要とされる。
【0069】
このように、温度センサー13Aと温度センサー13Bとの間に余剰の電気配線がある場合でも、本実施形態の加熱ユニット10のセンサーホルダー15では、図5Cのように、電気配線14A~14Cを簡単かつコンパクトに保持部材内に収容することができる。
【0070】
例えば、図5Cの例では、まず、左側の温度センサー13Aを、所定の第1センサー保持部15b1と第2センサー保持部15b2との間に嵌め入れ、左側の電気配線14Aを下側配線空間15Lから上側配線空間15Uに、右側の電気配線14Bを下側配線空間15Lに配設する。
【0071】
ついで、上側の電気配線14Aと下側の電気配線14Bとが、切り欠き部15cで上下に交差するよう、これら電気配線14Aと電気配線14Bとを、センサーホルダー15の側方から切り欠き部15cに嵌め入れる。
【0072】
次に、左側の温度センサー13Bを、第3センサー保持部15b3と第4センサー保持部15b4との間の所定位置に嵌め入れ、上側の電気配線14Aをそのままセンサーホルダー15の一方の端部から引き出すとともに、温度センサー13Bのリードに繋がる下側の電気配線14Cを、同じ端部から引き出す。
【0073】
ついで、温度センサー13A、13B及び電気配線14A~14Cが組み込まれ、準備が整ったセンサーホルダー15を用いて、センサーホルダー15の係合部15xをヒーターホルダー12の突起部12xに、センサーホルダー15の係合部15yをヒーターホルダー12の突起部12yに、それぞれ嵌め入れることにより、複数の温度センサーのヒーターホルダー12内への配設及び位置決めが完了する。
【0074】
このようにして、本実施形態の定着装置30では、温度センサー13A、13Bを一括して、一度に位置決めすることができる。また、温度センサー13A、13Bを加熱ユニット10に一度の作業で組み込み、定着装置30を簡単に構築することができる。
【0075】
従って、本実施形態の定着装置30は、ヒーターの1つ1つに1個ずつ温度センサーを設置しなければならない場合でも、部品点数や作業工数の増加を抑え、定着装置30及びそれを備える画像形成装置100におけるトータルコストの上昇を抑制することができる。
【0076】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0077】
画像形成装置100は、モノクロ複合機であったが、本発明はこれに限られない。画像形成装置100は、電子写真方式でありさえすればよい。例えば、画像形成装置100は、カラー複合機であってもよい。
【0078】
本発明の定着装置のセンサー保持部材(センサーホルダー)が保持する温度センサーの種類や個数及びヒーターの種類や個数は、実施形態での例に限定されるものではない。本発明は、ヒーター及び各ヒーターの温度を測定する温度センサーの個数が多いほど、部品点数や作業工数の増加を抑え、トータルコストの上昇を抑制するという効果をより享受できる。
【0079】
図1図5Cを参照して説明した実施形態では、温度センサー13A、13Bを付勢する付勢部材をコイルばね16としたが、付勢部材はこれに限定されない。付勢部材として、板ばね等の他の弾性部材を用いてもよい。また、配設する個数も、複数(2個以上)であれば何個でもよい。
【0080】
また、ヒーター保持部材に形成される位置決め用の案内部及びそれに係合するセンサー保持部材の係合部は、図1図5Cで説明した実施形態での形状に限定されるものではない。例えば、ヒーターホルダー12の突起部12x、12yは、円筒状又は円錐状以外にも、凸形状であれば角状であってもよい。センサーホルダー15側の係合部15x,15yの穴形状は、突起部12x、12yの外周形状に合わせて適宜変更できる。
【0081】
本発明は、定着装置及び画像形成装置の分野に利用可能である。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C