(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】モデル作成装置及びモデル作成方法
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240305BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G06N20/00 130
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2022047096
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下沢 智啓
(72)【発明者】
【氏名】水師 由佳
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051637(JP,A)
【文献】特開2021-051638(JP,A)
【文献】特開2021-051639(JP,A)
【文献】特開2021-051640(JP,A)
【文献】特開2021-051641(JP,A)
【文献】特開2021-051642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0143237(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03859459(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0036200(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中に測定された前記車両の走行中の時系列データを学習用時系列データとして取得する学習用時系列データ取得部と、
前記学習用時系列データに関する発生頻度分布を示すデータを学習用頻度データとして取得する学習用頻度データ取得部と、
前記学習用時系列データと、前記学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルを作成するモデル作成部と、
前記学習用時系列データをフーリエ変換することで学習用周波数データを得る第1のフーリエ変換部と、
前記生成時系列データをフーリエ変換することで生成周波数データを得る第2のフーリエ変換部と、
前記生成時系列データと前記学習用時系列データとの差分、及び、前記生成周波数データと前記学習用周波数データとの差分を、前記重み付け処理のために前記モデル作成部に出力する差分算出部と、
を備えるモデル作成装置。
【請求項2】
前記モデル作成部は、前記学習用時系列データ及び前記学習用頻度データに加えて、前記学習用周波数データを教師データとして機械学習を行う、
請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項3】
前記時系列データは、前記車両の速度の時系列データであり、
前記学習用頻度データは、前記車両の速度の時系列データにおける速度又は加速度の発生頻度分布を示すデータである、
請求項1又は2に記載のモデル作成装置。
【請求項4】
コンピューターが実行するモデル作成方法であって、
車両が走行中に測定された前記車両の走行中の時系列データを学習用時系列データとして取得するステップと、
前記学習用時系列データに関する発生頻度分布を示すデータを学習用頻度データとして取得するステップと、
前記学習用時系列データと、前記学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルを作成するステップと、
前記学習用時系列データをフーリエ変換することで学習用周波数データを得るステップと、
前記生成時系列データをフーリエ変換することで生成周波数データを得るステップと、
前記生成時系列データと前記学習用時系列データとの差分、及び、前記生成周波数データと前記学習用周波数データとの差分を、前記機械学習モデルにフィードバックすることで前記機械学習モデルの重みを更新するステップと、
を含むモデル作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関連するデータを生成するためのモデル作成装置、データ生成装置、モデル作成方法及びデータ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度及び加速度等のデータを取得し、取得したデータに基づいて車両を管理するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
車両の状態を把握するためには、時間経過に伴って変化する多数のデータから構成される時系列データをシステムが解析することが望ましい。しかしながら、時系列データはデータサイズが大きいので、車両が時系列データを送信し続けると通信時の負荷が大きい。そこで、車両が送信するデータ量を抑制しつつ、車両の状態を把握しやすくする方法が求められている。
【0004】
本出願の出願人は、特許文献2において、頻度情報から時系列データを生成する技術を提案している。一例として、特許文献2には、車速の時系列データと、それに対応する車速頻度及び加減速頻度を学習データとして用いて機械学習を行うことで、それら頻度データの入力に応じて生成した車速時系列データを出力する機械学習モデルの作成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-248087号公報
【文献】特開2021-51637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載された技術においては、生成時系列データと学習用時系列データの差分を用いて機械学習モデルの重みを更新していることから、大まかに時系列データを再現できる。
【0007】
しかし、細かな変化などは差分としては小さな値となってしまうので、細かな変化などの再現が困難な問題がある。一方で、この細かな変化は、前記時系列データが車両の速度の時系列データである場合、例えば燃費を評価する際の加速抵抗として重要である。つまり、頻度データから時系列データを生成する技術において、細かな変化が再現された時系列データを生成することができる機械学習が望まれる。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、機械学習モデルを用いて頻度データから時系列データを生成する場合に、細かな変化が再現された時系列データを生成することができる、モデル作成装置、データ生成装置、モデル作成方法及びデータ生成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモデル作成装置の一つの態様は、
車両が走行中に測定された前記車両の走行中の時系列データを学習用時系列データとして取得する学習用時系列データ取得部と、
前記学習用時系列データに関する発生頻度分布を示すデータを学習用頻度データとして取得する学習用頻度データ取得部と、
前記学習用時系列データと、前記学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルを作成するモデル作成部と、
前記学習用時系列データをフーリエ変換することで学習用周波数データを得る第1のフーリエ変換部と、
前記生成時系列データをフーリエ変換することで生成周波数データを得る第2のフーリエ変換部と、
前記生成時系列データと前記学習用時系列データとの差分、及び、前記生成周波数データと前記学習用周波数データとの差分を、前記重み付け処理のために前記モデル作成部に出力する差分算出部と、
を備える。
【0010】
本発明のデータ生成装置の一つの態様は、
車両が走行中に測定された前記車両の走行中の時系列データから前記時系列データに関する発生頻度分布を示す頻度データを取得する頻度データ取得部と、
学習用時系列データと、前記学習用時系列データに関する発生頻度分布を示す学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルを作成するモデル作成部と、前記機械学習モデルから出力される前記生成時系列データの発生頻度分布を示す頻度データを生成頻度データとして得る生成頻度データ取得部と、前記生成時系列データと前記学習用時系列データとの差分、及び、前記生成時系列データをフーリエ変換することで得られる生成周波数データと前記学習用時系列データをフーリエ変換することで得られる学習用周波数データとの差分を、前記重み付け処理のために前記機械学習モデルに出力する差分算出部と、を有するモデル作成部によって得られた前記機械学習モデルに、前記頻度データを入力することにより、前記頻度データに対応する時系列データである生成時系列データを生成するデータ生成部と、
を備える。
【0011】
本発明のモデル作成方法の一つの態様は、
コンピューターが実行するモデル作成方法であって、
車両が走行中に測定された前記車両の走行中の時系列データを学習用時系列データとして取得するステップと、
前記学習用時系列データに関する発生頻度分布を示すデータを学習用頻度データとして取得するステップと、
前記学習用時系列データと、前記学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルを作成するステップと、
前記学習用時系列データをフーリエ変換することで学習用周波数データを得るステップと、
前記生成時系列データをフーリエ変換することで生成周波数データを得るステップと、
前記生成時系列データと前記学習用時系列データとの差分、及び、前記生成周波数データと前記学習用周波数データとの差分を、前記機械学習モデルにフィードバックすることで前記機械学習モデルの重みを更新するステップと、
を含む。
【0012】
本発明のデータ生成方法の一つの態様は、
コンピューターが実行するデータ生成方法であって、
車両が走行中に測定された前記車両の走行中の時系列データから前記時系列データに関する発生頻度分布を示す頻度データを取得するステップと、
学習用時系列データと、前記学習用時系列データに関する発生頻度分布を示す学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルを作成するステップと、前記学習用時系列データをフーリエ変換することで学習用周波数データを得るステップと、前記生成時系列データをフーリエ変換することで生成周波数データを得るステップと、前記生成時系列データと前記学習用時系列データとの差分、及び、前記生成周波数データと前記学習用周波数データとの差分を、前記機械学習モデルにフィードバックすることで前記機械学習モデルの重みを更新するステップと、を含む処理を行うことで作成された前記機械学習モデルに、前記頻度データを入力することにより、前記頻度データに対応する時系列データである生成時系列データを生成するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、学習用時系列データをフーリエ変換することで学習用周波数データを得るとともに、生成時系列データをフーリエ変換することで生成周波数データを得、さらに、生成時系列データと学習用時系列データとの差分、及び、生成周波数データと学習用周波数データとの差分を、機械学習モデルにフィードバックすることで機械学習モデルの重みを更新するようにしたので、機械学習モデルを用いて頻度データから時系列データを生成する場合に、学習用時系列データに対する生成時系列データの再現度を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】データ生成システムの概要を説明するための図
【
図2】データ生成システムの概要を説明するための図
【
図4】実施の形態によるデータ生成装置の構成を示すブロック図
【
図5A】条件付きVAEにより構成される機械学習モデルを、モデル作成部が作成する実施の形態の処理の概要を示す図
【
図5B】データ生成部が機械学習モデルを用いて時系列データを生成する過程を示す図
【
図6】データ生成装置における処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
<1>データ生成システムSの概要
図1及び
図2は、データ生成システムSの概要を説明するための図である。データ生成システムSは、車両Tにおいて測定された各種のパラメータの頻度データに基づいて、当該パラメータの時系列データを生成するためのシステムである。データ生成システムSは、データ収集装置1及びデータ生成装置2を備えている。データ生成装置2は、機械学習モデルを用いて、頻度データに基づいて時系列データを生成する装置である。データ生成装置2は、機械学習モデルを作成するモデル作成装置としても機能する。当該機械学習モデルは、例えば条件付VAE(Variational Auto Encoder)又は条件付GAN(Generative Adversarial Networks)を含んで構成されている。
【0017】
図3は、時系列データ及び頻度データの概要を示す図である。
図3Aに示すように、時系列データは、時間によって変化するパラメータの値を示すデータであり、例えば1秒ごとの車両Tの速度の値から構成されている。
図3Bに示すように、頻度データは、所定の期間内における、パラメータの値(速度)の発生頻度の分布を示すデータである。頻度データは、
図3Cに示したように、パラメータを一階微分した値(加速度)の発生頻度の分布を示すデータであってもよい。
【0018】
パラメータが車両Tの速度である場合、頻度データは、例えば単位時間(例えば1時間)内に時速1kmの状態が発生した時間、時速2kmの状態が発生した時間等のように、時速Nkm(Nは0以上の整数)の状態が発生した時間又は割合を示すデータである(
図3(B)参照)。パラメータが車両Tの速度である場合、頻度データは、単位時間内に所定の加速度が発生した時間又は割合を示すデータであってもよい(
図3(C)参照)。なお、車両Tが加速している間は加速度が正の値となり、減速している間は加速度が負の値となる。
【0019】
車両Tにおいて測定されるパラメータは、データ生成システムSは、車両Tにおいて測定されたパラメータの時系列データ及び頻度データを教師データとして機械学習(例えば深層学習)した機械学習モデルを作成し、作成した機械学習モデルを用いて、車両Tから得られた頻度データに基づいて時系列データを生成することを可能にする。
【0020】
これにより、データ量の少ない頻度データに基づいて、データ量の大きい時系列データを生成できるようになる。
【0021】
車両Tの管理者は、データ生成システムSにおいて生成される時系列データを分析することで、車両Tの燃費、劣化度、運転の質等の各種の情報を得ることが可能になる。
【0022】
以下、
図1及び
図2を参照しながら、データ生成システムSの概要を説明する。データ収集装置1は、ネットワークNを介して多数の車両Tにおいて測定されたパラメータのデータを取得する装置であり、例えばコンピューターである。
【0023】
図1に示したように、データ生成装置2は、データ収集装置1を介して車両Tから取得した時系列データ及び当該時系列データに対応する頻度データを教師データとして機械学習した機械学習モデルを作成するコンピューターである。また、
図2に示したように、データ生成装置2は、作成した機械学習モデルを用いて、車両Tから得られた頻度データに基づいて時系列データを生成する。
【0024】
図1は、データ生成装置2が機械学習をして機械学習モデルを作成する際のデータ生成システムSの動作を示す図である。データ収集装置1は、予め登録された車両Tから所定のパラメータ(例えば速度)の測定データを取得する(
図1における(1))。データ収集装置1は、取得した測定データの時系列データをデータ生成装置2に送信する(
図1における(2))。
【0025】
データ生成装置2は、データ収集装置1から受信した時系列データに基づいて頻度データを生成し、時系列データ及び頻度データを教師データとして、頻度データが入力されると時系列データを出力する機械学習モデルを作成する(
図1における(3))。データ生成装置2が頻度データを生成する代わりに、データ収集装置1が時系列データから頻度データを生成し、データ収集装置1が時系列データ及び頻度データをデータ生成装置2に送信してもよい。
【0026】
続いて、
図2を参照して、データ生成装置2が機械学習モデルを作成した後の動作を説明する。車両Tは、測定したパラメータの頻度データをデータ収集装置1に送信する(
図2における(4))。データ収集装置1は車両Tから受信した頻度データをデータ生成装置2に送信する(
図2における(5))。データ生成装置2は、受信した頻度データを機械学習モデルに入力し、機械学習モデルから出力される時系列データを取得することにより時系列データを生成する(
図2における(6))。データ生成装置2は生成した時系列データをデータ収集装置1に送信する(
図2における(7))。
【0027】
以上の流れにより、データ生成装置2を利用する車両Tの管理者等のユーザが、頻度データに基づいて、所望のパラメータの時系列データを取得することができる。データ生成装置2は、生成した時系列データをデータ収集装置1以外の任意のコンピューターに送信したり、ディスプレイに表示したり、印刷したりしてもよい。
【0028】
<2>データ生成装置2の構成及び動作
図4は、データ生成装置2の構成を示す図である。データ生成装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、を有する。制御部23は、学習用時系列データ取得部231と、学習用頻度データ取得部232と、生成用頻度データ取得部233と、データ出力部234と、モデル作成部235と、データ生成部236とを有する。
【0029】
データ生成装置2が生成用頻度データ取得部233、データ出力部234及びデータ生成部236を有しない場合、データ生成装置2は、機械学習モデルMを作成するモデル作成装置として機能する。
【0030】
通信部21は、データ収集装置1又はその他の外部装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースである。通信部21は、受信したデータを制御部23に送るとともに、制御部23から入力したデータを外部装置に送る。
【0031】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部22は、データ収集装置1から受信した時系列データ及び頻度データを一時的に記憶する。
【0032】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、学習用時系列データ取得部231、学習用頻度データ取得部232、生成用頻度データ取得部233、データ出力部234、モデル作成部235及びデータ生成部236として機能する。
【0033】
学習用時系列データ取得部231は、車両Tが走行中に測定されたパラメータの時系列データを学習用時系列データとして取得する。学習用時系列データ取得部231は、例えば、車両Tが走行中に測定された車両の速度の時系列データを取得する。
【0034】
学習用頻度データ取得部232は、学習用時系列データ取得部231が取得した学習用時系列データに対応する学習用頻度データを取得する。学習用頻度データ取得部232は、例えば、通信部21を介して学習用頻度データを取得するが、学習用頻度データ取得部232は、学習用時系列データ取得部231から出力される学習用時系列データに基づいて学習用頻度データを得るようにしてもよい。
【0035】
学習用頻度データ取得部232は、学習用頻度データとして、例えば学習用時系列データに関するパラメータの発生頻度分布を示すデータ(
図3B参照)を取得する。また、学習用頻度データ取得部232は、学習用頻度データとして、学習用時系列データの一階微分値の発生頻度分布を示すデータ(
図3C参照)を取得してもよい。
【0036】
学習用時系列データが速度の時系列データである場合、学習用頻度データ取得部232は、時系列データにおける速度の発生頻度分布を示す学習用速度頻度データ、及び/又は、時系列データにおける加速度の発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データを取得する。学習用頻度データ取得部232は、取得した学習用頻度データをモデル作成部235に送る。
【0037】
生成用頻度データ取得部233は、機械学習モデルMを用いて時系列データを生成するために用いられる生成用頻度データを取得する。本明細書において、機械学習モデルMを用いて生成される時系列データを生成時系列データという。生成用頻度データ取得部233は、生成用頻度データとして、生成用速度頻度データ及び/又は生成用加速度頻度データを取得する。生成用頻度データ取得部233は、取得した生成用頻度データをデータ生成部236に送る。
【0038】
データ出力部234は、データ生成部236が生成用頻度データに基づいて機械学習モデルMから生成した生成時系列データを出力する。データ出力部234は、データ生成部236から出力された生成時系列データを、通信部21などの外部の装置に送信する。
【0039】
モデル作成部235は、機械学習モデルMを作成し、作成した機械学習モデルMの重みを記憶部22に記憶させる。モデル作成部235は、モデル作成部235が有するメモリ(不図示)に重みを記憶させてもよい。
【0040】
モデル作成部235は、学習用時系列データと、学習用頻度データと、を教師データとして重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて頻度データに対応する時系列データである生成時系列データを出力するための機械学習モデルMを作成する。
【0041】
学習用時系列データが、車両Tの速度の時系列データであり、学習用頻度データが、車両Tの速度の頻度データ及び/又は加速度の頻度データであり、生成時系列データが速度の時系列データである場合、機械学習モデルMは、速度頻度データ及び/又は加速度頻度データが入力されたことに応じて車両Tの速度の時系列データである生成時系列データを出力する。
【0042】
データ生成部236は、生成用頻度データ取得部233から入力された生成用頻度データを機械学習モデルMに入力することにより生成時系列データを得る。生成用頻度データ取得部233から入力された生成用頻度データが、車両Tの速度の頻度データ及び/又は加速度の頻度データである場合、データ生成部236は、車両Tの速度の頻度データ及び/又は車両Tの加速度の頻度データを機械学習モデルMに入力する。これにより、機械学習モデルMから生成時系列データとして車両Tの速度の時系列データが出力される。このようにして、データ生成部236は生成時系列データを得て、これをデータ出力部234を介して外部に出力する。
【0043】
<3>機械学習モデルMの作成方法
図5Aは、機械学習モデルMの一例として、条件付きVAEにより構成される機械学習モデルMをモデル作成部235が作成する処理の概要を示す図である。
図5Bは、データ生成部236が機械学習モデルMを用いて生成時系列データを生成する過程を示す図である。
【0044】
図5に示すように、機械学習モデルMは、一例としてのディープニューラルネットワーク(DNN)により構成されている。DNNは、入力層から出力層までの間に複数の層を有しており、それぞれの層に含まれる複数のノードそれぞれに可変の重みが設けられている。機械学習モデルMが学習する前の重みは初期値となっている。
【0045】
図5Aに示すように、モデル作成部235は、学習用時系列データ及び学習用頻度データのペアが入力される機械学習モデルM-1と、潜在変数ベクトルz及び学習用頻度データが入力される機械学習モデルM-2とで構成され、機械学習モデルM-2から出力される生成時系列データと、入力した学習用時系列データとを比較する。
【0046】
加えて、モデル作成部235は、学習用時系列データをフーリエ変換して学習用周波数データを得るフーリエ変換部301と、機械学習モデルM-2から出力される生成時系列データをフーリエ変換して生成周波数データを得るフーリエ変換部302とを有する。モデル作成部235は、生成周波数データと、学習用周波数データと比較する。
【0047】
すなわち、本実施の形態のモデル作成部235は、生成時系列データと学習用時系列データとの差分、及び、生成周波数データと学習用周波数データとの差分を、重み付け処理のために機械学習モデルに出力する差分算出部400を有する。
【0048】
モデル作成部235は、機械学習モデルM-1及び機械学習モデルM-2に学習用頻度データを入力した際に機械学習モデルM-2から出力される生成時系列データと、学習用時系列データとの差分に基づいて、機械学習モデルM-1及び機械学習モデルM-2の重みを更新する。
【0049】
加えて、モデル作成部235は、機械学習モデルM-1及び機械学習モデルM-2に学習用頻度データを入力した際に機械学習モデルM-2から出力される生成時系列データを基に得られた生成周波数データと、学習用周波数データとの差分に基づいて、機械学習モデルM-1及び機械学習モデルM-2の重みを更新する。
【0050】
モデル作成部235は、例えば生成時系列データと学習用時系列データとの差が閾値以上である場合に、前記差を逆伝搬させ、逆伝搬させた経路上のノードの重みを更新する。モデル作成部235は、生成時系列データと学習用時系列データとの差が閾値未満になるまで、学習用頻度データを機械学習モデルM-1及び機械学習モデルM-2に入力したことにより生成される生成時系列データと学習用時系列データとの比較と重みの更新とを繰り返す。モデル作成部235は、多数の学習用頻度データ及び学習用時系列データのペアを用いて上記の処理を実行することにより、
図5Bに示す機械学習モデルM-3(機械学習モデルM-2と実質的に同一のモデル)を作成する。
【0051】
同様に、モデル作成部235は、例えば生成周波数データと学習用周波数データとの差が閾値以上である場合に、前記差を逆伝搬させ、逆伝搬させた経路上のノードの重みを更新する。モデル作成部235は、生成周波数データと学習用周波数データとの差が閾値未満になるまで、学習用頻度データを機械学習モデルM-1及び機械学習モデルM-2に入力したことにより生成される生成周波数データと学習用周波数データとの比較と重みの更新とを繰り返す。モデル作成部235は、多数の学習用頻度データ及び学習用時系列データのペアを用いて上記の処理を実行することにより、
図5Bに示す機械学習モデルM-3(機械学習モデルM-2と実質的に同一のモデル)を作成する。
【0052】
モデル作成部235が機械学習モデルM-1及び機械学習モデルM-2を更新して機械学習モデルM-3として完成した後には、
図5Bに示すように、データ生成部236が、車両Tから取得された頻度データ(生成用頻度データ)を機械学習モデルM-3に入力することにより、機械学習モデルM-3が、入力された頻度データに対応する生成時系列データを出力する。
【0053】
<4>データ生成装置2における処理の流れ
図6は、データ生成装置2における処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、データ生成装置2が機械学習モデルMの作成を開始する指示を受けた時点から開始される。
【0054】
ステップS11において、学習用時系列データ取得部231が学習用時系列データを取得し、ステップS12において、学習用頻度データ取得部232が学習用頻度データを取得する。ステップS11、S12を実行する順序は任意であり、モデル作成部235には、学習用時系列データと学習用頻度データとが同時に入力されてもよい。
【0055】
ステップS13において、フーリエ変換部301、302が学習用周波数データ及び生成周波数データを得る。
【0056】
続くステップS14において、差分算出部400が生成時系列データと学習用時系列データの差分、及び、生成周波数データと学習用周波数データの差分を、機械学習モデルMに出力する。
【0057】
ステップS15において、モデル作成部235は、学習用時系列データと学習用頻度データのセットを教師データとして機械学習することにより機械学習モデルMを更新する。具体的には、モデル作成部235は、記憶部22に記憶された機械学習モデルMの重みを更新する。
【0058】
モデル作成部235は、更新された機械学習モデルMの性能を評価し、評価した結果が基準レベル以上であるか否かを判定する(ステップS16)。モデル作成部235は、第1の判定として、学習用頻度データを機械学習モデルMに入力した際に機械学習モデルMから出力される生成時系列データと、学習用時系列データとの差分が閾値未満である場合に、評価した結果が基準レベル以上であると判定する。同様に、モデル作成部235は、第2の判定として、学習用頻度データを機械学習モデルMに入力した際に機械学習モデルMから出力される生成時系列データに基づいて得られた生成周波数データと、学習用時系列データに基づいて得られた学習用周波数データとの差分が閾値未満である場合に、評価した結果が基準レベル以上であると判定する。モデル作成部235は、第1及び第2の判定のいずれにおいても評価した結果が基準レベル以上であると判定した場合に、ステップS16で肯定結果(ステップS16においてYES)を得る。
【0059】
モデル作成部235は、評価した結果が基準レベルに達していないと判定した場合(ステップS16においてNO)、ステップS11に戻り、さらなる学習用時系列データ及び学習用頻度データを用いて機械学習を繰り返す。モデル作成部235は、評価した結果が基準レベルに達していると判定した場合(ステップS16においてYES)、機械学習モデルMの更新を終了する(ステップS17)。
【0060】
その後、データ生成部236は、時系列データを生成するための生成用頻度データを取得すると(ステップS18)、生成用頻度データを機械学習モデルMに入力する(ステップS19)。すると、ステップS20において、データ生成部236は、機械学習モデルMから生成時系列データを得る。
【0061】
<5>まとめ
以上説明したように、本実施の形態のモデル作成装置(制御部23)は、車両Tが走行中に測定された車両Tの走行中の時系列データを学習用時系列データとして取得する学習用時系列データ取得部231と、学習用時系列データに関する発生頻度分布を示すデータを学習用頻度データとして取得する学習用頻度データ取得部232と、学習用時系列データと、学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルMを作成するモデル作成部235と、学習用時系列データをフーリエ変換することで学習用周波数データを得る第1のフーリエ変換部301と、生成時系列データをフーリエ変換することで生成周波数データを得る第2のフーリエ変換部302と、生成時系列データと学習用時系列データとの差分、及び、生成周波数データと学習用周波数データとの差分を、重み付け処理のためにモデル作成部235に出力する差分算出部400と、を備える。
【0062】
本実施の形態のデータ生成装置(制御部23)は、車両Tが走行中に測定された車両Tの走行中の時系列データから時系列データに関する発生頻度分布を示す頻度データを取得する頻度データ取得部233と、学習用時系列データと、学習用時系列データに関する発生頻度分布を示す学習用頻度データと、を教師データとして差分に基づく重み付け処理を用いて機械学習することにより、頻度データが入力されたことに応じて生成時系列データを出力する機械学習モデルMを作成するモデル作成部235と、生成時系列データと学習用時系列データとの差分、及び、生成時系列データをフーリエ変換することで得られる生成周波数データと学習用時系列データをフーリエ変換することで得られる学習用周波数データとの差分を、重み付け処理のために機械学習モデルに出力する差分算出部と、を有するモデル作成部235によって得られた機械学習モデルMに、頻度データを入力することにより、頻度データに対応する時系列データである生成時系列データを生成するデータ生成部236と、を備える。
【0063】
これにより、生成時系列データと学習用時系列データの差分のみならず、生成周波数データと学習用周波数データの差も反映された機械学習モデルMを作成するので、学習用時系列データと生成時系列データとを比較した場合に、周波数及び振幅が近づき、高周波で表される細かな変化が再現された生成時系列データを得ることができるようになる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0065】
上述の実施の形態では、主に時系列データが車両Tの速度である場合について述べたが、上述したように時系列データは、これに限らず、例えば、車両Tの加速度、車両Tで使用される冷却水の温度、車両Tで使用される油の温度、車両Tのアクセル開度、車両Tの振動量など、車両Tの走行によりであり時間的に変化する種々のパラメータについての時系列データであり得る。
【0066】
また、上述の実施の形態では、データ生成装置2がデータ収集装置1から時系列データ及び頻度データを取得する場合を例示したが、データ生成装置2がデータ収集装置1の機能を有しており、データ生成装置2が複数の車両Tから測定データを受信してもよい。
【0067】
また、上述の実施の形態では、モデル作成部235に学習用時系列データ及び学習用頻度データを入力して機械学習を行う場合について述べたが、これに加えて、フーリエ変換部301による得られた学習用周波数データをモデル作成部235に入力して機械学習を行うようにしてもよい。このようにすれば、学習用時系列データに周波数情報を付加する役割を学習用周波数データに持たせた学習を行うことができるようになるので、より周波数の再現性の良い機械学習モデルMを得ることができる。
【0068】
また、以上の説明においては、データ生成装置2として機能するコンピューターが、モデル作成装置の機能を有するとともに、生成用頻度データが入力されたことに応じて機械学習モデルMから出力された生成時系列データを出力する機能も有する場合を例示したが、データ生成装置2の構成はこれに限らない。データ生成装置2は、モデル作成装置として機能する第1コンピューターと、第1コンピューターに生成用頻度データを入力し、第1コンピューターから生成時系列データを取得する第2コンピューターとによって構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、車両走行中の車両に関する時系列データを、学習により少ないデータから再現する技術として広く用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 データ収集装置
2 データ生成装置
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
231 時系列データ取得部
232 学習用頻度データ取得部
233 生成用頻度データ取得部
234 データ出力部
235 モデル作成部
236 データ生成部
301、302 フーリエ変換部
400 差分算出部
M 機械学習モデル
S データ生成システム
T 車両