(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】グリップ取付構造
(51)【国際特許分類】
B62D 31/02 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B62D31/02 C
(21)【出願番号】P 2022150026
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】長江 寛之
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083914(JP,A)
【文献】特開2021-041835(JP,A)
【文献】特開2007-085136(JP,A)
【文献】特開2003-237448(JP,A)
【文献】特開2003-226182(JP,A)
【文献】特開2020-015466(JP,A)
【文献】特開2000-142330(JP,A)
【文献】特開平11-115804(JP,A)
【文献】実開昭59-185178(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0181860(US,A1)
【文献】特開2020-125644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外側に形成されたグリップ固定部と、前記グリップ固定部に取り付けられるグリップと、を備えるグリップ取付構造であって、
前記グリップは、
ユーザによって握られるグリップ部材と、
前記グリップ部材の両端に位置する取付部と、
前記取付部から前記グリップ固定部側に突出するように形成され車両に取り付けられる突起部と、
を有し、
前記グリップが前記グリップ固定部
の固定面に取り付けられた状態で、前記グリップ固定部
の前記固定面と前記固定面に対向する前記取付部の面とが離間しており、
前記突起部の先端の面積は、前記突起部の突出方向
から見た前記取付部
の面積よりも小さい、
グリップ取付構造。
【請求項2】
前記突起部は、固定具が通される通し孔が形成された筒であり、
前記筒の外周から前記取付部の外周部までの距離が、前記突起部の突起量よりも長い、
請求項1に記載のグリップ取付構造。
【請求項3】
前記グリップ固定部は、
前記グリップの各突起部が固定される一対の固定面と、
前記一対の固定面の間の領域である中間領域と、
を有し、前記中間領域は、前記固定面よりも凹むように形成されている、
請求項1又は2に記載のグリップ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリップ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ボルト及びナットにより車体パネルに固定されるグリップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両においては運転者が握るグリップが車内に設けられることが多いが、例えば大型のトラック等の場合には、洗車などの作業時に作業者が握るグリップが車両の外部に設けられることがある。このような構成においては、例えば交通事故を想定して、グリップに大きな衝撃力が加わった場合にグリップ又はその周辺部が十分に変形して衝撃力を緩和させる構造となっていることが求められる。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、グリップに衝撃力が加わった際にグリップから対象物に加わる抗力を低減できるグリップ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のグリップ取付構造は、車両の外側に形成されたグリップ固定部と、前記グリップ固定部に取り付けられるグリップと、を備えるグリップ取付構造であって、前記グリップは、ユーザによって握られるグリップ部材と、前記グリップ部材の両端に位置する取付部と、前記取付部から前記グリップ固定部側に突出するように形成され車両に取り付けられる突起部と、を有し、前記グリップが前記グリップ固定部に取り付けられた状態で、前記取付部と前記グリップ固定部とが離間しており、前記突起部の先端の面積は、前記突起部の突出方向に対して垂直な方向の切断面における前記取付部の断面積よりも小さい。
【0007】
前記突起部は、固定具が通される通し孔が形成された筒であり、前記筒の外周から前記取付部の外周部までの距離が、前記突起部の突起量よりも長くてもよい。
【0008】
前記グリップ固定部は、前記グリップの各突起部が固定される一対の固定面と、前記一対の固定面の間の領域である中間領域と、を有し、前記中間領域は、前記固定面よりも凹むように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グリップに衝撃力が加わった際にグリップから対象物に加わる抗力を低減できるグリップ取付構造を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のグリップ取付構造が設けられた車両の模式図である。
【
図3】グリップ部材がグリップ固定部に取り付けられた状態の図である。
【
図4】グリップ部材の取付部を正面側から見た図である。
【
図5】グリップに対して正面側から衝撃が加わった際に、固定面が変形する様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態のグリップ取付構造が設けられた車両の模式図である。
図2は、グリップ部材の斜視図である。
図3は、グリップ部材がグリップ固定部に取り付けられた状態の図である。
図4は、グリップ部材の取付部を正面側から見た図である。以下の説明では、車両の方向に対応するように前、後、上及び下といった方向を示す用語を使用するが、これらの用語は本発明を限定する意図で使用されるものではない。
【0012】
本実施形態のグリップ取付構造S100は、
図1に示すように車両50のボディの外側に設けられている。グリップ取付構造S100はどのような車両に設けられてもよいが、本実施形態の車両50は例えば中大型キャブオーバートラックである。
【0013】
グリップ取付構造S100は、グリップ固定部51と、グリップ10とを備えている。グリップ10は、例えば洗車などの作業時に作業者が掴まる部分である。本実施形態では、グリップ10がフロントウィンドウの下部に設けられているが、グリップ10は例えばフロントウィンドウの上部に設けられていてもよい。
【0014】
なお、
図1では、グリップ10が車両前方に向かってやや上向きに突出するように配置されているが、グリップ10は車両前方に向かって水平方向又はやや下向きに突出するように配置されていてもよい。
【0015】
グリップ固定部51は、車両50の前面、具体的には、車両50のキャビンのフロントパネル部分の構造部である。グリップ固定部51は、
図3に示すように、グリップ10が固定される一対の固定面51aと、それらの間の中間領域51bとを有している。
【0016】
固定面51aは、グリップ10の突起部13(詳細下記)が固定される面であり、一例として平面である。中間領域51bは、固定面51aよりも凹むように形成されている。別の言い方をすれば、固定面51aは中間領域51bよりも一段突出するように形成されている。より具体的には、固定面51aは、キャビンのフロントパネル部分の面から突出するように形成されている。
【0017】
本実施形態の構成では、凹部状の中間領域51bが形成されていることで、グリップ10とボディとの間の隙間が広く形成され、作業者がグリップ10に掴まり易くなっている。
【0018】
グリップ10は、上述のとおり作業者が掴まる部分である。グリップ10は、
図3に示すように、グリップ部材11と、グリップ部材11の両端に位置する端部部材12-1、12-2(以下、端部部材12ともいう)とを有している。
【0019】
グリップ部材11は、例えば、ユーザである作業者が片手で握ることができるように図の左右方向(車幅方向に対応する)に延びる長尺な形状を有し、両端部がグリップ固定部51側に向かって屈曲している。本実施形態の構成では、グリップ部材11は車両50の前面に配置される。このような場合、仮に車両50のグリップ部材11が例えば人などの対象物と衝突したときに、対象物に抗力として加わる衝撃が緩和されるように、グリップ部材11は、鋼材などの高硬度の材質ではなく、比較的軟質な材質で形成されることが好ましい。
【0020】
端部部材12は、グリップ部材11の端部に設けられている。なお、この例では、グリップ部材11とは別部材として端部部材12が設けられているが、本発明はこれに限らず、突起部13がグリップ部材11に直接形成されていてもよい。端部部材12は、平板状のベース部14と、突起部13とを有する。端部部材12は、ベース部14と突起部13とが一体的に形成された単一の部材であってもよい。端部部材12のうち、グリップ10がグリップ固定部51に取り付けられた状態でグリップ固定部51に対して所定の距離をおいて対向する部分が取付部12aである。
【0021】
取付部12aは、一例として板状の形状を有する。取付部12aの輪郭形状は任意であるが、一例として
図4に示すように、取付部12aは略四角形の輪郭形状を有する。本実施形態では、一方の取付部12aと他方の取付部12aとが異なる大きさに形成されているが、いずれの取付部12aも四角形の輪郭形状を有する。
【0022】
突起部13は、取付部12aから突出し、その先端面は、取付部12aの面積よりも小さく形成されている。具体的には、突起部13は、取付部12aからグリップ固定部51側に突出するように形成され車両に取り付けられる。なお、ここで、「取付部12aの面積」とは、
図4の例で言えば、突起部13が設けられた領域を含む、取付部12a全体の面積のことをいう。突起部13の先端面は、例えば固定面51aに対して面で対向する平面である。先端面は、ワッシャなどの部材を介在させた状態で固定面51aに対向していてもよいが、本実施形態では先端面が固定面51aに直接当接している。
【0023】
突起部13の先端の面積は、突起部13の突出方向に対して垂直な方向の切断面における取付部12aの断面積(ここでは、一例として、
図4に示すように取付部12aを突起部13側から見た場合の取付部12aの面積と同一である)よりも小さい。
【0024】
突起部13は、固定具である固定ボルト56が通される通し孔が形成された筒である。突起部13の輪郭形状は任意であり、円形、楕円形、多角形、及びこれらの組み合わせたような形状のうちいずれであってもよいが、実施形態では例えば円形である。
【0025】
突起部13がこのように円筒形状の場合、一例として、突起部13の突出量d1(
図3)は、例えば、円筒である突起部13の外周から外側(半径方向外側)に張り出した部分の突起量である長さd2(
図4)よりも短い。このような形状により作用及び効果については
図5を参照して向上する。なお、端部部材12は、長さd2>突出量d1の関係となるような領域を突起部13の全周にわたって有している必要はなく、少なくとも部分的にそのような領域を有していればよい。
【0026】
(グリップ10の取付状態)
グリップ10がグリップ固定部51に取り付けられた状態について、
図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、グリップ部材11の突起部13の先端面を車両のフロントパネル部の固定面51aに当接させた状態で、固定ボルト56が締結される。固定ボルト56の先端は、固定面51aの裏面側に配置されたナット58にねじ込まれる。
【0027】
なお、
図3では、固定ボルト56がグリップ部材11の内部に位置している状態が描かれているが、固定ボルト56をグリップ部材11の内部に位置させるための構造は既知のものを利用可能であるので詳細な説明は省略する。
【0028】
図3のようにグリップ10がグリップ固定部51に取り付けられた状態で、突起部13の先端面が、車両の前面である固定面51aに当接する。端部部材12の取付部12aと、固定面51aとの間には隙間が形成されている。つまり、取付部12aとグリップ固定部51とは離間している。端部部材12の取付部12aと固定面51aとの間の隙間の寸法は、この例では、突起部13の突出長さd1である。
【0029】
(作用及び効果)
図5は、グリップ10に対して正面側から衝撃が加わった際に、固定面51aが変形する様子を模式的に示す図である。上述のように構成されたグリップ取付構造S100では、車両50の前面側からグリップ10に対して衝撃力が加わった場合、その力はグリップ10の左右の突起部13を介してグリップ固定部51に伝わる(
図5では一方側の突起部13のみを示す)。
【0030】
グリップの取付構造としては、突起部13を形成せず、取付部12aが全面的に固定面51aに接するような構成も想定される。この場合、衝撃力は固定面51aに全面的に加わることとなり、衝撃力の大きさや固定面51aの剛性にもよるが、
図5のように固定面51aが凹むことが生じにくい。
【0031】
一方、本実施形態の構成によれば、突起部13を介して衝撃力が局所的に固定面51aに対して加わることとなる。その結果、
図5のように、固定面51aは突起部13によって押されて凹状に変形する。このように、固定面51aが変形するということは、その変形量に相当するストローク分だけ、グリップ10が移動できることを意味する。このような構成により、グリップ10に衝撃力が加わった際のストローク量を確保しつつ、グリップから対象物に加わる抗力を低減することができる。
【0032】
本実施形態では、また、突起部13の円筒の外周から取付部12aの外周部までの距離d2が、突起部の突出量d1よりも長く形成されている。突起部13と端部部材12とがこのような関係である場合、
図5に示すように、固定面51aが突起部13の突出量d1分だけ凹んだ際に、取付部12aが固定面51aに当たって、突起部13が、それ以上、固定面51aに対して押し付けられない。したがって、突起部13が過度に固定面51aに押し付けられ、突起部13が固定面51aを貫通したり、固定面51aが想定以上に変形したりすることが防止される。
【0033】
<変形例>
本発明は図面に表わされた具体的な形状に限定されるものではなく種々変更可能である。例えば、グリップ10が比較的大きなサイズの場合には、各端部部材12における突起部13の数を増やしてもよい。例えば、1つの取付部12aに2つ以上の突起部13が形成されていてもよい。このように複数の突起部13が形成される場合、突起部13は水平方向に並ぶように配置されてもよいし、鉛直方向(
図2の上下方向)に並ぶように配置されもよい。
【0034】
固定面51aには、突起部13の先端が挿入される受入れ凹部が形成されていてもよい。受入れ凹部は、突起部13の外形よりもやや大きい輪郭形状であって、突起部13の突出量d1よりも深さ寸法が短い形状の凹部であってもよい。
【0035】
上述したようなグリップ取付構造S100は、車両50の前面に複数設けられていてもよい。具体的には、例えば、車両の右側に第1のグリップ取付構造S100が配置され、車両の左側に第2のグリップ取付構造S100が設けられていてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、車両50のボディから突出するように形成された固定面51aにグリップ10が固定されることを例示したが、グリップ固定部51は全体的にフラットな面として形成されていてもよい。
【0037】
本出願は、グリップの発明も開示する。グリップは、車両の外側に設置される。グリップは、第1方向に延伸するユーザによって握られるグリップ部であるグリップ部材と、グリップ部から第1方向に垂直な第2方向に延伸する支持部とを有する。グリップは、さらに、支持部のグリップ部と反対側の端部から第2方向に突出し、車両に接触するように取り付けられる突出部を有する。第1方向における突出部の長さは、第1方向における支持部の端部の長さよりも短い。
【0038】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0039】
10 グリップ
11 グリップ部材
12 端部部材
12-1、12-2 端部部材
12a 取付部
13 突起部
14 ベース部
50 車両
51 グリップ固定部
51a 固定面
51b 中間領域
56 固定ボルト
58 ナット
S100 グリップ取付構造
【要約】
【課題】グリップに衝撃力が加わった際にグリップから対象物に加わる抗力を低減することができるグリップ取付構造を提供する。
【解決手段】グリップ取付構造S100は、車両50の外側に形成されたグリップ固定部51と、グリップ固定部51に取り付けられるグリップ10と、を備え、グリップ10は、ユーザによって握られるグリップ部材11と、グリップ部材11の両端に位置する取付部12aと、取付部12aからグリップ固定部51側に突出するように形成され車両50に取り付けられる突起部13と、を有し、グリップ10がグリップ固定部51に取り付けられた状態で、取付部12aとグリップ固定部51とが離間しており、突起部13の先端の面積は、突起部13の突出方向に対して垂直な方向の切断面における取付部12aの断面積よりも小さい。
【選択図】
図3