(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】検出システム
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G01N5/02 A
(21)【出願番号】P 2022181076
(22)【出願日】2022-11-11
(62)【分割の表示】P 2020566160の分割
【原出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019004005
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健治
(72)【発明者】
【氏名】山岡 憲二
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130774(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/077963(WO,A1)
【文献】特開2018-173313(JP,A)
【文献】特開2004-108857(JP,A)
【文献】特開2010-025728(JP,A)
【文献】米国特許第04847783(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00 - 5/04
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質に感応する感応膜が複数設けられた1又は複数の検出基板を交換可能に装着し、装着された前記検出基板から出力された前記感応膜に対応する物質の検出信号に基づいて第1のデータを生成するとともに、装着された前記検出基板に設けられた前記感応膜に対応する物質の検出結果と前記感応膜の膜情報とを対応付ける第2のデータを有する検出器と、
前記検出器から前記第1のデータと前記第2のデータとを収集し、前記第1のデータと前記第2のデータとを照らし合わせて、物質を特定する物質検出部と、を備え、
前記検出器は、
前記検出器の台数を増減可能
に接続
可能な検出器本体であって、通信ネットワークを介して前記物質検出部に前記第1のデータを送信する検出器本体を備える、
検出システム。
【請求項2】
前記検出基板は、前記第2のデータを記憶するメモリを有し、
前記検出器本体は、装着された前記検出基板の前記メモリから、前記第2のデータを読み取り、
前記物質検出部は、前記検出器を構成する前記検出器本体で読み取られた前記第2のデータを、前記通信ネットワークを介して収集する、
請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記検出器には、前記第2のデータを示す識別コードが表示され、
前記検出器に表示された前記識別コードを撮像する撮像部を備え、
前記物質検出部は、前記撮像部で撮像された前記識別コードに基づいて、前記第2のデータを収集する、
請求項1に記載の検出システム。
【請求項4】
前記物質検出部は、
検出対象と、前記検出対象での前記感応膜の反応レベルの範囲とが関連付けて登録されたデータベースを有し、前記第1のデータと前記第2のデータとを照らし合わせて生成された前記感応膜の反応レベルを示す反応レベルデータをキーとして前記データベースを参照して、前記検出対象を検出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動制御用の電子機器に装着され、物質が吸着する物質吸着膜付き振動子の共振周波数の変化量に基づいて、吸着した物質を検出する物質検出素子が開示されている。この物質検出素子は、物質吸着膜付き振動子を駆動し、その共振周波数の変化量を検出する電子機器に装着されて使用される。
【0003】
さらに、特許文献1では、検出可能な物質の組み合わせが異なる複数の物質検出素子を用意し、電子機器に装着する物質検出素子を交換して、様々な化学物質を検出可能とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の技術において、検出する物質の組み合わせを変更する場合には、電子機器に装着する物質検出素子を別のものに交換する必要がある。また、感応膜が感応する物質は外観から判別することが困難である。このため、様々な化学物質を検出する場合には、各物質検出素子において感応膜がどのような物質を検出可能としているのかを管理しておく必要がある。しかしながら、感応膜の数及び種類が増えれば増えるほど、このような管理はユーザにとって煩雑な作業になる。
【0006】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、感応膜を管理する作業をユーザが行うことなく、一括して検出される物質を増やすことができる検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る検出システムは、
物質に感応する感応膜が複数設けられた1又は複数の検出基板を交換可能に装着し、装着された前記検出基板から出力された前記感応膜に対応する物質の検出信号に基づいて第1のデータを生成するとともに、装着された前記検出基板に設けられた前記感応膜に対応する物質の検出結果と前記感応膜の膜情報とを対応付ける第2のデータを有する検出器と、
前記検出器から前記第1のデータと前記第2のデータとを収集し、前記第1のデータと前記第2のデータとを照らし合わせて、物質を特定する物質検出部と、を備え、
前記検出器は、
前記検出器の台数を増減可能に接続可能な検出器本体であって、通信ネットワークを介して前記物質検出部に前記第1のデータを送信する検出器本体を備える。
【0008】
また、前記検出基板は、前記第2のデータを記憶するメモリを有し、
前記検出器本体は、装着された前記検出基板の前記メモリから、前記第2のデータを読み取り、
前記物質検出部は、前記検出器を構成する前記検出器本体で読み取られた前記第2のデータを、前記通信ネットワークを介して収集する、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記検出器には、前記第2のデータを示す識別コードが表示され、
前記検出器に表示された前記識別コードを撮像する撮像部を備え、
前記物質検出部は、前記撮像部で撮像された前記識別コードに基づいて、前記第2のデータを収集する、
こととしてもよい。
【0010】
さらに、前記物質検出部は、
検出対象と、前記検出対象での前記感応膜の反応レベルの範囲とが関連付けて登録されたデータベースを有し、前記第1のデータと前記第2のデータとを照らし合わせて生成された前記感応膜の反応レベルを示す反応レベルデータをキーとして前記データベースを参照して、前記検出対象を検出する、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、物質検出部は、検出器が有する感応膜に対応する物質の検出結果を示す第1のデータと、検出器が有する感応膜に対応する物質の検出結果と感応膜の膜情報とを対応付ける第2のデータとを照らし合わせて、物質を特定する。これにより、感応膜の検出結果と、その感応膜の膜情報とを自動的に結びつけることができる。この結果、感応膜を管理する作業をユーザが行うことなく、一括して検出される物質を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る検出システムの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の検出システムで行われるデータ通信の様子を示すブロック図である。
【
図3】
図1の検出システムを構成する情報端末のハードウエア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の検出システムを構成する検出器の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図1の検出システムを構成するカートリッジの構成を示す斜視図である。
【
図8】検出する物質の組み合わせが異なる複数のカートリッジの一例を示す図である。
【
図9】センサ部の検出結果を示す第1のデータを示す模式図である。
【
図10】センサ部の検出結果と検出される物質の種類とを対応付ける第2データを示す模式図である。
【
図11】第1のデータと第2のデータとを照らし合わせて、反応レベルデータを生成する様子を示す模式図である。
【
図12】データベースの処理の一例を示す模式図である。
【
図13】本発明の実施の形態1に係る検出システムの測定の流れを示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施の形態2に係る検出システムを構成するカートリッジの一部を示す斜視図である。
【
図15】本発明の実施の形態2に係る検出システムにおけるデータの流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0014】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る検出システムは、複数種類の物質を一括して検出可能であることを特徴とする。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る検出システム1は、情報端末2と、複数の検出器3a、3b、3c、3d・・・と、を備える。検出器3a、3b、3c、3d、・・・の数に特に制限はなく、検出器3a、3b、3c、3d、・・・は、情報端末2に接続される台数の増減が可能である。後述のように、検出器3a、3b、3c、3d、・・・は、検出する物質の組み合わせがそれぞれ異なる。このようにすれば、検出器が1台のときに比べて、検出する物質の種類を増やすことができる。
【0016】
情報端末2と複数の検出器3a、3b、3c、3d・・・とは、シリアル通信ネットワーク4で接続されている。シリアル通信ネットワーク4においては、情報端末2と、複数の検出器3a、3b、3c、3d・・・とは直列に接続されている。しかしながら、実際には、
図2に示すように、情報端末2と、複数の検出器3a、3b、3c、3d・・・各々とは、一対一、もしくはバケツリレー式で所望のデータ通信が可能である。
【0017】
シリアル通信ネットワーク4を介して送信されるデータ5は、ヘッダ5aとデータ本体5bとで構成される。ヘッダ5aはデータ5の送信元の識別番号と送信先の識別番号とを含んでいる。この識別番号により、データ5を受信した相手は、データ5の送信先が自身であることと、どこから送信されたデータ5であるのかを特定することができる。例えば、検出器3aから情報端末2へ送られるデータ5のヘッダ5aには、送信元としての検出器3aの識別番号と、送信先としての情報端末2の識別番号とが含まれている。これにより、情報端末2は、検出器3aから自身へ送られたデータ5であることを識別することができる。これにより、検出器3aと情報端末2との間の一対一、もしくはバケツリレー式の所望のデータ通信が実現される。このことは、検出器3b、3c、3d、・・・も同様である。データ本体5bには、送信されるデータの具体的な内容が含まれている。
【0018】
情報端末2は、例えばスマートフォン又はパーソナルコンピュータである。
図3に示すように、情報端末2は、CPU(Central Processing Unit)51と、主記憶部52と、外部記憶部53と、操作部54と、表示部55と、通信部56と、撮像部57と、内部バス50と、を備える。CPU51、主記憶部52、外部記憶部53、操作部54、表示部55、通信部56及び撮像部57は、内部バス50によって接続されている。
【0019】
外部記憶部53に格納されたプログラム59は、主記憶部52に読み込まれる。マンマシンインターフェイスである操作部54の操作入力に従って、CPU51が主記憶部52に読み込まれたプログラム59を実行する。これにより、必要に応じて各種演算、表示部55への表示出力又はシリアル通信ネットワーク4の通信インターフェイスである通信部56を用いたデータ通信が行われる。この結果、情報端末2の機能が実現される。本実施の形態では、情報端末2が、物質を特定する物質検出部に対応する。
【0020】
図4に示すように、複数の検出器3aは、検出器本体10と、アダプタ11Aとを備えている。検出器3b、3c、3d、・・・各々も、検出器3aと同様の構成を有する。検出器本体10は、シリアル通信ネットワーク4のインターフェイス10aを有しており、情報端末2とのデータ通信を行う。アダプタ11Aは、検出器本体10から分離可能である。アダプタ11Aは、検出器本体10から分離された状態で、2枚のカートリッジ(検出基板)20Aを交換可能に収納する。アダプタ11Aは、カートリッジ20Aが装着された状態で、検出器本体10に差し込まれる。アダプタ11Aが検出器本体10に差し込まれると、カートリッジ20Aと検出器本体10とが電気的に接続される。検出器本体10は、アダプタ11Aを交換可能に装着する。
【0021】
本実施の形態では、検出器1台につき、2つのカートリッジ20Aを装着可能としている。しかし、検出器1台につき装着可能なカートリッジ20Aの数は、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0022】
図5に示すように、カートリッジ20Aには、物質を検出する6つのセンサ部30が設けられている。なお、1枚のカートリッジ20Aにおけるセンサ部30の数は1~5個でもよいし、7個以上であってもよい。
【0023】
センサ部30は、
図6及び
図7に示すように、貫通孔31に設けられている。センサ部30は、貫通孔31に懸架された十字状の梁32と、梁32に取り付けられた感応膜33と、を備える。梁32には、圧電素子層が設けられている。
図7に示すように、梁32の端部には、駆動電極36及び検出電極37が設けられている。駆動電極36に印加される電圧信号(駆動信号)により、圧電素子層が伸縮して梁32が振動し、その振動により、圧電素子層に発生する電圧信号(検出信号)が、検出電極37を介して検出される。
【0024】
駆動電極36及び検出電極37は、検出器本体10に接続されており、駆動電極36への電圧信号(駆動信号)の印加と、検出電極37を介した電圧信号(検出信号)の検出は、カートリッジ20Aが装着された検出器本体10により行われる。検出器本体10は、駆動電極36へ駆動信号を出力し、検出電極37から検出信号を入力する。この検出信号が、カートリッジ20Aから出力される各感応膜33に対応する物質の検出信号である。検出器本体10は、入力した検出信号に基づいて、梁32の共振周波数を算出し、梁32の共振周波数の変化量を算出する。
【0025】
本実施の形態では、検出される物質の組み合わせがそれぞれ異なる複数種類のカートリッジ20Aが用意されている。
図8には、A~Eの5枚のカートリッジ20Aが示されている。各カートリッジ20Aにおけるセンサ部30の配置場所には、それぞれa~fの符号が割り振られている。
【0026】
Aのカートリッジ20Aにおいて、センサ部30の配置場所a~fには、感応膜33として膜M1~M6が取り付けられている。同様に、Bのカートリッジ20Aの配置場所a~fに配置された感応膜33は、それぞれ膜M7~M12である。また、Cのカートリッジ20Aでは、配置場所a~fに配置された感応膜33は、膜M13~M18である。また、Dのカートリッジ20Aでは、配置場所a~fに配置された感応膜33は膜M1、M5、M6、M19~M21である。また、Eのカートリッジ20Aでは、配置場所a~fに配置された感応膜33は膜M22~M24、M7、M12、M14である。なお、膜M1~M24はそれぞれ感応する物質が異なる。また、膜の種類は24種類には限られない。実際には、100を超える種類の感応膜33を揃えることが可能である。
【0027】
図9に示すように、検出器本体10は、2つのカートリッジ20Aを交換可能に装着する2つのスロットSL1、SL2を有している。検出器本体10は、スロットSL1、SL2に装着されたカートリッジ20Aから出力された電圧信号(検出信号)を入力し、入力した検出信号に基づいて、センサ部30の共振周波数の変化量を算出し、算出した変化量を、感応膜33に対応する物質の検出結果を示す反応レベルのデータ(第1のデータ15)として生成する。反応レベルの単位は、例えばHzである。
【0028】
例えば、検出器3aの検出器本体10において、スロットSL1にAのカートリッジ20Aが装着され、スロットSL2にDのカートリッジ20Aが装着されている場合、検出器3aは、データ本体5bに、スロットSL1、SL2の配置場所a~fにおける膜M1~M6、M1、M5、M6、M19、M20、M21の反応レベルを示す第1のデータ15が挿入されたデータ5を、情報端末2に送信する。この場合、データ本体5bが示す第1のデータ15は、(100、120、50、60、200、100、110、210、90、80、100、120)となる。
【0029】
なお、2つのカートリッジ20Aの組み合わせとしては、他に、(A,B)、(A,C)、(A,E)、(B,C)、(B,D)、(B,E)、(C,D)、(C,E)、(D,E)などがある。検出器3b、3c、3d、・・・各々でも同様に、スロットSL1、SL2に装着されたカートリッジ20Aにおいて検出される感応膜33に対応する物質の検出結果、すなわち感応膜33の反応レベルが第1のデータ15として情報端末2に送信される。情報端末2では、データ5のヘッダ5aにおける送信元の識別番号から、第1のデータ15が、どの検出器から送られたものであるかを認識することができる。
【0030】
さらに、
図5に示すように、カートリッジ20Aは、メモリとしてのICメモリ21を有している。
図8に示すように、ICメモリ21には、センサ部30の感応膜33に対応する物質の検出結果と感応膜33の膜情報とを対応付けるデータが記憶されている。ここで、膜情報とは、感応膜33の種類等、感応膜33に感応する(吸着する)物質を識別するための情報である。
【0031】
Aのカートリッジ20AのICメモリ21には、配置場所a~fに配置された感応膜33が膜M1~M6であることが記憶されている。同様に、Bのカートリッジ20AのICメモリ21には、配置場所a~fに配置された感応膜33がそれぞれ膜M7~M12であることが記憶されている。また、Cのカートリッジ20AのICメモリ21には、配置場所a~fに配置された感応膜33が膜M13~M18であることが記憶されている。さらに、Dのカートリッジ20AのICメモリ21には、配置場所a~fに配置された感応膜33が膜M1、M5、M6、M19~M21であることが記憶されている。Eのカートリッジ20AのICメモリ21には、配置場所a~fに配置された感応膜33が膜M22、M23、M24、M7、M12、M14であることが記憶されている。
【0032】
図10に示すように、検出器本体10は、装着されたアダプタ11Aにセットされたカートリッジ20AのICメモリ21から、感応膜33に対応する物質の検出結果と感応膜33の膜情報とを対応付ける第2のデータ16を読み取る。検出器本体10は、読み取った第2のデータ16をデータ本体5bとするデータ5を、シリアル通信ネットワーク4を介して、情報端末2へ送信する。
【0033】
例えば、検出器3aのアダプタ11Aにおいて、スロットSL1にAのカートリッジ20Aが装着され、スロットSL2にDのカートリッジ20Aが装着されている場合について考える。この場合、検出器3aの検出器本体10は、スロットSL1の配置場所a~fの感応膜33が膜M1~M6であり、スロットSL2の配置場所a~fの感応膜33が膜M1、M5、M6、M19、M20、M21であることを示す第2のデータ16を読み取る。検出器3aは、その第2のデータ16をデータ本体5bとするデータ5を、シリアル通信ネットワーク4を介して、情報端末2に送信する。この場合、データ本体5bとしての第2のデータ16は、(M1、M2、M3、M4、M5、M6、M1、M5、M6、M19、M20、M21)となる。検出器3b、3c、3d、・・・でも同様に、装着されたカートリッジ20Aに対応する第2のデータ16をデータ本体5bとするデータ5を、シリアル通信ネットワーク4を介して情報端末2に送信する。情報端末2では、データ5のヘッダ5aにおける送信元の識別番号から、第2のデータ16が、どの検出器から送られたものであるかを認識することができる。
【0034】
上述のように、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・は、物質に感応する1又は複数の感応膜33を有し、感応膜33に対応する物質の検出結果を示す第1のデータ15を生成するとともに、感応膜33に対応する物質の検出結果と感応膜33の膜情報とを対応付ける第2のデータ16を有するものとなる。
【0035】
より具体的には、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・において、アダプタ11Aは、感応膜33が設けられた2つのカートリッジ20Aを有し、カートリッジ20Aから出力される感応膜33に対応する物質の検出信号を出力するとともに、第2のデータ16を有する。検出器本体10は、装着されたアダプタ11Aから出力された感応膜33に対応する物質の検出信号に基づいて第1のデータ15を生成する。検出器本体10は、シリアル通信ネットワーク4を介して情報端末2に第1のデータ15を送信する。
【0036】
さらに、アダプタ11Aのカートリッジ20Aは、第2のデータ16を記憶するICメモリ21を有している。検出器本体10は、装着されたカートリッジ20AのICメモリ21から、第2のデータ16を読み取って、シリアル通信ネットワーク4を介して情報端末2に送信する。
【0037】
情報端末(物質検出部)2は、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々から送信された第1のデータ15と、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々で読み取られた第2のデータ16を、シリアル通信ネットワーク4を介して収集する。情報端末2は、収集される第1のデータ15と第2のデータ16とを照らし合わせて、物質を特定する。例えば、情報端末2は、
図11に示すように、検出器3aについて、第1のデータ15と、第2のデータ16とを照らし合わせる。情報端末2は、この照らし合わせの結果、膜M1~M6、膜M1、M5、M6、M19、M20、M21とそれぞれの膜の反応レベルとが関連付けられた、膜の反応レベルを示す反応レベルデータ17を生成する。これにより、情報端末2は、検出された物質を特定することができる。情報端末2は、検出器3b、3c、3d、・・・についても同様の処理を行って、それぞれの反応レベルデータ17を生成する。
【0038】
さらに、情報端末2は、
図12に示すように、特定された物質(感応膜)と、反応レベルと、特定された物質を含む検出対象とを関連付けたデータ組が蓄積されるデータベースDBを有している。このデータベースDBには、検出対象となる被検出物I、II・・・と、その被検出物I、II、・・・での膜M1、M2、M3、・・・の反応レベルの範囲とが関連付けて登録されている。情報端末2は、検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々の反応レベルデータ17をキーとして、データベースDBを参照して、検出対象を検出する。例えば、膜M1、M2、M3、・・・の反応レベルが、被検出物Iに対応する反応レベルの範囲に入る場合には、被検出物Iが検出物質として特定される。なお、このデータベースDBは、実際には、この検出システム1を用いて、既知の被検出物I、II、・・・の測定を行わせ、検出された反応レベルが登録され、蓄積されることにより構成されている。
【0039】
次に、本実施の形態に係る検出システム1を用いた検出対象の測定の流れについて説明する。
図13に示すように、まず、検出システム1は、データベースDBへのデータの蓄積を行う(ステップS1)。具体的には、検出システム1は、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・を用いて、既知の検出対象(被検出物I、II、・・・)に対して物質検出を行う。情報端末2は、予め収集された第1のデータ15と、第2のデータ16とを照らし合わせ、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々の反応レベルデータ17を生成する。さらに、情報端末2は、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々の反応レベルデータ17と、既知である検出対象とのデータ組を、データベースDBに蓄積する。これにより、例えば、
図12に示すデータベースDBが生成される。
【0040】
続いて、カートリッジ20Aが検出器3a、3b、3c、3d、・・・に装着される(ステップS2)。この場合、検出対象を構成する物質に感応する感応膜33を有するカートリッジ20Aが選択される。
【0041】
続いて、情報端末2と、検出器3a、3b、3c、3d、・・・とが、シリアル通信ネットワーク4で接続される(ステップS3)。これにより、
図1に示す検出システム1が構築される。
【0042】
続いて、検出システム1は、第2のデータ16を収集する(ステップS4)。具体的には、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々は、アダプタ11Aに装着されたカートリッジ20AのICメモリ21から、第2のデータ16を読み取る。情報端末2は、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々で読み取られた第2のデータ16を、シリアル通信ネットワーク4を介して収集する。
【0043】
続いて、検出システム1は、物質を検出する(ステップS5)。具体的には、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・は、未知の検出対象に対して、物質検出を行う。そして、情報端末2が、その検出結果を示す第1のデータ15を、シリアル通信ネットワーク4を介して収集する。情報端末2は、収集された第1のデータ15と、ステップS4で得られた第2のデータ16とを照らし合わせ、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・の反応レベルデータ17を生成する。さらに、情報端末2は、生成された反応レベルデータ17をキーとしてデータベースDBを参照し、被検出物I、II、・・・の中から、検出対象を検出する。
【0044】
なお、本実施の形態では、情報端末2は、第2のデータ16を収集してから、第1のデータ15を収集したが、第1のデータ15及び第2のデータ16を同時に収集するようにしてもよい。
【0045】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る検出システム1では、第2のデータを生成するための構成及び動作が上記実施の形態1と異なっている。
【0046】
さらに、本実施の形態では、
図14に示すように、カートリッジ20Aの代わりに、カートリッジ20Bが用いられている。カートリッジ20Bには、ICメモリ21が設けられていない点が、カートリッジ20Aと異なる。
【0047】
複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々のアダプタ11Bには、装着されるカートリッジ20Bに対応するバーコード40が表示されている。バーコード40は、カートリッジ20Bにおける感応膜33に対応する物質の検出結果と感応膜33の膜情報とを対応付ける第2のデータ16を示す識別コードである。なお、アダプタ11Bに装着されるカートリッジ20Bが別のものに交換された場合には、バーコード40も変更される。
【0048】
図15に示すように、情報端末2は、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々のアダプタ11Bに表示されたバーコード40を撮像する撮像部57を備えている。さらに、情報端末2には、撮像部57で撮像されたバーコード40を解読して、第2のデータ16を生成する第2のデータ生成部45が設けられている。なお、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々においてバーコード40を撮像する際には、操作部54(
図3参照)の操作入力により、該当する検出器3aの識別番号が指定入力され、第2のデータ16と結びつけられる。
【0049】
情報端末2は、上記実施の形態1と同様に、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々から第1のデータ15を収集し、第2のデータ生成部45で複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・のバーコード40を撮像し、解読することにより、第2のデータ16を収集する。さらに、情報端末2は、収集された第1のデータ15と第2のデータ16とを照らし合わせて反応レベルデータ17を生成することにより、物質を特定する。さらに、情報端末2は、上記実施の形態1と同様に、反応レベルデータ17をキーとしてデータベースDBを参照して、検出対象を検出する。
【0050】
なお、本実施の形態では、バーコード40は、1次元のバーコードであったが、本発明はこれには限られない。バーコード40として、2次元バーコードを用いてもよい。
【0051】
以上詳細に説明したように、上記各実施の形態によれば、情報端末2は、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々が有する感応膜33に対応する物質の検出結果を示す第1のデータ15と、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々が有する感応膜33に対応する物質の検出結果と感応膜33の膜情報とを対応付ける第2のデータ16とを照らし合わせて、物質を特定する。これにより、感応膜33の検出結果と、その感応膜33の膜情報とを自動的に結びつけることができる。この結果、感応膜33を管理する作業をユーザが行うことなく、検出器の台数にかかわらず一括して検出される物質を増やすことができる。
【0052】
上記各実施の形態に係る検出システム1によれば、同型の検出器を増設したり、検出器のアダプタ11A,11Bを交換したりするだけで、特定の検出対象以外の検出対象も検出できるように機能を拡張することができる。すなわち、検出システム1の汎用化が可能である。
【0053】
また、検出対象の中には、含まれる成分が近いものも存在する。上記各実施の形態に係る検出システム1を用いれば、検出可能な物質の種類を増やして、成分が類似する検出対象を区別する可能性を高めることができる。この結果、検出対象の検出精度を向上することができる。
【0054】
逆に、検出する物質の数が少ない場合には、検出器の数を少なくすることができる。このようにすれば、検出システム1を必要最小限の構成とし、小型化、使いやすさ及びコストの点で優位性を持たせることができる。
【0055】
また、上記実施の形態1によれば、カートリッジ20Aには、第2のデータ16を記憶するICメモリ21が設けられており、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々は、装着されたカートリッジ20AのICメモリ21から、第2のデータ16を読み取り、情報端末2が、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々で読み取られた第2のデータ16を、シリアル通信ネットワーク4を介して受信する。このようにすれば、感応膜33の検出結果と、その感応膜33の膜情報とを自動的に対応付けることができるので、検出器3a、3b、3c、3d、・・・を容易に増設することができる。
【0056】
さらに、上記実施の形態2によれば、アダプタ11Bには、第2のデータ16を示すバーコード40が表示されている。情報端末2は、検出器3a、3b、3c、3d、・・・各々に表示されたバーコード40を撮像する撮像部57を備え、撮像部57で撮像されたバーコード40に基づいて、第2のデータ16を生成する。このようにしても、感応膜33に対応する物質の検出結果と、感応膜33の膜情報とを自動的に対応付けることができるので、検出器3a、3b、3c、3d、・・・を容易に増設することができる。
【0057】
また、上記各実施の形態によれば、情報端末2は、特定された物質と、特定された物質を成分として含む検出対象とを関連付けたデータ組が蓄積されるデータベースDBを有している。情報端末2は、データベースDBを参照して、検出対象(被検出物I、II、・・・)を検出する。このデータベースDBは、実際の検出結果に基づいて生成されたものであり、ある程度のばらつきを有している。このばらつきにより、検出結果に誤差があったとしても、検出対象を正確に検出することができる。この結果、検出対象の検出精度を向上することができる。
【0058】
また、上記各実施の形態では、センサ部30における梁32の形状を十字状としたが、本発明はこれには限られない。梁32の形状に特に制限はない。また、上記各実施の形態では、センサ部30として、感応膜33が設けられた梁32により構成されるものとしたが、本発明はこれには限られない。感応膜33を用いて物質を検出可能なセンサであれば、あらゆるものを用いることが可能である。また、物質の有無だけでなく、その濃度を検出するセンサとして用いることも可能である。
【0059】
なお、上記各実施の形態に係る検出システム1は、匂いを検出する匂いセンサ又は嗅覚センサとして用いられても良いし、物質の味を検出する味覚センサとして用いられても良い。また、検出対象は、気体でもよいし、液体でもよい。
【0060】
なお、上記各実施の形態では、情報端末2をスマートフォンとしたが、本発明はこれには限られない。情報端末2をパーソナルコンピュータやタブレットコンピュータとしてもよい。
【0061】
なお、本実施の形態では、シリアル通信ネットワーク4によりデータ通信を行ったが、本発明はこれには限られない。例えば、スター型のネットワークによりデータ通信を行うようにしてもよい。また、本実施の形態では、有線ネットワークによりデータ通信を行ったが、本発明はこれには限られない。無線ネットワークによりデータ通信を行うようにしてもよい。無線ネットワークは、WiFi(登録商標)を用いてもよいし、Bluetooth(登録商標)等の短距離通信を用いるようにしてもよい。
【0062】
また、上記各実施の形態では、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・で、検出される物質の組み合わせが異なるようにしたが、本発明はこれには限られない。検出器3a、3b、3c、3d、・・・で、検出する物質をすべて同じとしてもよい。この場合、検出器3a、3b、3c、3d、・・・を分散配置し、ある物質の分布状態を検出することも可能である。この場合、複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・がそれぞれの位置情報を有し、情報端末2が複数の検出器3a、3b、3c、3d、・・・からその位置情報を収集するようにしてもよい。
【0063】
その他、情報端末2のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0064】
CPU51、主記憶部52、外部記憶部53、操作部54、表示部55、通信部56及び撮像部57及び内部バス50などから構成される情報端末2の処理を行う中心となる部分は、上述のように、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する情報端末2を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで情報端末2を構成してもよい。
【0065】
コンピュータの機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0066】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0067】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0068】
なお、本願については、2019年1月15日に出願された日本国特許出願2019-004005号を基礎とする優先権を主張し、本明細書中に日本国特許出願2019-004005号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、物質の検出に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 検出システム、2 情報端末(物質検出部)、3a、3b、3c、3d 検出器、4 シリアル通信ネットワーク、5 データ、5a ヘッダ、5b データ本体、10 検出器本体、10a インターフェイス、11A、11B アダプタ、15 第1のデータ、16 第2のデータ、17 反応レベルデータ、20A、20B カートリッジ、21 ICメモリ、30 センサ部、31 貫通孔、32 梁、33 感応膜、36 駆動電極、37 検出電極、40 バーコード、45 第2のデータ生成部、50 内部バス、51 CPU、52 主記憶部、53 外部記憶部、54 操作部、55 表示部、56 通信部、57 撮像部、59 プログラム、M1~M24 膜、SL1、SL2 スロット、DB データベース