(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2022209546
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2019004564の分割
【原出願日】2019-01-15
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-234939(JP,A)
【文献】特開2009-120100(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055695(WO,A1)
【文献】特開2016-168922(JP,A)
【文献】特開2016-64730(JP,A)
【文献】特開2015-151004(JP,A)
【文献】特開2007-83754(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011112180(DE,A1)
【文献】米国特許第5435618(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向中間部にフロアトンネルが設けられるフロアパネルと、
前記フロアパネルの下面の車幅方向の外側に接合され、車両前方に向かうに従い車幅方向内側に傾斜して延びている内側傾斜部を有するフロアサイドメンバと、
前記内側傾斜部と前記フロアトンネルの開口縁部とを接続するリンフォースメントと、を備える車体下部構造において、
前記内側傾斜部と前記フロアトンネルの開口縁部とを接続し、前記リンフォースメントの車両前方側に配置されているフロントクロスメンバを備え、
前記内側傾斜部と前記リンフォースメントとの接合部と、前記内側傾斜部と前記フロントクロスメンバとの接合部とが隣接していることを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記内側傾斜部と前記リンフォースメントとの接合部と前記内側傾斜部と前記フロントクロスメンバとの接合部とは、前記内側傾斜部の傾斜方向に隣接していることを特徴とする、請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記フロントクロスメンバの前部は、車幅方向外側に向かうに従い車両前方に傾斜して延びていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記リンフォースメントは、前記内側傾斜部とほぼ直交した状態で、前記内側傾斜部に接合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車体下部構造。
【請求項5】
前記リンフォースメントおよび前記フロントクロスメンバは、前記フロアトンネルを横断するように車幅方向に延びていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の車体下部構造。
【請求項6】
前記フロアパネルの上面に設けられるフロアクロスメンバを備え、
前記リンフォースメントおよび前記フロント
クロスメンバは、前記フロアクロスメンバの車両前方側に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の車体下部構造。
【請求項7】
前記フロアパネルの上面に設けられるフロアクロスメンバを備え、
前記フロアパネルは、前記フロアトンネルの開口縁部に対して車両上方側に延びる段差部を有し、
前記フロアクロスメンバは、前記段差部と重なるように設けられ、
前記リンフォースメントは、前記フロアクロスメンバおよび前記フロアパネルと重ねて接合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の車体下部構造。
【請求項8】
車幅方向中間部にフロアトンネルが設けられるフロアパネルと、
前記フロアパネルの下面の車幅方向の外側に接合され、車両前方に向かうに従い車幅方向内側に傾斜して延びている内側傾斜部を有するフロアサイドメンバと、
前記内側傾斜部と前記フロアトンネルの開口縁部とを接続するリンフォースメントと、を備える車体下部構造において、
前記フロアパネルの上面に設けられるフロアクロスメンバを備え、
前記フロアパネルは、前記フロアトンネルの開口縁部に対して車両上方側に延びる段差部を有し、
前記フロアクロスメンバは、前記段差部と重なるように設けられ、
前記リンフォースメントは、前記フロアクロスメンバおよび前記フロアパネルと重ねて接合されていることを特徴とする、車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体下部のフロアパネルの車幅方向両側部には、当該フロアパネルの剛性を向上させるために、車両前後方向に延びるフロアサイドメンバが接合されている。例えば、バッテリにより駆動される車両の場合、当該フロアパネルには、バッテリが設置されている。
【0003】
また、フロアパネルには、車体の骨格を構成するような車体構造部材が接合されている。当該車体構造部材には、駆動用モータやサスペンション等の振動源となる構造体が取り付けられている。そのため、当該構造体の振動は、車体構造部材を介してフロアパネルに伝達される。
【0004】
一方で、フロアパネルにバッテリを搭載する場合、バッテリを設置するためのフロアパネル内のスペースを確保するために、例えば、特許文献1に開示されているように、フロアサイドメンバが車両後方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜している構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにフロアサイドメンバが傾斜することにより、メインフロア部分が広くなり、バッテリの設置面積が広くなる。ところが、当該傾斜構造では、例えばメインフロア部分がせん断変形することにより、フロントサイドメンバが車両前後方向に振動しやくすなる可能性がある。
【0007】
当該振動の伝達によりフロアのパネルが振動すると、車両室内の騒音の原因となる。また、前突及びオフセット衝突等が発生すると、両側のフロアサイドメンバの内側に位置するフロアパネルが歪むような変形を起こす可能性がある。すなわち、上記のような構造では、衝突荷重の吸収を効率良く行う上で、改善の余地があった。また、単に歪みに対応するようにリンフォースメントを架け渡しても十分な効果を得られない可能性がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、フロアサイドメンバが車両前後方向に対して傾斜するような構造に対して、フロアパネルの変形を抑制し、且つ、衝突荷重の分散やパネル振動の振幅低減を可能にする車体下部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る車体下部構造は、車幅方向中間部にフロアトンネルが設けられるフロアパネルと、前記フロアパネルの下面の車幅方向の外側に接合され、車両前方に向かうに従い車幅方向内側に傾斜して延びている内側傾斜部を有するフロアサイドメンバと、前記内側傾斜部と前記フロアトンネルの開口縁部とを接続するリンフォースメントと、を備える車体下部構造において、前記内側傾斜部と前記フロアトンネルの開口縁部とを接続し、前記リンフォースメントの車両前方側に配置されているフロントクロスメンバを備え、前記内側傾斜部と前記リンフォースメントとの接合部と、前記内側傾斜部と前記フロントクロスメンバとの接合部とが隣接している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フロアサイドメンバが車両前後方向に対して傾斜するような構造に対して、フロアパネルの変形を抑制し、且つ、衝突荷重の分散やパネル振動の振幅低減を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車体下部構造を車両下方から見た斜視図である。
【
図2】
図1のリンフォースメント及びその周辺を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図3】
図2のリンフォースメント及びその周辺を示す下面図である。
【
図4】
図3のフロアパネルの上面側を示す斜視図である。
【
図5】
図4のフロアパネルを車幅方向外側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車体下部構造の一実施形態について、図面(
図1~
図5)を参照しながら説明する。本実施形態の車体下部構造は、例えば、図示しないバッテリにより駆動される電気自動車の車体下部の構造である。
【0013】
なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、右側及び左側は、乗員が車両前方を向いたときの左側及び右側に対応している。
【0014】
本実施形態の車体下部構造は、メインフロアパネル10を有している。メインフロアパネル10の下面側にはバッテリが設置されている。さらに、車体下部構造は、フロントサイドメンバ21,22と、フロントクロスメンバ25と、フロアサイドメンバ31,32と、リンフォースメント40を有している。バッテリを搭載するスペースを広くするために、フロアサイドメンバ31,32は、ハの字状に開き、サイドシル24a,24bに接合される。これらの部材の詳細を、以下に説明する。
【0015】
メインフロアパネル10は、車体下部に配置されたパネル部材で、
図1に示すように、図示しない左右の前輪の後部付近から車両後方に延びている板状の部材である。メインフロアパネル10の車幅方向寸法は、車体の車幅方向の寸法にほぼ対応している。
【0016】
メインフロアパネル10の車幅方向のほぼ中央部(中間部)には、フロアトンネル11が設けられている。フロアトンネル11は、車両下方に開口し、車両前後方向に延びている。フロアトンネル11は、メインフロアパネル10の下面の車幅方向中央部が、下方視で車両上方に凹むことにより構成されている。
【0017】
この例では、フロアトンネル11は、メインフロアパネル10とは別の部材によって構成されている。フロアトンネル11を構成する部材は、車両前後方向視で、ハット型の断面形状を有している。メインフロアパネル10の車幅方向中央に設けられた車両前後方向に延びる開口部を上方から塞ぐように、メインフロアパネル10の上面側の開口縁部に接合されている(
図5)。なお、メインフロアパネル10の上面を車両上方に膨出するように変形させて、メインフロアパネル10にフロアトンネル11を一体的に形成してもよい。
【0018】
メインフロアパネル10は、
図2及び
図3に示すように、フロアトンネル11の開口縁部に位置する下段面16を有し、フロアトンネル11の後端には、当該下段面16に対して、車両上方側に延びる段差部15が設けられている。フロアトンネル11の車両後方側には、該下段面16に対して車両上方に位置する上段面17が設けられ、下段面16と上段面17とは、車両後方に向かうに従い車両上方に傾斜する縦壁面18によって接続されている。段差部15を構成する縦壁面18は、フロアトンネル11の車幅方向両側に位置し、車幅方向に延びている。図示は省略しているが、バッテリは、段差部15の後方に位置する上段面17に設置されている。
【0019】
フロントサイドメンバ21,22は、
図1に示すように、右側のフロントサイドメンバ21と、左側のフロントサイドメンバ22を有しており、両側のフロントサイドメンバ21,22のそれぞれは、メインフロアパネル10の前部から車両前方に向かって突出して延びている。両側のフロントサイドメンバ21,22は、図示しない左右の前輪の車幅方向内側に、左右一対となるように、車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。各フロントサイドメンバ21,22は、車体骨格を構成する高剛性の部材で、金属材料により形成されている。なお、右側及び左側のフロントサイドメンバ21,22の間には、車輪を駆動するための図示しない駆動用モータ等が配置されている。
【0020】
フロントクロスメンバ25は、
図1に示すように、メインフロアパネル10の下面側に配置され、車幅方向に延びている。フロントクロスメンバ25は、
図2及び
図3に示すように、中央部材26と、右外側部材27と、左外側部材28とを有している。中央部材26は、フロアトンネル11を横断するように、車幅方向に延びている。中央部材26の車幅方向両側部は、フロアトンネル11の車幅方向両側に位置する下段面16に、スポット溶接等により接合されている。
【0021】
中央部材26の後部は、車幅方向に直線的に延びている。中央部材26の前部は、車幅方向外側に向かうに従い車両前方側に傾斜している。すなわち、中央部材26の車両前後方向長さは、中央部材26の車幅方向中心に対して、車幅方向外側が長くなるように設定されている。
【0022】
右外側部材27は、中央部材26の車幅方向右外側部に、スポット溶接等により接合されている部材で、中央部材26の車幅方向右外側部から車幅方向右外側に延びている。右外側部材27の後部は、中央部材26の後部に連続するように、車幅方向に直線的に延びている。また、右外側部材27の前部は、中央部材26の前部に連続するように、車幅方向外側に向かうに従い、車両前方側に傾斜して延びている。すなわち、右外側部材27の車両前後方向長さは、車幅方向外側に向かうに従い長くなるように設定されている。
【0023】
右外側部材27の車幅方向外側の前部は、右側のフロントサイドメンバ21の後部の下面に接合されており、右外側部材27の車幅方向外側の後部は、後述する右側のフロアサイドメンバ31の内側傾斜部31bの下面に接合されている。これらの接合は、例えばスポット溶接により行われている。右外側部材27の車幅方向外側の後部と、右側のフロアサイドメンバ31の内側傾斜部31bの下面との溶接ポイントは、
図2及び
図3で、P17で示している。
【0024】
左外側部材28は、中央部材26の車幅方向左外側部に、スポット溶接等により接合されている部材で、中央部材26の車幅方向左外側部から車幅方向左外側に延びている。左外側部材28の後部は、右外側部材27と同様に、車幅方向に直線的に延び、また、左外側部材28の前部は傾斜している。左外側部材28の車幅方向外側の前部は、左側のフロントサイドメンバ22の後部の下面に接合されており、左外側部材28の車幅方向外側の後部は、後述する左側のフロアサイドメンバ32の内側傾斜部32bの下面に接合されている。左外側部材28の車幅方向外側の後部と、左側のフロアサイドメンバ32の内側傾斜部32bの下面との溶接ポイントは、
図2及び
図3で、P18で示している。
【0025】
フロントクロスメンバ25は、フロントサイドメンバ21,22と同様に、車体骨格を構成する高剛性に部材である。中央部材26、右外側部材27及び左外側部材28は、金属材料により形成されている。
【0026】
フロントクロスメンバ25の車両前方側には、
図1に示すようにサスペンションフレーム23が配置されている。サスペンションフレーム23は、図示しないサスペンションを支持する剛性の高い部材であり、ブレース等を介して右側及び左側のフロントサイドメンバ21,22の後部等にスポット溶接等により接合されている。
【0027】
次に、フロアサイドメンバ31,32について説明する。フロアサイドメンバ31,32は、
図2及び
図3に示すように、右側のフロアサイドメンバ31と、左側のフロアサイドメンバ32とを有している。両側のフロアサイドメンバ31,32は、左右一対となるように、車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0028】
右側のフロアサイドメンバ31は、メインフロアパネル10の下面における車幅方向の右外側に配置される部材で、直線部31aと、内側傾斜部31bとを有している。直線部31aは、車両前後方向に延びており、メインフロアパネル10の下面の車幅方向右外側の縁にスポット溶接等により接合され、さらに車両前後方向に延びている右側のサイドシル24aにも接合されている。
【0029】
内側傾斜部31bは、メインフロアパネル10の下面に接合されており、直線部31aの前部から車両前方に向かうに従い車幅方向内側に傾斜して延びている。内側傾斜部31bの前部は、右側のフロントサイドメンバ21の後部に接合されている。接合部(溶接ポイント)の詳細な図示は省略している。内側傾斜部31bの車幅方向内側の内壁面と、直線部31aの車幅方向内側の内壁面とにより構成される角度は鈍角で、この例では、約150度である。また、上述したように、内側傾斜部31bの下面には、フロントクロスメンバ25の右外側部材27が、溶接ポイントP17でスポット溶接等により接合されている。
【0030】
左側のフロアサイドメンバ32は、
図2及び
図3に示すように、メインフロアパネル10の下面における車幅方向の左外側に配置される部材で、右側のフロアサイドメンバ31と同様に、直線部32aと、内側傾斜部32bとを有している。直線部32aは、車両前後方向に延びており、メインフロアパネル10の下面の車幅方向左外側の縁に接合され、さらに左側のサイドシル24bにも接合されている。内側傾斜部32bは、当該下面に接合され、直線部32aの前部から車両前方に向かうに従い車幅方向内側に傾斜して延びている。また、内側傾斜部32bの前部は、左側のフロントサイドメンバ22の後部に接合されている。
【0031】
また、上述したように、内側傾斜部32bの下面には、フロントクロスメンバ25の左外側部材28の車幅方向外側部が、溶接ポイントP18でスポット溶接等により接合されている。右側及び左側のフロアサイドメンバ31,32の内側傾斜部31b,32bは、車両前方に向かうに従い互いに近づくように配置されている。
【0032】
フロアサイドメンバ31,32は、主に直線部31a,32aを構成する第1の部材と、直線部31a,32aの一部と内側傾斜部31b,32bとを構成する第2の部材を有し、第1の部材及び第2の部材が、スポット溶接等により接合されることにより構成されている。第2の部材は、直線部31a,32aの前部が湾曲して内側傾斜部31b,32bに繋がるように構成されている。なお、第1の部材と第2の部材との境界についての図示は省略している。また、第1の部材と第2の部材とが一体的に構成されてもよい。
【0033】
リンフォースメント40は、
図1~
図3に示すように、全体で車幅方向に延びる部材で、中間部44と、右外側傾斜部41と、左外側傾斜部42と、を有している。この例では、中間部44、右外側傾斜部41及び左外側傾斜部42は、一体的に形成されている。
【0034】
中間部44、右外側傾斜部41及び左外側傾斜部42は、車両上方に開口するハット型の断面形状を有している。また、中間部44、右外側傾斜部41及び左外側傾斜部42のそれぞれの前部及び後部には、前側フランジ44a,41a,42a及び後側フランジ44b,41b,42bが設けられている。前側フランジ44a,41a,42a及び後側フランジ44b,41b,42bは、ハット型の断面の前ツバ及び後ツバに相当する部分である。該フランジ41a,42a,44a,41b,42b,44bは、メインフロアパネル10の下面等に接合されている。接合位置等については、後で説明する。
【0035】
中間部44は、フロアトンネル11を横断するように車幅方向に延びている。中間部44の後側フランジ44bは、車幅方向に延びている。中間部44の前側フランジ44aは、車幅方向外側に向かうに従い車両前方側に傾斜している。この例の中間部44の車両前後方向長さは、中央部の車幅方向中心よりも車幅方向外側が長くなるように設定されている。
【0036】
中間部44の前側フランジ44aの車幅方向両側部は、フロアトンネル11の開口縁部に、
図2及び
図3に示す溶接ポイントP13,P14で、スポット溶接等により接合されている。また、中間部44の後側フランジ44bの車幅方向両側部も、溶接ポイントP11,P12で、フロアトンネル11の開口縁部に接合されている。後側フランジ44bの溶接ポイントP11,P12は、段差部15を構成する縦壁面18に対して車両前方側に隣接している。この例では、後側フランジ44bの溶接ポイントP11,P12は、フロアトンネル11の開口縁部の後端の角部に配置されている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、右外側傾斜部41は、中間部44の車幅方向右側部から、車幅方向外側に向かうに従い、車両前方側に傾斜して延びている。この例では、中間部44の前部と右外側傾斜部41の前部とにより構成される角度は鈍角で、約150度である。また、右外側傾斜部41と、右側のフロアサイドメンバ31の内側傾斜部31bとは、略直交している。
【0038】
右外側傾斜部41の前側フランジ41a及び後側フランジ41bは、フロアトンネル11の車幅方向の右側に位置するメインフロアパネル10の下面にスポット溶接等により接合されている。右外側傾斜部41の前側フランジ41aは、中間部44の前側フランジ44aに対して間隔を空けて配置されている。また、右外側傾斜部41の後側フランジ41bは、中間部44の後側フランジ44bに対して間隔を空けて配置されている。
【0039】
右外側傾斜部41の下面の車幅方向の外側部には、当該下面の端から車幅方向外側に連続して延出する外側フランジ41cが設けられている。外側フランジ41cは、右側のフロアサイドメンバ31の内側傾斜部31bの下面に、溶接ポイントP15の位置で、スポット溶接等により接合されている。なお、
図2及び
図3では、溶接ポイントP15のみを示しているが、この例では、溶接ポイントP15に間隔を空けて複数個所に溶接ポイントが配置されている。
【0040】
また、右外側傾斜部41の後壁の車幅方向外側には、後壁から車両後方に張り出す後外側フランジ41eが設けられ、右外側傾斜部41の前壁の車幅方向外側には、前壁から車両前方に張り出す前外側フランジ41dが設けられている。後外側フランジ41eは、右外側傾斜部41の後側フランジ41bの端と、外側フランジ41cの後部とを繋ぎ、右側のフロアサイドメンバ31の内壁に接合されている。また、前外側フランジ41dは、右外側傾斜部41の前側フランジ41aの端と、外側フランジ41cの前部とを繋ぎ、右側のフロアサイドメンバ31の内壁に接合されている。
【0041】
左外側傾斜部42は、
図2及び
図3に示すように、右外側傾斜部41と同様に、中間部44の車幅方向左側部から、車幅方向外側に向かうに従い、車両前方側に傾斜して延びている。左外側傾斜部42は、左側のフロアサイドメンバ32の内側傾斜部32bに略直交している。左外側傾斜部42の前側フランジ42a及び後側フランジ42bは、フロアトンネル11の車幅方向の左側に位置するメインフロアパネル10の下面に接合されている。左外側傾斜部42の前側フランジ42a及び後側フランジ42bは、中間部44の前側フランジ44a及び後側フランジ44bに対して間隔を空けて配置されている。
【0042】
また、左外側傾斜部42にも、右外側傾斜部41と同様に、外側フランジ42c、後外側フランジ42e及び前外側フランジ42dが設けられ、外側フランジ42cは、左側のフロアサイドメンバ32の下面に接合され、後外側フランジ42e及び前外側フランジ42dは、左側のフロアサイドメンバ32の内壁に接合されている。なお、
図2及び
図3では、外側フランジ42cと、左側の内側傾斜部32bの下面との溶接ポイントP16のみを示しているが、他の位置には他の複数の溶接ポイントを有している。
【0043】
リンフォースメント40がハット型の断面形状を備えることにより、リンフォースメント40とメインフロアパネル10とにより閉断面が形成され、リンフォースメント40の長手方向(車幅方向)の剛性を確保することができる。また、リンフォースメント40の右外側傾斜部41及び左外側傾斜部42と、右側及び左側のフロアサイドメンバ31,32の内傾斜部31b,32bとをほぼ直交した状態で接合することにより、フロアサイドメンバ31,32の倒れを支持することが可能となる。
【0044】
さらに、フロアトンネル11の変形を低減させるために中間部44の車幅方向両側が、フロアトンネル11の開口縁部に接合されているので、メインフロアパネル10の変形をさらに低減でき、衝突荷重の分散やパネル振動の振幅低減の効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態の車体下部構造は、メインフロアパネル10の平面(下段面16及び上段面17)の変形を抑制するだけでなく、フロアトンネル11の変形も低減させているので、車体下部全体の変形を抑制することが可能となる。また、フロアトンネル11の変形を低減させることにより、荷重を反対側の平面に伝えることができ、その結果、荷重分散が促進され、メインフロアパネル10の局所的な変形(応力)を低減でき、総じて車体の変形を低減することができる。
【0046】
右側及び左側の外側傾斜部41,42の外側フランジ41c,42cが、右側及び左側のフロアサイドメンバ31,32の内側傾斜部31b,32bの下面に接合しているので、リンフォースメント40の車両上下方向位置を、フロアサイドメンバに揃えることができる。その結果、メインフロアパネル10とリンフォースメント40によって形成される閉断面の面積が大きくなり、リンフォースメント40の前側フランジ41a,42a,44a及び後側フランジ41b,42b,44bが、荷重伝達経路として有効に機能する。さらに、段差部15の角部は、メインフロアパネル10の下段面16及び上段面17よりも変形しにくい高剛性の部分であるため、当該角部にリンフォースメント40の中間部44の車幅方向外側部を接合することにより、フロアトンネル11の変形をさらに低減することができる。
【0047】
また、本実施形態のメインフロアパネル10の上面には、
図4及び
図5に示すように、車幅方向に延びる第1のフロアクロスメンバ51が設けられている。また、当該上面において、第1のフロアクロスメンバ51の車両後方側には、第2のフロアクロスメンバ52が設けられている。第1のフロアクロスメンバ51と第2のフロアクロスメンバ52は、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0048】
第1のフロアクロスメンバ51は、
図4及び
図5に示すように、天面51eと、前壁面51aと、後壁面51bと、前側フランジ51cと、後側フランジ51dを有している。前壁面51aは、メインフロアパネル10の上面に対して略垂直に起立し、車幅方向に延びている。後壁面51bは、前壁面51aに対して、車両後方側に間隔を空けて配置され、上面に対して略垂直に起立し、車幅方向に延びている。天面51eは、前壁面51aの上端と後壁面51bの上端とを繋いでいる。天面51eには、シートブラケット53等が取付けられている。
【0049】
前側フランジ51cは、前壁面51aの下端から車両前方に突出し、車幅方向に延びている。後側フランジ51dは、後壁面51bの下端から車両後方に突出し、車幅方向に延びている。すなわち、第1のフロアクロスメンバ51は、ハット型の横断面形状を有している。
【0050】
第1のフロアクロスメンバ51の前側フランジ(前部)51cは、段差部15の縦壁面18の車両前方側に位置する上面に接合され、第1のフロアクロスメンバ51の後側フランジ(後部)51dは、後壁面51bの車両後方側に位置する上面に接合されている。すなわち、第1のフロアクロスメンバ51は、段差部15を車両前後方向に跨ぐ状態で、メインフロアパネル10の上面に接合されている。
【0051】
また、
図3に示すように、第1のフロアクロスメンバ51の前側フランジ51cと、リンフォースメント40の後側フランジ41b,42b,44bと、メインフロアパネル10の下段面16は、3枚重ねで接合されている。なお、
図3では、第1のフロアクロスメンバ51の位置を破線で概略的に示している。
【0052】
上記のように段差部15に沿って、第1のフロアクロスメンバ51が設けられることにより、リンフォースメント40と第1のフロアクロスメンバ51が共にフロア剛性を確保している。また、3枚重ねで接合することにより、リンフォースメント40に作用する荷重を、段差部15や第1のフロアクロスメンバ51に分散することができる。その結果、リンフォースメント40の局所的な変形を低減することが可能となり、車体下部の変形を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、フロントクロスメンバ25は、
図2及び
図3に示すように、フロアトンネル11を横断するように配置されている。また、リンフォースメント40の外側傾斜部41,42の外側フランジ41c,42cとフロアサイドメンバ31,32の下面との溶接ポイントP15,P16(接合部)は、フロアサイドメンバ31,32の内側傾斜部31b,32bとフロントクロスメンバ25の外側部材27,28との溶接される溶接ポイントP17,P18(接合部)に、内側傾斜部31b,32bの傾斜方向に沿って隣接している。
【0054】
車両上方視で車両前方側に開くリンフォースメント40による補強効果を、フロントクロスメンバ25により増加させることができる。一般に、溶接ポイント(接合部)は、複数の部材(パネル)が重なり合うため、剛性が高くなる。
【0055】
上記のように溶接ポイントP15~P18が傾斜方向に隣接しているので、当該溶接ポイントP15~P18の周辺の剛性が高くなる。その結果、フロントクロスメンバ25及びリンフォースメント40による補強効果が向上する。また、この周辺は上記したように、フロアサイドメンバが倒れて下段面16等が歪むような変形をするが、リンフォースメント40とフロントクロスメンバ25は、当該変形を直接的に抑制するこことができ、さらにフロアトンネル11の変形を低減することができる。
【0056】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0057】
上記実施形態のリンフォースメント40は、中間部44、右外側傾斜部41及び左外側傾斜部42が一体的に形成されているが、これに限らない。これらを別の部材で構成し、溶接等により接合することによって1つのリンフォースメント40を構成してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、メインフロアパネル10の上段面17にバッテリを設置する電気自動車について説明しているが、これに限らない。本実施形態の車体下部構造は、メインフロアパネル10の前方側で、フロントサイドメンバ21,22の間に配置されるエンジンを有する車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 メインフロアパネル
11 フロアトンネル
15 段差部
16 下段面(開口縁部)
17 上段面
18 縦壁面
21 右側のフロントサイドメンバ
22 左側のフロントサイドメンバ
23 サスペンションフレーム
24a 右側のサイドシル
24b 左側のサイドシル
25 フロントクロスメンバ
26 中央部材
27 右外側部材
28 左外側部材
31 右側のフロアサイドメンバ
31a 直線部
31b 内側傾斜部
32 左側のフロアサイドメンバ
32a 直線部
32b 内側傾斜部
40 リンフォースメント
41 右外側傾斜部
41a 前側フランジ
41b 後側フランジ
41c 外側フランジ
41d 前外側フランジ
41e 後外側フランジ
42 左外側傾斜部
42a 前側フランジ
42b 後側フランジ
42c 外側フランジ
42d 前外側フランジ
42e 後外側フランジ
44 中間部
44a 前側フランジ
44b 後側フランジ
51 第1のフロアクロスメンバ
51a 前壁面
51b 後壁面
51c 前側フランジ
51d 後側フランジ
51e 天面
52 第2のフロアクロスメンバ
53 シートブラケット
P11~P18 溶接ポイント