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特許7447989活動支援装置、活動支援方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】活動支援装置、活動支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240305BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022508702
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011960
(87)【国際公開番号】W WO2021186611
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】篠田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】冨永 慎
(72)【発明者】
【氏名】生藤 大典
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-157022(JP,A)
【文献】特開2019-185386(JP,A)
【文献】特開2019-049867(JP,A)
【文献】特開2018-116584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害現場の作業員の活動を支援する活動支援装置であって、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得する振動データ取得手段と、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定する活動度推定手段と、
前記作業員周辺の温度を周辺状況として取得する周辺状況取得手段と、
前記周辺状況として取得された前記温度から、前記作業員が前記災害現場で活動可能な最大時間を算出する最大時間算出手段と、
前記周辺状況取得手段が、前記最大時間の算出に用いられた温度以上の温度を、前記最大時間より長く取得し続けているかの判定を行う時間判定手段と、
前記判定の結果に基づいて、活動リスクを算出する活動リスク算出手段と、
推定された前記活動度と、前記最大時間と、前記活動リスクとを通知する通知手段と、
を備える、活動支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の活動支援装置であって、
前記活動度推定手段は、前記振動データの特徴量から前記活動度を推定する、
活動支援装置。
【請求項3】
請求項に記載の活動支援装置であって、
前記活動度と、前記活動リスクとから、前記作業員が正常活動を行っているかを判定する活動判定手段、
を備え、
前記通知手段は、前記正常活動の判定結果を通知する、
活動支援装置。
【請求項4】
コンピュータが災害現場の作業員の活動を支援する活動支援方法であって、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得し、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定し、
前記作業員周辺の温度を周辺状況として取得し、
前記周辺状況として取得された前記温度から、前記作業員が前記災害現場で活動可能な最大時間を算出し、
前記最大時間の算出に用いられた温度以上の温度が、前記最大時間より長く取得し続けられているかの判定を行い、
前記判定の結果に基づいて、活動リスクを算出し、
推定された前記活動度と、前記最大時間と、前記活動リスクとを通知する、
活動支援方法。
【請求項5】
請求項に記載の活動支援方法であって、
前記活動度を推定する場合、前記振動データの特徴量から前記活動度を推定する、
活動支援方法。
【請求項6】
請求項に記載の活動支援方法であって、
前記活動度と、前記活動リスクとから、前記作業員が正常活動を行っているかを判定し、
前記活動度を通知する場合、前記正常活動の判定結果を通知する、
活動支援方法。
【請求項7】
コンピュータに、災害現場の作業員の活動を支援させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得させ、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定させ、
前記作業員周辺の温度を周辺状況として取得させ、
前記周辺状況として取得された前記温度から、前記作業員が前記災害現場で活動可能な最大時間を算出させ、
前記最大時間の算出に用いられた温度以上の温度が、前記最大時間より長く取得し続けられているかの判定を行わせ、
前記判定の結果に基づいて、活動リスクを算出させ、
推定された前記活動度と、前記最大時間と、前記活動リスクとを通知させる、
命令を含むプログラム。
【請求項8】
請求項に記載のプログラムであって、
前記活動度を推定させる場合、前記振動データの特徴量から前記活動度を推定させる、
プログラム。
【請求項9】
請求項に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記活動度と、前記活動リスクとから、前記作業員が正常活動を行っているかを判定させる、
命令を含み、
前記活動度を通知させる場合、前記正常活動の判定結果を通知させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活動支援装置、活動支援方法、及び、それを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害現場、例えば消防作業現場では、作業員が安全かつ効率よく作業を行えるように、指揮官が各作業員に対して無線で指示を出すことが行われる。指揮官は、各作業員に指示を出すために、各作業員の状態を把握する必要がある。特許文献1には、消防士が正常な活動を行っているか異常事態に遭遇しているかを判断するシステムが開示されている。特許文献1に記載のシステムは、作業者が装着した2つの加速度センサからの加速度データに基づいて、作業者が走行する状態なのか、立ち止まった状態なのかを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-193564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、加速度センサを利用した場合、作業者の状況を正確に把握できないおそれがある。例えば、作業者が放水を行っている場合、作業者は作業をしているにもかかわらず、加速度センサが加速度を検出しないことから、指揮官は、その作業者は立ち状態(作業を行っていない状態)と判断するおそれがある。このため、指揮官は、作業者に対して、的確な指示を出せないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的の一例は、災害現場での作業者の現場状況を把握できる、活動支援装置、活動支援方法、及び、それを実現するためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における活動支援装置は、
災害現場の作業員の活動を支援する活動支援装置であって、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得する振動データ取得部と、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定する活動度推定部と、
推定された前記活動度を通知する通知部と、
を備える。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における活動支援方法は、
災害現場の作業員の活動を支援する活動支援方法であって、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得するステップと、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定するステップと、
推定された前記活動度を通知するステップと、
を備える。
【0008】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、災害現場の作業員の活動を支援させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得するステップと、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定するステップと、
推定された前記活動度を通知するステップと、
を実行させる命令を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、災害現場での作業者の現場状況を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、活動支援装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、活動支援装置の具体的構成を説明するためのブロック図である。
図3図3は、安全に活動できる最大時間を算出する際の設定の一例を示す図である。
図4図4は、現場温度及び現場湿度から最大時間を算出する際に参照されるテーブルを示す図である。
図5図5は、活動リスクの算出時に参照されるテーブルである。
図6図6は、活動支援装置の動作を示すフロー図である。
図7図7は、実施形態における活動支援装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態における活動支援装置、活動支援方法及びプログラムについて図1図7を参照しながら説明する。
【0012】
[装置構成]
図1は、活動支援装置10の構成を示すブロック図である。活動支援装置10は、作業現場での作業員の活動を支援する装置である。活動支援装置10は、振動データ取得部1と、活動度推定部2と、通知部3とを備えている。
【0013】
振動データ取得部1は、作業員に生じる振動の振動データを取得する。
【0014】
活動度推定部2は、振動データ取得部1により取得された振動データに基づいて、作業員の活動を推定する。活動度とは、静止、歩行などの状態であり、後に詳述する。
【0015】
通知部3は、活動度推定部2により推定された活動度を通知する。
【0016】
この活動支援装置10は、作業員が、大きな動きが必要としない作業をしている場合であっても、振動データから、静止、歩行など、作業員の活動度を判定できる。そして、例えば指揮官に活動度を通知することで、指揮官は、災害現場での作業者の状況(動いているのか、静止しているのかなど)を把握できる。また、複数の作業員が災害現場にいる場合、他の作業員に通知することで、各作業員は、自身以外の作業員の状況を把握できる。
【0017】
続いて、図2図6を用いて、活動支援装置10の構成について具体的に説明する。
【0018】
図2は、活動支援装置10の具体的構成を説明するためのブロック図である。以下の説明では、災害現場は火災現場とする。作業員は、火災現場で消火・救助活動をしており、各作業員を指揮する指揮官は、指揮所から各作業員に指示を出しているものとする。また、作業員は、携帯機器50を携帯し、指揮所には、表示装置53が設置されているものとする。
【0019】
活動支援装置10は、携帯機器50及び表示装置53と、データ通信が可能である。
【0020】
携帯機器50は、例えば、腕時計型のウェアラブル端末である。携帯機器50は、振動センサ51を備えている。振動センサ51は、作業員が、歩行などの動作により体に生じる振動を検出する。
【0021】
また、携帯機器50は温度センサ52を備えている。温度センサ52は、携帯機器50の周囲の温度を計測する。なお、温度センサ52は、湿度も検出するセンサであってもよい。また、温度センサ52は、作業員の体温を検出する体温計であってもよい。
【0022】
表示装置53は、活動支援装置10から受信したデータを画面に表示する。表示装置53は、汎用のPC(パーソナルコンピュータ)であってもよいし、スマートフォン、タブレット型端末装置などであってもよい。活動支援装置10と、表示装置53とは一体に設けられていてもよい。また、活動支援装置10は、表示装置53と同じ場所に設けられていてもよいし、離れた位置に設けられていてもよい。
【0023】
活動支援装置10は、上記の振動データ取得部1、活動度推定部2及び通知部3に加え、周辺状況取得部4、最大時間算出部5、時間判定部6、活動リスク算出部7及び活動判定部8を備えている。
【0024】
振動データ取得部1は、振動センサ51が検出した作業員の振動の振動データを、携帯機器50から受信する。
【0025】
活動度推定部2は、受信した振動データの特徴量に基づいて、作業員の活動度を推定する。活動度は、作業員の動作を、静止、正常動作、異常動作の3段階に分類した情報である。静止には、作業員が意図して止まっている状態、及び、例えば意識不明などで、作業員の意に介さず止まっている状態を含む。正常動作とは、放水、歩行など、一般的な動作である。異常動作とは、例えば落下、転倒など、作業員の意に反した動作である。
【0026】
振動データの特徴量とは、振動振幅の大きさ、又は、振動振幅の時間変動などである。例えば、消火・救助活動で生じる作業員のサンプル振動から、第1閾値を設定する。活動度推定部2は、振動データ取得部1が受信した振動データの振動振幅が、第1閾値以下であると、作業員の動作を「静止」とする活動度を推定し、第1閾値を超えると、作業員の動作を「正常動作」又は「異常動作」とする活動度を推定する。
【0027】
また、消火・救助活動における動作では生じえない振動、例えば落下したときの衝撃による振動、から第2閾値を設定する。作業員の動作を「正常動作」又は「異常動作」とする活動度を推定した場合、活動度推定部2は、受信した振動データの振動振幅が、第2閾値以下であると、作業員の動作を「正常動作」とする活動度を推定し、第2閾値を超えると、作業員の動作を「異常動作」とする活動度を推定する。
【0028】
なお、上記は、活動度推定部2による活動度の推定方法の一例である。上記以外に、活動度推定部2は、サンプル振動と、受信した振動データとを対比して、振動波形の類似性から活動度を推定してもよい。また、活動度は、受信した振動データの振動振幅値に応じて、複数段階に分類されたレベルであってもよい。例えば、振動振幅値が小さい順に、レベル1、レベル2、レベル3と分類する。そして、活動度がレベル1の場合、作業員は静止し、活動度がレベル3の場合、作業員は走っている、としてもよい。
【0029】
周辺状況取得部4は、作業員がいる火災現場の周辺状況を取得する。周辺状況取得部4は、周辺状況として、温度センサ52が計測した温度(以下、現場温度と言う)の温度データを携帯機器50から受信する。なお、温度センサ52は作業員の体温を検出する体温計である場合、周辺状況取得部4は、作業員の体温を周辺状況として受信してもよい。そして、現場温度を、作業員の体温から推定し、周辺状況取得部4は、それを周辺状況として取得してもよい。
【0030】
最大時間算出部5は、周辺状況取得部4が取得した周辺状況から、作業員が災害現場で活動可能な最大時間を算出する。最大時間は、作業員が安全に活動できる時間の最大値である。本実施形態では、現場温度から最大時間が算出される。最大時間算出部5は、現場温度が高いと、火災現場での輻射熱が高い、火の勢いが強いなどにより、最大時間を短く算出する。一方、最大時間算出部5は、現場温度が低いと、火の勢いは弱いとして、最大時間を長く算出する。最大時間算出部5は、例えば、図3に示す設定に従い、最大時間を算出する。
【0031】
図3は、安全に活動できる最大時間を算出する際の設定の一例を示す図である。
【0032】
図3に示す設定では、現場温度を、Lv1、Lv2、Lv3の3つの温度レベルに分けている。各温度レベルには、安全に活動できる最大時間が設定されている。例えば、現場温度がLv1に分類される場合、最大時間算出部5は、最大時間を「なし」とする。また、現場温度がLv2に分類される場合、最大時間算出部5は、最大時間を「X分」とする。
【0033】
なお、温度センサ52が湿度も検出するセンサである場合、周辺状況取得部4が携帯機器50から湿度(以下、現場湿度と言う)も受信し、最大時間算出部5は、現場温度及び現場湿度から最大時間を算出してもよい。この場合、最大時間算出部5は、例えば、図4に示すテーブルを参照して、最大時間を算出する。
【0034】
図4は、現場温度及び現場湿度から最大時間を算出する際に参照されるテーブルを示す図である。
【0035】
例えば、現場温度が「50℃」のときで、現場湿度が「70%」のときには、最大時間算出部5は、最大時間を「制限なし」とする。また、現場温度が「65℃」のときで、現場湿度が「80%」のときには、最大時間算出部5は、最大時間を「3分13秒」とする。なお、図4の温度及び湿度は一例である。
【0036】
また、最大時間算出部5は、作業員の活動度、又は、作業員の生体情報などを含めて、最大時間を算出してもよい。例えば、作業員の動作を「静止」とする活動度が長時間続いた場合、作業員が倒れている可能性があるため、最大時間算出部5は、図3又は図4から算出した最大時間をより短くする。又は、作業員の動作を「異常動作」とする活動度である場合、作業員は災害現場での事故に巻き込まれたおそれがあるとして、最大時間算出部5は、図3又は図4から算出した最大時間をより短くする。また、携帯機器50から作業者の体温又は発汗量を受信して、体温が高い、又は、発汗量が多い場合には、作業員の身体に危険があるとして、最大時間算出部5は、図3又は図4から算出した最大時間をより短くする。
【0037】
さらに、最大時間算出部5は、作業員が所持する空気呼吸器(ボンベ)の空気残量を考慮して、最大時間を算出してもよい。この場合、最大時間算出部5は、空気残量を、空気呼吸器から直接、又は、携帯機器50を介して、取得する。そして、最大時間算出部5は、取得した空気残量が40%以下である場合には、現場温度が低くても、空気残量に余裕がないとして、図3又は図4から算出した最大時間をより短くする。
【0038】
あるいは、最大時間算出部5は、火災現場に化学物質があるなどの周辺状況を周辺状況取得部4が取得して、その取得した周辺状況を考慮して、最大時間を算出してもよい。災害現場に化学物質がある場合、現場温度が化学物質の発火点又は反応温度、容器の融解温度などに近づくと、リスクが大きくなる。そこで、最大時間算出部5は、現場温度が低くても、温度上昇が起こったときの状況を考慮して、図3又は図4から算出した最大時間をより短くする。
【0039】
図2に戻る。時間判定部6は、最大時間算出部5による最大時間の算出に用いられた温度以上の温度を、周辺状況取得部4が、その最大時間より長く取得し続けているかの判定を行う。最大時間の算出に用いられた温度以上の温度を、周辺状況取得部4が取得し続ける時間とは、作業員が同じ火災現場で活動し続けている時間(以下、活動時間と言う)である。したがって、時間判定部6は、活動時間が最大時間を超えているか否かを判定する。
【0040】
活動リスク算出部7は、時間判定部6による判定の結果から、活動リスクを算出する。活動リスクは、作業員が同じ火災現場で長時間活動を行うことにより生じるリスクである。例えば、作業員が、同じ火災現場で最大時間を超えて活動している場合には、火傷、熱射病などの生じるリスクがある。活動リスク算出部7は、例えば図5に示すテーブルを参照して、活動リスクを算出する。
【0041】
図5は、活動リスクの算出時に参照されるテーブルである。活動リスク算出部7は、活動時間が、最大時間を超えている時間(以下、超過時間と言う)を算出する。図5に示すテーブルは、超過時間に応じて、活動リスクが設定されている。活動リスク算出部7は、このテーブルを参照して、超過時間が「10分」であれば「リスクA」を活動リスクとし、超過時間が「15分」であれば「リスクB」を活動リスクとする。また、活動リスク算出部7は、超過時間が「0分以下」、つまり、活動時間が最大時間以下である場合、「リスクなし」とする。
【0042】
なお、活動リスク算出部7は、活動時間が、最大時間を超過しているか否かの2値判定を行い、活動リスクを算出してもよい。つまり、活動時間が最大時間以下であれば、活動リスク算出部7は、「リスクなし」とし、活動時間が超過時間を超えていれば、予め設定した内容を活動リスクとする。
【0043】
また、活動リスク算出部7は、作業員が所持する空気呼吸器の空気残量を考慮して、活動リスクを算出してもよい。この場合、活動リスク算出部7は、空気残量が50%以下である場合には、活動時間が最大時間以下であっても、空気残量に余裕がないとして、活動リスクを算出する。
【0044】
さらに、活動リスク算出部7は、火災現場の状況、例えば、現場に化学物質があるなどの状況に応じて、活動リスクを算出してもよい。この場合、活動リスク算出部7は、活動時間が最大時間以下であっても、現場温度が化学物質の発火点又は反応温度、容器の融解温度などに近づくと、リスクが大きくなるとして、活動リスクを算出する。
【0045】
図2に戻る。活動判定部8は、活動度推定部2が推定した活動度と、活動リスク算出部7が算出した活動リスクとから、作業員が正常活動を行っているかを判定する。例えば、活動度推定部2が、作業員の動作を「静止」、又は、「異常動作」とする活動度を推定し、活動リスク算出部7が、「熱射病のリスク」とする活動リスクを算出した場合、活動判定部8は、作業員は倒れていて正常活動を行っていない、と判定する。また、活動度推定部2が、作業員の動作を「正常動作」とする活動度を推定した場合、活動リスクに関係なく、活動判定部8は、正常活動を行っている、と判定する。
【0046】
通知部3は、活動度推定部2により推定された活動度を通知する。この場合、通知部3は、推定された活動度を表示装置53へ送信する。表示装置53は、作業員の活動度を、文字又は音声などで指揮官に通知する。これにより、指揮官は、火災現場において、作業員が静止しているのか、動いているのかなどを把握することができる。
【0047】
通知部3は、活動度とともに、最大時間算出部5が算出した最大時間を通知してもよい。この場合、通知部3は、算出された最大時間を表示装置53へ送信する。表示装置53は、作業員が安全に活動できる最大時間を、文字又は音声などで指揮官に通知する。これにより、指揮官は、撤退指示など、作業員の安全を考慮した適切な指示を出すことができる。
【0048】
また、通知部3は、活動判定部8による正常活動の判定結果を通知する。通知部3は、活動判定部8による判定結果を表示装置53へ送信する。表示装置53は、作業員は災害現場で正常活動を行っている、又は、作業員は正常活動を行っていないなどの情報を、文字又は音声などで指揮官に通知する。これにより、指揮官は、活動度だけでは、意図して停止しているのか行動不能に陥っているのか不明であった作業員の状況を把握できる。
【0049】
なお、本実施形態では、周辺状況取得部4が取得する周辺状況は、温度としたが、携帯機器50が撮像装置を備えている場合、周辺状況取得部4は、その撮像装置で撮像された画像データを、周辺状況として受信してもよい。この場合、最大時間算出部5は、受信された画像データを画像処理により火災現場の状況を把握して、最大時間を算出する。さらに、作業員の活動度を推定する際に、活動支援装置10から加速度データを受信して、振動データと加速度データとを用いて推定してもよい。
【0050】
[装置動作]
次に、本実施形態における活動支援装置10の動作について図6を用いて説明する。図6は、活動支援装置10の動作を示すフロー図である。また、本実施形態では、活動支援装置10を動作させることによって、活動支援方法が実施される。よって、本実施形態における活動支援方法の説明は、以下の活動支援装置10の動作説明に代える。
【0051】
振動データ取得部1は、振動センサ51が検出した振動の振動データを、携帯機器50から受信する(S1)。活動度推定部2は、振動データに基づいて、作業員の活動度を推定する(S2)。活動度推定部2は、作業員の動作を、「静止」、「正常動作」、「異常動作」などとする活動度を推定する。
【0052】
周辺状況取得部4は、作業員がいる火災現場の周辺状況を取得する(S3)。本実施形態では、周辺状況取得部4は、周辺状況として、温度センサ51が検出した温度の温度データを、携帯機器50から受信する。
【0053】
最大時間算出部5は、作業員が火災現場で活動可能な最大時間を算出する(S4)。最大時間算出部5は、周辺状況取得部4が取得した現場温度から、例えば図3のテーブルを参照して、作業員が災害現場で活動可能な最大時間を算出する。
【0054】
次に、作業継続判定部6は、活動時間が最大時間を超えているか否かを判定する(S5)。活動リスク算出部7は、S5での判定結果から、活動リスクを算出する(S6)。活動リスク算出部7は、例えば図5に示すテーブルを参照して、活動リスクを算出する。
【0055】
活動判定部8は、S2で推定された活動度と、S6で算出された活動リスクとから、作業員が正常活動を行っているかを判定する(S7)。そして、通知部3は、S2で推定された活動度、S4で算出された最大時間、及び、S8での判定結果を通知する(S8)。通知部3は、S2で推定された活動度、S4で算出された最大時間、及び、S8での判定結果を、例えば、表示装置53へ送信する。表示装置53は、S2で推定された活動度、S4で算出された最大時間、及び、S7での判定結果を、文字又は音声などにより通知する。
【0056】
なお、上記説明では、災害現場は火災現場としたが、他の災害現場、例えば、地震で建物が倒壊した現場、ガス漏れが発生した現場などであってもよい。
【0057】
[プログラム]
本実施形態におけるプログラムは、コンピュータに、図6に示す各ステップを実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施形態における活動支援装置10と活動支援方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、振動データ取得部1、活動度推定部2、通知部3、周辺状況取得部4、最大時間算出部5、時間判定部6、活動リスク算出部7及び活動判定部8として機能し、処理を行なう。
【0058】
また、本実施形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、振動データ取得部1、活動度推定部2、通知部3、周辺状況取得部4、最大時間算出部5、時間判定部6、活動リスク算出部7及び活動判定部8のいずれかとして機能してもよい。
【0059】
また、コンピュータとしては、汎用のPCの他に、スマートフォン、タブレット型端末装置が挙げられる。
【0060】
[実施形態における効果]
活動支援装置10が、振動データから、静止、歩行など、作業員の活動度を判定することで指揮官は、災害現場での作業者の状況(動いているのか、静止しているのかなど)を把握できる。また、活動支援装置10が、安全に活動できる最大時間を算出することで、指揮官は、その最大時間に応じて撤退の指示を出すなど、作業員の安全を考慮した指揮を行える。また、作業員は、自身の安全を考慮した活動を行える。
【0061】
さらに、活動支援装置10が活動リスクを算出することで、指揮官は、作業員の安全を考慮した指揮を行える。また、活動支援装置10が、作業員が正常活動を行っているかを判定することで、指揮官は、作業員が意図して停止しているのか、行動不能に陥っているのかを把握することができる。
【0062】
(物理構成)
ここで、本実施形態におけるプログラムを実行することによって、活動支援装置を実現するコンピュータについて図7を用いて説明する。図7は、本実施形態における活動支援装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0063】
図7に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、またはCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていてもよい。
【0064】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。
【0065】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボードおよびマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0066】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、およびコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0067】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))およびSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、またはCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0068】
なお、実施形態における活動支援装置は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、活動支援装置は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0069】
上述した実施形態の一部または全部は、以下に記載する(付記1)~(付記18)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0070】
(付記1)
災害現場の作業員の活動を支援する活動支援装置であって、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得する振動データ取得部と、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定する活動度推定部と、
推定された前記活動度を通知する通知部と、
を備える、活動支援装置。
【0071】
(付記2)
付記1に記載の活動支援装置であって、
前記活動度推定部は、前記振動データの特徴量から前記活動度を推定する、
活動支援装置。
【0072】
(付記3)
付記1又は付記2に記載の活動支援装置であって、
前記作業員の周辺状況を取得する周辺状況取得部と、
前記周辺状況から、前記作業員が前記災害現場で活動可能な最大時間を算出する最大時間算出部と、
を備え、
前記通知部は、前記最大時間と、前記活動度とを通知する、
活動支援装置。
【0073】
(付記4)
付記3に記載の活動支援装置であって、
前記周辺状況取得部は、前記作業員周辺の温度を前記周辺状況として取得し、
前記最大時間算出部は、取得された前記温度から前記最大時間を算出する、
活動支援装置。
(付記5)
付記4に記載の活動支援装置であって、
前記周辺状況取得部が、前記最大時間の算出に用いられた温度以上の温度を、前記最大時間より長く取得し続けているかの判定を行う時間判定部と、
前記判定の結果に基づいて、活動リスクを算出する活動リスク算出部と、
を備え、
前記通知部は、前記活動リスクを通知する、
活動支援装置。
【0074】
(付記6)
付記4又は付記5に記載の活動支援装置であって、
前記活動度と、前記活動リスクとから、前記作業員が正常活動を行っているかを判定する活動判定部、
を備え、
前記通知部は、前記正常活動の判定結果を通知する、
活動支援装置。
【0075】
(付記7)
災害現場の作業員の活動を支援する活動支援方法であって、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得するステップと、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定するステップと、
推定された前記活動度を通知するステップと、
を備える、活動支援方法。
【0076】
(付記8)
付記7に記載の活動支援方法であって、
前記活動度を推定するステップでは、前記振動データの特徴量から前記活動度を推定する、
活動支援方法。
【0077】
(付記9)
付記7又は付記8に記載の活動支援方法であって、
前記作業員の周辺状況を取得するステップと、
前記周辺状況から、前記作業員が前記災害現場で活動可能な最大時間を算出するステップと、
を備え、
前記活動度を通知するステップでは、前記最大時間と、前記活動度とを通知する、
活動支援方法。
【0078】
(付記10)
付記9に記載の活動支援方法であって、
前記周辺状況を取得するステップでは、前記作業員周辺の温度を前記周辺状況として取得し、
前記最大時間を算出するステップでは、取得された前記温度から前記最大時間を算出する、
活動支援方法。
【0079】
(付記11)
付記10に記載の活動支援方法であって、
前記最大時間の算出に用いられた温度以上の温度が、前記最大時間より長く取得し続けられているかの判定を行うステップと、
前記判定の結果に基づいて、活動リスクを算出するステップと、
を備え、
前記活動度を通知するステップでは、前記活動リスクを通知する、
活動支援方法。
【0080】
(付記12)
付記10又は付記11に記載の活動支援方法であって、
前記活動度と、前記活動リスクとから、前記作業員が正常活動を行っているかを判定するステップ、
を備え、
前記活動度を通知するステップでは、前記正常活動の判定結果を通知する、
活動支援方法。
【0081】
(付記13)
コンピュータに、災害現場の作業員の活動を支援させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記作業員に生じる振動の振動データを取得するステップと、
取得された前記振動データに基づいて、前記作業員の活動度を推定するステップと、
推定された前記活動度を通知するステップと、
を実行させる命令を含むプログラム。
【0082】
(付記14)
付記13に記載のプログラムであって、
前記活動度を推定するステップでは、前記振動データの特徴量から前記活動度を推定する、
プログラム
【0083】
(付記15)
付記13又は付記14に記載のプログラムであって、
記コンピュータに、
前記作業員の周辺状況を取得するステップと、
前記周辺状況から、前記作業員が前記災害現場で活動可能な最大時間を算出するステップと、
を実行させる命令を含み、
前記活動度を通知するステップでは、前記最大時間と、前記活動度とを通知する、
プログラム
【0084】
(付記16)
付記15に記載のプログラムであって、
前記周辺状況を取得するステップでは、前記作業員周辺の温度を前記周辺状況として取得し、
前記最大時間を算出するステップでは、取得された前記温度から前記最大時間を算出する、
プログラム
【0085】
(付記17)
付記16に記載のプログラムであって、
記コンピュータに、
前記最大時間の算出に用いられた温度以上の温度が、前記最大時間より長く取得し続けられているかの判定を行うステップと、
前記判定の結果に基づいて、活動リスクを算出するステップと、
を実行させる命令を含み、
前記活動度を通知するステップでは、前記活動リスクを通知する、
プログラム
【0086】
(付記18)
付記16又は付記17に記載のプログラムであって、
記コンピュータに、
前記活動度と、前記活動リスクとから、前記作業員が正常活動を行っているかを判定するステップ、
を実行させる命令を含み、
前記活動度を通知するステップでは、前記正常活動の判定結果を通知する、
プログラム
【0087】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 振動データ取得部
2 活動度推定部
3 通知部
4 周辺状況取得部
5 最大時間算出部
6 時間判定部
7 活動リスク算出部
8 活動判定部
10 活動支援装置
50 携帯機器
51 振動センサ
52 温度センサ
53 表示装置
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7