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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022531788
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022455
(87)【国際公開番号】W WO2021256414
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020104549
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴大
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/069609(WO,A1)
【文献】特開2005-72771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、該底部に直交する前記底部の中心軸の軸方向に沿って前記底部から延びる周壁部とを有する、有底筒状のケースと、
前記ケースの内部において前記底部上に配置された圧電素子と、
前記ケースの外部において前記周壁部上に設けられ、前記軸方向から見て互いに重ならないように配置された2つの錘部とを備え、
第1の振動モードの周波数での振動時において、前記底部が前記軸方向の一方側に凸状に湾曲したときに、前記2つの錘部の各々は前記軸方向の他方側に向かって傾斜し、第2の振動モードの周波数での振動時において、前記底部が前記軸方向の前記一方側に凸状に湾曲したときに、前記2つの錘部の各々は前記軸方向の前記一方側に向かって傾斜する、超音波センサ。
【請求項2】
前記2つの錘部は、前記軸方向から見て、前記中心軸を通る同一の仮想直線上に位置している、請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記2つの錘部は、前記中心軸に関して互いに回転対称となる形状を有している、請求項1または請求項2に記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサの構成を開示した文献として、米国特許第9383443号明細書(特許文献1)がある。特許文献1に記載された超音波センサは、ハウジングと、トランスデューサ素子と、少なくとも1つの質量要素とを備える。ハウジングは、側壁部と、振動板として構成されているベース面とを有している。トランスデューサ素子は、超音波振動を発生および検出するために、ベース面に配置されている。少なくとも1つの質量要素は、ベース面に配置されている。少なくとも1つの質量要素は、振動板上の少なくとも1つの質量要素によって及ぼされる力およびトルクの少なくとも1つが、振動周波数の上昇に伴って増加するように配置されている。少なくとも1つの質量要素は、ベース面の中央に配置されている。少なくとも1つの質量要素は、振動板の3次振動モードが振動板の1次振動モードに近づくように、振動板の3次振動モードを変化させるインピーダンスを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9383443号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された超音波センサにおいては、少なくとも1つの質量要素によって、2つの振動モードに対応するように、周波数の異なる2つの超音波信号を送受信できる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された超音波センサにおいては、少なくとも1つの質量要素がハウジングのベース面に配置されているため、トランスデューサ素子をハウジングのベース面に取り付けることが難しくなる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、周波数の異なる2つの超音波信号を送受信可能であって、圧電素子を底部に取り付け容易な超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく超音波センサは、ケースと、圧電素子と、2つの錘部とを備えている。ケースは有底筒状であって、底部と、該底部に直交する底部の中心軸の軸方向に沿って底部から延びる周壁部とを有している。圧電素子は、ケースの内部において底部上に配置されている。2つの錘部は、ケースの外部において周壁部上に設けられ、上記軸方向から見て互いに重ならないように配置されている。当該超音波センサは、第1の振動モードの周波数での振動時において、底部が軸方向の一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部の各々は軸方向の他方側に向かって傾斜し、第2の振動モードの周波数での振動時において、底部が軸方向の一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部の各々は軸方向の一方側に向かって傾斜する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周波数の異なる2つの超音波信号を送受信可能であって、圧電素子を取り付け容易な超音波センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る超音波センサを底部側とは反対側から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る超音波センサを底部側とは反対側から見た平面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る超音波センサを底部側から見た底面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る超音波センサを示す側面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る超音波センサの回路構成を示すブロック図である。
図6】実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。
図7】実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。
図8】実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。
図9】実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。
図10】本発明の実施形態2に係る超音波センサを底部側とは反対側から見た斜視図である。
図11】本発明の実施形態2に係る超音波センサを底部側から見た底面図である。
図12】本発明の実施形態2に係る超音波センサを示す側面図である。
図13】実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。
図14】実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。
図15】実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。
図16】実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係る超音波センサについて図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る超音波センサを底部側とは反対側から見た斜視図である。図2は、本発明の実施形態1に係る超音波センサを底部側とは反対側から見た平面図である。図3は、本発明の実施形態1に係る超音波センサを底部側から見た底面図である。図4は、本発明の実施形態1に係る超音波センサを示す側面図である。
【0012】
図1から図4に示すように、本発明の実施形態1に係る超音波センサ100は、ケース110と、圧電素子120と、2つの錘部130とを備えている。
【0013】
ケース110は有底筒状であって、底部111と、周壁部115とを有している。周壁部115は、底部111に直交する底部111の中心軸Cの軸方向Zに沿って底部111から延びている。
【0014】
図3に示すように、底部111は、軸方向Zから見て円形状の外形を有している。底部111は、超音波センサ100を底部111側から見て、中央部112と、中央部112を取り囲む外周部113とを有している。
【0015】
軸方向Zから見て、中央部112の中心は、底部111の中心軸C上に位置している。軸方向Zから見て、中央部112の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、中央部112は、角丸方形状の外形を有している。軸方向Zから見て、中央部112は、具体的には角丸長方形状の外形を有しており、より具体的には、当該角丸長方形状の一対の短辺の各々が半円状である。中央部112は、軸方向Zから見て、長手方向Xと、短手方向Yとを有している。中央部112の長手方向Xは、中央部112の長辺に沿う方向である。中央部112の短手方向Yは、長手方向Xと直交し、中央部112の短辺に沿う方向である。
【0016】
軸方向Zから見て、外周部113の内周縁は、中央部112の外周縁に沿うように位置している。軸方向Zから見て、外周部113の外周縁は、底部111の外周縁を構成する。
【0017】
図1から図4に示すように、中央部112において、ケース110の外側に向く面、および、ケース110の内側に向く面は、いずれも軸方向Zに直交するように位置している。外周部113においてケース110の外側に向く面は、軸方向Zに直交するように位置している。底部111において、ケース110の外側に向く面は、中央部112で凹んでいる。
【0018】
図1から図4に示すように、周壁部115は、底部111の外周部113から軸方向Zに沿って延びている。周壁部115は、底部111側とは反対側に位置する開口端面116を有している。開口端面116は、上記軸方向Zに直交するように位置している。本実施形態において、開口端面116は、軸方向Zから見て外周部113と同一の外形を有しているが、開口端面116の形状は特に限定されない。開口端面116は、軸方向Zから見て外周部113より面積が小さくなるように構成されていてもよい。
【0019】
ケース110は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの導電性材料で構成されている。なお、ケース110は、絶縁性材料で構成されていてもよい。
【0020】
図1および図2に示すように、圧電素子120は、ケース110の内部において底部111上に配置されている。具体的には、圧電素子120は、中央部112上に配置されている。圧電素子120は、たとえばエポキシ樹脂などの接着剤により中央部112に接合されている。図2に示すように、軸方向Zから見て、圧電素子120の中心は、上記中心軸C上に位置していることが好ましい。
【0021】
圧電素子120の構成は、特に限定されない。圧電素子120は、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスにより構成された圧電体と、この圧電体を軸方向Zの両側から挟み込むように配置された1対の電極とを備えていてもよい。
【0022】
図1から図4に示すように、2つの錘部130は、ケース110の外部において周壁部115上に設けられ、少なくとも、軸方向Zから見て互いに重ならないように配置されている。具体的には、2つの錘部130は、軸方向Zから見て、中心軸Cを通る同一の仮想直線上に位置している。また、2つの錘部130は、軸方向Zにおいて同じ位置に位置している。
【0023】
2つの錘部130の形状は特に限定されない。本実施形態において、2つの錘部130は、中心軸Cに関して互いに回転対称となる形状を有している。2つの錘部130の各々は、軸方向Zから見て、中心軸Cを中心として外周部113から径方向に延出するように設けられている。また、2つの錘部130の各々は、第1端面131と、第2端面132と、側端面133とを有している。
【0024】
第1端面131は、軸方向Zにおいて底部111側を向いている。第1端面131は、軸方向Zに直交して位置している。第1端面131は、底部111とは離間して位置している。第2端面132は、第1端面131とは反対側を向いている。すなわち、第2端面132は、軸方向Zにおいて底部111側とは反対側を向いている。第2端面132は、軸方向Zに直交して位置している。軸方向Zにおける第2端面132の位置は特に限定されないが、本実施形態において、第2端面132は、軸方向Zにおいて開口端面116と同じ位置に位置している。すなわち、2つの錘部130の各々においては、第2端面132は開口端面116と連続して設けられている。側端面133は、軸方向Zから見て、中心軸Cを中心とした径方向に直交するように位置している。
【0025】
2つの錘部130を構成する材料は特に限定されない。本実施形態において、2つの錘部130は、ケース110を構成する材料と同じ材料で構成されており、ケース110と一体となっている。
【0026】
図5は、本発明の実施形態1に係る超音波センサの回路構成を示すブロック図である。図5に示すように、本発明の実施形態1に係る超音波センサ100は、制御部140をさらに備えている。制御部140は、圧電素子120と電気的に接続されている。制御部140は、様々な周波数のパルス電圧を圧電素子120に印加可能に構成されている。換言すれば、制御部140は、様々な周波数のパルス信号を圧電素子120に送信可能に構成されている。制御部140は、底部111の振動により圧電素子120に生じた電圧を信号として受信可能に構成されている。
【0027】
制御部140は、たとえばケース110の外側に配置される。制御部140は、たとえば、樹脂シートと配線とを有するFPC(Flexible Printed Circuits、フレキシブルプリント回路基板)と、当該FPCに接続された2つの配線部とで構成された導電部材により、圧電素子120と電気的に接続される。上記導電部材は、たとえば、ケース110の外部から、開口端面116によって形成された開口に挿入されて、ケース110の内部に配置される。なお、制御部140は、リード線により、圧電素子120と電気的に接続されていてもよい。
【0028】
本発明の実施形態1に係る超音波センサ100は、充填部材と吸音材をさらに備えていてもよい。充填部材は、たとえばシリコーン発泡体で構成されて、ケース110内部に充填される。充填部材は、ケース110の底部111が共振周波数で共振したときに、これとは異なる周波数による不要な振動を減衰可能に配置される。吸音材は、圧電素子120の底部111側とは反対側に設けられる。吸音材は、底部111からケース110の外部に超音波を発信する際に、ケース110の内部に発信する超音波を吸収する。
【0029】
本発明の実施形態1に係る超音波センサ100を用いた、超音波の送信および受信の方法について説明する。まず、超音波センサ100を用いて超音波を送信する際には、図5に示すように、制御部140から圧電素子120にパルス電圧を印加する。これにより、圧電素子120が振動する。そして、図1から図4に示すように、圧電素子120が振動することで、圧電素子120に接続された底部111の主に中央部112が振動する。これにより、底部111から、ケース110の外部に、超音波を発信することができる。
【0030】
超音波センサ100を用いて超音波を受信する際には、ケース110の外部から底部111の主に中央部112に当たった超音波によって、底部111の主に中央部112が振動する。底部111の主に中央部112が振動することにより、圧電素子120に電圧が生じる。図5に示すように、制御部140が圧電素子120に生じた電圧を信号として受信する。このようにして、超音波センサ100を用いて超音波を受信できる。
【0031】
本実施形態に係る超音波センサ100は、たとえば、送信した超音波が外部に位置する物体によって反射して、その反射した超音波を受信することで、当該物体との距離測定装置として使用することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る超音波センサ100のケース110および錘部130は、少なくとも2つの振動モードで振動することができる。そして、本実施形態に係る超音波センサ100は、2つの錘部130を備えることにより、当該2つの振動モードにおいては、それぞれ、互いに異なる共振周波数で、底部111を振動させることができる。当該2つの振動モードにおける超音波センサ100のケース110および錘部130の変形の様子について検証した実験例1について、以下に説明する。
【0033】
実験例1においては、実施例1に係る超音波センサについて、上記2つの振動モードの各々の振動時におけるケースの変形の様子をシミュレーション解析した。シミュレーション解析は、有限要素法を用いた共振解析(モーダル解析)により行なった。実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部は、実施形態1に係る超音波センサ100と同様の構成とした。また、実験例1においては、軸方向Zから見たときの底部111の直径を15.5mm、軸方向Zにおける、底部111においてケース110の外側を向く面から錘部130の第1端面131までの寸法を4.77mm、軸方向Zにおける錘部130の長さを4.2mm、錘部130の中心軸Cを中心とした径方向長さを3.55mm、軸方向Zから見て中心軸Cを中心とした径方向に直交する方向における錘部130の長さを5.2mmとした。
【0034】
図6は、実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。図7は、実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。図8は、実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。図9は、実施例1に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。図6から図9においては、ケースの各部位について初期状態からの変形量が大きくなるに従って白色に近くなるように色分けされたコンター図として、超音波センサのケースおよび錘部を示している。また、図6から図9においては、実施例1に係る超音波センサについて、実施形態1に係る超音波センサ100と同様の符号を付している。
【0035】
図6および図7に示すように、実施例1に係る超音波センサは、ケース110が第1の振動モード(基本振動モード)で振動するように圧電素子120にパルス電圧を印加すると、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部130の各々は軸方向Zの他方側に向かって傾斜するように、ケース110が振動した。このときのパルス電圧の周波数は45.082kHzであった。一方、図8および図9に示すように、実施例1に係る超音波センサにおいて、ケース110が第2の振動モードで振動するように、第1の振動モードで印加したパルス電圧と周波数のみ異なるパルス電圧を圧電素子120に印加すると、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部130の各々は軸方向Zの一方側に向かって傾斜するように、ケース110が振動した。このときのパルス電圧の周波数は53.717kHzであった。
【0036】
すなわち、図6から図9に示すように、実験例1に係る超音波センサにおいては、第2の振動モードにおいて、底部111が第1の振動モードのときと略同様に変形して軸方向Zに振動した。このため、実施例1に係る超音波センサにおいては、底部111が、2つの異なる共振周波数において、略同様の振動強度で振動することができ、超音波センサが2つの周波数の異なる超音波を送受信できることがわかった。
【0037】
すなわち、上記実験例1で示すように、本発明の実施形態1に係る超音波センサ100においては、2つの錘部130は、ケース110の外部において周壁部115上に設けられ、軸方向Zから見て互いに重ならないように配置されている。そして、第1の振動モードの周波数での振動時において、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部130の各々は軸方向Zの他方側に向かって傾斜し、第2の振動モードの周波数での振動時において、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部130の各々は軸方向Zの一方側に向かって傾斜する。
【0038】
これにより、本実施形態に係る超音波センサ100においては、第2の振動モードの周波数の超音波を、第1の振動モードの周波数で送受信される超音波と同様に取り扱うことができる。すなわち、超音波センサ100は、周波数の異なる2つの超音波信号を送受信可能である。さらには、2つの錘部130が、ケース110の外部において周壁部115上に設けられているため、圧電素子120を、ケース110の内部において底部111上に容易に取り付けることができる。
【0039】
また、超音波センサ100がケース110内部に配置される吸音材をさらに備えている場合には、吸音材と錘部130が互いに直接に接することがないため、錘部130の振動時に、吸音材によって、錘部130の変形が阻害されることを防止できる。
【0040】
なお、本実施形態に係る超音波センサ100は、第1の振動モードでケース110が振動するときに送受信可能な超音波の指向性と、第2の振動モードでケース110が振動するときに送受信可能な超音波の指向性とが、互いに大きく異なるように構成されていることが好ましい。これらが互いに大きく異なっていることにより、たとえば、超音波センサ100の外部に位置する物体に向かって2種類の周波数の超音波を送信し、当該物体で反射したこれらの超音波を受信することで、当該物体までの距離および当該物体の高さを検知することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る超音波センサ100は、第1の振動モードの周波数および第2の振動モードの周波数は、互いに近接するように構成されていることが好ましい。これらが互いに近接していることで、超音波センサ100の駆動周波数の帯域幅を広くすることができる。
【0042】
さらに、本実施形態においては、2つの錘部130が、軸方向Zから見て、中心軸Cを通る同一の仮想直線上に位置している。これにより、第2の振動モードの周波数での振動時において変形した状態の底部111の形状が、第1の振動モードの周波数での振動時において変形した状態の底部111の形状に、より近くなる。ひいては、第2の振動モードで振動したときの振動強度を、より大きくすることができる。
【0043】
さらに、本実施形態においては、2つの錘部130が、中心軸Cに関して互いに回転対称となる形状を有している。これにより、第2の振動モードの周波数での振動時において変形した状態の底部111の形状が、第1の振動モードの周波数での振動時において変形した状態の底部111の形状に、さらに近くなる。ひいては、第2の振動モードで振動したときの振動強度を、さらに大きくすることができる。
【0044】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る超音波センサについて説明する。本発明の実施形態2に係る超音波センサにおいては、錘部の形状が、本発明の実施形態1に係る超音波センサ100と異なる。このため、本発明の実施形態1に係る超音波センサと同様の構成については説明を繰り返さない。
【0045】
図10は、本発明の実施形態2に係る超音波センサを底部側とは反対側から見た斜視図である。図11は、本発明の実施形態2に係る超音波センサを底部側から見た底面図である。図12は、本発明の実施形態2に係る超音波センサを示す側面図である。図10から図12に示すように、本発明の実施形態2に係る超音波センサ200においては、2つの錘部230の各々の第2端面232が、軸方向Zにおいて開口端面116と離間して位置している。すなわち、2つの錘部230の各々は、第2端面232が開口端面116と離間するように位置している。
【0046】
本実施形態に係る超音波センサ200も、2つの錘部230を備えることにより、当該2つの振動モードにおいて、それぞれ異なる共振周波数で、底部111を振動させることができる。当該2つの振動モードにおける超音波センサ200のケース110の変形の様子について検証した実験例2について、以下に説明する。
【0047】
実験例2においては、実施例2に係る超音波センサについて、実験例1と同様のシミュレーション解析を行った。実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部は、実施形態2に係る超音波センサと同様の構成とした。また、実験例2においては、軸方向Zから見たときの底部111の直径を15.5mm、軸方向Zにおける、底部111においてケース110の外側を向く面から錘部230の第1端面131までの寸法を1.5mm、軸方向Zにおける、開口端面116から錘部230の第2端面232までの寸法を0.7mm、軸方向Zにおける錘部230の長さを6.79mm、錘部230の中心軸Cを中心とした径方向長さを5.25mm、軸方向Zから見て中心軸Cを中心とした径方向に直交する方向における錘部230の長さを1mmとした。
【0048】
図13は、実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。図14は、実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第1の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。図15は、実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した底面図である。図16は、実施例2に係る超音波センサのケースおよび錘部が、第2の振動モードの周波数で振動しているときの一状態を、シミュレーションにより示した側面図である。図13から図16においては、図6から図9と同様のコンター図として、超音波センサのケースおよび錘部を示している。また、図13から図16においては、実施例2に係る超音波センサについて、実施形態2に係る超音波センサ200と同様の符号を付している。
【0049】
図13および図14に示すように、実施例2に係る超音波センサも、ケース110が第1の振動モード(基本振動モード)で振動するように圧電素子120にパルス電圧を印加すると、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部230の各々は軸方向Zの他方側に向かって傾斜するように、ケース110が振動した。このときのパルス電圧の周波数は48.281kHzであった。一方、図15および図16に示すように、実施例2に係る超音波センサにおいて、ケース110が第2の振動モードで振動するように、第1の振動モードで印加したパルス電圧と周波数のみ異なるパルス電圧を圧電素子120に印加すると、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部230の各々は軸方向Zの一方側に向かって傾斜するように、ケース110が振動した。このときのパルス電圧の周波数は55.655kHzであった。
【0050】
このように上記実験例2で示すように、本発明の実施形態2に係る超音波センサ200においても、2つの錘部230は、ケース110の外部において周壁部115上に設けられ、軸方向Zから見て互いに重ならないように配置され、かつ、第1の振動モードの周波数での振動時において、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部230の各々は軸方向Zの他方側に向かって傾斜し、第2の振動モードの周波数での振動時において、底部111が軸方向Zの一方側に凸状に湾曲したときに、2つの錘部230の各々は軸方向Zの一方側に向かって傾斜する。これにより、実施形態2に係る超音波センサ200においても、周波数の異なる2つの超音波信号を送受信可能となり、かつ、圧電素子120が取り付け容易となる。
【0051】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0052】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
100,200 超音波センサ、110 ケース、111 底部、112 中央部、113 外周部、115 周壁部、116 開口端面、120 圧電素子、130,230 錘部、131 第1端面、132,232 第2端面、133 側端面、140 制御部。
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