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特許7448011フィルタ装置およびそれを備える高周波フロントエンド回路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】フィルタ装置およびそれを備える高周波フロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/09 20060101AFI20240305BHJP
   H01P 1/203 20060101ALI20240305BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240305BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H01P1/203
H01F17/00 A
H01F27/00 S
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022537908
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025591
(87)【国際公開番号】W WO2022019112
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020123702
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020142400
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021038540
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾形 誠
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭介
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063394(JP,A)
【文献】特開2019-103108(JP,A)
【文献】国際公開第2012/033137(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
H01F 17/00
H01F 27/00
H03H1/00-H03H3/00
H03H5/00-H03H7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
出力端子と、
本体と、
前記本体に設けられた共通電極と、
接地端子と、
各々が前記共通電極および前記接地端子に接続された、第1LC並列共振器、第2LC並列共振器および第3LC並列共振器とを備え、
前記第1LC並列共振器、前記第2LC並列共振器および前記第3LC並列共振器の各々は、
キャパシタと、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記キャパシタを介して前記接地端子に接続された第1ビアと、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記キャパシタを介さずに前記接地端子に接続された第2ビアとを含み、
前記共通電極における、隣接する2つのLC並列共振器の第1ビアが接続されている部分の間に第2ビアが接続されている、フィルタ装置。
【請求項2】
前記共通電極は、帯状であって、第1端部および第2端部を含み、
前記第1LC並列共振器の第1ビアは、前記第1端部に接続されるとともに、前記入力端子に電気的に接続されており、
前記第2LC並列共振器の第1ビアは、前記第2端部に接続されるとともに、前記出力端子に電気的に接続されており、
前記第3LC並列共振器は、前記第1LC並列共振器と前記第2LC並列共振器との間に配置される、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
入力端子と、
出力端子と、
本体と、
前記本体に設けられた共通電極と、
接地端子と、
各々が前記共通電極および前記接地端子に接続された、第1LC並列共振器、第2LC並列共振器、第3LC並列共振器および第4LC並列共振器とを備え、
前記第1LC並列共振器、前記第2LC並列共振器、前記第3LC並列共振器および前記第4LC並列共振器の各々は、
キャパシタと、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記キャパシタを介して前記接地端子に接続された第1ビアと、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記キャパシタを介さずに前記接地端子に接続された第2ビアとを含み、
前記共通電極における、隣接する2つのLC並列共振器の第1ビアが接続されている部分の間に第2ビアが接続されており、
前記共通電極は、帯状であって、第1端部および第2端部を含み、
前記第1LC並列共振器の第1ビアは、前記第1端部に接続されるとともに、前記入力端子に電気的に接続されており、
前記第2LC並列共振器の第1ビアは、前記第2端部に接続されるとともに、前記出力端子に電気的に接続されており、
前記第3LC並列共振器は、前記第1LC並列共振器と前記第2LC並列共振器との間に配置されており、
前記第4LC並列共振器は、前記第2LC並列共振器と前記第3LC並列共振器との間に配置されている、フィルタ装置。
【請求項4】
前記共通電極はメアンダ形状を有しており、
前記共通電極に沿って前記第1端部から前記第2端部に向かって、前記第1LC並列共振器の第1ビア、前記第1LC並列共振器の第2ビア、前記第3LC並列共振器の第1ビア、前記第3LC並列共振器の第2ビア、前記第4LC並列共振器の第2ビア、前記第4LC並列共振器の第1ビア、前記第2LC並列共振器の第2ビア、および前記第2LC並列共振器の第1ビアが、この順に前記共通電極と接続されており、
前記第1LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分と前記第3LC並列共振器の第1ビアが接続されている部分との間の前記共通電極の幅、および、前記第2LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分と前記第4LC並列共振器の第1ビアが接続されている部分との間の前記共通電極の幅の少なくとも一方は、前記共通電極の他の部分の幅よりも広い、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記共通電極はメアンダ形状を有しており、
前記共通電極に沿って前記第1端部から前記第2端部に向かって、前記第1LC並列共振器の第1ビア、前記第1LC並列共振器の第2ビア、前記第3LC並列共振器の第1ビア、前記第3LC並列共振器の第2ビア、前記第4LC並列共振器の第2ビア、前記第4LC並列共振器の第1ビア、前記第2LC並列共振器の第2ビア、および前記第2LC並列共振器の第1ビアが、この順に前記共通電極と接続されており、
前記第3LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分と前記第4LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分との間の前記共通電極の幅は、前記共通電極の他の部分の幅よりも広い、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記共通電極は、前記第1LC並列共振器が接続されている部分と前記第3LC並列共振器が接続されている部分との間である第1部分を含み、
前記第1部分は、前記第1LC並列共振器の第1ビアが接続されている部分と前記第1LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分との間、ならびに、前記第3LC並列共振器の第1ビアが接続されている部分と前記第3LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分との間に接続されている、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記共通電極は、前記第2LC並列共振器が接続されている部分と前記第4LC並列共振器が接続されている部分との間である第2部分を含み、
前記第2部分は、前記第2LC並列共振器の第1ビアが接続されている部分と前記第2LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分との間、ならびに、前記第4LC並列共振器の第1ビアが接続されている部分と前記第4LC並列共振器の第2ビアが接続されている部分との間に接続されている、請求項3または6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記第1LC並列共振器と前記第3LC並列共振器との間に接続された第1キャパシタと、
前記第2LC並列共振器と前記第4LC並列共振器との間に接続された第2キャパシタと、
前記第1LC並列共振器と前記第2LC並列共振器との間に接続された第3キャパシタとをさらに備える、請求項3~7のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記共通電極に沿って前記第1端部から前記第2端部に向かって、前記第1LC並列共振器の第1ビア、前記第1LC並列共振器の第2ビア、前記第3LC並列共振器の第1ビア、前記第4LC並列共振器の第1ビア、前記第2LC並列共振器の第2ビア、および前記第2LC並列共振器の第1ビアが、この順に前記共通電極と接続されており、
前記共通電極は、前記共通電極における前記第3LC並列共振器の第1ビアと前記第4LC並列共振器の第1ビアとの間の部分から突出した突出部を含み、
前記第3LC並列共振器の第2ビアおよび前記第4LC並列共振器の第2ビアは共通化されて前記突出部に接続されている、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記共通電極よりも前記本体の上面側に配置され、前記接地端子に接続されたシールド部材をさらに備え、
前記シールド部材は、前記本体の上面側から平面視した場合に、前記共通電極と重なっている、請求項1~9のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
前記フィルタ装置は、特定の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタである、請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備えた、高周波フロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はフィルタ装置およびそれを備える高周波フロントエンド回路に関し、より特定的には、積層LCフィルタの特性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/097774号(特許文献1)には、入力端子と出力端子との間に4段のLC並列共振器が配置された積層型のバンドパスフィルタが開示されている。国際公開第2019/097774号(特許文献1)のバンドパスフィルタにおいては、入力端子に接続される共振器および出力端子に接続される共振器の間に、直列接続された2つのキャパシタ(第1キャパシタ,第2キャパシタ)が形成されており、当該2つのキャパシタの接続ノードと接地点との間に第3キャパシタが形成されている。このような構成とすることによって、通過帯域よりも低域側の減衰極の周波数をほとんど変化させることなく、通過帯域よりも高域側の減衰極の周波数を変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/097774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2019/097774号(特許文献1)のバンドパスフィルタに含まれる各LC並列共振器を形成するインダクタは、多層構造の誘電体基板の積層方向に形成された2つのビア導体と、当該ビア導体を接続する線路導体によって形成されており、各LC並列共振器の線路導体は互いに離間して配置されている。このようなバンドパスフィルタにおいて共振器間の磁気結合を調整する場合には、一般的に、インダクタを形成するビア導体の位置(間隔)の変更、あるいは、共振器同士の間隔の変更によって行なわれる。
【0005】
しかしながら、ビア導体の配置を変更すると、インダクタの空芯径が変化するためにQ値が低下する可能性がある。また、特定の共振器同士の間隔を変更した場合、その他の共振器との磁気結合にも影響が生じ、かえって損失が大きくなってしまうおそれがある。
【0006】
上記のようなバンドパスフィルタは、携帯電話あるいはスマートフォンに代表される携帯用の通信機器に用いられる場合がある。このような携帯端末においては、さらなる小型化および薄型化が求められているが、それに伴ってフィルタが小型化されると、ビア導体の配置の自由度がさらに制限されてしまうため、共振器間の磁気結合の調整が困難になり得る。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数のLC並列共振器を含む多段型の積層フィルタにおいて、Q値の低下を抑制しつつ、共振器間の磁気結合を調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るフィルタ装置は、入力端子と、出力端子と、本体と、本体に設けられた共通電極と、接地端子と、共通電極および接地端子に接続された第1~第3LC並列共振器とを備える。各共振器は、キャパシタと、第1ビアと、第2ビアとを含む。第1ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端がキャパシタを介して接地端子に接続されている。第2ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端がキャパシタを介さずに接地端子に接続されている。共通電極における、隣接する2つの共振器の第1ビアが接続されている部分の間に第2ビアが接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示のフィルタ装置においては、互いに磁気結合する複数のLC並列共振器(第1LC並列共振器~第3LC並列共振器)が共通電極により接続される。このような構成とすることによって、各共振器のインダクタを構成するビアの配置は制限されず、隣接するLC並列共振器同士の磁気結合は共通電極の形状によって調整される。したがって、多段型のLCフィルタにおいて、Q値の低下を抑制しながら共振器間の磁気結合を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路を有する通信装置のブロック図である。
図2】実施の形態1のフィルタ装置の等価回路図である。
図3図2のフィルタ装置の外観斜視図である。
図4図2のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図5図2のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図6】比較例のフィルタ装置における共振器の配置を説明するための図である。
図7図2のフィルタ装置の通過特性を示す図である。
図8】磁気結合調整の第1例を説明するための図である。
図9図8の第1例における通過特性を示す図である。
図10】磁気結合調整の第2例を説明するための図である。
図11図8の第2例における通過特性を示す図である。
図12】変形例1のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図13】変形例2のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図14】変形例3のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図15】変形例4のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図16】実施の形態2のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図17図16のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図18図16のフィルタ装置の通過特性を示す図である。
図19】実施の形態3のフィルタ装置の等価回路図である。
図20図19のフィルタ装置の積層構造を示す分解斜視図である。
図21図19のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図22図19のフィルタ装置の通過特性を示す図である。
図23】変形例5のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図24】変形例6のフィルタ装置における共通電極の平面図である。
図25】実施の形態4のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図26図25のフィルタ装置の通過特性を示す図である。
図27】共通電極および内部シールドの有無による、外部シールドの影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路20を有する通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、携帯電話基地局である。
【0013】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナ12と、高周波フロントエンド回路20と、ミキサ30と、局部発振器32と、D/Aコンバータ(DAC)40と、RF回路50とを備える。また、高周波フロントエンド回路20は、バンドパスフィルタ22,28と、増幅器24と、減衰器26とを含む。なお、図1においては、高周波フロントエンド回路20が、アンテナ12から高周波信号を送信する送信回路を含む場合について説明するが、高周波フロントエンド回路20はアンテナ12を介して高周波信号を受信する受信回路を含んでいてもよい。
【0014】
通信装置10は、RF回路50から伝達された送信信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ12から放射する。RF回路50から出力された送信信号である変調済みのデジタル信号は、D/Aコンバータ40によってアナログ信号に変換される。ミキサ30は、D/Aコンバータ40によってデジタル信号からアナログ信号に変換された送信信号を、局部発振器32からの発振信号と混合して高周波信号へとアップコンバートする。バンドパスフィルタ28は、アップコンバートによって生じた不要波を除去して、所望の周波数帯域の送信信号のみを抽出する。減衰器26は、送信信号の強度を調整する。増幅器24は、減衰器26を通過した送信信号を、所定のレベルまで電力増幅する。バンドパスフィルタ22は、増幅過程で生じた不要波を除去するとともに、通信規格で定められた周波数帯域の信号成分のみを通過させる。バンドパスフィルタ22を通過した送信信号は、アンテナ12から放射される。
【0015】
上記のような通信装置10におけるバンドパスフィルタ22,28として、本開示に対応したフィルタ装置を採用することができる。
【0016】
(フィルタ装置の構成)
次に図2図5を用いて、実施の形態1のフィルタ装置100の詳細な構成について説明する。
【0017】
図2は、フィルタ装置100の等価回路図である。図2を参照して、フィルタ装置100は、入力端子T1と、出力端子T2と、共振器RC1~RC4を備える。共振器RC1~RC4の各々は、インダクタとキャパシタとが並列接続されたLC並列共振器である。
【0018】
共振器RC1は、直列接続されたインダクタL1A,L1Bと、当該インダクタL1A,L1Bに並列に接続されたキャパシタC1とを含む。インダクタL1AとキャパシタC1との接続ノードN1Aは、キャパシタC0を介して入力端子T1に接続されている。インダクタL1BとキャパシタC1との接続ノードN1Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0019】
共振器RC2は、直列接続されたインダクタL2A,L2Bと、当該インダクタL2A,L2Bに並列に接続されたキャパシタC2とを含む。インダクタL2AとキャパシタC2との接続ノードN2Aは、キャパシタC5を介して出力端子T2に接続されている。インダクタL2BとキャパシタC2との接続ノードN2Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0020】
共振器RC3は、直列接続されたインダクタL3A,L3Bと、当該インダクタL3A,L3Bに並列に接続されたキャパシタC3とを含む。インダクタL3AとキャパシタC3との接続ノードN3Aは、キャパシタC13を介して共振器RC1の接続ノードN1Aに接続されている。インダクタL3BとキャパシタC3との接続ノードN3Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0021】
共振器RC4は、直列接続されたインダクタL4A,L4Bと、当該インダクタL4A,L4Bに並列に接続されたキャパシタC4とを含む。インダクタL4AとキャパシタC4との接続ノードN4Aは、キャパシタC24を介して共振器RC2の接続ノードN2Aに接続されている。インダクタL4BとキャパシタC4との接続ノードN4Bは、接地端子GNDに接続されている。
【0022】
また、共振器RC1の接続ノードN1Aと、共振器RC2の接続ノードN2Aとが、キャパシタC12を介して接続されている。さらに、各共振器における2つのインダクタの接続ノード同士が互いに接続されている。共振器が共通に接続される当該部分が、図4等で後述する共通電極PCに対応する。
【0023】
各共振器同士は、磁気結合により結合されている。このように、フィルタ装置100は、入力端子T1と出力端子T2との間に、互いに磁気結合する4段の共振器が配置された構成を有している。各共振器の共振周波数を調整することによって、フィルタ装置100は、所望の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタとして機能する。
【0024】
なお、入力端子T1に接続されたキャパシタC0および出力端子T2に接続されたキャパシタC5は必須ではなく、共振器RC1,RC2が、入力端子T1および出力端子T2にそれぞれ直接接続されていてもよい。
【0025】
図3はフィルタ装置100の外観斜視図であり、図4はフィルタ装置100の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【0026】
図3および図4を参照して、フィルタ装置100は、複数の誘電体層LY1~LY12が積層方向に積層されることによって形成された、直方体または略直方体の本体110を備えている。誘電体層LY1~LY12は、たとえば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミック、あるいは樹脂により形成されている。本体110の内部において、各誘電体層に設けられた複数の電極、および、誘電体層間に設けられた複数のビアによって、LC共振回路を構成するためのインダクタおよびキャパシタが構成される。なお、本明細書において「ビア」とは、異なる誘電体層に設けられた電極を接続するために、誘電体層中に設けられる導体を示す。ビアは、たとえば、導電ペースト、めっき、および/または金属ピンなどによって形成される。
【0027】
なお、以降の説明においては、本体110における誘電体層LY1~LY12の積層方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に垂直であって本体110の長辺に沿った方向を「X軸方向」とし、本体110の短辺に沿った方向を「Y軸方向」とする。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向を上側、負方向を下側と称する場合がある。
【0028】
本体110の上面111(第1層LY1)には、フィルタ装置100の方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。本体110の下面112(第12層LY12)には、当該フィルタ装置100と外部機器とを接続するための外部端子(入力端子T1、出力端子T2および接地端子GND)が配置されている。入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDの各々は平板状の電極であり、本体110の下面112に規則的に配置されたLGA(Land Grid Array)端子である。
【0029】
フィルタ装置100は、図2で説明したように、4段のLC並列共振器を有している。より具体的には、ビアV1A,V1Bおよびキャパシタ電極P2を含んで構成された共振器RC1と、ビアV2A,V2Bおよびキャパシタ電極P8を含んで構成された共振器RC2と、ビアV3A,V3Bおよびキャパシタ電極P3を含んで構成された共振器RC3と、ビアV4A,V4Bおよびキャパシタ電極P7を含んで構成された共振器RC4とを含む。
【0030】
共振器RC1のキャパシタ電極P2、および、共振器RC2のキャパシタ電極P8は、第10層LY10に設けられている。キャパシタ電極P2は、第11層LY11に設けられた平板電極P1と対向している。キャパシタ電極P2と平板電極P1とによって図2のキャパシタC0が構成される。平板電極P1は、ビアV0によって第12層LY12に設けられた入力端子T1に接続される。
【0031】
キャパシタ電極P8は、第11層LY11に設けられた平板電極P9と対向している。キャパシタ電極P8と平板電極P9とによって図2のキャパシタC5が構成される。平板電極P9は、ビアV5によって、第12層LY12に設けられた出力端子T2に接続される。
【0032】
共振器RC1のキャパシタ電極P2は、ビアV1Aによって、第2層LY2に設けられた共通電極PCに接続される。また、共通電極PCは、ビアV1Bによって、第9層LY9に設けられた平板電極PG1に接続される。平板電極PG1は、ビアVG1,VG2,VG3によって、第11層LY11に設けられた平板電極PG2に接続される。さらに、平板電極PG2は、ビアVG4,VG5によって、第12層LY12に設けられた接地端子GNDに接続される。キャパシタ電極P2の一部は、平板電極PG1とも対向しており、キャパシタ電極P2と平板電極PG1とによって、図2におけるキャパシタC1が構成される。なお、ビアV1AおよびビアV1Bは、図2におけるインダクタL1AおよびインダクタL1Bにそれぞれ対応する。
【0033】
共振器RC2のキャパシタ電極P8は、ビアV2Aによって、第2層LY2に設けられた共通電極PCに接続される。また、共通電極PCは、ビアV2Bによって、第9層LY9に設けられた平板電極PG1に接続される。キャパシタ電極P8の一部は、平板電極PG1とも対向しており、キャパシタ電極P8と平板電極PG1とによって、図2におけるキャパシタC2が構成される。なお、ビアV2AおよびビアV2Bは、図2におけるインダクタL2AおよびインダクタL2Bにそれぞれ対応する。
【0034】
共振器RC3のキャパシタ電極P3、および、共振器RC4のキャパシタ電極P7は、第8層LY8に設けられている。キャパシタ電極P3は、ビアV3Aによって、第2層LY2に設けられた共通電極PCに接続される。また、共通電極PCは、ビアV3Bによって、第9層LY9に設けられた平板電極PG1に接続される。キャパシタ電極P3は、平板電極PG1と対向しており、キャパシタ電極P3と平板電極PG1とによって図2のキャパシタC3が構成される。なお、ビアV3AおよびビアV3Bは、図2におけるインダクタL3AおよびインダクタL3Bにそれぞれ対応する。
【0035】
キャパシタ電極P7は、ビアV4Aによって、第2層LY2に設けられた共通電極PCに接続される。また、共通電極PCは、ビアV4Bによって、第9層LY9に設けられた平板電極PG1に接続される。キャパシタ電極P7は、平板電極PG1と対向しており、キャパシタ電極P7と平板電極PG1とによって図2のキャパシタC4が構成される。なお、ビアV4AおよびビアV4Bは、図2におけるインダクタL4AおよびインダクタL4Bにそれぞれ対応する。
【0036】
共振器RC1のビアV1Aは、第7層LY7に設けられる平板電極P4にも接続されている。平板電極P4の一部は、共振器RC3のキャパシタ電極P3と対向している。平板電極P4とキャパシタ電極P3とによって、図2におけるキャパシタC13が構成される。
【0037】
共振器RC2のビアV2Aは、第7層LY7に設けられる平板電極P6にも接続されている。平板電極P6の一部は、共振器RC4のキャパシタ電極P7と対向している。平板電極P6とキャパシタ電極P7とによって、図2におけるキャパシタC24が構成される。
【0038】
また、平板電極P4の一部および平板電極P6の一部は、第6層LY6に設けられた平板電極P5と対向している。平板電極P4~P6によって、図2におけるキャパシタC12が構成される。
【0039】
以降の説明では、各共振器においてキャパシタを介して接地端子GNDに接続されるビアV1A,V2A,V3A,V4Aを「第1ビア」と称する。また、各共振器においてキャパシタを介さずに接地端子GNDに接続されるビアV1B,V2B,V3B,V4Bを「第2ビア」と称する。
【0040】
図5は、フィルタ装置100における共通電極PCの平面図である。共通電極PCは、第1端部E1および第2端部E2を有する帯状の配線パターンによって構成されている。図5においては、共通電極PCは、本体110の短辺(Y軸)に沿った配線パターンPT1,PT3,PT5,PT7と本体110の長辺(X軸)に沿った配線パターンPT2,PT4,PT6とが交互に接続されたメアンダ形状を有している。配線パターンPT1~PT7の線幅は同じである。
【0041】
共通電極PCの第1端部E1(すなわち、配線パターンPT1の一方端)には、共振器RC1のビアV1Aが接続されている。配線パターンPT1の他方端(すなわち、配線パターンPT2の一方端)には、共振器RC1のビアV1Bが接続されている。配線パターンPT2の他方端(すなわち、配線パターンPT3の一方端)には、共振器RC3のビアV3Aが接続されている。配線パターンPT3の他方端(すなわち、配線パターンPT4の一方端)には、共振器RC3のビアV3Bが接続されている。
【0042】
配線パターンPT4の他方端(すなわち、配線パターンPT5の一方端)には、共振器RC4のビアV4Bが接続されている。配線パターンPT5の他方端(すなわち、配線パターンPT6の一方端)には、共振器RC3のビアV4Aが接続されている。配線パターンPT6の他方端(すなわち、配線パターンPT7の一方端)には、共振器RC2のビアV2Bが接続されている。配線パターンPT7の他方端(すなわち、共通電極PCの第2端部E2)には、共振器RC2のビアV2Aが接続されている。図5に示されるように、共通電極PCにおいて、各ビアは、フィルタ特性の対称性を確保するために、仮想線CL1に対して線対称となるように配置される。
【0043】
このように、共通電極PCに沿って、共振器RC1のビアV1Aと共振器RC3のビアV3A(第1ビア)との間に、共振器RC1のビアV1B(第2ビア)が配置されている。また、共通電極PCに沿って、共振器RC2のビアV2Aと共振器RC4のビアV4A(第1ビア)との間に、共振器RC2のビアV2B(第2ビア)が配置されている。さらに、共通電極PCに沿って、共振器RC3のビアV3Aと共振器RC4のビアV4A(第1ビア)との間に、共振器RC3のビアV3Bおよび共振器RC4のビアV4B(第2ビア)が配置されている。
【0044】
換言すれば、共通電極PCに沿った経路において、隣接する2つの共振器の第1ビアが接続されている部分の間に第2ビアが接続されている。なお、隣接するビアV3BおよびビアV4Bは、いずれも平板電極PG1,PG2およびビアVG1,VG2,VG3,VG4,VG5を介して接地端子GNDに接続されているため、これらの2つのビアは図5の破線のビアV34Bのように1つのビアとして考えることができる。そうすると、共通電極PCにそって第1端部E1から第2端部E2に向かって、第1ビアと第2ビアとが交互に配置された構成となる。
【0045】
このように、複数のLC並列共振器が帯状の共通電極に接続され、キャパシタを介して接地端子GNDに接続される「第1ビア」と、キャパシタを介さずに接地端子GNDに接続される「第2ビア」とが、当該共通電極に沿って交互に配置されることによって、隣接する共振器同士が誘導結合する。
【0046】
ここで、複数のLC並列共振器で構成された多段型のフィルタ装置として、各共振器を構成する線路導体が互いに離間して配置される構成が知られている。たとえば、国際公開第2019/097774号(特許文献1)においては、図6に示されるフィルタ装置200のように、各共振器のインダクタを構成するビアが、各共振器ごとに互いに独立した個別の配線電極PD1~PD4で接続される。
【0047】
一般的に、フィルタ装置の特性を向上させるためには、Q値を高めることが必要とされる。上記のような多段型のLC並列共振器を用いたフィルタ装置においては、Q値は、各共振器におけるインダクタの空芯径、すなわちビア間隔によって影響を受ける。具体的には、各共振器におけるインダクタの空芯径が大きいほどQ値は高くなる傾向を有している。そのため、フィルタ装置においては、各共振器のビア間隔ができるだけ広くなるように、ビアが配置される。
【0048】
一方で、所望のフィルタ特性を実現するために、各共振器間の磁気結合の強度を調整することが必要となる場合がある。共振器間の磁気結合の強度は、共振器同士の距離(間隔)によって調整することができるが、多段型のフィルタ装置の場合、各共振器同士が互いに結合し合っており、特定の共振器間の距離を変更するとそれ以外の共振器の結合状態も変化し得るため、共振器間の距離による調整は設計上の困難が伴う可能性がある。そのため、設計上の簡便さから、Q値が低くなる可能性はあるが、ビア間隔の変更により結合状態を調整する手法が一般的に用いられる。しかしながら、フィルタ装置をさらに小型化する場合には、ビアの配置の自由度がさらに制限されてしまい、所望のフィルタ特性を実現できなくなる可能性がある。
【0049】
実施の形態1のフィルタ装置100においては、上記で説明したように、複数のLC並列共振器RC1~RC4のインダクタを構成するビアが、共通電極PCに接続され、キャパシタを介して接地端子GNDに接続される「第1ビア」と、キャパシタを介さずに接地端子GNDに接続される「第2ビア」とが、当該共通電極PCに沿って交互に配置された構成となっている。このように、隣接する共振器同士が共通電極により接続されることによって、特に本体110の中心付近に配置されている共振器RC3,RC4においては、1つの第1ビアに対して2つ以上の第2ビアが配置されるため、損失を低減することができる。また、共通電極の形状(たとえば、線幅あるいは線路長)を調整することによって、共振器間の結合状態を変更することができる。これにより、各共振器において、最適なQ値を実現可能な位置にビアを配置することができるので、Q値の低下を抑制しながら共振器間の磁気結合を調整することが可能となる。
【0050】
次に、図7図11を用いて、実施の形態1のフィルタ装置100における、共通電極の形状の変更による磁気結合の調整例について説明する。
【0051】
図7は、図5で示した形状の共通電極PCを有するフィルタ装置100における入力端子T1から出力端子T2への挿入損失(実線LN10)、および、図6で示した比較例のフィルタ装置200における挿入損失(破線LN11)を示した図である。なお、下段の図7(b)は、上段の図7(a)における領域RG1の部分の拡大図である。
【0052】
図7を参照して、実施の形態1のフィルタ装置100においては、比較例のフィルタ装置200に比べて、通過帯域よりも低域側の非通過帯域における減衰極が通過帯域側に移動している。これにより、図7(b)に示されるように、通過帯域が低域側に拡大され、さらに非通過帯域における急峻度が向上している。また、実施の形態1のフィルタ装置100においては、通過帯域よりも高域側の非通過帯域における減衰極の減衰量が、比較例のフィルタ装置200に比べて大きくなっている。このように、共通電極PCに各共振器が接続された構成とすることによって、通過帯域を拡大するとともに急峻度を改善することができる。
【0053】
実施の形態1のフィルタ装置100と異なる形状の共通電極PCを有するフィルタ装置100Aとフィルタ装置100Bを用意した。図8は、フィルタ装置100Aにおける共通電極PCの平面図である。図8に示すように、フィルタ装置100Aでは、共通電極PCにおける配線パターンPT2と配線パターンPT6の線幅W1が、図5に示されるフィルタ装置100の共通電極PCに比べて広くされている。すなわち、フィルタ装置100Aでは、共通電極PCにおける配線パターンPT2と配線パターンPT6の線幅は、配線パターンPT1,PT3,PT4,PT5,PT7の線幅よりも広い。図9は、図8で示した形状の共通電極PCを有するフィルタ装置100Aにおける挿入損失を示した図である。図10は、フィルタ装置100Bにおける共通電極PCの平面図である。図10に示すように、フィルタ装置100Bでは、共通電極PCにおける配線パターンPT4の線幅W2が、図5に示されるフィルタ装置100の共通電極PCに比べて広くされている。すなわち、フィルタ装置100Bでは、共通電極PCにおける配線パターンPT4の線幅は、配線パターンPT1~PT3,PT5~PT7の線幅よりも広い。図11は、図10で示した形状の共通電極PCを有するフィルタ装置100Bにおける挿入損失を示した図である。なお、図9および図11においては、比較のために、図5の場合の挿入損失が破線LN10で示されている。
【0054】
図9を参照して、共通電極PCの配線パターンPT2,PT6の線幅W1を配線パターンPT1,PT3,PT4,PT5,PT7の線幅よりも広くした場合には、通過帯域よりも低域側の減衰極の周波数が、配線パターンPT1~PT7の線幅が同じである図5の場合に比べて通過帯域側にシフトしている(図9中の実線LN20)。すなわち、通過帯域の低域側における減衰の急峻度が高められている。これは、配線パターンPT2,PT6の線幅の拡大によって、最も遠い共振器間、すなわち共振器RC1と共振器RC2との間の最短距離が短くなり、共振器RC1と共振器RC2との間の磁気結合の感度が高くなるためである。これは、図2の等価回路におけるインダクタL1A,L2Aのインダクタンス値が小さくなり、共振器全体におけるインダクタL1B,L2Bの割合が大きくなっていることを意味する。
【0055】
次に、図11を参照して、共通電極PCの配線パターンPT4の線幅W2を配線パターンPT1~PT3,PT5~PT7の線幅よりも広くした場合には、通過帯域の高域側がより高周波数側にシフトしており、通過帯域幅が拡大している(図11中の実線LN30)。これは、配線パターンPT4の線幅の拡大によって、共振器RC3と共振器RC4との間の最短距離が短くなり、共振器RC3と共振器RC4との間の磁気結合の感度が高くなるためである。これは、図2の等価回路におけるインダクタL3A,L4Aのインダクタンス値が小さくなり、共振器全体におけるインダクタL3B,L4Bの割合が大きくなっていることを意味する。
【0056】
以上のように、複数のLC並列共振器で構成されたフィルタ装置において、各共振器が共通電極により接続される構成とし、当該共通電極の形状を変更することによって、共振器間の磁気結合を所望のフィルタ特性に応じた結合状態に調整することができる。この場合、各共振器においてインダクタを構成するビアの配置を変更することが不要なため、Q値の低下を抑制することができる。
【0057】
[変形例]
以下の変形例においては、フィルタ装置に含まれるLC並列共振器の段数が異なる場合、および、共振器のビア配置が異なる場合の例について説明する。
【0058】
(変形例1)
図12は、変形例1のフィルタ装置100Cにおける共通電極PC1の平面図である。フィルタ装置100Cは、3つのLC並列共振器が含まれる構成の例である。
【0059】
図12を参照して、フィルタ装置100Cにおいては、本体110においてX軸に平行な一方の長辺に沿って各共振器における第1ビアV10A,V11A,V12Aが配置されており、他方の長辺に沿って第2ビアV10B,V11Bが配置されている。共通電極PC1は、ビアV10Aから、ビアV10B、ビアV11A、およびビアV11Bを経由してビアV12Aに至るように、略W形状に設けられている。すなわち、共通電極PC1において第1端部から第2端部に向かう経路に沿って、第1ビアおよび第2ビアがジグザグ状に交互に配置されている。
【0060】
なお、フィルタ装置100Cにおいては、仮想線CL1に対してビアを線対称な配置とするために、ビアV11Aを含む共振器の第2ビアが、ビアV10Bおよび/またはビアV11Bと共通化されている。
【0061】
このような構成においては、ビアV10AおよびV10Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV10BおよびV11Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR11の方向に調整することによって、1段目と2段目の共振器の磁気結合、および、1段目と3段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0062】
また、ビアV10BおよびV11Aを接続する配線パターン、ならびに、ビアV11AおよびV11Bを接続する配線パターンの線幅を矢印AR12の方向に調整することによって、2段目と3段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0063】
さらに、ビアV11AおよびV11Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV11BおよびV12Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR13の方向に調整することによって、2段目と3段目の共振器の磁気結合、および、1段目と3段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0064】
以上のように、フィルタ装置が3つのLC並列共振器を含む場合についても、各共振器を共通電極に接続し、共通電極の線幅等を変更することによって、ビア位置を変更することなく共振器間の結合状態を調整することができる。したがって、Q値の低下を抑制しつつ、共振器間の結合を調整することが可能となる。
【0065】
(変形例2)
図13は、変形例2のフィルタ装置100Dにおける共通電極PC2の平面図である。フィルタ装置100Dは、実施の形態1と同様に4つのLC並列共振器を含んでいるが、フィルタ装置100と比較してビアの配置が異なっている。
【0066】
図13を参照して、フィルタ装置100Dにおいては、変形例1と同様に、本体110の一方の長辺に沿って第1ビアV20A~V23Aが配置されており、他方の長辺に沿って第2ビアV20B~V22Bが配置されている。共通電極PC2は、ビアV20Aから、ビアV20B、ビアV21A、ビアV21B、ビアV22A、およびビアV22Bを経由してビアV23Aに至るように設けられている。すなわち、共通電極PC2において第1端部から第2端部に向かう経路に沿って、第1ビアおよび第2ビアがジグザグ状に交互に配置されている。
【0067】
なお、フィルタ装置100Dにおいては、仮想線CL1に対してビアを線対称に配置するために、いずれかの共振器の第2ビアが、隣接する共振器の第2ビアと共通化されている。
【0068】
このような構成においては、ビアV20AおよびV20Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV20BおよびV21Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR21の方向に調整することによって、1段目と2段目の共振器の磁気結合、1段目と3段目の共振器の磁気結合、および1段目と4段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0069】
また、ビアV21AおよびV21Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV21BおよびV22Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR22の方向に調整することによって、2段目と3段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0070】
さらに、ビアV22AおよびV22Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV22BおよびV23Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR23の方向に調整することによって、1段目と4段目の共振器の磁気結合、2段目と4段目の共振器の磁気結合、および3段目と4段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0071】
以上のように、フィルタ装置におけるビアの配置が異なる場合においても、各共振器を共通電極に接続し、共通電極の線幅等を変更することによって、ビア位置を変更することなく共振器間の結合状態を調整することができる。したがって、Q値の低下を抑制しつつ、共振器間の結合を調整することが可能となる。
【0072】
(変形例3)
図14は、変形例3のフィルタ装置100Eにおける共通電極PC3の平面図である。フィルタ装置100Eは、5つのLC並列共振器が含まれる構成の例である。
【0073】
図14を参照して、フィルタ装置100Eにおいては、本体110の一方の長辺に沿って第1ビアV30A、第2ビアV31B、第2ビアV32B、および第1ビアV34Aが配置されており、他方の長辺に沿って第2ビアV30B、第1ビアV31A~V33A、および第2ビアV33Bが配置されている。共通電極PC3は、ビアV30Aから、ビアV30B、ビアV31A、ビアV31B、ビアV32A、ビアV32B、ビアV33A、およびビアV33Bを経由してビアV34Aに至るように設けられている。
【0074】
フィルタ装置100Eにおいては、仮想線CL1に対してビアを線対称に配置するために、いずれかの共振器の第2ビアが、隣接する共振器の第2ビアと共通化されている。なお、5段のフィルタ装置においても、変形例1および変形例2のように、ビアをジグザグ状に配置するようにしてもよい。
【0075】
このような構成においては、ビアV30AおよびV30Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV30BおよびV31Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR31の方向に調整することによって、1段目と2段目の共振器の磁気結合、1段目と3段目の共振器の磁気結合、1段目と4段目の共振器の磁気結合、および1段目と5段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0076】
また、ビアV31AおよびV31Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV31BおよびV32Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR32の方向に調整することによって、2段目と3段目の共振器の磁気結合、および2段目と4段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0077】
また、ビアV32AおよびV32Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV32BおよびV33Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR33の方向に調整することによって、2段目と4段目の共振器の磁気結合、および3段目と4段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0078】
さらに、ビアV33AおよびV33Bを接続する配線パターン、ならびに、ビアV33BおよびV34Aを接続する配線パターンの線幅を矢印AR34の方向に調整することによって、1段目と5段目の共振器の磁気結合、2段目と5段目の共振器の磁気結合、3段目と5段目の共振器の磁気結合、および4段目と5段目の共振器の磁気結合を調整することができる。
【0079】
以上のように、フィルタ装置が5つのLC並列共振器を含む場合についても、各共振器を共通電極に接続し、共通電極の線幅等を変更することによって、ビア位置を変更することなく共振器間の結合状態を調整することができる。したがって、Q値の低下を抑制しつつ、共振器間の結合を調整することが可能となる。
【0080】
(変形例4)
図15は、変形例4のフィルタ装置100Fにおける共通電極PC4の平面図である。フィルタ装置100Fは、実施の形態1および変形例2と同様に4つのLC並列共振器を含んでいるがビアの配置がさらに異なっている。より具体的には、フィルタ装置100Fにおいては、ビアが点対称となるように配置されている。
【0081】
図15を参照して、フィルタ装置100Fにおいては、本体110の一方の長辺に沿って第1ビアV40A、第2ビアV41B、第1ビアV42A、および第2ビアV43Bが配置されており、他方の長辺に沿って第2ビアV40B、第1ビアV41A、第2ビアV42B、および第1ビアV43Aが配置されている。共通電極PC4は、ビアV40Aから、ビアV40B、ビアV41A、ビアV41B、ビアV42B、ビアV42A、ビアV43Bを経由してビアV43Aに至るように設けられている。共通電極PC4においては、点CPに対して点対称になるようにビアが配置されている。
【0082】
このように、フィルタ装置においてビアが点対称に配置される場合においても、各共振器を共通電極に接続し、共通電極の線幅等を変更することによって、ビア位置を変更することなく共振器間の結合状態を調整することができる。したがって、Q値の低下を抑制しつつ、共振器間の結合を調整することが可能となる。
【0083】
なお、本開示の特徴については、6段以上のフィルタ装置についても適用可能である。
[実施の形態2]
実施の形態1の図8および図10においては、共振器間を接続する配線パターンの線幅を調整することによって磁気結合を調整する手法について説明した。
【0084】
実施の形態2においては、入出力端子に接続される共振器RC1および共振器RC2についての磁気結合の他の調整例について説明する。
【0085】
図16は、実施の形態2のフィルタ装置100Gの積層構造の一例を示す分解斜視図である。また、図17は、図16のフィルタ装置100Gにおける共通電極PC1の平面図である。
【0086】
図16を参照して、フィルタ装置100Gにおいては、実施の形態1の図4で説明したフィルタ装置100における共通電極PCが共通電極PC1に置き換えられ、ビアV3B,V4Bが図5で説明したように1つのビアV34Bに置き換えられており、さらに、第7層LY7に設けられた平板電極P10が追加された構成となっている。フィルタ装置100Gにおいて、図4と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0087】
平板電極P10は、略U字形状を有しており、第7層LY7において、平板電極P4および平板電極P6との間に配置される。平板電極P10は、ビアV34Bに接続されており、ビアV34Bを介して、共通電極PC1および平板電極PG1(すなわち接地端子GND)に接続されている。平板電極P10は、第6層LY6に設けられた平板電極P5、および、第8層LY8に設けられたキャパシタ電極P3,P7と容量結合している。平板電極P10によって、共振器RC1~RC4におけるキャパシタC1~C4(図2)の容量が増加されている。
【0088】
また、第2層LY2に設けられた共通電極PC1においては、図17に示されるように、配線パターンPT2における配線パターンPT1,PT3との接続位置、および、配線パターンPT6における配線パターンPT5,PT7との接続位置が、Y軸の正方向に移動した構成となっている。言い換えれば、配線パターンPT2は、配線パターンPT1における共振器RC1のビアV1A(第1ビア)が接続されている部分とビアV1B(第2ビア)が接続されている部分との間、ならびに、配線パターンPT3における共振器RC3のビアV3A(第1ビア)が接続されている部分とビアV34B(第2ビア)が接続されている部分との間に接続されている。また、配線パターンPT6は、配線パターンPT7における共振器RC2のビアV2A(第1ビア)が接続されている部分とビアV2B(第2ビア)が接続されている部分との間、ならびに、配線パターンPT5における共振器RC4のビアV4A(第1ビア)が接続されている部分とビアV34B(第2ビア)が接続されている部分との間に接続されている。
【0089】
共振器RC1と共振器RC3とを接続する配線パターンPT2が、共振器RC1の開放端側(すなわち、ビアV1A側)に近づくことによって、ビアV1AからビアV34Bに至る経路の最短距離が短くなるため、共振器RC1と共振器RC3との磁気結合を強めることができる。同様に、共振器RC2と共振器RC4とを接続する配線パターンPT6が、共振器RC4の開放端側(すなわち、ビアV2A側)に近づくことによって、ビアV2AからビアV34Bに至る経路の最短距離が短くなるため、共振器RC2と共振器RC4との磁気結合を強めることができる。すなわち、配線パターンPT1のビアV1A側の端部から配線パターンPT2までの距離LG1、および、配線パターンPT7のビアV2A側の端部から配線パターンPT6までの距離LG1を調整することによって、共振器RC1,RC2と他の共振器との間の磁気結合を調整することができる。
【0090】
なお、図8で説明したように、配線パターンPT2,PT6の線幅W1を調整することによって配線パターンPT2,PT6のインダクタンス値を調整することができる。また、図10で説明したように、共振器RC3,RC4間の配線パターンPT4の線幅W2を調整することによって、配線パターンPT4のインダクタンス値を調整することができる。
【0091】
図8のように、配線パターンPT2,PT6におけるY軸の負方向側の辺が、配線パターンPT1,PT7のY軸の負方向側の端部に固定された状態で、配線パターンPT2,PT6の線幅W1を調整する場合、線幅W1を狭くしてインダクタンス値を大きくすると、距離LG1が長くなるので、共振器間の磁気結合が弱くなる。逆に、線幅W1を広くしてインダクタンス値を小さくすると、距離LG1が短くなるので、共振器間の磁気結合が強くなる。すなわち、共振器間を接続するインダクタのインダクタンス値の大きさと共振器間の磁気結合とが連動して変化する。そのため、たとえば、小型のフィルタ装置のように、共振器間のインダクタンス値を大きくし、さらに共振器間の磁気結合も強くしたい場合には、このような調整手法では、所望のフィルタ特性を実現できない場合が生じ得る。
【0092】
実施の形態2の構成においては、共振器間のインダクタンス値については、配線パターンPT2,PT6の線幅W1により調整し、共振器間の磁気結合については、配線パターンPT2,PT6の接続位置(すなわち、距離LG1)により調整することによって、共振器間のインダクタンス値と共振器間の磁気結合とを独立して調整することができる。そのため、設計の自由度が高まり、所望のフィルタ特性を実現しやすくなる。
【0093】
なお、共振器間のインダクタンス値を大きくすると、共振器のインピーダンスを高くする効果がある。共振器RC1と共振器RC4との間の磁気結合を大きくすると、通過帯域近傍の減衰極を通過帯域側にシフトさせる効果がある。また、共振器RC2と共振器RC3との間の磁気結合を大きくすると、通過帯域幅を拡大することができる。
【0094】
なお、上記の例においては、配線パターンPT2,PT6の双方について線幅および接続位置を調整する場合について説明したが、配線パターンPT2および配線パターンPT6のいずれか一方のみについての線幅および接続位置を調整するようにしてもよい。
【0095】
図18は、実施の形態2のフィルタ装置100G、および、実施の形態1のフィルタ装置100において、配線パターンPT2,PT6を同一の線幅W1とした状態で、配線パターンPT2,PT6の接続位置(すなわち、距離LG1)を変化させたときの挿入損失を比較した図である。なお、フィルタ装置100Gにおける配線パターンPT2,PT6の接続位置は、フィルタ装置100における配線パターンPT2,PT6の接続位置よりも、ビアV1A,V2Aに近くされている。図18において、実線LN40はフィルタ装置100Gの場合を示しており、破線LN41はフィルタ装置100の場合を示している。
【0096】
図18に示されるように、フィルタ装置100Gにおいては、共振器間の磁気結合が強くなったことによって、減衰極が生じる周波数がフィルタ装置100と比べて通過帯域側に近くなっている。すなわち、非通過帯域における減衰の急峻度を高めることができている。
【0097】
なお、図には示していないが、共振器RC3と共振器RC4とを接続する配線パターンPT4についても、線幅W2と接続位置とを個別に調整してもよい。
【0098】
以上のように、各共振器間を接続する配線パターンの線幅によるインダクタンス値の調整と、配線パターンの接続位置による共振器間の磁気結合の調整とを個別に行なうことによって、設計の自由度を高めて、所望のフィルタ特性を実現することができる。
【0099】
なお、実施の形態2における「配線パターンPT2」および「配線パターンPT6」は、本開示における「第1部分」および「第2部分」にそれぞれ対応する。
【0100】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、通過帯域近傍の減衰特性をさらに向上させたフィルタ装置の構成について説明する。
【0101】
図19は、実施の形態3のフィルタ装置100Hの等価回路図である。フィルタ装置100Hは、図2で示したフィルタ装置100の等価回路における、入出力端に設けられるキャパシタC0,C5が除かれ、共振器RC3,RC4におけるインダクタL3B,L4BがインダクタL34Bとして共通化され、さらに共振器RC3,RC4がキャパシタC34によって結合された構成となっている。図19において、図2と重複する要素についての説明は繰り返さない。
【0102】
図20は、実施の形態3のフィルタ装置100Hの積層構造の一例を示す分解斜視図である。図20を参照して、フィルタ装置100Hにおいては、フィルタ装置100と同様に、複数の誘電体層LY1~LY12を有する本体110内に共振器RC1~RC4が構成されている。共振器RC1は、ビアV51A,V51Bおよびキャパシタ電極P12を含んで構成される。共振器RC2は、ビアV52A,V52Bおよびキャパシタ電極P19を含んで構成される。共振器RC3は、ビアV53A,V534Bおよびキャパシタ電極P13を含んで構成される。共振器RC4は、ビアV54A,V534Bおよびキャパシタ電極P18を含んで構成される。
【0103】
本体110の上面111(第1層LY1)には、フィルタ装置100Hの方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。また、本体110の下面112(第12層LY12)には、外部機器と接続するための外部端子(入力端子T1、出力端子T2および接地端子GND)が配置されている。
【0104】
入力端子T1は、ビアV50によって第11層LY11の平板電極P11に接続される。平板電極P11には、共振器RC1のビアV51Aが接続されている。ビアV51Aは、第2層LY2に設けられた共通電極PC11に接続される。また、共通電極PC11は、ビアV51Bによって、第10層LY10に設けられた平板電極PG11に接続される。平板電極PG11は、ビアVG4,VG5によって、第12層LY12に設けられた接地端子GNDに接続される。
【0105】
ビアV51Aは、第9層LY9においてキャパシタ電極P12に接続されており、さらに、第7層LY7においてキャパシタ電極P14に接続されている。キャパシタ電極P12の一部は、第10層LY10の平板電極PG11と対向している。キャパシタ電極P12と平板電極PG11とによって、図19におけるキャパシタC1が構成される。なお、ビアV51AおよびビアV51Bは、図19におけるインダクタL1AおよびインダクタL1Bにそれぞれ対応する。
【0106】
出力端子T2は、ビアV55によって第11層LY11の平板電極P20に接続される。平板電極P20には、共振器RC2のビアV52Aが接続されている。ビアV52Aは、第2層LY2の共通電極PC11に接続される。また、共通電極PC11は、ビアV52Bによって、第10層LY10に設けられた平板電極PG11に接続される。
【0107】
ビアV52Aは、第9層LY9においてキャパシタ電極P19に接続されており、さらに、第7層LY7においてキャパシタ電極P17に接続されている。キャパシタ電極P19の一部は、第10層LY10の平板電極PG11と対向している。キャパシタ電極P19と平板電極PG11とによって、図19におけるキャパシタC2が構成される。なお、ビアV52AおよびビアV52Bは、図19におけるインダクタL2AおよびインダクタL2Bにそれぞれ対応する。
【0108】
第7層LY7に設けられたキャパシタ電極P14は、第8層LY8に設けられた、共振器RC3のキャパシタ電極P13と対向している。キャパシタ電極P13およびキャパシタ電極P14によって、図19におけるキャパシタC13が構成される。
【0109】
キャパシタ電極P13は、ビアV53Aによって第2層LY2の共通電極PC11に接続される。また、共通電極PC11は、ビアV534Bによって第10層LY10の平板電極PG11に接続される。キャパシタ電極P13は、平板電極PG11と対向しており、キャパシタ電極P13と平板電極PG11とによって図19のキャパシタC3が構成される。
【0110】
ビアV53Aは、図19におけるインダクタL3Aに対応する。また、ビアV534Bは、図19におけるインダクタL34Bに対応する。
【0111】
第7層LY7のキャパシタ電極P17は、第8層LY8に設けられた、共振器RC4のキャパシタ電極P18と対向している。キャパシタ電極P17およびキャパシタ電極P18によって、図19におけるキャパシタC24が構成される。
【0112】
キャパシタ電極P18は、ビアV54Aによって第2層LY2の共通電極PC11に接続される。また、共通電極PC11は、上述の様にビアV534Bによって第10層LY10の平板電極PG11に接続される。キャパシタ電極P18は、平板電極PG11と対向しており、キャパシタ電極P18と平板電極PG11とによって図19のキャパシタC4が構成される。ビアV54Aは、図19におけるインダクタL4Aに対応する。
【0113】
第7層LY7のキャパシタ電極P14の一部およびキャパシタ電極P17の一部は、第6層LY6に設けられたキャパシタ電極P15と対向している。キャパシタ電極P14,P15,P17によって、図19におけるキャパシタC12が構成される。
【0114】
また、第6層LY6には、キャパシタ電極P16がさらに設けられている。キャパシタ電極P16は、第8層LY8のキャパシタ電極P13,P18と部分的に対向している。キャパシタ電極P13,P16,P18によって、図19におけるキャパシタC34が構成される。
【0115】
実施の形態3においては、各共振器においてキャパシタを介して接地端子GNDに接続されるビアV51A,V52A,V53A,V54Aを「第1ビア」と称する。また、各共振器においてキャパシタを介さずに接地端子GNDに接続されるビアV51B,V52B,V534Bを「第2ビア」と称する。
【0116】
図21は、フィルタ装置100Hにおける共通電極PC11の平面図である。共通電極PC11は、第1端部E11および第2端部E12を有する帯状の配線パターンによって構成されている。図21に示すように、共通電極PC11は、本体110の短辺(Y軸)に沿って延在する配線パターンPT11,PT14,PT16と、本体110の長辺(X軸)に沿って延在する配線パターンPT12,PT13,PT15とを含む。配線パターンPT12,PT13,PT15は、配線パターンPT11と配線パターンPT16との間に直列に接続されている。配線パターンPT14は、配線パターンPT13に接続されている。すなわち、共通電極PC11は、略E字形状を有している。
【0117】
共通電極PC11の第1端部E11(すなわち、配線パターンPT11の一方端)には、共振器RC1のビアV51Aが接続されている。配線パターンPT11の他方端には、共振器RC1のビアV51Bが接続されている。共通電極PC11の第2端部E12(すなわち、配線パターンPT16の一方端)には、共振器RC2のビアV52Aが接続されている。配線パターンPT16の他方端には、共振器RC2のビアV52Bが接続されている。
【0118】
配線パターンPT13において、配線パターンPT11側の端部には、共振器RC3のビアV53Aが接続されている。また、配線パターンPT13において、配線パターンPT16側の端部には、共振器RC4のビアV54Aが接続されている。
【0119】
配線パターンPT12は、配線パターンPT11と配線パターンPT13との間に接続されている。配線パターンPT15は、配線パターンPT13と配線パターンPT16との間に接続されている。
【0120】
配線パターンPT14の一方端には、共振器RC3,RC4において共通化されたビアV534Bが接続されている。配線パターンPT14の他方端は配線パターンPT13に接続されている。
【0121】
言い換えれば、共通電極PC11においては、第1端部E11から第2端部E12に向かって、共通電極PC11に沿ってビアV51A,ビアV51B,ビアV53A,ビアV54A,ビアV52B,ビアV52Aが、この順に共通電極PC11と接続されている。
【0122】
共通電極PC11が略E字形状を有しており、共振器RC3のビアV53Aが接続されている部分と共振器RC4のビアV54Aが接続されている部分とが隣り合うことによって、図5で示した実施の形態1のメアンダ形状の共通電極PCに比べて、共振器RC1のビアV51Aと共振器RC4のビアV54Aとの間における共通電極PC11に沿った最短距離が短くなる。すなわち、実施の形態1のフィルタ装置100よりも、共振器RC1と共振器RC4との間における磁気結合が強くなる。
【0123】
同様に、共振器RC2のビアV52Aと共振器RC3のビアV53Aとの間における共通電極PC11に沿った最短距離、および、共振器RC1のビアV51Aと共振器RC2のビアV52Aとの間における共通電極PC11に沿った最短距離も短くなる。これにより、共振器RC2と共振器RC3との間における磁気結合、および、共振器RC1と共振器RC2との間における磁気結合が強くなる。
【0124】
一般的に、4段の共振器を有するフィルタ装置においては、第1段目の共振器と第3段目の共振器との間の磁気結合、および、第2段目の共振器と第4段目の共振器との間の磁気結合を強めると、通過帯域よりも高周波数側の減衰量が増加することが知られている。また、第1段目の共振器と第4段目の共振器との間の磁気結合を強めると、通過帯域よりも低周波数側の減衰量が増加することが知られている。そのため、共通電極PC11を図21に示すような形状とすることによって、通過帯域近傍における減衰特性を向上させることができる。
【0125】
図22は、図19のフィルタ装置100Hの通過特性を説明するための図である。図22においては、横軸に周波数が示されており、縦軸には挿入損失が示されている。なお、図22においては、通過帯域よりも高周波数側の部分が示されている。図22における実線LN50は実施の形態3のフィルタ装置100Hの場合を示しており、破線LN51は実施の形態1のフィルタ装置100の場合を示している。
【0126】
図22に示されるように、フィルタ装置100H(実線LN50)の方がフィルタ装置100(破線LN51)に比べて、減衰極よりも高周波数側における挿入損失(減衰量)が大きくなっている。したがって、フィルタ装置100Hにおいては、実施の形態1の構成よりもさらに減衰特性を向上させることができる。
【0127】
なお、共通電極PC11のY軸の正方向の端部(配線パターンPT11,PT14,PT16の一方端)からの配線パターンPT12,PT15の距離LG11を変更して配線パターンPT12,PT15の線幅を調整すると、ビア間の最短距離は変わらないので、磁気結合の度合いを維持しつつ、共振器間のインダクタンス値を変更することができる。また、共通電極PC11のY軸の負方向の端部(配線パターンPT11,PT16の他方端)からの配線パターンPT12,PT15の距離LG12を変更して配線パターンPT12,PT15の線幅を調整すると、ビア間の最短距離が変化するので、磁気結合の強度を変化させるとともに、共振器間のインダクタンス値を調整することができる。
【0128】
また、ビアV53AとビアV54Aとの間の距離LG13を短くすると、共振器RC1と共振器RC4との距離、共振器RC2と共振器RC3との距離、および共振器RC3と共振器RC4との距離を短くできるので、これらの共振器間の磁気結合を強くすることができる。一方で、共振器RC1と共振器RC3との距離、および共振器RC2と共振器RC4との距離は長くなるため、これらの共振器間の磁気結合は弱まり、入出力端のインピーダンスが変化する。このインピーダンスの変化については、たとえば共振器間のキャパシタ(図19のキャパシタC13,C24)の値を調整することによって整合させることができる。
【0129】
(変形例5)
図23は、変形例5のフィルタ装置100H1における共通電極PC11Aの平面図である。フィルタ装置100H1においては、共振器RC3,RC4について、共通電極PC11Aと平板電極PG11とを接続するビアが個別に配置された構成となっている。
【0130】
より具体的には、フィルタ装置100H1においては、図21における配線パターンPT13,PT14が1つの配線パターンP134として構成されており、共振器RC3,RC4におけるインダクタが1つのインダクタとして共通化されず、ビアV53Aに対してはビアV53Bが配置され、ビアV54Aに対してはビアV54Bが配置されている。
【0131】
フィルタ装置100H1のような構成においては、フィルタ装置100Hと比べて共振器RC3と共振器RC4との間の磁気結合が弱くなるので、通過帯域に近い減衰極の減衰量は増加する一方で通過帯域幅はやや狭くなる。フィルタ装置100Hおよびフィルタ装置100H1のいずれの構成を採用するかについては、所望の減衰特性および通過帯域幅を考慮して適宜選択される。
【0132】
(変形例6)
図24は、変形例6のフィルタ装置100H2における共通電極PC11Bの平面図である。共通電極PC11Bは、本体110の短辺(Y軸)に沿って延在する配線パターンPT11,PT16,PT17,PT18と、本体110の長辺(X軸)に沿って延在する配線パターンPT12,PT13,PT15とを含む。配線パターンPT12は、配線パターンPT11と配線パターンPT17との間に接続されている。配線パターンPT13は、配線パターンPT17と配線パターンPT18との間に接続されている。配線パターンPT15は、配線パターンPT18と配線パターンPT16との間に接続されている。
【0133】
フィルタ装置100H2においては、図23に示した変形例5のフィルタ装置100H1と比べると、共振器RC3におけるビアV53Aの位置とビアV53Bの位置とが入れ替えられ、共振器RC4におけるビアV54Aの位置とビアV54Bの位置とが入れ替えられた構成になっている。さらに、フィルタ装置100H2においては、共振器RC1におけるビアV51Bが共振器RC3におけるビアV53Bと共通化されて削除され、共振器RC2におけるビアV52Bが共振器RC4におけるビアV54Bと共通化されて削除されている。
【0134】
すなわち、配線パターンPT11,PT16,PT17,PT18のY軸の負方向の端部に、キャパシタを介して接地端子GNDに接続されるビアV51A,V52A,V53A,V54Aがそれぞれ接続されており、配線パターンPT17,PT18のY軸の正方向の端部に、キャパシタを介さずに接地端子GNDに接続されるビアV53B,V54Bがそれぞれ接続されている。
【0135】
このような構成においては、各共振器において配線パターンとビアによって構成される閉ループのコイルで生じる磁力線の方向が同じ方向となるため、変形例5のフィルタ装置100H1の構成よりも、共振器RC1と共振器RC3との間の磁気結合、および、共振器RC2と共振器RC4との間の磁気結合が強くなる。そのため、通過帯域よりも高周波数側の減衰量を大きくすることができる。
【0136】
なお、共振器RC1と共振器RC3との間、および、共振器RC2と共振器RC4との間において、フィルタ装置100H2のようにビアを同じ配置にする構成を採用するか、フィルタ装置100H1のようにビアを互いに逆に配置する構成を採用するかは、たとえば、フィルタ装置全体のサイズ等によって基づいて適宜選択される。
【0137】
具体的には、フィルタ装置のサイズ、特にZ軸方向の寸法が比較的大きい場合には、ビアの長さが長くなり各共振器におけるコイルの空芯径が大きくなる。そのため、変形例6のフィルタ装置100H2のように共振器のビアを同じ配置とすると、磁気結合が過剰となるおそれがある。このような場合には、変形例5のフィルタ装置100H1のように、ビアを互いに逆に配置する構成を採用して、磁気結合を弱めることで、所望のフィルタ特性を実現することが好ましい。
【0138】
一方、フィルタ装置のサイズ、特にZ軸方向の寸法が比較的小さい場合には、ビアの長さが短くなるため、共振器間の磁気結合が弱くなりやすい。そのため、変形例6のフィルタ装置100H2のように共振器のビアを同じ配置として、磁気結合を強めることで、所望のフィルタ特性を実現することが好ましい。
【0139】
なお、変形例6のフィルタ装置100H2においても、配線パターンPT12,PT13,PT15の線幅を調整することによって、各共振器間の結合度合いを調整することができる。
【0140】
[実施の形態4]
実施の形態4においては、フィルタ装置が収容される通信機器の筐体などに配置された外部シールドによるフィルタ特性の影響を低減するための構成について説明する。
【0141】
上述した実施の形態に開示した各フィルタ装置においては、本体110の最上部側の第2層LY2に共通電極が配置されている。この共通電極は、共振器内に流れる電流の通過経路となっているため、フィルタ装置の上面側に外部シールドが存在すると、当該外部シールドとの容量結合が生じてしまい、フィルタ特性の変動の要因となり得る。
【0142】
この外部シールドの影響を低減する手法として、フィルタ装置と外部シールドとの間の距離を長くすることが考えられるが、この場合には、当該離間距離の確保のために通信機器本体の小型化を阻害する要因になり得る。
【0143】
実施の形態4のフィルタ装置においては、本体110において、共通電極よりもさらに上面側の層に、接地端子GNDに接続された内部シールドが配置される。これによって、外部シールドによるフィルタ特性の変動を抑制することができる。
【0144】
図25は、実施の形態4のフィルタ装置100Iの積層構造の一例を示す分解斜視図である。図25を参照して、フィルタ装置100Iにおいても、フィルタ装置100と同様に、複数の誘電体層LY1~LY12を有する本体110内に共振器RC1~RC4が構成されている。なお、フィルタ装置100Iは、図19に示した実施の形態3のフィルタ装置100Hの等価回路におけるキャパシタC34が除かれた構成となっている。
【0145】
フィルタ装置100Iにおいて、共振器RC1は、ビアV61A,V61Bおよびキャパシタ電極P21を含んで構成される。共振器RC2は、ビアV62A,V62Bおよびキャパシタ電極P28を含んで構成される。共振器RC3は、ビアV63A,V634Bおよびキャパシタ電極P22を含んで構成される。共振器RC4は、ビアV64A,V634Bおよびキャパシタ電極P26を含んで構成される。
【0146】
本体110の上面111(第1層LY1)には、フィルタ装置100Iの方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。また、本体110の下面112(第12層LY12)には、外部機器と接続するための外部端子(入力端子T1、出力端子T2および接地端子GND)が配置されている。
【0147】
入力端子T1は、ビアV60によって第11層LY11のキャパシタ電極P21に接続される。キャパシタ電極P21の一部は、第10層LY10に設けられた平板電極PG21と対向している。キャパシタ電極P21と平板電極PG21とによって、図19におけるキャパシタC1が構成される。
【0148】
キャパシタ電極P21には、共振器RC1のビアV61Aが接続されている。ビアV61Aは、第3層LY3に設けられた共通電極PC21および第4層LY4に設けられた共通電極PC22に接続される。また、共通電極PC21,PC22は、ビアV61Bによって、第10層LY10に設けられた平板電極PG21に接続される。平板電極PG21は、ビアVG4によって、第12層LY12の接地端子GNDに接続される。また、ビアVG4は、第11層LY11に設けられた平板電極P27にも接続されている。平板電極P27は、ビアVG4,VG5によって接地端子GNDに接続される。
【0149】
ビアV61Aは、第8層LY8においてキャパシタ電極P23に接続されている。キャパシタ電極P23の一部は、第9層LY9のキャパシタ電極P22と対向している。キャパシタ電極P22とキャパシタ電極P23とによって、図19におけるキャパシタC13が構成される。なお、ビアV61AおよびビアV61Bは、図19におけるインダクタL1AおよびインダクタL1Bにそれぞれ対応する。
【0150】
出力端子T2は、ビアV65によって第11層LY11のキャパシタ電極P28に接続される。キャパシタ電極P28の一部は、第10層LY10に設けられた平板電極PG21と対向している。キャパシタ電極P28と平板電極PG21とによって、図19におけるキャパシタC2が構成される。
【0151】
キャパシタ電極P28には、共振器RC2のビアV62Aが接続されている。ビアV62Aは、第3層LY3に設けられた共通電極PC21および第4層LY4に設けられた共通電極PC23に接続される。また、共通電極PC21,PC23は、ビアV62Bによって、第10層LY10の平板電極PG21に接続される。
【0152】
また、ビアV62Aは、第8層LY8においてキャパシタ電極P25に接続されている。キャパシタ電極P25の一部は、第9層LY9のキャパシタ電極P26と対向している。キャパシタ電極P25とキャパシタ電極P26とによって、図19におけるキャパシタC24が構成される。なお、ビアV62AおよびビアV62Bは、図19におけるインダクタL2AおよびインダクタL2Bにそれぞれ対応する。
【0153】
第9層LY9のキャパシタ電極P22は、ビアV63Aによって第3層LY3の共通電極PC21および第4層LY4の共通電極PC22に接続される。また、共通電極PC21は、ビアV634Bによって第10層LY10の平板電極PG21に接続される。ビアV63Aは、図19におけるインダクタL3Aに対応する。また、ビアV634Bは、図19におけるインダクタL34Bに対応する。
【0154】
第9層LY9のキャパシタ電極P26は、ビアV64Aによって第3層LY3の共通電極PC21および第4層LY4の共通電極PC23に接続される。また、共通電極PC21は、上述の様にビアV634Bによって第10層LY10の平板電極PG21に接続される。ビアV64Aは、図19におけるインダクタL4Aに対応する。
【0155】
また、第7層LY7には、キャパシタ電極P24がさらに設けられている。キャパシタ電極P24は、第8層LY8のキャパシタ電極P23,P25と部分的に対向している。キャパシタ電極P23~P25によって、図19におけるキャパシタC12が構成される。
【0156】
実施の形態4のフィルタ装置100Iにおいては、第2層LY2に平板電極PG22が設けられている。平板電極PG22は、少なくとも第3層LY3の共通電極PC21を覆っている。言い換えれば、本体110を積層方向(Z軸方向)から平面視した場合に、平板電極PG22は共通電極PC21と重なっている。
【0157】
平板電極PG22は、ビアV61B,V62B,V634Bを介して平板電極PG21(すなわち、接地端子GND)に接続されている。平板電極PG22は、共通電極PC21に対する内部シールド部材として機能する。平板電極PG22によって、共通電極PC21がフィルタ装置外部の外部シールド(図示せず)と容量結合することを防止できる。なお、図25の例においては、平板電極PG22は、3本のビアV61B,V62B,V634Bによって、平板電極PG21(すなわち、接地端子GND)と接続されているが、平板電極PG21と平板電極PG22とを接続するビアの数が多いことによって、平板電極PG22の電位がより安定化する。
【0158】
なお、第4層LY4における共通電極PC22,PC23は、入出力端におけるQ値を向上させるために設けられている。共通電極PC22,PC23が配置されることによって、挿入損失が向上する。
【0159】
図26は、図25のフィルタ装置100Iの通過特性を示す図である。図26においては、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失および反射損失が示されている。図26においては、実線LN60,LN70は実施の形態4のフィルタ装置100Iの場合の挿入損失および反射損失をそれぞれ示しており、破線LN61,LN71は内部シールドを設けない場合の挿入損失および反射損失をそれぞれ示している。
【0160】
図26を参照して、通過帯域内における挿入損失については、内部シールドがある場合および内部シールドがない場合のいずれも、ほぼ同程度の値となっている。しかしながら、特に通過帯域よりも低周波数側については、内部シールドのあるフィルタ装置100Iの挿入損失が大きくなっており、減衰特性が改善している。また、通過帯域内における反射損失については、フィルタ装置100Iの方が、内部シールドのない場合に比べて低減している。したがって、内部シールドが設けられることによって、フィルタ特性の低下が抑制されていることがわかる。
【0161】
図27は、共通電極の有無、および、内部シールドの有無による、外部シールドのフィルタ特性への影響を説明するための図である。図27においては、ケース1~3において、内部シールドの有無による通過帯域における挿入損失の劣化度、および、外部シールドの有無による高周波数側の減衰量が20dBとなるポイント(以下、「減衰ポイント」と称する。)の周波数を示している。
【0162】
ケース1は、図6の比較例のように、共通電極が設けられておらず各共振器が独立しており、かつ、内部シールドを有さない場合である。また、ケース2は共通電極を有しているが内部シールドは有していない場合であり、ケース3は実施の形態4のフィルタ装置100Iのように、共通電極および内部シールドを有する場合である。
【0163】
図27を参照して、通過帯域における挿入損失については、内部シールドを有していない場合(ケース1,ケース2)では0.30dB程度の低下となっているが、内部シールドを有するケース3においては、0.06dB程度の低下に改善されている。
【0164】
また、高周波数側の減衰ポイントの周波数については、ケース1では、外部シールドを有する場合には、外部シールドを有していない場合に比べて減衰ポイントの周波数が4GHz以上低くなっている。一方で、ケース2およびケース3では、減衰ポイントの周波数が1~2GHzほど高くなっている。このように、減衰ポイントについては、内部シールドの有無による差異はほとんど見られないが、共通電極が用いられることによって減衰ポイントの変動を抑制することができる。
【0165】
このように、共通電極および内部シールドを備えた実施の形態4のフィルタ装置100Iにおいては、外部シールドによるフィルタ特性の低下を抑制することができる。
【0166】
なお、実施の形態4において、共通電極PC21は矩形形状の平板電極であってもよいし、上述の実施の形態および変形例のような形状であってもよい。また、図25においては、内部シールドとして上面側のみに平板電極PG22が配置された例が示されているが、それに加えて、本体110の側面部分にも内部シールドが配置されてもよい。
【0167】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0168】
10 通信装置、12 アンテナ、20 高周波フロントエンド回路、22,28 バンドパスフィルタ、24 増幅器、26 減衰器、30 ミキサ、32 局部発振器、40 D/Aコンバータ、50 RF回路、100,100A~100I,200 フィルタ装置、110 本体、C0~C5,C12,C13,C24,C34 キャパシタ、DM 方向性マーク、E1,E2 端部、GND 接地端子、L1A~L4A,L1B~L4B,L34B インダクタ、LY1~LY12 誘電体層、N1A~N4A,N1B~N4B 接続ノード、P1,P4~P6,P9~P11,P20,P27,PG1,PG2,PG11,PG21,PG22 平板電極、P2,P3,P7,P8,P12~P19,P21~P26,P28 キャパシタ電極、PC,PC1~PC4,PC11,PC21~PC23 共通電極、PD1~PD4 配線電極、PT1~PT7,PT11~PT16,PT134 配線パターン、RC1~RC4 共振器、T1 入力端子、T2 出力端子、V0,V1A~V4A,V1B~V4B,V5,V10A~V12A,V10B,V11B,V20A~V23A,V20B~V22B,V30A~V34A,V30B~V34B,V40A~V43A,V40B~V43B,V50,V51A~V54A,V51B~V54B,V534B,V55,V60,V61A~V64A,V61B,V62B,V634B,V65,VG1~VG5 ビア。
図1
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