(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/023 20120101AFI20240305BHJP
F16H 3/089 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F16H57/023
F16H3/089
(21)【出願番号】P 2022553796
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033873
(87)【国際公開番号】W WO2022070912
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020165064
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】貴田 英治
(72)【発明者】
【氏名】羽原 祐樹
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225363(JP,A)
【文献】特開2010-274702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/023
F16H 3/089
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸上に配置されたロータを備え、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
それぞれが前記車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、
前記変速機から伝達される回転を、一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
パーキングギヤを備えたパーキング機構と、
前記回転電機、前記変速機、前記差動歯車機構、及び前記パーキングギヤを収容するケースと、を備え、
前記変速機は、前記第1軸上に配置された、第1ギヤ及び第2ギヤと、前記第1軸に平行な第2軸上に配置された、第3ギヤ、第4ギヤ、及び出力ギヤと、を備え、
前記第1ギヤと前記第3ギヤとが互いに噛み合うと共に、前記第2ギヤと前記第4ギヤとが互いに噛み合い、
前記差動歯車機構は、前記第1軸及び前記第2軸に平行な第3軸上に配置されて、前記出力ギヤに噛み合う差動入力ギヤを備え、
前記第1軸に平行な方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤが、前記ロータに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記パーキングギヤが、前記第2軸上であって、前記第3ギヤ、前記第4ギヤ、及び前記出力ギヤに対して前記軸方向第2側に配置され
、
前記ケースは、第1ケース部と、当該第1ケース部に対して前記軸方向第1側から接合された第2ケース部と、を備え、
前記パーキング機構は、前記パーキングギヤに対して選択的に係合する係合機構と、前記係合機構を駆動する駆動機構と、を備え、
前記駆動機構の全体が、前記第1ケース部と前記第2ケース部との接合部に対して前記軸方向第2側に配置され、
前記ケースに、前記回転電機が収容された第1収容室と、前記変速機及び前記パーキングギヤが収容された第2収容室と、が形成され、
前記第1ケース部は、前記第1収容室と前記第2収容室との前記軸方向の間に配置された区画部と、前記第2収容室の周囲を囲むように前記区画部から前記軸方向第1側に延在する周壁部と、前記周壁部に連結されて前記駆動機構を支持する支持部と、を備え、
前記周壁部における前記支持部よりも前記軸方向第2側の部分の厚みが、前記周壁部における前記支持部よりも前記軸方向第1側の部分の厚みよりも大きい、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記パーキング機構は、前記パーキングギヤに対して選択的に係合する係合機構と、前記係合機構を駆動する駆動機構と、を備え、
前記ケースは、前記駆動機構が固定される被固定部を備え、
前記被固定部は、前記ケースの外部に向けて突出するように形成され、
前記被固定部の少なくとも一部が、前記第3ギヤ及び前記第4ギヤのうちの前記軸方向第2側に位置する方よりも前記軸方向第2側に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記変速機は、前記第1軸上に配置された第1軸部材と、前記第2軸上に配置された第2軸部材と、を備え、
前記ロータは、前記第1軸部材と一体的に回転するように連結され、
前記出力ギヤ及び前記パーキングギヤは、前記第2軸部材と一体的に回転するように連結され、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤは、前記第1軸部材と一体的に回転するように連結され、
前記第3ギヤ及び前記第4ギヤは、前記第2軸部材に対して相対回転可能に支持され、
前記第3ギヤ及び前記第4ギヤのいずれか一方を前記第2軸部材に対して選択的に連結する噛み合い式係合装置が、前記第2軸上であって、前記第3ギヤと前記第4ギヤとの前記軸方向の間に配置されている、請求項1
又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記差動歯車機構は、前記差動入力ギヤの回転を一対の前記出力部材に分配する差動ギヤユニットを備え、
前記第3ギヤ及び前記第4ギヤは、前記出力ギヤに対して、前記軸方向第1側及び前記軸方向第2側のいずれか一方に配置され、
前記差動ギヤユニットは、前記第3ギヤ及び前記第4ギヤの少なくとも一方と前記軸方向の配置領域が重なるように配置されている、請求項1から
3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、それぞれが車輪に駆動連結される一対の出力部材と、回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、変速機から伝達される回転を、一対の出力部材に分配する差動歯車機構と、パーキングギヤを備えたパーキング機構と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置では、変速機は、回転電機(1)と同軸に配置された、第1ギヤ(3)及び第2ギヤ(7)と、回転電機(1)とは別軸に配置された、第3ギヤ(12)、第4ギヤ(10)、及び出力ギヤ(11)と、を備えている。そして、パーキングギヤ(9)は、第3ギヤ(12)、第4ギヤ(10)、及び出力ギヤ(11)と同軸に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第108799440号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、パーキングギヤ(9)は、アクチュエータを含む駆動機構により駆動される係合機構が選択的に係合されることで、回転不能なロック状態と回転自在な非ロック状態とに切り替え可能に構成されている。
【0006】
特許文献1には示されていないが、上記のパーキング機構の駆動機構は、回転電機(1)、変速機、差動歯車機構(14)、及びパーキングギヤ(9)を収容するケースにより支持されることが一般的である。その場合、ケースにおける駆動機構を支持する部分の厚みを大きくして、ケースの剛性を確保することが行われる。しかし、そのような方法では、ケースの重量及びコストの増加を招く可能性がある点で不利であった。
【0007】
そこで、ケースの重量及びコストを小さく抑えた車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
第1軸上に配置されたロータを備え、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
それぞれが前記車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、
前記変速機から伝達される回転を、一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
パーキングギヤを備えたパーキング機構と、
前記回転電機、前記変速機、前記差動歯車機構、及び前記パーキングギヤを収容するケースと、を備え、
前記変速機は、前記第1軸上に配置された、第1ギヤ及び第2ギヤと、前記第1軸に平行な第2軸上に配置された、第3ギヤ、第4ギヤ、及び出力ギヤと、を備え、
前記第1ギヤと前記第3ギヤとが互いに噛み合うと共に、前記第2ギヤと前記第4ギヤとが互いに噛み合い、
前記差動歯車機構は、前記第1軸及び前記第2軸に平行な第3軸上に配置されて、前記出力ギヤに噛み合う差動入力ギヤを備え、
前記第1軸に平行な方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤが、前記ロータに対して前記軸方向第1側に配置され、
前記パーキングギヤが、前記第2軸上であって、前記第3ギヤ、前記第4ギヤ、及び前記出力ギヤに対して前記軸方向第2側に配置されている点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、パーキングギヤを備えたパーキング機構を、回転電機に対して軸方向に近付けて配置することができる。一般的に、回転電機はケースに支持されており、当該ケースにおける回転電機を支持する部分の剛性は十分に確保されている。そのため、パーキング機構を回転電機に近付けて配置することで、パーキング機構を適切に支持するためにケースの厚みを大きくする領域を小さく抑えることができる。したがって、ケースの重量及びコストを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【
図2】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の要部拡大断面図
【
図3】第2の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機MGと、変速機1と、差動歯車機構2と、一対の出力部材3と、パーキング機構4と、ケース9と、を備えている。
【0012】
回転電機MGは、車輪Wの駆動力源として機能する。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、回転電機MGは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示を省略)と電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機MGは、車輪Wの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0013】
回転電機MGは、ステータSTとロータRTとを備えている。ステータSTは、非回転部材(ここでは、ケース9)に固定されている。ロータRTは、ステータSTに対して回転自在に支持されている。ロータRTは、第1軸X1に配置されている。つまり、ロータRTは、第1軸X1を回転軸心として回転するように配置されている。
【0014】
以下の説明では、第1軸X1に平行な方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、ロータRT等の回転部材の回転軸心に直交する方向を、各回転軸心を基準とした「径方向R」とする。なお、どの回転軸心を基準とするかを区別する必要がない場合やどの回転軸心を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0015】
変速機1は、回転電機MGの側から伝達される回転を変速する装置である。本実施形態では、変速機1は、回転電機MGのロータRTの回転を変速して、差動歯車機構2に伝達する。
【0016】
変速機1は、第1ギヤ11と、第2ギヤ12と、第3ギヤ13と、第4ギヤ14と、出力ギヤ15と、を備えている。本実施形態では、変速機1は、第1軸部材16と、第2軸部材17と、噛み合い式係合装置18と、を更に備えている。
【0017】
第1ギヤ11及び第2ギヤ12は、第1軸X1上に配置されている。つまり、第1ギヤ11及び第2ギヤ12は、第1軸X1を回転軸心として回転するように配置されている。本実施形態では、第1軸部材16も、第1軸X1上に配置されている。第1軸部材16は、第1軸X1に沿って延在するように形成された軸部材である。本実施形態では、第1ギヤ11及び第2ギヤ12は、第1軸部材16と一体的に回転するように連結されている。
【0018】
第1ギヤ11及び第2ギヤ12は、回転電機MGのロータRTに対して軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、第1ギヤ11及び第2ギヤ12は、ロータRTと一体的に回転するように連結されている。また、本実施形態では、第1ギヤ11は、第2ギヤ12よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0019】
第3ギヤ13、第4ギヤ14、及び出力ギヤ15は、第1軸X1に平行な第2軸X2上に配置されている。つまり、第3ギヤ13、第4ギヤ14、及び出力ギヤ15は、第2軸X2を回転軸心として回転するように配置されている。本実施形態では、第2軸部材17も、第2軸X2上に配置されている。第2軸部材17は、第2軸X2に沿って延在するように形成された軸部材である。
【0020】
本実施形態では、第3ギヤ13及び第4ギヤ14は、第2軸部材17に対して相対回転可能に支持されている。また、出力ギヤ15は、第2軸部材17と一体的に回転するように連結されている。
図2に示す例では、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のそれぞれは、軸受を介して、第2軸部材17に対して相対回転可能に支持されている。また、出力ギヤ15は、第2軸部材17と一体的に形成されている。
【0021】
また、本実施形態では、第3ギヤ13及び第4ギヤ14は、出力ギヤ15に対して、軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2のいずれか一方に配置されている。つまり、本実施形態では、第3ギヤ13及び第4ギヤ14の軸方向Lの間には、出力ギヤ15が配置されていない。図示の例では、第3ギヤ13及び第4ギヤ14は、出力ギヤ15に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0022】
図1に示すように、第1ギヤ11と第3ギヤ13とは、互いに噛み合うように配置されている。そして、第2ギヤ12と第4ギヤ14とは、互いに噛み合うように配置されている。本実施形態では、第1ギヤ11は、第2ギヤ12よりも小径に形成されている。また、第3ギヤ13は、第4ギヤ14よりも大径に形成されている。ここで、上述したように、第1ギヤ11と第2ギヤ12とが同軸に配置されていると共に、第3ギヤ13と第4ギヤ14とが同軸に配置されている。そのため、本実施形態では、第1ギヤ11に対する第3ギヤ13の歯数比は、第2ギヤ12に対する第4ギヤ14の歯数比よりも大きい。
【0023】
噛み合い式係合装置18は、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のいずれか一方を第2軸部材17に対して選択的に連結する装置である。上述したように、本実施形態では、第1ギヤ11に対する第3ギヤ13の歯数比は、第2ギヤ12に対する第4ギヤ14の歯数比よりも大きい。そのため、噛み合い式係合装置18が第3ギヤ13を第2軸部材17に連結させた場合には、比較的変速比が大きい変速段である低速段が形成される。一方、噛み合い式係合装置18が第4ギヤ14を第2軸部材17に連結させた場合には、比較的変速比が小さい変速段である高速段が形成される。また、本実施形態では、噛み合い式係合装置18は、いずれの変速段も形成しないニュートラル状態に切り替え可能に構成されている。噛み合い式係合装置18がニュートラル状態の場合、変速機1が回転電機MGと差動歯車機構2との間での回転の伝達が行われない状態、つまり、回転電機MGと一対の車輪Wとの間での駆動力の伝達が行われない状態となる。
【0024】
差動歯車機構2は、変速機1から伝達される回転を、一対の出力部材3に分配するように構成されている。差動歯車機構2は、差動入力ギヤ21を備えている。本実施形態では、差動歯車機構2は、差動ケース22と、差動ギヤユニット23と、を更に備えている。
【0025】
差動入力ギヤ21は、第1軸X1及び第2軸X2に平行な第3軸X3上に配置されている。つまり、差動入力ギヤ21は、第3軸X3を回転軸心として回転するように配置されている。差動入力ギヤ21は、出力ギヤ15に噛み合っている。
【0026】
差動ケース22は、差動ギヤユニット23を収容する中空の部材である。差動ケース22は、差動入力ギヤ21と一体的に回転するように連結されている。
【0027】
差動ギヤユニット23は、差動入力ギヤ21の回転を一対の出力部材3に分配するように構成されている。本実施形態では、差動ギヤユニット23は、第3軸X3を基準とした径方向Rに間隔を空けて配置された一対のピニオンギヤと、当該一対のピニオンギヤに噛み合うように軸方向Lに間隔を空けて第3軸X3上に配置された一対のサイドギヤと、を備えている。
【0028】
本実施形態では、差動ギヤユニット23は、第3ギヤ13及び第4ギヤ14の少なくとも一方と軸方向Lの配置領域が重なるように配置されている。図示の例では、出力ギヤ15よりも軸方向第2側L2に第4ギヤ14が配置され、第4ギヤ14よりも軸方向第2側L2に第3ギヤ13が配置されている。そして、差動ギヤユニット23が、第4ギヤ14と軸方向Lの配置領域が重なるように、出力ギヤ15に噛み合う差動入力ギヤ21に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0029】
このように、本実施形態では、差動歯車機構2は、差動入力ギヤ21の回転を一対の出力部材3に分配する差動ギヤユニット23を備え、
第3ギヤ13及び第4ギヤ14は、出力ギヤ15に対して、軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2のいずれか一方に配置され、
差動ギヤユニット23は、第3ギヤ13及び第4ギヤ14の少なくとも一方と軸方向Lの配置領域が重なるように配置されている。
【0030】
この構成によれば、差動ギヤユニット23が、第3ギヤ13及び第4ギヤ14の双方と軸方向Lの配置領域が重ならないように配置された構成と比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さくすることができる。
【0031】
一対の出力部材3のそれぞれは、車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、一対の出力部材3は、軸方向Lに間隔を空けて、第3軸X3上に配置されている。また、本実施形態では、一対の出力部材3のそれぞれは、差動ギヤユニット23を構成する上記のサイドギヤと一体的に回転するように連結されている。そして、一対の出力部材3のそれぞれは、車輪Wに駆動連結されたドライブシャフトDSと一体的に回転するように連結されている。
【0032】
パーキング機構4は、パーキングギヤ41を備えている。パーキングギヤ41は、第2軸X2上に配置されている。そして、パーキングギヤ41は、第3ギヤ13、第4ギヤ14、及び出力ギヤ15に対して軸方向第2側L2に配置されている。上述したように、第3ギヤ13に噛み合う第1ギヤ11、及び第4ギヤ14に噛み合う第2ギヤ12は、回転電機MGのロータRTに対して軸方向第1側L1に配置されている。そのため、パーキングギヤ41は、ロータRTと第1ギヤ11及び第2ギヤ12との軸方向Lの間に配置されている。つまり、パーキングギヤ41は、回転電機MGに対して軸方向Lに隣接して配置されている。本実施形態では、パーキングギヤ41は、第2軸部材17と一体的に回転するように連結されている。
【0033】
ケース9は、回転電機MG、変速機1、差動歯車機構2、及びパーキングギヤ41を収容している。本実施形態では、ケース9は、一対の出力部材3も収容している。
【0034】
図2に示すように、本実施形態では、噛み合い式係合装置18は、支持部材181と、切替部材182と、第1係合部183と、第2係合部184と、を備えている。支持部材181、切替部材182、第1係合部183、及び第2係合部184は、第2軸X2上に配置されている。
【0035】
支持部材181は、第2軸部材17から径方向Rの外側に突出するように形成された部材である。支持部材181は、第2軸部材17と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、支持部材181は、スプライン係合により第2軸部材17に連結されている。
【0036】
切替部材182は、支持部材181の径方向Rの外側を覆う筒状に形成されている。そして、切替部材182の内周部には内歯が形成されており、この内歯に対応する外歯が支持部材181に形成されている。これらの内歯及び外歯は、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合している。こうして、切替部材182は、支持部材181と一体的に回転すると共に、支持部材181に対して軸方向Lに相対的に移動するように支持されている。つまり、本実施形態では、切替部材182は、ドグクラッチのスリーブである。
【0037】
第1係合部183は、第3ギヤ13と一体的に回転するように連結されている。第1係合部183は、支持部材181に対して軸方向第2側L2に配置されている。第1係合部183は、第2軸X2を軸心とする筒状に形成されている。そして、第1係合部183の外周部には、切替部材182の内歯に対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する外歯が形成されている。
【0038】
第2係合部184は、第4ギヤ14と一体的に回転するように連結されている。第2係合部184は、支持部材181に対して軸方向第1側L1に配置されている。第2係合部184は、第2軸X2を軸心とする筒状に形成されている。そして、第2係合部184の外周部には、切替部材182の内歯に対して軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する外歯が形成されている。
【0039】
切替部材182が支持部材181に対して軸方向第2側L2に相対移動して、切替部材182の内歯と第1係合部183の外歯とが互い係合した場合、第3ギヤ13が第2軸部材17に連結した状態、つまり、上記の低速段が形成された状態となる。一方、切替部材182が支持部材181に対して軸方向第1側L1に相対移動して、切替部材182の内歯と第2係合部184の外歯とが互い係合した場合、第4ギヤ14が第2軸部材17に連結した状態、つまり、上記の高速段が形成された状態となる。また、切替部材182の内歯が、第1係合部183の外歯及び第2係合部184の外歯のいずれにも係合していない場合には、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のいずれも第2軸部材17に連結していない状態、つまり、上記のニュートラル状態となる。
【0040】
本実施形態では、噛み合い式係合装置18は、第3ギヤ13と第4ギヤ14との軸方向Lの間に配置されている。つまり、本実施形態では、支持部材181、切替部材182、第1係合部183、及び第2係合部184が、第3ギヤ13と第4ギヤ14との軸方向Lの間に配置されている。そのため、本実施形態では、第1係合部183及び第2係合部184のそれぞれに切替部材を設けることなく、上述したように、1つの切替部材182を第1係合部183及び第2係合部184のいずれか一方に係合させる構成とすることができる。つまり、第1係合部183と第2係合部184とで、切替部材182を共用させることができる。これにより、第1係合部183及び第2係合部184のそれぞれに切替部材を設けた構成と比べて、噛み合い式係合装置18の大型化を抑制することができる。
【0041】
このように、本実施形態では、変速機1は、第1軸X1上に配置された第1軸部材16と、第2軸X2上に配置された第2軸部材17と、を備え、
ロータRTは、第1軸部材16と一体的に回転するように連結され、
出力ギヤ15及びパーキングギヤ41は、第2軸部材17と一体的に回転するように連結され、
第1ギヤ11及び第2ギヤ12は、第1軸部材16と一体的に回転するように連結され、
第3ギヤ13及び第4ギヤ14は、第2軸部材17に対して相対回転可能に支持され、
第3ギヤ13及び第4ギヤ14のいずれか一方を第2軸部材17に対して選択的に連結する噛み合い式係合装置18が、第2軸X2上であって、第3ギヤ13と第4ギヤ14との軸方向Lの間に配置されている。
【0042】
この構成によれば、回転電機MGから一対の出力部材3までの動力伝達経路において、上流側に配置された第1ギヤ11及び第2ギヤ12が、第1軸部材16と一体的に回転する固定ギヤであり、下流側に配置された第3ギヤ13及び第4ギヤ14が、第2軸部材17に対して相対的に回転する遊転ギヤである。一般的に、遊転ギヤのように相対回転部に軸受等を配置する必要がない分、固定ギヤの方が小径化し易いため、第1ギヤ11及び第2ギヤ12を小径化することが容易となる。これにより、回転電機MGから一対の出力部材3までの動力伝達経路の減速比を大きく確保しつつ、第3ギヤ13及び第4ギヤ14も小径化することができる。したがって、車両用駆動装置100の径方向Rの寸法を小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、噛み合い式係合装置18が、第3ギヤ13と第4ギヤ14との軸方向Lの間に配置されている。これにより、噛み合い式係合装置18の大型化を抑制しつつ、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のいずれか一方を第2軸部材17に対して選択的に連結する構成を実現することができる。
【0043】
図2に示すように、本実施形態では、パーキング機構4は、係合機構42と、駆動機構43と、を更に備えている。
【0044】
係合機構42は、パーキングギヤ41に対して選択的に係合するように構成されている。本実施形態では、係合機構42は、係合部材421を備えている。係合部材421は、パーキングギヤ41に係合する係合姿勢と、パーキングギヤ41に係合しない非係合姿勢との間で姿勢が変化するように、軸方向Lに沿う軸を中心として揺動する。
【0045】
駆動機構43は、係合機構42を駆動するように構成されている。本実施形態では、駆動機構43は、駆動装置431と、軸部材432と、連結部材433と、押圧部材434と、を備えている。
【0046】
駆動装置431は、軸部材432を当該軸部材432の軸心を中心として回動させるモータ等のアクチュエータを含む。軸部材432は、駆動装置431から特定の径方向R(
図2における上下方向)に沿って延在するように形成されている。軸部材432における駆動装置431との連結部分とは反対側の端部には、連結部材433が連結されている。連結部材433は、軸部材432の回動に伴って押圧部材434が移動するように、軸部材432と押圧部材434とを連結する部材である。本実施形態では、押圧部材434は、軸部材432の軸心に直交する方向(
図2に示す例では、紙面前後方向)に延在する棒状に形成され、当該方向に対して交差する傾斜面を有している。軸部材432の回動に伴って、押圧部材434が当該押圧部材434の軸心に沿って移動することで、係合機構42の係合部材421が押圧部材434の傾斜面の形状に応じてパーキングギヤ41に向けて押圧される。このように、駆動装置431は、軸部材432及び連結部材433を介して押圧部材434を移動させることで、係合部材421の姿勢を係合姿勢と非係合姿勢との間で変化させる。なお、本実施形態では、係合部材421は、ばね等の付勢部材(図示省略)によって非係合姿勢となる側に付勢されており、押圧部材434が当該付勢部材の付勢力に抗して係合部材421を押圧することで、係合部材421が係合姿勢となる。そして、駆動装置431が、それとは逆方向に押圧部材434を移動させることで、係合部材421の押圧が解除され、付勢部材の付勢力によって係合部材421が非係合姿勢となる。
【0047】
図2に示すように、本実施形態では、ケース9に、回転電機MGが収容された第1収容室A1と、変速機1及びパーキングギヤ41が収容された第2収容室A2と、が形成されている。そして、ケース9は、第1ケース部91と、当該第1ケース部91に対して軸方向第1側L1から接合された第2ケース部92と、を備えている。
【0048】
本実施形態では、第1ケース部91は、区画部93と、第1周壁部94と、支持部95と、を備えている。区画部93は、第1収容室A1と第2収容室A2との軸方向Lの間に配置されている。つまり、区画部93は、ケース9の内部空間を第1収容室A1と第2収容室A2とに軸方向Lに区画するように形成されている。第1周壁部94は、第2収容室A2の周囲を囲むように、区画部93から軸方向第1側L1に延在している。支持部95は、第1周壁部94に連結されて、駆動機構43を支持している。
図2に示す例では、支持部95は、第1周壁部94と一体的に形成されている。そして、支持部95は、当該支持部95を駆動機構43の軸部材432が径方向Rに貫通した状態で、軸部材432を回動自在に支持している。
【0049】
また、本実施形態では、第1ケース部91は、駆動機構43が固定される被固定部96を備えている。被固定部96は、ケース9の外面から突出するように形成されている。本実施形態では、被固定部96は、第1周壁部94から特定の径方向Rの外側(
図2における上側)に突出するように形成されている。そして、被固定部96は、駆動機構43の駆動装置431の側方を囲むように配置されている。
図2に示す例では、駆動装置431が、被固定部96に囲まれた空間に収容された状態で、被固定部96に対して特定の径方向Rの外側(
図2における上側)からボルト締結により固定されている。
【0050】
本実施形態では、被固定部96の少なくとも一部が、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のうちの軸方向第2側L2に位置する方よりも軸方向第2側L2に配置されている。
図2に示す例では、被固定部96のうちの駆動装置431よりも軸方向第2側L2に配置された部分が、第3ギヤ13よりも軸方向第2側L2に配置されている。一方、被固定部96のうちの駆動装置431よりも軸方向第1側L1に配置された部分は、第3ギヤ13よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0051】
このように、本実施形態では、パーキング機構4は、パーキングギヤ41に対して選択的に係合する係合機構42と、当該係合機構42を駆動する駆動機構43と、を備え、
ケース9は、駆動機構43が固定される被固定部96を備え、
被固定部96は、ケース9の外面から突出するように形成され、
被固定部96の少なくとも一部が、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のうちの軸方向第2側L2に位置する方よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0052】
この構成によれば、被固定部96の少なくとも一部を、回転電機MGに対して軸方向Lに近付けて配置することができる。これにより、比較的剛性が高い、ケース9における回転電機MGを支持する部分に、被固定部96の少なくとも一部を設けることができる。したがって、ケース9により駆動機構43を適切に支持することができる。
【0053】
本実施形態では、第2ケース部92は、第2周壁部97と、側壁部98と、を備えている。第2周壁部97は、第1ケース部91の第1周壁部94に対して軸方向第1側L1から接合されるように、第2収容室A2の周囲を囲む筒状に形成されている。側壁部98は、第2周壁部97の軸方向第1側L1の開口を閉塞するように形成されている。
【0054】
本実施形態では、第1ケース部91と第2ケース部92との接合部Cは、第1周壁部94に形成された第1フランジ部94aと、第2周壁部97に形成された第2フランジ部97aとによって構成されている。第1フランジ部94aは、第1周壁部94の軸方向第1側L1の端部が、径方向Rの外側に突出するように形成されている。第2フランジ部97aは、第2周壁部97の軸方向第2側L2の端部が、径方向Rの外側に突出するように形成されている。第1フランジ部94aと第2フランジ部97aとは、第1フランジ部94aの軸方向第1側L1の端面と第2フランジ部97aの軸方向第2側L2の端面とが互いに接触した状態で、ボルト等の固定部材によって互いに連結されている。
【0055】
本実施形態では、駆動機構43の全体が、第1ケース部91と第2ケース部92との接合部Cに対して軸方向第2側L2に配置されている。
図2に示す例では、駆動装置431、軸部材432、連結部材433、及び押圧部材434が、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のうち、軸方向第1側L1のギヤ(ここでは、第4ギヤ14)に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0056】
このように、本実施形態では、ケース9は、第1ケース部91と、当該第1ケース部91に対して軸方向第1側L1から接合された第2ケース部92と、を備え、
パーキング機構4は、パーキングギヤ41に対して選択的に係合する係合機構42と、当該係合機構42を駆動する駆動機構43と、を備え、
駆動機構43の全体が、第1ケース部91と第2ケース部92との接合部Cに対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0057】
この構成によれば、駆動機構43を回転電機MGに対して軸方向Lに近付けて配置することができる。これにより、駆動機構43を適切に支持するためにケース9の厚みを大きくする領域を小さく抑えることができる。また、駆動機構43が接合部Cを跨ぐように配置されている場合に比べて、駆動機構43の支持構造を簡略化することができる。したがって、ケース9の重量及びコストを小さく抑えることができる。
【0058】
本実施形態では、第1周壁部94における支持部95よりも軸方向第2側L2の部分である第2部分942の厚みTH2は、第1周壁部94における支持部95よりも軸方向第1側L1の部分である第1部分941の厚みTH1よりも大きい。ここでは、支持部95は、駆動機構43の軸部材432を支持する部位である。そして、第1部分941の厚みTH1は、第1部分941における支持部95に隣接する部分の厚みである。また、第2部分942の厚みTH2は、第2部分942における支持部95に隣接する部分の厚みである。なお、第1部分941の厚みTH1が、第1部分941の全域における厚みの最大値であり、第2部分942の厚みTH2が、第2部分942の全域における厚みの最大値であっても良い。また、第1部分941の厚みTH1が、第1部分941の全域における厚みの最小値であり、第2部分942の厚みTH2が、第2部分942の全域における厚みの最小値であっても良い。或いは、第1部分941の厚みTH1が、第1部分941の全域における厚みの平均値であり、第2部分942の厚みTH2が、第2部分942の全域における厚みの平均値であっても良い。
【0059】
このように、本実施形態では、ケース9に、回転電機MGが収容された第1収容室A1と、変速機1及びパーキングギヤ41が収容された第2収容室A2と、が形成され、
第1ケース部91は、第1収容室A1と第2収容室A2との軸方向Lの間に配置された区画部93と、第2収容室A2の周囲を囲むように区画部93から軸方向第1側L1に延在する第1周壁部94と、当該第1周壁部94に連結されて駆動機構43を支持する支持部95と、を備え、
第1周壁部94における支持部95よりも軸方向第2側L2の部分である第2部分942の厚みTH2が、第1周壁部94における支持部95よりも軸方向第1側L1の部分である第1部分941の厚みTH1よりも大きい。
【0060】
上述したように、駆動機構43を回転電機MGに対して軸方向Lに近付けて配置することができているため、本構成によれば、駆動機構43を支持する支持部95を区画部93に対して軸方向Lに近付けて配置することができる。これにより、第1周壁部94における支持部95よりも軸方向第1側L1の部分である第1部分941よりも厚みが大きい、第1周壁部94における支持部95よりも軸方向第2側L2の部分である第2部分942が占める領域を小さく抑えることができる。したがって、ケース9の重量及びコストを小さく抑えることができる。
【0061】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態では、変速機1のギヤの配置、及び差動歯車機構2の向きが、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0062】
本実施形態では、第1ギヤ11は、第2ギヤ12よりも軸方向第1側L1に配置されている。これに伴い、第1ギヤ11に噛み合う第3ギヤ13が、第2ギヤ12に噛み合う第4ギヤ14よりも軸方向第1側L1に配置されている。そして、本実施形態では、出力ギヤ15が、第3ギヤ13及び第4ギヤ14に対して軸方向第2側L2に配置されている。そのため、本実施形態では、軸方向第1側L1から、第3ギヤ13、第4ギヤ14、出力ギヤ15、パーキングギヤ41の順に、それらのギヤが第2軸X2上に配置されている。
【0063】
また、本実施形態では、差動歯車機構2の差動ギヤユニット23が、差動入力ギヤ21に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、差動ギヤユニット23は、第4ギヤ14と軸方向Lの配置領域が重なるように配置されている。
【0064】
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、駆動機構43の全体が、第1ケース部91と第2ケース部92との接合部Cに対して軸方向第2側L2に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、駆動機構43が接合部Cを跨ぐように配置されていても良い。或いは、駆動機構43の全体が接合部Cに対して軸方向第1側L1に配置されていても良い。
【0065】
(2)上記の実施形態では、第1ギヤ11及び第2ギヤ12が第1軸部材16と一体的に回転するように連結され、第3ギヤ13及び第4ギヤ14が第2軸部材17に対して相対回転可能に支持された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1ギヤ11及び第2ギヤ12が第1軸部材16に対して相対回転可能に支持され、第3ギヤ13及び第4ギヤ14が第2軸部材17と一体的に回転するように連結されていても良い。また、第1ギヤ11及び第4ギヤ14が、それぞれ軸部材に対して相対回転可能に支持され、第2ギヤ12及び第3ギヤ13が、それぞれ軸部材と一体的に回転するように連結されていても良い。或いは、第2ギヤ12及び第3ギヤ13が、それぞれ軸部材に対して相対回転可能に支持され、第1ギヤ11及び第4ギヤ14が、それぞれ軸部材と一体的に回転するように連結されていても良い。
【0066】
(3)上記の実施形態では、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のいずれか一方を第2軸部材17に対して選択的に連結する噛み合い式係合装置18が、第2軸X2上であって、第3ギヤ13と第4ギヤ14との軸方向Lの間に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、噛み合い式係合装置18の代わりに、第3ギヤ13を第2軸部材17に対して選択的に連結する係合装置と、第4ギヤ14を第2軸部材17に対して選択的に連結する係合装置とが設けられていても良い。なお、この構成では、出力ギヤ15が第3ギヤ13と第4ギヤ14との軸方向Lの間に配置されていても良い。また、このような場合に、係合装置が噛み合い式係合装置ではなく、摩擦係合装置であっても良い。また、上記(2)のように、第1ギヤ11及び第2ギヤ12が第1軸部材16に対して相対回転可能に支持されている場合には、このような噛み合い式係合装置18等は、第1軸X1上に設けられると好適である。この場合においても、噛み合い式係合装置18に代えて、摩擦係合装置等の他の係合装置が設けられていても良い。
【0067】
(4)上記の実施形態では、差動歯車機構2の差動ギヤユニット23が、第4ギヤ14と軸方向Lの配置領域が重なるように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動ギヤユニット23が第3ギヤ13及び第4ギヤ14の双方と軸方向Lの配置領域が重なるように配置されていても良い。また、第3ギヤ13が第4ギヤ14よりも差動歯車機構2に対して軸方向Lで近い位置にある場合には、差動ギヤユニット23が第3ギヤ13と軸方向Lの配置領域が重なるように配置されていても良い。
【0068】
(5)上記の実施形態では、ケース9の被固定部96の少なくとも一部が、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のうちの軸方向第2側L2に位置する方よりも軸方向第2側L2に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、被固定部96の全体が、第3ギヤ13及び第4ギヤ14のうちの軸方向第2側L2に位置する方よりも軸方向第2側L2に配置されていても良い。
【0069】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0070】
4.上記実施形態の概要
以下では、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0071】
車両用駆動装置(100)は、
第1軸(X1)上に配置されたロータ(RT)を備え、車輪(W)の駆動力源として機能する回転電機(MG)と、
それぞれが前記車輪(W)に駆動連結される一対の出力部材(3)と、
前記回転電機(MG)の側から伝達される回転を変速する変速機(1)と、
前記変速機(1)から伝達される回転を、一対の前記出力部材(3)に分配する差動歯車機構(2)と、
パーキングギヤ(41)を備えたパーキング機構(4)と、
前記回転電機(MG)、前記変速機(1)、前記差動歯車機構(2)、及び前記パーキングギヤ(41)を収容するケース(9)と、を備え、
前記変速機(1)は、前記第1軸(X1)上に配置された、第1ギヤ(11)及び第2ギヤ(12)と、前記第1軸(X1)に平行な第2軸(X2)上に配置された、第3ギヤ(13)、第4ギヤ(14)、及び出力ギヤ(15)と、を備え、
前記第1ギヤ(11)と前記第3ギヤ(13)とが互いに噛み合うと共に、前記第2ギヤ(12)と前記第4ギヤ(14)とが互いに噛み合い、
前記差動歯車機構(2)は、前記第1軸(X1)及び前記第2軸(X2)に平行な第3軸(X3)上に配置されて、前記出力ギヤ(15)に噛み合う差動入力ギヤ(21)を備え、
前記第1軸(X1)に平行な方向を軸方向(L)とし、前記軸方向(L)の一方側を軸方向第1側(L1)とし、前記軸方向(L)の他方側を軸方向第2側(L2)として、
前記第1ギヤ(11)及び前記第2ギヤ(12)が、前記ロータ(RT)に対して前記軸方向第1側(L1)に配置され、
前記パーキングギヤ(41)が、前記第2軸(X2)上であって、前記第3ギヤ(13)、前記第4ギヤ(14)、及び前記出力ギヤ(15)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置されている。
【0072】
この構成によれば、パーキングギヤ(41)を備えたパーキング機構(4)を、回転電機(MG)に対して軸方向(L)に近付けて配置することができる。一般的に、回転電機(MG)はケース(9)に支持されており、当該ケース(9)における回転電機(MG)を支持する部分の剛性は十分に確保されている。そのため、パーキング機構(4)を回転電機(MG)に近付けて配置することで、パーキング機構(4)を適切に支持するためにケース(9)の厚みを大きくする領域を小さく抑えることができる。したがって、ケース(9)の重量及びコストを小さく抑えることができる。
【0073】
ここで、前記パーキング機構(4)は、前記パーキングギヤ(41)に対して選択的に係合する係合機構(42)と、前記係合機構(42)を駆動する駆動機構(43)と、を備え、
前記ケース(9)は、前記駆動機構(43)が固定される被固定部(96)を備え、
前記被固定部(96)は、前記ケース(9)の外面から突出するように形成され、
前記被固定部(96)の少なくとも一部が、前記第3ギヤ(13)及び前記第4ギヤ(14)のうちの前記軸方向第2側(L2)に位置する方よりも前記軸方向第2側(L2)に配置されている
【0074】
この構成によれば、被固定部(96)の少なくとも一部を、回転電機(MG)に対して軸方向(L)に近付けて配置することができる。これにより、比較的剛性が高い、ケース(9)における回転電機(MG)を支持する部分に、被固定部(96)の少なくとも一部を設けることができる。したがって、ケース(9)により駆動機構(43)を適切に支持することができる。
【0075】
また、前記ケース(9)は、第1ケース部(91)と、当該第1ケース部(91)に対して前記軸方向第1側(L1)から接合された第2ケース部(92)と、を備え、
前記パーキング機構(4)は、前記パーキングギヤ(41)に対して選択的に係合する係合機構(42)と、前記係合機構(42)を駆動する駆動機構(43)と、を備え、
前記駆動機構(43)の全体が、前記第1ケース部(91)と前記第2ケース部(92)との接合部(C)に対して前記軸方向第2側(L2)に配置されている。
【0076】
この構成によれば、駆動機構(43)を回転電機(MG)に対して軸方向(L)に近付けて配置することができる。これにより、駆動機構(43)を適切に支持するためにケース(9)の厚みを大きくする領域を小さく抑えることができる。また、駆動機構(43)が接合部(C)を跨ぐように配置されている場合に比べて、駆動機構(43)の支持構造を簡略化することができる。したがって、ケース(9)の重量及びコストを小さく抑えることができる。
【0077】
前記ケース(9)が前記第1ケース部(91)と前記第2ケース部(92)とを備えた構成において、
前記ケース(9)に、前記回転電機(MG)が収容された第1収容室(A1)と、前記変速機(1)及び前記パーキングギヤ(41)が収容された第2収容室(A2)と、が形成され、
前記第1ケース部(91)は、前記第1収容室(A1)と前記第2収容室(A2)との前記軸方向(L)の間に配置された区画部(93)と、前記第2収容室(A2)の周囲を囲むように前記区画部(93)から前記軸方向第1側(L1)に延在する周壁部(94)と、前記周壁部(94)に連結されて前記駆動機構(43)を支持する支持部(95)と、を備え、
前記周壁部(94)における前記支持部(95)よりも前記軸方向第2側(L2)の部分の厚み(TH2)が、前記周壁部(94)における前記支持部(95)よりも前記軸方向第1側(L1)の部分の厚み(TH1)よりも大きい。
【0078】
上述したように、駆動機構(43)を回転電機(MG)に対して軸方向(L)に近付けて配置することができているため、本構成によれば、駆動機構(43)を支持する支持部(95)を区画部(93)に対して軸方向(L)に近付けて配置することができる。これにより、周壁部(94)における支持部(95)よりも軸方向第1側(L1)の部分である第1部分(941)よりも厚みが大きい、周壁部(94)における支持部(95)よりも軸方向第2側(L2)の部分である第2部分(942)が占める領域を小さく抑えることができる。したがって、ケース(9)の重量及びコストを小さく抑えることができる。
【0079】
また、前記変速機(1)は、前記第1軸(X1)上に配置された第1軸部材(16)と、前記第2軸(X2)上に配置された第2軸部材(17)と、を備え、
前記ロータ(RT)は、前記第1軸部材(16)と一体的に回転するように連結され、
前記出力ギヤ(15)及び前記パーキングギヤ(41)は、前記第2軸部材(17)と一体的に回転するように連結され、
前記第1ギヤ(11)及び前記第2ギヤ(12)は、前記第1軸部材(16)と一体的に回転するように連結され、
前記第3ギヤ(13)及び前記第4ギヤ(14)は、前記第2軸部材(17)に対して相対回転可能に支持され、
前記第3ギヤ(13)及び前記第4ギヤ(14)のいずれか一方を前記第2軸部材(17)に対して選択的に連結する噛み合い式係合装置(18)が、前記第2軸(X2)上であって、前記第3ギヤ(13)と前記第4ギヤ(14)との前記軸方向(L)の間に配置されている。
【0080】
この構成によれば、回転電機(MG)から一対の出力部材(3)までの動力伝達経路において、上流側に配置された第1ギヤ(11)及び第2ギヤ(12)が、第1軸部材(16)と一体的に回転する固定ギヤであり、下流側に配置された第3ギヤ(13)及び第4ギヤ(14)が、第2軸部材(17)に対して相対的に回転する遊転ギヤである。一般的に、遊転ギヤのように相対回転部に軸受等を配置する必要がない分、固定ギヤの方が小径化し易いため、第1ギヤ(11)及び第2ギヤ(12)を小径化することが容易となる。これにより、回転電機(MG)から一対の出力部材(3)までの動力伝達経路の減速比を大きく確保しつつ、第3ギヤ(13)及び第4ギヤ(14)も小径化することができる。したがって、車両用駆動装置(100)の径方向(R)の寸法を小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、噛み合い式係合装置(18)が、第3ギヤ(13)と第4ギヤ(14)との軸方向(L)の間に配置されている。これにより、噛み合い式係合装置(18)の大型化を抑制しつつ、第3ギヤ(13)及び第4ギヤ(14)のいずれか一方を第2軸部材(17)に対して選択的に連結する構成を実現することができる。
【0081】
また、前記差動歯車機構(2)は、前記差動入力ギヤ(21)の回転を一対の前記出力部材(15)に分配する差動ギヤユニット(23)を備え、
前記第3ギヤ(13)及び前記第4ギヤ(14)は、前記出力ギヤ(15)に対して、前記軸方向第1側(L1)及び前記軸方向第2側(L2)のいずれか一方に配置され、
前記差動ギヤユニット(23)は、前記第3ギヤ(13)及び前記第4ギヤ(14)の少なくとも一方と前記軸方向(L)の配置領域が重なるように配置されている。
【0082】
この構成によれば、差動ギヤユニット(23)が、第3ギヤ(13)及び第4ギヤ(14)の双方と軸方向(L)の配置領域が重ならないように配置された構成と比べて、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示に係る技術は、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、それぞれが車輪に駆動連結される一対の出力部材と、回転電機の側から伝達される回転を変速する変速機と、変速機から伝達される回転を、一対の出力部材に分配する差動歯車機構と、パーキングギヤを備えたパーキング機構と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
100:車両用駆動装置、1:変速機、11:第1ギヤ、12:第2ギヤ、13:第3ギヤ、14:第4ギヤ、15:出力ギヤ、2:差動歯車機構、21:差動入力ギヤ、3:出力部材、4:パーキング機構、41:パーキングギヤ、9:ケース、MG:回転電機、RT:ロータ、W:車輪、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側