(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/107 20210101AFI20240305BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/198 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/131
H01M50/152
H01M50/159
H01M50/184 D
H01M50/193
H01M50/197
H01M50/198
(21)【出願番号】P 2022557263
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032811
(87)【国際公開番号】W WO2022085318
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2020176941
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袖山 国雄
(72)【発明者】
【氏名】柳田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 舜也
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225394(WO,A1)
【文献】特開2012-234716(JP,A)
【文献】特開2006-221909(JP,A)
【文献】特開2005-276579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放端部を画定する折り曲げ部を有する収納部材と、
前記収納部材の内部に収納された電池素子と、
前記開放端部を閉塞する蓋部材と、
前記折り曲げ部と前記蓋部材との間に介在する封止部材と
を備え、
前記蓋部材は、前記電池素子に対向する第1下面と、前記第1下面とは反対側の第1上面と、前記第1下面および前記第1上面のそれぞれに連結された第1側面とを有し、
前記折り曲げ部は、前記第1下面、前記第1側面および前記第1上面に対してこの順に沿うように折り曲げられていると共に、前記第1側面および前記第1上面に対してこの順に沿うように折り曲げられた先端部を含み、
前記収納部材は、鉄およびアルミニウムのいずれか1種類または2種類以上を含む金属材料により構成され、
前記収納部材の内部に前記電池素子が収納される収納方向と交差する交差方向において、前記折り曲げ部に基づいて規定される前記収納部材の外径は、25mm以上27mm以下であり、
前記収納部材の外径に対する、前記交差方向における前記先端部の長さの割合は、8.0%以上10.0%以下であ
り、
前記先端部の厚さは、0.27mm以上0.31mmである
二次電池。
【請求項2】
前記先端部および前記蓋部材は、前記収納方向において互いにオーバーラップしており、
前記交差方向における前記蓋部材の外径は、24mm以上26mm以下であり、
前記蓋部材の外径に対する、前記先端部および前記蓋部材が互いにオーバーラップする範囲の前記交差方向における長さの割合は、4.0%以上6.0%以下である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記封止部材は、前記第1側面および前記第1上面に対してこの順に沿うように折り曲げられており、
前記封止部材の厚さは、前記第1側面から前記第1上面に向かうにしたがって次第に減少している、
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
さらに、前記第1下面に隣接された隣接部材を備え、
前記隣接部材は、前記電池素子に対向する第2下面と、前記第1下面に隣接された第2上面と、前記第2下面および前記第2上面のそれぞれに連結された第2側面とを有し、
前記折り曲げ部は、前記第2下面、前記第2側面、前記第1側面および前記第1上面に対してこの順に沿うように折り曲げられており、
前記先端部は、前記第1側面に沿うように延在する第1先端部と、前記第1上面に沿うように延在すると共に前記第1先端部に連結された第2先端部とを含み、
前記第1先端部が延在する方向と前記第2先端部が延在する方向とにより規定される角度は、80°以上90°以下であり、
前記収納方向において前記第2下面に対応する位置における前記封止部材の厚さから、前記交差方向において前記折り曲げ部の先端に対応する位置における前記封止部材の厚さを差し引いた厚さ差は、0.10mm以上0.29mm以下である、
請求項3記載の二次電池。
【請求項5】
さらに、前記第1下面に隣接された隣接部材を備え、
前記隣接部材は、前記電池素子に対向する第2下面と、前記第1下面に隣接された第2上面と、前記第2下面および前記第2上面のそれぞれに連結された第2側面とを有し、
前記折り曲げ部は、前記第2下面、前記第2側面、前記第1側面および前記第1上面に対してこの順に沿うように折り曲げられており、
前記蓋部材の厚さと前記隣接部材の厚さとを互いに足し合わせた総厚は、1.0mm以上1.4mm以下である、
請求項1ないし請求項
4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記収納部材は、前記折り曲げ部が前記第1下面に対して沿うように途中で折り返されている窪み部を有し、
前記収納方向において前記窪み部の位置を基準として前記蓋部材に近い側における前記収納部材の内壁面の算術平均粗さRaは、前記収納方向において前記窪み部の位置を基準として前記蓋部材から遠い側における前記収納部材の内壁面の算術平均粗さRaよりも小さい、
請求項1ないし請求項
5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記蓋部材に近い側における前記収納部材の内壁面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、
前記蓋部材から遠い側における前記収納部材の内壁面の算術平均粗さRaは、0.4μmよりも大きい、
請求項
6記載の二次電池。
【請求項8】
さらに、前記封止部材の表面を被覆すると共にアスファルトを含む保護層を備え、
前記保護層の面積密度は、0.060mg/cm
2 以上0.100mg/cm
2 以下である、
請求項1ないし請求項
7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記蓋部材は、ステンレスを含む、
請求項1ないし請求項
8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記封止部材は、ポリプロピレンを含む、
請求項1ないし請求項
9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記電池素子は、正極を含み、
前記正極は、オリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化合物を含む、
請求項1ないし請求項
10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
リチウムイオン二次電池である、
請求項1ないし請求項
11のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が広く普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度が得られる電源として二次電池の開発が進められている。この二次電池は、収納部材の内部に電池素子を備えており、その二次電池などの構成に関しては、様々な検討がなされている。
【0003】
具体的には、収納部材の密封性などを改善するために、その収納部材に関する缶被り量などの条件が規定されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【0004】
また、円筒型アルカリ電池において漏液を防止するために、正極容器の内面(ガスケットと接する部分および正極作用物質と接する部分)の表面粗さが規定されている(例えば、特許文献4参照。)。アルカリマンガン電池などにおいて漏液の発生を防止するために、電池用缶の内面(側壁主部の内面および加締め部内面)の表面粗さRaが規定されている(例えば、特許文献5参照。)。封口部の耐圧性が優れた電池用ケースを得るために、金属ケース(胴部および開口部)の内面粗度が規定されている(例えば、特許文献6参照。)。密閉性が強化されたリチウム電池を得るために、ガスケットと外装缶とが互いに接する箇所に、コールタールピッチなどを主成分とする封止剤が介在している(例えば、特許文献7参照。)。アルカリ電池において耐漏液特性を改善するために、絶縁ガスケットの露出部にジメチルシリコーンオイルなどが塗布されている(例えば、特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5160559号明細書
【文献】特許第5269793号明細書
【文献】米国特許第8999564号明細書
【文献】特開2003-249232号公報
【文献】特開平09-161736号公報
【文献】特開平09-312150号公報
【文献】特開2003-151518号公報
【文献】特開平06-020664号公報
【発明の概要】
【0006】
二次電池の諸特性に関する様々な検討がなされているが、その二次電池の安全性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0007】
よって、優れた安全性を得ることが可能である二次電池が望まれている。
【0008】
本技術の二次電池は、開放端部を画定する折り曲げ部を有する収納部材と、その収納部材の内部に収納された電池素子と、その開放端部を閉塞する蓋部材と、その折り曲げ部と蓋部材との間に介在する封止部材とを備えたものである。蓋部材は、電池素子に対向する第1下面と、その第1下面とは反対側の第1上面と、その第1下面および第1上面のそれぞれに連結された第1側面とを有する。折り曲げ部は、第1下面、第1側面および第1上面に対してこの順に沿うように折り曲げられていると共に、その第1側面および第1上面に対してこの順に沿うように折り曲げられた先端部を含む。収納部材の内部に電池素子が収納される収納方向と交差する交差方向において折り曲げ部に基づいて規定される収納部材の外径は、25mm以上27mm以下である。収納部材の外径に対する交差方向における先端部の長さの割合は、8.0%以上10.0%以下である。
【0009】
本技術の二次電池によれば、収納部材の外径が25mm以上27mm以下であると共に、その収納部材の外径に対する先端部の長さの割合が8.0%以上10.0%以下であるので、優れた安全性を得ることができる。
【0010】
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるわけではなく、本技術中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本技術の一実施形態の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図2】
図1に示した二次電池の構成の一部を表す断面図である。
【
図3】
図2に示した加締め構造の構成を拡大して表す断面図である。
【
図4】
図3に示したガスケットの構成を拡大して表す断面図である。
【
図5】
図1に示した電池素子の構成の一部を拡大して表す断面図である。
【
図6】二次電池の動作を説明するための断面図である。
【
図7】
図6に続く二次電池の動作を説明するための断面図である。
【
図8】二次電池の製造工程を説明するための断面図である。
【
図9】
図8に続く二次電池の製造工程を説明するための断面図である。
【
図10】二次電池の適用例(電池パック)の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池
1-1.全体の構成
1-2.安全弁機構の詳細な構成
1-3.加締め構造の詳細な構成
1-4.電池素子の詳細な構成
1-5.動作
1-6.製造方法
1-7.作用および効果
2.変形例
3.二次電池の用途
【0013】
<1.二次電池>
まず、本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
【0014】
ここで説明する二次電池の充放電原理は、特に限定されないが、以下では、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる場合に関して説明する。
【0015】
二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えている。この二次電池では、負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっており、すなわち負極の単位面積当たりの電気化学容量が正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなっている。充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するためである。
【0016】
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0017】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
【0018】
<1-1.全体の構成>
図1は、二次電池の断面構成を表している。この二次電池は、
図1に示したように、円筒状の電池缶11の内部に電池素子20が収納されている二次電池であり、いわゆる円筒型の二次電池である。
【0019】
以下で説明する円筒型の二次電池は、特に、後述する外径D1,D2(
図2参照)のそれぞれが比較的大きい大口径の二次電池である。
【0020】
以下では、電池缶11の内部に電池素子20が収納される方向(
図1中のZ軸方向)を「収納方向V1」とすると共に、その収納方向V1と交差する方向(
図1中のX軸方向)を「交差方向V2」とする。
【0021】
具体的には、二次電池は、電池缶11の内部に一対の絶縁板12,13および電池素子20を備えていると共に、その電池缶11に取り付けられた電池蓋14およびガスケット15を備えている。ただし、二次電池は、電池缶11の内部に、さらに、図示しない熱感抵抗(PTC)素子および補強部材などを備えていてもよい。
【0022】
[電池缶]
電池缶11は、電池素子20などを収納する収納部材である。この電池缶11は、一端部が開放されていると共に他端部が閉塞されている円筒状の器であり、収納方向V1に延在している。すなわち、電池缶11は、開放されている一端部である開放端部11Nを有している。
【0023】
この電池缶11は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料の具体例は、鉄、アルミニウムおよびステンレスなどである。ただし、金属材料の具体例は、鉄およびアルミニウムなどのいずれか1種類または2種類以上の合金でもよい。電池缶11の表面には、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0024】
[絶縁板]
絶縁板12,13のそれぞれは、交差方向V2に延在しており、収納方向V1において電池素子20を介して互いに対向するように配置されている。
【0025】
[加締め構造]
電池缶11の開放端部11Nには、電池蓋14および安全弁機構30がガスケット15を介して加締められている。これにより、電池缶11は、後述するように、開放端部11Nを画定する折り曲げ部11Pを有している(
図3参照)。
【0026】
電池缶11の内部に電池素子20などが収納されている状態において、その電池缶11の開放端部11Nは電池蓋14により密閉されている。これにより、電池缶11では、開放端部11Nを画定する折り曲げ部11Pと電池蓋14および安全弁機構30とがガスケット15を介して互いに加締められているため、加締め構造11Rが形成されている。折り曲げ部11Pは、いわゆるクリンプ部であるため、加締め構造11Rは、いわゆるクリンプ構造である。加締め構造11Rの詳細な構成に関しては、後述する(
図3参照)。
【0027】
[電池蓋]
電池蓋14は、電池缶11の開放端部11Nを閉塞する蓋部材である。この電池蓋14は、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。ただし、電池蓋14は、電池缶11の形成材料とは異なる形成材料を含んでいてもよい。
【0028】
中でも、電池蓋14は、ステンレスを含んでいることが好ましい。電池蓋14の物理的強度が担保されることに応じて加締め構造11Rの物理的強度が担保されるため、電池缶11の内圧が上昇しても電池蓋14の脱落および電解液の漏液が抑制されるからである。ステンレスの具体例は、SUS304およびSUS430などである。
【0029】
電池蓋14の中央部は、電池素子20から遠ざかる方向(上方向)に突出するように折れ曲がっている。これにより、電池蓋14の中央部以外の部分(周辺部)は、安全弁機構30(後述するセーフティーカバー31)に隣接されている。
【0030】
[ガスケット]
ガスケット15は、電池缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する封止部材である。
【0031】
このガスケット15は、絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性材料の具体例は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリプロピレン(PP)などの高分子材料である。中でも、ガスケット15は、ポリプロピレンを含んでいることが好ましい。電池缶11と電池蓋14とが互いに電気的に分離されながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間が十分に封止されるからである。
【0032】
なお、二次電池は、後述するように、ガスケット15の表面を被覆する保護層16を備えていてもよい(
図4参照)。保護層16の詳細な構成に関しては、後述する。
【0033】
[安全弁機構]
安全弁機構30は、電池缶11の内圧が上昇した際に、必要に応じて電池缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する機構である。電池缶11の内圧が上昇する原因は、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。安全弁機構30の詳細な構成に関しては、後述する(
図2参照)。
【0034】
[電池素子]
電池素子20は、電池缶11の内部に収納されており、正極21および負極22と共に液状の電解質である電解液を含んでいる。
【0035】
ここでは、電池素子20は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、電池素子20では、正極21および負極22がセパレータ23を介して積層されていると共に、その正極21、負極22およびセパレータ23が巻回されている。電解液は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに含浸されている。
【0036】
電池素子20の中心には、正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させる際に生じた空間(中心空間20C)が形成されており、その中心空間20Cには、センターピン24が挿入されている。ただし、センターピン24は、省略されてもよい。
【0037】
正極21には、正極リード25が接続されていると共に、負極22には、負極リード26が接続されている。正極リード25は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムなどである。この正極リード25は、安全弁機構30を介して電池蓋14と電気的に接続されている。負極リード26は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料の具体例は、ニッケルなどである。この負極リード26は、電池缶11と電気的に接続されている。
【0038】
電池素子20の詳細な構成、すなわち正極21、負極22、セパレータ23および電解液のそれぞれの詳細な構成に関しては、後述する(
図5参照)。
【0039】
<1-2.安全弁機構の詳細な構成>
図2は、
図1に示した二次電池の断面構成の一部を表しており、より具体的には、安全弁機構30などを示している。
【0040】
この安全弁機構30は、
図2に示したように、セーフティーカバー31と、ディスクホルダ32と、ストリッパーディスク33と、サブディスク34とを含んでいる。このセーフティーカバー31、ディスクホルダ32、ストリッパーディスク33およびサブディスク34は、電池蓋14に近い側からこの順に配置されている。
【0041】
[セーフティーカバー]
セーフティーカバー31は、後述するように、電池蓋14(後述する下面14BS)に隣接されている隣接部材であり、電池缶11の内圧の上昇に応じて部分的に開口可能である。セーフティーカバー31が部分的に開口する場合には、そのセーフティーカバー31が部分的に開裂してもよいし、そのセーフティーカバー31が部分的に除去されてもよい。このセーフティーカバー31は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などである。
【0042】
セーフティーカバー31の平面形状は、特に限定されないが、具体的には、円形などである。この「平面形状」とは、XY面に沿った平面の形状であり、ここで説明した平面形状の定義は、以降においても同様である。セーフティーカバー31の中央部は、ディスクホルダ32に向かって突出するように折れ曲がっており、その中央部には、ディスクホルダ32に向かって部分的に突出した突起部31Tが設けられている。
【0043】
[ディスクホルダ]
ディスクホルダ32は、セーフティーカバー31とストリッパーディスク33との間に介在することにより、そのセーフティーカバー31に対してストリッパーディスク33を位置合わせする部材である。このディスクホルダ32は、高分子材料などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その高分子材料の具体例は、ポリプロピレン(PP)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などである。
【0044】
ディスクホルダ32の平面形状は、特に限定されないが、具体的には、円形などである。ディスクホルダ32の中央部は、セーフティーカバー31から遠ざかる方向に向かって窪むように折れ曲がっているため、そのディスクホルダ32には、窪み部が設けられている。セーフティーカバー31の中央部は、ディスクホルダ32の窪み部に嵌め込まれており、そのディスクホルダ32の中央部には、セーフティーカバー31の中央部に対応する箇所に開口部32Kが設けられている。開口部32Kの開口形状は、特に限定されないが、具体的には、円形などである。
【0045】
[ストリッパーディスク]
ストリッパーディスク33は、電池缶11の内部において発生したガスを放出する部材である。このストリッパーディスク33は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などである。
【0046】
ストリッパーディスク33の平面形状は、特に限定されないが、具体的には、円形などである。ストリッパーディスク33の中央部は、ディスクホルダ32から遠ざかる方向に向かって窪むように折れ曲がっているため、そのストリッパーディスク33には、窪み部が設けられている。ディスクホルダ32の中央部は、ストリッパーディスク33の窪み部に嵌め込まれており、そのストリッパーディスク33の中央部には、開口部33C,33Kが設けられている。
【0047】
開口部33Cは、セーフティーカバー31の突起部31Tを導出させることにより、その突起部31Tをサブディスク34に接触させるための導出口である。開口部33Cの開口形状は、特に限定されないが、具体的には、円形などである。
【0048】
開口部33Kは、電池缶11の内部において発生したガスを外部に放出するための通気口である。開口部33Kの数は、特に限定されないが、中でも、複数であることが好ましい。開口部33Kを利用してガスが放出されやすくなるからである。複数の開口部33Kは、開口部33Cを中心とした同心円状の位置に配置されている。開口部33Kの開口形状は、特に限定されないが、具体的には、円形などである。
【0049】
[サブディスク]
サブディスク34は、セーフティーカバー31と正極リード25との間に介在することにより、その正極リード25に対してセーフティーカバー31(突起部31T)を電気的に接続させる部材である。このサブディスク34は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などである。サブディスク34の平面形状は、特に限定されないが、具体的には、円形などである。
【0050】
[PTC素子および補強部材]
PTC素子は、電池蓋14とセーフティーカバー31との間に配置されており、その電池蓋14およびセーフティーカバー31のそれぞれと電気的に接続されている。これにより、PTC素子は、電池蓋14およびセーフティーカバー31と一緒にガスケット15を介して加締められている。このPTC素子は、温度変化に応じて電気抵抗が大きく変化する抵抗体(サーミスタ)を含んでいる。PTC素子の電気抵抗は、大電流に起因した二次電池の異常な発熱を防止するために、その二次電池の内部温度が所定の温度を越えると急激に増加する。安全弁機構30は、PTC素子を介して電池蓋14と電気的に接続されている。
【0051】
補強部材は、PTC素子と同様に、電池蓋14とセーフティーカバー31との間に配置されており、その電池蓋14およびセーフティーカバー31と一緒にガスケット15を介して加締められている。この補強部材は、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料の具体例は、銅、アルミニウムおよび鉄などである。ただし、補強部材の表面には、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0052】
<1-3.加締め構造の詳細な構成>
図3は、
図2に示した加締め構造11Rの断面構成を拡大している。
図4は、
図3に示したガスケット15の断面構成を拡大している。以下では、随時、
図3および
図4と共に
図1および
図2を参照する。
【0053】
[加締め構造の構成]
この二次電池では、上記したように、電池缶11において開放端部11Nを画定する折り曲げ部11Pと電池蓋14および安全弁機構30とがガスケット15を介して互いに加締められているため、
図3に示したように、加締め構造11Rが形成されている。
【0054】
具体的には、電池缶11は、上記したように、折り曲げ部11Pを有している。この折り曲げ部11Pは、加締め構造11Rを形成するために、後述する所定の折り曲げ形状となるように電池缶11(開放端部11N)が折り曲げられた部分である。
【0055】
電池蓋14は、交差方向V2に延在することにより、電池缶11の開放端部11Nを閉塞している。この電池蓋14は、電池素子20に対向する第1下面である下面14BSと、その下面14BSとは反対側の第1上面である上面14TSと、その下面14BSおよび上面14TSのそれぞれに連結された第1側面である側面14SSとを有している。
【0056】
加締め構造11Rを形成するために、折り曲げ部11Pは、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間にガスケット15が介在している状態において、下面14BS、側面14SSおよび上面14TSに対してこの順に沿うように折り曲げられている。このため、折り曲げ部11Pは、側面14SSおよび上面14TSに対してこの順に沿うように折り曲げられている先端部11PPを含んでいる。これに伴い、ガスケット15は、折り曲げ部11Pと同様に、下面14BS、側面14SSおよび上面14TSに対してこの順に沿うように折り曲げられている。
【0057】
これにより、折り曲げ部11Pの一部である先端部11PPは、交差方向V2に折れ曲がることにより、ガスケット15を介して電池蓋14の上面14TSにオーバーラップしている。すなわち、先端部11PPおよび電池蓋14は、収納方向V1において互いにオーバーラップしている。
【0058】
また、折り曲げ部11Pの残りの部分(先端部11PP以外の部分)は、交差方向V2に折れ曲がることにより、ガスケット15を介して電池蓋14の下面14BSにオーバーラップしている。これにより、電池缶11は、窪み部11Uを有しており、その窪み部11Uは、折り曲げ部11Pが下面14BSに対して沿うように途中で折り返されている部分である。窪み部11Uの深さPは、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0059】
これらのことから、電池缶11の一部(開放端部11N)である折り曲げ部11Pは、上記した折り曲げ形状となるように折り曲げられている。この場合には、折り曲げ部11Pによりガスケット15が電池蓋14に押し付けられていると共に、その折り曲げ部11Pがガスケット15を介して電池蓋14を上下から挟んでいる。これにより、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間がガスケット15により封止されている共に、その電池蓋14がガスケット15を介して電池缶11に固定されている。よって、加締め構造11Rが形成されている。
【0060】
ここでは、上記したように、電池蓋14に安全弁機構30が取り付けられているため、その電池蓋14にセーフティーカバー31が隣接されている。具体的には、電池蓋14の中央部は、セーフティーカバー31の中央部から離間されるように折り曲げられているが、その電池蓋14の周辺部は、セーフティーカバー31の周辺部に隣接されている。
【0061】
セーフティーカバー31は、電池蓋14と同様に、交差方向V2に延在している。このため、セーフティーカバー31は、電池素子20に対向する第2下面である下面31BSと、下面14BSに隣接された第2上面である上面31TSと、その下面31BSおよび上面31TSのそれぞれに連結された第2側面である側面31SSとを有している。上記したように、電池蓋14の周辺部は、セーフティーカバー31の周辺部に隣接されているため、電池蓋14の下面14BSは、セーフティーカバー31の上面31TSに隣接されている。
【0062】
この場合には、折り曲げ部11Pは、その折り曲げ部11Pと電池蓋14およびセーフティーカバー31との間にガスケット15が介在する状態において、下面31BS、側面31SS、側面14SSおよび上面14TSに対してこの順に沿うように折り曲げられている。このため、ガスケット15は、折り曲げ部11Pと同様に、下面31BS、側面31SS、側面14SSおよび上面14TSに対してこの順に沿うように折り曲げられている。
【0063】
これらのことから、折り曲げ部11Pによりガスケット15が電池蓋14およびセーフティーカバー31のそれぞれに押し付けられていると共に、その折り曲げ部11Pがガスケット15を介して電池蓋14およびセーフティーカバー31を上下から挟んでいる。これにより、折り曲げ部11Pと電池蓋14およびセーフティーカバー31との間の隙間がガスケット15により封止されている共に、その電池蓋14およびセーフティーカバー31がガスケット15を介して電池缶11に固定されている。
【0064】
なお、ガスケット15の厚さは、特に限定されない。中でも、ガスケット15が側面14SSおよび上面14TSに対してこの順に沿うように折り曲げられているため、そのガスケット15の厚さは、側面14SSから上面14TSに向かうにしたがって次第に減少していることが好ましい。折り曲げ部11Pによりガスケット15が電池蓋14に押し付けられる力(押し付け力F)を利用して、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間がガスケット15により封止されやすくなるからである。
【0065】
このため、折り曲げ部11Pのうちの側面14SSに沿うように延在している部分(後述する傾斜部11PP1)は、上記したガスケット15の厚さの減少に応じて傾斜していてもよい。すなわち、折り曲げ部11Pのうちの側面14SSに沿うように延在している部分は、その側面14SSから上面14TSに向かうにしたがって次第に電池蓋14に接近していてもよい。
【0066】
また、ガスケット15の先端の位置は、特に限定されない。中でも、ガスケット15の先端は、折り曲げ部11Pの先端よりも突出していることが好ましい。折り曲げ部11Pの先端近傍においても、上記した押し付け力Fを利用して折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間がガスケット15により封止されやすくなるからである。
【0067】
また、折り曲げ部11Pの上端の位置は、特に限定されない。中でも、折り曲げ部11Pの上端の位置は、電池蓋14の上端の位置よりも低いことが好ましい。すなわち、収納方向V1において、折り曲げ部11Pの上端は、電池蓋14の上端よりも電池素子20に近い側に位置していることが好ましい。折り曲げ部11Pの上端と電池蓋14の上端との間に距離Hが設けられるため、外部タブ(図示せず)の設置スペースが確保されるからである。これにより、正極21の外部接続用端子として機能する電池蓋14に外部タブが接続されやすくなる。
【0068】
なお、ガスケット15の表面は、
図4に示したように、保護層16により被覆されており、その保護層16は、アスファルトを含んでいてもよい。ガスケット15の表面が保護層16により被覆されていない場合と比較して、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間がガスケット15により封止されやすくなるからである。
【0069】
この保護層16は、溶媒およびアスファルトを含むペーストがガスケット15の表面に塗布されることにより、そのガスケット15の表面を被覆するように形成されている。保護層16の形成量(塗布量)である面積密度(mg/cm2 )は、特に限定されないが、中でも、0.060mg/cm2 ~0.100mg/cm2 であることが好ましい。ガスケット15による封止性が担保されながら、粘着性を有する保護層16(アスファルト)を用いても二次電池の製造性(製造効率)が担保されるからである。
【0070】
[加締め構造に関する構成条件]
この二次電池では、優れた安全性を得るために、加締め構造11Rに関する構成条件が適正化されている。以下では、
図2および
図3を参照する。
【0071】
(外径D1および折り曲げ率R1)
具体的には、上記したように、ここで説明する二次電池は大口径の二次電池であるため、交差方向V2において折り曲げ部11Pに基づいて規定される電池缶11の外径D1(mm)は、25mm~27mmである。
【0072】
この場合において、上記した外径D1に対する、交差方向V2における先端部11PPの長さL1(mm)の割合である折り曲げ率R1(%)は、8.0%~10.0%である。この折り曲げ率R1は、R1=(L1/D1)×100という計算式に基づいて算出される。
【0073】
ここで説明する電池缶11の「外径D1」は、いわゆる最大外径である。上記したように、折り曲げ部11Pのうちの側面14SSに沿うように延在している部分(後述する傾斜部11PP1)がガスケット15の厚さの減少に応じて傾斜している場合には、その折り曲げ部11Pに基づいて規定される電池缶11の外径D1が場所(測定位置)に応じて変動し得るからである。
【0074】
折り曲げ率R1に関して上記した適正条件が満たされていれば、長さL1は、特に限定されない。中でも、長さL1は、2.1mm~2.6mmであることが好ましい。外径D1の範囲に対して長さL1の範囲が適正化されるため、折り曲げ率R1に関して適正条件が満たされやすくなるからである。
【0075】
折り曲げ率R1に関して適正条件が満たされているのは、外径D1が上記した範囲内である場合において、その外径D1と長さLとの関係が適正化されるため、二次電池の安全性が向上するからである。
【0076】
具体的には、折り曲げ率R1に関して適正条件が満たされていない場合には、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間がガスケット15により封止されにくくなる。
【0077】
折り曲げ率R1が8.0%よりも小さいと、外径D1に対して長さL1が小さすぎるため、押し付け力Fが根本的に不足する。これにより、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間に隙間が発生しやすくなるため、その隙間がガスケット15により封止されにくくなる。
【0078】
一方、折り曲げ率R1が10.0%よりも大きいと、外径D1に対して長さL1が大きすぎるため、加締め構造11Rの形成工程において折り曲げ部11Pが折り曲げられた際に、その折り曲げ部11Pが先端近傍において波打ちしやすくなる。この「波打ち」とは、折り曲げ部11Pが先端近傍において波立つように変形する現象である。この場合には、外径D1に対して長さL1が十分に大きいにもかかわらず、折り曲げ部11Pの先端近傍では押し付け力Fが低下する。これにより、二次電池の落下時の衝撃などの外力に起因して折り曲げ部11Pと電池蓋14との間に隙間が発生しやすくなるため、その隙間がガスケット15により封止されにくくなる。
【0079】
これに対して、折り曲げ率R1が8.0%~10.0%であると、外径D1に対して折り曲げ長さL1が適正化されるため、押し付け力Fが担保されながら、折り曲げ部11Pが先端近傍において波打ちしにくくなる。これにより、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間に隙間が発生しにくくなるため、その隙間がガスケット15により封止されやすくなる。よって、加締め構造11Rの封止強度が向上するため、安全弁機構30の有効な動作が担保される。すなわち、安全弁機構30は、電池缶11の内圧が十分に高くなるまでは作動せずに、その電池缶11の内圧が十分に高くなると作動する。
【0080】
これらのことから、折り曲げ率R1が適正条件を満たしていると、安全弁機構30の有効な動作が担保されるため、二次電池の安全性が向上する。
【0081】
この他、以下で説明するように、加締め構造11Rに関する他の構成条件が適正化されていてもよい。
【0082】
(外径D2およびオーバーラップ率R2)
上記したように、ここで説明する二次電池は大口径の二次電池であるため、交差方向V2における電池蓋14の外径D2(mm)は、24mm~26mmである。
【0083】
先端部11PPおよび電池蓋14は、上記したように、収納方向V1において互いにオーバーラップしている。この場合において、上記した外径D2に対する、先端部11PPおよび電池蓋14が互いにオーバーラップする範囲の交差方向V2における長さL2(mm)の割合であるオーバーラップ率R2(%)は、特に限定されないが、中でも、4.0%~6.0%であることが好ましい。このオーバーラップ率R2は、R2=(L2/D2)×100という計算式に基づいて算出される。
【0084】
オーバーラップ率R2に関して上記した適正条件が満たされていれば、長さL2は、特に限定されない。中でも、長さL2は、1.0mm~1.5mmであることが好ましい。外径D2の範囲に対して長さL2の範囲が適正化されるため、オーバーラップ率R2に関して適正条件が満たされやすくなるからである。
【0085】
オーバーラップ率R2に関して適正条件が満たされているのは、二次電池の安全性がより向上するからである。
【0086】
具体的には、オーバーラップ率R2に関して適正条件が満たされていない場合には、電池蓋14が電池缶11に固定されにくくなる。
【0087】
オーバーラップR2が4.0%よりも小さいと、外径D2に対して長さL2が小さすぎるため、折り曲げ部11Pが根本的にガスケット15を介して電池蓋14を抱え込みにくくなる。これにより、電池蓋14が電池缶11に固定されにくくなるため、二次電池の落下時の衝撃などの外力に起因して、電池蓋14が電池缶11から脱落しやすくなると共に、その電池缶11の内部から電解液が流出(漏液)しやすくなる。
【0088】
一方、オーバーラップ率R2が6.0%よりも大きいと、外径D2に対して長さL2が大きすぎるため、折り曲げ部11Pが先端近傍において波打ちしやすくなる。この場合には、外径D2に対して長さL2が十分に大きいにもかかわらず、折り曲げ部11Pが実質的にガスケット15を介して電池蓋14を抱え込みにくくなる。これにより、電池蓋14が電池缶11に固定されにくくなるため、電池蓋14が脱落しやすくなると共に電解液が漏液しやすくなる。
【0089】
これに対して、オーバーラップ率R2が4.0%~6.0%であると、外径D2に対して長さL2が適正化されるため、折り曲げ部11Pがガスケット15を介して電池蓋14を抱え込みやすくなると共に、その折り曲げ部11Pが先端近傍において波打ちしにくくなる。これにより、電池蓋14が電池缶11に固定されやすくなるため、電池蓋14が脱落しにくくなると共に電解液が漏液しにくくなる。
【0090】
これらのことから、オーバーラップ率R2に関して適正条件が満たされていると、電池蓋14の脱落および電解液の漏液が抑制されながら、安全弁機構30の有効な動作が担保されるため、二次電池の安全性がより向上する。
【0091】
(クリンプ角度θおよび厚さ差DT)
上記したように、ガスケット15の厚さが側面14SSから上面14TSに向かうにしたがって次第に減少している場合には、その厚さの減少に応じて先端部11PPがガスケット15の表面に沿うように傾斜している。
【0092】
これにより、先端部11PPは、傾斜部11PP1,11PP2を含んでいる。傾斜部11PP1は、側面14SSに沿うように延在している第1先端部である。傾斜部11PP2は、上面14TSに沿うように延在している第2先端部であり、傾斜部11PP1に連結されている。
【0093】
この場合において、傾斜部11PP1が延在する方向と傾斜部11PP2が延在する方向とにより規定される角度であるクリンプ角度θは、特に限定されないが、中でも、80°~90°であることが好ましい。
【0094】
また、上記したように、ガスケット15の厚さが次第に減少していると共に、セーフティーカバー31が電池蓋14に隣接されている場合において、収納方向V1において下面31BSに対応する位置におけるガスケット15の厚さT1(mm)から、交差方向V2において折り曲げ部11Pの先端に対応する位置におけるガスケット15の厚さT2(mm)を差し引いた厚さ差DT(mm)は、特に限定されないが、中でも、0.10mm~0.29mmであることが好ましい。この厚さ差DTは、DT=T1-T2という計算式に基づいて算出される。
【0095】
厚さ差DTに関して上記した適正条件が満たされていれば、厚さT1,T2のそれぞれは、特に限定されない。中でも、厚さT1は、0.47mm~0.66mmであることが好ましいと共に、厚さT2は、0.27mm~0.46mmであることが好ましい。クリンプ角度θの範囲に対して厚さT1,T2のそれぞれの範囲が適正化されるため、厚さ差DTに関して適正条件が満たされやすくなるからである。
【0096】
クリンプ角度θおよび厚さ差DTのそれぞれに関して適正条件が満たされているのは、二次電池の安全性が担保されながら、電池蓋14に外部タブが接続されやすくなるからである。
【0097】
厚さT1が一定である場合において、厚さ差DTが0.10μmよりも小さいと、ガスケット15の先端近傍の厚さが大きすぎるため、距離Hが著しく小さくなる。これにより、電池蓋14に外部タブを接続するためのスペースが不足するため、その電池蓋14に外部タブが接続されにくくなる可能性がある。
【0098】
一方、厚さT1が一定である場合において、厚さ差DTが0.29μmよりも大きいと、ガスケット15の先端近傍の厚さが小さすぎるため、外力に起因してガスケット15が先端近傍において割れやすくなる。これにより、外力に起因して電池蓋14が脱落しやすくなると共に電解液が漏液しやすくなる可能性がある。
【0099】
これに対して、厚さ差DTが0.10μm~0.29μmであると、距離Hが大きくなるため、電池蓋14に外部タブを接続するためのスペースが確保されると共に、ガスケット15が先端近傍において割れにくくなるため、電池蓋14の脱落および電解液の漏液が抑制される。よって、二次電池の安全性が担保されながら、電池蓋14に外部タブが接続されやすくなる。
【0100】
(先端部の厚さT3)
先端部11PPの厚さT3(mm)は、特に限定されないが、中でも、0.27mm~0.31mmであることが好ましい。電池素子20(正極21および負極22)のサイズが十分に大きくなるため、電池容量が担保されながら、電池蓋14に外部タブが接続されやすくなるからである。
【0101】
厚さT3が0.27μmよりも小さいと、折り曲げ部11Pの物理的強度が不足するため、その折り曲げ部11Pがガスケット15を介して電池蓋14を抱え込みにくくなると共に、その折り曲げ部11Pが変形しやすくなる。これにより、電池缶11の内圧が上昇すると、電池蓋14が脱落しやすくなると共に電解液が漏液しやすくなる可能性がある。
【0102】
一方、厚さT3が0.31mmよりも大きいと、収納方向V1における電池缶11の寸法(高さ)が一定である場合において、その電池缶11の内部における電池素子20の占有体積が減少するため、充放電面積が小さくなる。この「充放電面積」とは、充放電反応を行うことが可能な領域の面積であり、いわゆる正極21と負極22とが互いに対向する領域の面積である。これにより、充電量および放電量のそれぞれが減少するため、電池容量が減少しやすくなる可能性がある。
【0103】
これに対して、厚さT3が0.27μm~0.31μmであると、折り曲げ部11Pの物理的強度が担保されるため、電池缶11の内圧が上昇しても電池蓋14の脱落および電解液の漏液が抑制されると共に、充放電面積の増加に応じて充電量および放電量のそれぞれが増加するため、電池容量が減少する。よって、電池容量が担保されながら、電池蓋14に外部タブが接続されやすくなる。
【0104】
(総厚TT)
電池蓋14の厚さT4(mm)とセーフティーカバー31の厚さT5(mm)とを互いに足し合わせた総厚TT(mm)は、特に限定されないが、中でも、1.0mm~1.4mmであることが好ましい。この総厚TTは、TT=T4+T5という計算式に基づいて算出される。
【0105】
総厚TTに関して上記した適正条件が満たされていれば、厚さT4,T5のそれぞれは、特に限定されない。中でも、厚さT4は、0.6mm~0.8mmであることが好ましいと共に、厚さT5は、0.4mm~0.6mmであることが好ましい。厚さT4,T5のそれぞれの範囲が適正化されるため、総厚TTに関して適正条件が満たされやすくなるからである。
【0106】
総厚TTに関して適正条件が満たされているのは、電池容量が担保されながら、電池蓋14に外部タブが接続されやすくなるからである。
【0107】
総厚TTが1.0mmよりも小さいと、電池缶11を閉塞している電池蓋14などの物理的耐久性が低下するため、電池缶11の内圧の上昇に起因して電池蓋14などが変形しやすくなる。これにより、電池缶11の内圧が上昇すると、電池蓋14が脱落しやすくなると共に電解液が漏液しやすくなる可能性がある。
【0108】
一方、総厚TTが1.4mmよりも大きいと、収納方向V1における電池缶11の寸法(高さ)が一定である場合において、その電池缶11の内部における電池素子20の占有体積が減少するため、電池容量が減少しやすくなる可能性がある。
【0109】
これに対して、総厚TTが1.0mm~1.4mmであると、電池蓋14などの物理的耐久性が向上するため、電池缶11の内圧が上昇しても電池蓋14の脱落および電解液の漏液が抑制されると共に、その電池缶11の内部における電池素子20の占有体積が増加するため、電池容量も増加する。よって、電池容量が担保されながら、電池蓋14に外部タブが接続されやすくなる。
【0110】
(算術平均粗さRa1,Ra2)
電池缶11の内壁面の算術平均粗さRaは、特に限定されない。中でも、電池缶11の内壁面の算術平均粗さRaは、場所に応じて異なっていることが好ましい。
【0111】
具体的には、電池缶11は、窪み部11Uの位置を基準として規定される内壁面11M1,11M2を有している。内壁面11M1は、収納方向V1において窪み部11Uの位置を基準として電池蓋14に近い側(外側W1)における電池缶11の内壁面である。一方、内壁面11M2は、窪み部11Uを介して内壁面11M1の反対側に位置する内壁面であり、すなわち収納方向V1において窪み部11Uの位置を基準として電池蓋14から遠い側(内側W2)における電池缶11の内壁面である。
【0112】
この場合において、内壁面11M1の算術平均粗さRaである算術平均粗さRa1は、内壁面11M2の算術平均粗さRaである算術平均粗さRa2よりも小さいことが好ましい。
【0113】
算術平均粗さRa1,Ra2に関して上記した適正条件が満たされていれば、その算術平均粗さRa1,Ra2のそれぞれは、特に限定されない。中でも、算術平均粗さRa1は、0.4μm以下であることが好ましいと共に、算術平均粗さRa2は、0.4μmよりも大きいことが好ましい。算術平均粗さRa1,Ra2それぞれの範囲が適正化されるため、その算術平均粗さRa1,Ra2に関して適正条件が満たされやすくなるからである。
【0114】
算術平均粗さRa1,Ra2に関して適正条件が満たされているのは、電池缶11の溶解が抑制されながら、電解液の漏液も抑制されるからである。
【0115】
具体的には、算術平均粗さRa1が算術平均粗さRa2よりも大きく、より具体的には算術平均粗さRa1が0.4μmよりも大きいと、外側W1における内壁面11M1の表面に電解液の流路となる複数の溝が形成されやすくなるため、その電解液が複数の溝に沿って流れやすくなる。これにより、内壁面11M1に電解液が付着すると、その電解液が漏液しやすくなる可能性がある。
【0116】
一方、算術平均粗さRa2が算術平均粗さRa1よりも小さく、より具体的には算術平均粗さRa2が0.4μm以下であると、内側W2における内壁面11M2の表面が平滑化されやすくなる。これにより、内壁面11M2に電解液が付着すると、その電解液が凝集(孤立)しやすくなるため、電池缶11が溶解されやすくなる可能性がある。
【0117】
これに対して、算術平均粗さRa1が算術平均粗さRa2よりも小さく、より具体的には算術平均粗さRa1が0.4μm以下であると共に算術平均粗さRa2が0.4μmよりも大きいと、内壁面11M1の表面に複数の溝が形成されにくくなるため、その内壁面11M1に付着した電解液が漏液しにくくなると共に、内壁面11M2の表面が平滑化されにくくなるため、その内壁面11M2に付着した電解液により電池缶11が溶解されにくくなる。よって、電池缶11の溶解が抑制されながら、電解液の漏液も抑制される。
【0118】
<1-4.電池素子の詳細な構成>
図5は、
図1に示した電池素子20の断面構成の一部を拡大している。この電池素子20は、上記したように、正極21、負極22、セパレータ23および電解液を含んでいる。
【0119】
[正極]
正極21は、
図5に示したように、正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bを含んでいる。
【0120】
正極集電体21Aは、正極活物質層21Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体21Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムなどである。
【0121】
ここでは、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、正極21が負極22に対向する側において正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。また、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などを含んでいてもよい。正極活物質層21Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などである。
【0122】
正極活物質は、リチウム化合物を含んでいる。このリチウム化合物は、リチウムを構成元素として含む化合物であり、より具体的には、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物である。高いエネルギー密度が得られるからである。ただし、リチウム化合物は、さらに、他元素(リチウムおよび遷移金属元素のそれぞれ以外の元素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0123】
リチウム化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム複合酸化物、スピネル型の結晶構造を有するリチウム複合酸化物およびオリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化合物などである。層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム複合酸化物の具体例は、LiNiO2 およびLiCoO2 などである。スピネル型の結晶構造を有するリチウム複合酸化物の具体例は、LiMn2 O4 などである。オリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化合物の具体例は、LiFePO4 およびLiMnPO4 などである。
【0124】
中でも、正極活物質は、オリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化合物を含んでいることが好ましい。オリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化合物の結晶構造は熱的に安定であるため、二次電池において過充電および内部短絡などに起因する熱暴走が発生しにくくなるからである。また、オリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化合物の結晶構造は強固であるため、二次電池の充放電を繰り返しても電池容量が低下しにくくなるからである。
【0125】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴムなどであると共に、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどである。
【0126】
正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0127】
[負極]
負極22は、
図5に示したように、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bを含んでいる。
【0128】
負極集電体22Aは、負極活物質層22Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体22Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、銅などである。
【0129】
ここでは、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、負極22が正極21に対向する側において負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。また、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。負極活物質層22Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0130】
負極活物質は、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方などを含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素の具体例は、ケイ素およびスズのうちの一方または双方などである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよい、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2または0.2<x<1.4)などである。
【0131】
[セパレータ]
セパレータ23は、
図5に示したように、正極21と負極22との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極21と負極22との短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ23は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0132】
[電解液]
電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などの非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。ただし、溶媒は、水性溶媒でもよい。電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg~3mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0133】
<1-5.動作>
図6および
図7のそれぞれは、二次電池の動作(後述する内圧上昇時の動作)を説明するために、
図2に対応する断面構成を表している。
【0134】
以下では、充放電時の動作に関して説明したのち、内圧上昇時の動作に関して説明する。この場合には、随時、
図6および
図7と共に
図2を参照する。
【0135】
[充放電時の動作]
充電時には、電池素子20において、正極21からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、電池素子20において、負極22からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極21に吸蔵される。これらの充電時および放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
【0136】
[内圧上昇時の動作]
二次電池の充放電時において、電池缶11の内圧が上昇すると、その二次電池の破裂および破損などを防止するために安全弁機構30が作動する。
【0137】
具体的には、二次電池の正常な動作時には、
図2に示したように、セーフティーカバー31が未だ開口していない。これにより、ストリッパーディスク33に開口部33Kが設けられていても、その開口部33K(ガスの放出経路)がセーフティーカバー31により閉塞されている。
【0138】
これに対して、電池缶11の内部において電解液の分解反応などの副反応に起因してガスが発生すると、そのガスが電池缶11の内部に蓄積されるため、その電池缶11の内圧が上昇する。この場合には、電池缶11の内圧が一定以上に到達すると、
図6に示したように、セーフティーカバー31が部分的に開口する。これにより、セーフティーカバー31の突起部31Tがサブディスク34から離間されることに起因して、そのセーフティーカバー31に開口部31Kが形成されるため、開口部33Kを利用したガスの放出経路が開放される。よって、電池缶11の内部において発生したガスが開口部33Kを経由して放出される。
【0139】
なお、内圧の大きさによっては、折り曲げ部11Pが変形するため、加締め構造11Rが破壊される。これにより、
図7に示したように、電池缶11から電池蓋14が脱落するため、二次電池の外部にガスが放出される。
【0140】
<1-6.製造方法>
図8および
図9のそれぞれは、二次電池の製造工程を説明するために、
図3に対応する断面構成を表している。
【0141】
[正極の作製]
最初に、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを互いに混合させることにより、正極合剤とする。続いて、溶媒に正極合剤を分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとする。溶媒の種類は、特に限定されないため、水性溶媒でもよいし、非水溶媒(有機溶剤)でもよい。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層21Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、その正極活物質層21Bの圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが形成されるため、正極21が作製される。
【0142】
[負極の作製]
上記した正極21と同様の手順により、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成する。具体的には、負極活物質と、負正極結着剤および負極導電剤などとを互いに混合させることにより、負極合剤としたのち、溶媒に負極合剤を分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとする。溶媒に関する詳細は、上記した通りである。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層22Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて負極活物質層22Bを圧縮成型する。圧縮成型に関する詳細は、上記した通りである。これにより、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが形成されるため、負極22が作製される。
【0143】
[二次電池の組み立て]
最初に、溶接法などを用いて正極21(正極集電体21A)に正極リード25を接続させると共に、溶接法などを用いて負極22(負極集電体22A)に負極リード26を接続させる。続いて、セパレータ23を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、中心空間20Cを有する巻回体を形成する。この巻回体は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子20の構成と同様の構成を有している。続いて、巻回体の中心空間20Cにセンターピン24を挿入する。
【0144】
続いて、
図8に示したように、窪み部11Uが設けられていない電池缶11を準備したのち、巻回体を介して絶縁板12,13を互いに対向させながら、その絶縁板12,13と一緒に巻回体を電池缶11の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて正極リード25を安全弁機構30に接続させると共に、溶接法などを用いて負極リード26を電池缶11に接続させる。
【0145】
続いて、ビーディング加工機(溝付け加工機)を用いて電池缶11を加工することにより、
図9に示したように、電池缶11に窪み部11UZを形成する。ここで形成される窪み部11UZの深さPZは、最終的に形成される窪み部11U(
図3参照)の深さPよりも小さくなる。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入することにより、その電解液を巻回体に含浸させる。これにより、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに電解液が含浸されるため、電池素子20が作製される。続いて、電池缶11の内部にガスケット15と一緒に電池蓋14および安全弁機構30(セーフティーカバー31)を収納する。
【0146】
最後に、
図1に示したように、電池缶11の開放端部11Nにおいて、ガスケット15を介して開放端部11Nと電池蓋14および安全弁機構30とを互いに加締める。これにより折り曲げ部11Pが形成されるため、加締め構造11Rが形成される。こののち、プレス機を用いて、収納方向V1において電池缶11を潰す。これにより、電池缶11のうちの窪み部11UZの近傍部分が内側に向かって変形するため、
図3に示したように、窪み部11Uが形成される。よって、電池缶11の内部に電池素子20などが収納された状態において、その電池缶11が電池蓋14により閉塞されると共に、その電池缶11に電池蓋14などが固定されるため、二次電池が組み立てられる。
【0147】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、負極22の表面などに被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、電池缶11の内部に電池素子20などが封入されるため、円筒型の二次電池が完成する。
【0148】
<1-7.作用および効果>
この二次電池によれば、外径D1が25mm~27mmであると共に、折り曲げ率R1が8.0%~10.0%であるので、上記したように、大口径を有する二次電池においても、押し付け力Fが確保されると共に折り曲げ部11Pが波打ちしにくくなる。これにより、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間がガスケット15により封止されやすくなるため、加締め構造11Rの封止強度が向上する。よって、安全弁機構30の有効な動作が担保されるため、優れた安全性を得ることができる。
【0149】
特に、外径D2が24mm~26mmであると共に、オーバーラップ率R2が4.0%~6.0%であれば、大口径を有する二次電池においても、電池蓋14の脱落および電解液の漏液が抑制されながら安全弁機構30の有効な動作が担保されるため、より高い効果を得ることができる。
【0150】
また、ガスケット15の厚さが側面14SSから上面14TSに向かうにしたがって次第に減少していれば、押し付け力Fを利用して折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間がガスケット15により封止されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0151】
この場合には、クリンプ角度θが80°~90°であると共に、厚さ差DTが0.10mm~0.29mmであれば、二次電池の安全性が担保されながら電池蓋14に外部タブが接続されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0152】
また、厚さT3が0.27mm~0.31mmであれば、電池容量が担保されながら電池蓋14に外部タブが接続されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0153】
また、総厚TTが1.0mm~1.4mmであれば、電池容量が担保されながら電池蓋14に外部タブが接続されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0154】
また、算術平均粗さRa1が算術平均粗さRa2よりも小さくなっており、より具体的には算術平均粗さRa1が0.4μm以下であると共に算術平均粗さRa2が0.4μmよりも大きければ、電解液が漏液しにくくなると共に電池缶11が溶解されにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0155】
また、アスファルトを含む保護層16がガスケット15の表面を被覆しており、その保護層16の面積密度が0.060mg/cm2 ~0.100mg/cm2 であれば、そのガスケット15による封止性が担保されながら二次電池の製造性(製造効率)も担保されるため、より高い効果を得ることができる。
【0156】
また、電池蓋14がステンレスを含んでいれば、加締め構造11R(電池蓋14)の物理的強度が担保される。よって、電池缶11の内圧が上昇しても電池蓋14の脱落および電解液の漏液が抑制されるため、より高い効果を得ることができる。
【0157】
また、ガスケット15がポリプロピレンを含んでいれば、電池缶11と電池蓋14とが互いに電気的に分離されながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間が十分に封止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0158】
また、正極21がオリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化合物を含んでいれば、二次電池の熱暴走が発生しにくくなると共に、その二次電池の充放電を繰り返しても電池容量が低下しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0159】
また、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0160】
<2.変形例>
二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例のうちの任意の2種類以上は、互いに組み合わされてもよい。
【0161】
[変形例1]
多孔質膜であるセパレータ23を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、多孔質膜であるセパレータ23の代わりに、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを用いてもよい。
【0162】
具体的には、積層型のセパレータは、一対の面を有する多孔質膜と、その多孔質膜の片面または両面に配置された高分子化合物層とを含んでいる。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子20の位置ずれ(正極21、負極22およびセパレータのそれぞれの巻きずれ)が抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応などが発生しても、二次電池の膨れが抑制される。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンなどは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。
【0163】
なお、多孔質膜および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。二次電池の発熱時において複数の絶縁性粒子が放熱するため、その二次電池の安全性(耐熱性)が向上するからである。絶縁性粒子は、無機粒子および樹脂粒子などである。無機粒子の具体例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムなどの粒子である。樹脂粒子の具体例は、アクリル樹脂およびスチレン樹脂などの粒子である。
【0164】
積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および有機溶剤などを含む前駆溶液を調製したのち、多孔質膜の片面または両面に前駆溶液を塗布する。この場合には、前駆溶液に複数の絶縁性粒子を添加してもよい。
【0165】
この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極21と負極22との間においてリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0166】
[変形例2]
液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、電解液の代わりに、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
【0167】
電解質層を用いた電池素子20では、セパレータ23および電解質層を介して正極21および負極22が互いに積層されていると共に、その正極21、負極22、セパレータ23および電解質層が巻回されている。この電解質層は、正極21とセパレータ23との間に介在していると共に、負極22とセパレータ23との間に介在している。
【0168】
具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解質層中では、電解液が高分子化合物により保持されている。電解液の漏液が防止されるからである。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および有機溶剤などを含む前駆溶液を調製したのち、正極21および負極22のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
【0169】
この電解質層を用いた場合においても、正極21と負極22との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。
【0170】
<3.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の用途(適用例)に関して説明する。
【0171】
二次電池の用途は、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、電子機器および電動車両などの主電源または補助電源である。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源、または主電源から切り替えられる電源である。
【0172】
二次電池の用途の具体例は、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオおよび携帯用情報端末などの電子機器である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。電子機器などに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用または産業用のバッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。これらの用途では、1個の二次電池が用いられてもよいし、複数個の二次電池が用いられてもよい。
【0173】
電池パックは、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、その二次電池以外の駆動源を併せて備えたハイブリッド自動車でもよい。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に蓄積された電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。
【0174】
ここで、二次電池の適用例の一例に関して具体的に説明する。以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
【0175】
図10は、電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
【0176】
この電池パックは、
図10に示したように、電源51と、回路基板52とを備えている。この回路基板52は、電源51に接続されていると共に、正極端子53、負極端子54および温度検出端子55を含んでいる。
【0177】
電源51は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子53に接続されていると共に、負極リードが負極端子54に接続されている。この電源51は、正極端子53および負極端子54を介して外部と接続可能であるため、充放電可能である。回路基板52は、制御部56と、スイッチ57と、熱感抵抗素子(PTC素子)58と、温度検出部59とを含んでいる。ただし、PTC素子58は省略されてもよい。
【0178】
制御部56は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部56は、必要に応じて電源51の使用状態の検出および制御を行う。
【0179】
なお、制御部56は、電源51(二次電池)の電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ57を切断することにより、電源51の電流経路に充電電流が流れないようにする。一例を挙げると、過充電検出電圧は、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、2.4V±0.1Vである。
【0180】
スイッチ57は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部56の指示に応じて電源51と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ57は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ57のON抵抗に基づいて検出される。
【0181】
温度検出部59は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでおり、温度検出端子55を用いて電源51の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部56に出力する。温度検出部59により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部56が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部56が補正処理を行う場合などに用いられる。
【実施例】
【0182】
本技術の実施例に関して説明する。
【0183】
<実施例1-1~1-4および比較例1-1~1-4>
二次電池を作製したのち、その二次電池の電池特性を評価した。
【0184】
[二次電池の作製]
以下で説明する手順により、
図1~
図5に示した円筒型のリチウムイオン二次電池(直径=外径D1(mm)および長さ65mm)を作製した。
【0185】
(正極の作製)
最初に、正極活物質(LiFePO4 )94質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)3質量部とを互いに混合させることにより、正極合剤とした。続いて、溶媒(有機溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21A(厚さ=15μmである帯状のアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。
【0186】
(負極の作製)
最初に、負極活物質(黒鉛)95質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、負極導電剤2質量部(カーボンブラック)とを互いに混合させることにより、負極合剤とした。続いて、溶媒(有機溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン)に負極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体22A(厚さ=15μmである帯状の銅箔)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層22Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。
【0187】
(電解液の調製)
溶媒(炭酸エチレン、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジメチル)に電解質塩(LiPF6 )を添加したのち、その溶媒を撹拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸エチルメチル:炭酸ジメチル=20:20:60とすると共に、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。
【0188】
(二次電池の組み立て)
最初に、正極21(正極集電体21A)にアルミニウム製の正極リード25を溶接すると共に、負極22(負極集電体22A)にニッケル製の負極リード26を溶接した。続いて、セパレータ23(厚さ=16μmである多孔性ポリエチレンフィルム)を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、中心空間20Cを有する巻回体を作製した。続いて、巻回体の中心空間20Cにセンターピン24を挿入した。
【0189】
続いて、アルミニウム製のセーフティーカバー31(厚さT5)と、ポリプロピレン製のディスクホルダ32と、アルミニウム製のストリッパーディスク33と、アルミニウム製のサブディスク34とを含む安全弁機構30を準備した。この場合には、6個の開口部33Kが設けられているストリッパーディスク33を用いた。
【0190】
続いて、ニッケル鍍金された鉄製の電池缶11(外径D1,折り曲げ部11Pの厚さT3)の内部に、一対の絶縁板12,13と共に巻回体を収納した。外径D1(mm)は、表1に示した通りである。この場合には、正極リード25を安全弁機構30(サブディスク34)に溶接すると共に、負極リード26を電池缶11に溶接した。続いて、ビーディング加工機を用いて電池缶11を加工することにより、窪み部11UZ(深さPZ)を形成した。続いて、減圧方式を用いて電池缶11の内部に電解液を注入した。これにより、電解液が巻回体に含浸されたため、電池素子20が作製された。
【0191】
続いて、溶媒(有機溶剤であるエチルシクロヘキサン)にアスファルトを添加したのち、その溶媒を撹拌することにより、塗布溶液を調製した。続いて、ガスケット15(ポリプロピレン,厚さT1,T2)の表面に塗布溶液を塗布したのち、その塗布溶液を乾燥させることにより、保護層16を形成した。
【0192】
最後に、保護層16により表面が被覆されているガスケット15を介して、電池缶11の開放端部11Nと電池蓋14(外径D2,厚さ4)および安全弁機構30とを互いに加締めることにより、加締め構造11Rを形成した。こののち、プレス機を用いて電池缶11を潰すことにより、窪み部11U(深さP)を形成した。
【0193】
加締め構造11Rを形成する場合には、折り曲げ部11Pの折り曲げ量などを調整することにより、長さL1および折り曲げ率R1のそれぞれを変化させた。長さL1および折り曲げ率R1のそれぞれは、表1に示した通りである。
【0194】
これにより、電池缶11の開放端部11Nが電池蓋14により閉塞されると共に、その電池缶11の内部に電池素子などが収納されたため、円筒型のリチウムイオン二次電池が組み立てられた。
【0195】
(二次電池の安定化)
常温環境中(温度=23℃)において二次電池を1サイクル充放電させた。充電時には、0.1Cの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.2Vの電圧で電流が0.05Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.1Cの電流で電圧が3.0Vに到達するまで定電流放電した。0.1Cとは、電池容量(理論容量)を10時間で放電しきる電流値であると共に、0.05Cとは、電池容量を20時間で放電しきる電流値である。
【0196】
これにより、二次電池の状態が電気化学的に安定化したため、円筒型のリチウムイオン二次電池が完成した。
【0197】
[電池特性の評価]
以下で説明する手順により、二次電池の電池特性(クリンプ特性および落下耐久特性)を評価したところ、表1に示した結果が得られた。
【0198】
(クリンプ特性)
二次電池の完成後において加締め構造11R(電池蓋14)の状態を観察することにより、クリンプ特性を評価するための指標である電池蓋14の変形量(シフト量:mm)を測定した。
【0199】
加締め構造11Rでは、長さL1の増加に応じて折り曲げ率R1が増加すると、電池蓋14の中央部がセーフティーカバー31の中央部に向かって変形しやすくなるため、ガスケット15を介して互いに加締められている折り曲げ部11Pおよび電池蓋14が緩みやすくなる。これにより、ガスケット15と折り曲げ部11Pとの間に発生する隙間を経由して電解液が漏液しやすくなると共に、ガスケット15と電池蓋14との間に発生する隙間を経由して電解液が漏液しやすくなる。
【0200】
(落下耐久特性)
二次電池の落下試験を行うことにより、落下耐久特性を評価するための指標である落下合格率(%)を求めた。
【0201】
具体的には、最初に、電圧が4.4Vに到達するまで二次電池を充電させた。続いて、加締め構造11R(折り曲げ部11P)が落下面となるように充電状態の二次電池を地面に落下させる作業を30回行うことにより、その落下時の衝撃に起因して不具合が発生したか否かを目視で確認した。この「不具合」とは、電池蓋14の脱落および電解液の漏液などである。これにより、不具合が1回も発生しなかった場合には、その不具合が発生しなかったと総合的に判定すると共に、不具合が1回でも発生した場合には、その不具合が発生したと総合的に判定した。この場合には、100個の二次電池を用いて、上記した判定作業を100回繰り返した(落下試験回数=100回)。最後に、(不具合が発生しなかった回数/100回)×100という計算式に基づいて、上記した落下合格率を算出した。
【0202】
【0203】
表1に示したように、変形量および落下合格率のそれぞれは、折り曲げ率R1(外径D1および長さL1)に応じて変動した。具体的には、外径D1が25mm~27mmである大口径の二次電池において、折り曲げ率R1が適正な範囲内(R1=8.0%~10.0%)である場合には、その折り曲げ率R1が適正な範囲外である場合と比較して、変形量が抑制されながら、高い落下合格率が得られた。
【0204】
<実施例2-1~2-8>
表2に示したように、外径D2(mm)、長さL2(mm)およびオーバーラップ率R2(%)のそれぞれを設定したことを除いて同様の手順により、二次電池を作製すると共に電池特性(ガス開放特性および落下耐久特性)を評価した。
【0205】
ここでは、上記したように、クリンプ特性の代わりにガス開放特性を評価した。この場合には、二次電池の加熱試験を行うことにより、ガス開放特性を評価するための指標である二次電池の開放圧(kgf/cm2 )を測定した。この加熱試験では、安全弁機構30の作動(開口部31Kの形成)に起因して電池缶11の内圧が開放されるまで二次電池(電池缶11)の中央部を加熱することにより、その開放時の内圧(開放圧)を測定した。この場合には、折り曲げ部11Pが変形したことに起因して加締め構造11Rが破壊されたため、電池缶11から電池蓋14が脱落したことに起因して電池缶11の内圧が開放された。
【0206】
【0207】
表2に示したように、外径D2が24mm~26mmである大口径の二次電池において、オーバーラップ率R2が適正な範囲内(R2=4.0%~6.0%)であると、開放圧が担保されながら、より高い落下合格率が得られた。
【0208】
<実施例3-1~3-9>
表3に示したように、クリンプ角度θ(°)、厚さT1,T2(mm)および厚さ差DT(mm)のそれぞれを設定したことを除いて同様の手順により、二次電池を作製すると共に電池特性(落下耐久特性)を評価した。
【0209】
【0210】
表3に示したように、クリンプ角度θが適正な範囲内(θ=80°~90°)であると共に厚さ差DTが適正な範囲内(DT=0.10mm~0.29mm)であると、より高い落下合格率が得られた。
【0211】
<実施例4-1~4-6>
表4に示したように、厚さT3(mm)を設定したことを除いて同様の手順により、二次電池を作製すると共に電池特性(ガス開放特性および電池容量特性)を評価した。
【0212】
ここでは、上記したように、クリンプ特性の代わりに電池容量特性を評価した。この場合には、常温環境中(温度=23℃)において二次電池を充放電させることにより、電池容量特性を評価するための指標である電池容量(Ah)を測定した。充放電条件は、上記した二次電池の安定化時の充放電条件と同様にした。
【0213】
【0214】
表4に示したように、厚さT4が適正な範囲内(T3=0.27mm~0.31mm)であると、開放圧が担保されながら、高い電池容量が得られた。
【0215】
<実施例5-1~5-5>
表5に示したように、厚さT4,T5(mm)および総厚TT(mm)のそれぞれを設定したことを除いて同様の手順により、二次電池を作製すると共に電池特性(ガス開放特性および電池容量特性)を評価した。
【0216】
【0217】
表5に示したように、総厚TTが適正な範囲内(TT=1.0mm~1.4mm)であると、開放圧が担保されながら、高い電池容量が得られた。
【0218】
<実施例6-1~6-6>
表6に示したように、算術平均粗さRa1,Ra2(μm)を設定したことを除いて同様の手順により、二次電池を作製すると共に電池特性(落下耐久特性および耐電圧特性)を評価した。
【0219】
ここでは、上記したように、クリンプ特性の代わりに耐電圧特性を評価した。この場合には、最初に、常温環境中(温度=23℃)において二次電池を充放電させた。充放電条件は、放電時の電圧を3.25Vに変更したことを除いて、上記した二次電池の安定化時の充放電条件と同様にした。続いて、同環境中において二次電池を放置(放置時間=1月間)したのち、その放置後の二次電池の電圧が3.2V以下まで低下したかどうかを判定した。この場合には、10000個の二次電池を用いて、上記した判定作業を10000回繰り返した。最後に、開回路電圧(OCV)不良率=(電圧低下が発生した二次電池の個数/10000個)×100という計算式に基づいて、耐電圧特性を評価するための指標であるOCV不良率(%)を算出した。
【0220】
【0221】
表6に示したように、算術平均粗さRa1が算術平均粗さRa2よりも小さいと、OCV不良率が抑制されながら、より高い落下合格率が得られた。この場合には、算術平均粗さRa1,Ra2のそれぞれが適正な範囲内(Ra1≦0.4μm,Ra2>0.4μm)であると、落下合格率が十分に大きくなると共に、OCV不良数が十分に小さくなった。
【0222】
<実施例7-1~7-7>
表7に示したように、塗布溶液の濃度(%)を設定することにより、保護層16の面積密度(mg/cm2 )を設定したことを除いて同様の手順により、二次電池を作製すると共に電池特性(落下耐久特性および電池組み立て特性)を評価した。
【0223】
ここでは、上記したように、クリンプ特性の代わりに電池組み立て特性を評価した。この場合には、保護層16が設けられたガスケット15を自動搬送させながら二次電池の組み立て試験を行うことにより、(二次電池の組み立てを実際に行うことができた時間/1日における二次電池の組み立て機の稼働すべき時間)×100という計算式に基づいて、電池組み立て特性を評価するための指標である稼働率(%)を算出した。この場合には、保護層16が粘着性を有していることに起因して自動搬送路においてガスケット15の搬送不良(いわゆる部品詰まり)が発生すると、そのガスケット15の搬送不良を改善するために二次電池の組み立てを一時的に中止しなければならかったため、上記した「二次電池の組み立てを行うことができた時間」が短くなった。
【0224】
【0225】
表7に示したように、保護層16の面積密度が適正な範囲内(形成量=0.060mg/cm2 ~0.100mg/cm2 )であると、高い落下合格率が得られながら、高い稼働率が得られた。
【0226】
<実施例8-1~8-3>
表8に示したように、電池缶11の材質を設定したことを除いて同様の手順により、二次電池を作製すると共に電池特性(落下耐久特性)を評価した。
【0227】
ここでは、電池缶11の材質として、ステンレス(SUS430およびSUS304)および鉄(SPCC)を用いた。表8には、参考までに、電池缶11の材質の引張強度(N/mm2 )も併せて示している。
【0228】
【0229】
表8に示したように、電池缶11がステンレスを含んでいると、より高い落下合格率が得られた。
【0230】
[まとめ]
表1~表8に示した結果から、外径D1が25mm~27mmであると共に折り曲げ率R1が8.0%~10.0%であると、クリンプ特性および落下耐久特性の双方が改善された。よって、大口径を有する二次電池において優れた安全性が得られた。
【0231】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、本技術は、一実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
【0232】
具体的には、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明した。しかしながら、電池素子の素子構造は、特に限定されないため、正極および負極が互いに積層されている積層型でもよいし、正極および負極がジグザグに折り畳まれている九十九折り型でもよいし、それ以外でもよい。
【0233】
また、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0234】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。