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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20240305BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240305BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20240305BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240305BHJP
【FI】
B60K1/00
H02K7/116
F16H1/06
H02M7/48 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022559195
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2021039639
(87)【国際公開番号】W WO2022092145
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2020180911
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮平
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/202963(WO,A1)
【文献】特開2009-262859(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067281(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/105353(WO,A1)
【文献】特開2020-018143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0290530(US,A1)
【文献】特開2015-137010(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
H02K 7/116
F16H 1/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機からの動力伝達経路に設けられた複数のギヤと、
前記回転電機から複数の前記ギヤを介して伝達される駆動力を一対の車輪に分配する差動歯車機構と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備え、
前記回転電機及び複数の前記ギヤを収容する第1収容室と、前記インバータ装置を収容する第2収容室とを形成するように一体成形されたケース本体部を有するケースをさらに備え、
前記第1収容室は、前記回転電機を収容する回転電機収容室と、複数の前記ギヤを収容するギヤ収容室と、を有し、
前記ケース本体部は、前記回転電機及び前記ギヤの径方向外側を囲む周壁部と、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁と、前記第1収容室における、前記回転電機収容室と前記ギヤ収容室との間に配置された区画部材と、を有し、
前記回転電機の回転軸に沿う方向を軸方向として、
前記隔壁は、前記区画部材を挟んで前記軸方向の両側に亘って、前記回転電機と前記径方向外側で重なる位置から前記ギヤの少なくとも一つと前記径方向外側で重なる位置まで前記軸方向に延びるよう形成され
前記ケースは、前記ケース本体部に加えて、前記軸方向の少なくとも一方側から前記ケース本体部に接合されるカバー部を備え、
前記ケース本体部における前記第2収容室を形成する部分は、前記隔壁から前記軸方向に延出すると共に前記ケース本体部と前記カバー部との接合面と重複する張り出し部を有する、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転電機のロータを回転可能に支持するロータ軸受が、前記区画部材に支持されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
一対の前記車輪のそれぞれに駆動連結される出力部材を備えると共に、一対の前記出力部材の一方と前記差動歯車機構とを連結する連結軸を備え、
前記隔壁は、上下方向視で前記連結軸と重複するように形成されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記軸方向において、複数の前記ギヤに対して前記回転電機が配置される側を軸方向第1側として、
前記隔壁は、前記回転電機の前記軸方向における配置領域の中心位置よりも、前記軸方向第1側まで延びるように形成されている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記張り出し部は、前記軸方向に直交する方向に前記接合面と離間していると共に、前記接合面よりも前記カバー部の側に突出するように形成されている、請求項1から4の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記張り出し部は、前記軸方向において前記ギヤ収容室の側に設けられ、
前記ギヤ収容室は、前記ケース本体部と、前記カバー部とに亘って形成されている、請求項1から5の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
回転電機と、
前記回転電機からの動力伝達経路に設けられた複数のギヤと、
前記回転電機から複数の前記ギヤを介して伝達される駆動力を一対の車輪に分配する差動歯車機構と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備え、
前記回転電機及び複数の前記ギヤを収容する第1収容室と、前記インバータ装置を収容する第2収容室とを形成するように一体成形されたケース本体部を有するケースをさらに備え、
前記第1収容室は、前記回転電機を収容する回転電機収容室と、複数の前記ギヤを収容するギヤ収容室と、を有し、
前記ケース本体部は、前記回転電機及び前記ギヤの径方向外側を囲む周壁部と、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁と、前記第1収容室における、前記回転電機収容室と前記ギヤ収容室との間に配置された区画部材と、を有し、
前記回転電機の回転軸に沿う方向を軸方向として、
前記隔壁は、前記区画部材を挟んで前記軸方向の両側に亘って、前記回転電機と前記径方向外側で重なる位置から前記ギヤの少なくとも一つと前記径方向外側で重なる位置まで前記軸方向に延びるよう形成され、
複数の前記ギヤは、前記回転電機のロータと一体回転するように連結された第1ギヤと、前記差動歯車機構と一体回転するように連結された第2ギヤとを含み、
前記インバータ装置の配置領域が前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの双方の前記軸方向の配置領域と重複する、車両用駆動装置。
【請求項8】
回転電機と、
前記回転電機からの動力伝達経路に設けられた複数のギヤと、
前記回転電機から複数の前記ギヤを介して伝達される駆動力を一対の車輪に分配する差動歯車機構と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備え、
前記回転電機及び複数の前記ギヤを収容する第1収容室と、前記インバータ装置を収容する第2収容室とを形成するように一体成形されたケース本体部を有するケースをさらに備え、
前記第1収容室は、前記回転電機を収容する回転電機収容室と、複数の前記ギヤを収容するギヤ収容室と、を有し、
前記ケース本体部は、前記回転電機及び前記ギヤの径方向外側を囲む周壁部と、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁と、前記第1収容室における、前記回転電機収容室と前記ギヤ収容室との間に配置された区画部材と、を有し、
前記回転電機の回転軸に沿う方向を軸方向として、
前記隔壁は、前記区画部材を挟んで前記軸方向の両側に亘って、前記回転電機と前記径方向外側で重なる位置から前記ギヤの少なくとも一つと前記径方向外側で重なる位置まで前記軸方向に延びるよう形成され、
前記回転電機は、第1軸上に配置され、
前記差動歯車機構は、前記第1軸と互いに平行な別軸である第2軸上に配置され、
複数の前記ギヤは、前記回転電機のロータと一体回転するように連結された第1ギヤと、前記差動歯車機構に連結されて前記回転電機からの駆動力を伝達する第2ギヤとを含み、
さらに、前記第1軸及び前記第2軸と平行な第3軸上に配置され、前記第1ギヤに噛み合う第3ギヤと、前記第3ギヤと一体的に回転すると共に前記第2ギヤに噛み合う第4ギヤとを備えたカウンタギヤ機構を備え、
前記第3軸は、前記第1軸と前記第2軸と結ぶ仮想面よりも上下方向において下方に配置され、
前記第3ギヤは、前記軸方向において前記第4ギヤよりも前記回転電機の側に配置され、
前記インバータ装置は、前記第3ギヤよりも上下方向における上方に位置して、且つ、上下方向視で前記第3ギヤ及び前記回転電機と重複するように配置されている、車両用駆動装置。
【請求項9】
回転電機と、
前記回転電機からの動力伝達経路に設けられた複数のギヤと、
前記回転電機から複数の前記ギヤを介して伝達される駆動力を一対の車輪に分配する差動歯車機構と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備え、
前記回転電機及び複数の前記ギヤを収容する第1収容室と、前記インバータ装置を収容する第2収容室とを形成するように一体成形されたケース本体部を有するケースをさらに備え、
前記第1収容室は、前記回転電機を収容する回転電機収容室と、複数の前記ギヤを収容するギヤ収容室と、を有し、
前記ケース本体部は、前記回転電機及び前記ギヤの径方向外側を囲む周壁部と、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁と、前記第1収容室における、前記回転電機収容室と前記ギヤ収容室との間に配置された区画部材と、を有し、
前記回転電機の回転軸に沿う方向を軸方向として、
前記隔壁は、前記区画部材を挟んで前記軸方向の両側に亘って、前記回転電機と前記径方向外側で重なる位置から前記ギヤの少なくとも一つと前記径方向外側で重なる位置まで前記軸方向に延びるよう形成され、
前記回転電機は、第1軸上に配置され、
前記差動歯車機構は、前記第1軸と互いに平行な別軸である第2軸上に配置され、
複数の前記ギヤは、前記回転電機のロータと一体回転するように連結された第1ギヤと、前記差動歯車機構に連結されて前記回転電機からの駆動力を伝達する第2ギヤとを含み、
さらに、前記第1軸及び前記第2軸と平行な第3軸上に配置され、前記第1ギヤに噛み合う第3ギヤと、前記第3ギヤと一体的に回転すると共に前記第2ギヤに噛み合う第4ギヤとを備えたカウンタギヤ機構を備え、
前記第3軸は、前記第1軸と前記第2軸と結ぶ仮想面よりも上下方向において上方に配置され、
前記第4ギヤは、前記軸方向において前記第3ギヤよりも前記回転電機の側に配置され、
前記インバータ装置は、前記第4ギヤ及び前記回転電機よりも上下方向における上方に位置して、且つ、上下方向視で前記第4ギヤ及び前記回転電機と重複するように配置されている、車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、複数のギヤと、差動歯車機構と、インバータ装置と、ケースとを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-229174号公報には、回転電機(3)と減速機(11)とインバータ装置(4)とを備えた機電一体型ユニット(1)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。減速機(11)は、回転電機(3)の駆動力を車輪へ伝達する伝達機構である。回転電機(3)及びインバータ装置(4)は、回転電機ハウジング部(21)とインバータハウジング部(22)とを一体的に有する共通ハウジング(2)に収容されており、減速機(11)は共通ハウジング(2)とは別体の減速機ハウジング(11a)に収容されている。インバータ装置(4)は回転電機(3)を収容する回転電機ハウジング部(21)の上方に配置されたインバータハウジング部(22)に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-229174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の機電一体型ユニットでは、インバータ装置は、上下方向視で回転電機と重複する領域に配置されている。つまり、インバータ装置の収容空間を確保するために、ハウジングが上下方向に拡大され、車両用駆動装置が大型化する傾向がある。上下方向へのハウジングの拡大を抑制しようとすると、インバータ装置の収容空間を水平方向に広げる必要が生じる。特開2017-229174号公報のように、共通ハウジング(2)と減速機ハウジング(11a)とが別体で構成されている場合、水平方向(この場合は、回転軸に沿った方向である軸方向)における共通ハウジング(2)の肉厚や減速機ケース(11a)の肉厚が厚くなる可能性がある。また、回転電機ハウジング部(21)や、減速機ハウジング(11a)における収容空間には無駄な空間が生じる可能性がある。つまり、収容される回転電機(3)や減速機(11)の大きさには変わりが無くても、車両用駆動装置の水平方向(軸方向)における体格が大きくなる。
【0005】
上記背景に鑑みて、上下方向及び水平方向において、装置全体が大型化することを抑制しつつ、回転電機、複数のギヤを含む駆動伝達機構、インバータ装置がケースに収納された車両用駆動装置の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた車両用駆動装置は、回転電機と、前記回転電機からの動力伝達経路に設けられた複数のギヤと、前記回転電機から複数の前記ギヤを介して伝達される駆動力を一対の車輪に分配する差動歯車機構と、前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備え、前記回転電機及び複数の前記ギヤを収容する第1収容室と、前記インバータ装置を収容する第2収容室とを形成するように一体成形されたケース本体部を有するケースをさらに備え、前記第1収容室は、前記回転電機を収容する回転電機収容室と、複数の前記ギヤを収容するギヤ収容室と、を有し、前記ケース本体部は、前記回転電機及び前記ギヤの径方向外側を囲む周壁部と、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁と、前記第1収容室における、前記回転電機収容室と前記ギヤ収容室との間に配置された区画部材と、を有し、前記回転電機の回転軸に沿う方向を軸方向として、前記隔壁は、前記区画部材を挟んで前記軸方向の両側に亘って、前記回転電機と前記径方向外側で重なる位置から前記ギヤの少なくとも一つと前記径方向外側で重なる位置まで前記軸方向に延びるよう形成されている。
【0007】
本構成によれば、インバータ装置の軸方向の配置領域を広く確保することができるので、ケースが、軸方向に直交する方向(例えば上下方向)に大型化することを抑制することができる。また、第1収容室と第2収容室とを形成するように、ケース本体部が一体形成されているので、ケースの部品点数を少なく抑えることができる。また、区画部材を有することによって、一体形成されたケース本体部において、回転電機収容室とギヤ収容室とを適切に形成することができる。回転電機収容室が形成されたケース部材と、ギヤ収容室が形成されたケース部材とを備える形態に比べて、ケースの部品点数を少なく抑えることができる。また、隔壁が区画部材を挟んで軸方向の両側に形成されているので、第1収容室の剛性、第2収容室の剛性、隔壁の剛性を確保し易い。即ち、本構成によれば、上下方向及び水平方向において、装置全体が大型化することを抑制しつつ、回転電機、複数のギヤを含む駆動伝達機構、インバータ装置がケースに収納された車両用駆動装置を提供することができる。
【0008】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の車両用駆動装置の一例を示す分解斜視図
図2】第1実施形態の車両用駆動装置の軸方向断面図
図3】第1実施形態の車両用駆動装置の軸方向部分断面図
図4】第1実施形態の車両用駆動装置の軸方向視図
図5】第1実施形態の車両用駆動装置の上面図
図6】第1実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
図7】回転電機を駆動する電気系統の模式的回路ブロック図
図8】第2実施形態の車両用駆動装置の軸方向断面図
図9】第2実施形態の車両用駆動装置の軸方向視図
図10】第2実施形態の車両用駆動装置の上面図
図11】第2実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1から図6は、第1実施形態に係る車両用駆動装置100の一例を示し、図8から図11は、第2実施形態に係る車両用駆動装置100の一例を示している。図7は、第1実施形態及び第2実施形態に共通する電気系統の模式的回路ブロック図を示している。第1実施形態と第2実施形態とにおいて同一の概念を示す要素については、同じ参照符号を用いている。
【0011】
図6及び図11に示すように、第1実施形態及び第2実施形態に共通して、車両用駆動装置100は、第1軸A1上に配置された回転電機MGと、第1軸A1と互いに平行な別軸である第2軸A2上に配置され、車輪Wと駆動連結される出力部材OUTと、回転電機MGからの動力伝達経路に設けられて、回転電機MGからの駆動力が伝達される複数のギヤGと、回転電機MGから複数のギヤGを介して伝達される駆動力を車輪に分配する差動歯車機構DFとを備えている。複数のギヤGには、カウンタギヤ機構CGを構成するギヤも含む。また、第1実施形態及び第2実施形態に共通して、カウンタギヤ機構CGは、第1軸A1及び第2軸A2に平行な別軸である第3軸A3上に配置されている。車両用駆動装置100には、動力発生装置としての回転電機MGと、車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に、回転電機MGの側から順に、カウンタギヤ機構CGを含む複数のギヤG、差動歯車機構DFが設けられている。
【0012】
上述したように、回転電機MGの軸心(第1軸A1)と出力部材OUTの軸心(第2軸A2)とは、互いに平行な別軸に配置されている。尚、差動歯車機構DFの軸心も第2軸A2である。カウンタギヤ機構CGの軸心(第3軸A3)は、第1軸A1及び第2軸A2に平行に配置されている。即ち、第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置されている。
【0013】
以下の説明においては、第1軸A1に平行な方向を軸方向Lとする。第1軸A1と第2軸A2とは互いに平行であるから、軸方向Lは第2軸A2にも平行な方向である。また、第3軸A3も、第1軸A1及び第2軸A2と互いに平行であるから、軸方向Lは第3軸A3にも平行な方向である。軸方向Lにおける一方側(本実施形態では、複数のギヤGに対して回転電機MGが配置される側)を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。
【0014】
また、上記の第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。尚、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。また、車両用駆動装置100が車両に取り付けられた状態で鉛直方向に沿う方向を「上下方向V」とする。また、本実施形態では、上下方向Vの一方側である上下方向第1側V1が上方であり、他方側である上下方向第2側V2が下方である。水平面に平行な状態で車両用駆動装置100が車両に取り付けられる場合には、径方向Rの1方向と上下方向Vとが一致する。
【0015】
また、軸方向L及び上下方向Vに直交する方向を「幅方向H」と称する。また、幅方向Hの一方側を幅方向第1側H1、他方側を幅方向第2側H2と称する。上下方向Vと同様に、径方向Rの1方向と幅方向Hとも一致する。尚、以下の説明では、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。また、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。本実施形態では、幅方向Hは、車両用駆動装置100が車両に取り付けられた状態での車両の前後方向に相当する。
【0016】
また、車両用駆動装置100は、回転電機MGを駆動制御するインバータ装置INVと、回転電機MG、複数のギヤG、差動歯車機構DF、インバータ装置INVを収容するケース1とを備えている(図1図2図4図8図9等参照)。ケース1は、回転電機MG及び複数のギヤGを収容する機器収容室5(第1収容室)と、インバータ装置INVを収容するインバータ収容室3(第2収容室)とを形成するように一体形成されたケース本体部11を備えている。ここで、「一体形成」とは、例えば1つの金型鋳造品(die casting)として、共通の材料により形成された一体部材のことを言う。尚、機器収容室5には、差動歯車機構DF、出力部材OUTの一部も収容されている。
【0017】
また、図1図2図8等に示すように、ケース1は、ケース本体部11に加えて、軸方向第1側L1からケース本体部11に接合される第1カバー部10aと、軸方向第2側L2からケース本体部11に接合される第2カバー部10bとのカバー部10を備えている。機器収容室5とインバータ収容室3とは、後述する隔壁70によって区画されており、機器収容室5は、第1カバー部10aと、ケース本体部11の隔壁70と、第2カバー部10bとによって囲われた空間として形成されている。
【0018】
インバータ収容室3は、図1図4図8図9等に示すように、上下方向Vに沿って隔壁70から立設された側壁部7と、側壁部7の上下方向第1側V1の端部に接合されるカバー部材79と、ケース本体部11の隔壁70とによって囲われた空間として形成されている。尚、後述するように、第1実施形態では、隔壁70は、機器収容室5とインバータ収容室3とを上下方向Vにおいて区画する上下方向隔壁17と、機器収容室5とインバータ収容室3とを幅方向Hにおいて区画する幅方向隔壁19とを含む(図1図4等参照)。図8図9に示すように、第2実施形態の隔壁70は、機器収容室5とインバータ収容室3とを上下方向Vにおいて区画する(上下方向隔壁17に相当する)。
【0019】
回転電機MGは、複数相の交流(例えば3相交流)により動作する回転電機(Motor/Generator)であり、電動機としても発電機としても機能することができる。図7に示すように、回転電機MGは、高圧バッテリBH(高圧直流電源)から電力の供給を受けて力行し、又は、車両の慣性力により発電した電力を高圧バッテリBHに供給する(回生する)。
【0020】
図2及び図8等に示すように、回転電機MGは、ケース1などに固定されたステータ81と、当該ステータ81の径方向内側に回転自在に支持されたロータ82とを有する。ステータ81は、ステータコアとステータコアに巻き回されたステータコイル83とを含み、ロータ82は、ロータコアとロータコアに配置された永久磁石とを含む。図2及び図6図8及び図15に示すように、回転電機MGのロータ82は、入力ギヤG1に駆動連結されている。即ち、入力ギヤG1は、回転電機MGから差動歯車機構DFに駆動力を伝達する複数のギヤGの1つであり、回転電機MGのロータ82と一体回転するようにロータ82に連結された第1ギヤに相当する。入力ギヤG1は、カウンタギヤ機構CGに駆動連結されている。
【0021】
図6図11等に示すように、カウンタギヤ機構CGは、第1軸A1及び第2軸A2と平行な第3軸A3上に配置され、入力ギヤG1を介して回転電機MGと差動歯車機構DFとを駆動連結している。第1実施形態及び第2実施形態に共通して、カウンタギヤ機構CGは、軸部材によって連結された2つのギヤ(カウンタドリブンギヤG2、カウンタドライブギヤG3)を有する。即ち、カウンタギヤ機構CGは、第3軸A3上に配置され、入力ギヤG1(第1ギヤ)に噛み合うカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)と、このカウンタドリブンギヤG2と一体的に回転すると共に後述する差動入力ギヤG4(第2ギヤ)に噛み合うカウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)とを備えている。
【0022】
図6図11に示すように、差動歯車機構DFは、出力部材OUTを介して車輪Wに駆動連結されている。図2図3図8に示すように、差動歯車機構DFは、互いに噛合する複数の傘歯車を含んで構成され、差動入力ギヤG4(第2ギヤ)に入力される回転及びトルクを、第1サイドギヤS1及び第2サイドギヤS2を介して一対の出力部材OUT(即ち、一対の車輪W)に分配して伝達する。差動歯車機構DFと一体回転するように連結された差動入力ギヤG4は、回転電機MGから差動歯車機構DFに駆動力を伝達する複数のギヤGの1つであり、差動歯車機構DFに連結されて回転電機MGからの駆動力を差動歯車機構DFに伝達する第2ギヤに相当する。図2図3図8に示すように、差動歯車機構DFは、差動入力ギヤG4を介して伝達された回転電機MGの駆動力を第1出力部材OUT1と第2出力部材OUT2とに分配する。これにより、車両用駆動装置100は、回転電機MGのトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。尚、当然ながら、第1サイドギヤS1及び第2サイドギヤS2は、差動歯車機構DFに含まれ、出力部材OUTには含まれない。
【0023】
図7に示すように、回転電機MGは、インバータ装置INVにより駆動制御される。第1実施形態及び第2実施形態に共通して、このインバータ装置INVもケース1(ケース本体部11)内に収容されている。インバータ装置INVは、直流電力と複数相の交流電力との間で電力を変換するインバータ回路60を備えている。インバータ回路60は、交流の回転電機MG及び高圧バッテリBHに接続されて、複数相(ここではU相、V相、W相の3相)の交流と直流との間で電力を変換する。高圧バッテリBHは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。回転電機MGが、車両の駆動力源の場合、高圧バッテリBHは、大電圧大容量の直流電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。インバータ回路60には、直流の正極電源ラインPと負極電源ラインNとの間の電圧(直流リンク電圧Vdc)を平滑する直流リンクコンデンサ64(平滑コンデンサ)が備えられている。直流リンクコンデンサ64は、回転電機MGの消費電力の変動に応じて変動する直流リンク電圧Vdcを安定化させる。
【0024】
インバータ回路60は、複数のスイッチング素子を有して構成されている。具体的には、インバータ回路60は、上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路により構成された交流1相分のアームを複数本(ここでは3本)備えている。スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。図7に示すように、本実施形態では、スイッチング素子としてIGBTが用いられる形態を例示している。本実施形態では、フリーホイールダイオードも含め、インバータ回路60が1つのパワーモジュールに一体化されてスイッチング素子モジュールが構成されている。
【0025】
図7に示すように、インバータ回路60は、インバータ制御装置65(M-CTRL)により制御される。インバータ制御装置65は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。インバータ制御装置65は、回転電機MGの目標トルクに基づいて、公知のベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路60を介して回転電機MGを制御する。回転電機MGの目標トルクは、例えば、車両内の上位の制御装置の1つである車両制御装置91(VCL-CTRL)等の他の制御装置等から要求信号として提供される。回転電機MGの各相のステータコイル83を流れる実電流は電流センサ84により検出される。また、回転電機MGのロータの各時点での磁極位置は、例えばレゾルバなどの回転センサ85により検出される。
【0026】
インバータ制御装置65は、電流センサ84及び回転センサ85の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。インバータ制御装置65は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。
【0027】
車両制御装置91やインバータ制御装置65は、高圧バッテリBHよりも低電圧(例えば12~24[V])の電源である低圧バッテリBL(低圧直流電源)から電力を供給されて動作する低圧系回路である。このため、インバータ制御装置65には、各スイッチング素子に対するスイッチング制御信号(IGBTの場合、ゲート駆動信号)の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて中継する駆動回路が備えられている。インバータ制御装置65は、1枚、又は複数の基板に、上述したようなマイクロコンピュータ、その周辺回路、並びに駆動回路を構成する回路部品が実装されて構成されている。
【0028】
インバータ装置INVは、上述したようなインバータ制御装置65、直流リンクコンデンサ64、インバータ回路60(パワーモジュール)を含んだユニットとして構成されている(図3図7等参照)。ユニットとしてのインバータ装置INVは、インバータ収容室3(第2収容室)に配置され、ボルト等の締結部材によってケース1に固定されている。尚、本明細書において、「インバータ装置INVと重複する」と称する場合、これらインバータ装置INVの構成要素の何れか1つ以上と重複する状態を言う。
【0029】
上述したように、ケース本体部11は、回転電機MG及び複数のギヤGを収容する機器収容室5と、インバータ装置INVを収容するインバータ収容室3とを形成するように一体成形されている。例えば、第1実施形態においては、図1の斜視図及び図4の軸方向視図に示すように、ケース本体部11は、回転電機MG及びギヤGの径方向Rの外側を囲む周壁部6と、機器収容室5とインバータ収容室3とを区画する隔壁70とを有している。そして、隔壁70は、軸方向Lにおいて、回転電機MGと重複する(図5参照)と共に、複数のギヤGの少なくとも1つと重複する(図2参照)。同様に、第2実施形態においても、図9の軸方向視図に示すように、ケース本体部11は、回転電機MG及びギヤGの径方向Rの外側を囲む周壁部6と、機器収容室5とインバータ収容室3とを区画する隔壁70とを有している。そして、図8に示すように、隔壁70は、軸方向Lにおいて、回転電機MGと重複すると共に、複数のギヤGの少なくとも1つと重複する。
【0030】
以下、より詳細な構造について、第1実施形態と第2実施形態とを分けて説明する。但し、共通する事項については、適宜説明を省略する場合がある。
【0031】
〔第1実施形態〕
機器収容室5は、回転電機MGを収容する回転電機収容室2と、複数のギヤGを収容するギヤ収容室4とを有している。尚、カウンタギヤ機構CG及び差動歯車機構DFも、ギヤ収容室4に収容される。また、ケース本体部11は、図2に示すように、軸方向Lにおいて回転電機収容室2とギヤ収容室4との間に配置された区画部材8を備えている。区画部材8は、図5に仮想線で示すように、幅方向Hに延在している。この区画部材8は、ケース本体部11とは独立した別部材として構成され、締結部材等を用いてケース本体部11に固定される形態であってもよいし、ケース本体部11と一体的に鋳造等によって形成される形態であってもよい(第2実施形態も同様)。尚、当然ながら、機器収容室5は、区画部材8によって複数の収容室に区分されていなくてもよい(第2実施形態も同様)。
【0032】
回転電機収容室2とギヤ収容室4とは、区画部材8によって厳密に区画されるものではなく、両収容室は連通している。区画部材8よりも軸方向第1側L1に回転電機MGが配置されて回転電機収容室2が形成され、区画部材8よりも軸方向第2側L2に複数のギヤGが配置されてギヤ収容室4が形成される。図2の軸方向断面図では明確ではないが、図5の上面図に仮想線で示すように、隔壁70は、区画部材8を挟んで軸方向Lの両側に形成されている。
【0033】
ケース1は、ケース本体部11に加えて、軸方向Lの少なくとも一方側からケース本体部11に接合されるカバー部10を備えている。ここでは、軸方向Lの両側からそれぞれケース本体部11に接合される2つのカバー部10を備える形態を例示している。即ち、図1図2等に示すように、ケース1は、軸方向第1側L1からケース本体部11との第1接合面9aに接合される第1カバー部10aと、軸方向第2側L2からケース本体部11との第2接合面9bに接続される第2カバー部10bとを備えている。回転電機収容室2は、ケース本体部11とカバー部10(第1カバー部10a)とに亘って形成されている。また、ギヤ収容室4は、ケース本体部11と、カバー部10(第2カバー部10b)とに亘って形成されている。
【0034】
図2に示すように、機器収容室5には、回転電機MGを回転可能に可能に支持する第1軸受B1(ロータ軸受)と、出力部材OUT(ここでは第1出力部材OUT1)を回転可能に支持する第2軸受B2(出力軸受)とが収容されている。回転電機MGのロータ軸82aは、軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2の双方において第1軸受B1によって回転可能に支持されている。ここで、軸方向第1側L1の第1軸受B1を第1ロータ軸受B1aと称し、軸方向第2側L2の第1軸受B1を第2ロータ軸受B1bと称する。第1ロータ軸受B1aは、第1カバー部10aに支持されており、第2ロータ軸受B1bは、支持壁として機能する区画部材8に支持されている。
【0035】
第1出力部材OUT1は軸方向第1側L1で第2軸受B2に支持され、軸方向第2側L2で連結軸JTに連結され、連結軸JTは軸方向第2側L2で差動歯車機構DFの第1サイドギヤS1に連結されている。第2出力部材OUT2は、軸方向第1側で差動歯車機構DFの第2サイドギヤS2に連結されている。第2軸受B2は、第1軸受B1と同様に第1カバー部10aに支持されている。尚、カバー部10には、出力部材OUTの貫通孔を封止するためのシール部材が取り付けられている。
【0036】
ギヤ収容室4には、カウンタギヤ機構CGも収容されている。図4に示すように、カウンタギヤ機構CGが配置される第3軸A3は、第1軸A1と第2軸A2と結ぶ仮想面QLよりも上下方向Vにおいて下方(上下方向第2側V2)に配置されている。また、第1実施形態では、軸方向Lにおいて、カウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)よりも回転電機MGの側にカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)が配置されている。
【0037】
区画部材8を有することによって、一体形成されたケース本体部11において、回転電機収容室2とギヤ収容室4とを適切に形成することができる。回転電機収容室2が形成されたケース部材と、ギヤ収容室4が形成されたケース部材とを備える形態に比べて、ケース1の部品点数を少なく抑えることができる。また、隔壁70が区画部材8を挟んで軸方向Lの両側に形成されているので、機器収容室5の剛性、インバータ収容室3の剛性、隔壁70の剛性を確保し易い。また、上述したように、区画部材8が支持壁としても機能する場合には、支持部材を設置する空間を別途設ける必要がなく、車両用駆動装置100の大型化が抑制される。
【0038】
図2及び図5を参照して上述したように、機器収容室5とインバータ収容室3とを区画する隔壁70は、軸方向Lにおいて、回転電機MGと重複すると共に、複数のギヤGの少なくとも1つと重複するように配置されている。尚、第1実施形態では、隔壁70は、上下方向隔壁17と幅方向隔壁19とを含む。図1から図4に示すように、第1実施形態では、回転電機収容室2の上下方向Vの長さに対して、ギヤ収容室4の上下方向Vの長さの方が短い。このため、インバータ収容室3は、軸方向Lにおいてギヤ収容室4の側に偏位して設けられている。つまり、ギヤ収容室4とインバータ収容室3とが上下方向Vに沿って並ぶように配置され、ギヤ収容室4とインバータ収容室3とを合わせた上下方向Vの長さと、回転電機収容室2の上下方向Vの長さとが概ね同程度となるように、ケース本体部11が形成されている。
【0039】
このため、ギヤ収容室4の上方においては、軸方向Lに沿って十分な長さの隔壁70が確保され、軸方向Lに沿って十分な広さを有するインバータ収容室3が形成される。隔壁70は、図5に示すように、軸方向Lにおいて回転電機MGと重複するように形成されている。また、隔壁70は、図2に示すように、軸方向Lにおける配置領域が入力ギヤG1、カウンタドリブンギヤG2、カウンタドライブギヤG3、差動入力ギヤG4と重複するように形成されている。即ち、隔壁70は、回転電機MGと径方向Rの外側で重なる位置からギヤGの少なくとも1つと径方向Rの外側で重なる位置まで軸方向Lに延びるよう形成されている。換言すれば、隔壁70は、軸方向Lにおいて、回転電機MGと重複すると共に、複数のギヤGの少なくとも1つと重複する。また、隔壁70の軸方向位置は、回転電機MGの軸方向位置と重複すると共に、複数のギヤGの少なくとも1つの軸方向位置と重複する。また、径方向Rに見て、隔壁70は回転電機MGと重複する部分とギヤGに重複する部分を有する。
【0040】
このように、インバータ装置INVの軸方向Lの配置領域を広く確保することができるので、ケース1が、軸方向Lに直交する方向(例えば上下方向V)に大型化することを抑制することができる。また、機器収容室5とインバータ収容室3とを形成するように、ケース本体部11が一体形成されているので、ケース1の部品点数を少なく抑えることができる。
【0041】
ところで、図3に示すように、ケース本体部11おけるインバータ収容室3(第2収容室)を形成する部分は、隔壁70から軸方向Lに延出すると共にケース本体部11とカバー部10との接合面9を跨ぐ張り出し部12を有している。具体的には、ケース本体部11は、ケース本体部11と第1カバー部10aとの第1接合面9aと重複する張り出し部12を有している。張り出し部12は、第1接合面9aを軸方向Lに沿って跨いでおり、第1接合面9aと径方向R視で重複する。
【0042】
このような張り出し部12を有することによって、ケース本体部11とカバー部10(この場合は第1カバー部10a)との接合面9(同、第1接合面9a)よりも軸方向第1側L1にまでインバータ収容室3(第2収容室)を設けることができる。
【0043】
また、張り出し部12は、軸方向Lに直交する方向に接合面9と離間していると共に、接合面9よりもカバー部10の側に突出するように形成されている、即ち、図3に示すように、張り出し部12は、軸方向Lに直交する上下方向Vに第1接合面9aと離間していると共に、第1接合面9aよりも第1カバー部10aの側に突出するように形成されている。
【0044】
接合面9を超えて軸方向Lに延伸するインバータ収容室3が、ケース本体部11とカバー部10とを接合させる際の妨げとならないので、適切にケース1を形成することができる。
【0045】
ギヤ収容室4に配置される複数のギヤGには、回転電機MGのロータ82と一体回転するように連結された入力ギヤG1(第1ギヤ)と、差動歯車機構DFに連結されて回転電機MGからの駆動力を伝達する差動入力ギヤG4(第2ギヤ)とを含む。図2に示すように、インバータ装置INVの配置領域は、入力ギヤG1及び差動入力ギヤG4の双方の軸方向Lの配置領域と重複している。換言すれば、機器収容室5とインバータ収容室3とを区画する隔壁70は、複数のギヤGに含まれる入力ギヤG1及び差動入力ギヤG4の双方の軸方向Lの配置領域と重複している。これにより、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法が大型化することを抑制することができる。
【0046】
また、上述したように、複数のギヤGには、カウンタギヤ機構CGのギヤも含まれる。隔壁70は、軸方向Lにおいて、複数のギヤGの少なくとも1つと重複する。隔壁70がカウンタギヤ機構CGのカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)及びカウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)の少なくとも1つと重複することにより、インバータ装置INVの軸方向Lの配置領域を広く確保することができるので、ケース1が、軸方向Lに直交する方向(例えば上下方向V)に大型化することを抑制することができる。尚、入力ギヤG1(第1ギヤ)はカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)と噛み合うため、軸方向Lの配置領域はほぼ同じであり、差動入力ギヤG4(第2ギヤ)はカウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)と噛み合うため、軸方向Lの配置領域はほぼ同じである。
【0047】
図4を参照して上述したように、第1実施形態においては、カウンタギヤ機構CGが配置される第3軸A3が、第1軸A1と第2軸A2と結ぶ仮想面QLよりも上下方向Vにおいて下方に配置されている。また、図2に示すように、カウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)は、軸方向LにおいてカウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)よりも回転電機MGの側に配置されている。そして、インバータ装置INVは、カウンタドリブンギヤG2よりも上下方向Vにおける上方に位置して、且つ、上下方向V視でカウンタドリブンギヤG2と重複するように配置されている。第1実施形態では、インバータ装置INVは、上下方向V視でカウンタドリブンギヤG2及び回転電機MGと重複するように配置されている。
【0048】
カウンタギヤ機構CGが配置される第3軸A3を第1軸A1及び第2軸A2よりも下方に配置することによって、第3軸A3を第1軸A1及び第2軸A2よりも上方に配置する場合に比べて、第1軸A1及び第2軸A2よりも上方に空間を確保し易い。このように確保された空間を利用して、カウンタギヤ機構CGのカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)よりも上方V1であって上下方向V視でカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)と重複する位置にインバータ装置INVが配置されるので、車両用駆動装置100の上下方向の大きさを抑制でき、車両用駆動装置100の小型化が可能となる。
【0049】
図4に示すように、ケース1の内部では、回転電機MGの3相のステータコイル83のそれぞれに接続された3相の回転電機側交流バスバー53が、回転電機MGの側からギヤ収容室4に延伸している。そして、ギヤ収容室4とインバータ収容室3との間には、上下方向隔壁17を貫通するように、交流バスバーコネクタ52(交流バスバー接続部材)が配置されている。交流バスバーコネクタ52の一端は、インバータ収容室3の内部に位置している。交流バスバーコネクタ52の一端と、インバータ側交流バスバー51とは、インバータ収容室3の内部で電気的に接続される。尚、交流電力線50には、インバータ側交流バスバー51、交流バスバーコネクタ52、回転電機側交流バスバー53を含む。上述したように、カウンタギヤ機構CGを下方に配置して確保された空間を使って、交流電力線50を効率的に配線することができている。
【0050】
〔第2実施形態〕
図8に示すように、第2実施形態においても、機器収容室5は、回転電機MGを収容する回転電機収容室2と、複数のギヤGを収容するギヤ収容室4とを有している。また、第1実施形態と同様に、ケース本体部11は、軸方向Lにおいて回転電機収容室2とギヤ収容室4との間に配置された区画部材8を備えている。区画部材8は、図10に仮想線で示すように、幅方向Hに延在している。
【0051】
第1実施形態と同様に、回転電機収容室2とギヤ収容室4とは、区画部材8によって厳密に区画されるものではなく、両収容室は連通している。区画部材8よりも軸方向第1側L1に回転電機MGが配置されて回転電機収容室2が形成され、区画部材8よりも軸方向第2側L2に複数のギヤGが配置されてギヤ収容室4が形成される。隔壁70は、区画部材8を挟んで軸方向Lの両側に形成されている。
【0052】
第1実施形態と同様に、ケース1は、ケース本体部11に加えて、軸方向Lの少なくとも一方側からケース本体部11に接合されるカバー部10を備えている。ここでは、軸方向Lの両側からそれぞれケース本体部11に接合される2つのカバー部10を備える形態を例示している。即ち、図8等に示すように、ケース1は、軸方向第1側L1からケース本体部11との第1接合面9aに接合される第1カバー部10aと、軸方向第2側L2からケース本体部11との第2接合面9bに接続される第2カバー部10bとを備えている。回転電機収容室2は、ケース本体部11とカバー部10(第1カバー部10a)とに亘って形成されている。また、ギヤ収容室4は、ケース本体部11と、カバー部10(第2カバー部10b)とに亘って形成されている。
【0053】
図8に示すように、機器収容室5には、回転電機MGを回転可能に可能に支持する第1軸受B1と、出力部材OUT(ここでは第1出力部材OUT1)を回転可能に支持する第2軸受B2とが収容されている。回転電機MGのロータ軸82aは、軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2の双方において第1軸受B1によって回転可能に支持されている。ここで、軸方向第1側L1の第1軸受B1を第1ロータ軸受B1aと称し、軸方向第2側L2の第1軸受B1を第2ロータ軸受B1bと称する。第1ロータ軸受B1aは、第1カバー部10aに支持されており、第2ロータ軸受B1bは、支持壁として機能する区画部材8に支持されている。
【0054】
第1出力部材OUT1は軸方向第1側L1で第2軸受B2に支持され、軸方向第2側L2で連結軸JTに連結され、連結軸JTは軸方向第2側L2で差動歯車機構DFの第1サイドギヤS1に連結されている。第2出力部材OUT2は、軸方向第1側で差動歯車機構DFの第2サイドギヤS2に連結されている。第2軸受B2は、第1軸受B1と同様に第1カバー部10aに支持されている。尚、カバー部10には、出力部材OUTの貫通孔を封止するためのシール部材が取り付けられている。
【0055】
ギヤ収容室4には、カウンタギヤ機構CGも収容されている。第1実施形態とは異なり、図9に示すように、カウンタギヤ機構CGが配置される第3軸A3は、第1軸A1と第2軸A2と結ぶ仮想面QLよりも上下方向Vにおいて上方(上下方向第1側V1)に配置されている。また、第1実施形態とは異なり、図8に示すように、軸方向Lにおいて、カウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)よりも回転電機MGの側にカウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)が配置されている。
【0056】
第1実施形態と同様に区画部材8を有することによって、一体形成されたケース本体部11に、において、回転電機収容室2とギヤ収容室4とを適切に形成することができる。回転電機収容室2が形成されたケース部材と、ギヤ収容室4が形成されたケース部材とを備える形態に比べて、ケース1の部品点数を少なく抑えることができる。また、隔壁70が区画部材8を挟んで軸方向Lの両側に形成されているので、機器収容室5の剛性、インバータ収容室3の剛性、隔壁70の剛性を確保し易い。また、上述したように、区画部材8が支持壁としても機能する場合には、支持部材を設置する空間を別途設ける必要がなく、車両用駆動装置100の大型化が抑制される。
【0057】
図2及び図5を参照して上述したように、機器収容室5とインバータ収容室3とを区画する隔壁70は、軸方向Lにおいて、回転電機MGと重複すると共に、複数のギヤGの少なくとも1つと重複するように配置されている。図8図9に示すように、第2実施形態では、回転電機収容室2の上下方向Vの長さと、ギヤ収容室4の上下方向Vの長さとがほぼ同じである。インバータ収容室3は、軸方向L及び幅方向Hにおいて、回転電機収容室2とギヤ収容室4との双方に跨がるように形成されている。
【0058】
このため、ギヤ収容室4の上方においては、軸方向L及び幅方向Hに沿って十分な長さの隔壁70が確保され、軸方向L及び幅方向Hに沿って十分な広さを有するインバータ収容室3が形成される。隔壁70は、図8に示すように、軸方向Lにおいて回転電機MGと重複するように形成されている。インバータ装置INVの軸方向Lの配置領域を広く確保することができるので、ケース1が、軸方向Lに直交する方向(例えば上下方向V)に大型化することを抑制することができる。また、隔壁70は、図8に示すように、軸方向Lにおいて入力ギヤG1、カウンタドリブンギヤG2、カウンタドライブギヤG3、差動入力ギヤG4と重複するように形成されている。
【0059】
ところで、図8に示すように、ケース本体部11おけるインバータ収容室3(第2収容室)を形成する部分は、隔壁70から軸方向Lに延出すると共にケース本体部11とカバー部10との接合面9を跨ぐ張り出し部12を有している。具体的には、ケース本体部11は、ケース本体部11と第2カバー部10bとの第2接合面9bと重複する張り出し部12を有している。張り出し部12は、第2接合面9bを軸方向Lに沿って跨いでおり、第1接合面9aと径方向R視で重複する。
【0060】
このような張り出し部12を有することによって、ケース本体部11とカバー部10(この場合は第2カバー部10b)との接合面9(同、第2接合面9b)よりも軸方向第2側L2にまでインバータ収容室3(第2収容室)を設けることができる。
【0061】
また、張り出し部12は、軸方向Lに直交する方向に接合面9と離間していると共に、接合面9よりもカバー部10の側に突出するように形成されている、即ち、図8に示すように、張り出し部12は、軸方向Lに直交する上下方向Vに第2接合面9bと離間していると共に、第2接合面9bよりも第2カバー部10bの側に突出するように形成されている。ケース本体部11と第2カバー部10bとに亘ってギヤ収容室4が形成されており、張り出し部12は、軸方向Lにおいてギヤ収容室4の側に設けられている。
【0062】
ケース本体部11と第2カバー部10bとに亘って形成されるギヤ収容室4の上方に配置されるインバータ収容室3が、接合面9(第2接合面9b)を跨いで配置されるので、軸方向Lにおけるインバータ収容室3の配置領域を十分に確保することができる。さらに、接合面9を超えて軸方向Lに延伸するインバータ収容室3が、ケース本体部11とカバー部10とを接合させる際の妨げとならないので、適切にケース1を形成することができる。
【0063】
ギヤ収容室4に配置される複数のギヤGには、回転電機MGのロータ82と一体回転するように連結された入力ギヤG1(第1ギヤ)と、差動歯車機構DFと一体回転するように連結された差動入力ギヤG4(第2ギヤ)とを含む。図8に示すように、インバータ装置INVの配置領域は、入力ギヤG1及び差動入力ギヤG4の双方の軸方向Lの配置領域と重複している。換言すれば、機器収容室5とインバータ収容室3とを区画する隔壁70は、複数のギヤGに含まれる入力ギヤG1及び差動入力ギヤG4の双方の軸方向Lの配置領域と重複している。これにより、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法が大型化することを抑制することができる。
【0064】
また、第2実施形態においても、隔壁70は、カウンタギヤ機構CGのカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)及びカウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)の少なくとも1つと重複する。これにより、インバータ装置INVの軸方向Lの配置領域を広く確保することができるので、ケース1が、軸方向Lに直交する方向(例えば上下方向V)に大型化することを抑制することができる。
【0065】
図9を参照して上述したように、第2実施形態においては、カウンタギヤ機構CGが配置される第3軸A3が、第1軸A1と第2軸A2と結ぶ仮想面QLよりも上下方向Vにおいて上方に配置されている。また、図8に示すように、カウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)は、軸方向LにおいてカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)よりも回転電機MGの側に配置されている。そして、インバータ装置INVは、カウンタドライブギヤG3よりも上下方向Vにおける上方に位置して、且つ、上下方向V視でカウンタドライブギヤG3と重複するように配置されている。
【0066】
カウンタギヤ機構CGが減速機構として機能する場合、通常はカウンタドライブギヤG3(第4ギヤ)に比べてカウンタドリブンギヤG2(第3ギヤ)の方がギヤの径が大きくなる。本構成では、ギヤの径が相対的に大きいカウンタドリブンギヤG2を避けることができるように、回転電機MG及びギヤの径が相対的に小さいカウンタドライブギヤG3と上下方向V視で重複するように、インバータ装置INVが配置されている。従って、カウンタギヤ機構CGの第3軸A3が第1軸A1及び第2軸A2よりも上方に配置されている場合であっても、インバータ装置INVを比較的下方に配置することができ、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法の拡大を抑制することができる。
【0067】
第1実施形態では、図4を参照し、カウンタギヤ機構CGを下方に配置して確保された空間を使って、交流電力線50を効率的に配線することについて説明した。第2実施形態では、カウンタギヤ機構CGが上方に配置されるが、図9に示すように、ギヤ収容室4を経由して、回転電機収容室2に配置された回転電機MGの3相のステータコイル83と、インバータ収容室3に配置されたインバータ側交流バスバー51とが、電気的に接続されている。上述したように、インバータ装置INVは、ギヤの径が相対的に小さいカウンタドリブンギヤG2と上下方向V視で重複するため、カウンタギヤ機構CGとインバータ装置INVとの間にある程度の空間が確保される。
【0068】
図8に示すように、回転電機MGの3相のステータコイル83のそれぞれに接続された3相の回転電機側交流バスバー53は、回転電機MGの側からギヤ収容室4に延伸する。そして、ギヤ収容室4とインバータ収容室3との間には、隔壁70を貫通するように、交流バスバーコネクタ52が配置される。交流バスバーコネクタ52の一端は、インバータ収容室3の内部に位置し、インバータ収容室3の内部で、インバータ側交流バスバー51と電気的に接続される。
【0069】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0070】
(1)上記においては、第1軸A1に回転電機MG、第2軸A2に差動歯車機構DF、第3軸A3にカウンタギヤ機構CGが配置された3軸の車両用駆動装置100を例示した。しかし、車両用駆動装置100は、回転電機MG、差動歯車機構DF、カウンタギヤ機構CGが同軸配置された構成であってもよい。また、車両用駆動装置100は、第1軸A1,第2軸A2の2軸が平行に配置された2軸であってもよい。また、車両用駆動装置100は、第1軸A1,第2軸A2,第3軸A3とは異なる1つの軸以上がさらに平行に配置され、4軸以上が平行に配置された構成であってもよい。
【0071】
(2)上記においては、車輪Wの駆動力源として回転電機MGを備えた車両用駆動装置100を例示して説明したが、車両用駆動装置100は、車両の車輪Wの駆動力源として内燃機関及び回転電機MGの双方を備えたハイブリッド駆動装置(例えば、いわゆる1モータパラレル方式や2モータスプリット式等の各種形式のハイブリッド駆動装置)であってもよい。
【0072】
(3)上記においては、軸方向Lの両側からそれぞれケース本体部11に接合される2つのカバー部10を備える形態を例示した。しかし、ケース本体部11が、軸方向Lの一方側において閉じており、軸方向Lの他方側にのみカバー部10を備える形態であってもよい。
【0073】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について簡単に説明する。
【0074】
1つの態様として、回転電機(MG)と、前記回転電機(MG)からの動力伝達経路に設けられた複数のギヤ(G)と、前記回転電機(MG)から複数の前記ギヤ(G)を介して伝達される駆動力を一対の車輪(W)に分配する差動歯車機構(DF)と、前記回転電機(MG)を駆動制御するインバータ装置(INV)と、を備え、前記回転電機(MG)及び複数の前記ギヤ(G)を収容する第1収容室(5)と、前記インバータ装置(INV)を収容する第2収容室(3)とを形成するように一体成形されたケース本体部(11)を有するケース(1)をさらに備え、前記第1収容室(5)は、前記回転電機(MG)を収容する回転電機収容室(2)と、複数の前記ギヤ(G)を収容するギヤ収容室(4)と、を有し、前記ケース本体部(11)は、前記回転電機(MG)及び前記ギヤ(G)の径方向外側を囲む周壁部(6)と、前記第1収容室(5)と前記第2収容室(3)とを区画する隔壁(70)と、前記第1収容室(5)における、前記回転電機収容室(2)と前記ギヤ収容室(4)との間に配置された区画部材(8)と、を有し、前記回転電機(MG)の回転軸に沿う方向を軸方向(L)として、前記隔壁(70)は、前記区画部材(8)を挟んで前記軸方向(L)の両側に亘って、前記回転電機(MG)と前記径方向外側で重なる位置から前記ギヤ(G)の少なくとも一つと前記径方向外側で重なる位置まで前記軸方向(L)に延びるよう形成されている。
【0075】
この構成によれば、インバータ装置(INV)の軸方向(L)の配置領域を広く確保することができるので、ケース(1)が、軸方向(L)に直交する方向(例えば上下方向(V))に大型化することを抑制することができる。また、第1収容室(5)と第2収容室(3)とを形成するように、ケース本体部(11)が一体形成されているので、ケース(1)の部品点数を少なく抑えることができる。また、区画部材(8)を有することによって、一体形成されたケース本体部(11)において、回転電機収容室(2)とギヤ収容室(4)とを適切に形成することができる。回転電機収容室(22)が形成されたケース部材と、ギヤ収容室(4)が形成されたケース部材とを備える形態に比べて、ケース(1)の部品点数を少なく抑えることができる。また、隔壁(70)が区画部材(8)を挟んで軸方向(L)の両側に形成されているので、第1収容室(5)の剛性、第2収容室(3)の剛性、隔壁(70)の剛性を確保し易い。即ち、本構成によれば、上下方向(V)及び水平方向において、装置全体が大型化することを抑制しつつ、回転電機(MG)、複数のギヤ(G)を含む駆動伝達機構、インバータ装置(INV)がケース(1)に収納された車両用駆動装置(100)を提供することができる。
【0076】
車両用駆動装置(100)は、前記回転電機(MG)のロータ(82)を回転可能に支持するロータ軸受(B1)が、前記区画部材(8)に支持されていると好適である。
【0077】
この構成によれば、区画部材(8)がロータ軸受(B1)、及びロータ(82)を支持する支持壁としても機能するので、支持部材を設置する空間を別途設ける必要がなく、車両用駆動装置(100)の大型化が抑制される。
【0078】
また、一対の前記車輪(W)のそれぞれに駆動連結される出力部材(OUT)を備えると共に、一対の前記出力部材(OUT)の一方(OUT1)と前記差動歯車機構(DF)とを連結する連結軸(JT)を備え、前記隔壁(70)は、上下方向視で前記連結軸(JT)と重複するように形成されていると好適である。
【0079】
出力部材(OUT)と差動歯車機構(DF)とを連結する連結軸(JT)と重なる位置まで隔壁(70)が延びていることで、装置全体が大型化することを抑制しつつ、インバータ(INV)を収容する第2収容室(3)の内部空間を十分に確保することができる。
【0080】
また、前記軸方向(L)において、複数の前記ギヤ(G)に対して前記回転電機(MG)が配置される側を軸方向第1側(L1)として、前記隔壁(70)は、前記回転電機(MG)の前記軸方向(L)における配置領域の中心位置(CP)よりも、前記軸方向第1側(L1)まで延びるように形成されていると好適である。
【0081】
この構成によれば、回転電機(MG)の軸方向(L)における配置領域の内、半分以上の領域において、上下方向視で隔壁(70)と回転電機(MG)とが重複する。従って、第2収容室(3)の内部空間を十分に確保することができる。
【0082】
また、前記ケース(1)は、前記ケース本体部(11)に加えて、前記軸方向(L)の少なくとも一方側から前記ケース本体部(11)に接合されるカバー部(10)を備え、前記ケース本体部(11)における前記第2収容室(3)を形成する部分は、前記隔壁(8)から前記軸方向(L)に延出すると共に前記ケース本体部(11)と前記カバー部(10)との接合面(9)と重複する張り出し部(12)を有すると好適である。
【0083】
このような張り出し部(12)を有することによって、ケース本体部(11)とカバー部10との接合面(9)に対して、軸方向の一方側にまで第2収容室(3)を設けることができる。
【0084】
上記のように、前記張り出し部(12)を有する場合、前記張り出し部(12)は、前記軸方向(L)に直交する方向に前記接合面(9)と離間していると共に、前記接合面(9)よりも前記カバー部(10)の側に突出するように形成されていると好適である。
【0085】
この構成によれば、接合面(9)を超えて軸方向(L)に延伸する第2収容室(3)が、ケース本体部(11)とカバー部(10)とを接合させる際の妨げとならないので、適切にケース(1)を形成することができる。
【0086】
上記のように、前記張り出し部(12)を有する場合、前記張り出し部(12)は、前記軸方向(L)において前記ギヤ収容室(4)の側に設けられ、前記ギヤ収容室(4)は、前記ケース本体部(11)と、前記カバー部(10)とに亘って形成されていると好適である。
【0087】
インバータ収容室(3)は、ケース本体部(11)とカバー部(10)とに亘って形成されるギヤ収容室(4)の上方に配置される。第2収容室(3)は、接合面(9)を跨いで配置されるので、軸方向(L)における第2収容室(3)の配置領域を十分に確保することができる。さらに、接合面(9)を超えて軸方向(L)に延伸する第2収容室(3)が、ケース本体部(11)とカバー部(10)とを接合させる際の妨げとならないので、適切にケース(1)を形成することができる。
【0088】
また、車両用駆動装置(100)は、複数の前記ギヤ(G)が、前記回転電機(MG)のロータ(82)と一体回転するように連結された第1ギヤ(G1)と、前記差動歯車機構(DF)と一体回転するように連結された第2ギヤ(G4)とを含み、前記インバータ装置(INV)の配置領域が前記第1ギヤ(G1)及び前記第2ギヤ(G4)の双方の前記軸方向(L)の配置領域と重複すると好適である。
【0089】
この構成によれば、車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法が大型化することを抑制することができる。
【0090】
また、車両用駆動装置(100)は、前記回転電機(MG)が第1軸(A1)上に配置され、前記差動歯車機構(DF)が前記第1軸(A1)と互いに平行な別軸である第2軸(A2)上に配置され、複数の前記ギヤ(G)が、前記回転電機(MG)のロータ(82)と一体回転するように連結された第1ギヤ(G1)と、前記差動歯車機構(DF)に連結されて前記回転電機(MG)からの駆動力を伝達する第2ギヤ(G4)とを含み、さらに、前記第1軸(A1)及び前記第2軸(A2)と平行な第3軸(A3)上に配置され、前記第1ギヤ(G1)に噛み合う第3ギヤ(G2)と、前記第3ギヤ(G2)と一体的に回転すると共に前記第2ギヤ(G4)に噛み合う第4ギヤ(G3)とを備えたカウンタギヤ機構(CG)を備えると好適である。
【0091】
この構成によれば、複数のギヤ(G)には、カウンタギヤ機構(CG)のギヤも含まれる。そして、隔壁(70)は、軸方向(L)において、複数のギヤ(G)の少なくとも1つと重複する。隔壁(70)がカウンタギヤ機構(CG)における、第3ギヤ(G2)及び第4ギヤ(G3)の少なくとも1つと重複すると、インバータ装置(INV)の軸方向(L)の配置領域を広く確保することができる。その結果、ケース(1)が、軸方向(L)に直交する方向(例えば上下方向(V))に大型化することを抑制することができる。
【0092】
車両用駆動装置(100)が上記のようにカウンタギヤ機構(CG)を備える場合、前記第3軸(A3)は、前記第1軸(A1)と前記第2軸(A2)と結ぶ仮想面(QL)よりも上下方向(V)において下方(V2)に配置され、前記第3ギヤ(G2)が、前記軸方向(L)において前記第4ギヤ(G3)よりも前記回転電機(MG)の側に配置され、前記インバータ装置(INV)が、前記第3ギヤ(G2)よりも上下方向(V)における上方(V1)に位置して、且つ、上下方向視で前記第3ギヤ(G2)及び前記回転電機(MG)と重複するように配置されていると好適である。
【0093】
カウンタギヤ機構(CG)が配置される第3軸(A3)を第1軸(A1)及び第2軸(A2)よりも下方(V2)に配置することによって、第3軸(A3)を第1軸(A1)及び第2軸(A2)よりも上方(V1)に配置する場合に比べて、第1軸(A1)及び第2軸(A2)よりも上方(V1)に空間を確保し易い。そして、このように確保された空間を利用して、カウンタギヤ機構(CG)の第3ギヤ(G2)よりも上方(V1)であって上下方向視で第3ギヤ(G2)と重複する位置にインバータ装置(INV)を配置することができる。これにより、車両用駆動装置(100)の上下方向(V)の大きさを抑制でき、車両用駆動装置(100)の小型化が可能となる。
【0094】
車両用駆動装置(100)が上記のようにカウンタギヤ機構(CG)を備える場合、別の構成として、前記第3軸(A3)が、前記第1軸(A1)と前記第2軸(A2)と結ぶ仮想面(QL)よりも上下方向(V)において上方(V1)に配置され、前記第4ギヤ(G3)が、前記軸方向(L)において前記第3ギヤ(G2)よりも前記回転電機(MG)の側に配置され、前記インバータ装置(INV)が、前記第4ギヤ(G3)及び前記回転電機(MG)よりも上下方向(V)における上方(V1)に位置して、且つ、上下方向視で前記第4ギヤ(G3)及び前記回転電機(MG)と重複するように配置されていると好適である。
【0095】
カウンタギヤ機構(CG)が減速機構として機能する場合、通常は出力側の第4ギヤ(G3)に比べて入力側の第3ギヤ(G2)の方がギヤの径が大きくなる。本構成では、ギヤの径が相対的に大きい第3ギヤ(G2)を避けることができるように、回転電機(MG)及びギヤの径が相対的に小さい第4ギヤ(G3)と上下方向視で重複するように、インバータ装置(INV)が配置されている。従って、カウンタギヤ機構(CG)の第3軸(A3)が第1軸(A1)及び第2軸(A2)よりも上方(V1)に配置されている場合であっても、インバータ装置(INV)を比較的下方(V2)に配置することができ、車両用駆動装置(100)の上下方向(V)の寸法の拡大を抑制することができる。
【符号の説明】
【0096】
1:ケース、2:回転電機収容室、3:インバータ収容室(第2収容室)、4:ギヤ収容室、5:機器収容室(第1収容室)、6:周壁部、8:区画部材、9:接合面、10:カバー部、11:ケース本体部、12:張り出し部、70:隔壁、82:ロータ、100:車両用駆動装置、A1:第1軸、A2:第2軸、A3:第3軸、B1:第1軸受(ロータ軸受)CG:カウンタギヤ機構、CP:中心位置、DF:差動歯車機構、G:ギヤ、G1:入力ギヤ(第1ギヤ)、G2:カウンタドリブンギヤ(第3ギヤ)、G3:カウンタドライブギヤ(第4ギヤ)、G4:差動入力ギヤ(第2ギヤ)、INV:インバータ装置、L:軸方向、MG:回転電機、QL:仮想面、R:径方向、V:上下方向、V1:上下方向第1側(上方)、V2:上下方向第2側(下方)、W:車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11