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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】タイヤ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/66 20060101AFI20240305BHJP
   B66C 1/28 20060101ALI20240305BHJP
   B66C 17/04 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B66C1/66 K
B66C1/28 K
B66C17/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022576993
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2021041586
(87)【国際公開番号】W WO2022158092
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021008143
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】北西 紘也
(72)【発明者】
【氏名】山岸 英範
(72)【発明者】
【氏名】青井 智宏
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105268(WO,A1)
【文献】特開2004-238147(JP,A)
【文献】特開2008-162733(JP,A)
【文献】国際公開第2020/242294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/66
B66C 1/28
B66C 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム本体と、前記アーム本体の下部に外側へ突出するように設けられておりタイヤを持ち上げるための突出部と、を有する少なくとも3本のアームと、
前記少なくとも3本のアームを水平拡縮方向に移動するアーム拡縮機構と、
前記少なくとも3本のアームを昇降する昇降機構と、
前記少なくとも3本のアームが前記タイヤの上方にありかつ縮径状態において前記突出部の先端を含む円の外側に配置されており、下方にある物体を検出するための少なくとも3つの光反射センサと、
前記少なくとも3つの光反射センサの内の1以上の光反射センサによって前記タイヤが検出されると、前記少なくとも3本のアームの内の1以上のアームの位置が不適切であると判断するコントローラと、
を備える、タイヤ搬送装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記少なくとも3つの光反射センサの全てにおいて前記タイヤが検出されないときは、前記タイヤの持ち上げ動作を行う、請求項1に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記少なくとも3つの光反射センサの内の1以上の光反射センサによって前記タイヤが検出されると、前記タイヤを検出した光反射センサから前記3つの光反射センサを結ぶ円周中心を向く方向に前記少なくとも3本のアームを移動させる、請求項1に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項4】
前記光反射センサはレーザ距離センサであり、
前記コントローラは、前記レーザ距離センサによって計測する距離を監視し、前記複数のレーザ距離センサによって計測した距離同士に差異が生じると前記光反射センサによって前記タイヤが検出されていると判断する、請求項1に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項5】
前記コントローラは、短い距離を検出したレーザ距離センサから3つのレーザ距離センサを結ぶ円周中心を向く方向に前記少なくとも3本のアームを移動させ、その後に前記レーザ距離センサによって計測する距離を監視する、請求項4に記載のタイヤ搬送装置。
【請求項6】
前記突出部の下面に設けられ、前記突出部の先端側が下方の物体と接触したことを検出する接触センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記アームの下降中に前記接触センサが前記タイヤを検出すると、前記昇降機構に前記少なくとも3本のアームのさらなる下降を停止させる、請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ搬送装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記複数のレーザ距離センサによって計測した距離同士の差異から、搬送可能な前記タイヤの数を判断する、請求項4に記載のタイヤ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ搬送装置、特に、横倒姿勢のタイヤの中心穴の上面開口縁に上方より複数のアームを挿入してアームのフックにて上面開口縁を下方から支持することでタイヤを持ち上げる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ搬送装置は、先端にフックが形成された複数のアームと、アームを水平拡縮方向に移動させるアーム拡縮機構と、アーム及びアーム拡縮機構を昇降させる昇降機構とを有している。
タイヤ搬送装置は、横倒姿勢のタイヤの中心穴の上面開口の上方より複数のアームを下降させて上面開口内に挿入し、次にアームを広げる方向に移動させることでフックを上面開口縁の下方に移動させる。タイヤ搬送装置は、最後に、アームを上方に移動させて、フックにタイヤの上面開口縁を下方から支持させることで、タイヤを持ち上げる。
例えば、4本のアームをタイヤの内径に差し込んで移載する物品移載装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-162733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤは一般に段積み保管されている。そして、段積みされたタイヤは、時間経過と共に変形して傾くことがある。タイヤは柔らかくて粘着性があるためである。
一方、タイヤ搬送装置は、定められた座標での停止制御が行われている。したがって、上記のように段積みされたタイヤが傾いていると、アームを下降させるときに、フックを傾いたタイヤに当ててしまうことがある。この場合、タイヤを搬送できなくなるだけでなく、タイヤを破損する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、タイヤ搬送装置がタイヤを保持するときにアームがタイヤを破損しにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係るタイヤ搬送装置は、タイヤを持ち上げて搬送する装置であって、少なくとも3本のアームと、アーム拡縮機構と、昇降機構と、少なくとも3つの光反射センサと、コントローラとを備えている。
少なくとも3本のアームは、アーム本体と、アーム本体の下部に外側へ突出するように設けられておりタイヤを持ち上げるための突出部を有する。
アーム拡縮機構は、アームを水平拡縮方向に移動する。
昇降機構は、アームを昇降する。
少なくとも3つの光反射センサは、アームがタイヤの上方にありかつ縮径状態において突出部の先端を含む円の外側に配置されており、下方にある物体を検出する。なお、光反射センサは、光を下方に照射して得られた反射を検出可能なセンサである。また、下方とは、光反射センサの鉛直下の領域、または、鉛直下と鉛直下近傍を含む領域を意味する。後述するように、光反射センサは、下方にある物体までの距離を検出する距離センサであってもよい。光反射センサは、距離センサでなく、単純に下方にある物体の有無を検出するセンサであってもよい。
コントローラは、光反射センサの少なくとも1つによってタイヤが検出されると、アームの位置が不適切であると判断する。
この装置では、基本搬送動作として、昇降機構がアームを下降させてタイヤの内側に配置させ、続いてアーム拡縮機構が3本のアームのアーム本体を水平方向外側に拡げ、最後に昇降機装置がアームを上昇させてアームの突出部によってタイヤを持ち上げる。
この装置では、光反射センサがタイヤを検出すると、平面視で突出部に重なる位置にタイヤが配置されていることになる。この場合には、例えば、昇降機構はアームを下降させないので、タイヤが傾いたり位置が異なっていたりしていても、突出部がタイヤに接触しない。
全ての光反射センサがタイヤを検出しないときは、コントローラは、アームの位置が適切であると判断する。そして、コントローラは、タイヤの持ち上げ動作を行う。具体的には、コントローラは、アームを下降させ、アーム本体を水平方向外側に拡げ、アームを上昇させてアームの突出部によって、タイヤを持ち上げる。
コントローラは、光反射センサの少なくとも1つによってタイヤが検出されると、タイヤを検出したレーザ距離センサから円周中心を向く方向に少なくとも3本のアームを移動させてもよい。アームを移動させることで、アームの位置が補正される。
【0008】
光反射センサはレーザ距離センサであってもよい。
コントローラは、レーザ距離センサによって計測する距離を監視し、複数のレーザ距離センサによって計測した距離同士に差異が生じると光反射センサによってタイヤが検出されていると判断してもよい。なお、レーザ距離センサによって計測する距離とは、レーザ距離センサと、レーザ距離センサの鉛直下にある物体(タイヤまたは床面等)との間の距離である。
この装置では、レーザ距離センサを用いることで、タイヤの有無を正確に検出できる。具体的には、短い距離を検出したセンサの真下にタイヤが存在することになる。
なお、本明細書において、光反射センサがタイヤを検出していない場合とは、レーザ距離センサが距離を検出しているが、タイヤ以外の物体との距離を検出している場合を含む。また、光反射センサがタイヤを検出している場合とは、レーザ距離センサが距離を検出しており、かつ、タイヤとの距離を検出している場合を含む。
【0009】
コントローラは、短い距離を検出したレーザ距離センサから円周中心を向く方向にアームを移動させ、その後にレーザ距離センサによって計測する距離を監視してもよい。
この装置では、タイヤの真上にあったレーザ距離センサがタイヤから離れる方向にアームを移動させることで、アームの位置が補正される。この結果、突出部がタイヤに接触しにくくなり、したがってタイヤの搬送を継続できる。
コントローラは、複数のレーザ距離センサによって計測した距離同士の差異から、搬送可能なタイヤの数を判断してもよい。
この装置では、複数のレーザ距離センサによって計測した距離同士の差異があった場合にも、搬送可能な数のタイヤだけを搬送できる。したがって、タイヤの搬送効率が良くなる。
【0010】
タイヤ搬送装置は、突出部の下面に設けられ、突出部の先端側が下方の物体と接触したことを検出する接触センサをさらに備えていてもよい。
コントローラは、アームの下降中に接触センサがタイヤを検出すると、昇降機構にアームのさらなる下降を停止させてもよい。
この装置では、アーム下端の接触センサがタイヤに接触すると、アームの下降が停止される。これにより、タイヤの破損が防止される。このように接触センサがタイヤを検出するということは光反射センサが検出できなかったが突出部に干渉する位置にタイヤがあったことを意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るタイヤ搬送装置では、タイヤを保持するときにタイヤ搬送装置のアームがタイヤを破損しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】タイヤ搬送装置の模式的正面図である。
図2】タイヤ搬送装置のアーム、レーザ距離センサ、タイヤの位置関係を示す模式的斜視図である。
図3】フックとレーザ距離センサの位置関係を示す平面図である。
図4】アーム下部、フック、接触センサを示す部分側面図である。
図5】タイヤ持ち上げ動作の一状態を示す模式図である。
図6】タイヤ持ち上げ動作の一状態を示す模式図である。
図7】タイヤ持ち上げ動作の一状態を示す模式図である。
図8】タイヤ持ち上げ動作の一状態を示す模式図である。
図9】タイヤ搬送装置の制御構成を示すブロック図である。
図10】タイヤ搬送装置のタイヤ持ち上げ制御動作を示すフローチャートである。
図11】タイヤ搬送装置のタイヤ持ち上げ制御動作を示すフローチャートである。
図12】タイヤとレーザ距離センサの位置関係の一状態を示す模式的平面図である。
図13】タイヤとレーザ距離センサの位置関係の一状態を示す模式的平面図である。
図14】タイヤとレーザ距離センサの位置関係の一状態を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1実施形態
(1)タイヤ搬送装置の基本構成
図1を用いて、タイヤ搬送装置1を説明する。図1は、タイヤ搬送装置の模式的正面図である。
タイヤ搬送装置1は、タイヤTを水平(タイヤの子午線断面が略水平になる状態)に吊持した状態で搬送する装置又は施設であり、具体的には、タイヤTを移動したり、段積みや段ばらししたりする。なお、図1の紙面直交方向が第1方向(矢印X)であり、図1の紙面左右方向が第2方向(矢印Y)である。鉛直方向は矢印Zで示されている。
なお、タイヤTは、中心穴4(図2)が設けられたゴム製の中空部材である。
【0014】
タイヤ搬送装置1は、ガントリークレーンとも呼ばれる構造であり、一対の第1レール3と、第2レール5と、移動ユニット7とを有している。
一対の第1レール3は、地上から上側に離れた位置に置いて、第1方向に平行に延びており、第2方向に互いに離れている。
【0015】
第2レール5は、一対の第1レール3に掛け渡されるように第2方向に延びており、X軸駆動装置71(図9)によって駆動されることで一対の第1レール3に沿って第1方向に移動可能である。
移動ユニット7は、第2レール5に支持されており、Y軸駆動装置73(図9)によって駆動されることで第2レール5に沿って第2方向に移動可能である。
【0016】
タイヤ搬送装置1は、グリッパ装置9を有している。グリッパ装置9は、移動ユニット7に昇降可能に装着され、タイヤTを把持して移載する装置である。具体的には、グリッパ装置9は、タイヤTを内側から把持して上方に持ち上げた後、水平移動して移載する。
タイヤ搬送装置1は、Z軸駆動装置75を有している。Z軸駆動装置75は、その下部に取り付けたグリッパ装置9を昇降させる機構である。Z軸駆動装置75は、公知の技術であり、例えば、グリッパ装置9を吊り下げ支持するベルト(図示せず)、それを巻き取り/巻き戻すことでグリッパ装置9を昇降させる巻き上げ装置等を有している。
【0017】
(2)グリッパ装置の詳細構成
グリッパ装置9は、Z軸駆動装置75に固定されたベース21と、ベース21から鉛直方向下側に延びる3本のアーム23を有している。
ベース21は、昇降台であり、Z軸駆動装置75のベルト(図示せず)により、移動ユニット7から上下方向に吊り下げられている。
3本のアーム23は、所定の円周上で120°の角度を空けて周方向等間隔に配置されている。
【0018】
各アーム23のアーム本体24の下端には、水平方向外側に突出して延びるフック25が設けられている。フック25は、タイヤTの上側のビード部に下方から係止する。3本のアーム23の3つのフック25により、1つのタイヤTの上側のビード部に下方から係止した状態で、3本のアーム23を上昇させて、タイヤを持ち上げることが可能になる。
アーム23の外方向側面にはタッチセンサ(図示せず)が取り付けられていてよい。このタッチセンサは、アーム23を外方向に移動させていったときにアーム23の本体がタイヤTの中心穴4の上面開口縁に当接したことを検知するためのものである。
【0019】
グリッパ装置9は、アーム拡縮装置77(図9)を有している。アーム拡縮装置77は、3本のアーム23を水平方向に径方向に拡縮する(拡径状態と縮径状態とを切り換える)チャック装置である。アーム拡縮装置77は、ベース21に設けられている。
アーム拡縮装置77は、周知の技術であり、例えば、チャック用シリンダ(図示せず)と各アーム23を連動して作動させる連動機構(図示せず)とを有している。
なお、アーム23は、拡径位置において隣接するアーム23と円周方向に最も離れており、縮径位置において隣接するアーム23と円周方向に最も近づいている。
【0020】
グリッパ装置9は、第1レーザ距離センサ31A、第2レーザ距離センサ31B、第3レーザ距離センサ31Cを有している。第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、下方の物体とグリッパ装置9のベース21との高さ方向の距離を検出するためのものである。第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、ベース21の下部に設けられ、真下につまり鉛直方向下側にレーザを発射するようになっている。
第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、図2及び図3に示すように、フック25の円周方向間に配置されており、具体的には、所定の円周上で120°の角度を空けて配置されている。さらに具体的には、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、アーム23を最も縮めた時(縮径状態の一例)のフック25の先端を含む第1円C1の外側に配置されている。
この実施形態では、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、第1円C1に近接して配置されている。しかし、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、第1円C1と、アーム23最も拡げた時(拡径状態の一例)のフック25の先端を含む第2円C2との間に配置されていればよい。つまり、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、第1円C1より外側でかつ第2円C2より内側の範囲に配置されている。なお、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、第1円C1から半径方向外側に離れて設けられていてもよい。また、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、互いに円周方向に並んでいなくてもよい。つまり、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、中心からの距離を異ならせて配置してもよい。
【0021】
以上に述べたように、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、アーム23がタイヤTの上方にありかつ縮径状態において、フック25の先端を含む第1円C1の外側に配置され下方にある物体を検出する。
【0022】
グリッパ装置9は、フック25の下面に設けられ、フック25の先端側が上下動する第1~第3接触センサ33A~33C(図9)を有している。第1~第3接触センサ33A~33Cは、アーム23の下降中にフック25の底面がタイヤTの上面に衝突したことを検出するためのセンサである。
図4を用いて、接触センサの一例として、第1接触センサ33Aを説明する。図4は、アーム下部、フック、接触センサを示す部分側面図である。
【0023】
第1接触センサ33Aは、上下回動式の板81を有している。板81は、基部側が水平方向に延びる回動軸81aによってアーム23の下部に支持されている。板81は、フック25の本体25aに当接する水平位置と、先端部が下方に離れた斜め位置との間で移動可能である。
第1接触センサ33Aは、板81を回動方向下側に弾性的に付勢するバネ(図示せず、例えば、コイルバネ)を有している。したがって、板81は通常は斜め位置にある。
第1接触センサ33Aは、荷重センサ(図示せず)を有している。荷重センサは、板81が下方の物体に当接して上方に回動して水平位置に移動すると、板81とフック25の他の部材との間で圧縮される位置に設けられている。
【0024】
(3)タイヤ持ち上げ基本動作
図5図8を用いて、タイヤ搬送装置1が横倒姿勢にあるタイヤTを持ち上げる時の基本動作を説明する。図5図8は、タイヤ持ち上げ動作の一状態を示す模式図である。
最初に、図5に示すように、グリッパ装置9をタイヤTの真上(つまり、中心穴の真上)に配置する。
【0025】
次に、図6に示すように、3本のアーム23を縮めた状態で下降させて上面開口縁6内側に挿入し、フック25の先端をタイヤTの上下方向中心付近に位置させる。
次に、図7に示すように、3本のアーム23をタイヤ径方向に拡大してフック25が平面視でタイヤTの上面開口縁6(ビード部)に係る位置まで移動させる。
【0026】
最後に、図8に示すように、アーム23を上昇させて、フック25でタイヤTの中心穴4の上面開口縁6を下から支えて持ち上げる。
【0027】
(4)タイヤ搬送装置の制御構成
図9を用いて、タイヤ搬送装置1の制御構成を説明する。図9は、タイヤ搬送装置の制御構成を示すブロック図である。
タイヤ搬送装置1は、コントローラ51を有している。
【0028】
コントローラ51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。コントローラ51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
コントローラ51は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
コントローラ51の各要素の機能は、一部又は全てが、コントローラ51を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、コントローラ51の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
【0029】
コントローラ51には、X軸駆動装置71、Y軸駆動装置73、Z軸駆動装置75、アーム拡縮装置77が接続されている。コントローラ51は、これら装置を制御可能である。
コントローラ51には、第1~第3レーザ距離センサ31A~31C、第1~第3接触センサ33A~33Cが接続されている。コントローラ51には、これらセンサから検出信号が入力される。
コントローラ51には、図示しないが、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0030】
(5)タイヤ持ち上げ制御動作の詳細
図10図14を用いて、タイヤ持ち上げ制御動作の詳細を説明する。図10及び図11は、タイヤ搬送装置のタイヤ持ち上げ制御動作を示すフローチャートである。図12図14は、タイヤとレーザ距離センサの位置関係の一状態を示す模式的平面図である。
以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、各装置の動作は、制御部から各装置への指令の結果であり、これらはソフトウェア・アプリケーションの各ステップによって表現される。
【0031】
ステップS1では、移動ユニット7が、タイヤTが置かれた位置の真上に移動させて停止させられる。具体的には、コントローラ51が、X軸駆動装置71及びY軸駆動装置73を制御することで上記動作を実行させる。なお、タイヤTの位置はあらかじめコントローラ51の記憶部に記憶されている。
【0032】
ステップS2では、各アーム23が、最内方向位置に移動させられる(つまり、縮径状態になる)。具体的には、コントローラ51が、アーム拡縮装置77を制御することで上記動作を実行させる。なお、各アーム23が最初から縮径状態にある場合は、上記動作は省略される。
【0033】
ステップS3では、グリッパ装置9が所定高さまで下降させられる。具体的には、コントローラ51は、Z軸駆動装置75を制御することで上記動作を実行させる。上記の所定高さは、例えば、アーム23の下部底面とタイヤTの最上面との高さ方向距離が所定の値(例えば、300mm)になる高さである。なお、タイヤTの最上面の高さは、あらかじめコントローラ51の記憶部に記憶されている。
【0034】
ステップS4では、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cが下方にレーザを照射し、反射してきたレーザを受光して下方の物体との距離を検出する。このとき、上記のようにグリッパ装置9が下降させられて第1~第3レーザ距離センサ31A~31CとタイヤTとの距離が近接しているので、検出精度が高くなる。
【0035】
ステップS5では、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cの下方にある物体との距離が互いに異なっているか否かが判断される。YesであればプロセスはステップS6に移行し、NoであればプロセスはステップS9に移行する。
ステップS5においてYesの場合とは、例えば図12に示すように、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cのうち2つがタイヤTの中心穴4の真上にあるが、1つがタイヤTの真上にあり他の2つ比べて計測距離が短くなる場合である。これは、アーム23の位置が不適切な場合であり、アーム23を下降すると1つのフック25がタイヤTに当たってしまう。
ステップS5においてNoの場合とは、図13に示すように、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cの全てがタイヤTの中心穴4の真上にある場合である。
【0036】
ステップS6では、上記判断が所定回数を超えたか否かが判断される。YesであればプロセスはステップS8に移行する。NoであればプロセスはS7に移行する。
【0037】
ステップS7では、グリッパ装置9が水平方向に移動させられる。なお、移動距離は例えば5~10mmである。具体的には、コントローラ51は、図12の白抜き矢印に示すように、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cのうち短い距離を検出したものが平面視でタイヤTの中心穴4の中に入るように(例えば、円周中心を向く方向に)グリッパ装置9つまりアーム23も移動させ、その後に第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cによって計測する距離を監視する。したがって、アーム23の位置が補正される。この結果、アーム23がタイヤTに接触しにくくなる。ステップS7が終了すると、プロセスはステップS4に戻る。
なお、図14に示すように第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cのうち2つがタイヤTの真上にあり他の1つ比べて計測距離が短くなる場合は、コントローラ51は、図14の白抜き矢印に示すように、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cのうち短い距離を検出した2つのものが平面視でタイヤTの中心穴4内に入るようにグリッパ装置9つまりアーム23も移動させる。
【0038】
ステップS8では異常処理が行われる。具体的には、異常警報が発せられる。以後、作業者が手動操作、手作業等で異常状態を解消する処置を行なう。
ステップS9では、タイヤ保持・持ち上げ動作が行われる(後述)。
【0039】
以上に述べたように、コントローラ51は、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cによって計測する距離を監視し、タイヤTが検出されなければ、Z軸駆動装置75にアーム23を下降させて当該タイヤTを保持する。
一方、コントローラ51は、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cによって計測した距離同士に差異が生じる(つまり、第1~第3レーザ距離センサ31A~31CのいずれかがタイヤTを検出する)と、Z軸駆動装置75にアーム23を下降させない。これは、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cの少なくとも1つがタイヤTを検出するとそのセンサの計測距離が最も短くなり、その真下にタイヤTが存在することを意味する。つまり、平面視でフック25に重なる位置にタイヤTが配置されている(例えば、タイヤTが傾いたり、位置が異なっていたりする)。つまり、コントローラ51は、アーム23の位置が不適切であると判断する。
また、上記のように、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cの少なくとも1つが平面視でタイヤTの中心穴4の中に入っていない場合は、グリッパ装置9の平面位置の補正と下方距離の再計測が繰り返し行われる。つまり、計測距離同士が相違する場合(ステップS5でYes)はステップS7においてグリッパ装置9は所定距離(例えば、数mm)だけ移動させられ、ステップS5においてタイヤTとの距離が再計測される。なお、計測距離同士が相違するとは、例えば、30~50mmといった所定の値を超えた場合である。
【0040】
図11を用いて、図10のステップS9を詳細に説明する。
ステップS11では、例えば図5の状態からグリッパ装置9の下降が開始される。具体的には、コントローラ51がZ軸駆動装置75を制御することで上記動作を実行させる。
【0041】
ステップS12では、第1~第3接触センサ33A~33Cの少なくとも1つがONしたか否かが判断される。具体的には、コントローラ51が第1~第3接触センサ33A~33Cからの検出信号に基づいて上記判断を行う。YesであればプロセスはステップS17に移行し、NoであればプロセスはステップS13に移行する。
【0042】
ステップS13ではグリッパ装置9が所定高さ位置に到達したか否かが判断される。具体的には、コントローラ51がセンサ(図示せず)からの検出信号に基づいて上記判断を行う。YesであればプロセスはステップS14に移行し、NoであればプロセスはステップS12に戻る。
【0043】
ステップS14では、グリッパ装置9の下降が停止される(例えば、図6の状態)。具体的には、コントローラ51がZ軸駆動装置75を制御することで上記動作を実行させる。
【0044】
ステップS15では、3本のアーム23が半径方向外側に移動させられる(例えば、図7の状態)。具体的には、コントローラ51がアーム拡縮装置77を制御することで上記動作を実行させる。これにより、フック25がタイヤTの中心穴4の上面開口縁6の下方に位置する。なお、3本のアーム23の移動は、アーム23の本体部がタイヤTの中心穴4の上面開口縁に当接すると、タッチセンサ等の検出信号に従って停止させられる。
【0045】
ステップS16では、グリッパ装置9は上昇させられる(例えば、図8の状態)。具体的には、コントローラ51がZ軸駆動装置75を制御することで上記動作を実行させる。これにより、各アーム23が上昇し、各アーム23のフック25がタイヤTの中心穴4の上面開口縁を下側から支え、タイヤT全体を持ち上げる。
【0046】
ステップS17では、異常処理が行われる。具体的には、アーム23のさらなる下降が停止させられる。さらに、異常警報が発せられ、以後、作業者が手動操作、手作業等で異常状態を解消する処置を行なう。このように第1~第3接触センサ33A~33Cの少なくとも1つがタイヤTを検出した場合は、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cの少なくとも1つがタイヤTを検出した場合とは異なり、位置補正を行わずに直ちに異常処理を行う。これは、上記の場合はタイヤTが位置補正等の調整によっても対応不可能な状態にあると考えられるからである。
【0047】
2.第2実施形態
第1実施形態では、図10のステップS7の複数回の補正動作で補正できなかった場合、ステップS8において異常処理を行っていた。
上記の動作の変形例として、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の基本構成及び動作は第1実施形態と同じである。
【0048】
コントローラ51は、図10のステップS5とステップS6の間で、新たなステップとして、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cの検出結果に基づいて、上から何段目までならタイヤTを搬送可能か判断する。そして、搬送できるタイヤTがあれば、プロセスはステップS9に移行して、タイヤ保持・持ち上げ動作が実行される。なお、上記のタイヤ保持・持ち上げ動作では、タイヤTの搬送可能な分をまとめて搬送してもよいし、タイヤTを1つずつ搬送してもよい。
【0049】
上記の場合、例えば、上側のタイヤTが傾くことで検出距離同士に差異が生じていたとすれば、上記のように最初に上側の傾いているタイヤTを搬送することで、次に下側のタイヤTも搬送可能になる。
以上の結果、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cによって計測した距離同士の差異があった場合に、搬送可能な数のタイヤTだけを搬送できる。したがって、タイヤTの搬送効率が良くなる。
【0050】
具体例を説明する。図1に示すようにタイヤTが三段であって、タイヤ幅が200mm、3段の全高さが600mmとする。なお、コントローラ51は、在庫データに基づいて、タイヤTが3段積まれていることを把握している。
最初に、図10のステップS4及びS5のように、タイヤTの上方300mmにおいて、第1~第3レーザ距離センサ31A~31CによりタイヤTとの距離が検出される。
【0051】
この実施形態では、図10におけるステップS7の補正動作を一度行い、しかし距離の差異を解消できずにその後にステップS5において再び距離同士に差異あり(ステップS5でYes)となった場合に、コントローラ51は、新たなステップとして、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cの検出結果に基づいて、上からから何段目までならタイヤTを搬送可能か判断する。
【0052】
例えば、第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cのうち、2つのセンサの検出結果が900mm(タイヤTを検出せず)、1つのセンサ検出結果が700mm(最下段のタイヤTを検出した)とする。この例では、コントローラ51は、例えば、上から2段のタイヤTは移載可能と判断する。これは、例えば、最下段のタイヤTは正しい位置にあるが、上側のタイヤTが傾いて上記のような検出距離の差異が生じた場合である。
そして、次に、図10のステップS9において、上側2段分のタイヤTが搬送される。
【0053】
次に、移動ユニット7が、最下段のタイヤTが置かれた位置の真上に戻ってくる。
最後に、タイヤ搬送装置1は、最下段のタイヤTを検出して、次に当該タイヤTを搬送する。
【0054】
3.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
タイヤ搬送装置1(タイヤ搬送装置の一例)は、タイヤTを持ち上げて搬送する装置であって、少なくとも3本のアーム23と、アーム拡縮装置77と、Z軸駆動装置75と、コントローラ51とを備えている。
3本のアーム23(アームの一例)は、アーム本体24(アーム本体の一例)と、アーム本体24の下部に外側へ突出するように設けられておりタイヤTを持ち上げるためのフック25(突出部の一例)を有する。
アーム拡縮装置77(アーム拡縮機構の一例)は、アーム23を水平拡縮方向に移動する。
Z軸駆動装置75(昇降機構の一例)は、アーム23を昇降する。
第1~第3レーザ距離センサ31A~31Cは、アーム23がタイヤTの上方にありかつ縮径状態においてフック25の先端を含む第1円C1(円の一例)の外側に配置されており、下方にある物体を検出する。
コントローラ51は、第1~第3レーザ距離センサ31A~31C少なくとも1つによってタイヤTが検出されると、アーム23の位置が不適切であると判断する。
この装置では、第1~第3レーザ距離センサ31A~31CがタイヤTを検出すると、平面視でフック25に重なる位置にタイヤTが配置されていることになる。この場合には、例えば、Z軸駆動装置はアーム23を下降させないので、タイヤTが傾いたり位置が異なっていたりしていても、フック25がタイヤTに接触しない。
【0055】
4.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(1)アームの変形例
アームの数は4本以上、例えば、4本、5本でもよい。
(2)アーム水平移動動作の変形例
第1実施形態でアームの位置調整のために、アームを所定距離(数mm)移動させてから、レーザ距離センサによって下方の物体の再検出を行っていた。しかし、変形例として、下方の物体までの距離を計測しながらアームを移動させ続けてもよい。この場合、アームは、タイヤTを検出しなくなるまで移動させられる。
アームの位置調整は省略されてもよい。
【0056】
(3)レーザ距離センサの変形例
レーザ距離センサは3個以上、例えば、4個、5個、6個でもよい。なお、レーザ距離センサは、アーム同士の間に1つずつ配置されることが好ましい。
レーザ距離センサではなく、反射物の有無を検出する反射型光電センサを用いてもよい。この場合、センサの真下のタイヤTの有無を検出でき、コントローラはタイヤTがある場合とない場合とを区別できる。
レーザ距離センサによる検出の前にグリッパ装置を下降させなくてもよい。また、グリッパ装置を下降させながらレーザ距離センサによる検出を行ってもよい。
(4)接触センサの変形例
接触センサは、フックの底面が下方の部材に接触したことを検出できればよく、種類、構造、数等は限定されない。例えば、接触センサは、上下動する当接部材と、当接部材を上下方向に案内する直動ガイドと、当接部材を下方に付勢するバネと、当接部材が下方の部材に当接して上方に移動すると当接部材とフックの他の部材との間で圧縮される荷重センサとを有していてもよい。
接触センサは、省略されてもよい。
(5)タイヤ搬送装置全体の変形例
タイヤ搬送装置は、ガントリークレーンに限定されず、所定の高さ位置を走行する天井搬送車に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、横倒姿勢のタイヤの中心穴の上面開口縁に上方より複数のアームを挿入してアームのフックにて上面開口縁を下方から支持することでタイヤを持ち上げる装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 :タイヤ搬送装置
3 :第1レール
5 :第2レール
7 :移動ユニット
9 :グリッパ装置
21 :ベース
23 :アーム
25 :フック
31A :第1レーザ距離センサ
31B :第2レーザ距離センサ
31C :第3レーザ距離センサ
33A :第1接触センサ
33B :第2接触センサ
33C :第3接触センサ
51 :コントローラ
71 :X軸駆動装置
73 :Y軸駆動装置
75 :Z軸駆動装置
77 :アーム拡縮装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14