(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】エレベータ制御システムおよびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/06 20060101AFI20240305BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20240305BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240305BHJP
B66B 3/02 20060101ALI20240305BHJP
B66B 13/14 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B66B1/06 F
B66B5/00 A
B66B3/00 L
B66B3/02 P
B66B13/14 H
B66B13/14 K
(21)【出願番号】P 2023017830
(22)【出願日】2023-02-08
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167920(JP,A)
【文献】特開2014-40320(JP,A)
【文献】特開2000-344431(JP,A)
【文献】特開2020-117318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/06
B66B 5/00
B66B 3/00
B66B 3/02
B66B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運行に関する異常を検知する異常検知部と、
乗りかごの移動を制御する移動制御部と、を備え、
前記移動制御部は、
前記異常検知部による異常検知時に、前記乗りかごの移動を停止する制御を行うとともに、
(1)前記異常検知時の直前の移動開始から前記異常検知時の停止までの前記乗りかごの走行距離、および、
(2)前記異常検知時の直前の移動開始時に前記乗りかごが停止していた移動開始時乗場に設けられているドアの戸閉不良の検知結果、
の少なくともいずれか一方に基づいて、前記異常検知時における前記乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する、エレベータ制御システム。
【請求項2】
前記移動制御部は、
(1)前記走行距離が所定値未満の場合に、前記異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に前記乗りかごを移動させ、前記走行距離が所定値以上の場合に、前記異常検知時までに移動していた方向に前記乗りかごを移動させる制御、および、
(2)前記移動開始時乗場に設けられている前記ドアの戸閉不良が検知されている場合に、前記異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に前記乗りかごを移動させ、前記移動開始時乗場に設けられている前記ドアの戸閉不良が検知されていない場合に、前記異常検知時までに移動していた方向に前記乗りかごを移動させる制御、
の少なくともいずれか一方を行う、請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項3】
前記乗りかご内に設けられている操作部に対する利用者による操作入力を示す操作信号を受信する操作検知部を備え、
前記移動制御部は、前記操作入力が行われていることを示す前記操作信号を前記操作検知部が受信している期間において、前記救出運転制御を行う、請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項4】
前記操作信号は、ドアの閉動作または開動作を指示するボタン、および、行先階を指示するボタンの少なくともいずれか1つが前記利用者によって操作されていることによって発生する信号である、請求項3に記載のエレベータ制御システム。
【請求項5】
前記乗りかごの前記ドアの開閉動作を制御するドア制御部を備え、
前記ドア制御部は、前記救出運転制御時における前記ドアを閉じる方向の戸閉トルクを、通常運転時における前記戸閉トルクよりも大きくする、請求項3に記載のエレベータ制御システム。
【請求項6】
前記移動制御部による前記救出運転制御が行われている期間において、前記乗りかご内の利用者に対して、前記救出運転制御を行う際の前記移動方向、および、最寄階までの距離または時間、の少なくともいずれか一方を提示する制御を行う情報提示制御部をさらに備える、請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項7】
エレベータの運行に関する異常を検知する異常検知ステップと、
乗りかごの移動を制御する移動制御ステップと、を含み、
前記移動制御ステップは、
前記異常検知ステップにおける異常検知時に、前記乗りかごの移動を停止する制御を行うとともに、
(1)前記異常検知時の直前の移動開始から前記異常検知時の停止までの前記乗りかごの走行距離、および、
(2)前記異常検知時の直前の移動開始時に前記乗りかごが停止していた移動開始時乗場に設けられているドアの戸閉不良の検知結果、
の少なくともいずれか一方に基づいて、前記異常検知時における前記乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する、エレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発生時に救出制御運転を行うエレベータ制御システムおよびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの稼働中に乗りかごの戸閉不良が生じた場合、利用者の安全を確保するために乗りかごの運行を停止する制御が行われる。この場合、乗りかごは乗場のフロア位置とは異なる位置に停止している可能性があり、乗りかごの扉が開かない状況となる。よって、乗りかご内の利用者は、メンテナンス員が復旧作業をするまで乗りかごから外に出ることができない。
【0003】
これに対して、特許文献1には、利用者が乗りかご内に閉じ込められたとき、監視センターからの遠隔操作により運転モードを手動モードとし、乗りかご内で低速運転可能として所定の乗場位置まで運転できるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乗りかごの戸閉不良の原因としては、扉の隙間に例えば紐状の物が挟まったり、塔内機器と接触したりすることにより生じることが多い。そのため、低速運転の方向を誤ると、かえって扉や塔内機器が損傷し、利用者が自発的に外に出ることが困難になる可能性がある。
【0006】
本発明の一態様は、異常検知時における乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を適切に決定することができるエレベータ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るエレベータ制御システムは、エレベータの運行に関する異常を検知する異常検知部と、乗りかごの移動を制御する移動制御部と、を備え、前記移動制御部は、前記異常検知部による異常検知時に、前記乗りかごの移動を停止する制御を行うとともに、(1)前記異常検知時の直前の移動開始から前記異常検知時の停止までの前記乗りかごの走行距離、および、(2)前記異常検知時の直前の移動開始時に前記乗りかごが停止していた移動開始時乗場に設けられているドアの戸閉不良の検知結果、の少なくともいずれか一方に基づいて、前記異常検知時における前記乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。
【0008】
上記構成によると、異常検知時の直前の移動開始から停止までの乗りかごの走行距離に基づいて救出運転の移動方向を決定することにより、走行距離に応じた適切な移動方向へ救出運転させることが可能となる。また、上記のように、移動開始時に乗りかごが停止していた乗場に設けられているドアの戸閉不良の検知結果に基づいて救出運転の移動方向を決定することにより、移動開始時の乗場のドアの状態に応じた適切な移動方向へ救出運転させることが可能となる。
【0009】
本発明の態様2にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1において、前記移動制御部は、(1)前記走行距離が所定値未満の場合に、前記異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に前記乗りかごを移動させ、前記走行距離が所定値以上の場合に、前記異常検知時までに移動していた方向に前記乗りかごを移動させる制御、および、(2)前記移動開始時乗場に設けられている前記ドアの戸閉不良が検知されている場合に、前記異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に前記乗りかごを移動させ、前記移動開始時乗場に設けられている前記ドアの戸閉不良が検知されていない場合に、前記異常検知時までに移動していた方向に前記乗りかごを移動させる制御、の少なくともいずれか一方を行ってよい。
【0010】
走行距離が所定値未満の場合、または、移動開始時乗場に設けられているドアの戸閉不良が検知されている場合、移動開始時乗場と乗りかごとの間で紐などの障害物が引っ掛かっている状態となっている可能性が考えられる。この場合、異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に乗りかごを移動させることによって、異常な状況を悪化させることなく救出運転を実行することができる。
【0011】
また、走行距離が所定値以上の場合、特定の塔内設備近傍を通過したときに該塔内設備に接触した可能性がある。この場合、異常検知時までに移動していた方向に乗りかごを移動させることによって、該塔内設備に再度接触することなく救出運転を実行することができる。
【0012】
本発明の態様3にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1または2において、前記乗りかご内に設けられている操作部に対する利用者による操作入力を示す操作信号を受信する操作検知部を備え、前記移動制御部は、前記操作入力が行われていることを示す前記操作信号を前記操作検知部が受信している期間において、前記救出運転制御を行ってもよい。
【0013】
上記構成によると、利用者によって操作入力が行われている期間において救出運転が行われることになるので、利用者が救出運転による移動が行われても問題がないと認識している期間にのみ救出運転が行われることになる。よって、救出運転が行われることによって逆に利用者が危険な状態に陥る可能性を抑制することができる。
【0014】
本発明の態様4にかかるエレベータ制御システムは、上記態様3において、前記操作信号は、ドアの閉動作または開動作を指示するボタン、および、行先階を指示するボタンの少なくともいずれか1つが前記利用者によって操作されていることによって発生する信号であってよい。
【0015】
上記構成によると、ドアの閉動作または開動作を指示するボタン、および、行先階を指示するボタンなど、通常のエレベータの乗りかごに設けられているボタンによって、救出運転の制御に用いられる操作信号が発生される。すなわち、救出運転制御のための特別な操作ボタンを乗りかごに設けることなく、上記のような救出運転制御を実現することができるので、導入コストを低く抑えることができる。
【0016】
本発明の態様5にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記乗りかごの前記ドアの開閉動作を制御するドア制御部を備え、前記ドア制御部は、前記救出運転時における前記ドアを閉じる方向の戸閉トルクを、通常運転時における前記戸閉トルクよりも大きくしてもよい。
【0017】
上記構成によると、利用者が救出運転による移動が行われても問題がないと認識している期間において、可能な限りドアを閉じた状態で救出運転を実行することができる。よって、例えば利用者の指がドアに挟まっているような状態で戸閉トルクがかかることなく、利用者の安全を確認したうえでの救出運転を実現できる。
【0018】
本発明の態様6にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記移動制御部による前記救出運転制御が行われている期間において、前記乗りかご内の利用者に対して、前記救出運転制御を行う際の前記移動方向、および、最寄階までの距離または時間、の少なくともいずれか一方を提示する制御を行う情報提示制御部をさらに備えてもよい。
【0019】
上記構成によると、救出運転時の移動方向および最寄階までの距離や時間が利用者に通知されるので、救出運転時における利用者の不安感を低減することができる。
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明の態様7に係るエレベータ制御方法は、エレベータの運行に関する異常を検知する異常検知ステップと、乗りかごの移動を制御する移動制御ステップと、を含み、前記移動制御ステップは、前記異常検知ステップにおける異常検知時に、前記乗りかごの移動を停止する制御を行うとともに、(1)前記異常検知時の直前の移動開始から前記異常検知時の停止までの前記乗りかごの走行距離、および、(2)前記異常検知時の直前の移動開始時に前記乗りかごが停止していた移動開始時乗場に設けられているドアの戸閉不良の検知結果、の少なくともいずれか一方に基づいて、前記異常検知時における前記乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。
【0021】
上記構成によると、上記態様1と同様の効果を奏する。
【0022】
本発明の各態様に係るエレベータ制御システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記エレベータ制御システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記エレベータ制御システムをコンピュータにて実現させるエレベータ制御システムの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、異常検知時における乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態1に係るエレベータ制御システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】エレベータにおいて運行に関する異常が発生したときの状態の一例を示す概略図である。
【
図3】エレベータにおいて運行に関する異常が発生したときの状態の一例を示す概略図である。
【
図4】乗りかごの内部構成の一例を示す概略図である。
【
図5】エレベータ制御システムが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態2に係るエレベータ制御システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7】エレベータにおいて運行に関する異常が発生したときの状態の一例を示す概略図である。
【
図8】エレベータにおいて運行に関する異常が発生したときの状態の一例を示す概略図である。
【
図9】エレベータ制御システムが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態3に係るエレベータ制御システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図11】エレベータ制御システムが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
<エレベータ制御システム100の構成>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るエレベータ制御システム100の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、エレベータ制御システム100は、エレベータ制御装置1およびエレベータ2を備える。エレベータ制御装置1は、エレベータ2の動作を制御する装置であり、エレベータ2はエレベータ制御装置1の制御に従い乗りかご20等を動作させる。なお、以下の説明では、エレベータ制御システム100はエレベータ2の乗りかご20を1つだけ備える構成を例示するが、エレベータ2の乗りかご20の数はこれに限られず、複数存在していてもよい。
【0026】
エレベータ制御システム100は、エレベータ2の乗りかご20において異常が発生していないときには、乗場呼びおよびかご呼びに基づき乗りかご20を移動させる通常運転制御を行い、エレベータ2の運行に関する異常が発生した場合には、乗りかご20を最寄階に移動させ、乗りかご20に乗車中の利用者を降車させる救出運転制御を行うシステムである。エレベータ2の運行に関する異常とは、例えばエレベータ2の乗りかご20の戸閉不良である。戸閉不良とは、異物が乗りかご20のドア24に挟まる、または乗りかご20が塔内設備に接触するなどして、乗りかご20が走行中にドア24が開いてしまい、正常に閉じることができなくなっている状態である。
【0027】
エレベータ制御システム100では、エレベータ2の運行に関する異常が発生した場合、当該異常の発生をエレベータ制御装置1が検知し、救出運転制御を行う。救出運転制御において、エレベータ制御装置1は、乗りかご20の移動を停止させる制御を行う。また、エレベータ制御装置1は、異常が発生したときの乗りかご20の位置に応じて乗りかご20の移動方向を決定し、決定した方向に乗りかご20を低速で移動させる制御を行う。さらに、エレベータ制御装置1は、乗りかご20が最寄階に到着すると、乗りかご20のドア24および乗場ドア28を開放させる制御を行う。これにより、エレベータ2の運行に関する異常が発生したとしても、安全に乗りかご20から利用者を降車させることができる。
【0028】
また、エレベータ制御システム100において、エレベータ制御装置1は、異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離に基づいて、異常検知時における乗りかご20の停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。エレベータ制御システム100では、上記のように異常検知時の直前の移動開始から停止までの乗りかご20の走行距離に基づいて救出運転の移動方向を決定することにより、適切な移動方向への救出運転を行うことが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、エレベータ制御システム100が乗りかご20の走行距離に基づいて救出運転の移動方向を決定する構成を例に挙げて説明するが、救出運転の移動方向を決定する方法はこれに限られない。例えば、エレベータ制御システム100では、異常検知時の直前の移動開始時に乗りかご20が停止していた移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良の検知結果に基づいて、異常検知時における乗りかご20の停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向が決定されてもよい。
【0030】
[エレベータ制御装置1]
図1に示すように、エレベータ制御装置1は、制御部11、通信部12、および記憶部13を備える。制御部11は、エレベータ制御装置1における各処理を実行するように制御する。制御部11の詳細については後述する。通信部12はエレベータ制御装置1がエレベータ制御システム100の各装置と情報の授受を行うためのインターフェースである。エレベータ制御装置1は、エレベータ2と接続されており、通信部12を介して各情報の送受信を行う。エレベータ制御装置1とエレベータ2との間における接続方法は無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。記憶部13は、制御部11によって読み出される各種コンピュータプログラム、および、制御部11が実行する各種処理において利用されるデータ等が格納されている。
【0031】
図1に示すように、制御部11は、受付部111、異常検知部112、ドア制御部113、情報提示制御部114、走行距離特定部115、操作検知部116、および移動制御部117を備える。
【0032】
受付部111は、乗場呼びおよびかご呼びを受け付ける。受付部111は、受け付けた乗場呼びおよびかご呼びによって指定される移動方向および行先階の少なくとも一方を記憶部13に記憶させる。なお、エレベータ制御装置1が救出運転制御を行っている間、受付部111は乗場呼びおよびかご呼びの受付を停止してもよい。
【0033】
異常検知部112は、エレベータ2の運行に関する異常を検知する。具体的には、異常検知部112は、乗りかご20の検知部27であるカードアスイッチが切り替わったことを検知する。乗りかご20が階床間を移動中に当該カードアスイッチがオンからオフになった場合、異常検知部112は、エレベータ2の乗りかご20の運行に異常が生じたとして、制御部11の各部にエレベータ2の運行に関する異常の発生を検知したことを示す情報を出力する。これにより、エレベータ制御装置1において救出運転制御が開始される。乗りかご20が階床間を移動中に当該カードアスイッチがオフになる状況は、具体的には乗りかご20が移動中にドア24が開いた場合などに発生する。
【0034】
ドア制御部113は、乗りかご20のドア24の開閉動作を制御する。通常運転時、乗りかご20がいずれかの階床に到着すると、ドア制御部113は、ドア24を開くことを指示する信号を乗りかご20に送信する。また、ドア制御部113は、エレベータ2の乗りかご20から乗りかご20のドア24を閉じることを指示する操作が行われたことを示す信号を受信する、またはドア24が開いてから所定時間経過すると、ドア24を閉じることを指示する信号を乗りかご20に送信する。
【0035】
ドア制御部113は、異常検知部112からエレベータ2の運行に関する異常の発生を検知したことを示す情報を取得すると、ドア24を閉じる制御を行う。具体的には、エレベータ2の運行に異常が生じた場合、ドア制御部113は、ドア24を閉じることを指示する信号を乗りかご20に送信する。ここで、ドア制御部113は、救出運転時におけるドア24を閉じる方向の戸閉トルクを、通常運転時における戸閉トルクよりも大きくすることを指示する信号を乗りかご20に送信する。
【0036】
また、ドア制御部113は、操作入力が行われていることを示す操作信号を操作検知部116が受信している期間において、ドア24を閉じる制御を行う。操作信号を操作検知部116が受信している期間とは、具体的には乗りかご20の操作部26であるボタンが押下されている期間である。操作部26が操作信号を受信している間、ドア制御部113は、利用者による操作入力が行われていることを示す情報を操作検知部116から取得する。これにより、ドア制御部113は、操作入力が行われていることを示す操作信号を操作検知部116が受信している期間を認識することができる。
【0037】
ドア制御部113は、操作信号を操作検知部116が受信している期間中にのみ、戸閉トルクを大きくした状態でドア24を閉じることを指示する信号をエレベータ2の制御部22に送信する。
【0038】
これにより、利用者が救出運転制御による移動が行われても問題がないと認識している期間において、エレベータ制御装置1は、可能な限りドア24を閉じた状態で救出運転を実行することができる。よって、例えば利用者の指がドアに挟まっているような状態で戸閉トルクがかかることなく、利用者の安全を確認したうえでの救出運転を実現できる。
【0039】
情報提示制御部114は、利用者に知らせる情報を乗りかご20に送信し、当該情報を提示部25に提示させる制御を行う。例えば、情報提示制御部114は、異常検知部112において乗りかご20に異常が発生していることが検知された場合、異常が発生し乗りかご20を停止することを示すメッセージを提示部25に提示させる。なお、利用者に対して提示される情報は、メッセージの表示に限られず、例えばランプの点滅、および音声出力等であってもよい。
【0040】
また、情報提示制御部114は、異常が発生している乗りかご20内の利用者が次に行うべき行動、例えばドア24に挟まったものを取り除くことを試みる、または特定のボタンを押下するなどの行動を促すメッセージを提示させてもよい。例えば、情報提示制御部114は、乗りかご20が停止した後、戸を閉じることを指示するための操作部26を押下することを促すメッセージを提示させる。また、情報提示制御部114は、戸閉不良が解消すると、救出運転制御を行うための操作を受付可能な操作部26を押下することを促すメッセージを提示させる。
【0041】
さらに、情報提示制御部114は、移動制御部117による救出運転制御が行われている期間において、乗りかご20内の利用者に対して、救出運転制御を行う際の移動方向、および、最寄階までの距離または時間、の少なくともいずれか一方を提示する制御を行う。これにより、救出運転時の移動方向および最寄階までの距離や時間が利用者に通知されるので、救出運転時における利用者の不安感を低減することができる。
【0042】
走行距離特定部115は、異常検知部112からエレベータ2の運行に関する異常の発生を検知したことを示す情報を取得すると、異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離を特定する。
【0043】
例えば、走行距離特定部115は、乗りかご20が直前に走行を開始したタイミングから異常を検知したタイミングまでの経過時間と乗りかご20の走行速度とに基づき、走行距離を特定する。走行距離特定部115は、特定した走行距離を示す情報を移動制御部117に出力する。
【0044】
操作検知部116は、乗りかご20内に設けられている操作部26に対する利用者による操作入力を示す操作信号を受信する。操作信号は、ドア24の閉動作または開動作を指示するボタン、および、行先階を指示するボタンの少なくともいずれか1つが利用者によって操作されていることによって発生する信号である。
【0045】
操作検知部116は、操作信号を受信している間、利用者による操作入力が行われていることを示す情報を制御部11の各部に出力する。これにより、制御部11の各部は、利用者が操作部26を操作していることを認識することができる。
【0046】
移動制御部117は、乗りかご20の移動を制御する。移動制御部117は、通常運転制御および救出運転制御を行う。異常検知部112が異常を検知していない場合、移動制御部117は通常運転制御を行う。通常運転制御において、移動制御部117は、受付部111が受け付けた乗場呼びおよびかご呼びに基づき乗りかご20を移動させ、乗りかご20のドア24を開閉させる。
【0047】
一方、異常検知部112から、エレベータ2の運行に関する異常の発生を検知したことを示す情報を取得した場合、移動制御部117は、異常が発生した乗りかご20内の利用者の安全を確保するための制御を行う。具体的には、移動制御部117は、異常検知部112による異常検知時に、乗りかご20の移動を停止する制御を行う。異常検知部112から、エレベータ2の運行に関する異常の発生を検知したことを示す情報を取得した場合、移動制御部117は、通信部12を介して、乗りかご20の移動を停止することを指示する信号を駆動部23に送信する。
【0048】
異常検知部112による異常検知時には、乗りかご20において例えばドア24の戸閉不良が発生している。このような場合、そのまま乗りかご20を予定通りの階床に移動させると、ドア24に挟まった異物が動くなどして異常が悪化する可能性がある。そのため、異常が発生したときには一旦乗りかご20の移動を停止することで状況が悪化する可能性を低減することができる。
【0049】
乗りかご20の移動を停止させた後、移動制御部117は、乗りかご20の検知部27の検知結果を取得する。検知部27の検知結果が、乗りかご20のドア24が閉じていることを示す場合、具体的には検知部27であるカードアスイッチがオンになっている場合、移動制御部117は救出運転制御を行う。移動制御部117は、ドア24が閉じてから救出運転制御を行うことで、戸閉不良が継続している状態で乗りかご20を移動させて内部の利用者に危険が及ぶ可能性を低減することができる。
【0050】
移動制御部117は、乗りかご20の検知部27の検知結果の取得を複数回、例えば3回行ってもよい。これにより、1回目の検知時には戸閉不良が解消していなかったとしても、2回目以降の検知時に戸閉不良が解消していれば救出運転制御を行うことができる。なお、移動制御部117は、乗りかご20の検知部27の検知結果の取得を規定回数行い、ドア24が閉じていないことを示す検知結果を取得し続けた場合、救出運転制御を行わず、乗りかご20を停止させた状態とする。
【0051】
検知部27の検知結果が、乗りかご20のドア24が閉じていることを示す場合、まず、移動制御部117は、走行距離特定部115から、乗りかご20の走行距離を示す情報を取得する。移動制御部117は、異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離に基づいて、異常検知時における乗りかご20の停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。一例として、移動制御部117は、走行距離が所定値未満の場合には、乗りかご20の移動方向を異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に決定し、走行距離が所定値以上の場合には、乗りかご20の移動方向を異常検知時までに移動していた方向に決定する。
【0052】
移動制御部117は、乗りかご20の移動方向を決定すると、乗りかご20に対して、決定した方向への移動を指示する信号を送信する。これにより、移動制御部117は、走行距離が所定値未満の場合に、異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に乗りかご20を移動させ、走行距離が所定値以上の場合に、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させる制御を行う。
【0053】
図2および
図3は、エレベータ2において運行に関する異常が発生したときの状態の一例を示す概略図である。
図2は、異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離が所定値未満である場合における乗りかご20の状態を示し、
図3は、異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離が所定値以上である場合における乗りかご20の状態を示す。なお、
図2および
図3のいずれも、乗りかご20が1階を出発階として上方向に移動する状況を例示している。
【0054】
図2に示すように、乗りかご20の走行距離(
図2の矢印Y1で示す距離)が所定値未満のときに異常が検知される場合、移動開始時乗場と乗りかご20との間で紐などの障害物X1が引っ掛かっている状態となっている可能性が考えられる。この場合、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させると、障害物X1が乗場ドア28と乗りかご20のドア24とによって引っ張られ、障害物X1またはドア24が破損するなど、異常な状況が悪化する可能性がある。また、障害物X1が例えばペットのリードなどであり、乗場にペットが取り残されている状態である場合、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させると、乗りかご20によってリードが引っ張られてペットに危険が及ぶ可能性がある。ここで、走行距離が所定値未満の場合、移動制御部117が異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に乗りかごを移動させる制御を行うことによって、異常な状況を悪化させることなく救出運転を実行することができる。
【0055】
また、乗りかご20の走行距離(
図3の矢印Y2で示す距離)が所定値以上であるときに異常が検知される場合、
図3に示すように、特定の塔内設備X2近傍を通過したときに乗りかご20が該塔内設備X2に接触した可能性が考えられる。この場合、異常検知時までに移動していた方向に乗りかごを移動させることによって、該塔内設備X2に再度接触することなく救出運転を実行することができる。
【0056】
また、移動制御部117は、操作入力が行われていることを示す操作信号を操作検知部116が受信している期間において、救出運転制御を行う。操作信号を操作検知部116が受信している期間とは、具体的には乗りかご20の操作部26であるボタンが押下されている期間である。操作部26が操作信号を受信している間、移動制御部117は、利用者による操作入力が行われていることを示す情報を操作検知部116から取得する。これにより、移動制御部117は、操作入力が行われていることを示す操作信号を操作検知部116が受信している期間を認識することができる。移動制御部117は、操作信号を操作検知部116が受信している期間中にのみ乗りかご20を移動させることを指示する信号をエレベータ2の制御部22に送信する。
【0057】
上記の構成によれば、利用者によって操作入力が行われている期間において救出運転が行われることになるので、利用者が救出運転による移動が行われても問題がないと認識している期間にのみ救出運転が行われることになる。よって、異常が生じている乗りかご20内の利用者が意図しないタイミングで乗りかご20が移動する可能性を低減し、救出運転が行われることによって逆に利用者が危険な状態に陥る可能性を抑制することができる。
【0058】
また、救出運転制御時において、移動制御部117は、通常の走行速度よりも遅い速度、例えば通常の半分以下など、安全で十分に遅い速度で乗りかご20を移動させるよう制御を行う。これにより、戸閉不良が生じている状況で乗りかご20を移動させたとしても利用者に危険が及ぶ可能性を低減することができる。
【0059】
[エレベータ2]
図1に示すように、エレベータ2は、乗りかご20、通信部21、制御部22、駆動部23、乗場ドア28、および操作部26を備える。通信部21は、制御部22がエレベータ制御装置1と通信を行うための通信モジュールである。駆動部23は、乗りかご20を階床間において移動させるための駆動部材であり、制御部22の制御に従って動作することで乗りかご20を移動させる。操作部26は各階床の乗場ごとに設けられ、操作部26への操作に基づく乗場呼びをエレベータ制御装置1に送信する。乗場ドア28は、各乗場にそれぞれ設けられ、乗りかご20のドア24の開閉に連動して開閉する。
【0060】
制御部22は、操作部26に対して行われた操作を示す信号をエレベータ制御装置1に送信する。例えば、制御部22は、操作部26への操作に基づき、乗りかご20の行先階を指定する情報を含むかご呼びをエレベータ制御装置1に送信する。
【0061】
また、制御部22は、いずれの操作部26が操作されているかを示す信号をエレベータ制御装置1に送信する。これにより、エレベータ制御装置1は、救出運転制御中に特定のボタンが操作されたことを認識することができる。
【0062】
(乗りかご20)
図4は、乗りかご20の内部構成の一例を示す概略図である。乗りかご20は、エレベータ制御装置1からの制御に基づき、ドア24の開閉を行う。
図4に示すように、エレベータ2の乗りかご20は、ドア24、提示部25、操作部26、および検知部27を備える。
【0063】
ドア24は、乗りかご20に設けられるドア24であり、制御部22の制御に従って開閉する。操作部26は、乗りかご20内に設けられるボタンであり、例えばかご呼びを行うための階床を指定するボタンおよびドア24の開閉を行う指示を行うためのボタン等である。
【0064】
救出運転制御中の操作を受付可能な操作部26は、操作部26のうちの特定のボタン、例えば
図4に示す操作部26Aであってよい。例えば、救出運転制御中の操作を受付可能な操作部26は、ドア24の閉動作または開動作を指示するボタン、および、行先階を指示するボタンの少なくともいずれか1つであってよい。エレベータ2の制御部22は、救出運転制御中の操作を受付可能なボタンを点滅させるなどして当該ボタンが救出運転制御中に操作すべきボタンであることを利用者に知らせてもよい。救出運転制御用の入力操作を受付可能なボタン以外のボタン、例えばドア24の開動作を指示するボタン(
図4の符号26B)は、救出運転制御中には消灯し、操作を受け付けない状態となる。特定のボタンのみが操作を受付可能な状態であることで、誤った操作が行われて救出運転が実行される可能性を低減することができる。
【0065】
提示部25は、各種情報を提示可能なディスプレイ等の表示装置、または音声を出力可能なスピーカ等の装置である。提示部25は、制御部22の制御に従い、エレベータ制御装置1から送信された各種情報を提示する。これにより、乗りかご20内の利用者は、必要な情報を認識することができる。
【0066】
検知部27は、例えばドア24の開閉に応じてオンオフが切り替わるカードアスイッチであり、具体的には、ドア24が予め設定された閾値以上に開いている間、検知部27はオフとなり、ドア24が閉じている間はオンとなる。乗りかご20の走行中にドア24が開いた場合、検知部27はオフになる。制御部22は、検知部27のオンオフが切り替わると、検知部27の状態がオン、またはオフに切り替わったことを示す信号をエレベータ制御装置1に送信する。
【0067】
<エレベータ制御システム100において行われる処理の流れの一例>
図5は、エレベータ制御システム100が行う処理(エレベータ制御方法)の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図5を用いて、エレベータ2の運行に異常が生じたときにエレベータ制御システム100が行う処理の流れの一例について説明する。
【0068】
エレベータ2において、検知部27が、ドア24が所定値以上に開いたことを検知すると、具体的には検知部27であるカードアスイッチがオフになると、制御部22は通信部21を介してエレベータ制御装置1に、検知部27の検知結果を示す信号を送信する。当該信号の受信タイミングが乗りかご20の移動中である場合、エレベータ制御装置1の異常検知部112はエレベータ2の運行に異常が発生したことを検知する(S1でYES:異常検知ステップ)。
【0069】
続いて、異常検知部112は、エレベータ2の運行に異常が発生したことを検知したことを示す情報を制御部11の各部に出力する。これにより、エレベータ制御装置1において乗りかご20内の利用者の安全を確保するための制御が開始される。移動制御部117は、エレベータ2の運行に関する異常の発生を検知したことを示す情報を取得すると、乗りかご20の移動を停止することを指示する信号を駆動部23に送信する(S2)。これにより、エレベータ2の制御部22は、乗りかご20の移動を停止する。
【0070】
乗りかご20の移動を停止させた後、情報提示制御部114は、ドア24を閉じるための操作部26を押下することを促すメッセージを提示することを指示する信号をエレベータ2の制御部22に送信する。これにより、乗りかご20の提示部25に、当該メッセージが表示される。当該メッセージが表示された後、戸閉を指示するための操作部26が押下されると、ドア制御部113はドア24を閉じることを指示する信号をエレベータ2の制御部22に送信する。これにより、制御部22は乗りかご20のドア24を閉じることを試みる。
【0071】
提示部25にメッセージを表示させた後、移動制御部117は、ドア24の開閉状態を示す検知部27の検知結果を取得する。ドア24が閉じている場合、換言すると検知部27であるカードアスイッチがオンになっている場合(S3でYES)、移動制御部117は、走行距離特定部115に、乗りかご20の走行距離の特定を指示する信号を出力する。一方、ドア24が閉じていない場合、換言すると検知部27であるカードアスイッチがオフの状態が継続している場合(S3でNO)、移動制御部117は乗りかご20を停止させた状態で処理を終了する。なお、移動制御部117は、S3の処理を複数回行ってもよい。
【0072】
走行距離特定部115は、当該信号を取得すると、異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離を特定する(S4)。
【0073】
移動制御部117は、走行距離特定部115から、乗りかご20の走行距離を示す情報を取得し、当該走行距離に基づき乗りかご20の移動方向を決定する(S5~S7)。乗りかご20の走行距離が所定値以上である場合(S5でNO)、移動制御部117は、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向に決定する(S6)。一方、乗りかご20の走行距離が所定値未満である場合(S5でYES)、移動制御部117は、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向と逆の方向に決定する(S7)。
【0074】
その後、乗りかご20の特定の操作部26に対して操作入力が行われると、エレベータ2の制御部22は、通信部21を介して操作信号をエレベータ制御装置1に送信する。
【0075】
操作検知部116は、制御部22から操作信号を受信すると、乗りかご20において操作入力が行われていることを示す情報をエレベータ制御装置1の制御部11の各部に出力する。これにより、エレベータ制御装置1において救出運転が実行される。
【0076】
ドア制御部113は、乗りかご20において操作入力が行われていることを示す情報を取得すると(S8でYES)、ドア24を閉じること、およびドア24を閉じる方向の戸閉トルクを、通常運転時における戸閉トルクよりも大きくすることを指示する信号を乗りかご20に送信する(S9)。エレベータ2の制御部22は、当該信号を受信すると、ドア24を通常運転時における戸閉トルクよりも大きいトルクで閉じる。
【0077】
情報提示制御部114は、救出運転制御を行う際の移動方向、および、最寄階までの距離または時間、の少なくともいずれか一方をエレベータ2の制御部22に送信する。エレベータ2の制御部22は、提示部25を制御し、受信した情報を利用者に提示する(S10)。
【0078】
移動制御部117は、乗りかご20において操作入力が行われていることを示す情報を取得すると、ステップS6またはステップS7において決定した方向に乗りかご20を移動させることを指示する信号を駆動部23に送信する。エレベータ2の制御部22は、指示された方向に乗りかご20を移動させる(S11:移動制御ステップ)。
【0079】
ドア24を閉じる制御および乗りかご20を移動させる制御は、操作部26に対して操作入力が行われている間にのみ行われる。操作部26に対して操作入力が行われていない場合、例えば利用者が操作部26から手を離した場合、ドア制御部113はドア24を閉じる方向の戸閉トルクを、通常運転時における戸閉トルクよりも大きくすることを指示する制御を中止する。また、移動制御部117は、決定した方向へ乗りかご20を移動させることを指示する制御を中止する。利用者が再度操作部26を押下した場合、ドア制御部113および移動制御部117は、ドア24を閉じる制御および乗りかご20を移動させる制御を再開する。
【0080】
乗りかご20が指示された方向へ移動し、最寄階に到着すると(S12でYES)、移動制御部117は、乗りかご20を停止させる指示を行い、ドア制御部113は乗りかご20のドア24および乗場ドア28を開くことを指示する。これにより、利用者は乗りかご20から降車して最寄階の乗場に到着することができる。
【0081】
なお、上記では、S3において、ドア24が閉じていない場合には、乗りかご20を停止させた状態で処理が終了されていたが、これに限定されるものではない。例えば乗りかご20にカメラが設置されており、監視センターから乗りかご20内の様子が確認可能となっている場合、次のような処理が行われてもよい。まず、監視センターの監視員が、乗りかご20内に設置されたカメラから取得した映像を確認しながら、監視センターの制御装置から、手動運転を許可する信号を制御部11に送信する。制御部11は、この信号を受信した場合に、上記のS4以降の処理を行う。また、監視員によって乗りかご20内の利用者に操作指示が行われるようになっていてもよい。
【0082】
これにより、監視センターの監視員によって、S9の処理やS11が実行されても問題ないことが確認された状態で、上記の異常発生時移動制御を実行することが可能となる。
【0083】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0084】
<エレベータ制御システム100Aの構成>
図6は、実施形態2に係るエレベータ制御システム100Aの構成の一例を示す機能ブロック図である。エレベータ制御システム100Aでは、エレベータ2Aの運行に関する異常が発生した場合、異常検知時の直前の移動開始時に乗りかご20が停止していた移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良の検知結果に基づいて該乗りかご20が移動する。
【0085】
エレベータ2Aは、エレベータ2の構成に加え、各乗場に検知部30を備えている。検知部30は、乗りかご20に設けられる検知部27と同様のドアスイッチであってよい。検知部30は、乗りかご20の検知部27と同様に、戸閉状態でオン、戸開状態でオフとなる。
【0086】
エレベータ制御装置1Aは、制御部11Aを備える点においてエレベータ制御装置1と異なる。制御部11Aは、移動制御部117に代えて移動制御部117Aを備える。
【0087】
移動制御部117Aは、異常検知時の直前の移動開始時に乗りかご20が停止していた移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良の検知結果に基づいて、異常検知時における乗りかご20の停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。
【0088】
エレベータ2Aにおいて異常が発生した場合、移動制御部117Aは、移動開始時乗場に設けられる検知部30の検知結果を取得する。具体的には、乗りかご20が直前に出発した階床に設けられる検知部30であるドアスイッチがオンであるかオフであるかを特定する。移動開始時乗場に設けられる検知部30がオフである場合、移動制御部117Aは、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されているとして、乗りかご20の移動方向を異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に決定する。移動開始時乗場に設けられる検知部30がオンである場合、移動制御部117Aは、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていないとして、乗りかご20の移動方向を異常検知時までに移動していた方向に決定する。
【0089】
移動制御部117Aは、決定した方向に基づき、乗りかご20を移動させる制御を行う。具体的には、移動制御部117Aは、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されている場合に、異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に乗りかご20を移動させ、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていない場合に、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させる制御を行う。
【0090】
図7および
図8は、エレベータ2において運行に関する異常が発生したときの状態の一例を示す概略図である。
図7は、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されている場合における乗りかご20の状態を示し、
図8は、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていない場合における乗りかご20の状態を示す。なお、
図7および
図8のいずれも、乗りかご20が1階を出発階として上方向に移動する状況であり、移動開始時乗場が1階である例を示している。
【0091】
移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28(28A)において戸閉不良が検知されている場合、
図7に示すように、移動開始時乗場と乗りかご20との間で紐などの障害物X1が引っ掛かっている状態となっている可能性が考えられる。この場合、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させると、引っかかっている障害物X1が乗場ドア28と乗りかご20のドア24とによって引っ張られ、障害物X1、ドア24、または乗場ドア28が破損するなど、異常な状況が悪化する可能性がある。また、障害物X1が例えばペットのリードなどであり、乗場にペットが取り残されている状態である場合、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させると、乗りかご20によってリードが引っ張られてペットに危険が及ぶ可能性がある。
【0092】
ここで、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28(28A)において戸閉不良が検知されている場合、乗場ドア28Aに対応する検知部30(30A)は、スイッチがオフになったことを示す信号をエレベータ制御装置1Aに送信する。これにより、移動制御部117は、異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に乗りかご20を移動させる制御を行う。これにより、エレベータ制御システム100Aでは、異常な状況を悪化させることなく救出運転を実行することができる。
【0093】
また、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28(28A)において戸閉不良が検知されていない場合、
図8に示すように、乗りかご20が特定の塔内設備X2近傍を通過したときに当該乗りかご20が当該塔内設備X2に接触した可能性が考えられる。
【0094】
移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28(28A)において戸閉不良が検知されていない場合、乗場ドア28Aに対応する検知部30(30A)は、スイッチがオンになっていることを示す信号をエレベータ制御装置1Aに送信する。これにより、移動制御部117は、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させる制御を行う。これにより、エレベータ制御システム100Aでは、乗りかご20が塔内設備X2に再度接触するなどの異常な状況の悪化を引き起こす可能性を低減しつつ救出運転を実行することができる。
【0095】
<エレベータ制御システム100Aにおいて行われる処理の流れの一例>
図9は、エレベータ制御システム100Aが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図9を用いて、エレベータ制御システム100Aが行う処理の流れの一例について説明する。
【0096】
ステップS21~S23については、実施形態1において
図5を用いて説明したエレベータ制御システム100の制御におけるステップS1~S3と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
エレベータ2Aの運行に関する異常が検知されると、移動制御部117Aは、検知部30から、当該検知部30であるドアスイッチがオンであるかオフであるかを示す信号、すなわち移動開始時乗場に設けられる乗場ドア28の状態を示す信号を受信する。
【0098】
移動制御部117Aは、当該信号に基づき、乗りかご20の移動方向を決定する(S24~S25)。移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていない場合(S24でNO)、移動制御部117Aは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向に決定する(S25)。一方、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されている場合(S24でYES)、移動制御部117Aは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向と逆の方向に決定する(S26)。
【0099】
乗りかご20の移動方向を決定した後の制御(S27以降のステップ)については、実施形態1において
図5を用いて説明したエレベータ制御システム100の制御におけるステップS8以降の制御と同様であるため、説明を省略する。
【0100】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。
【0101】
<エレベータ制御システム100Bの構成>
図10は、実施形態3に係るエレベータ制御システム100Bの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図10に示すように、エレベータ制御システム100Bは、エレベータ制御装置1Bおよびエレベータ2Aを備える。エレベータ制御システム100Bでは、エレベータ2Aの運行に関する異常が発生した場合、乗りかご20の走行距離および異常検知時の直前の移動開始時に乗りかご20が停止していた移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良の検知結果に基づいて該乗りかご20が移動する。エレベータ制御装置1Bは、走行距離特定部115および移動制御部117Bを有する制御部11Bを備える。
【0102】
移動制御部117Bは、(1)異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離、および、(2)異常検知時の直前の移動開始時に乗りかご20が停止していた移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良の検知結果の両方に基づいて、異常検知時における乗りかご20の停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。
【0103】
具体的には、異常検知部112においてエレベータ2Aに異常が生じたことが検知された場合、移動制御部117Bは、走行距離を示す情報を取得する。走行距離が所定値以上である場合、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向に決定する。走行距離が所定値未満である場合、移動制御部117Bは、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28に対応する検知部30の検知結果(ドアスイッチがオンであるかオフであるか)を示す信号を受信する。
【0104】
移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されている場合、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に決定する。移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていない場合、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を異常検知時までに移動していた方向に決定する。
【0105】
なお、走行距離に基づく乗りかご20の移動方向の決定と乗場ドア28の戸閉不良の検知結果に基づく乗りかご20の移動方向の決定とが行われる順番はこれに限られず、逆の順番に行われてもよい。具体的には、異常検知部112においてエレベータ2Aに異常が生じたことが検知された場合、移動制御部117Bは、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28に対応する検知部30の検知結果を示す信号を受信する。移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されている場合、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に決定する。移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていない場合、移動制御部117Bは、走行距離を示す情報を取得する。
【0106】
走行距離が所定値未満である場合、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向と逆の方向に決定する。走行距離が所定値以上である場合、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向に決定する。
【0107】
移動制御部117Bは、上述のようにして決定した方向に乗りかご20を移動させる制御を行う。換言すると、移動制御部117Bは、(1)走行距離が所定値未満の場合に、異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に乗りかご20を移動させ、走行距離が所定値以上の場合に、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させる制御、および、(2)移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されている場合に、異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に乗りかご20を移動させ、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていない場合に、異常検知時までに移動していた方向に乗りかご20を移動させる制御、の少なくともいずれか一方を行う。
【0108】
これにより、エレベータ制御装置1Aは、乗りかご20の走行距離および検知部30の検知結果に基づき適切な方向に乗りかご20を移動させることができる。
【0109】
<エレベータ制御システム100Bにおいて行われる処理の流れの一例>
図11は、エレベータ制御システム100Bが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図11を用いて、エレベータ制御システム100Bが行う処理の流れの一例について説明する。
【0110】
ステップS41~S43については、実施形態1において
図5を用いて説明したエレベータ制御システム100の制御におけるステップS1~S3と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
走行距離特定部115は、エレベータ2の運行に異常が発生したことを検知したことを示す情報を取得すると、異常検知時の直前の移動開始から異常検知時の停止までの乗りかご20の走行距離を特定する(S44)。
【0112】
移動制御部117Bは、乗りかご20の走行距離および移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良の検知結果に基づき乗りかご20の移動方向を決定する(S45~S48)。まず、移動制御部117Bは、走行距離特定部115から、乗りかご20の走行距離を示す情報を取得し、当該走行距離に基づき乗りかご20の移動方向を決定する。乗りかご20の走行距離が所定値以上である場合(S45でNO)、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向に決定する(S46)。
【0113】
一方、乗りかご20の走行距離が所定値未満である場合(S45でYES)、移動制御部117Bは、検知部30から、当該検知部30であるドアスイッチがオンであるかオフであるかを示す信号、すなわち移動開始時乗場に設けられる乗場ドア28の状態を示す信号を受信する。
【0114】
移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されていない場合(47SでNO)、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向に決定する(S46)。一方、移動開始時乗場に設けられている乗場ドア28の戸閉不良が検知されている場合(S47でYES)、移動制御部117Bは、乗りかご20の移動方向を乗りかご20が移動していた方向と逆の方向に決定する(S48)。
【0115】
乗りかご20の移動方向を決定した後の制御(S49以降のステップ)については、実施形態1において
図5を用いて説明したエレベータ制御システム100の制御におけるステップS8以降の制御と同様であるため、説明を省略する。
【0116】
〔ソフトウェアによる実現例〕
エレベータ制御システム100、100A~100B(以下、「システム」と呼ぶ)の機能は、当該システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該システムの各制御ブロック(特に制御部11、11A~11B、22、41に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0117】
この場合、上記システムは、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0118】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記システムが備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0119】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0120】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0121】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の態様1にかかるエレベータ制御システムは、エレベータの運行に関する異常を検知する異常検知部と、乗りかごの移動を制御する移動制御部と、を備え、前記移動制御部は、前記異常検知部による異常検知時に、前記乗りかごの移動を停止する制御を行うとともに、(1)前記異常検知時の直前の移動開始から前記異常検知時の停止までの前記乗りかごの走行距離、および、(2)前記異常検知時の直前の移動開始時に前記乗りかごが停止していた移動開始時乗場に設けられているドアの戸閉不良の検知結果、の少なくともいずれか一方に基づいて、前記異常検知時における前記乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。
【0122】
本発明の態様2にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1において、前記移動制御部は、(1)前記走行距離が所定値未満の場合に、前記異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に前記乗りかごを移動させ、前記走行距離が所定値以上の場合に、前記異常検知時までに移動していた方向に前記乗りかごを移動させる制御、および、(2)前記移動開始時乗場に設けられている前記ドアの戸閉不良が検知されている場合に、前記異常検知時までに移動していた方向と逆の方向に前記乗りかごを移動させ、前記移動開始時乗場に設けられている前記ドアの戸閉不良が検知されていない場合に、前記異常検知時までに移動していた方向に前記乗りかごを移動させる制御、の少なくともいずれか一方を行ってよい。
【0123】
本発明の態様3にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1または2において、前記乗りかご内に設けられている操作部に対する利用者による操作入力を示す操作信号を受信する操作検知部を備え、前記移動制御部は、前記操作入力が行われていることを示す前記操作信号を前記操作検知部が受信している期間において、前記救出運転制御を行ってもよい。
【0124】
本発明の態様4にかかるエレベータ制御システムは、上記態様3において、前記操作信号は、ドアの閉動作または開動作を指示するボタン、および、行先階を指示するボタンの少なくともいずれか1つが前記利用者によって操作されていることによって発生する信号であってよい。
【0125】
本発明の態様5にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記乗りかごの前記ドアの開閉動作を制御するドア制御部を備え、前記ドア制御部は、前記救出運転時における前記ドアを閉じる方向の戸閉トルクを、通常運転時における前記戸閉トルクよりも大きくしてもよい。
【0126】
本発明の態様6にかかるエレベータ制御システムは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記移動制御部による前記救出運転制御が行われている期間において、前記乗りかご内の利用者に対して、前記救出運転制御を行う際の前記移動方向、および、最寄階までの距離または時間、の少なくともいずれか一方を提示する制御を行う情報提示制御部をさらに備えてもよい。
【0127】
本発明の態様7にかかるエレベータ制御方法は、エレベータの運行に関する異常を検知する異常検知ステップと、乗りかごの移動を制御する移動制御ステップと、を含み、前記移動制御ステップは、前記異常検知ステップにおける異常検知時に、前記乗りかごの移動を停止する制御を行うとともに、(1)前記異常検知時の直前の移動開始から前記異常検知時の停止までの前記乗りかごの走行距離、および、(2)前記異常検知時の直前の移動開始時に前記乗りかごが停止していた移動開始時乗場に設けられているドアの戸閉不良の検知結果、の少なくともいずれか一方に基づいて、前記異常検知時における前記乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。
【0128】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1、1A、1B エレベータ制御装置
2、2A エレベータ
20 乗りかご
28 乗場ドア
113 ドア制御部
114 情報提示制御部
116 操作検知部
117、117A、117B 移動制御部
【要約】
【課題】本発明の一態様によれば、異常検知時における乗りかごの停止後に所定の乗場階へ移動させる救出運転制御を行う際の移動方向を適切に決定する。
【解決手段】エレベータ制御システム(100)は、エレベータの運行に関する異常を検知する異常検知部(112)と、乗りかご(20)の移動を制御する移動制御部(117)と、を備え、移動制御部は、異常検知部による異常検知時に、乗りかごの移動を停止する制御を行うとともに、(1)乗りかごの走行距離、および、(2)ドア(24)の戸閉不良の検知結果、の少なくともいずれか一方に基づいて、救出運転制御を行う際の移動方向を決定する。
【選択図】
図1