(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B66B11/08 G
(21)【出願番号】P 2023027159
(22)【出願日】2023-02-24
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 誠二
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150831(JP,A)
【文献】国際公開第2022/003936(WO,A1)
【文献】特開2014-051360(JP,A)
【文献】特開平03-079819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキドラムの制動面に対向して配置されるブレーキ部と、
前記ブレーキ部を支持する支持面を有する可動鉄心と、
前記可動鉄心の前記支持面とは反対側の面に対向する磁極面を有する固定鉄心と、
前記可動鉄心と前記固定鉄心との間に配置され、前記可動鉄心を付勢し、前記ブレーキ部を前記制動面に押し当てる付勢部と、
前記固定鉄心に設けられ、前記可動鉄心を吸引し、前記ブレーキ部を前記制動面から離れさせる電磁コイルと
を備え、
前記固定鉄心
の前記磁極面の反対側の面は、前記電磁コイルの通電時に前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に働く前記可動鉄心を吸引する吸引力が、前記固定鉄心の一部より前記固定鉄心の他の一部が小さくなるように形成され、
前記固定鉄心
の前記磁極面の反対側の面は、前記可動鉄心が前記制動面に近づくとき又は前記固定鉄心に近づくとき、前記可動鉄心が前記固定鉄心に対して傾斜するように形成される、
ブレーキ装置。
【請求項2】
ブレーキドラムの制動面に対向して配置されるブレーキ部と、
前記ブレーキ部を支持する支持面を有する可動鉄心と、
前記可動鉄心の前記支持面とは反対側の面に対向する磁極面を有する固定鉄心と、
前記可動鉄心と前記固定鉄心との間に配置され、前記可動鉄心を付勢し、前記ブレーキ部を前記制動面に押し当てる付勢部と、
前記固定鉄心に設けられ、前記可動鉄心を吸引し、前記ブレーキ部を前記制動面から離れさせる電磁コイルと
を備え、
前記固定鉄心は、前記電磁コイルの通電時に前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に働く前記可動鉄心を吸引する吸引力が、前記固定鉄心の一部より前記固定鉄心の他の一部が小さくなるように形成され、
前記固定鉄心は、前記可動鉄心が前記制動面に近づくとき又は前記固定鉄心に近づくとき、前記可動鉄心が前記固定鉄心に対して傾斜するように形成され
、
前記可動鉄心の前記支持面は、前記電磁コイルの通電時に前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に働く前記可動鉄心を吸引する吸引力が、前記可動鉄心の一部より前記可動鉄心の他の一部が小さくなるように形成される、
ブレーキ装置。
【請求項3】
前記固定鉄心は、前記吸引力が前記一部側から前記他の一部側へ向かうにつれて小さくなるように形成される請求項1
又は請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記固定鉄心の前記他の一部側に配置され、前記ブレーキ部が前記ブレーキドラムの前記制動面から離れたことを検出する検出部と
をさらに備える請求項1
又は請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記固定鉄心は、前記磁極面に対して直交する方向における厚みが、前記一部側より前記他の一部側が薄い請求項1
又は請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記固定鉄心の前記磁極面の反対側の面は、前記他の一部側に、前記一部側から前記他の一部側に向かって前記磁極面に近づくように傾斜する傾斜面を有する請求項
5に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記固定鉄心の前記磁極面の反対側の面は、前記他の一部側に、前記固定鉄心から前記可動鉄心へ向かう方向に凹んだ段差部を有する請求項
5に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
前記可動鉄心の前記支持面は、前記他の一部側に、前記一部側から前記他の一部側に向かって前記支持面とは反対側の面に近づくように傾斜する傾斜面を有する請求項1
又は請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
前記可動鉄心の前記支持面は、前記他の一部側に、前記可動鉄心から前記固定鉄心へ向かう方向に凹んだ段差部を有する請求項1
又は請求項2に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ装置は、可動鉄心の固定鉄心と対向する主面部に凹部を形成することで、可動鉄心の主面部の一側と他側において、主面部と固定鉄心との間に働く吸引力が異なるように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のブレーキ装置では、可動鉄心の固定鉄心と対向する主面部に凹部が形成される。そのため、可動鉄心の主面部の表面が均一ではない。この可動鉄心が固定鉄心に吸引され、固定鉄心に接触したとき、可動鉄心の主面部の一部に力が加わりやすくなり、可動鉄心が破損しやすいという課題があった。
【0005】
本開示は上記の課題を解決するためになされたものであり、可動鉄心が破損することを抑制するブレーキ装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかるブレーキ装置は、ブレーキドラムの制動面に対向して配置されるブレーキ部と、ブレーキ部を支持する支持面を有する可動鉄心と、可動鉄心の支持面とは反対側の面に対向する磁極面を有する固定鉄心と、可動鉄心と固定鉄心との間に配置され、可動鉄心を付勢し、ブレーキ部を制動面に押し当てる付勢部と、固定鉄心に設けられ、可動鉄心を吸引し、ブレーキ部を制動面から離れさせる電磁コイルとを備え、固定鉄心の磁極面の反対側の面は、電磁コイルの通電時に固定鉄心と可動鉄心との間に働く可動鉄心を吸引する吸引力が、固定鉄心の一部より固定鉄心の他の一部が小さくなるように形成され、固定鉄心の磁極面の反対側の面は、可動鉄心が制動面に近づくとき又は固定鉄心に近づくとき、可動鉄心が固定鉄心に対して傾斜するように形成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかるブレーキ装置は、可動鉄心が破損することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機の正面図である。
【
図2】実施の形態1におけるブレーキ装置の正面図である。
【
図3】実施の形態1におけるブレーキ装置の断面図である。
【
図4】実施の形態1におけるブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図5】実施の形態1におけるブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図6】実施の形態1におけるブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図7】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図8】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図9】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図10】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図11】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図12】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置のA-A’断面図である。
【
図13】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置の正面図である。
【
図14】実施の形態1における変形例を示すブレーキ装置の正面図である。
【
図15】実施の形態2におけるブレーキ装置の正面図である。
【
図16】実施の形態2におけるブレーキ装置のB-B’断面図である。
【
図17】実施の形態2における変形例を示すブレーキ装置のB-B’断面図である。
【
図18】実施の形態3におけるブレーキ装置の正面図である。
【
図19】実施の形態3におけるブレーキ装置のC-C’断面図である。
【
図20】実施の形態3における変形例を示すブレーキ装置のC-C’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下に実施の形態1にかかるブレーキ装置1を詳細に説明する。なお、各図面における同一の符号は同一又は相当の構成を表している。
【0010】
図1に示すように、ブレーキ装置1は例えばエレベータ用巻上機100に備えられる。エレベータ用巻上機100は、フレーム101、綱車102、ブレーキドラム103、2つのブレーキ装置1及びモータ(図示せず)を備える。
【0011】
綱車102は、円板状に形成され、その外周面には、主ロープ(図示せず)が巻き掛けられる。ブレーキドラム103は、直径が綱車102よりも大きくなるように円板状に形成される。ブレーキドラムは、綱車102と一体的に形成されている。モータは、綱車102及びブレーキドラム103を回転駆動させる。
【0012】
綱車102がモータによって回転すると、主ロープが移動し、主ロープの一端に接続されるかご(図示せず)及び主ロープの他端に接続される釣合おもり(図示せず)が昇降路内を昇降する。
【0013】
2つのブレーキ装置1は、フレーム101に固定され、
図1の紙面において下方からブレーキドラム103を挟むように配置される。ブレーキ装置1は、後述する電磁コイルに通電されていない非通電時に作動する無励磁作動型である。ブレーキ装置1は、ブレーキドラム103の外周面に形成された制動面103aに押し当てて、ブレーキドラム103及び綱車102の回転を制動する。
【0014】
図2、3に、制動状態のブレーキ装置1、すなわちブレーキドラム103及び綱車102の回転を制動している状態のブレーキ装置1の正面図及び断面図を示す。
図2に、ブレーキドラム103が回転する方向を矢印で示している。ブレーキ装置1は、固定鉄心10、可動鉄心20、ブレーキ部であるブレーキシュー30、付勢部であるバネ40、電磁コイル50、ガイド部60及び検出部であるブレーキスイッチ70を備える。
【0015】
固定鉄心10は、磁性材料により形成され、可動鉄心20に対向して配置される。固定鉄心10は、後述する可動鉄心20の対向面22と対向する磁極面11を有する。固定鉄心10の磁極面11には、バネ40を収納する2つのバネ収納穴12、電磁コイル50を収納するコイル収納溝13、ガイド部60を収納する2つの第1ガイド部収納穴14が形成される。
【0016】
バネ収納穴12は、可動鉄心20から固定鉄心10へ向かう方向に延伸するように形成される。具体的には、可動鉄心20から固定鉄心10へ向かう方向のうち、磁極面11に対して直交する方向に延伸するように形成される。以下の説明において、磁極面11に対して直交する方向を上下方向と呼ぶ。また、上下方向において、可動鉄心20から固定鉄心10へ向かう方向を上方向と呼ぶ。2つのバネ収納穴12には、2つのバネ40の一部がそれぞれ収納される。
【0017】
コイル収納溝13は、磁極面11に沿って環状に形成される。コイル収納溝13には、電磁コイル50が収納されている。
【0018】
第1ガイド部収納穴14は、上方向に延伸するように形成される。2つの第1ガイド部収納穴14には、2つのガイド部60の一端部がそれぞれ収納される。
【0019】
可動鉄心20は、磁性材料により直方体に形成され、ブレーキシュー30を支持する支持面21を有する。また、可動鉄心20は、固定鉄心10の磁極面11と対向する対向面22を有する。対向面22には、ガイド部を収納する2つの第2ガイド部収納穴23が形成される。また、可動鉄心20は、ブレーキスイッチ70を押圧する突起24を有する。突起24は、ブレーキスイッチ70と対向するように対向面22に配置される。
【0020】
第2ガイド部収納穴23は、固定鉄心10から可動鉄心20へ向かう方向に延伸するように形成される。具体的には、固定鉄心10から可動鉄心20へ向かう方向のうち、磁極面11に対して直交する方向に延伸するように形成される。以下の説明において、固定鉄心10から可動鉄心20へ向かう方向のうち、磁極面11に対して直交する方向を下方向と呼ぶ。2つの第2ガイド部収納穴23には、2つのガイド部60の他端部がそれぞれ収納される。
【0021】
ブレーキシュー30は、ブレーキドラム103の制動面103aに対向して配置される。ブレーキシュー30は、可動鉄心20を挟んで固定鉄心10とは反対側に配置され、可動鉄心20の支持面21に支持される。ブレーキシュー30は、付勢部40が可動鉄心20を付勢することにより、制動面103aに押し当てられる。
【0022】
バネ40は、2つ設けられ、可動鉄心20と固定鉄心10との間に配置される。具体的には、バネ40の一部がバネ収納穴12に収納され、バネ40の一端部がバネ収納穴12の底面12aに支持される。バネ40は、例えば圧縮コイルばねであり、可動鉄心20を付勢し、ブレーキシュー30を制動面103aに押し当てる。なお、付勢部として、例えば、ゴム、板バネ又は発泡ウレタン等の弾性部材を用いてもよい。また、バネ40は、1つ又は3つ以上設けてもよい。
【0023】
電磁コイル50は、固定鉄心10に設けられる。具体的には、固定鉄心10のコイル収納溝13に収納される。電磁コイル50は、通電時に、可動鉄心20を吸引し、ブレーキシュー30を制動面103aから離れさせる。電磁コイル50に通電されると、可動鉄心20は、バネ40が可動鉄心20を付勢する力に抗して固定鉄心10に吸引される。
【0024】
ガイド部60は、可動鉄心20の上方向又は下方向への移動を案内する部材である。ガイド部60は、円柱状に形成される。また、ガイド部60は、2つ設けられ、固定鉄心10と可動鉄心20との間に配置される。ガイド部60の一端部は第1ガイド部収納穴14に収納され、ガイド部60の他端部は第2ガイド部収納穴23に収納される。ガイド部60の他端部は第2ガイド部収納穴23の底面23aに支持される。
【0025】
図4に示すように、ブレーキスイッチ70は、後述する他方側に配置され、固定鉄心10に設けられる。可動鉄心20が吸引されて上方向に移動し、固定鉄心10と接触したとき、突起24がブレーキスイッチ70を押圧する。これにより、ブレーキスイッチ70は、ブレーキシュー30が制動面103aから離れたことを検出する。ブレーキスイッチ70は、ブレーキシュー30が制動面103aから離れたことを検出すると、例えばエレベータ装置全体の制御をするエレベータ制御装置に検出信号を出力する。
【0026】
固定鉄心10は、電磁コイル50の通電時に固定鉄心10と可動鉄心20との間に働く可動鉄心20を吸引する吸引力が、固定鉄心10の一部より固定鉄心10の他の一部が小さくなるように形成される。具体的には、固定鉄心10は、磁極面11に対して平行な方向のうち、ブレーキドラム103の回転方向に対して直交する方向において、固定鉄心10の中央から一方側の部分と固定鉄心10の中央から他方側の部分とで、電磁コイル50の通電時に固定鉄心10と可動鉄心20との間に働く可動鉄心20を吸引する吸引力が異なるように形成される。また、固定鉄心10は、可動鉄心20及びブレーキシュー30が固定鉄心10に近づくとき、並びに可動鉄心20及びブレーキシュー30がブレーキドラム103の制動面103aに近づくとき、可動鉄心20が固定鉄心10に対して傾斜するように形成される。
【0027】
以下の説明において、磁極面11に対して平行な方向のうち、ブレーキドラム103の回転方向に対して直交する方向を奥行方向と呼ぶ。また、奥行方向において、固定鉄心10の中央から一方側の部分が配置されている側を一方側と呼び、固定鉄心10の中央から他方側の部分が配置されている側を他方側と呼ぶ。
図4の紙面において、左側が一方側であって、右側が他方側である。また、奥行方向において、固定鉄心10の中央から一方側の部分が本開示の固定鉄心10の一部に相当し、固定鉄心10の中央から他方側の部分が本開示の固定鉄心10の他の一部に相当する。
【0028】
固定鉄心10は、上下方向における厚みが一方側より他方側が薄く形成されている。具体的には、固定鉄心10の磁極面11の反対側の面15は、他方側に、一方側から他方側に向かって磁極面11に近づくように傾斜する傾斜面15aを有する。
図2に示すように、傾斜面15aは、磁極面11に対して平行な方向のうちブレーキドラム103の回転方向に対して平行な方向において、固定鉄心10の一端から他端にかけて連続して形成されている。このように固定鉄心10を形成することで、電磁コイル50の通電時に可動鉄心20を吸引する吸引力が、固定鉄心10の磁極面11の一方側の部分より他方側の部分が小さくなる。以下の説明において、磁極面11に対して平行な方向のうち、ブレーキドラム103の回転方向に対して平行な方向を左右方向と呼ぶ。
【0029】
次に、ブレーキ装置1の動作について、
図4、5、6を用いて説明する。
【0030】
まず、ブレーキ装置1が制動状態から非制動状態に遷移するときの動作について説明する。非制動状態のブレーキ装置1とは、ブレーキドラム103及び綱車102の回転を制動していない状態のブレーキ装置1である。
【0031】
図4に示すように、制動状態のブレーキ装置1では、電磁コイル50に通電されていないため、可動鉄心20がバネ40により付勢されており、ブレーキシュー30が制動面103aに押し当てられている。
【0032】
図5に示すように、電磁コイル50に通電されると、固定鉄心10が磁化される。このとき、可動鉄心20を吸引する吸引力が固定鉄心10に生じている。これにより、可動鉄心20は、バネ40から付勢される力に抗して固定鉄心10に吸引される。
【0033】
固定鉄心10の面15は、他方側に、一方側から他方側に向かって磁極面11に近づくように傾斜する傾斜面15aを有する。そのため、固定鉄心10は、上下方向における厚みが一方側より他方側が薄く形成されることとなり、電磁コイル50の通電時に固定鉄心10が可動鉄心20を吸引する吸引力が、固定鉄心10の一方側の部分より他方側の部分が小さくなる。したがって、可動鉄心20が上方向に移動するとき、可動鉄心20と固定鉄心10の一方側の部分との距離が近づいた後に、可動鉄心20と固定鉄心10の他方側の部分が近づく。言い換えると、可動鉄心20及びブレーキシュー30が固定鉄心10に近づくとき、固定鉄心10に対して傾斜して上方向に移動する。
【0034】
そして、
図6に示すように、固定鉄心10の一方側の磁極面11と可動鉄心20の対向面22とが接触し、その後固定鉄心10の他方側の磁極面11と可動鉄心20の対向面22とが接触する。このとき、ブレーキシュー30は、ブレーキドラム103の制動面103aに接触していないため、ブレーキドラム103及び綱車102の回転が制動されていない。つまり、ブレーキ装置1は非制動状態となる。
【0035】
また、このように固定鉄心10と可動鉄心20とが接触したとき、突起24がブレーキスイッチ70を押圧する。そして、ブレーキスイッチ70は、ブレーキシュー30が制動面103aから離れたことを検出する。
【0036】
次に、ブレーキ装置1が非制動状態から制動状態に遷移するときの動作について説明する。
【0037】
電磁コイル50への通電が停止すると、電磁コイル50に流れる電流が減少し、固定鉄心10の磁力が消失する。つまり、固定鉄心10に可動鉄心20を吸引する吸引力が生じなくなる。そのため、可動鉄心20がバネ40に付勢されて固定鉄心10から離れ、下方向に移動する。
【0038】
電磁コイル50に流れる電流が減少しているとき、固定鉄心10に生じる可動鉄心20を吸引する吸引力が固定鉄心10の一方側の部分より他方側の部分が小さい。したがって、
図5に示すように、可動鉄心20が下方向に移動するとき、可動鉄心20と固定鉄心10の他方側の部分とが離れた後に、可動鉄心20と固定鉄心10の一方側の部分が離れる。言い換えると、可動鉄心20及びブレーキシュー30が制動面103aに近づくとき、固定鉄心10に対して傾斜して下方向に移動する。また、このとき、ブレーキシュー30が他方側から一方側に向かって段階的にブレーキドラム103の制動面103aに接触する。
【0039】
そして、
図4に示すように、可動鉄心20がバネ40により付勢され、ブレーキシュー30が制動面103aに押し当てられる。
【0040】
このような実施の形態1にかかるブレーキ装置1にあっては、固定鉄心10が、電磁コイル50の通電時に固定鉄心10と可動鉄心20との間に働く可動鉄心20を吸引する吸引力が、固定鉄心10の一方側の部分より固定鉄心10の他方側の部分が小さくなるように形成される。また、固定鉄心10は、可動鉄心20が制動面103aに近づくとき及び固定鉄心10に近づくとき、可動鉄心20が固定鉄心10に対して傾斜するように形成される。具体的には、固定鉄心10は、上下方向における厚みが一方側より他方側が薄く形成されている。
【0041】
このような構成により、可動鉄心20が上方向に移動するとき、可動鉄心20を一方側から他方側に向かって段階的に固定鉄心10に接触させることができるため、可動鉄心20と固定鉄心10とが接触する時の動作音を低減させることができる。また、このような構成により、ブレーキシュー30を他方側から一方側に向かって段階的に制動面103aに接触させることができるため、ブレーキシュー30と制動面103aとが接触する時の動作音を低減させることができる。さらに、可動鉄心20の対向面22に凹部又は傾斜面等を形成する必要がない。そのため、可動鉄心20が固定鉄心10に接触したとき、可動鉄心の対向面22に均一に力が加わりやすくなり、可動鉄心20の破損が抑制される。
【0042】
さらに、実施の形態1にかかるブレーキ装置1にあっては、固定鉄心10の面15は、他方側に、一方側から他方側に向かって磁極面11に近づくように傾斜する傾斜面15aを有する。そのため、固定鉄心10の磁極面11に凹部又は傾斜面等を形成する必要がない。したがって、固定鉄心10と可動鉄心20とが接触したとき、固定鉄心10の磁極面11に均一に力が加わりやすくなり、固定鉄心10の破損が抑制される。
【0043】
さらに、実施の形態1にかかるブレーキ装置1にあっては、固定鉄心10が、固定鉄心10と可動鉄心20との間に働く可動鉄心20を吸引する吸引力が一方側から他方側へ向かうにつれて小さくなるように形成される。具体的には、固定鉄心10の面15は、他方側に、一方側から他方側に向かって磁極面11に近づくように傾斜する傾斜面15aを有する。そのため、可動鉄心20の上方向への移動が滑らかとなり、可動鉄心20と固定鉄心10とが接触する時の動作音をより低減させることができる。また同様に、可動鉄心20の下方向への移動が滑らかとなり、ブレーキシュー30と制動面103aとが接触する時の動作音をより低減させることができる。
【0044】
さらに、実施の形態1にかかるブレーキ装置1にあっては、ブレーキスイッチ70が固定鉄心10の他方側に配置される。ブレーキスイッチ70及び突起24を固定鉄心10の一方側に配置した場合、
図5に示すようにブレーキシュー30の一部がブレーキドラム103の制動面103aに接触していたとしても、ブレーキスイッチが突起に押圧されるため、ブレーキスイッチ70がブレーキシュー30が制動面103aから離れたことを誤検出する恐れがある。一方で、ブレーキスイッチ70を固定鉄心10の他方側に配置した場合、ブレーキシュー30の一部がブレーキドラム103の制動面103aに接触しているときにブレーキスイッチ70が突起24に押圧されにくい。つまり、ブレーキシュー30がブレーキドラム103から完全に離れた状態となったときに、ブレーキスイッチ70が突起24に押圧される。そして、ブレーキスイッチ70は、当該状態を検出することができ、ブレーキスイッチ70による誤検出を抑制することができる。
【0045】
なお、ブレーキ装置1が2つ設けられる例について説明したが、1つ又は3つ以上であってもよい。また、2つのブレーキ装置1は、
図1の紙面において上下方向又は左右方向に互いが対向する位置に配置してもよく、
図1の紙面において上方又は下方に所定の角度を開けて配置してもよい。
【0046】
なお、検出部がブレーキスイッチ70である例について説明したが、可動鉄心20が検出部に接近したことを非接触で検出する近接センサ、又は可動鉄心20との距離を測定する距離センサ等であってもよい。また、ブレーキスイッチ70が他方側に配置される例について説明したが、ブレーキスイッチ70は一方側に配置されてもよい。
【0047】
図7に示すように、傾斜面15aを固定鉄心10の面15の奥行方向における一端から他端にかけて形成してもよい。
【0048】
図8に示すように、固定鉄心10の面15は、その他方側に下方向に凹んだ段差部15bを有してもよいし、
図9に示すように、その他方側に下方向に凹んだ段差部である凹部15cを有してもよい。また、
図10に示すように、固定鉄心10の面15は、下方向に凹む大きさが異なる複数の段差部を有してもよい。固定鉄心10の面15は、第1段差部15d、第2段差部15e及び第3段差部15fを有する。固定鉄心10の一方側から他方側に向かって第1段差部15d、第2段差部15e、第3段差部15fの順に並んでいる。第2段差部15eは、第1段差部15dより下方向に大きく凹んでおり、第3段差部15fは、第2段差部15eより下方向に大きく凹んでいる。なお、固定鉄心10の面15は、下方向に凹む大きさが異なる2つ又は4つ以上の段差部を有してもよい。
【0049】
図11に示すように、固定鉄心10の磁極面11が、その他方側に一方側から他方側に向かって面15に近づくように傾斜する傾斜面11aを有してもよい。また、
図12に示すように、固定鉄心10の磁極面11が、その他方側に上方向に凹んだ段差部11bを有してもよい。上述のように、固定鉄心10の磁極面11が、上方向に凹む凹部、又は上方向に凹む大きさが異なる複数の段差部を有してもよい。
【0050】
傾斜面15aが、固定鉄心10の左右方向における一端から他端にかけて連続して形成されている例について説明したが、
図13に示すように、固定鉄心10の左右方向における一端から他端にかけて断続的に傾斜面15aを形成してもよい。
【0051】
図14に示すように、固定鉄心10は、左右方向において、固定鉄心10の中央から一方側の部分と固定鉄心10の中央から他方側の部分とで、電磁コイル50の通電時に固定鉄心10と可動鉄心20との間に働く可動鉄心20を吸引する吸引力が異なるように形成されてもよい。固定鉄心10の面15は、左右方向における他方側に、一方側から他方側に向かって磁極面11に近づくように傾斜する傾斜面15aを有する。このような実施の形態では、左右方向において、固定鉄心10の中央から一方側の部分が本開示の固定鉄心10の一部に相当し、固定鉄心10の中央から他方側の部分が本開示の固定鉄心10の他の一部に相当する。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態2にかかるブレーキ装置1は、非磁性体80を備える点で実施の形態1と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0053】
図15、16に示すように、ブレーキ装置1は非磁性体80を備える。非磁性体80は、固定鉄心10の他方側に配置される。非磁性体80は、固定鉄心10の傾斜面15aに接するように設けられる。非磁性体80は、接着剤又はねじ等により固定される。非磁性体80を固定鉄心10の傾斜面15aに固定したとき、固定鉄心10と非磁性体80とが一体となって直方体形状となるように、非磁性体80が形成される。具体的には、非磁性体80は三角柱に形成される。
【0054】
非磁性体80は、銅、金、銀、鉛、炭素等の非磁性材料により形成される。なお、非磁性材料とは、強磁性体以外の材料であって、磁界の影響を受けにくい常磁性体、及び反磁性体等を含む。
【0055】
非磁性体80を固定鉄心10の傾斜面15aに固定すると、電磁コイル50の通電時に固定鉄心10が可動鉄心20を吸引する吸引力が、固定鉄心10の一方側の部分より他方側の部分が小さくなる。
【0056】
このような実施の形態2にかかるブレーキ装置1にあっても、実施の形態1と同様に、可動鉄心20が上方向に移動するとき、可動鉄心20を一方側から他方側に向かって段階的に固定鉄心10に接触させることができるため、可動鉄心20と固定鉄心10がとが接触する時の動作音を低減させることができる。また、このような構成により、ブレーキシュー30を他方側から一方側に向かって段階的に制動面103aに接触させることができるため、ブレーキシュー30と制動面103aとが接触する時の動作音を低減させることができる。さらに、可動鉄心20の対向面22に凹部又は傾斜面等を形成する必要がない。そのため、可動鉄心20が固定鉄心10に接触したとき、可動鉄心の対向面22に均一に力が加わりやすくなり、可動鉄心20の破損が抑制される。
【0057】
なお、
図17に示すように、固定鉄心10の面15が段差部15bを有する場合は、非磁性体80を段差部15bに接するように設けてもよい。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態3にかかるブレーキ装置1は、可動鉄心20の支持面21が傾斜面21aを有する点で実施の形態1と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0059】
図18、19に示すように、可動鉄心20は、上下方向における厚みが一方側より他方側が薄く形成されている。具体的には、可動鉄心の支持面21は、他方側に、一方側から他方側に向かって対向面22に近づくように傾斜する傾斜面21aを有する。傾斜面21aは、左右方向において、可動鉄心20の一端から他端にかけて連続して形成されている。
【0060】
このような実施の形態3にかかるブレーキ装置1にあっても、実施の形態1と同様に、可動鉄心20が上方向に移動するとき、可動鉄心20を一方側から他方側に向かって段階的に固定鉄心10に接触させることができるため、可動鉄心20と固定鉄心10がとが接触する時の動作音を低減させることができる。また、このような構成により、ブレーキシュー30を他方側から一方側に向かって段階的に制動面103aに接触させることができるため、ブレーキシュー30と制動面103aとが接触する時の動作音を低減させることができる。さらに、可動鉄心20の対向面22に凹部又は傾斜面等を形成する必要がない。そのため、可動鉄心20が固定鉄心10に接触したとき、可動鉄心の対向面22に均一に力が加わりやすくなり、可動鉄心20の破損が抑制される。
【0061】
さらに、実施の形態3にかかるブレーキ装置1にあっては、可動鉄心20の支持面21が、その他方側に一方側から他方側に向かって対向面22に近づくように傾斜する傾斜面21aを有する。固定鉄心10の傾斜面15aの位置又は傾斜する角度等を変更するだけでは、可動鉄心20が上下方向に移動する際における固定鉄心10に対する傾斜の角度を調節することが困難な場合がある。このような場合に、可動鉄心20の支持面21にも傾斜面21aを形成することにより、当該角度の調節が容易になる。
【0062】
また、可動鉄心20の対向面22に傾斜面を形成すると、可動鉄心20が固定鉄心10に接触したとき対向面22の一部に力が加わりやすくなり、可動鉄心20が破損しやすくなる恐れがある。一方で、固定鉄心10とは接触しない支持面21に傾斜面21aを形成することにより、可動鉄心20が固定鉄心10に接触したときに可動鉄心20の対向面22に均一に力が加わりやすくなるため、可動鉄心20の破損を抑制することができる。
【0063】
なお、
図20に示すように、可動鉄心20の支持面21は、その他方側に上方向に凹んだ段差部21bを有してもよい。また、可動鉄心20の支持面21は、その他方側に上方向に凹んだ段差部である凹部を有してもよい。さらに、可動鉄心20の支持面21は、上方向に凹む大きさが異なる複数の段差部を有してもよい。
【0064】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
ブレーキドラムの制動面に対向して配置されるブレーキ部と、
前記ブレーキ部を支持する支持面を有する可動鉄心と、
前記可動鉄心の前記支持面とは反対側の面に対向する磁極面を有する固定鉄心と、
前記可動鉄心と前記固定鉄心との間に配置され、前記可動鉄心を付勢し、前記ブレーキ部を前記制動面に押し当てる付勢部と、
前記固定鉄心に設けられ、前記可動鉄心を吸引し、前記ブレーキ部を前記制動面から離れさせる電磁コイルと
を備え、
前記固定鉄心は、前記電磁コイルの通電時に前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に働く前記可動鉄心を吸引する吸引力が、前記固定鉄心の一部より前記固定鉄心の他の一部が小さくなるように形成されるブレーキ装置。
(付記2)
前記固定鉄心は、前記可動鉄心が前記制動面に近づくとき又は前記固定鉄心に近づくとき、前記可動鉄心が前記固定鉄心に対して傾斜するように形成される付記1に記載のブレーキ装置。
(付記3)
前記固定鉄心は、前記吸引力が前記一部側から前記他の一部側へ向かうにつれて小さくなるように形成される付記1又は2に記載のブレーキ装置。
(付記4)
前記固定鉄心の前記他の一部側に配置され、前記ブレーキ部が前記ブレーキドラムの前記制動面から離れたことを検出する検出部と
をさらに備える付記1から3のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
(付記5)
前記固定鉄心は、前記磁極面に対して直交する方向における厚みが、前記一部側より前記他の一部側が薄い付記1から4のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
(付記6)
前記固定鉄心の前記磁極面の反対側の面は、前記他の一部側に、前記一部側から前記他の一部側に向かって前記磁極面に近づくように傾斜する傾斜面を有する付記5に記載のブレーキ装置。
(付記7)
前記固定鉄心の前記磁極面の反対側の面は、前記他の一部側に、前記固定鉄心から前記可動鉄心へ向かう方向に凹んだ段差部を有する付記5に記載のブレーキ装置。
(付記8)
前記可動鉄心の前記支持面は、前記他の一部側に、前記一部側から前記他の一部側に向かって前記支持面とは反対側の面に近づくように傾斜する傾斜面を有する付記1から7のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
(付記9)
前記可動鉄心の前記支持面は、前記他の一部側に、前記可動鉄心から前記固定鉄心へ向かう方向に凹んだ段差部を有する付記1から7のいずれか一項に記載のブレーキ装置。
【符号の説明】
【0065】
1 ブレーキ装置、10 固定鉄心、11 磁極面、11a 傾斜面、11b 段差部、15 面、15a 傾斜面、15b 段差部、15c 凹部、15d 第1段差部、15e 第2段差部、15f 第3段差部、20 可動鉄心、21 支持面、21a 傾斜面、21b 段差部、22 対向面、30 ブレーキシュー、40 バネ、50 電磁コイル、60 ガイド部、70 ブレーキスイッチ、103 ブレーキドラム、103a 制動面
【要約】
【課題】可動鉄心20が破損することを抑制できるブレーキ装置1を得る。
【解決手段】ブレーキ装置1は、ブレーキ部30、可動鉄心20、固定鉄心10、付勢部40及び電磁コイル50を備える。ブレーキ部30は、ブレーキドラム103の制動面103aに対向して配置され、可動鉄心20の支持面21に支持される。固定鉄心10は、支持面21とは反対側の面22に対向する磁極面11を有する。付勢部40は、可動鉄心20と固定鉄心10との間に配置され、可動鉄心20を付勢し、ブレーキ部30を制動面103aに押し当てる。電磁コイル50は、固定鉄心10に設けられ、可動鉄心20を吸引し、ブレーキ部30を制動面103aから離れさせる。固定鉄心10は、電磁コイル50の通電時に固定鉄心10と可動鉄心20との間に働く可動鉄心20を吸引する吸引力が、固定鉄心10の一部より固定鉄心10の他の一部が小さくなるように形成される。
【選択図】
図4