(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240305BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240305BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240305BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240305BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2023049635
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】池口 雅文
(72)【発明者】
【氏名】新美 泰之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 悠雅
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-006762(JP,A)
【文献】特開2012-028730(JP,A)
【文献】特開2017-228360(JP,A)
【文献】特開2018-198271(JP,A)
【文献】特表2005-527122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/3065
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に内蔵された導体層と、
前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側となる位置に設けられ
、前記載置面に対し垂直な方向から見た場合の形状が円形の電極
端子と、
前記導体層と前記電極
端子との間を電気的に接続する部分であって、前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
その全体が前記電極
端子と重なる範囲内に設けられた接続部と、を備え、
前記接続部は、
前記載置面に対して平行な平板状のパッド部と、
前記載置面に対して垂直な柱状のビア部と、を含み、
前記載置面に対して垂直な方向に沿って前記パッド部と前記ビア部とが交互に並び、且つ互いに接続されたものであり、
前記パッド部に対し一方側から接続されている前記ビア部の接続位置と、当該パッド部に対し他方側から接続されている前記ビア部の接続位置とが、前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において互いに異なっていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記パッド部には、
前記載置面に対し垂直な方向に沿った同じ側から2つの前記ビア部が接続されており、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合においては、これら2つの前記ビア部が、前記パッド部の中心を間に挟んで並ぶように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記パッド部に対し一方側から接続されている2つの前記ビア部が並ぶ方向、を第1方向とし、
当該パッド部に対し他方側から接続されている2つの前記ビア部が並ぶ方向、を第2方向としたときに、
前記第1方向と前記第2方向とが互いに異なっていることを特徴とする、請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第1方向と前記第2方向との間のなす角度が90度であることを特徴とする、請求項3に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置やエッチング装置のような半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
誘電体基板の内部には、載置面と略平行な導体層が埋め込まれる。導体層は、例えば上記の吸着電極であるが、誘電体基板を加熱するためのヒーターやRF電極等が導体層として埋め込まれる場合もある。
【0004】
誘電体基板のうち載置面とは反対側となる位置には、導体層への給電を行うための電極部(例えば電極端子)が設けられる。導体層と電極部との間は、誘電体基板の内部に設けられた接続部によって電気的に接続される。
【0005】
下記特許文献1に記載されているように、接続部の構成としては、平板状のパッド部と、柱状のビア部と、を交互に並べた構成が知られている。このような構成の接続部は、例えば、グリーンシートを積層することで誘電体基板を製造する場合等において好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第113707594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
積層されたグリーンシートが焼成される際には、グリーンシートやビア部等のそれぞれが収縮する。一般に、ビア部の収縮量は、その周囲にあるグリーンシートの収縮量に比べると僅かに大きい。
【0008】
上記特許文献1に記載された静電チャックでは、載置面に対し垂直な方向に並ぶ複数のビア部のそれぞれが、一直線状に並んでいる。このため、誘電体基板の焼成時においてそれぞれのビア部が収縮すると、一直線状に並んでいるそれぞれのビア部の収縮量が積算される結果、全体においては比較的大きな収縮が生じてしまうこととなる。導体層と電極部との間を繋ぐ接続部が、周囲のグリーンシートに比べて大きく収縮するので、接続部の一部において断線等の不具合が生じ、導体層への給電が適切に行われなくなってしまう可能性がある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘電体基板に内蔵された導体層への給電を安定して行うことのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に内蔵された導体層と、誘電体基板のうち載置面とは反対側となる位置に設けられた電極部と、導体層と電極部との間を電気的に接続する部分であって、載置面に対し垂直な方向から見た場合において、電極部と重なる範囲内に設けられた接続部と、を備える。接続部は、載置面に対して平行な平板状のパッド部と、載置面に対して垂直な柱状のビア部と、を含み、載置面に対して垂直な方向に沿ってパッド部とビア部とが交互に並び、且つ互いに接続されたものであり、パッド部に対し一方側から接続されているビア部の接続位置と、当該パッド部に対し他方側から接続されているビア部の接続位置とが、載置面に対し垂直な方向から見た場合において互いに異なっている。
【0011】
このような構成の静電チャックでは、載置面に対し垂直な方向に並ぶ複数のビア部のそれぞれが、従来のような一直線状に並ぶのではなく、載置面に対し垂直な方向から見た場合において互いに異なる位置で、パッド部を介して繋がるように並ぶ。焼成時においてそれぞれのビア部が収縮しても、それぞれの収縮量が積算されてしまうことが無いため、接続部の一部における断線等が発生する可能性は極めて小さくなる。これにより、誘電体基板に内蔵された導体層への給電を安定して行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る静電チャックでは、パッド部には、載置面に対し垂直な方向に沿った同じ側から2つのビア部が接続されており、載置面に対し垂直な方向から見た場合においては、これら2つのビア部が、パッド部の中心を間に挟んで並ぶように配置されていることも好ましい。同じ段位置にある2つのビア部を、パッド部の中心を間に挟んで並ぶように配置することで、異なる段位置にあるビア部同士を、一直線状に並ばないように配置するための余地を広く確保することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る静電チャックでは、パッド部に対し一方側から接続されている2つのビア部が並ぶ方向、を第1方向とし、当該パッド部に対し他方側から接続されている2つのビア部が並ぶ方向、を第2方向としたときに、第1方向と第2方向とが互いに異なっていることも好ましい。第1方向と第2方向とを互いに異ならせることで、パッド部を挟む一対のビア部のそれぞれの接続位置を、容易に異ならせることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る静電チャックでは、第1方向と第2方向との間のなす角度が90度であることも好ましい。パッド部を挟む一対のビア部のそれぞれの接続位置を、互いに最も遠ざけることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、誘電体基板に内蔵された導体層への給電を安定して行うことのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】接続部及びその近傍の具体的な構成を示す断面図である。
【
図4】1つのパッド部に繋がる4つのビア部の配置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0019】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0020】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al2O3)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0021】
誘電体基板100のうち
図1における上方側の面110は、被吸着物である基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち
図1における下方側の面120(つまり、面110とは反対側の面120)は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0022】
誘電体基板100の内部には、吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の導体層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。尚、吸着電極130は、概ね全体が面110に対し平行となっていればよく、一部において、面110に対し平行ではない部分を含んでいてもよい。後述の接続部400を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、所謂「双極」の電極として本実施形態のように2つ設けられていてもよいが、所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよい。
【0023】
それぞれの吸着電極130に対応して、面120には電極端子50が埋め込まれている。電極端子50と吸着電極130との間は、誘電体基板100の内部に設けられた接続部400によって電気的に接続されている。それぞれの電極端子50には給電路13の一端が接続されている。給電路13は導電性の金属部材(例えばバスバー)であって、ベースプレート200に設けられた不図示の貫通穴を通じて外部へと引き出されている。当該貫通穴の内面と給電路13との間には、例えば円筒状の絶縁部材が設けられていてもよい。電極端子50は、誘電体基板100のうち面110とは反対側となる位置において、外部からの給電を受ける部分となっている。電極端子50は、本実施形態における「電極部」に該当する。
【0024】
接続部400、電極端子50、及び給電路13は、吸着電極130に電圧を印加するための電路を構成している。
図1においては、接続部400等の構成が簡略化して描かれている。接続部400の具体的な構成については後に説明する。
【0025】
誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、空間SPには、誘電体基板100に形成された不図示のガス穴を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0026】
吸着面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0027】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SPを区画する壁である。それぞれのシールリング111の上端は面110の一部となっており、基板Wに当接する。尚、空間SPを分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0028】
図1等において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。底面116には、ヘリウムガスを空間SP内で素早く拡散させるための溝が形成されていてもよい。
【0029】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の吸着面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0030】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持するために、誘電体基板100の面120に接合される略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属により形成されている。ベースプレート200のうち、
図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。面210を含むベースプレート200の表面は、例えばアルミナ溶射膜のような絶縁膜で覆われていてもよい。
【0031】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。このような接着剤としては、例えばシリコーン系の接着剤を用いることができる。
【0032】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路250が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路250に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0033】
誘電体基板100のうち、接続部400及びその近傍部分の具体的な構成について説明する。
図2には、当該部分の構成が断面図として示されている。
図3には、接続部400の構成が斜視図として示されている。
【0034】
図2に示されるように、誘電体基板100の面120には凹部121が形成されており、電極端子50は、凹部121の中に埋め込まれた状態で保持されている。電極端子50は略円柱形状の金属端子である。電極端子50の中心軸は、面110や面120に対して垂直である。
図2において符号「51」が付されているのは、凹部121の底面(
図2では上側の面)を覆うように設けられたろう材であって、例えば銀ろうである。電極端子50は、このろう材51を介して凹部121に固定されている。
【0035】
先に述べた「電極部」は、接続部400に対し面120側から繋がっており、外部から電圧が印加される部分、と定義することができる。このため、電極端子50にろう材51を加えたものの全体を、「電極部」と捉えてもよい。
【0036】
図2の範囲Dは、上面視において電極端子50と重なる範囲を表している。同図に示されるように、電極端子50と吸着電極130との間を繋ぐ接続部400は、その全体が範囲Dの内側に収まるように設けられている。このような態様に換えて、接続部400のうちの一部(例えば後述のパッド部410)が、範囲Dの外まで伸びているような態様であってもよい。
【0037】
接続部400は、複数のパッド部410及び複数のビア部420を有しており、これらが互いに接続された構成を有している。複数のパッド部410及び複数のビア部420は、面110に垂直な方向に沿って交互に並んでいる。
【0038】
図3に示されるように、パッド部410は、上面視における形状が円形となるように形成された平板状の層である。それぞれのパッド部410は面110に対し平行である。尚、パッド部410は、概ね全体が面110に対し平行となっていればよく、一部において、面110に対し平行ではない部分を含んでいてもよい。
【0039】
本実施形態の誘電体基板100は、所謂グリーンシートを複数枚積層し、これを焼成することにより形成されている。それぞれのパッド部410が設けられている位置は、積層されたグリーンシートの境界部分に該当する。パッド部410は、例えば、グリーンシートの一方側の面の円形領域に、導電性のペーストを塗布することにより形成されたものである。「導電性のペースト」とは、例えばタングステンペーストである。
【0040】
ビア部420は、面110に垂直な方向に沿って伸びるように形成された略円柱形状の部分である。ビア部420は、グリーンシートのうち上記の円形領域を貫くように貫通穴(ビア)を形成し、当該貫通穴に導電性のペーストを充填することによって形成されたものである。充填される導電性のペーストは、パッド部410と同じタングステンペーストであってもよいが、これとは異なる材料であってもよい。
【0041】
面110に垂直な方向における各グリーンシートの位置、のことを、以下では「段位置」のようにも表記する。
図2や
図3に示されるように、本実施形態のビア部420は、6つの段位置のそれぞれに配置されており、それぞれの段位置にはビア部420が2つずつ配置されている。
【0042】
図4には、接続部400に含まれる1つのパッド部410と、これに繋がる計4つのビア部420と、が上面視で模式的に示されている。
図4において符号「420A」が付されているのは、同図のパッド部410に対して紙面手前側の段位置から接続されているビア部420である。
図4において符号「420B」が付されているのは、同図のパッド部410に対して紙面奥側側の段位置から接続されているビア部420である。
【0043】
図4等に示されるように、本実施形態の接続部400では、パッド部410に対し一方側から接続されているビア部420Aの接続位置と、当該パッド部410に対し他方側から接続されているビア部420Bの接続位置とが、上面視において互いに異なるよう、それぞれのビア部420が配置されている。換言すれば、パッド部410を間に挟んで一直線状に並ぶような一対のビア部420は存在しない。
【0044】
尚、上記において接続位置が「互いに異なる」とは、パッド部410に対し一方側から接続されているビア部420Aの接続位置と、当該パッド部410に対し他方側から接続されているビア部420Bの接続位置とが、上面視において互いに一切重なっていないことを意味する。このような態様に換えて、それぞれの接続位置の一部同士が互いに重なっている状態となっていてもよい。
【0045】
このような構成としたことの利点について説明する。本実施形態のように、グリーンシートを積層し焼成することで誘電体基板100を製造する場合には、焼成時において、グリーンシートやビア部420等のそれぞれが収縮する。一般に、ビア部420の収縮量は、その周囲にあるグリーンシートの収縮量に比べると僅かに大きくなることが多い。
【0046】
仮に、異なる段位置にあるビア部420のそれぞれを一直線状に並ぶように配置した場合には、焼成時においてそれぞれのビア部420が収縮すると、一直線状に並んでいるそれぞれのビア部420の収縮量が積算される結果、全体においては比較的大きな収縮が生じてしまうこととなる。吸着電極130と電極端子50との間を繋ぐ接続部400が、周囲のグリーンシートに比べて大きく収縮するので、接続部400の一部において断線等の不具合が生じ、吸着電極130への給電が適切に行われなくなってしまう可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態に係る静電チャック10では上記のように、パッド部410を間に挟むビア部420が一直線状に並ばないよう、接続部400におけるビア部420の配置を工夫している。
【0048】
このような構成においては、焼成時においてそれぞれのビア部420が収縮しても、それぞれの収縮量が積算されてしまうことが無いため、接続部400の一部における断線等が発生する可能性は極めて小さくなっている。これにより、誘電体基板100に内蔵された吸着電極130への給電を安定して行うことが可能となっている。
【0049】
図3や
図4に示されるように、1つのパッド部410には、面110に対し垂直な方向に沿った同じ側から2つのビア部420が接続されている。このうち、
図4において紙面手前側にある一対のビア部420Aの、それぞれの中心をC1とすると、上面視におけるパッド部410の中心C0は、C1同士を結ぶ直線上に存在している。同様に、
図4において紙面奥側にある一対のビア部420Bの、それぞれの中心をC2とすると、上面視におけるパッド部410の中心C0は、C2同士を結ぶ直線上に存在している。
【0050】
このように、本実施形態では、同じ段位置にある2つのビア部420が、上面視において、パッド部410の中心C0を間に挟んで並ぶように配置されている。それぞれの段位置にあるビア部420をこのように配置することで、異なる段位置にあるビア部420同士を、一直線状に並ばないように配置するための余地が広く確保されている。
【0051】
図4において、一方のC1から他方のC1に向かう方向、すなわち、
図4のパッド部410に対し一方側から接続されている2つのビア部420Aが並ぶ方向のことを、以下では「第1方向AR1」とも称する。また、一方のC2から他方のC2に向かう方向、すなわち、
図4のパッド部410に対し他方側から接続されている2つのビア部420Bが並ぶ方向のことを、以下では「第2方向AR2」とも称する。
【0052】
本実施形態では、このように定義される第1方向AR1及び第2方向AR2を互いに異ならせることで、パッド部410を挟む一対のビア部420A、420Bのそれぞれの接続位置を、容易に異ならせることが可能となっている。
【0053】
第1方向AR1と第2方向AR2との間のなす角度θは、本実施形態では90度となっている。このような構成とすることで、パッド部410を挟む一対のビア部420A、420Bのそれぞれの接続位置を、互いに最も遠ざけることが可能となっている。
【0054】
以上に説明した接続部400等の構成については、種々の変更を加えることができる。本実施形態では、誘電体基板100の面120に設けられた電極端子50やろう材51が、外部からの給電を受ける「電極部」に該当している。このような態様に換えて、例えば、ろう材51の位置に板状の金属を配置した上で、外部から挿入された棒状のピンを当該金属に当接させる構成としてもよい。この場合は、上記の板状の金属が「電極部」に該当することとなる。
【0055】
本実施形態では、誘電体基板100の内部に設けられた吸着電極130が「導体層」に該当しており、吸着電極130に繋がるように接続部400が設けられている。このような態様に換えて、誘電体基板100の内部の「導体層」としてRF電極又は電気ヒーターが設けられ、これらに繋がるように接続部400が設けられた構成としてもよい。
【0056】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0057】
W:基板
10:静電チャック
100:誘電体基板
110,120:面
130:吸着電極
400:接続部
410:パッド部
420:ビア部
【要約】
【課題】基板の面内温度分布のばらつきを十分に抑制することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に内蔵された吸着電極130と、誘電体基板100の面120に設けられた電極端子50と、吸着電極130と電極端子50との間を電気的に接続する接続部400と、を備える。接続部400は、誘電体基板100の面110に対して平行な平板状のパッド部410と、面110に対して垂直な柱状のビア部420と、を含み、面110に対して垂直な方向に沿ってパッド部410とビア部420とが交互に並び、且つ互いに接続されたものである。パッド部410に対し一方側から接続されているビア部420の接続位置と、他方側から接続されているビア部420の接続位置とが、上面視において互いに異なっている。
【選択図】
図2