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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】排気制御装置及び排気制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
F02D41/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023093085
(22)【出願日】2023-06-06
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】長島 義文
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019334(JP,A)
【文献】特開2009-103061(JP,A)
【文献】特開2009-167944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの負荷に関する負荷情報と、前記エンジンの吸入空気量と、排気ガスが流れる排気路に設けられた触媒の下流の酸素濃度と、を取得する取得部と、
前記負荷情報に基づいて、前記排気ガスに含まれるアンモニア及び窒素酸化物の各濃度を所定の濃度未満にするための、前記エンジン内で発生した混合気の空燃比の第1範囲と、前記酸素濃度の第2範囲とを設定し、前記エンジンの吸入空気量に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲の更新時間と、を設定する設定部と、
前記第1範囲に含まれる前記空燃比から、前記酸素濃度が前記第2範囲に含まれるように前記混合気の空燃比を決定する決定部と、
を有し、
前記設定部は、前に前記更新時間を設定した時刻から前記更新時間が経過するたびに、前記更新時間が経過した時刻に前記取得部が取得した前記負荷情報に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲を再設定し、前記更新時間が経過した時刻に前記取得部が取得した前記吸入空気量に基づいて、前記更新時間を再設定する、
排気制御装置。
【請求項2】
前記設定部は、所定時間に前記取得部が取得した前記負荷情報が示す前記エンジンの負荷に対応する前記第2範囲に含まれるように、前記第1範囲を設定し、
前記決定部は、現在時刻より前記所定時間前の時刻から前記現在時刻までに前記取得部が取得した前記酸素濃度の平均値が、前記第2範囲に含まれるように、前記第1範囲に含まれる前記空燃比から前記混合気の空燃比を決定する、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記エンジンの負荷が大きいほど、前記第1範囲に含まれる前記空燃比が示す酸素の比率が大きくなるように前記第1範囲を設定する、
請求項2に記載の排気制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記エンジンの負荷が大きいほど、前記第2範囲に含まれる前記酸素濃度が小さくなるように前記第2範囲を設定する、
請求項2に記載の排気制御装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記吸入空気量が大きいほど、前記更新時間を短く設定する、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記エンジンの回転数、及び前記エンジンの1行程あたりの燃料噴射量を含む前記負荷情報を取得する、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項7】
エンジンの回転数を所定の第1数で分割した各回転範囲と、エンジンの1行程あたりの燃料噴射量を所定の第2数で分割した各噴射量範囲と、に対応する前記第1範囲及び前記第2範囲を記憶する記憶部をさらに有し、
前記設定部は、前記記憶部を参照することにより、前記負荷情報に含まれる前記エンジンの回転数が属する回転範囲と、前記負荷情報に含まれる前記燃料噴射量が属する噴射量範囲と、に対応する前記第1範囲及び前記第2範囲を設定する、
請求項6に記載の排気制御装置。
【請求項8】
吸入空気量を所定の第3数で分割した各空気量範囲に対応する前記更新時間を記憶する記憶部をさらに有し、
前記設定部は、前記取得部が取得した前記吸入空気量が属する空気量範囲に対応する前記更新時間を設定する、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する、
エンジンの負荷に関する負荷情報と、前記エンジンの吸入空気量と、排気ガスが流れる排気路に設けられた触媒の下流の酸素濃度と、を取得する取得工程と、
前記負荷情報に基づいて、前記排気ガスに含まれるアンモニア及び窒素酸化物の各濃度を所定の濃度未満にするための、前記エンジン内で発生した混合気の空燃比の第1範囲と、前記酸素濃度の第2範囲と、を設定し、前記エンジンの吸入空気量に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲の更新時間を設定する設定工程と、
前記第1範囲に含まれる前記空燃比から、前記酸素濃度が前記第2範囲に含まれるように前記混合気の空燃比を決定する決定工程と、
を有し、
前記設定工程において、前に前記更新時間を設定した時刻から前記更新時間が経過するたびに、前記更新時間が経過した時刻に前記取得工程において取得した前記負荷情報に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲を再設定し、前記更新時間が経過した時刻に前記取得工程において取得した前記吸入空気量に基づいて、前記更新時間を再設定する、
排気制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気制御装置及び排気制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の排気浄化装置は、NOx(窒素酸化物)排出量とアンモニア流出量とが所定の範囲になるように、触媒に吸着するアンモニア量の目標値を決定し、当該アンモニア量が目標値に達するまで、空燃比を所定のリッチ空燃比にするリッチスパイクを実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-36700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
NOx排出量とアンモニア流出量とを所定の範囲にするために適した空燃比は、エンジンの負荷に応じて変化する。このため、リッチスパイクを実施する際の空燃比がエンジンの負荷に適さない場合は、アンモニア流出量が所定の流出範囲になるまでの間にNOx排出量が所定の排出範囲を超えてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、適切なNOx排出量及びアンモニア流出量になるように排気を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る排気制御装置は、エンジンの負荷に関する負荷情報と、前記エンジンの吸入空気量と、排気ガスが流れる排気路に設けられた触媒の下流の酸素濃度と、を取得する取得部と、前記負荷情報に基づいて、前記エンジン内で発生した混合気の空燃比の第1範囲と、前記酸素濃度の第2範囲とを設定し、前記エンジンの吸入空気量に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲の更新時間と、を設定する設定部と、前記第1範囲に含まれる前記空燃比から、前記酸素濃度が前記第2範囲に含まれるように前記混合気の空燃比を決定する決定部と、を有し、前記設定部は、前に前記更新時間を設定した時刻から前記更新時間が経過するたびに、前記更新時間が経過した時刻に前記取得部が取得した前記負荷情報に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲を再設定し、前記更新時間が経過した時刻に前記取得部が取得した前記吸入空気量に基づいて、前記更新時間を再設定する。
【0007】
前記設定部は、所定時間に前記取得部が取得した前記負荷情報が示す前記エンジンの負荷に対応する前記第2範囲に含まれるように、前記第1範囲を設定し、前記決定部は、現在時刻より前記所定時間前の時刻から前記現在時刻までに前記取得部が取得した前記酸素濃度の平均値が、前記第2範囲に含まれるように、前記第1範囲に含まれる前記空燃比から前記混合気の空燃比を決定してもよい。
【0008】
前記設定部は、前記エンジンの負荷が大きいほど、前記第1範囲に含まれる前記空燃比が示す酸素の比率が大きくなるように前記第1範囲を設定してもよい。
【0009】
前記設定部は、前記エンジンの負荷が大きいほど、前記第2範囲に含まれる前記酸素濃度が小さくなるように前記第2範囲を設定してもよい。
【0010】
前記設定部は、前記吸入空気量が大きいほど、前記更新時間を短く設定してもよい。
【0011】
前記取得部は、前記エンジンの回転数、及び前記エンジンの1行程あたりの燃料噴射量を含む前記負荷情報を取得してもよい。
【0012】
エンジンの回転数を所定の第1数で分割した各回転範囲と、エンジンの1行程あたりの燃料噴射量を所定の第2数で分割した各噴射量範囲と、に対応する前記第1範囲及び前記第2範囲を記憶する記憶部をさらに有し、前記設定部は、前記記憶部を参照することにより、前記負荷情報に含まれる前記エンジンの回転数が属する回転範囲と、前記負荷情報に含まれる前記燃料噴射量が属する噴射量範囲と、に対応する前記第1範囲及び前記第2範囲を設定してもよい。
【0013】
吸入空気量を所定の第3数で分割した各空気量範囲に対応する前記更新時間を記憶する記憶部をさらに有し、前記設定部は、前記取得部が取得した前記吸入空気量が属する空気量範囲に対応する前記更新時間を設定してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る排気制御方法は、コンピュータが実行する、エンジンの負荷に関する負荷情報と、前記エンジンの吸入空気量と、排気ガスが流れる排気路に設けられた触媒の下流の酸素濃度と、を取得する取得工程と、前記負荷情報に基づいて、前記エンジン内で発生した混合気の空燃比の第1範囲と、前記酸素濃度の第2範囲と、を設定し、前記エンジンの吸入空気量に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲の更新時間を設定する設定工程と、前記第1範囲に含まれる前記空燃比から、前記酸素濃度が前記第2範囲に含まれるように前記混合気の空燃比を決定する決定工程と、を有し、前記設定工程において、前に前記更新時間を設定した時刻から前記更新時間が経過するたびに、前記更新時間が経過した時刻に前記取得工程において取得した前記負荷情報に基づいて、前記第1範囲及び前記第2範囲を再設定し、前記更新時間が経過した時刻に前記取得工程において取得した前記吸入空気量に基づいて、前記更新時間を再設定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切なNOx排出量及びアンモニア流出量になるように排気を制御するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る排気制御システムSの概要を説明するための図である。
図2】空燃比に対応するNH3濃度とNOx濃度とを示す図である。
図3】更新時間が一定である場合の動作を示す。
図4】エンジン10の負荷に応じて更新時間を変更する場合の動作を示す。
図5】排気制御装置50の構成を示す図である。
図6】排気制御装置50における処理シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<排気制御システムSの概要>
図1は、本実施形態に係る排気制御システムSの概要を説明するための図である。図1に示す排気制御システムSは、エンジン10と、過給機11と、インジェクタ12と、エアクリーナ13と、吸気圧センサ14と、吸気路20と、排気路21と、浄化装置30と、触媒31と、空燃比センサ40と、O2センサ41と、排気制御装置50と、を備える。排気制御システムSは、エンジン10の負荷に基づいてエンジン10の内部で発生する混合気の空燃比を決定する機能を有する。一例として、エンジン10の負荷は、エンジン10の回転数及びエンジン10の1行程あたりの燃料噴射量である。
【0018】
エンジン10は、例えば、CNG(Compressed Natural Gas)エンジンであり、燃料と吸気(空気)の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。過給機11は、例えば、ターボチャージャであり、排気の流れを利用して吸気の密度を高くする。過給機11は、吸気路20に設けられたコンプレッサCと排気路21に設けられたタービンTとを有する。タービンTは、排気路21を流れる排気を受けて回転する。コンプレッサCは、タービンTに連結軸を介して連結されており、タービンTとともに回転することで吸気を圧縮する。
【0019】
インジェクタ12は、燃料タンク(不図示)内の燃料をエンジン10内の燃焼室に噴射する。エアクリーナ13は、エンジン10に供給される空気に含まれる粉塵やゴミ等の異物を除去することにより当該空気を浄化するフィルタであり、吸気路20の上流に設けられる。吸気路20は、エンジン10に供給される空気(吸気)が流れる通路であり、排気路21は、エンジン10の排気が流れる通路である。吸気圧センサ14は、吸気路20に設けられ、エンジン10に供給される空気の空気圧(吸気圧)を検出する。
【0020】
浄化装置30は、エンジン10の排気を浄化するための装置であり、触媒31を収容する。触媒31は、例えば、三元触媒であり、エンジン10の排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を浄化する。具体的には、触媒31は、炭化水素を水と二酸化炭素とに酸化し、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、窒素酸化物を窒素に還元する。また、触媒31は、窒素酸化物を窒素に還元する際にアンモニアを生成する。
【0021】
空燃比センサ40は、排気路21におけるエンジン10の下流かつ触媒31の上流に設けられ、エンジン10内で発生した混合気の空燃比を検出する。空燃比センサ40は、例えば、エンジン10の排気に含まれる酸素濃度を検出するO2センサ、又はエンジン10が吸入する空気量を計測するエアフロセンサのいずれかを含む。O2センサ41は、触媒31の下流に設けられ、エンジン10の排気に含まれる酸素濃度(以下、「O2濃度」という)を検出する。O2センサ41は、O2濃度に対応する電圧値を出力する。例えば、O2センサ41は、O2濃度が高いほど低い電圧値を出力し、O2濃度が低いほど高い電圧値を出力する。
【0022】
排気制御装置50は、電子部品を含む筐体又は電子部品が実装されたプリント基板である。排気制御装置50は、排気制御システムSが排出する排気に含まれるアンモニアの濃度(以下、「NH3濃度」という)及び窒素酸化物の濃度(以下、「NOx濃度」という)が所定の範囲(例えば、10ppm未満)になるための処理を実行する。排気制御装置50は、例えば、NH3濃度及びNOx濃度が所定の範囲になるように空燃比を決定し、当該空燃比に対応する燃料噴射量に基づいてインジェクタ12に燃料を噴射させる。
【0023】
図2は、空燃比に対応するNH3濃度とNOx濃度とを示す図である。図2(a)は空燃比に対応するNOx濃度を示し、図2(b)は空燃比に対応するNH3濃度を示す。また、図2(c)には、空燃比に対応するO2濃度も示す。図2の横軸は空燃比センサ40が検出した空燃比を示す。図2(a)の縦軸は排気制御システムSが排出する排気のNOx濃度を示し、図2(b)の縦軸は当該排気のNH3濃度を示し、図2(c)の縦軸はO2センサ41が検出したO2濃度を示す。図2においては、実線で示す折線に対応するエンジン10の負荷(以下、「低負荷」という)は、破線で示す折線に対応するエンジン10の負荷(以下、「高負荷」という)よりも低い。
【0024】
図2(a)に示すように、NOx濃度は、空燃比がリーンであるほど(すなわち、混合気に含まれる燃料の割合が小さいほど)高くなる。一方、図2(b)に示すように、NH3濃度は、空燃比がリーンであるほど低くなる。そこで、排気制御装置50は、NOx濃度及びNH3濃度を所定の範囲にするための空燃比の第1範囲とO2濃度の第2範囲とを特定し、第1範囲に含まれる空燃比から、O2濃度が第2範囲に含まれるように空燃比を決定する。具体的には、エンジン10が低負荷である場合、排気制御装置50は、図2(a)と図2(b)とを参照することにより空燃比λ1から空燃比λ2までの第1範囲を特定し、図2(c)を参照することにより濃度P1から濃度P2までの第2範囲を特定する。
【0025】
このように排気制御装置50が第1範囲と第2範囲とを特定することで、エンジン10が低負荷である場合は、NOx濃度とNH3濃度とを所定の範囲にするための空燃比を決定できる。しかしながら、エンジン10が高負荷に変化した場合、NOx濃度及びNH3濃度を所定の範囲にするための第1範囲は空燃比λ3から空燃比λ4であり、第2範囲は濃度P3から濃度P4である。これらの範囲は、エンジン10が低負荷の場合に特定した第1範囲及び第2範囲と乖離するため、エンジン10が低負荷の場合に特定した範囲を継続して用いると、NOx濃度及びNH3濃度を所定の範囲にすることができない。
【0026】
そこで、排気制御装置50は、所定の時間(以下、「更新時間」という)が経過するたびに、エンジン10の負荷に基づいて、空燃比の第1範囲とO2濃度の第2範囲とを再設定する。具体的には、更新時間が経過した時刻におけるエンジン10が低負荷である場合、第1範囲を空燃比λ1から空燃比λ2に再設定し、第2範囲を濃度P1から濃度P2に再設定する。一方、エンジン10が高負荷である場合、第1範囲を空燃比λ3から空燃比λ4に再設定し、第2範囲を濃度P3から濃度P4に再設定する。このように、更新時間が経過するたびに、エンジン10の負荷に基づいて第1範囲と第2範囲とを再設定することで、排気に含まれるNOx濃度とNH3濃度とを所定の範囲にすることができる。
【0027】
ところで、触媒31は、NOxを還元する際に生成した酸素を吸着する。そして、触媒31が吸着できる酸素の量(いわゆる、O2ストレージ量)まで酸素を吸着させる時間は、エンジン10に供給される空気量が大きいほど短くなる。すなわち、O2センサ41が検出したO2濃度に対応する、NOx濃度を所定の範囲にするための空燃比の第1範囲を適用できる時間は、エンジン10の吸入空気量が大きいほど(エンジン10の負荷が高いほど)短くなる。このため、更新時間が一定である場合、エンジン10の負荷が高いほど、第1範囲を再設定するまでの時間よりも、触媒31が酸素を吸着できる時間が短くなることにより、触媒31は、NOxを還元できずに排出してしまう。
【0028】
そこで、排気制御装置50は、更新時間が経過するたびに、吸気圧センサ14が検出した吸気圧と更新時間とを積算して特定した、エンジン10に供給される空気量に基づいて更新時間を再設定する。図3及び図4は、更新時間が経過するたびに第1範囲を再設定する動作を説明するための図である。図3は、更新時間が一定である場合の動作を示し、図4は、エンジン10の負荷に応じて更新時間を変更する場合の動作を示す。図3の横軸は、時間を示す。図3(a)の縦軸は、NH3濃度、及びO2センサ出力値(すなわち、O2センサ41が出力した電圧値)を示す。図3(b)の縦軸は、説明を簡単にするために、第1範囲の中央値を示す。図3(c)の縦軸は、エンジン10が高負荷である場合のNOx濃度H、エンジン10が低負荷である場合のNOx濃度Lを示す。図4の横軸及び縦軸においては、図4(b)の縦軸が、エンジン10が高負荷である場合の第1範囲の中央値H2とエンジン10が低負荷である場合の第1範囲の中央値L2とを示す点で図3と異なり、他の点において同じである。なお、図3(c)及び図4(c)において、実線の折線はエンジン10が低負荷の場合(すなわちエンジン10の吸入空気量が小さい場合)を示し、破線の折線はエンジン10が高負荷の場合(すなわちエンジン10の吸入空気量が大きい場合)を示す。
【0029】
図3(a)及び図3(b)に示すように、排気制御装置50は、時刻0から時刻T3において第1範囲を再設定することにより、NH3濃度を低下させる。そして、図3(a)及び図3(c)に示すように、排気制御装置50は、エンジン10が低負荷である場合は、時刻T3より後の時刻において、目標値Aよりも低いNH3濃度と目標値Nよりも低いNOx濃度Lを達成する。しかし、エンジン10が高負荷である場合、排気制御装置50は、図3(c)に示すように、時刻T3から時刻T4において、目標値Nよりも高いNOx濃度Hの排気を排出させる。そこで、図4(b)に示すように、排気制御装置50は、エンジン10の吸入空気量が大きい場合はエンジン10が高負荷であると判定し、第1範囲の更新時間を短くする。その結果、図4(c)に示すように、エンジン10が高負荷であっても、時刻T3から時刻T4において目標値Nよりも低いNOx濃度Hの排気を排出させることができる。
【0030】
上記のように、排気制御装置50が、更新時間が経過するたびに、エンジン10の負荷に基づいて空燃比の第1範囲とO2濃度の第2範囲とを再設定し、エンジン10の吸入空気量に基づいて更新時間とを再設定することで、適切なNOx排出量及びNH3排出量になるように排気を制御することができる。
なお、図2図3及び図4においては、説明を簡単にするために、エンジン10の負荷を2つ(高負荷、低負荷)に分割し、エンジン10の吸入空気量を2つ(高負荷に対応する吸入空気量、低負荷に対応する吸入空気量)に分割したが、これに限らない。排気制御装置50は、エンジンの負荷を3つ以上に分割し、分割した各負荷の領域に対応する第1範囲、及び第2範囲を再設定してもよい。排気制御装置50は、エンジン10の吸入空気量を3つ以上に分割し、分割した各吸入空気量の領域に対応する更新時間を再設定してもよい。
以下、排気制御装置50の構成及び動作を詳細に説明する。
【0031】
<排気制御装置50の構成>
図5は、排気制御装置50の構成を示す図である。排気制御装置50は、記憶部51と、制御部52と、を有する。制御部52は、取得部521と、設定部522と、決定部523と、を有する。
【0032】
記憶部51は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部51は、制御部52が実行するプログラムを記憶している。
【0033】
記憶部51は、制御部52が、エンジン10内で発生する混合気の空燃比を決定するための各種の情報を記憶している。記憶部51は、例えば、エンジン10の回転数を所定の第1数で分割した各回転範囲と、エンジンの1行程あたりの燃料噴射量を所定の第2数で分割した各噴射量範囲と、に対応する空燃比の第1範囲及びO2濃度の第2範囲を記憶している。記憶部51は、例えば、エンジン10の吸入空気量を所定の第3数で分割した各空気量範囲に対応する更新時間を記憶している。所定の第1数、所定の第2数及び所定の第3数は、例えば8から16までの数である。記憶部51に記憶された第1範囲、第2範囲及び更新時間は、実験又はシミュレーションにより定められたデータである。
【0034】
制御部52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部52は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部521、設定部522及び決定部523として機能する。なお、制御部52は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部52により実現される各部の構成を説明する。
【0035】
取得部521は、エンジン10の負荷に関する負荷情報を取得する。負荷情報は、エンジン10の回転数とエンジン10の1行程あたりの燃料噴射量とを含む。取得部521は、例えば、エンジン10のフライホイール、カムシャフト又はクランクプーリに設けられた回転数センサ(不図示)から、エンジン10の回転数を取得する。取得部521は、例えば、エンジン10の排気量、気筒数、充填効率及び空燃比に基づいてエンジン10の1行程あたりの燃料噴射量を算出することにより、当該燃料噴射量を取得する。以下、エンジン10の1行程あたりの燃料噴射量を、単に「燃料噴射量」という場合がある。
【0036】
取得部521は、エンジン10の吸入空気量を取得する。取得部521は、例えば、更新時間において吸気圧センサ14が検出した、エンジン10に供給される空気の空気圧の平均値と、当該更新時間とを積算することにより吸入空気量を取得する。また、取得部521は、O2センサ41から、排気ガスが流れる排気路21に設けられた触媒31の下流のO2濃度を取得する。取得部521は、例えば、O2センサ41が出力した電圧値に対応するO2濃度を特定することにより、O2濃度を取得する。取得部521は、空燃比センサ40から、エンジン10内で発生する混合気の空燃比を取得してもよい。
【0037】
設定部522は、取得部521が取得した負荷情報に基づいて、エンジン10内で発生した混合気の空燃比の第1範囲と、O2濃度の第2範囲とを設定し、取得部521が取得した吸入空気量に基づいて、第1範囲及び第2範囲の更新時間を設定する。第1範囲、第2範囲、及び更新時間を設定する動作の詳細については後述する。設定部522がこのように動作することで、決定部523が、第1範囲に含まれる空燃比から、NOx濃度とNH3濃度が所定の範囲になるように、エンジン10の負荷に適した空燃比を決定することができる。
【0038】
設定部522は、例えば、所定時間に取得部521が取得した負荷情報が示すエンジン10の負荷に対応する第2範囲に含まれるように、第1範囲を設定する。所定時間は、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過した時刻までの時間である。例えば、設定部522は、所定時間に取得部521が取得した複数の負荷情報に基づいてエンジン10の回転数の平均値、及びエンジン10の1行程あたりの燃料噴射量の平均値を特定することにより、所定時間におけるエンジン10の負荷が高負荷であることを特定する。設定部522は、高負荷であることを特定したことにより、図2(c)に示す濃度P3から濃度P4までを第2範囲に設定し、図2(c)に示す空燃比λ3から空燃比λ4までを第1範囲に設定する。
【0039】
設定部522は、例えば、エンジン10の負荷が大きいほど、第1範囲に含まれる空燃比が示す酸素の比率が大きくなるように第1範囲を設定する。例えば、設定部522は、所定時間におけるエンジン10の回転数の平均値、及びエンジン10の燃料噴射量の平均値が大きいほど、第1範囲に含まれる空燃比がリーンになるように設定する。設定部522がこのように動作することで、排気に含まれるNH3の濃度を抑制しやすくすることができる。
【0040】
設定部522は、例えば、エンジン10の負荷が大きいほど、第2範囲に含まれるO2濃度が小さくなるように第2範囲を設定する。例えば、設定部522は、所定時間におけるエンジン10の回転数の平均値、及びエンジン10の燃料噴射量の平均値が大きいほど、第2範囲に含まれるO2濃度が小さくなるように設定する。設定部522がこのように動作することで、エンジン10の負荷に応じた第1範囲を設定することができる。その結果、エンジン10の負荷が変化したとしても、排気のNOx濃度とNH3濃度とを所定の範囲(例えば、10ppm未満)にすることができる。
【0041】
設定部522は、例えば、エンジン10の吸入空気量が大きいほど、更新時間を短く設定する。具体的には、設定部522は、所定時間におけるエンジン10の吸入空気量が所定量以上である場合は、エンジン10が高負荷の状態であると判定し、更新時間を2秒に設定する。一方、エンジン10の吸入空気量が所定量未満である場合は、エンジン10が低負荷の状態であると判定し、設定部522は、更新時間を5秒に設定する。設定部522がこのように動作することで、更新時間が経過する前に、触媒31が酸素を吸着した量が酸素を吸着できる量の最大値に達することを防げる。その結果、排気に含まれるNOxの濃度を抑制しやすくすることができる。
【0042】
設定部522は、記憶部51に記憶された複数の回転範囲と複数の噴射量範囲とのうち、負荷情報に含まれるエンジン10の回転数が属する回転範囲と、負荷情報に含まれる燃料噴射量が属する噴射量範囲と、に対応する第1範囲及び第2範囲を設定してもよい。設定部522は、例えば、所定時間におけるエンジン10の回転数の平均値、及びエンジン10の燃料噴射量の平均値を特定する。設定部522は、記憶部51を参照することにより、特定した回転数の平均値が属する回転範囲と、特定した燃料噴射量の平均値が属する噴射量範囲と、に対応する第1範囲及び第2範囲を設定する。このように動作することで、設定部522は、エンジン10の回転数と燃料噴射量とを複数の領域に分割することができるため、第1範囲及び第2範囲を細かく設定することができる。さらに、設定部522は、記憶部51を参照することにより、第1範囲及び第2範囲を速やかに設定することができる。
【0043】
また、設定部522は、記憶部51に記憶された複数の空気量範囲のうち、取得部521が取得した吸入空気量が属する空気量範囲に対応する更新時間を設定してもよい。設定部522は、例えば、所定時間におけるエンジン10の吸入空気量の平均値を特定する。設定部522は、記憶部51を参照することにより、特定した吸入空気量の平均値が属する空気量範囲に対応する更新時間を設定する。このように動作することで、設定部522は、吸入空気量を複数の領域に分割することができるため、更新時間を細かく設定することができる。さらに、設定部522は、記憶部51を参照することにより、更新時間を速やかに設定することができる。
【0044】
さらに、設定部522は、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過するたびに、更新時間が経過した時刻に取得部521が取得した負荷情報に基づいて、第1範囲及び第2範囲を再設定し、吸入空気量に基づいて更新時間を再設定する。設定部522は、例えば、記憶部51を参照することにより、更新時間が経過した時刻において、当該時刻に取得部521が取得した負荷情報に含まれるエンジン10の回転数と燃料噴射量とに対応する第1範囲及び第2範囲を再設定する。設定部522は、更新時間が経過した時刻において、当該時刻に取得部521が取得した吸入空気量に基づいて更新時間を再設定する。そして、設定部522は、更新時間を再設定した時刻から、再設定した更新時間が経過した時刻において、第1範囲、第2範囲及び更新時間をさらに再設定する。設定部522がこのように動作することで、エンジン10の負荷が変化したとしても、当該負荷に適した第1範囲、第2範囲及び更新時間を設定できる。
【0045】
設定部522は、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過した時刻までの複数の負荷情報に基づいて、第1範囲及び第2範囲を再設定してもよい。設定部522は、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過した時刻までの複数の吸入空気量に基づいて更新時間を再設定してもよい。設定部522は、例えば、更新時間が経過した時刻において、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過した時刻までの負荷情報に基づいて、エンジン10の回転数の平均値、及びエンジン10の燃料噴射量の平均値を特定する。設定部522は、記憶部51を参照することにより、特定したエンジン10の回転数の平均値と燃料噴射量の平均値とに対応する第1範囲及び第2範囲を再設定する。設定部522がこのように動作することで、エンジン10の負荷を高い精度で特定できるため、第1範囲及び第2範囲を誤って設定する確率を低くすることができる。
【0046】
設定部522は、例えば、更新時間が経過した時刻において、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過した時刻までの吸入空気量の平均値を特定する。設定部522は、記憶部51を参照することにより、特定した吸入空気量の平均値に対応する更新時間を再設定する。設定部522がこのように動作することで、エンジン10の吸入空気量を高い精度で特定できるため、更新時間を誤って設定する確率を低くすることができる。
【0047】
決定部523は、第1範囲に含まれる空燃比から、O2濃度が第2範囲に含まれるように混合気の空燃比を決定し、当該空燃比に対応する燃料噴射量に基づいてインジェクタ12に燃料を噴射させる。空燃比に対応する燃料噴射量は、記憶部51に記憶されている。
【0048】
決定部523は、例えば、現在時刻より所定時間前の時刻から現在時刻までに取得部521が取得したO2濃度の平均値が、第2範囲に含まれるように、第1範囲に含まれる空燃比から混合気の空燃比を決定する。現在時刻より所定時間前の時刻は、例えば、前に更新時間を設定した時刻のうち現在時刻にもっとも近い時刻である。決定部523は、例えば、現在時刻より所定時間前の時刻から現在時刻までに取得部521が取得した複数のO2濃度に基づいてO2濃度の平均値を特定する。決定部523は、現在時刻より所定時間前の時刻から現在時刻までに取得部521が取得した負荷情報に基づいてエンジン10の負荷を特定する。そして、決定部523は、特定したO2濃度の平均値が、特定した負荷に対応する第2範囲に含まれるように空燃比を決定する。
【0049】
決定部523は、例えば、O2濃度の平均値が第2範囲の中央値になるように、第1範囲に含まれる空燃比から、第2範囲の中央値に対応する空燃比(すなわち、第1範囲の中央値)を決定する。例えば、決定部523は、エンジン10の負荷が高負荷であり、O2濃度の平均値が図2(c)に示す濃度P3である場合、O2濃度の平均値を濃度P3と濃度P4との中央値に近づけるために、空燃比を空燃比λ3と空燃比λ4との中央値に決定する。決定部523がこのように動作することで、現在時刻よりも後の時刻においてO2濃度を第2範囲に含めることができる。
【0050】
決定部523は、O2濃度の平均値が第2範囲よりも低い又は第2範囲よりも高い場合、第2範囲に含まれるO2濃度のうち、O2濃度の平均値との差がもっとも小さいO2濃度に対応する空燃比を決定する。例えば、決定部523は、エンジン10の負荷が高負荷であり、O2濃度の平均値が図2(c)に示す濃度P3よりも低い濃度である場合、空燃比を濃度P3に対応する空燃比λ3に決定する。決定部523がこのように動作することで、空燃比の変化量を小さくすることができるため、目標の空燃比に緩やかに収束させることができる。
【0051】
また、決定部523は、O2濃度の平均値が第2範囲よりも低い又は第2範囲よりも高い場合、第2範囲に含まれるO2濃度のうち、O2濃度の平均値との差がもっとも大きいO2濃度に対応する空燃比を決定してもよい。例えば、決定部523は、エンジン10の負荷が高負荷であり、O2濃度の平均値が図2(c)に示す濃度P3よりも低い濃度である場合、空燃比を濃度P4に対応する空燃比λ4に決定する。決定部523がこのように動作することで、目標の空燃比に速やかに収束させることができる。
【0052】
<排気制御装置50における処理シーケンス>
図6は、排気制御装置50における処理シーケンスを示す図である。図6に示す処理シーケンスは、設定部522が、更新時間が経過するたびに第1範囲、第2範囲及び更新時間を再設定する動作と、決定部523が空燃比を決定する動作とを示す。なお、図6においては、現在時刻よりも前の時刻に更新時間が設定されているものとする。
【0053】
取得部521は、エンジン10の回転数とエンジン10の1行程あたりの燃料噴射量とを含む負荷情報を取得する(S11)。取得部521は、エンジン10の吸入空気量を取得する(S12)。取得部521は、O2センサ41が検出したO2濃度を取得する(S13)。決定部523は、現在時刻より所定時間前の時刻から現在時刻までに取得部521が取得したO2濃度の平均値を特定する(S14)。
【0054】
更新時間が経過した場合(S15のYES)、設定部522は、取得部521が取得した負荷情報に含まれるエンジン10の回転数が属する回転範囲と、当該負荷情報に含まれる燃料噴射量が属する噴射量範囲とを特定する。設定部522は、記憶部51を参照することにより、特定した回転範囲と噴射量範囲とに対応する第2範囲(S16)及び第1範囲(S17)を再設定する。設定部522は、記憶部51を参照することにより、特定した吸入空気量に対応する更新時間(S18)を再設定する。更新時間が経過していない場合(S15のNO)、設定部522は、第1範囲、第2範囲及び更新時間の再設定を行わない。すなわち、排気制御装置50は、S16からS18の処理を行わずにS19の処理に進む。
【0055】
決定部523は、特定したO2濃度の平均値が、設定部522が再設定した第2範囲に含まれるように、第1範囲に含まれる空燃比から混合気の空燃比を決定する(S19)。処理を終了する指示を受け付けていない場合(S20のNO)、排気制御装置50は、S11からS19の処理を繰り返す。処理を終了する指示を受け付けた場合(S20のYES)、排気制御装置50は、処理を終了する。
【0056】
<変形例>
以上の説明においては、排気制御システムSが触媒を1つ備える場合の動作を例示したが、これに限らない。排気制御システムSは、O2センサ41の下流に、触媒31と異なる他の触媒を収容した消音機(不図示)を備えてもよい。他の触媒は、例えば、三元触媒である。
【0057】
<排気制御装置50による効果>
以上説明したように、排気制御装置50は、取得部521が取得した負荷情報に基づいて、エンジン10内で発生した混合気の空燃比の第1範囲と、O2濃度の第2範囲とを設定し、取得部521が取得したエンジン10の吸入空気量に基づいて、第1範囲及び第2範囲の更新時間を設定する設定部522と、第1範囲に含まれる空燃比から、O2濃度が第2範囲に含まれるように混合気の空燃比を決定する決定部523と、を有する。そして、設定部522は、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過するたびに、更新時間が経過した時刻に取得部521が取得した負荷情報に基づいて、第1範囲と第2範囲とを再設定し、更新時間が経過した時刻に取得部521が取得した吸入空気量に基づいて、更新時間を再設定する。
【0058】
排気制御装置50がこのように構成されることで、排気に含まれるNOxの濃度とNH3の濃度とを所定の濃度(例えば、10ppm未満)にする空燃比を、エンジン10の負荷(例えば、エンジン10の回転数、燃料噴射量及び吸入空気量)に応じて決定することができる。その結果、排気制御装置50は、適切なNOx排出量及びNH3排出量になるように排気を制御することができる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0060】
10 エンジン
11 過給機
12 インジェクタ
13 エアクリーナ
14 吸気圧センサ
20 吸気路
21 排気路
30 浄化装置
31 触媒
40 空燃比センサ
41 O2センサ
50 排気制御装置
51 記憶部
52 制御部
521 取得部
522 設定部
523 決定部
【要約】      (修正有)
【課題】適切なNOx排出量及びアンモニア流出量になるように排気を制御する。
【解決手段】排気制御装置50は、エンジンの負荷に関する負荷情報と、エンジンの吸入空気量と、排気ガスが流れる排気路に設けられた触媒の下流の酸素濃度と、を取得する取得部521と、負荷情報に基づいて、エンジン内で発生した混合気の空燃比の第1範囲と、酸素濃度の第2範囲とを設定し、エンジンの吸入空気量に基づいて、第1範囲及び第2範囲の更新時間を設定する設定部522と、第1範囲に含まれる空燃比から、酸素濃度が第2範囲に含まれるように混合気の空燃比を決定する決定部523と、を有し、設定部522は、前に更新時間を設定した時刻から更新時間が経過するたびに、取得部が取得した負荷情報に基づいて、第1範囲及び第2範囲を再設定し、取得部521が取得した吸入空気量に基づいて、更新時間を再設定する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6