(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】エスカレータ
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B66B31/00 Z
(21)【出願番号】P 2023123449
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】水戸 陵人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
(72)【発明者】
【氏名】立岡 利茂弥
(72)【発明者】
【氏名】山田 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳人
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-114199(JP,A)
【文献】特開2022-095255(JP,A)
【文献】特開2022-055486(JP,A)
【文献】特開2009-034159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00 - 2/28
11/00 - 12/14
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環走行する複数の踏段と、
前記踏段で搬送される乗客に対し、横方向から紫外線を照射する紫外線照射装置と、
を有することを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
前記乗客の身長を測定する身長測定装置と、
前記紫外線照射装置の点灯制御を行う制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記身長測定装置によって測定された身長に基き、前記乗客の顔よりも下部に紫外線が照射されるよう、前記紫外線照射装置の点灯制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のエスカレータ。
【請求項3】
前記紫外線照射装置は、前記踏段の走行方向と平行に間隔を空けて設けられた複数の紫外線発光ユニットを含み、
前記制御装置は、前記複数の紫外線発光ユニット各々のオン・オフ制御を行い、
前記エスカレータは昇り用のエスカレータであって、さらに、
前記複数の踏段の内の一の踏段への乗客の乗り込みを検出する移乗検出手段を有し、
前記制御装置は、
前記身長測定装置が測定した身長に基き、前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段よりも前記走行方向の上側であって、前記乗客の顔よりも下側に位置する紫外線発光ユニットをオンすることを特徴とする請求項2に記載のエスカレータ。
【請求項4】
前記制御装置は、さらに、前記複数の紫外線発光ユニット各々の発光強度を制御し、
前記オンする紫外線発光ユニットの内、水平方向に前記一の踏段から遠い紫外線発光ユニット程、高い発光強度とすることを特徴とする請求項3に記載のエスカレータ。
【請求項5】
前記制御装置は、さらに、前記複数の紫外線発光ユニット各々の発光強度を制御し、
前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段と、前記一の踏段の後に検出した他の踏段とが近接している場合、前記制御装置は前記一の踏段に対応して発光する紫外線発光ユニットの発光強度を小さくすることを特徴とする請求項3に記載のエスカレータ。
【請求項6】
前記踏段の走行速度に比例す
る発光強度が定められており、
前記制御装置は、前記走行速度に比例する
前記発光強度で前記紫外線発光ユニットを発光させることを特徴とする請求項3に記載のエスカレータ。
【請求項7】
前記複数の紫外線発光ユニットは、前記複数の踏段の走行路に沿って配されており、
前記制御装置は、
前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段の進行に応じ、前記乗客の顔よりも下側となる紫外線発光ユニットをオンすることを特徴とする請求項3に記載のエスカレータ。
【請求項8】
前記複数の紫外線発光ユニットの各々は、各踏段の内部にそれぞれ設けられ、ライザーに開設された窓を通して、紫外線を出射する紫外線発光ユニットであって、
前記制御装置は、
前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段よりも上段側であって、前記乗客の顔よりも下側の踏段に設けられた紫外線発光ユニットをオンすることを特徴とする請求項3に記載のエスカレータ。
【請求項9】
前記複数の踏段上における乗客の混雑度を指標する混雑度指標を取得する混雑度指標取得手段を有し、
前記制御装置は、前記混雑度指標取得手段が取得する混雑度指標が所定の混雑度指標以上の高い間は、前記所定の混雑度指標未満の場合よりも、前記オンする紫外線発光ユニットの発光強度を小さくすることを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載のエスカレータ。
【請求項10】
前記複数の紫外線発光ユニットの各々に対応して設けられ、対応する紫外線発光ユニットのオン・オフと同期してオン・オフする可視光発光ユニットと、
前記複数の踏段上を歩行する乗客を検出する歩行検出手段と、
を有し、
前記歩行検出手段が歩行を検出すると、前記制御
装置は、前記可視光発光ユニットをオフすることを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載のエスカレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータに関し、特に、搬送される乗客の衣服等を除菌することができるエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デパートや大型ショッピングモールなどの商業施設には、輸送効率の良さから複数のエスカレータが適所に設置されており、利用客は、入口階のフロアからエスカレータを乗り継いで目的階のフロアへと向かう。
【0003】
ところで、近年広まった感染症の対策の一つとして、利用客の衣服を除菌し、もって、商業施設内等での感染拡大を抑制することが考えられる。それには、多くの利用客が通過するエスカレータにおいて集中的に除菌を行い、目的階での感染予防を行うことが効果的であると考えられる。
【0004】
エスカレータで搬送される乗客の衣服を除菌することができるエスカレータが特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のエスカレータ(以下、「従来のエスカレータ」と言う)は、エスカレータ本体上方の天井部53に設けられた複数の静電霧化装置11を有している(特許文献1の段落[0033]、
図3)。
【0005】
静電霧化装置11からは、脱臭・除菌、アレルゲン物質の不活性化に効果を発揮する帯電微粒子水Mが放出される(特許文献1の段落[0039]、
図2)。そして、特許文献1の段落[0039]に「さらには、エスカレータ50に乗っている人に対しても帯電微粒子水Mを放出することができ、エスカレータ50に乗っている人の髪、又は衣服に帯電微粒子水Mを付着させて脱臭・除菌、あるいはアレルゲン物質を不活性化することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のエスカレータは、乗客の上方(乗客に対し縦方向)から帯電微粒子水Mを放出するものであるため、頭部(人の髪)には付着しても、衣服に付着する量は少ないと思われる。さらに、天井から放出される帯電微粒子水Mは拡散しやすく、また、上記施設内の空調装置からの送風の影響を受け、乗客まで十分に到達しないおそれもある。その結果、静電霧化装置11による除菌効果が十分に発揮されないと考えられる。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑み、空調装置からの送風の影響を受けず、搬送される乗客の衣服等に付着した菌を効果的に除菌し得るエスカレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るエスカレータは、無端状に連結されて循環走行する複数の踏段と、前記踏段で搬送される乗客に対し、横方向から紫外線を照射する紫外線照射装置と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記乗客の身長を測定する身長測定装置と、前記紫外線照射装置の点灯制御を行う制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記身長測定装置によって測定された身長に基き、前記乗客の顔よりも下部に紫外線が照射されるよう、前記紫外線照射装置の点灯制御を行うことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記紫外線照射装置は、前記踏段の走行方向と平行に間隔を空けて設けられた複数の紫外線発光ユニットを含み、前記制御装置は、前記複数の紫外線発光ユニット各々のオン・オフ制御を行い、前記エスカレータは昇り用のエスカレータであって、さらに、前記複数の踏段の内の一の踏段への乗客の乗り込みを検出する移乗検出手段を有し、前記制御装置は、前記身長測定装置が測定した身長に基き、前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段よりも前記走行方向の上側であって、前記乗客の顔よりも下側に位置する紫外線発光ユニットをオンすることを特徴とする。
【0012】
また、以下(1)~(5)の特徴を有することとしてもよい。
【0013】
(1)前記制御装置は、さらに、前記複数の紫外線発光ユニット各々の発光強度を制御し、前記オンする紫外線発光ユニットの内、水平方向に前記一の踏段から遠い紫外線発光ユニット程、高い発光強度とすることを特徴とする。
【0014】
(2)前記制御装置は、さらに、前記複数の紫外線発光ユニット各々の発光強度を制御し、前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段と、前記一の踏段の後に検出した他の踏段とが近接している場合、前記制御装置は前記一の踏段に対応して発光する紫外線発光ユニットの発光強度を小さくすることを特徴とする。
【0015】
(3)前記踏段の走行速度に比例する発光強度が定められており、前記制御装置は、前記走行速度に比例する前記発光強度で前記紫外線発光ユニットを発光させることを特徴とする。
【0016】
(4)前記複数の紫外線発光ユニットは、前記複数の踏段の走行路に沿って配されており、前記制御装置は、前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段の進行に応じ、前記乗客の顔よりも下側となる紫外線発光ユニットをオンすることを特徴とする。
【0017】
(5)前記複数の紫外線発光ユニットの各々は、各踏段の内部にそれぞれ設けられ、ライザーに開設された窓を通して、紫外線を出射する紫外線発光ユニットであって、前記制御装置は、前記移乗検出手段が検出した前記一の踏段よりも上段側であって、前記乗客の顔よりも下側の踏段に設けられた紫外線発光ユニットをオンすることを特徴とする。
【0018】
上記(1)から(5)の場合に、さらに、以下の特徴を有することとしてもよい。
【0019】
前記複数の踏段上における乗客の混雑度を指標する混雑度指標を取得する混雑度指標取得手段を有し、前記制御装置は、前記混雑度指標取得手段が取得する混雑度指標が所定の混雑度指標以上の高い間は、前記所定の混雑度指標未満の場合よりも、前記オンする紫外線発光ユニットの発光強度を小さくすることを特徴とする。
【0020】
あるいは、前記複数の紫外線発光ユニットの各々に対応して設けられ、対応する紫外線発光ユニットのオン・オフと同期してオン・オフする可視光発光ユニットと、前記複数の踏段上を歩行する乗客を検出する歩行検出手段と、を有し、前記歩行検出手段が歩行を検出すると、前記制御装置は、前記可視光発光ユニットをオフすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記の構成を有する本発明に係るエスカレータによれば、搬送される乗客に対し、横方向から紫外線が照射されるため、当該乗客の衣服等に付着した菌が効果的に除菌される。また、紫外線による除菌のため、空調装置からの送風の影響を受けることもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係るエスカレータの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】上記エスカレータを
図1とは異なる向きから見た斜視図である。
【
図3】(a)は、踏段の駆動機構が現れるよう表したエスカレータの側面図であり、(b)は、踏段の拡大図である。
【
図4】(a)は、
図3(a)の一部拡大図であり、(b)は上記エスカレータの平面図の一部である。
【
図5】(a)は、上記エスカレータの正面図であり、(b)は、階下の乗降口およびその近傍の同平面図である
【
図6】実施形態1における制御装置のブロック図である。
【
図7】実施形態2に係るエスカレータの、(a)は階下側の乗降口およびその近傍における踏段の駆動機構が現れるように表した側面図であり、(b)は踏段の拡大側面図であり、(c)は基準となる踏段の拡大側面図である。
【
図8】実施形態2に係るエスカレータの概略構成を示す斜視図である。
【
図9】(a)は、実施形態2に係るエスカレータを、その通路の幅方向中央で切断した断面図の一部であり、(b)は同エスカレータの平面図の一部である。
【
図10】実施形態2における制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るエスカレータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
〔全体構成〕
図1、
図2は、実施形態1に係るエスカレータ10をそれぞれ異なる向きから見た概略構成を示す斜視図である。なお、
図1では後述する欄干16の一部を、
図2では後述する欄干14の一部を、それぞれ切除して図示している。
図3(a)は、後述する踏段12の駆動機構が現れるよう表したエスカレータ10の側面図であり、
図3(b)は、踏段12の拡大図である。なお、
図3(a)において、エスカレータ10上部の踏段12の図示、および、後述する第1身長測定装置76、第2身長測定装置78の図示は省略している。
【0024】
エスカレータ10は、環状に連結されて循環走行する無端搬送体である複数の踏段12を有する。エスカレータ10は、複数の踏段12が階段状を成して走行する区間を含み、乗客を乗口側から降口側へと搬送する。踏段12の走行路および上下の乗降口を含む乗客の通路PWの両側には、欄干14、欄干16が設置されている。
【0025】
欄干14,16各々の下端部側方には、上記無端搬送体(連結された複数の踏段12)と僅かな隙間を保ち、上記走行路に沿って配された、ステンレス鋼板等のパネルからなるスカートガード18,20がそれぞれ設けられている。また、欄干14,16各々の下端部とスカートガード18,20との間には、ステンレス鋼板等のパネルからなる内デッキ22,24がそれぞれ設けられている。
【0026】
エスカレータ10は、例えば、建築物内の階下のフロアDSと階上のフロアUSとの間に架け渡されて設置されている。エスカレータ10は、踏段12の走行の向きが切り替えられて、上り用あるいは下り用として用いられ、踏段12に乗った乗客が、階下のフロアDSから階上のフロアUS、あるいは階上のフロアUSから階下のフロアDSへと搬送される。すなわち、階下DS側が乗り口となる場合も降り口となる場合もある(以下、両者を合わせて「乗降口」と言う)。
【0027】
エスカレータ10の乗降口には、くし板26およびくし板26に隣接するフロアプレート28が設けられている。エスカレータ10が昇り用の場合、循環走行する複数の踏段12は、くし板26から次々と水平方向に繰り出される。エスカレータ10は、乗り口に進入した乗客が、くし板26から繰り出され、水平に走行する踏段12に乗り移る(移乗する)ことにより利用される。上記の通り、エスカレータ10は、上り用としても下り用としても用いられるのであるが、以下、上り用として用いられる場合を例に説明する。
【0028】
[駆動機構]
次に、
図3を参照しながら、踏段12の駆動機構について説明する。エスカレータ10は、上部機械室30に設置された駆動装置32を有する。
【0029】
駆動装置32は正転および逆転運転が可能な電動機34を有し、電動機34の動力は、減速機を介して出力軸(いずれも不図示)に伝達される。そして、当該出力軸に軸支された駆動スプロケット36が回転駆動される。駆動装置32は、また、駆動スプロケット36よりも大きなピッチ円を有する従動スプロケット38を有し、従動スプロケット38はシャフト40に軸支されて、回転自在に設けられている。駆動スプロケット36と従動スプロケット38には、無端チェーンであるローラチェーン42が巻掛けられている。シャフト40には、同軸上に主踏段スプロケット44が固定されている。
【0030】
一方、下部機械室46には、シャフト48に軸支された従踏段スプロケット50が設けられている。主踏段スプロケット44と従踏段スプロケット50間には、踏段チェーン52が巻き掛けられている。踏段チェーン52には、環状に連結された無端搬送体である複数の踏段12が取り付けられている。踏段チェーン52は、主踏段スプロケット44と従踏段スプロケット50の間においては、後述する第1ガイドレール(不図示)によって案内されている。
【0031】
上記の構成からなるエスカレータ10において、電動機34が起動されると、その回転動力が、前記減速機(不図示)、前記出力軸(不図示)を介して伝達され、駆動スプロケット36が回転駆動される。駆動スプロケット36が回転されると、駆動スプロケット36と従動スプロケット38に巻掛けられているローラチェーン42が周回走行して、駆動スプロケット36からの回転動力が従動スプロケット38に伝達される。
【0032】
従動スプロケット38が回転されると、従動スプロケット38と同軸上(シャフト40上)に設けられた主踏段スプロケット44が回転される。これにより、主踏段スプロケット44と従踏段スプロケット50に巻掛けられた踏段チェーン52が前記第1ガイドレール(不図示)に案内されて周回走行し、これに伴って、環状に連結された複数の踏段12が踏段チェーン52と同様、
図3(a)に示すような経路をとって循環走行される。すなわち、踏段12は、乗客を搬送する領域において、水平方向に走行した後、直線的に斜行し、再び水平方向に走行する。
【0033】
踏段12は、
図3(b)に示すように、主枠となるフレーム54に、長方形をした踏板56とライザー58を取り付けた構成を有している。フレーム54には、また、ステップ軸60とステップ軸62が軸支されている。
【0034】
ステップ軸60は、踏段チェーン52に取り付けられている。ステップ軸60の両端部には、駆動ローラ64がそれぞれ回転自在に設けられていて(図には、一方の駆動ローラ64のみが現れている)、一対の駆動ローラ64の各々が、それぞれに対応して敷設された第1ガイドレール(不図示)に案内される。
【0035】
ステップ軸62は、ステップ軸60よりも短く、その両端部には従動ローラ66がそれぞれ回転自在に設けられている(図には、一方の従動ローラ66のみが現れている)。一対の従動ローラ66の各々は、それぞれに対応して敷設された第2ガイドレール(不図示)に案内される。
【0036】
[紫外線照射装置]
エスカレータ10は、第1紫外線照射装置68と第2紫外線照射装置72を有する。第1紫外線照射装置68は、紫外線発光ユニットである紫外線LEDユニット70を複数台含む。複数の紫外線LEDユニット70は、踏段12の走行方向と平行に間隔を空けて設けられている。具体的には、スカートガード18の内側(スカートガード18を挟んで踏段12と反対側)に、紫外線LEDユニット70の各々が設けられている。
【0037】
スカートガード18には、紫外線LEDユニット70の各々に対応させ、紫外線LEDユニット70から投光される紫外線が通過できる窓が開設されている。便宜上、
図1、
図4(a)には、前記窓の位置に紫外線LEDユニット70を図示している。
図4(a)は、
図3(a)の一部拡大図である。
図4(b)に、エスカレータ10の平面図の一部を示す。
【0038】
図4に示すように、紫外線UVは、階下DS側に向け、水平方向に投光される。平面視における投光の向きは、
図4(b)に示すように、例えば、紫外線UVの光軸UVxが、階下DS側、踏段12の数段分(本例では、7段分)の距離において、踏段12の長さ方向の中心線Cと交差する向きである。上記の構成により、第1紫外線照射装置68は、踏段12の進行方向左側に乗車した乗客Pに対し、横方向から紫外線UVを照射することができる。ここで、「横方向」は「縦方向」と対峙する意味内容であり、乗客に対して「右方向」、「左方向」のみを意味するものではない。紫外線LEDユニット70の設置間隔は、例えば、踏段12の間隔と同じである。
【0039】
第2紫外線照射装置72は、紫外線LEDユニット74を複数台含む。第2紫外線照射装置72は、第1紫外線照射装置68の紫外線LEDユニット70がスカートガード18の内側に設けられているのに対し、紫外線LEDユニット74がもう一方のスカートガード20の内側に設けられている以外は、第1紫外線照射装置68と同じ構成である。すなわち、第2紫外線照射装置72は、平面視で、第1紫外線照射装置68と前記中心線Cに関し対称的に配置されており、主として、踏段12の進行方向右側に乗車した乗客に紫外線を照射する点を除き、基本的に第1紫外線照射装置68と同じ構成である。よって、第2紫外線照射装置72についての詳細な説明は省略する。なお、第2紫外線照射装置72についても、スカートガード20に開設した窓の位置に紫外線LEDユニット74を図示している(
図2)。
【0040】
[身長測定装置]
エスカレータ10は、乗客の身長を非接触で測定する第1身長測定装置76と第2身長測定装置78を有する。
図5(a)にエスカレータ10の正面図を、
図5(b)に階下DSの乗降口およびその近傍のエスカレータ10の平面図をそれぞれ示す。
【0041】
第1身長測定装置76は、公知の超音波式身長計である。階下DSには、支柱76Aが立設されており、支柱76Aの上端部には、筒状のアーム76Bが取り付けられている。第1身長測定装置76は、アーム76B先端部の中空部に内蔵された超音波センサ(不図示)を有する。前記超音波センサは、くし板26から踏段12の一台分が完全に繰り出されたときにおける当該踏段12の左側に乗車する乗客の立ち位置の直上に設置されている。
【0042】
第1身長測定装置76は、前記超音波センサが、アーム76Bに開設された窓(不図示)から、直下に向かって超音波を出射し、その反射音を捉えて、反射物までの距離を測定する。第1身長測定装置76は、初期設定として、前記超音波センサから踏板56までの距離を測定し、測定結果を「基準距離」として記憶する。その後、リアルタイムで距離の計測を継続する。前記超音波センサの直下に乗客が入ると、すなわち、踏段12の左側に乗客が乗車すると距離が変化するので、第1身長測定装置76は、「頭頂部までの距離」として記憶する。そして、演算式:「身長」=「基準距離」―「頭頂部までの距離」で乗客の身長を算出し、算出結果(乗客の身長)を後述する制御装置80(のCPU82)に出力する。
【0043】
以上のようにして、第1身長測定装置76は、踏段12の左側に乗車した乗客(すなわち、踏段12で搬送される乗客)の身長を測定する。第1身長測定装置76は、測定距離が変化する度に、すなわち、くし板26から繰り出される踏段12に乗客が乗る度に、身長を出力するため、第1身長測定装置76は、複数の踏段12の内の一の踏段12への乗客の乗り込みを検出する移乗検出装置としても機能する。
【0044】
第2身長測定装置78は、踏段12の右側に乗車した乗客(すなわち、踏段12で搬送される乗客)の身長を測定する。前記中心線Cに関し対称的に、支柱78Aとアーム78Bが設置されている。第2身長測定装置78は、その超音波センサが筒状のアーム78Bに収納されている以外は、第1身長測定装置76と同じ構成である。よって、第2身長測定装置78の詳細な説明については省略する。
【0045】
[制御装置]
図3に示すように、上部機械室30には、制御装置80が設置されている。制御装置80のブロック図を
図6に示す。制御装置80は、CPU82を中心として、これにROM84、RAM86、運転制御部88、負荷検出部90、第1身長測定装置76、および第2身長測定装置78が接続された構成を有している。また、CPU82には、複数の第1紫外線LEDユニット70の各々および複数の第2紫外線LEDユニット74の各々を発光制御するための制御線が接続されている。
【0046】
制御装置80(のCPU82)は、複数の第1紫外線LEDユニット70の各々、複数の第2紫外線LEDユニット74の各々を個別にオン・オフする点灯制御、および点灯した第1紫外線LEDユニット70、第2紫外線LEDユニット74の発光強度の制御を行う。
【0047】
ここで、複数個(n個とする:nは正の整数)の第1紫外線LEDユニット70および第2紫外線LEDユニット74は、それぞれ、設置位置によって区別されている。第1紫外線LEDユニット70の各々を設置位置により区別する場合は、下方に設置されているものから順に、L(1)、L(2)、…、L(x)、…、L(n)とする。第2紫外線LEDユニット74の各々も同様に、下方に設置されているものから順に、R(1)、R(2)、…、R(x)、…、R(n)とする。
【0048】
運転制御部88は、CPU82の指示にしたがい、電動機34の回転速度を制御することにより、踏段12の走行速度制御、すなわち運転速度制御を行う。ROM84には、例えば、第1速度、第2速度、第3速度の3段階の走行速度が記憶されている。第1速度、第2速度、第3速度はこの順で早い速度になっている(第1速度>第2速度>第3速度)。
エスカレータ10は速度を手動で切り替えるための切換スイッチ(不図示)を有しており、CPU82は、前記切換スイッチの状態を検出して、ROM84内の対応する速度で運転速度制御を行う。
【0049】
負荷検出部90は、電動機34に流れる駆動電流の大きさを検出することにより電動機34に掛かる負荷の大きさを検出する。検出結果は、複数の踏段12上における乗客の混雑度の指標として利用する。
【0050】
踏段12を一定の走行速度で走行するためには、負荷の大小、すなわち、複数の踏段12上の乗客の人数に応じて電動機34へ電流(駆動電流)を流す必要があるところ、駆動電流の大きさを検出すれば、電動機34に掛かる負荷、ひいては、乗客の人数の多少(すなわち、混雑度)を知ることができるからである。
【0051】
電動機34に流れる駆動電流の大きさを「In」とし、「In」を複数の踏段12上における乗客の混雑度を指標する「混雑度指標」とする。そして、例えば、複数の踏段12の搬送領域の全長に亘って、平均体重の大人が10人、踏段12に乗って搬送されている場合に電動機34に流れる駆動電流の大きさをIs1とする。駆動電流InがIs1以上であれば(In≧Is1)、複数の踏段12上で、少なくとも10人の乗客が搬送されていると推定できる。一方、駆動電流InがIs1未満であれば、複数の踏段12上には、10人に満たない乗客しか居ないものと推定される。本例では、「Is1」を複数の踏段12上の混雑度を判定するための閾値(所定の混雑度指標)として用いる。電動機34に流れる駆動電流の大きさIn(電動機34に掛かる負荷の大きさ)の具体的な利用については後述する。
【0052】
ROM84は、CPU82が実行するプログラムを格納している。RAM86は、CPU82が前記プログラムを実行する際のワークエリアとなる。
【0053】
続いて、制御装置80(のCPU82)で実行される、第1紫外線LEDユニット70、第2紫外線LEDユニット74の点灯制御について説明する。第1紫外線LEDユニット70と第2紫外線LEDユニット74は、乗客に紫外線を照射して、衣服等に付着している細菌を除菌するものであるが、第1紫外線LEDユニット70が、主として左側に乗車した乗客を対象とするのに対し、第2紫外線LEDユニット74が、主として右側に乗車した乗客を対象とする点以外、両者は基本的に同様の点灯制御になる。
【0054】
よって、以下、第1紫外線LEDユニット70の点灯制御を代表に説明し、第2紫外線LEDユニット74についての説明は省略することとする。
【0055】
〔基本制御〕
(a)第1身長測定装置76で乗客が検出され、その身長が測定されると、測定結果に基き、CPU82は、複数の第1紫外線LEDユニット70の内、同時に点灯させる第1紫外線LEDユニット70を決定する。具体的には、測定結果の身長から、当該身長に対する平均的な頭部の長さ(上下方向の長さ)を差し引いた「照射高さ」を算出する。なお、身長とこれに対する平均的な頭部の長さの関係は、予め、ROM84に格納されている。
【0056】
CPU82は、くし板26から繰り出された直後の踏段12、すなわち、第1身長測定装置76で乗客の乗り込みを検出した時の一の踏段12(以下、「一の乗車踏段12」と言う)から、前記照射高さ範囲に位置する全ての第1紫外線LEDユニット70を点灯させる。これにより、乗客の頭部よりも下方の範囲に紫外線が照射されることとなる。換言すれば、乗客の顔よりも下部に紫外線が照射されることとなる。
【0057】
(b)搬送される乗客の上記範囲に紫外線を照射し続けるため、CPU82は、踏段12の走行速度(第1速度、第2速度、および第3速度のいずれか)に応じて、点灯させる第1紫外線LEDユニット70を順次切り替える。すなわち、走行速度に応じ、一の乗車踏段12よりも上で、乗客の顔よりも下の高さ範囲の第1紫外線LEDユニット70が点灯されるように、複数の第1紫外線LEDユニット70のオン・オフ制御を行う。これにより、降り口に差し掛かる区間以外、乗客の顔よりも下部に紫外線が照射し続けられ、効果的に衣服等の除菌がなされる。
【0058】
上記基本制御に、以下のような制御を付加しても構わない。
〔乗客からの距離に応じた発光制御〕
上記基本制御では、乗客から遠い第1紫外線LEDユニット70からの紫外線程、乗客に届く紫外線が弱くなる。すなわち、衣服等の上部部分の除菌効果が下部部分に比較して低くなる。そこで、制御装置80(のCPU82)は、同時に点灯する(オンする)第1紫外線LEDユニット70の内、水平方向に一の乗車踏段12から遠い第1紫外線LEDユニット70程、高い発光強度となるよう点灯制御する。このようにすることで、上下方向に均一に、乗客の衣服等を除菌することができる。
【0059】
〔走行速度に応じた発光制御〕
上記基本制御によれば、乗車中に乗客が受ける紫外線照射量は、第1紫外線LEDユニット70の発光強度×照射時間となる。第1速度、第2速度、および第3速度に関わらず、走行距離(乗客の搬送距離)は同一なので、前記照射時間は踏段12の走行速度が遅い程長くなり、走行速度が速い程短くなる。そこで、走行速度に関わらず、上記紫外線照射量が一定になるように発光制御しても構わない。具体的には、走行速度に比例する発光強度で、第1紫外線LEDユニット70を発光制御する。なお、第1速度、第2速度、および第3速度に対応する発光強度は、予め、ROM84に格納されており、CPU82は、上記切換スイッチの状態を検出して、検出した設定速度に対応する発光強度で、第1紫外線LEDユニット70を発光制御させる。
【0060】
〔異なる踏段に前後して乗車した場合の発光制御〕
第1身長測定装置76が、一の乗客の踏段12への乗り込みを検出してから、短時間に他の乗客の乗り込みを検出する場合がある。すなわち、前記一の乗客の乗車した踏段12と他の乗客の乗車した踏段12の間隔が、例えば、1~3段程度しか空いていない場合がある。
【0061】
なお、踏段12の段数換算による、前記一の乗客と前記他の乗客の間隔は、第1身長測定装置76が、前記一の乗客の踏段12への乗り込みを検出した時から前記他の乗客の踏段12への乗り込みを検出した時までの時間を計測し、計測時間を踏段12の幅で除することにより把握することができる。前記時間の計測には、制御装置80(CPU82)の内部タイマ(不図示)が用いられる。また、踏段12の幅は、予め、ROM84に格納されている。
【0062】
上記の場合、前記一の乗客のために点灯させる第1紫外線LEDユニット70の内、比較的上方に位置するものからの紫外線が、前記他の乗客の顔に当たる可能性がある。そこで、制御装置80は、第1身長測定装置76が検出した一の乗客が乗り込んだ一の踏段と、前記一の乗客の検出の後に検出した他の乗客が乗り込んだ他の踏段とが近接している場合、制御装置80(のCPU82)は、前記一の踏段に対応して発光する第1紫外線LEDユニット70の発光強度を小さくする制御を行うこととする。
【0063】
なお、上記実施形態では、第1紫外線LEDユニット70をスカートガード18の内側に、第2紫外線LEDユニット74をスカートガード20の内側に、それぞれ設けたが、設ける位置はこれに限らない。例えば、第1紫外線LEDユニット70を欄干14に、第2紫外線LEDユニット74を欄干16に、それぞれ、設けても構わない。要は、踏段12の走行方向と平行に間隔を空けて設ければ良いのである。
【0064】
<実施形態2>
実施形態1に係るエスカレータ10では、複数の第1紫外線LEDユニット70をスカートガード18の内側に、複数の第2紫外線LEDユニット74をスカートガード20の内側に、それぞれ設けたが、実施形態2に係るエスカレータ110では、踏段12の走行方向と平行に間隔を空けて設ける紫外線LEDユニットを踏段112内部に設けることとした。
【0065】
エスカレータ110は、エスカレータ10とは、主として、紫外線LEDユニットを設ける位置とその点灯制御が異なる以外は、エスカレータ10と同様の構成である。よって、エスカレータ110の構成要素には百番代の符号を付し、下二桁には、エスカレータ10において対応する構成要素の符号を付して、その説明については適宜言及するに止め、以下異なる部分を中心に説明する。
【0066】
図7(a)に、階下側の乗降口およびその近傍における踏段の駆動機構が現れるように表した側面図を、
図7(b)に、踏段の拡大側面図を、
図7(c)に、基準となる踏段の拡大側面図をそれぞれ示す。
図8は、エスカレータ110の概略構成を示す斜視図である。
図9(a)に、エスカレータ110を、その通路の幅方向中央で切断した断面図の一部を、
図9(b)に、エスカレータ110の平面図の一部をそれぞれ示す。なお、
図7~
図9では、第1身長測定装置176、第2身長測定装置178の図示は省略している。また、
図7(a)では、後述する第1紫外線LEDユニット170、第2紫外線LEDユニット174の図示は省略している。
【0067】
各踏段112の内部には、フレーム154に取り付けられて、第1紫外線LEDユニット170、第2紫外線LEDユニット174がそれぞれ設けられている(
図7(b)、
図7(c)では、手前の第2紫外線LEDユニット174のみが現れている。)。第1紫外線LEDユニット170、第2紫外線LEDユニット174は、水平方向、階下DS側に向けて紫外線を射出する。
【0068】
ライザー158の各々には、第1紫外線LEDユニット170、第2紫外線LEDユニット174から出射された紫外線を通過させるための窓158A、158Bがそれぞれ開設されている。
図8において、正面向かって、左側の窓158Aが第1紫外線LEDユニット170の紫外線を通過させるための窓であり、右側の窓158Bが第2紫外線LEDユニット174の紫外線を通過させるための窓である。
【0069】
第1紫外線LEDユニット170、第2紫外線LEDユニット174は、複数のLED素子(不図示)が水平方向に列状に配されてなるものであり、
図9(b)に示すように、平面視で、略帯状を成した配光特性を有する。
【0070】
第1紫外線LEDユニット170は、主として、踏段112の左側に乗車した乗客に横方向から紫外線を照射し、第2紫外線LEDユニット174は、主として、踏段112の右側に乗車した乗客に横方向から紫外線を照射する。「横方向」の意味内容は、上述した実施形態1と同様である。
【0071】
第1紫外線LEDユニット170と第2紫外線LEDユニット174への給電は、例えば以下の公知技術によりなされる。(i)踏段112毎に設けた蓄電池から給電する。蓄電池への充電は、例えば、エスカレータ110のメンテナンスの際等に定期的に行う。(ii)摺動接点方式により給電を行う。すなわち、複数の踏段112の周回軌道に沿って、帯状をした固定接点を2条設け、一方を正固定接点、他方を負固定接点とする。踏段112のフレーム154に、前記正固定接点に対応して正可動接点を設け、前記負固定接点に対応して負可動接点を設ける。そして、外部電源から、前記二つの固定接点とこれに摺接する前記二つの可動接点を介し、当該可動接点と電線でそれぞれ接続された第1紫外線LEDユニット170と第2紫外線LEDユニット174へ給電を行う。
【0072】
第1紫外線LEDユニット170と第2紫外線LEDユニット174は、無線通信で、制御装置180(のCPU182)により、リモコン制御される(
図10)。制御内容は、実施形態1と同様、オン・オフ制御と発光強度の制御である。複数の踏段112各々と、それぞれに内蔵されている第1紫外線LEDユニット170と第2紫外線LEDユニット174とは、対応付けられているのであるが、このことについては後述する。
【0073】
図7に示すように、踏段112各々のフレーム154の側面には、反射板191が貼付されている。循環走行する踏段112の側方には、反射板191を検出する反射形の光電センサ192が設けられている。光電センサ192は、循環走行する踏段112が、くし板126から繰り出され、乗客がフロアプレート128から移乗する位置に在ることを検出する位置に設置されている。
【0074】
複数の踏段112の内の一台(以下、「基準踏段112」と言う)のフレーム154の側面には、もう1枚の反射板193(以下、「基準反射板193」と言う)が貼付されている。また、基準反射板193を検出する反射形の光電センサ194が設けられている。光電センサ194は、基準踏段112に貼着された反射板191を光電センサ192が検出するのと同時に、基準反射板193を検出する位置に設けられている。すなわち、基準踏段112において、反射板191を光電センサ192が検出するのと、基準反射板193を光電センサ194が検出するのは同時である。
【0075】
踏段112各々に内蔵されている第1紫外線LEDユニット170と第2紫外線LEDユニット174とは、踏段112毎に識別される。第1紫外線LEDユニット170は、環状に連結されている踏段112において、基準踏段112に内蔵されているものから順に、右側面視(
図7(a)に示す向き)において、反時計回りに、L(1)、L(2)、…、L(x)、…、L(n)とする(
図10)。
【0076】
第2紫外線LEDユニット174の各々も同様に、基準踏段112に内蔵されているものから順に、右側面視において、反時計回りに、R(1)、R(2)、…、R(x)、…、R(n)とする(
図10)。
【0077】
続いて、制御装置180(のCPU182)で実行される、第1紫外線LEDユニット170、第2紫外線LEDユニット174の点灯制御について説明する。第1紫外線LEDユニット170と第2紫外線LEDユニット174は、乗客に紫外線を照射して、衣服等に付着している細菌を除菌するものであるが、第1紫外線LEDユニット170が、主として左側に乗車した乗客を対象とするのに対し、第2紫外線LEDユニット174が、主として右側に乗車した乗客を対象とする点以外、両者は基本的に同様に点灯制御になる。
【0078】
よって、以下、第1紫外線LEDユニット170の点灯制御を代表に説明し、第2紫外線LEDユニット174についての説明は省略することとする。
図10に、実施形態2における制御装置180のブロック図を示す。
【0079】
〔基本制御〕
(a)エスカレータ110の運転中、光電センサ194が基準反射板193を検出すると、CPU182は内部カウンタ(不図示)を「1」にセットする。その後、CPU182は、光電センサ192が反射板191を検出する度に、前記内部カウンタのカウント値を一つずつインクリメントする。これにより、CPU182は、くし板126から繰り出された直後の踏段112に内蔵されている第1紫外線LEDユニット170が、L(1)、L(2)、…、L(x)、…、L(n)の内のいずれであるのかを認識できる。
【0080】
(b)第1身長測定装置176で乗客が検出され、その身長が測定されると、測定結果に基き、CPU182は、複数の第1紫外線LEDユニット170の内、同時に点灯させる第1紫外線LEDユニット170を決定する。具体的には、測定結果の身長から、当該身長に対する平均的な頭部の長さ(上下方向の長さ)を差し引いた、「照射高さ」を算出する。なお、身長とこれに対する平均的な頭部の長さの関係は、予め、ROM184に格納されている。
【0081】
CPU182は、くし板126から繰り出された直後の踏段112、すなわち、第1身長測定装置176で乗客の乗り込みを検出した時の一の踏段112(以下、「一の乗車踏段112」と言う)に内蔵されている第1紫外線LEDユニット170を、前記内部カウンタのカウント値から特定する。例えば、カウント値が「5」であれば、一の乗車踏段112に内蔵されている第1紫外線LEDユニット170は「L(5)」で識別される。
【0082】
CPU182は、前記照射高さ、および踏段112の蹴上げの高さに基き、一の乗車踏段112に乗車した乗客の頭部よりも下方の範囲に紫外線を照射する第1紫外線LEDユニット170を決定する。例えば、上記照射高さに対応する踏段112の段数が6段であり、一の乗車踏段112に内蔵されている第1紫外線LEDユニット170がL(x)であったとすると、
図9(a)に示すように、CPU182は、L(x-1)、L(x-2)、…、L(x―6)を点灯すべき第1紫外線LEDユニット170に決定し、これらの第1紫外線LEDユニットを点灯させる。
【0083】
これにより、乗客の頭部よりも下方の範囲に紫外線が照射されることとなる。換言すれば、乗客の顔よりも下部に紫外線が照射されることとなる。点灯は、階上US側において、踏段112が水平走行に移行するまでなされ、水平走行に移行する時点で消灯される。
【0084】
上記基本制御に、以下のような制御を付加しても構わない。
〔乗客からの距離に応じた発光制御〕
上記基本制御では、乗客から遠い第1紫外線LEDユニット170からの紫外線程、乗客に届く紫外線が弱くなる。すなわち、衣服等の上部部分の除菌効果が下部部分に比較して低くなる。そこで、制御装置180(のCPU182)は、同時に点灯する(オンする)第1紫外線LEDユニット170の内、水平方向に一の乗車踏段112から遠い第1紫外線LEDユニット170程、高い発光強度となるよう点灯制御する。
【0085】
例えば、
図9(a)の図示例で説明すると、L(x-6)>L(x-5)>、…、L(x-2)>L(x-1)の大小関係となるよう、第1紫外線LEDユニット170各々の発光強度を制御する。このようにすることで、上下方向に均一に、乗客の衣服等を除菌することができる。
【0086】
〔異なる踏段に前後して乗車した場合の発光制御〕
第1身長測定装置176が、一の乗客の踏段112への乗り込みを検出してから、短時間に他の乗客の乗り込みを検出する場合がある。すなわち、前記一の乗客の乗車した踏段112と他の乗客の乗車した踏段112の間隔が、例えば、1~3段程度しか空いていない場合がある。
【0087】
なお、踏段112の段数換算による、前記一の乗客と前記他の乗客の間隔は、各々の乗客が乗り込んだ際の上記カウンタ(不図示)のカウント値から特定できる。
【0088】
上記の場合、前記一の乗客のために点灯させる第1紫外線LEDユニット170の内、比較的上方に位置するものからの紫外線が、前記他の乗客の顔に当たる可能性がある。そこで、制御装置180は、第1身長測定装置176が検出した一の乗客が乗り込んだ一の踏段と、前記一の乗客の検出の後に検出した他の乗客が乗り込んだ他の踏段とが近接している場合、制御装置180(のCPU182)は、前記一の踏段に対応して発光する第1紫外線LEDユニット170の発光強度を小さくする制御を行うこととする。
【0089】
〔走行速度に応じた発光制御〕
実施形態1と同様、踏段112の走行速度に関わらず、1回の乗車あたりに乗客の衣服等が受ける紫外線照射量が一定となるよう、第1紫外線LEDユニット170の発光制御を行ってもよい。すなわち、走行速度に比例する発光強度で、第1紫外線LEDユニット170を発光制御するのである。
【0090】
以上、本発明に係るエスカレータを実施形態1、実施形態2に基いて説明してきたが、さらに、以下の変形例のようにしても構わない。なお、以下の変形例は、実施形態2も実施形態1と同様に適用可能なため、実施形態1について説明し、実施形態2についての説明は省略することとする。
【0091】
(変形例1)
駆動電流In(すなわち、電動機30に掛かる負荷の大きさ)が、閾値Is1(所定の大きさ)以上の場合、上記した通り、すくなくとも10人の乗客が複数の踏段12で搬送されていると推定され、複数の踏段12上は比較的混んでいると考えられる。
【0092】
複数の踏段12上が混んでいる場合、搬送される乗客と乗客の間隔は比較的短い。この場合、下段側に乗車している乗客の顔に上段側の乗客のために点灯している第1紫外線LEDユニット70からの紫外線が照射される可能性がある。
【0093】
そこで、混雑度指標である「In」が所定の混雑度指標である「Is1」以上といった、混雑度の高い間は、「Is1」未満の場合よりも、オンする第1紫外線LEDユニットの発光強度を小さくすることとしても構わない。
【0094】
(変形例2)
エスカレータは、歩かず立ち止まって利用する「歩行禁止」が現在のルールとされている。それにも関わらず、歩行をする乗客は後を絶たない。踏段12を歩いてしまうと、当該乗客(の衣服等)が紫外線を受ける時間が極端に短くなってしまい、除菌効果が損なわれる。
【0095】
そこで、踏段12上を乗客が歩行していることを検知する歩行検知手段(不図示)を設け、当該歩行検知手段により踏段12上を乗客が歩行していることが認められると、除菌がなされないことを当該乗客に認識させ、次回のエスカレータの利用からの歩行を止まらせるようにすることとする。
【0096】
除菌がなされないこと乗客に認識させるために、第1紫外線LEDユニット70毎に可視光発光ユニットである可視光LEDユニット(不図示)を設ける。可視光には、例えば、青色が採用される。すなわち、青色LEDユニットを設けることが考えられる。青色LEDユニットは、対応する第1紫外線LEDユニット70と同期してオン・オフされる。
【0097】
そして、複数の踏段12上を歩行する乗客が上記歩行検知手段によって検出されると、当該乗客に対応してオンされた第1紫外線LEDユニット70、および対応する青色LEDユニットをオフする。これにより、当該乗客は、エスカレータ10に乗り込んだときに点灯された青色LEDユニットが、踏段12を歩行すると消灯されることから、除菌がされないことを認識し、次回のエスカレータの利用からの歩行を抑制することが期待される。
【0098】
コンベア上を乗客が歩行していることを検知する歩行検知手段は、例えば、特開2020-097457号公報や特開2015-113211号公報等に記載されている公知の技術を用いることができる。
【0099】
以上、本発明に係るエスカレータを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記の形態に限らないことは勿論であり、以下のような他の形態としても構わない。なお、当該他の形態は、実施形態1にも実施形態2にも適用可能なため、以下、基本的に実施形態1を代表に説明し、実施形態2については、適宜言及するに止める。
【0100】
(1)上記実施形態では、第1身長測定装置76、第2身長測定装置78に超音波式を用いたが、これに限らず、例えば、レーザ測距式を用いても構わない。
【0101】
(2)上記実施形態では、踏段12上の混雑度を指標するものとして、電動機34への通電電流(電動機34に掛かる負荷)の大きさを用いたが、当該指標は、これに限らない。例えば、以下のようにしても良い。
【0102】
(a)複数の踏段12で搬送される乗客をカメラで撮影する。撮影により得られた画像に公知の画像処理を施して、一時に撮影された画像における乗客の人数を抽出し、これを混雑度の指標とする。抽出の結果、10人以上であれば、混んでいる(混雑度は高い)と判断し、10人未満であれば、空いている(混雑度は低い)と判断するのである。撮影は、例えば、1秒おきに行い、その都度、上記乗客の人数を抽出し、その結果を制御装置80(のCPU82)の発光強度制御に反映させる。
【0103】
電動機34に掛かる負荷の大きさを混雑度の指標とした上記実施形態の場合、当該指標には、多少、荷物の重量も反映される場合があるところ、上記撮影による場合は、乗客の人数のみをもって混雑度の指標とすることができるため、より精度の高い混雑度指標を取得することが可能となる。また、撮影による場合は、乗客の人数のみならず、乗客間の距離等も考慮した混雑度指標としても構わない。
【0104】
(3)上記実施形態では、踏段の左側に乗車した乗客と右側に乗車した乗客とに個別に紫外線照射装置(実施形態1では、第1紫外線LEDユニット70と第2紫外線LEDユニット74、実施形態2では、第1紫外線LEDユニット170と第2紫外線LEDユニット174)をもうけたが、これに限らず、第1紫外線LEDユニットと第2紫外線LEDユニットのいずれか一方のみとしても構わない。すなわち、第1紫外線LEDユニットと第2紫外線LEDユニットのいずれか一方で紫外線照射装置を構成しても構わない。
【0105】
この場合、実施形態1では、紫外線LEDユニットの向きおよび/または配光特性を変更し踏段の左側に乗車した乗客と右側に乗車した乗客にできる限り均等に紫外線が照射されるようにする。
【0106】
実施形態2では、紫外線LEDユニットを踏段112の長さ方向(通路PWの幅方向)中央に設け(もちろん、ライザー158に開設する窓も紫外線LEDユニットの設置位置に合わせる)、より幅の広い配光特性を有するものを用いる。
【0107】
紫外線LEDユニットを上記のように左側乗車の乗客と右側乗車の乗客の兼用にした場合、同じ踏段に乗客が2人乗車したときであって、第1身長測定装置76(176)と第2身長測定装置78(178)で測定した身長に差があった場合、低い身長の方に合わせて、紫外線LEDユニットの点灯制御を行う。
【0108】
(4)上記実施形態では、上りエスカレータを例に説明したが、本発明は、可能な範囲で下りエスカレータに適用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係るエスカレータは、乗車中の乗客の衣服等を除菌するエスカレータに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
10、110 エスカレータ
12、112 踏段
68、168 第1紫外線照射装置
72、172 第2紫外線照射装置
【要約】
【課題】空調装置からの送風の影響を受けず、搬送される乗客の衣服に付着した菌を効果的に除菌し得るエスカレータを提供する。
【解決手段】無端状に連結されて循環走行する複数の踏段12と踏段12で搬送される乗客Pに対し、横方向から紫外線を照射する紫外線照射装置68とを備えることとした。
【選択図】
図4