(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】床構造及び床構造構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/38 20060101AFI20240305BHJP
E04B 1/16 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
E04B5/38 B
E04B1/16 E
(21)【出願番号】P 2023218535
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤生 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 康仁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健生
(72)【発明者】
【氏名】八木 利典
(72)【発明者】
【氏名】山木戸 勇也
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】生部 宏幸
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-167555(JP,A)
【文献】特開平5-106293(JP,A)
【文献】特開昭57-123359(JP,A)
【文献】特開2023-154912(JP,A)
【文献】特開2020-104276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/38
E04B 1/16
E04F 15/00 ー 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリートで構成されるコンクリート部と、下面に配置される木質板とを備えた床構造であって、
前記木質板の上面には、前記木質板を型枠として用いて前記コンクリート部のリブ部を間に形成するボイド部材を固定可能とするとともに、
前記木質板及び前記コンクリート部には、これらを一体化するビスが、離間した状態で複数、埋設され、
前記ボイド部材は、前記コンクリート部のコンクリートよりも比重が小さい材料で構成されていることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記木質板の上面には、前記ボイド部材が固定されているとともに、前記ボイド部材の間に前記リブ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
複数の前記ボイド部材は、離間した状態で、前記木質板の全面に設けられ、又は、前記木質板の一部のみに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の床構造。
【請求項4】
複数の前記ボイド部材は、2方向に離間して設けられていることを特徴とする請求項2又に3に記載の床構造。
【請求項5】
鉄筋コンクリートで構成されるコンクリート部と、下面に配置される木質板とを備えた床構造を構築する床構造構築方法であって、
前記コンクリート部のコンクリートよりも比重が小さい材料で構成された複数のボイド部材を上面に固定した前記木質板を、前記コンクリート部と一体で形成される離間した1対のコンクリート梁を形成する梁型枠の上端面に渡るように配置し、
前記木質板の上に、前記コンクリート部に埋設する鉄筋を配置し、
その後、前記梁型枠及び前記木質板を型枠として用いてコンクリートを打設することにより、前記コンクリート部及び前記コンクリート梁を形成することを特徴とする床構造構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄筋コンクリートで構成され下面に木質板を配置した床構造及び床構造構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天井を木質で構成することがある。この場合、天井を含む床構造全体を木質材で構成すると、必要な強度を得るためには、床構造を厚くする必要があり、重くなっていた。そこで、天井として見える床構造の下面を木質材で構成するとともに、床構造の上方を、構造体としての鉄筋コンクリートで構成する床構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の床構造は、RC(鉄筋コンクリート)スラブと、RCスラブの下面に沿って設けられるCLTパネルと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載の技術においては、RCスラブの厚みが一定である。このため、木質材とRCスラブとで構成される床構造であっても、重くなっていた。また、軽量化と合せてCO2排出量削減のため、更なるコンクリートの使用量の削減が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する床構造は、鉄筋コンクリートで構成されるコンクリート部と、下面に配置される木質板とを備えた床構造であって、前記木質板の上面には、前記木質板を型枠として用いて前記コンクリート部のリブ部を間に形成するボイド部材を固定可能とするとともに、前記木質板及び前記コンクリート部には、これらを一体化するビスが、離間した状態で複数、埋設され、前記ボイド部材は、前記コンクリート部のコンクリートよりも比重が小さい材料で構成されている。
【0006】
また、上記課題を解決する床構造構築方法は、鉄筋コンクリートで構成されるコンクリート部と、下面に配置される木質板とを備えた床構造を構築する床構造構築方法であって、前記コンクリート部のコンクリートよりも比重が小さい材料で構成された複数のボイド部材を上面に固定した前記木質板を、前記コンクリート部と一体で形成される離間した1対のコンクリート梁を形成する梁型枠の上端部に渡るように配置し、前記木質板の上に、前記コンクリート部に埋設する鉄筋を配置し、その後、前記梁型枠及び前記木質板を型枠として用いてコンクリートを打設することにより、前記コンクリート部及び前記コンクリート梁を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量化及びコンクリートの使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における床構造の構成を説明する説明図である。
【
図4】実施形態における床構造構築方法の手順を説明する流れ図である。
【
図5】実施形態の床構造構築方法において木質板の上にボイド部材及びビスを固定した状態を説明する斜視図である。
【
図6】実施形態における木質板及び梁型枠を配置した後、鉄筋を配置した状態を説明する説明図である。
【
図7】変更例における床構造の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図6を用いて、床構造及び床構造構築方法を具体化した一実施形態を説明する。ここでは、社員寮の部屋の天井であって、その部屋の直上階の床を構成する床構造について説明する。部屋の天井は、木現しで構成されている。
【0010】
図1は、床構造20の断面図であり、
図2は、
図1における2-2線方向の断面図であり、
図3は、
図2における3-3線方向の断面図である。
図2は、木質板21の上方のみを示しており、
図2におけるドット部分は、後述するビス23及びリブ部鉄筋37が埋設されている領域である。
【0011】
図1に示すように、床構造20は、離間した1対の大梁15の間に構成されている。大梁15は、床構造20のスラブを構成するコンクリートによって一体化されて構成されるコンクリート梁である。
【0012】
床構造20は、下面に配置される木質板21、複数のボイド部材22、複数のビス23、下端筋31、上端筋33、リブ部鉄筋37、コンクリート部40を備えている。
【0013】
木質板21は、CLT(Cross Laminated Timber)で構成されている。このCLTは、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料である。この木質板21は、縦横がそれぞれ約4m×約1mの大きさを有し、約120mmの厚さを有する。
【0014】
木質板21の上には、木質板21の全面に渡って、離間した状態で配置される複数のボイド部材22が固定されている。具体的には、複数のボイド部材22は、木質板21の上に縦横に整列して並んでいる。ボイド部材22は、コンクリート部40よりも比重が小さい材料で構成される部材であって、例えば、幅400mm×長さ600mmで厚み90mmの大きさの発泡プラスチック系であるビーズ法ポリスチレンフォームで構成されている。具体的には、このボイド部材22として、三昌フォームテック社製の製品名「遮音ユカボイド(登録商標)T-1」を半分にして用いる。
【0015】
そして、床構造20のX方向におけるボイド部材22間及びボイド部材22のX方向の端部には、コンクリート部40のリブ部41,42が形成されている。各リブ部41,42は、床構造20の強度を維持するために、床構造20において厚みが必要な箇所にリブ部41,42が位置するように配置する。本実施形態では、リブ部41,42は、X方向に、等間隔で配置されている。そして、各リブ部41,42には、離間してビス23が1列に並んで埋設されている。
【0016】
また、
図2及び
図3に示すように、床構造20のY方向におけるボイド部材22間及びY方向の端部には、コンクリート部40のリブ部45が形成されている。このY方向は、X方向と直交する方向である。なお、このリブ部45には、リブ部41,42と異なり、ビス23やリブ部鉄筋37が埋設されていない。すなわち、本実施形態では、木質板21の上の全面には、複数のボイド部材22とリブ部41,42,45が設けられている。
【0017】
更に、
図1及び
図3に示すように、床構造20のコンクリート部40には、下端筋31、上端筋33、リブ部鉄筋37等が埋設されている。
下端筋31は、床構造20の下部に配置された鉄筋である。この下端筋31は、離間した複数のX方向に延在する鉄筋31aと、離間した複数のY方向に延在する鉄筋31bとが直交するように配置されて構成される。
【0018】
上端筋33は、床構造20の上部に配置された鉄筋である。この上端筋33も、下端筋31と同様に、離間した複数のX方向に延在する鉄筋33aと、離間した複数のY方向に延在する鉄筋33bとが直交するように配置されて構成される。
本実施形態では、下端筋31及び上端筋33の端部は、大梁15に埋設されるように延在している。
【0019】
一方、リブ部41,42には、リブ部鉄筋37が配置されている。リブ部鉄筋37は、下に突出したU字形状の離間した複数のリブ補強筋37aと、Y方向に延在する離間した複数のリブ主筋37bとによって構成される。各リブ補強筋37aは、上端筋33の上方から、ビス23の中央あたりまで存在するように配置される。
【0020】
(床構造20の施工方法)
次に、
図4~
図6を用いて、上述した床構造20の施工方法について説明する。
まず、
図4に示すように、ボイド部材及びビスを木質板に固定する(ステップS11)。
【0021】
具体的には、
図5に示すように、木質板21の上面に、複数のボイド部材22を離間して固定する。ここでは、図示しないボルト等を用いてボイド部材22を木質板21に固定する。更に、複数のビス23を、木質板21の上に打ち付けることにより固定する。この場合、ビス23は、X方向におけるボイド部材22の間、木質板21においてボイド部材22よりもX方向の端部に、等間隔の隙間を空けて1列で配置される。
【0022】
次に、木質板及び型枠を設置する(ステップS12)。
具体的には、
図6に示すように、離間した1対の型枠50の上端面に、ボイド部材22及びビス23を上面に固定した木質板21を載置する。ここで、離間した1対の型枠50は、床構造20の両端に形成される大梁15を形成するための梁型枠である。更に、床構造20のコンクリート部40を覆う他の部分の型枠(図示せず)を配置する。
【0023】
そして、鉄筋を配置する(ステップS13)。
具体的には、型枠50の上に載置した木質板21の上に、下端筋31、上端筋33、リブ部鉄筋37を配置する。
【0024】
次に、コンクリートの打設を行なう(ステップS14)。
具体的には、木質板21、型枠50を含む型枠の中に生コンクリートを流し込んだ後、養生する。そして、コンクリートが固まった後に、型枠50を含む型枠を取り外す。
以上により、
図1に示す床構造20が構築される。
【0025】
(本実施形態の作用)
ボイド部材22の間には、鉄筋コンクリートで構成されたリブ部41,42を設けるので、床構造20の強度を維持しながら、床構造20が軽量化される。
【0026】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、木質板21の上に、コンクリート部40よりも比重が小さい材料で構成される複数のボイド部材22が離間した状態で設けられている。このため、ボイド部材22の分だけ、床構造20を軽量化することができる。
【0027】
(2)本実施形態では、ボイド部材22の両端部及び木質板21の両端部には、リブ部鉄筋37が埋設されたリブ部41,42が設けられている。これにより、床構造20において、強度が必要な部分をリブ部41,42として構成することにより、床構造20の強度を確保することができる。
【0028】
(3)本実施形態では、ボイド部材22及びビス23を固定した木質板21を、型枠50の上に載置した後、コンクリート打設を行なう。これにより、木質板21を、床構造20のコンクリート部40の下面を構築するための型枠として用いることができる。
【0029】
(4)本実施形態では、木質板21の上に、ボイド部材22及びビス23を固定する。従って、ビス23により床構造20のコンクリート部40と木質板21とを効率的に一体化することができる。更に、ボイド部材22を木質板21に固定することにより、木質板21の上に、所望の位置にボイド部材22を配置したリブ部41,42,45を効率的に形成することができる。
【0030】
(5)本実施形態では、X方向にリブ部41,42を設けるとともに、Y方向にリブ部45を設けた。これにより、リブ部41,42が細長い形状の場合に生じやすい音の反射を抑制することができる。
【0031】
(6)本実施形態では、大梁15を形成する型枠50の上に、木質板21を載置する。これにより、効率的に、大梁15と一体化して床構造20のコンクリート部40を構築することができる。
【0032】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、木質板21の上の全面において、同じ大きさのボイド部材22を複数、縦横に離間して整列して固定した。これにより、木質板21の全面には、ボイド部材22とリブ部41,42,45を設けた。木質板21の上に配置するボイド部材の大きさや配置は、これに限られない。例えば、床構造20の強度に応じて、強度が不要な領域をボイド部材に置き換えればよく、大きさが異なっていてもよい。また、上記実施形態では、木質板21においてX方向及びY方向にリブ部41,42,45を設けたが、音の反射が気にならない建物において用いる場合には、リブ部45を設けなくてもよい。
【0033】
更に、木質板21の全面にボイド部材22を固定する代わりに、木質板21の一部のみにボイド部材22を設けてもよい。例えば、水回りを配置する領域については、ボイド部材22を設けずに床を下げた領域としてもよい。
具体的には、
図7に示す床構造70は、下面を構成する木質板21と、鉄筋コンクリートで構成されたコンクリート部71とを備える。木質板21の上面の左側の領域A1には、離間した複数のボイド部材22を配置する。更に、この領域A1には、ボイド部材22の間と、ボイド部材22のX方向に、それぞれコンクリート部71のリブ部72,73を形成する。なお、リブ部72,73には、上記実施形態のリブ部41,42と同様に、図示しないリブ部鉄筋が埋設されている。
【0034】
また、ボイド部材22の間のリブ部72,73と木質板21とに渡るように、間隔L1でビス23が埋設される。ビス23は、
図7の紙面に直交する方向に複数、並んで配置されている。
そして、木質板21の上面の右側の領域A2には、ボイド部材22の厚み部分、上面が下がった平面部75が形成されている。この領域A2には、水回りが配置され、平面部75には、図示しないスラブ筋が埋設されている。平面部75においても、間隔L1でビス23が埋設される。すなわち、ビス23は、ボイド部材22を木質板21の上に設けたと仮定した場合の位置(固定可能な位置)に固定される。
また、床構造70において、水回り周囲(リブ部73等の、上面が下がった平面部75の周囲)に小梁を設けてもよい。この場合には、小梁を挟んで、ボイド部材を上面に固定した木質板と、ボイド部材を固定していない木質板とを並べてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、ボイド部材22を用いて木質板21の上にボイド部材22を形成した。ボイド部材22は、ビーズ法ポリスチレンフォームで構成する場合に限られず、コンクリートよりも、全体の比重が小さくなる部材であればよい。この場合、ボイド部材は、打設するコンクリートの圧力に対抗できる強度を有する部材であることが好ましく、例えば、内部が中空であった固い容器等を用いてもよい。
【0036】
・上記実施形態においては、木質板21のX方向の両端部に形成されるリブ部41,42にリブ部鉄筋37を配置した。コンクリート部40のリブ部41,42において強度を確保できれば、鉄筋の配置は、これらに限られない。
【0037】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記木質板の上には、前記ボイド部材を固定するとともに、前記ボイド部材の間に並べたビスを前記木質板に打ち付けることにより固定したことを特徴とする請求項5に記載の床構造構築方法。
【符号の説明】
【0038】
A1,A2…領域、15…大梁、20,70…床構造、21…木質板、22…ボイド部材、23…ビス、31…下端筋、31a,31b,33a,33b…鉄筋、33…上端筋、37…リブ部鉄筋、37a…リブ補強筋、37b…リブ主筋、40,71…コンクリート部、41,42,45,72,73…リブ部、50…型枠、75…平面部。
【要約】
【課題】軽量化及びコンクリートの使用量を削減する床構造及び床構造構築方法を提供する。
【解決手段】床構造20は、コンクリート部40と、下面に木質板21とを備える。木質板21の上面には、コンクリートよりも軽い複数のボイド部材22が配置されている。更に、木質板21の上には、ボイド部材22のX方向の両側にリブ部41が形成され、ボイド部材22のX方向の間には、リブ部42が形成されている。更に、木質板21の上には、ボイド部材22のY方向の間にもリブ部が形成されている。
【選択図】
図1