IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】化合物、有機薄膜、及び有機光検出器
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20240305BHJP
   C07D 495/14 20060101ALI20240305BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20240305BHJP
   H10K 30/60 20230101ALI20240305BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C07D495/14 CSP
C07F7/10 Q
H10K30/60
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023564078
(86)(22)【出願日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2023017803
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2022084162
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東山 大地
(72)【発明者】
【氏名】今西 良樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 光
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 一剛
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114106581(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0328357(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114195801(CN,A)
【文献】特開2010-235598(JP,A)
【文献】特開2022-030124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】

(式中、Xは、炭素原子、窒素原子、又はケイ素原子である。Xが炭素原子またはケイ素原子のとき、m1は1であり、Xが窒素原子のときm1は0である。
、Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいチオフェン環を示す。R、Rは、それぞれ独立して、C(CN)又はOを表す。ただし、Aがベンゼン環のとき、(1)RはC(CN)であるか、または(2)RがOであり且つXが窒素原子であり、Aがベンゼン環のとき、(3)RはC(CN)であるか、または(4)RがOであり且つXが窒素原子である。R11、R12、R21、R22は、それぞれ独立して、炭素数が6~30のアルキル基を表す。R31、R32は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~30のアルキル基を表す。n1、n2は、それぞれ独立して、0又は1である。
ただし、上記式(1)は下記式を除く。
【請求項2】
及びAにはそれぞれ独立してハロゲン原子が0~2個結合している請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を含む有機薄膜。
【請求項4】
請求項3に記載の有機薄膜を受光部に備える有機光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光半導体として有用な化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機光半導体は、有機太陽電池(OSC)、有機光検出器(OPD)などの光電子工学機器などで利用されており、種々のp型材料(ドナー材料)やn型材料(アクセプター材料)が使用されている。近年、赤外光電子光学機器の分野で、狭バンドギャップのn型低分子材料が注目を集めており、非フラーレン型のアクセプター材料として、下記に示すCOI-4Cl、COTIC-4Fなどが知られている(特許文献1、2など)。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2020/0328357号明細書
【文献】米国特許出願公開第2019/0157581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記COI-4Cl、COTIC-4Fなどは、赤外線の吸収波長をさらに長波長化したり、暗電流Iや光検出のON/OFF比などのいずれかにおいて、さらなる改善の余地が存在していた。本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、赤外吸収波長の長波長化、暗電流Iの低減、及び光検出のON/OFF比の向上の少なくとも1つを達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、非フラーレン型アクセプター材料として特定の構造を有する新しい化合物を採用することにより、赤外吸収波長の長波長化、暗電流Iの低減、及び光検出のON/OFF比の向上の少なくとも1つを達成させ、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
[1]式(1)で表される化合物。
【化2】

(式中、Xは、炭素原子、窒素原子、又はケイ素原子である。Xが炭素原子またはケイ素原子のとき、m1は1であり、Xが窒素原子のときm1は0である。
、Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいチオフェン環を示す。R、Rは、それぞれ独立して、C(CN)又はOを表す。ただし、Aがベンゼン環のとき、(1)RはC(CN)であるか、または(2)RがOであり且つXが窒素原子であり、Aがベンゼン環のとき、(3)RはC(CN)であるか、または(4)RがOであり且つXが窒素原子である。R11、R12、R21、R22は、それぞれ独立して、炭素数が6~30のアルキル基を表す。R31、R32は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~30のアルキル基を表す。n1、n2は、それぞれ独立して、0又は1である。)
[2]A及びAにはそれぞれ独立してハロゲン原子が0~2個結合している前記[1]に記載の化合物。
[3]前記[1]又は[2]に記載の化合物を含む有機薄膜。
[4]前記[3]に記載の有機薄膜を受光部に備える有機光検出器。
【発明の効果】
【0008】
前記式(1)の化合物を用いることにより、赤外吸収波長の長波長化、暗電流Iの低減、及び光検出のON/OFF比の向上の少なくとも1つを達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、以下「式(x)で表される化合物」を、単に「化合物(x)」という場合がある。
【0010】
1.化合物
本発明の化合物は、以下の式(1)で表される化合物である。
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Xは、炭素原子、窒素原子、又はケイ素原子である。Xが炭素原子またはケイ素原子のとき、m1は1であり、Xが窒素原子のときm1は0である。
、Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいチオフェン環を示す。R、Rは、それぞれ独立して、C(CN)又はOを表す。ただし、Aがベンゼン環のとき、(1)RはC(CN)であるか、または(2)RがOであり且つXが窒素原子であり、Aがベンゼン環のとき、(3)RはC(CN)であるか、または(4)RがOであり且つXが窒素原子である。R11、R12、R21、R22は、それぞれ独立して、炭素数が6~30のアルキル基を表す。R31、R32は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~30のアルキル基を表す。n1、n2は、それぞれ独立して、0又は1である。)
【0013】
は、炭素原子、窒素原子、又はケイ素原子であればよいが、ON/OFF比を向上させる観点や暗電流Iを低減させる観点からは、Xは炭素原子又はケイ素原子であることが好ましく、炭素原子であることがより好ましい。
【0014】
11、R12は、それぞれ独立して、炭素数が6~25のアルキル基であることが好ましく、炭素数が7~20のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が8~15のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数が8~12のアルキル基であることが特に好ましい。R11とR12は、互いに同じであることがより好ましい。
【0015】
が炭素原子またはケイ素原子のとき、R21、R22は、それぞれ独立して、炭素数が6~25のアルキル基であることが好ましく、炭素数が7~20のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が8~15のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数が8~12のアルキル基であることが特に好ましい。R21とR22は、互いに同じであることがより好ましい。
【0016】
が窒素原子のとき、R21は、炭素数が6~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数が7~25のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が8~20のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数が8~17のアルキル基であることが特に好ましい。特にAがベンゼン環であってRがOでありかつXが窒素原子であるとき、又はAがベンゼン環であってRがOでありかつXが窒素原子であるとき、R21は炭素数が6~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数が8~28のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が12~25のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0017】
11、R12、R21、R22としては、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましく、分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましく、直鎖状アルキル基に直鎖状アルキル基が結合した基(n-アルキル-n-アルキル基)がよりさらに好ましく、直鎖状アルキル基の1位又は2位で分岐しているアルキル基(1-n-アルキル-n-アルキル基、2-n-アルキル-n-アルキル基などの1-又は2-アルキルアルキル基)が特に好ましい。1-アルキルアルキル基では、幹となるアルキル基の炭素数は、1位に結合するアルキル基よりも1つ多いこと(すなわち、1-Cアルキル-Cx+1アルキル基となること;Cはアルキルの炭素数がxであることを示す)が好ましい。R11、R12、R21、R22としては、具体的には、n-ヘキシル基等の炭素数6のアルキル基;n-ヘプチル基等の炭素数7のアルキル基;n-オクチル基、1-n-ブチル-n-ブチル基、1-n-プロピル-n-ペンチル基、1-エチル-n-ヘキシル基、2-エチル-n-ヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等の炭素数8のアルキル基;n-ノニル基、1-n-プロピルヘキシル基、2-n-プロピルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、1-n-テトラ-n-ヘプチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基等の炭素数9のアルキル基;n-デシル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-n-ブチルヘキシル基、2-n-ブチルヘキシル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3,7-ジメチルオクチル基等の炭素数10のアルキル基;n-ウンデシル基、1-n-ブチルヘプチル基、2-n-ブチルヘプチル基、1-n-プロピルオクチル基、2-n-プロピルオクチル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-n-ペンチル-n-ヘキシル基等の炭素数11のアルキル基;n-ドデシル基、1-n-ペンチルヘプチル基、2-n-ペンチルヘプチル基、1-n-ブチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、1-n-プロピルノニル基、2-n-プロピルノニル基等の炭素数12のアルキル基;n-トリデシル基、1-n-ペンチルオクチル基、2-n-ペンチル-n-オクチル基、1-n-ブチルノニル基、2-n-ブチルノニル基、1-メチルドデシル基、2-メチルドデシル基等の炭素数13のアルキル基;n-テトラデシル基、1-n-ヘプチルヘプチル基、1-n-ヘキシルオクチル基、2-n-ヘキシルオクチル基、1-n-ペンチルノニル基、2-n-ペンチルノニル基等の炭素数14のアルキル基;n-ペンタデシル基、1-n-ヘプチルオクチル基、1-n-ヘプチル-n-オクチル基、1-n-ヘキシルノニル基、2-n-ヘキシルノニル基等の炭素数15のアルキル基;n-ヘキサデシル基、2-n-ヘキシルデシル基、1-n-オクチルオクチル基、1-n-ヘプチルノニル基、2-n-ヘプチルノニル基等の炭素数16のアルキル基;n-ヘプタデシル基、1-n-オクチル-n-ノニル基等の炭素数17のアルキル基;n-オクタデシル基、1-n-ノニルノニル基等の炭素数18のアルキル基;n-ノナデシル基、1-n-ノニル-n-デシル基等の炭素数19のアルキル基;n-エイコシル基、2-n-オクチルドデシル基等の炭素数20のアルキル基;n-ヘンエイコシル基、1-n-デシル-n-ウンデシル基等の炭素数21のアルキル基;n-ドコシル基等の炭素数22のアルキル基;n-トリコシル基、1-n-ウンデシル-n-ドデシル基等の炭素数23のアルキル基;n-テトラコシル基、2-n-デシルテトラデシル基等の炭素数24のアルキル基;n-ペンタコシル等、1-n-ドデシル-n-トリデシル基の炭素数25のアルキル基;n-ヘキサコシル等の炭素数26のアルキル基;n-ヘプタコシル、1-n-トリデシル-n-テトラデシル基等の炭素数27のアルキル基;n-オクタコシル等の炭素数28のアルキル基;n-ノナコシル、1-n-テトラデシル-n-ペンタデシル基等の炭素数29のアルキル基;n-トリアコンチル等の炭素数30のアルキル基;等が挙げられる。
【0018】
31、R32は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~30のアルキル基を表す。R31、R32における炭素数6~30のアルキル基の例示については上述のR11、R12、R21、R22などと同様であり、炭素数1~5のアルキル基としては、具体的には、メチル基である炭素数1のアルキル基;エチル基である炭素数2のアルキル基;n-プロピル基などの炭素数3のアルキル基;n-ブチル基などの炭素数4のアルキル基;n-ペンチル基などの炭素数5のアルキル基;等が挙げられる。
【0019】
、Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいチオフェン環を示す。置換基としては、特に限定されておらず、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基などが挙げられ、中でもハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることがより好ましく、塩素原子であることがさらに好ましい。また、A及びAにはそれぞれ独立してハロゲン原子が0~2個結合していることが好ましく、0個又は1個であることがより好ましい。暗電流Iの低減及び光検出のON/OFF比の向上を図る観点からは、A、Aの少なくとも一方は置換基を有していてもよいチオフェン環であることが好ましく、A、A共に置換基を有していてもよいチオフェン環であることがより好ましい。
【0020】
、Rは、それぞれ独立して、C(CN)又はOを表す。Aがチオフェン環のときはC(CN)であってもOであってもよいが、暗電流Iの低減及び光検出のON/OFF比の向上を図る観点からは、R、Rは共にOであることが好ましい。一方で、Aがベンゼン環のときにはRはC(CN)、または、RがOであり且つXが窒素原子であり、Aがベンゼン環のときにもRはC(CN)、または、RがOであり且つXが窒素原子である。
【0021】
暗電流Iの低減及び光検出のON/OFF比の向上を図る観点からは、A及びAが置換基を有していてもよいチオフェン環であり且つXが炭素原子又はケイ素原子であることが好ましく、A及びAが置換基を有していてもよいチオフェン環であり、Xが炭素原子又はケイ素原子であり、且つR及びRがOであることがより好ましい。
【0022】
赤外吸収波長の長波長化を図る観点からは、以下の(Z-1)~(Z-3)のいずれかであることが好ましく、(Z-2)又は(Z-3)であることがより好ましい。
(Z-1)A及びAが置換基を有していてもよいチオフェン環であり且つXが窒素原子である
(Z-2)A及びAが置換基を有していてもよいベンゼン環であり且つR及びRがC(CN)である
(Z-3)A及びAが置換基を有していてもよいベンゼン環であり、R及びRがOであり、且つXが窒素原子である
【0023】
n1、n2は、それぞれ独立して、0又は1であるが、赤外吸収波長の長波長化を図る観点からはn1及びn2の少なくとも一方が1であることが好ましく、n1、n2共に1であることがより好ましい。
【0024】
上記式(1)におけるX、A、A、R、R、n1、n2の組み合わせとして、例えば、以下の表1に記載の(A-1)~(A-20)のいずれかである。赤外吸収波長の長波長化を図る観点からは、(A-2)、(A-8)、(A-10)、(A-14)、又は(A-16)であることがより好ましく、(A-2)、(A-8)、(A-10)又は(A-16)であることがさらに好ましい。また、暗電流Iの低減及び光検出のON/OFF比の向上を図る観点からは、(A-5)、(A-6)、(A-19)、又は(A-20)であることがより好ましく、(A-5)、(A-6)、又は(A-20)であることがさらに好ましく、(A-5)又は(A-6)であることが特に好ましい。なお、表1におけるA、Aの欄に記載のベンゼン環、チオフェン環は置換基を有しているものも包含される。
【0025】
【表1】
【0026】
本発明の化合物(上記式(1)で表される化合物)の分子量は、500~5000であることが好ましく、700~3500であることがより好ましく、1000~2000であることがさらに好ましい。
【0027】
以下、本発明の化合物(上記式(1)で表される化合物)の製造方法について下記スキームを用いて説明する。なお、下記スキームは、本発明の化合物の製造方法を限定するものではなく、他のスキームに基づいて製造してもよい。
【0028】
【化4】

[式中、X、m1、A、A、R、R、R11、R12、R21、R22、R31、R32、n1、n2は、それぞれ上記と同義であり、Y、Yはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Zは炭素数1~4のアルキル基を表す。]
【0029】
<工程A>
最初に溶媒中で上記化合物(2)に有機リチウム化合物を作用させることにより、チオフェン環を活性化させ、その後、ZSnXを反応させることによって、上記式(3)で表されるスズ化合物を得ることができる。なお、3つのZはそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、Xはハロゲン基を表す。
【0030】
有機リチウム化合物としては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドが挙げられ、n-ブチルリチウム(n-BuLi)であることが好ましい。
【0031】
3つのZは同一であってもよいし、互いに異なるものであってもよいが、合成の容易性の観点から同一であることが好ましく、3つのZが全てブチル基であることがより好ましい。また、Xは塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0032】
SnXはトリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリブチルスズクロリドなどのトリC1-4アルキルスズハライドであることが好ましく、より好ましくはC1-4アルキルスズクロリドであり、特に好ましくはトリブチルスズクロリド(SnBuCl)である。上記化合物(2)に対してZSnXを2~3等量となるように添加することが好ましく、2.3~2.5等量となるように添加することがより好ましい。
【0033】
溶媒としてはテトラヒドロフラン、ヘキサン、ジエチルエーテルなどが挙げられ、テトラヒドロフラン(THF)であることが好ましい。反応温度は、例えば-70~-90℃とすることができる。
【0034】
<工程B>
式(3)で表されるスズ化合物に以下の式(5)で表される化合物を反応させることにより、式(4)で表される化合物を製造する。上記化合物(5)の量は、上記化合物(3)1モルに対して、1.2~10モルが好ましく、より好ましくは1.5~7モルであり、さらに好ましくは2~5モルである。
【0035】
【化5】

[式中、R11、n1は、それぞれ上記と同義であり、Xはハロゲン原子を表す。]
【0036】
上記化合物(3)と上記化合物(5)とを反応させる際には、触媒を共存させてもよい。工程Bにおける触媒としては、例えば、金属触媒が挙げられ、好ましくはパラジウム系触媒、ニッケル系触媒、鉄系触媒、銅系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒等が挙げられる。これらの中でも、パラジウム系触媒がより好ましい。パラジウム系触媒のパラジウムは、0価でも2価でもよい。
【0037】
上記パラジウム系触媒としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、酸化パラジウム(II)、硫化パラジウム(II)、テルル化パラジウム(II)、水酸化パラジウム(II)、セレン化パラジウム(II)、パラジウムシアニド(II)、パラジウムアセテート(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体、ジクロロ[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロ[2,5-ノルボルナジエン]パラジウム(II)、ジクロロビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルアルシン)パラジウム(II)が挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体が特に好ましい。
【0038】
工程Bでは、触媒に特定の配位子を配位させてもよい。上記配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート、ビス(tert-ブチル)メチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニル(メチル)ホスフィン、トリフェニスホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、トリス(m-トリル)ホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-ジフェニルホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノ-2’-メチルビフェニル、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1,2-ビスジフェニルホスフィノエチレン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、2,2’-ビピリジル、1,3-ジフェニルジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ジメチルジヒドロイミダゾリリデン、ジエチルジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、バトフェナントロリンが挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、トリフェニルホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンが好ましい。
【0039】
工程Bにおける溶媒としては、反応に影響を及ぼさない溶媒を用いることができ、例えば、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等を用いることができる。上記エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサンなどが挙げられる。上記芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。上記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。上記炭化水素系溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられる。上記ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパンなどが挙げられる。上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。上記アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-(1H)-ピリミジンなどが挙げられる。その他、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、スルホラン等のスルホン系溶媒を用いることができる。中でも芳香族系溶媒であることが好ましく、トルエン又はキシレンであることがより好ましく、トルエンであることがさらに好ましい。
【0040】
工程Bにおいて、上記溶媒の量は、化合物(3)1gに対して、一般に、1mL以上、100mL以下程度であり、収率や反応効率の観点から3mL以上、70mL以下が好ましく、5mL以上、40mL以下がより好ましい。
【0041】
工程Bにおいて、反応温度は、反応効率を高める観点から0℃以上、220℃以下が好ましく、40℃以上、200℃以下がより好ましく、60℃以上、180℃以下がさらに好ましい。上記反応温度は、マイクロウェーブを用いて調節してもよい。
【0042】
工程Bにおいて式(3)で表される化合物に式(5)で表される化合物を反応させた場合、R11とR12は同じになり、n1とn2は同じになる。上記化合物(5)の量は、上記化合物(3)1モルに対して、1.2~10モルが好ましく、より好ましくは1.5~7モルであり、さらに好ましくは2~4モルである。R11とR12及び/又はn1とn2を異なるものにする場合、式(3)で表される化合物に式(5)で表される化合物及び以下の式(6)で表される化合物を反応させてもよく、R32近傍のSnZ基を不活性な官能基(保護基)に変換した後に式(5)で表される化合物を反応させ、その後、目的の反応終了後に保護基を外す工程を行い、最後に式(6)で表される化合物を反応させてもよい。上記化合物(5)及び上記化合物(6)を両方とも用いる場合、上記化合物(5)及び上記化合物(6)の合計量は、上記化合物(3)1モルに対して、1.2~10モルが好ましく、より好ましくは1.5~7モルであり、さらに好ましくは2~4モルである。
【0043】
【化6】

[式中、R12、n2は、それぞれ上記と同義であり、Xはハロゲン原子を表す。]
【0044】
<工程C>
式(4)で表される化合物に以下の式(7)で表される化合物を反応させることにより、式(1)で表される化合物を製造する。上記化合物(7)の量は、上記化合物(4)1モルに対して、1.2~10モルが好ましく、より好ましくは1.5~7モルであり、さらに好ましくは1.8~5モルである。式(4)で表される化合物に式(7)で表される化合物を反応させた場合、A、Aは、同じになり、かつ、RとRは同じになる。AとA及び/又はR11とR12を異なるものにする場合、式(4)で表される化合物に式(7)及び以下の式(8)で表される化合物を反応させてもよく、式(4)で表される化合物におけるR12を有するチオフェン環において酸素原子を不活性な官能基(保護基)に変換し、次に式(7)で表される化合物を反応させ、その後、目的の反応終了後に保護基を外す工程を行い、最後に式(8)で表される化合物を反応させてもよい。上記化合物(7)及び上記化合物(8)を両方とも用いる場合、上記化合物(7)及び上記化合物(8)の合計量は、上記化合物(4)1モルに対して、1.2~10モルが好ましく、より好ましくは1.5~7モルであり、さらに好ましくは1.8~5モルである。
【0045】
【化7】

[式中、A、A、R、Rは、それぞれ上記と同義である。]
【0046】
工程Cにおける溶媒としては、反応に影響を及ぼさない溶媒を用いることができ、上述の工程Bにおける溶媒として列挙した溶媒を用いることができ、中でもクロロホルム又は無水酢酸であることがより好ましい。
【0047】
工程Cにおいて、上記溶媒の量は、化合物(4)1gに対して、一般に、1mL以上、100mL以下程度であり、収率や反応効率の観点から3mL以上、80mL以下が好ましく、5mL以上、60mL以下がより好ましい。
【0048】
工程Cにおいて、反応温度は、反応効率を高める観点から40℃以上、150℃以下が好ましく、50℃以上、100℃以下がより好ましい。上記反応温度は、マイクロウェーブを用いて調節してもよい。
【0049】
上記式(1)で表される化合物はアクセプター材料として用いることができる。上記式(1)で表される化合物を含む電子デバイスとしては、有機光検出器(例えば、画像センサーなどのセンサー)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機光起電デバイス(OPV)、有機太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、ペロブスカイト型太陽電池、太陽電池、レーザダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体、熱電デバイスなどが挙げられる。電子デバイスにおいて、ドナー材料と本発明の化合物(アクセプター材料)とが互いに接触する態様とすればよく、ドナー材料を含む層とアクセプター材料とを含む層を積層してもよく、ドナー材料とアクセプター材料を含む混合した層であってもよい。
【0050】
本発明は、上記式(1)で表される化合物を含む有機薄膜も包含する。また、本発明は、有機光検出素子や有機光検出素子を有する有機光検出器も包含し、有機光検出素子は有機薄膜を受光部に備えている。
【0051】
本願は、2022年5月23日に出願された日本国特許出願第2022-084162号に基づく優先権の利益を主張するものである。2022年5月23日に出願された日本国特許出願第2022-084162号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
まず、実施例で用いた中間体の合成条件について説明する。
【0054】
[合成例1]
(1-1)EHCyDTh-SnBu2の合成
窒素雰囲気下、乾燥した200mLナスフラスコに、東京化成工業社製EHCyDTh(2.00g)を入れ、THF(60mL)に溶解させた。-80℃で撹拌しながら、1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液(10mL)をゆっくり滴下した。-80℃下で1時間撹拌後、さらに室温で1時間撹拌した。-80℃でSnBuCl(5mL)をゆっくりと滴下し、室温で16時間撹拌した。反応溶液に水(30mL)、酢酸エチル(30mL)をそれぞれ添加し、分液操作を行った。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで、EHCyDTh-SnBu2(8.24g、粗収率167%)を得た。
【0055】
【化8】
【0056】
(1-2)EHCyDTh-OEHThCHOの合成
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記(1-1)で得られたEHCyDTh-SnBu2(0.47g)、OEHTh-Br-CHO(0.38g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(53mg)を入れ、トルエン(8mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、110℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液した。水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせて減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、EHCyDTh-OEHThCHO(0.12g、収率28%)を得た。
【0057】
【化9】
【0058】
[合成例2]
(2-1)EHCyDTh-SnBu2の合成
上記(1-1)に記載した製造方法でEHCyDTh-SnBu2を得た。
(2-2)EHCyDTh-EHThCHOの合成
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記(2-1)で得られたEHCyDTh-SnBu2(0.50g)、EHTh-Br-CHO(0.39g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(54mg)を入れ、トルエン(8mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、110℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液した。水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせて減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、EHCyDTh-EHThCHO(0.29g、収率58%)を得た。
【0059】
【化10】
【0060】
[合成例3]
(3-1)EHNCyDTh-SnBu2の合成
窒素雰囲気下、乾燥した20mLナスフラスコに、Luminescence Technology社製EHNCyDTh-Br2(0.31g)を入れ、THF(6mL)に溶解させた。-80℃で撹拌しながら、1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液(1mL)をゆっくり滴下した。-80℃下で1時間撹拌後、さらに室温で1時間撹拌した。-80℃でSnBuCl(0.5mL)をゆっくりと滴下し、室温で16時間撹拌した。反応溶液に10%炭酸水素ナトリウム水溶液(6mL)を添加し、分液操作を行った。水層をトルエンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで、EHNCyDTh-SnBu2(0.82g、粗収率138%)を得た。
【0061】
【化11】
【0062】
(3-2)EHNCyDTh-OEHThCHOの合成
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記(3-1)で得られたEHNCyDTh-SnBu2(0.50g)、OEHTh-Br-CHO(0.51g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(126mg)を入れ、トルエン(10mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、110℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液した。水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせて減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、EHNCyDTh-OEHThCHO(0.24g、収率54%)を得た。
【0063】
【化12】
【0064】
[合成例4]
(4-1)EHSiCyDTh-SnBu2の合成
窒素雰囲気下、乾燥した20mLナスフラスコに、富士フイルム和光純薬社製EHSiCyDTh-Br2(0.61g)を入れ、THF(6mL)に溶解させた。-80℃で撹拌しながら、1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液(2mL)をゆっくり滴下した。-80℃下で1時間撹拌後、さらに室温で1時間撹拌した。-80℃でSnBuCl(0.8mL)をゆっくりと滴下し、室温で16時間撹拌した。反応溶液に10%炭酸水素ナトリウム水溶液(8mL)を添加し、分液操作を行った。水層をトルエンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで、EHSiCyDTh-SnBu2(1.50g、粗収率142%)を得た。
【0065】
【化13】
【0066】
(4-2)EHSiCyDTh-OEHThCHOの合成
窒素雰囲気下、50mLシュレンク管に、上記(4-1)で得られたEHSiCyDTh-SnBu2(1.16g)、OEHTh-Br-CHO(0.94g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(113mg)を入れ、トルエン(20mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、110℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液した。水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせて減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、EHSiCyDTh-OEHThCHO(0.68g、収率65%)を得た。
【0067】
【化14】
【0068】
[合成例5]
(5-1)ONNCyDTh-SnBu2の合成
窒素雰囲気下、乾燥した200mLナスフラスコに、東京化成工業社製ONNCyDTh-Br2(0.33g)を入れ、THF(6mL)に溶解させた。-80℃で撹拌しながら、1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液(0.9mL)をゆっくり滴下した。-80℃下で1時間撹拌後、さらに室温で1時間撹拌した。-80℃でSnBuCl(0.3mL)をゆっくりと滴下し、室温で16時間撹拌した。反応溶液に10%炭酸水素ナトリウム水溶液(6mL)を添加し、分液操作を行った。水層をトルエンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで、ONNCyDTh-SnBu2(0.94g、粗収率163%)を得た。
【0069】
【化15】
【0070】
(5-2)ONNCyDTh-OEHThCHOの合成
窒素雰囲気下、10mLシュレンク管に、上記(5-1)で得られたONNCyDTh-SnBu2(0.15g)、OEHTh-Br-CHO(0.12g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(18mg)を入れ、トルエン(2mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、110℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液した。水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせて減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、ONNCyDTh-OEHThCHO(31mg、収率24%)を得た。
【0071】
【化16】
【0072】
[合成例6]
(6-1)OSiCyDTh-SnBu2の合成
窒素雰囲気下、乾燥した10mLナスフラスコに、東京化成工業社製OSiCyDTh-Br2(0.06g)を入れ、THF(0.5mL)に溶解させた。-80℃で撹拌しながら、1.6Mのn-BuLiヘキサン溶液(0.2mL)をゆっくり滴下した。-80℃で1時間撹拌後、さらに室温で1時間撹拌した。-80℃でSnBuCl(0.1mL)をゆっくりと滴下し、室温で16時間撹拌した。反応溶液に10%炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)を添加し、分液操作を行った。水層をトルエンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで、OSiCyDTh-SnBu2(0.32g、粗収率303%)を得た。
【0073】
【化17】
【0074】
(6-2)OSiCyDTh-OEHThCHOの合成
窒素雰囲気下、10mLシュレンク管に、上記(6-1)で得られたOSiCyDTh-SnBu2(0.21g)、OEHTh-Br-CHO(0.17g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(24mg)を入れ、トルエン(2mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、110℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液した。水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせて減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、OSiCyDTh-OEHThCHO(0.06g、収率34%)を得た。
【0075】
【化18】
【0076】
次に上記合成例で製造した中間体を用いて化合物を製造した。
【0077】
実施例1(EHCyDTh-2OEHTh-TCN2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例1で得られたEHCyDTh-OEHThCHO(75mg)、TCN(46mg)、ピリジン(0.8mL)を入れ、クロロホルム(2mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、60℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHCyDTh-2OEHTh-TCN2(64mg、収率61%)を得た。
【0078】
【化19】
【0079】
実施例2(EHCyDTh-2EHTh-TCN2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例2で得られたEHCyDTh-EHThCHO(240mg)、TCN(250mg)、ピリジン(0.9mL)を入れ、クロロホルム(4mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、60℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHCyDTh-2EHTh-TCN2(245mg、収率72%)を得た。
【0080】
【化20】
【0081】
実施例3(EHNCyDTh-2OEHTh-TCN2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例3で得られたEHNCyDTh-OEHThCHO(36mg)、TCN(24mg)、ピリジン(0.1mL)を入れ、クロロホルム(1mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、60℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHNCyDTh-2OEHTh-TCN2(17mg、収率31%)を得た。
【0082】
【化21】
【0083】
実施例4(EHNCyDTh-2OEHTh-CI2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例3で得られたEHNCyDTh-OEHThCHO(47mg)、CI(33mg)、ピリジン(0.1mL)を入れ、エタノール(2mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、70℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHNCyDTh-2OEHTh-CI2(26mg、収率38%)を得た。
【0084】
【化22】
【0085】
実施例5(EHCyDTh-2OEHTh-CNI2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例1で得られたEHCyDTh-OEHThCHO(36mg)、CNI(30mg)を入れ、無水酢酸(2mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、80℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHCyDTh-2OEHTh-CNI2(33mg、収率62%)を得た。
【0086】
【化23】
【0087】
実施例6(EHSiCyDTh-2OEHTh-TCN2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例4で得られたEHSiCyDTh-OEHThCHO(235mg)、TCN(137mg)、ピリジン(1.3mL)を入れ、クロロホルム(13mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、60℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHSiCyDTh-2OEHTh-TCN2(120mg、収率36%)を得た。
【0088】
【化24】
【0089】
実施例7(EHSiCyDTh-2OEHTh-CNI2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例4で得られたEHSiCyDTh-OEHThCHO(292mg)、CNI(206mg)を入れ、無水酢酸(10mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、80℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHSiCyDTh-2OEHTh-CNI2(315mg、収率72%)を得た。
【0090】
【化25】
【0091】
実施例8(EHNCyDTh-2OEHTh-CNI2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例3で得られたEHNCyDTh-OEHThCHO(74mg)、CNI(49mg)を入れ、無水酢酸(1.5mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、90℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、EHNCyDTh-2OEHTh-CNI2(45mg、収率38%)を得た。
【0092】
【化26】
【0093】
実施例9(ONNCyDTh-2OEHTh-TCN2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例5で得られたONNCyDTh-OEHThCHO(62mg)、TCN(36mg)、ピリジン(0.1mL)を入れ、クロロホルム(1mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、60℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、ONNCyDTh-2OEHTh-TCN2(48mg、収率55%)を得た。
【0094】
【化27】
【0095】
実施例10(ONNCyDTh-2OEHTh-CI2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例5で得られたONNCyDTh-OEHThCHO(38mg)、CI(26mg)、ピリジン(0.1mL)を入れ、クロロホルム(1mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、60℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、ONNCyDTh-2OEHTh-CI2(3mg、収率5%)を得た。
【0096】
【化28】
【0097】
実施例11(ONNCyDTh-2OEHTh-CNI2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例5で得られたONNCyDTh-OEHThCHO(97mg)、CNI(64mg)を入れ、無水酢酸(1mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、90℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、ONNCyDTh-2OEHTh-CNI2(123mg、収率92%)を得た。
【0098】
【化29】
【0099】
実施例12(OSiCyDTh-2OEHTh-CNI2の合成)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記合成例6で得られたOSiCyDTh-OEHThCHO(31mg)、CNI(21mg)を入れ、無水酢酸(1mL)に溶解させた。反応溶媒を脱気後、90℃で17時間撹拌した。反応液を放冷し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(ジクロロメタン)で精製し、OSiCyDTh-2OEHTh-CNI2(43mg、収率91%)を得た。
【0100】
【化30】
【0101】
また、比較例として、特許文献1~2に記載のCOI-4Cl、COTIC-4Fを比較例1、2とした。そして、比較例1~2、実施例1~12の化合物(以下、低分子化合物という)を用いて、以下の測定方法で各種物性を評価した。測定結果を表2に示した。なお、表2中、例えば2.73E+02は、2.73×10を意味する。
【0102】
<エネルギーギャップEg、波長λmax、及び波長λedgeの算出方法>
エネルギーギャップEgは、有機薄膜のUV測定を行い、UVの立ち上がりに基づいて算出した。即ち、低分子化合物を濃度が8mg/mLとなるようにクロロベンゼンに溶解し、得られた溶液をガラス基板上にスピンコートして有機薄膜を成膜した。この薄膜について、常温常圧下で、紫外・可視分光装置(島津製作所社製、「UV-3600i Plus」)によりUV測定を行い、以下の方法によりエネルギーギャップEg(eV)を算出した。
【0103】
上記UV測定により200nm~1500nmの領域で測定した紫外可視吸収スペクトルにおいて、最大吸収を示すピークを波長λmaxとした。また、上記紫外可視吸収スペクトルについて、最大吸収を示すピークを示す曲線における高波長側から低波長側に向かって吸収が大きくなる領域の曲線に対して補助線として接線を引き、この接線と吸光度が0を示す横軸との交点における波長を読み取り、この波長をUVの立ち上がり波長λedge[nm]とした。
【0104】
HOMO-LUMO間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)をEg、プランク定数をh、真空中の光速をcとすると、次式の関係が成立する。プランク定数hは6.626×10-34、真空中の高速cは2.998×10であるから、これらの値と波長λedgeの値を以下の式に代入し、エネルギーギャップEgを算出した。
Eg=hc/λedge
【0105】
<HOMO及びLUMOの算出方法>
低分子化合物を濃度が8mg/mLとなるようにクロロベンゼンに溶解し、得られた溶液をITO基板上にドロップキャストして成膜した。この膜について、常温常圧下で、イオン化エネルギー測定装置(分光計器株式会社製、「BIP-KV202GD」)によりイオン化エネルギー(eV)を測定し、HOMOの値とした。そして、HOMOの値にエネルギーギャップEgの値を加えることによりLUMOの値を算出した。
【0106】
<暗電流I
後述の製造方法で作製した有機光検出素子に0.05027mm角のメタルマスクを付け、照射光源としてソーラーシミュレーター(分光計器社製OTENTO-SUN III、AM1.5Gフィルター、放射強度100mW/cm)を用い、ソースメーター(ケイスレー社製2400型)により、光照射状態の印可電圧-2V~2VのI-V曲線(A)及び暗所(遮光状態)の印可電圧-2V~2VのI-V曲線(B)を得た。
I-V曲線(B)から暗所(遮光状態)における印可電圧-2Vでの電流である暗電流I(単位はA)を算出した。
【0107】
<ON/OFF比>
I-V曲線(A)から光照射状態における印可電圧-2Vでの電流である光電流I(単位はA)を算出し、光電流Iを暗電流Iで除した値をON/OFF比とした。
【0108】
<有機光検出素子の製造方法>
(p型半導体化合物とn型半導体化合物の混合液の作製)
p型半導体化合物としてPTB7(Aldrich)の構造を有する高分子化合物を用意し、n型半導体化合物として上記低分子化合物を用意した。p型半導体化合物とn型半導体化合物とが質量比でp型半導体化合物:n型半導体化合物=1:1.5となるように半導体化合物をクロロベンゼン/1-クロロナフタレン=98/2とした溶媒に溶解させ、p型半導体化合物とn型半導体化合物との合計濃度が3.2質量%となる溶液を作製した。該溶液をホットスターラー上で100℃の温度にて2時間以上攪拌混合した後に0.45μmのフィルターで濾過し、p型半導体化合物とn型半導体化合物の混合液を得た。
【0109】
(有機光検出素子の製造)
以下の(1)~(4)に記載の製造方法を順に行い、透明電極層、電子輸送層、活性層、ホール輸送層、電極層の順に積層された逆型構造を有する有機光検出素子を得た。なお、該有機光検出素子は有機薄膜である活性層を受光部に備えたものである。
(1)酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(アノード)がパターニングされたガラス基板(ジオマテック社製)を、アセトンによる超音波洗浄を行い、ついでエタノールによる超音波洗浄を行った後、窒素ブローで乾燥させ、その後ガラス基板に対してUV-オゾン処理を実施した。
(2)ITOの表面に0.5M酢酸亜鉛・0.5Mアミノエタノール/2-メトキシエタノール溶液をスピンコーターで塗布(3000rpm 40秒)し、その後175℃で30分間アニールして、透明電極層の上に電子輸送層を積層した積層体を得た。
(3)該積層体をグローブボックス内に搬入して不活性ガス雰囲気下で上記の製造方法で作製したp型半導体化合物とn型半導体化合物の混合液を電子輸送層の表面にスピンコートした後、ホットプレート上において110℃で15分間アニール処理を行い、電子輸送層の上に活性層を作製した。
(4)蒸着機を用いて、酸化モリブデンを活性層の表面に蒸着し、活性層の上にホール輸送層を作製した。最後に、電極である銀をホール輸送層の表面に蒸着して、有機光検出素子を得た。
【0110】
【表2】
【0111】
及びAがチオフェン環であり且つXが炭素原子又はケイ素原子である実施例1、2、6を用いた場合、比較例1~2を用いた場合と比べて暗電流Iが低減され、かつ、光検出のON/OFF比が高くなっている。また、A及びAがチオフェン環であり且つXが窒素原子である実施例3、9の化合物及びA及びAがベンゼン環又はハロゲン原子を有するベンゼン環であり且つR、R、Xが上記式(1)の説明で記載した所定の要件を満たす実施例4、5、7、8、10~12の化合物では、R、R、Xが上記式(1)の説明で記載した所定の要件を満たさない比較例1~2と比べて赤外吸収波長が長波長となっている。
【要約】
赤外吸収波長の長波長化、暗電流Iの低減、及び光検出のON/OFF比の向上の少なくとも1つが達成された化合物を提供する。式(1)で表される化合物。

(式中、Xは、炭素原子、窒素原子、又はケイ素原子である。Xが炭素原子またはケイ素原子のとき、m1は1であり、Xが窒素原子のときm1は0である。
、Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいチオフェン環を示す。R、Rは、それぞれ独立して、C(CN)又はOを表す。ただし、Aがベンゼン環のとき(1)RはC(CN)であるか、または(2)RがOであり且つXが窒素原子であり、Aがベンゼン環のとき、(3)RはC(CN)であるか、または(4)RがOであり且つXが窒素原子である。R31、R32は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~30のアルキル基を表す。n1、n2は、それぞれ独立して、0又は1である。)