(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】蛍光in situ配列決定を用いた単一アッセイに生体分子の検出を組み合わせる方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240305BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240305BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20240305BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240305BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240305BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/11 Z
G01N33/68
G01N33/53 M
(21)【出願番号】P 2022063834
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2019511929の分割
【原出願日】2017-08-31
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チャーチ、 ジョージ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ドーハーティ、 エバン アール.
(72)【発明者】
【氏名】テリー、 リチャード シー.
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/127183(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0024555(US,A1)
【文献】特開平04-268359(JP,A)
【文献】Nature methods,2016年,Vol.13, No.8,p.679-684
【文献】Science,2015年,Vol.347, No.6221,p.543-548
【文献】Nature methods,2016年06月,Vol.13, No.6,p.485-488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生体試料から2種以上の
異なるクラスの生体分子である生体分子を含む複数の生体分子を準備すること
、ここで、前記2種以上の異なるクラスの生体分子はタンパク質及び核酸を含む;
(b)前記複数の生体分子と共に、in situでポリマーマトリックスを形成すること、ここで前記ポリマーマトリックスは前記生体試料中の
前記タンパク質及び前記核酸の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する;
(c)2種以上
のプローブを用いて
前記タンパク質及び前記核酸を検出すること、
を含
み、
(i)前記タンパク質は前記ポリマーマトリックスに付着しているか、又は
(ii)前記タンパク質は前記2種以上のプローブのうちの第1のプローブに付着していて、前記第1のプローブは前記ポリマーマトリックスに結合しており、
そして、
(i)前記核酸は前記ポリマーマトリックスに付着しているか、
(ii)前記核酸は前記2種以上のプローブのうちの第2のプローブに付着していて、前記第2のプローブは前記ポリマーマトリックスに結合しているか、又は
(iii)前記2種以上のプローブのうちの前記第2のプローブは、前記ポリマーマトリックスに付着した増幅産物を生成するために用いられる、
2種以上の
異なるクラスの生体分子のin situ検出方法。
【請求項2】
前記2種以上の異なるクラスの生体分子は付着部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付着部分は前記ポリマーマトリックスに連結可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記付着部分は反応性基を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記付着部分は重合可能な基を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
付着部分を含むプライマー
を準備することを
さらに含み、ここで前記付着部分は前記ポリマーマトリックスに連結可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記2種以上
のプローブは付着部分を含み、ここで前記付着部分は前記ポリマーマトリックスに連結可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記(b)
において、活性化されると前記生体試料の体積を変化させる活性化可能剤を前記生体試料と接触させ、前記活性化可能剤に刺激を印加して
前記活性化可能剤を活性化して
、前記生体試料
の体積を変化させることをさらに含
む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記2種以上
のプローブの
うちのあるプローブはDNAバーコードを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記DNAバーコードを前記ポリマーマトリックスに付着させること又は前記DNAバーコードをin situで形成された前記ポリマーマトリックスに組み込むことをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記(c)における検出は前記DNAバーコードの配列決定において生成された蛍光シグナルを検出することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記配列決定はハイブリダイゼーションによる配列決定、又はポリメラーゼ若しくはリガーゼを使用する相補鎖の合成による配列決定を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記(c)における検出は細胞学的又は組織学的染色をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記(c)における検出は
前記核酸の発現を介して
前記タンパク質の存在を検出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
核酸はリボ核酸(RNA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質の検出にDNA結合抗体(DNA-conjugated antibody)及びハイブリダイゼーションによる配列決定が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記生体試料中の前記2種以上の異なるクラスの生体分子間の空間距離を測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記2種以上のプローブのうちの前記第2のプローブを増幅して前記(b)の後に前記増幅産物を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記増幅がローリングサークル増幅を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/381,997号の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された助成金番号P50HG005550及びRM1 HG008525及びアメリカ国立科学財団(National Science Foundation)により授与された助成金番号DGE1144152の下での政府の支援によりなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
トランスクリプトームは細胞表現型の重要な介在物質である。細胞性RNAはゲノムの状態を反映し、細胞の主要な物質の発現を構成する全てのタンパク質も生成する。それゆえ、RNA分子を検出することは細胞表現型に対する非常に深い洞察を生み出すと考えられる。しかしながら、RNAを検出することは、ゲノムの状態、プロテオーム、メタボローム、及び分子状態空間の次元についての推測を可能にするだけである。RNA蛍光in situ配列決定(FISSEQ)を他の分子検出様式と組み合わせて、統合パンオミクス(panomic)検出プラットフォームを形成する方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本開示は、生体試料の1種又は複数種の生体分子の検出又は同定に使用するためのシステムを提供する。システムは、(i)1種又は複数種の生体分子を含む生体試料と、(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を含み得るものであり、膨潤剤は体積を増加させるための刺激を加えることによって、1種又は複数種の生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化することが可能であり、刺激は、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激であり、1種又は複数種の生体分子は、付着部分を介して三次元マトリックスに結合しており、及び三次元マトリックスは、生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する。
【0005】
別の態様において、本開示は、生体試料の1種又は複数種の生体分子の検出又は同定に使用するためのシステムも提供する。システムは、(i)1種又は複数種の生体分子を含む生体試料と(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を含み得るものであり、膨潤剤は刺激の印加により生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化することが可能であり、刺激は液体ではなく、1種又は複数種の生体分子は付着部分を介して三次元マトリックスに結合しており、前記三次元マトリックスは生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する。
【0006】
いくつかの実施形態において、三次元マトリックスは生体分子を含む生体試料を含む。いくつかの実施形態において、システムは、容器に作動可能に結合されている刺激の供給源をさらに含み、膨潤剤への刺激の印加は膨潤剤を活性化して三次元ポリマーマトリックスを形成し、三次元ポリマーマトリックスは生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する。いくつかの実施形態において、システムは刺激の供給源に作動可能に結合されている、1又は複数のコンピュータープロセッサをさらに含み、1又は複数のコンピュータープロセッサは、刺激の供給源に対して、膨潤剤に刺激を印加し膨潤剤を活性化して三次元ポリマーマトリックスを形成するように個別に又は集合的にプログラムされている。いくつかの実施形態において、生体試料は細胞又はその派生物である。いくつかの実施形態において、生体分子はリボ核酸分子(RNA)、デオキシリボ核酸分子(DNA)、又はRNA及びDNAである。いくつかの実施形態において、電気化学的刺激は電気化学的反応である。いくつかの実施形態において、膨潤剤はさらに収縮剤として作用するように構成される。いくつかの実施形態において、収縮剤は、光活性化収縮剤、電気化学的活性化収縮剤、又は熱活性化収縮剤である。いくつかの実施形態において、膨潤剤はキレート化官能基を有する。いくつかの実施形態において、膨潤剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。いくつかの実施形態において、EDTAが、オルト―ニトロベンジルケージ化EDTA又はキノン-エステル保護EDTAである。いくつかの実施形態において、膨潤剤の活性化により、三次元マトリックスは1.1~10倍に膨潤するように構成される。いくつかの実施形態において、1種又は複数種の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係は、三次元マトリックスの膨張時に保存される。いくつかの実施形態において、付着部分は反応性基を含むか、反応性基に作動可能に結合されている。いくつかの実施形態において、付着部分はアミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は重合可能な基を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、本開示は本明細書に記載の三次元マトリックスを使用する方法であって、光により電気化学的又は熱的に三次元マトリックスを膨潤させることを含む方法、を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、膨潤に続いて蛍光in situ配列決定(FISSEQ)のための試薬を三次元マトリックスに流し込むこと、をさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、光により電気化学的又は熱的に三次元マトリックスを収縮させること、をさらに含む。
【0008】
別の態様において、生体試料内の生体分子のin situ検出又は同定に使用するための方法が提供される。方法は、(i)生体分子を含む生体試料と、(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を提供すること、ここで膨潤剤は刺激を加えることにより、生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化可能であり、刺激は、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激であり、膨潤剤に刺激を印加することにより膨潤剤を活性化して生体分子を含む三次元マトリックスを得ること、ここで生体分子は、付着部分を介して三次元マトリックスに結合しており、三次元マトリックスは、生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存すること、を含む。
【0009】
別の態様において、本開示は、生体試料内の生体分子のin situ検出又は同定に使用するための方法も提供する。方法は、(i)生体分子を含む生体試料と、(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を提供すること、ここで膨潤剤は刺激を加えることにより生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化可能であり、刺激は液体ではなく、及び膨潤剤に刺激を印加することにより、膨潤剤を活性化して生体分子を含む三次元マトリックスを得ること、ここで生体分子は、付着部分を介して三次元マトリックスに結合し、三次元マトリックスは生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存すること、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、三次元マトリックスは生体分子を含む生体試料を含む。いくつかの実施形態において、生体試料は細胞又はその派生物である。いくつかの実施形態において、方法は、三次元マトリックス内で少なくとも生体分子のサブセットを検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、刺激の供給源を適用すること、ここで供給源は、容器に作動可能に結合され、膨潤剤への印加は、膨潤剤を活性化して三次元ポリマーマトリックスを形成し、三次元ポリマーマトリックスが、生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存すること、をさらに含む。いくつかの実施形態において、供給源の適用は、個別に又は集合的にプログラムされた1又は複数のコンピュータープロセッサを用いて、刺激の供給源を膨潤剤に対して働かせることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、膨潤剤は、さらに収縮剤として作用するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、方法は、光により電気化学的又は熱的に三次元マトリックスを収縮させること、をさらに含む。
【0013】
別の態様において、本開示は、1種又は複数種の生体分子を同定するための重合三次元マトリックス、を提供する。重合三次元マトリックスは、骨格を含む三次元ポリマー及び三次元ポリマーの骨格に結合された付着部分を含み、付着部分は、三次元ポリマー内の1種又は複数種の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されており、重合三次元マトリックスは、1種又は複数種の生体分子を同定するためのプローブを含まない。
【0014】
いくつかの実施形態において、付着部分はプローブを捕捉するように構成されている。いくつかの実施形態において、三次元ポリマーマトリックスはプローブを捕捉するように構成されている。いくつかの実施形態において、重合三次元マトリックスは三次元ポリマーと一体化した生体試料をさらに含み、付着部分が生体試料内の1種又は複数種の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されている。いくつかの実施形態において、付着部分が1種又は複数種の生体分子に結合されたプローブを捕捉するように構成されている。いくつかの実施形態において、骨格はポリ(エチレングリコール)骨格である。いくつかの実施形態において、付着部分はボトルブラシトポロジーにおいて骨格に結合している。いくつかの実施形態において、付着部分は反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は重合可能な基を含む。
【0015】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載の重合三次元マトリックスを使用して生体分子を検出する方法であって、重合三次元マトリックスを提供すること、プローブを重合三次元マトリックスへ流入させること、及び重合三次元マトリックス内でプローブを捕捉すること、も含む。いくつかの実施形態において、方法は、プローブを検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、プローブを介して標的配列を配列決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、プローブの流入は、プローブに検出される生体分子に結合したプローブを流入させること含む。いくつかの実施形態において、プローブを捕捉することは、付着部分を介してプローブを捕捉すること、を含む。
【0016】
別の態様において、本開示は、1種又は複数種の生体分子を同定するための方法、を提供する。方法は、1種又は複数種の生体分子、並びに(i)骨格を含む三次元ポリマー及び(ii)三次元ポリマーの骨格に結合された付着部分、を含む重合三次元マトリックス、を含む容器を提供すること、ここで付着部分は、三次元ポリマー内の1種又は複数種の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されており、三次元マトリックスは、1種又は複数種の生体分子を同定するためのプローブを含まないこと、及びプローブを重合三次元マトリックスを通過させること、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、1種又は複数種の生体分子は、細胞又はその派生物に含まれている。いくつかの実施形態において、1種又は複数種の生体分子は、細胞由来の細胞マトリックスに含まれている。いくつかの実施形態において、方法は、重合三次元マトリックス内でプローブを捕捉することをさらに含む。いくつかの実施形態において、プローブを捕捉することは、付着部分を介してプローブを捕捉することを含む。いくつかの実施形態において、プローブは1種又は複数種の生体分子に結合する。いくつかの実施形態において、方法は、1種又は複数種の生体分子を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、1種又は複数種の生体分子を配列決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、骨格はポリ(エチレングリコール)骨格である。いくつかの実施形態において、付着部分はボトルブラシトポロジーの骨格に結合している。いくつかの実施形態において、付着部分は反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は重合可能な基を含む。
【0018】
別の態様において、本開示は、生体試料の複数の生体分子を検出する方法であって、少なくとも異なる2種類の複数の生体分子を含む生体試料を提供すること、付着部分を含むようにin situで複数の生体分子を修飾すること、付着部分を三次元ポリマーマトリックスにin situで連結すること、ここで付着部分は、生体試料内の複数の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されていること、及び少なくとも複数の生体分子のサブセットをin situで検出すること、を含む、方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態において、生体分子は光学的に検出される。いくつかの実施形態において、生体分子は蛍光検出される。いくつかの実施形態において、生体試料は細胞又はその派生物である。いくつかの実施形態において、生体試料は細胞由来の細胞マトリックスである。いくつかの実施形態において、生体分子はデオキシリボ核酸(DNA)、タンパク質、及び小分子を含む。いくつかの実施形態において、生体分子はタンパク質を含み、検出はタンパク質を配列決定することを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質を配列決定することは、タンパク質のN末端残基を酵素的に切断すること、及び検出可能な標識を有する親和性バインダーをin situでタンパク質に結合させること、を含む。いくつかの実施形態において、親和性バインダーはN末端アミノ酸結合タンパク質である。
【0020】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、サイクルハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)又はナノスケールトポグラフィにおけるイメージングのためのDNA点集積(points accumulation for imaging in nanoscale topography(PAINT))によってシグナル増幅を提供するように構成されている検出可能な標識である。いくつかの実施形態において、少なくとも異なる2種類の生体分子は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、タンパク質、及び小分子、を含む。いくつかの実施形態において、方法は、異なるクラスの生体分子間の分子相互作用を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、互いに近接した範囲内で異なるクラスの生体分子を検出することで、分子相互作用を知らせる。いくつかの実施形態において、方法は、2つ以上の異なるクラスの生体分子間の空間距離を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、検出することは、第2の種類の生体分子の発現を介して第1の種類の生体分子の存在を検出することを含む。いくつかの実施形態において、第1の種類の生体分子は小分子を含む。いくつかの実施形態において、第2の種類の生体分子は核酸である。いくつかの実施形態において、核酸はリボ核酸(RNA)であり、RNAの転写産物は、転写抑制又は活性化によって小分子により調節されている。いくつかの実施形態において、核酸の存在量又は存在が、小分子の存在量又は存在を示す。
【0021】
いくつかの実施形態において、1種又は複数種の生体分子を検出することは、蛍光in situ配列決定(FISSEQ)を用いて達成される。いくつかの実施形態において、付着部分は反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は重合可能な基を含む。
【0022】
別の態様において、本開示は、生体試料の複数の生体分子を検出する方法、を提供する。方法は、複数種の生体分子を含む生体試料を準備すること、ここで複数種の生体分子は、生体試料の第2の生体分子の有無を示す第1の生体分子を含むこと、付着部分を含むようにin situで第1の生体分子を修飾すること、付着部分を三次元ポリマーマトリックスにin situで連結すること、ここで付着部分は、生体試料内の第1の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されていること、第1の生体分子を検出すること、及び第1の生体分子を検出する時に第2の生体分子の有無を同定すること、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、方法は、追加の付着部分を含むようにin situで第2の生体分子を修飾することを含み、追加の付着部分を三次元ポリマーマトリックスにin situで連結することを含み、ここで追加の付着部分は、生体試料内の第2の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されている。いくつかの実施形態において、第1の種類の生体分子は小分子を含む。いくつかの実施形態において、小分子は代謝産物である。いくつかの実施形態において、核酸はリボ核酸(RNA)であり、RNAの転写産物は、転写抑制又は活性化によって小分子により調節されている。いくつかの実施形態において、核酸の存在量又は存在が、小分子の存在量又は存在を示す。
【0024】
別の態様において、本開示は、単一反応容器中の2種以上のクラスの生体分子のin situ検出法、を提供する。方法は、単一反応容器内の生体試料からの2種以上のクラスの生体分子の生体分子を含む複数の生体分子を準備すること、複数の生体分子によりin situでポリマーマトリックスを形成することを含み、ここでマトリックスは生体試料中の複数の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存し、少なくとも複数の生体分子のサブセットを検出する。
【0025】
いくつかの実施形態において、生体分子は、各生体分子との付着部分を含むように修飾されている。いくつかの実施形態において、付着部分はポリマーマトリックスに連結可能である。いくつかの実施形態において、方法は、付着部分を含むプライマー又はプローブを提供することをさらに含み、ここで付着部分がポリマーマトリックスに連結可能である。いくつかの実施形態において、生体分子はゲノムDNAの2以上の分子又はその断片を含み、さらに、付着部分はDNA分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するために使用される。いくつかの実施形態において、ゲノムDNA FISSEQライブラリーはポリマーマトリックスで形成される。いくつかの実施形態において、生体分子はタンパク質の2種以上の分子又はその断片を含み、タンパク質分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するためにさらに使用される付着部分をタンパク質分子の各々が含む。いくつかの実施形態において、方法は、DNAバーコードをポリマーマトリックスに付着させること又はDNAバーコードをin situで形成されたポリマーマトリックスに組み込むことをさらに含む。いくつかの実施形態において、生体分子は小分子を含む。いくつかの実施形態において、代謝産物及び小分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するためにさらに使用される付着部分を、小分子の各々が含む。いくつかの実施形態において、2種以上の分子プローブがin situでの分子相互作用の検出に使用され、2種以上の分子プローブの各々が、DNAバーコード配列を含む。いくつかの実施形態において、検出は、細胞学的及び/又は組織学的染色をさらに含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスはパンオミクス(panomic)FISSEQの超解像検出用に膨張可能である。いくつかの実施形態において、検出は計算分析を利用することをさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の2種以上のクラスの生体分子は、RNA、DNA、タンパク質、脂質、及び小分子を含む。
【0027】
参照による援用
本明細書で言及された全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、又は特許出願が具体的かつ個別に参照により援用されることが示されるのと同程度に参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【
図1A】
図1Aは、実施形態による、直接的単一タンパク質配列決定の概略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、実施形態による、直接的単一タンパク質配列決定の概略図を示す。
【
図1C】
図1Cは、実施形態による、直接的単一タンパク質配列決定の概略図を示す。
【
図2】
図2は、実施形態による、組織に関するin situ単一細胞「オミクス」データからの空間情報の同時解析のための目標を示す。
【
図3】
図3は、プログラムされているか、そうでなければ本明細書で提供される方法を実施するように構成されているコンピューター制御システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
概要
本開示は、目的の生体分子が三次元マトリックス内に固定されるように試料を処理することに関するシステム及び方法、を提供する。本明細書で使用される三次元マトリックスは、ヒドロゲル又はゲルを指し得る。三次元マトリックスは、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激などの様々な刺激を使用して重合及び/又は膨張させることができる。いくつかの実施形態において、三次元マトリックスは、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激などの外部刺激によって拡大又は縮小/収縮することができる。いくつかの例において、三次元マトリックスを重合し、続いて目的の生体分子を検出するために標識を含むプローブをマトリックスに流し込んでもよい。試料は、単一アッセイでin situで異なるクラスの生体分子を検出するために使用及び/又は再使用することができる。いくつかの例において、試料(同一試料)は、異なる種類又はクラスの生体分子の検出のために複数回処理又はアッセイされてもよい。本開示のシステム及び方法の利点の1つは、例えば、異なる生体分子検出のために単一の試料を使用することである。いくつかの実施形態において、試料は、ハイドロゲルがその場で形成され得るように試薬(例えば、ハイドロゲル形成モノマー)によって処理される。いくつかの実施形態において、目的の生体分子は、核酸、タンパク質、及び/又は小分子であり得る。様々な場合において、目的の生体分子は、付着部分を介してハイドロゲルに連結している。様々な実施形態において、ハイドロゲルを調製するための試薬が提供される。様々な実施形態において、目的の異なる生体分子をハイドロゲルに結合する方法が提供される。いくつかの例において、容器は、本明細書に記載のシステムの一部として提供され得る。容器は、生体試料、生体分子、膨潤剤、付着部分、試薬などを収容するように構成された任意の容器であり得る。場合によっては、容器は刺激の供給源から刺激を受け取るように構成され得る。
【0030】
RNA及びDNA FISSEQ
蛍光in situ配列決定(FISSSEQ)は、マトリックス内でin situで三次元的に配置された標的を検出又は配列決定する方法を指すことができ、ここで検出シグナルは蛍光シグナルである。FISSEQによって採用され得る配列決定方法は、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定、又はハイブリダイゼーションによる配列決定であり得る。FISSEQで検出又は配列決定された標的は、目的の生体分子又は目的の生体分子に結合したプローブであり得る。
【0031】
本開示は、RNA及び/又はDNA蛍光in situ配列決定(FISSEQ)のための方法又はシステムを提供し得る。FISSEQに利用される任意の構成要素は、本明細書に記載のシステムの一部であり得る。例えば、本開示は、付着部分を含むプライマーを提供し得る。付着部分はFISSEQに利用されてもよい。いくつかの例における付着部分は、目的の生体分子をハイドロゲルに連結するために利用され得る。所望により、付着部分は重合可能な基を含み得る。いくつかの実施形態において、付着部分はフリーラジカル重合性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む。様々な実施形態において、付着部分は続いてハイドロゲルに連結されてもよい。所望により、付着部分(単数又は複数)はin situでハイドロゲルに連結され得る。様々な実施形態において、付着部分を組み込んで、in situでハイドロゲルが形成される。様々な実施形態において、付着部分はさらに、試料内の2つ以上の分子又はゲノムDNAの断片間の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するために使用される。本開示に係る方法は、付着部分を含むプライマーを組み入れて、in situでハイドロゲルを形成することを含み得る。本開示に係る方法は、プライマーを標的核酸にアニーリングする工程をさらに含み得る。いくつかの場合において、本開示に係る方法は、プライマーから逆転写する工程をさらに含む。その他いくつかの場合において、本開示に係る方法は、プライマーからのポリメラーゼ連鎖反応工程をさらに含む。本開示に係る方法は、プライマーの3’又は5’末端のどちらか又は両方を使用してライゲーションする工程を含む。
【0032】
ゲノムFISSEQ
次世代配列決定技術は、DNA配列の空間的構成に関する情報を必要としない場合があるので、例えば個別化医療のために、そして系統発生を推論することなどの他のゲノム配列決定用途のために、生物間の多様な変異源を再配列決定するために使用できる。しかしながら、ゲノムFISSEQを使用して、生体試料内の非常に貴重な多数の情報を取得することができる。
【0033】
例えば、生物内の各体細胞が同一のゲノム配列を有するというわけではない可能性がある。広範囲のコピー数変異(CNV)が体細胞組織で観察されることがある。例えば、O’Huallachain, Maeve, et al. “Extensive genetic variation in somatic human tissues.“ Proceedings of the National Academy of Sciences 109.44 (2012): 18018-18023を参照。体性モザイク症には、30を超えるメンデル病が関連している可能性がある。例えば、Fabio Candotti. “Somatic mosaicism in primary immune deficiencies.」 Current opinion in allergy and clinical immunology 8.6 (2008): 510-514. Somatic mutations may be a primary initiator of autoimmune diseaseを参照。体細胞変異は自己免疫疾患の主なイニシエーターであり得る。例えば、Ross, Kenneth Andrew. “Coherent somatic mutation in autoimmune disease.“ PloS one 9.7 (2014): e101093を参照。体細胞進化は、いくつかの場合において、癌性細胞のゲノムを多様化し得、また生物内および腫瘍内に空間的及び時間的不均一性を生じる。例えば、Schmitt, Michael W., Marc J. Prindle, and Lawrence A. Loeb. “Implications of genetic heterogeneity in cancer.“ Annals of the New York Academy of Sciences 1267.1 (2012): 110-116を参照。癌細胞間の体細胞変異は、薬剤耐性遺伝子型を保有するまれな細胞が治療後に再発を引き起こす可能性をもたらし得る。例えば、Schmitt, Michael W., Lawrence A. Loeb, and Jesse J. Salk. “The influence of subclonal resistance mutations on targeted cancer therapy.“ Nature reviews Clinical oncology 13.6 (2016): 335-347を参照。
【0034】
正常な免疫細胞においてさえ、V(D)J組換えは、免疫グロブリン(Ig)及びT細胞受容体(TCR)に多様性を生み出すことにより適応免疫系を可能にし得る。例えば、Market, Eleonora, and F. Nina Papavasiliou. “V (D) J recombination and the evolution of the adaptive immune system.“ PLoS Biol 1.1 (2003): e16を参照。バイオフィルムなどの微生物集団内では、多様な種の特徴あるゲノム配列が空間的に編成されている可能性がある。例えば、Cutler, Nick A., et al. “The spatial organization and microbial community structure of an epilithic biofilm.“ FEMS microbiology ecology 91.3 (2015): fiu027を参照。さらに、全ての十分に大きい生物は、共生的又は病原性的のいずれかにより、生命の全ての界からの多様な生物のゲノムで占められ得る、腸及び皮膚などのミクロビオームである多数の生態系から構成され得る。DNA次世代配列決定(NGS)のある程度の実現では、単一細胞の分解能を得るが(例えば、Zong, Chenghang, et al. “Genome-wide detection of single-nucleotide and copy-number variations of a single human cell.“ Science 338.6114 (2012): 1622-1626; Burton, Joshua N., et al. “Species-Level Deconvolution of Metagenome Assemblies with Hi-C-Based Contact Probability Maps.“ G3: Genes| Genomes| Genetics 4.7 (2014): 1339-1346を参照)、配列データを局在化する能力は制限されたままであり得る。
【0035】
個々の細胞内で、ゲノムはヌクレオソームに空間的に構造化されており(例えば、Lee, William, et al. “A high-resolution atlas of nucleosome occupancy in yeast.“ Nature genetics 39.10 (2007): 1235-1244を参照)、ヘテロクロマチン、ユークロマチン、又はより多くの他のクロマチン状態にあり(例えば、Baker, Monya. “Making sense of chromatin states.“Nature methods 8.9 (2011): 717-722を参照)、これはエンハンサーループなどのトランス作用配列によるものであり(Heidari, Nastaran, et al. “Genome-wide map of regulatory interactions in the human genome.“ Genome research 24.12 (2014): 1905-1917; Rao, Suhas SP, et al. “A 3D map of the human genome at kilobase resolution reveals principles of chromatin looping.“ Cell 159.7 (2014): 1665-1680)、位相的に関連したドメインに構造化され(topologically-associated domains(TADs))(Dixon, Jesse R., et al. “Topological domains in mammalian genomes identified by analysis of chromatin interactions.“ Nature 485.7398 (2012): 376-380; Nora, Elphege P., et al. “Spatial partitioning of the regulatory landscape of the X-inactivation centre.“ Nature 485.7398 (2012): 381-385; Sexton, Tom, et al. “Three-dimensional folding and functional organization principles of the Drosophila genome.“ Cell 148.3 (2012): 458-472)、これはタンパク質(Jothi, Raja, et al. “Genome-wide identification of in vivo protein-DNA binding sites from ChIP-Seq data.“ Nucleic acids research 36.16 (2008): 5221-5231)やRNA(Chu, Ci, et al. “Genomic maps of long noncoding RNA occupancy reveal principles of RNA-chromatin interactions.“ Molecular cell 44.4 (2011): 667-678)などの広範囲の他の生体分子に対するものである。クロマチン立体構造を検出するためにNGSを使用する方法は、シス及びトランスの両方の遺伝子座の近接を反映する相対接触頻度を0.2~1kbの分解能で測定する。例えば、Dekker, Job, et al. “Capturing chromosome conformation.“ science 295.5558 (2002): 1306-1311; Lieberman-Aiden, Erez, et al. “Comprehensive mapping of long-range interactions reveals folding principles of the human genome.“ science 326.5950 (2009): 289-293を参照。(染色体立体構造捕捉技術の概説については、Sati, Satish, and Giacomo Cavalli. “Chromosome conformation capture technologies and their impact in understanding genome function.“ Chromosoma (2016): 1-12を参照。)しかしながら、これらの方法は、ゲノム配列の絶対的な構成ではなく相対的な構成を測定するだけであり得、活性化状態にも関連するが(例えば、Schneider, Robert, and Rudolf Grosschedl. “Dynamics and interplay of nuclear architecture, genome organization, and gene expression.“ Genes & development 21.23 (2007): 3027-3043を参照)、遺伝子座の形や大きさには関連しない(例えば、Beliveau, Brian J., et al. “Single-molecule super-resolution imaging of chromosomes and in situ haplotype visualization using Oligopaint FISH probes.“ Nature communications 6 (2015)を参照)。クロマチン立体構造捕捉方法はまた従来より感度が乏しく、何百万ものインプット細胞の何百万もの遺伝子座ー遺伝子座共局在事象を捕捉すること、すなわち集団平均立体構造を作り出すために細胞あたりわずか数事象のみを検出することが求められる。入力量は単一細胞について計測可能であるが、感度が大幅に低下する。例えば、Nagano, Takashi, et al. “Single-cell Hi-C for genome-wide detection of chromatin interactions that occur simultaneously in a single cell.“ Nature protocols 10.12 (2015): 1986-2003を参照。
【0036】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)の超解像イメージングは配列レベルの変異を検出するために使用できる(例えば、Kallioniemi, Anne, et al. “Gene Copy Number Analysis by Fluorescence in Situ Hybridization and Comparative Genomic Hybridization.“ Methods 9.1 (1996): 113-121) as well as the absolute or relative spatial organization of genomic loci (see e.g., Beliveau, Brian J., et al. “Single-molecule super-resolution imaging of chromosomes and in situ haplotype visualization using Oligopaint FISH probes.“ Nature communications 6 (2015)を参照)。FISSEQは、単一細胞内のゲノム配列の空間的構成の直接測定を可能にし得る。従って、ゲノムの直接的in situ配列決定は、数百または数十塩基まででさえも、そしてアッセイでの細胞数に比例するまれな局在化事象に対する感度で、高解像度で配列間の空間的関係を明らかにし得る。さらに、in situRNA配列決定又はタンパク質検出からの情報と組み合わせると、エピジェネティックな状態における単一細胞の不均一性が明らかになることがあり、遺伝子発現の調節の根底にあるメカニズムを理解することが可能となるであろう。
【0037】
エピジェネティクス
抗体又は他のマーカーは、OligoPaint、OligoFISSEQと併用したDNAコンジュゲート抗体の使用、環状化法による捕捉、又は直接的in situゲノム配列決定などによるゲノム検出と並行したエピジェネティック(後成的)な修飾に適用できる。抗体が利用可能であり、遺伝子制御、転写、複製、及び/又はDNA損傷及び修復において顕著な役割を果たす因子には、Oct4、Sox2、及びNanogなどの多能性の確立に関与する要因と同様に、コヒーシン、コンデンシン、RNAPII、CTCF、ヒストン変異体(例えば、H2A.Z、H2A.X、H3K4me3、H3K27ac、H3K27me3、H3K9me2/3)、PRC1、PRC2、SIN3、NuRDの成分、及びco-RESTクロマチン複合体などの包括的に作用する因子が含まれる。ゲノムFISSEQは相同染色体の視覚的識別を可能にするので、我々はX不活性化、インプリンティング、及び単一対立遺伝子発現を検討できる。重要なことに、他の相同体感受性法はゲノム又はRNA分子の反復部分に限定され、したがって単一コピー又は発現抑制領域には不適切であるが、本明細書に提供される方法は一塩基多型(SNP)を標的とし、ゲノム全体の発見を可能にする。
【0038】
ゲノムFISSEQは、単一細胞内のゲノムの遺伝子型、エピジェネティックな状態、及び三次元(3D)構成を同時に測定するための強力な戦略となり得る。RNA FISSEQと同様に、ゲノムFISSEQは、核内で測定可能な物理的に離散した(重ならない)解析可能な蛍光シグナルの数に対する空間的制約によって本質的に制限され得る。これは、一度に検出され得る遺伝子座の数、及び空間的に共局在化された配列(例えば、エンハンサーループ)の検出も制限し得る。しかしながら、標的ゲノムFISSEQ又は多数の細胞を使用するアンサンブルゲノム再配列決定などの多くの用途は、この空間的制約内で機能し得る。例えば、約150塩基対の配列に対応する各ヌクレオソームは、およそ10×10×20ナノメートルのサイズであり、わずか8~10倍の線膨張係数を用いたExM又は超解像顕微鏡技術の分野における当業者に知られている他の手法によって解析可能であり得る。
【0039】
全体として、RNA FISSEQと同様に、ライブラリー構築の生化学に対する核酸の利用可能性は、実際には追加情報をライブラリーにコード化し得る。このようにして、FISSEQはゲノムの空間構成と配列変異についての情報だけでなく、エピジェネティックな状態への洞察も提供することができる。クロマチン状態などのエピジェネティックな特徴は、ゲノム調節のメカニズムを明らかにし、細胞表現型の状態(「細胞型」)を区別するために使用することができる。ゲノムFISSEQは、RNA FISSEQ並びにタンパク質及び他の生体分子のFISSEQ検出と組み合わせることができ、それにより相関分析を強化してゲノム調節のメカニズムを根本的に明らかにすることができる。
【0040】
ゲノムFISSEQを実施するために、ゲノムDNAをハイドロゲルマトリックスに連結し、FISSEQ検出のためにin situで処理することができる。ハイドロゲル処理した生体試料を用いて様々なゲノム情報を決定することができる。様々な実施形態において、例えば、本明細書に記載されているように、ゲノムDNAを付着部分によってハイドロゲルマトリックスに連結することができる。付着部分は、仲介化合物によってハイドロゲル上の反応性基と反応させることができる。いくつかの実施形態において、付着部分は、仲介化合物を介して目的の標的に連結できる。いくつかの実施形態において、付着部分は、未変性核酸分子上の官能基(又は反応性基)に直接連結することができる。いくつかの実施形態において、付着部分は、仲介化学物質又は基を介して間接的に標的に結合することができる。本明細書に記載の結合戦略は核酸標的に限定されず、タンパク質又は小分子標的にも同様に使用することができる。
【0041】
本明細書で使用される用語「反応性基」は、異なる化合物(すなわち、目的の基質又は標的)上の官能基(又は別の反応性基又は付着部分)と化学的に反応して共有結合またはイオン結合を形成することができるハイドロゲルのモノマー又はポリマー上の任意の部分を意味する。本明細書で使用される反応性基及び官能基は互換的に使用されてもよい。本明細書で使用される付着部分は反応性基を含むことができる。適切な反応性基の例には、目的の基材上のそれぞれ対応する求核剤又は求電子剤との反応により共有結合を形成することができる求電子剤又は求核剤が含まれる。適切な求電子反応性基の非限定的な例としては、例えば、活性化エステル類を含むエステル類(例えば、スクシンイミジルエステル類など)、アミド類、アクリルアミド類、アシルアジド類、アシルハライド類、アシルニトリル類、アルデヒド類、ケトン類、アルキルハライド類、アルキルスルホネート類、無水物類、アリールハライド類、アジリジン類、ボロン酸塩(ボロネート)類、カルボジイミド類、ジアゾアルカン類、エポキシド類、ハロアセトアミド類、ハロ白金酸塩(ハロプラチネート)類、ハロトリアジン類、イミドエステル類、イソシアネート類、イソチオシアネート類、マレイミド類、ホスホルアミダイト類、ハロゲン化シリル類、スルホン酸エステル類、ハロゲン化スルホニル類などが挙げられ得る。適切な求核反応性基の非限定的な例としては、例えば、アミン類、アニリン類、チオール類、アルコール類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類、カルボン酸類、グリコール類、複素環類などが挙げられ得る。
【0042】
本開示は、付着部分を含むようにin situでゲノムDNAを修飾する方法を提供する。いくつかの実施形態において、付着部分は重合可能な基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分はフリーラジカル重合性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、続いてハイドロゲルにin situ連結される。様々な実施形態において、付着部分を組み込んで、in situでハイドロゲルが形成される。いくつかの実施形態において、付着部分はさらに、試料内の2種以上の分子又はゲノムDNAの断片間の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するために使用される。
【0043】
本開示は、in situでゲノムDNAをさらに修飾する方法であって、DNAを断片化し、二本鎖DNAを変性して一本鎖DNA鎖を形成すること、DNAの3’及び/又は5’末端を修飾すること、アダプター配列を追加すること、ゲノムDNAを環状化すること、及びゲノムDNAを増幅すること、を含む、方法、を提供する。いくつかの実施形態において、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はローリングサークル増幅(RCA)によって達成できる。
【0044】
本開示は、核酸配列決定を使用してin situでゲノムDNA配列の全部又は一部をさらに検出する方法、を提供する。例示的な配列決定方法は、ハイブリダイゼーションによる配列決定及びポリメラーゼ又はリガーゼを用いて相補鎖を合成することによる配列決定(合成による配列決定、連結による配列決定)を含み得る。いくつかの実施形態において、蛍光シグナルは配列決定時に生成される。
【0045】
本開示は、SNV、欠失、挿入、転位、反転、複製、染色体融合を含む突然変異及び/又はヒトの疾患における診断的、予後的、又は治療的ガイダンスのためのその他のゲノム変異の検出のためのin situゲノム配列決定の使用を提供する。例示的な疾患としては、癌、免疫疾患及び自己免疫疾患、並びにメンデル病が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される方法はまた、V(D)J組換え産物、免疫グロブリン、及びT細胞受容体(TCR)などの免疫細胞受容体を含む、獲得免疫又は先天性免疫に関連する配列の検出にも使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、ヒト患者内の、皮膚、腸、口腔、及び膣のミクロビオーム、及び細菌、真菌、及びウイルスを含む病原体などのミクロビオーム内の種を含む非ヒト遺伝子配列の検出に使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法はバイオフィルムの種を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法は、転写された遺伝子座、タンパク質コード領域、非タンパク質コード領域、エンハンサー、プロモーター、調節領域、トポロジー関連ドメイン(TAD)、セントロメア、テロメア及び複製起点を含むDNAエレメントを決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、2種以上のそのようなDNAエレメント間の空間的関係を検出するため、並びにサイズ、形状及び体積を含むDNA要素の特性を検出するために使用できる。
【0046】
本開示は、DNA結合部分及び付着部分を含む試薬を含む、ゲノムDNA FISSEQライブラリーを形成するためのキット又はシステム、を提供する。ここで付着部分はヒドロゲル、in situでハイドロゲルを形成するための試薬及び/又はさらなる増幅のためのプライミング部位としてのアダプター配列を含むDNAオリゴヌクレオチド、に連結することができる。
【0047】
本開示は、蛍光部分、DNAリガーゼ、FISSEQアッセイに適したイメージング用緩衝液、及び/又は配列決定に適した取り込み用緩衝液に結合した複数種のオリゴヌクレオチドを含む、DNAの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。
【0048】
本開示は、蛍光部分、DNAポリメラーゼ、FISSEQアッセイに適したイメージング用緩衝液、及び/又は配列決定に適した取り込み用緩衝液に結合した複数種のオリゴヌクレオチドを含む、DNAの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステム、を提供する。
【0049】
本開示は、例えば、蛍光部分に結合した、ハイブリダイゼーション連鎖反応モノマーなどの複数種の準安定自己組織化DNAヘアピン、ゲノム配列に相補的な配列を含む複数種のDNAオリゴヌクレオチド、FISSEQアッセイに適したイメージング用緩衝液、核酸ハイブリダイゼーションに適したハイブリダイゼーション用緩衝液、及び/又はHCR増幅用緩衝液を含む、DNAの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステム、を提供する。
【0050】
タンパク質FISSEQ
従来のタンパク質検出アッセイの限界
核酸標的のように、タンパク質はin situで検出され得る。タンパク質を標的とするために様々な方法を使用することができる。例えば、in situタンパク質検出は、免疫タンパク質及びアプタマーの親和性結合特性を利用し得る。
【0051】
免疫蛍光技術は、抗体(Ab)、免疫グロブリン(Ig)アイソフォーム、又はそれらの断片が標的抗原に特異的に結合する能力を利用する。in situ標識に使用される抗体は、典型的にはIgG又はIgYアイソタイプであり、それらは4本のポリペプチド鎖からなる。「抗原結合断片」(Fab)などの抗体の断片(例えば、Holliger, Philipp, and Peter J. Hudson. “Engineered antibody fragments and the rise of single domains.“ Nature biotechnology 23.9 (2005): 1126-1136を参照)又はナノボディと呼ばれる単鎖(例えば、Gibbs, W. Wayt. “Nanobodies.“ Scientific American 293.2 (2005): 78-83参照)でも、タンパク質標的を結合するために使用できる。
【0052】
タンパク質は、典型的には、抗体を蛍光染料で直接標識することによって、又は一次抗体の定常領域を認識する蛍光二次抗体を用いて結合抗体を二次標識することによって検出される。複数の二次抗体が一次抗体の異なるドメインに結合することができ、二次抗体が複数の蛍光分子を運べるので、二次標識の使用もまたシグナル増幅の形態であり得る。しかしながら、二次抗体の使用は、例えば、異なる種由来のIgタンパク質、又は異なるIgアイソタイプ若しくはサブタイプを使用して、直交性の一次-二次抗体対の数に多重度を制限する可能性がある。例えば、Tidman, N., et al. “Delineation of human thymocyte differentiation pathways utilizing double-staining techniques with monoclonal antibodies.“ Clinical and experimental immunology 45.3 (1981): 457を参照。抗体染色もまた連続的に行うことができるが、これは多重度をサイクル数と共に直線的に増減するだけである。例えば、Lan, Hui Y., et al. “A novel, simple, reliable, and sensitive method for multiple immunoenzyme staining: use of microwave oven heating to block antibody crossreactivity and retrieve antigens.“ Journal of Histochemistry & Cytochemistry 43.1 (1995): 97-102; Gerdes, Michael J., et al. “Highly multiplexed single-cell analysis of formalin-fixed, paraffin-embedded cancer tissue.“ Proceedings of the National Academy of Sciences 110.29 (2013): 11982-11987を参照。抗体は連続切片化によって多重化することができ、ここで免疫蛍光検出は個々の切片上で実施することができ、それを次にコンピューターで組み合わせる。例えば、Potts, Steven, et al. “Methods for feature analysis on consecutive tissue sections.“(米国特許第8,787,651号、2014年7月22日)を参照。
【0053】
一次又は二次標識のいずれかを使用して、in situタンパク質検出は、限られた範囲で多重化され得る。明視野顕微鏡を用いて、発色沈着により、視覚的に異なる色原体/酵素対の数を提供することができる(van der Loos, Chris M. “Chromogens in multiple immunohistochemical staining used for visual assessment and spectral imaging: the colorful future.“ Journal of Histotechnology 33.1 (2010): 31-40)。「比色」バーコード化もまた使用することができる。例えば、Stack, Edward C., et al. “Multiplexed immunohistochemistry, imaging, and quantitation: a review, with an assessment of Tyramide signal amplification, multispectral imaging and multiplex analysis.“ Methods 70.1 (2014): 46-58を参照。これらの技術は両方とも、同定に必要とされる異なる色を融合させる標的タンパク質の共局在化によって制限される。量子ドットを用いたマルチスペクトルイメージングは、7つの蛍光シグナルを同時にイメージングするために使用することができる(例えば、Fountaine, Thomas J., et al. “Multispectral imaging of clinically relevant cellular targets in tonsil and lymphoid tissue using semiconductor quantum dots.“ Modern Pathology 19.9 (2006): 1181-1191)。
【0054】
二次抗体の特異性の問題を回避することができる一次標識を使用しても、単一のアッセイにおいて多数の抗体を一緒に組み合わせることは困難であり得る。抗体は通常、抗原賦活化(antigen retrieval (AR))と呼ばれるサンプル処理を必要とする。ARの一般的な形態は、高pH及び低pH、高温、又は酵素処理を含み得る(例えば、Taylor, Clive R. “Quantitative in situ proteomics; a proposed pathway for quantification of immunohistochemistry at the light-microscopic level.“ Cell and tissue research 360.1 (2015): 109-120を参照)。残念なことに、これらの処理法は組み合わせることが困難又は相互に排他的であることである可能性があり、同時に使用することができる抗体のセットの組成を著しく制限する。多くのAR処理は、RNAやDNAなどの他の目的の生体分子に損傷を与える可能性がある。例えば、DNAの脱プリン速度は熱及び酸性条件下で増加し得る。単一の組織切片からのタンパク質は、層状膜を使用してサイズによって分離することができ、異なる条件下で異なるサイズのタンパク質の免疫蛍光検出を可能にし、蛍光色又は二次抗体を再使用する。例えば、Park, Soon Sik, et al. “Multiplex layered immunohistochemistry to predict response of HER2-positive breast cancer patients to trastuzumab therapy.“ ASCO Annual Meeting Proceedings. Vol. 30. No. 27_suppl. 2012を参照。この方法は免疫蛍光検出の多重度を拡大することができるが、サイズによるタンパク質の分離への三次元の再割り当てのために、サンプル内のタンパク質の二次元(2D)分布を捕捉することしかできない。
【0055】
免疫タンパク質に加えて、in situでのタンパク質検出は、特定の標的に結合することができるオリゴヌクレオチド又はペプチドであるアプタマーによって可能にされ得る。例えば、Ellington, Andrew D., and Jack W. Szostak. “In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands.“ nature 346.6287 (1990): 818-822; Tuerk, Craig, and Larry Gold. “Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase.“ Science 249.4968 (1990): 505-510を参照。いくつかの成功した使用にもかかわらず、アプタマーは、抗体試薬のより広い利用可能性及び抗体結合のより好ましい特性の両方のために、in situタンパク質検出に広く使用されない可能性がある。アプタマーは通常、多くの場合アプタマーよりおよそ10~100倍高い結合能の抗体よりもタンパク質への結合が弱く、様々な一定の条件下で作用する。タンパク質は、システインの硫黄原子、疎水性相互作用、及び正に荷電した基などの親和性の向上のための利用に利用可能なより大きい化学空間を有するため、アプタマーよりもうまく機能する可能性がある。しかしながら、アプタマーは、いくつかの場合において、タンパク質を標的化することにおいて依然として価値があり得る。化学修飾ヌクレオチドを使用する最近の進歩及び遅い解離速度を選択するための動的負荷の使用は、抗体に適合する親和性(nM~pM)を有するアプタマーを産生することができる。例えば、Gold, Larry, et al. “Aptamer-based multiplexed proteomic technology for biomarker discovery.“PloS one 5.12(2010): e15004を参照。
【0056】
免疫タンパク質又はアプタマーのいずれかを使用して、in situでのタンパク質標識のためのプロトコルは、典型的には、正確な結果を達成するために広範な検証及び微調整を必要とし得る。これらのプロトコルの複雑さは、生体分子及び高分子成分の大きな多様性、並びに試料の固定及び処理中のそれらの修飾から生じ得る。さらに、限定されたシグナル増幅及び高いバックグラウンドのために、免疫タンパク質もアプタマーも単一分子の検出のために使用されない可能性がある。
【0057】
最後に、タンパク質親和性バインダー試薬の最後のクラスには、非免疫学的ペプチド及び特定のタンパク質に対して天然の親和性を有するタンパク質が含まれる。一例は、小麦胚芽アグルチニン、38kDaレクチン、又は炭水化物結合タンパク質であり、これらは細胞膜及び軟骨などの他の組織の特徴を標識するために使用することができる。他の例は、ファロイジン、F-アクチンに結合し、細胞骨格を標識するために使用される二環式ヘプタペプチド毒素である。本明細書の例示は限定的ではない。
【0058】
FISSEQのための親和性バインダー試薬のライブラリー・オン・ライブラリー(library-on-library)選択
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるのは、FISSEQに使用される親和性バインダーのライブラリー・オン・ライブラリー選択を使用する方法である。いくつかの実施形態において、ライブラリー・オン・ライブラリー選択戦略は、単一分子相互作用配列決定(SMI-seq)を使用することであり得る。この戦略は、同じ緩衝液条件で機能し得る複数のタンパク質標的に対して複数のバインダーを選択するのに有用であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法において選択されるバインダーは、同じ条件で作用し得、そして他のものと相互作用しない。いくつかの実施形態において、バインダーは互いに反応性が低下している可能性がある。本明細書に提供される方法は、選択されたバインダーを使用し、FISSEQを使用して三次元的に固定した試料中のタンパク質を検出する。
【0059】
これらの親和性バインダー試薬の制限にもかかわらず、分子結合親和性及び特異性を同時に測定するためのバインダーの「ライブラリースクリーニング」のための方法がある。例えば、単一分子相互作用シークエンス(SMI-seq)は、アクリルアミド中のFISSEQを使用して、タンパク質-リボソーム-メッセンジャーRNA-相補的DNA(PRMC)複合体のライブラリーと一連のDNA結合タンパク質の間の単一分子相互作用を検出する。例えば、Gu, Liangcai, et al. “Multiplex single-molecule interaction profiling of DNA-barcoded proteins.“ Nature 515.7528 (2014): 554-557を参照。SMI-seqは、scFvペプチドのライブラリーからのように、親和性バインダーのスクリーニング及び進化を可能にし得る。同様に、SELEXと称されるアプタマーのインビトロ選択は、アプタマーのスクリーニング及び進化のために使用され得る。例えば、Blind, Michael, and Michael Blank. “Aptamer selection technology and recent advances.“ Molecular Therapy-Nucleic Acids 4.1 (2015): e223を参照。これらの方法の両方とも、多様化を伴う(例えば、誤りが生じやすいPCRによる)親和性バインダーの大きなライブラリー(例えば、1010)からの選択のラウンドを可能にする。続いて、標的分析物に対するバインダーの特性を把握するために、結合頻度及び特異性を決定するためのDNA配列決定が行われる。
【0060】
しかしながら、多数の標的分子に対する親和性バインダーの発見を可能にするために、バインダーのライブラリーを標的のライブラリーに対してスクリーニングする必要があり、これは「ライブラリー・オン・ライブラリー」として知られている手法である。いくつかの場合において、SMI-seqは、標的タンパク質をバーコード化するためにDNAコンジュゲーションを使用することができる。その他いくつかの場合において、SMI-seqは、scFvライブラリー及びヒトORFeomeを含む標的ライブラリーと同様に、選択の両側でタンパク質-リボソーム-メッセンジャーRNA-相補的DNA(PRMC)複合体にmRNAディスプレイを使用することができる(ORFeome Collaboration.” The ORFeome Collaboration: a genome-scale human ORF-clone resource.“Nature methods 13.3 (2016): 191-192)。mRNAディスプレイを使用する場合、多様性(重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインのloxスクランブリングを介する)及びロバストなフォールディング(以前は厄介な失敗モード)のために特に設計されたファージscFvライブラリーを使用することができる。この戦略の推定多様性は、組換え前(約2.5e14後)に約5e7であり得る。
【0061】
既知の結合強度及び特異性を有するPRMCバインダーのライブラリーの同時選択は、FISSEQによるタンパク質の検出に有用であり得る。この方法により、交差反応性を回避し、ライブラリー全体に対して互換性のある結合条件を保証することを可能にする。標的ペプチドは翻訳されるので、標的ペプチドの状態を制御して、FISSEQ試料中のタンパク質の状態をシミュレート又は一致させることができる。例えば、FISSEQの間、ホルムアルデヒド固定を使用し、続いて尿素又はSDS中で処理してタンパク質を変性させてもよい。生体試料のエピトープ提示と一致させるために同じ化学的処理を用いてバーコード化ORFeomeライブラリーを調製することもできる。
【0062】
いくつかの場合において、アプタマーを使用してタンパク質-リボソーム-メッセンジャーRNA-相補的DNA(PRMC)のORFeome標的ライブラリーを標的とするSMI-seqもアプタマーのハイスループット選択に使用できる。我々のバーコード化標的ライブラリーを使用して、新規のSELEX技術を開発し得る。これらのアプローチは、親和性バインダーのライブラリーの発見及び適合性に関する問題を解決し得るが、それらは単一分子の検出に関連する問題を解決し得ない。単一分子検出は、2つの戦略に基づいてさらに開発することができる。例えば、1つの戦略は、単一のバインダーを検出するためのRCA及びサイクリックHCR(CHCR)などのシグナル増幅方法を開発することであり得、他の戦略は単一の標的タンパク質を分離及び局在化するためのExMなどの超解像顕微鏡法を開発することであり得る。
【0063】
直接的単一タンパク質配列決定
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法は、タンパク質配列を同定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、タンパク質は、エドマン分解によって同定され得る。
【0064】
エドマン分解反応を使用するペプチド配列決定は、特異的切断のサイクル及びN末端残基の同定によってタンパク質の規則正しいアミノ酸組成を決定する方法であり得る。N末端アミノ基は、中アルカリ条件下でフェニルイソチオシアネートと反応して、環状フェニルチオカルバモイル派生物を形成し得る。条件を酸性に変えることによって、この派生物は開裂され、有機溶媒中に抽出され、フェニルチオヒダントイン(PTH)‐アミノ酸派生物に安定化され、クロマトグラフィー又は電気泳動を用いて同定され得る。このプロセスは、in situでの単分子タンパク質配列決定に適合させることができる。DNA安定性と適合しない可能性のあるエドマン分解反応を使用する代わりに、N末端残基の酵素的切断を使用することができる。例えば、Borgo, Benjamin, and James J. Havranek. “Computer‐aided design of a catalyst for Edman degradation utilizing substrate‐assisted catalysis.“ Protein Science 24.4 (2015): 571-579を参照。切断されたN末端残基の検出にクロマトグラフィー又は電気泳動を使用するよりもむしろ、検出可能な標識を担持するN末端アミノ酸結合タンパク質(NAAB)などの親和性バインダーを使用することができる。単分子検出のためには、理想的な検出可能な標識は、サイクリックHCR(CHCR)またはDNA PAINTなどによるシグナル増幅をもたらすものである。
【0065】
DNA PAINTは、細胞がひしめく環境の中で単一のN末端を検出するために使用できる超解像顕微鏡検査も可能にする。他の戦略もまた、複数のタンパク質からの回折限界配列決定シグナルの畳み込みを回避するために使用され得る。十分に大きな膨張係数を有するExMは、回折限界を超えて個々のタンパク質の物理的解析を達成することができる。確率論的な超解像顕微鏡法及びデジタル分割顕微鏡法と同様に、配列決定反応を、タンパク質のサブセットのみをFISSEQハイドロゲルに共有結合させることによるか、又は元のタンパク質のごく一部だけが残るまでタンパク質分解を行うことによってなど、タンパク質のランダム又は標的化サブセットに限定することができる。
【0066】
他のタンパク質フィンガープリント法は、タンパク質の規則正しいアミノ酸組成を決定することなく同定を可能にし得る。例えば、それぞれL/F/Y及びR/K/Hに結合するClps及び/又はUBR1のみを使用すると、一意的に同定可能なタンパク質の数は、25残基のみの決定後に20アミノ酸全ての認識を使用する数に近づく(
図1A~
図1C)。例えば、Erbse, A., et al. “ClpS is an essential component of the N-end rule pathway in Escherichia coli.“ Nature 439.7077 (2006): 753-756; Varshavsky, Alexander. “The N-end rule: functions, mysteries, uses.“ Proceedings of the National Academy of Sciences 93.22 (1996): 12142-12149を参照。タンパク質同定に対するより「比色的」なアプローチを開発することができる(すなわち、順序付けられた順列ではなくシグナルの組み合わせを使用する)。例示的な比色分析アプローチは、特定のアミノ酸対間のペプチド結合を選択的に加水分解し、そして形成された末端の数を数えてもよい。
【0067】
本開示は、核酸バーコードの必要性を排除することによって、直接的単一タンパク質配列決定のためのライブラリー・オン・ライブラリースクリーニングの方法を提供する。単一タンパク質のin situ配列決定はまた、生体検体上で直接親和性バインダーを選択することを可能にし、合成標的ライブラリーの必要性を完全に回避する。mRNAの存在量を測定するだけでは、プロテオームの状態に関する洞察が限られる。無傷の生体検体内の単一タンパク質の大量多重検出は、定量的プロテオミクスの新時代をもたらし得る。本明細書に提供されるタンパク質FISSEQはまた、RNA及びDNAのFISSEQと組み合わせることができる。
【0068】
本開示は、付着部分を含むようにin situでタンパク質を修飾する方法、を提供する。いくつかの実施形態において、付着部分はフリーラジカル重合性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は重合可能な基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、クリック反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、続いてハイドロゲルにin situ連結される。いくつかの実施形態において、付着部分を組み込んで、in situでハイドロゲルが形成される。いくつかの実施形態において、付着部分はさらに、試料内の2つ以上の分子又はタンパク質の断片間の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するために使用される。付着部分は、仲介化合物によってタンパク質標的に連結することができる。いくつかの実施形態において、付着部分は、いかなる仲介化学物質又は基を介することなく未変性タンパク質に結合している。いくつかの実施形態において、付着部分は、仲介化学物質又は基を介してタンパク質標的に結合している。
【0069】
本開示は、親和性結合を付与する部分及び固有のDNAバーコードを各々含む2つ以上の親和性バインダー試薬を結合することを含む、ハイドロゲル内の2つ以上のタンパク質種を検出する方法、を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、核酸配列決定を用いてin situでDNAバーコードを検出することをさらに含む。例示的な配列決定方法は、ハイブリダイゼーションによる配列決定及びポリメラーゼ又はリガーゼを用いて相補鎖を合成することによる配列決定(合成による配列決定、連結による配列決定)を含む。いくつかの実施形態において、方法は、蛍光シグナルが生成されるDNAバーコードを配列決定することを含む。
【0070】
本開示は、固有のDNAバーコードを各々含む2つ以上の親和性バインダー試薬、並びに重合性基又はクリック反応性基を含む付着部分を結合することを含む、ハイドロゲル内の2つ以上のタンパク質種を検出する方法、を提供する。いくつかの実施形態において、方法はさらに、DNAバーコードをハイドロゲルに付着させること、又はDNAバーコードをin situで形成されたハイドロゲルに組み込むことを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ハイブリダイゼーションによるか、又はポリメラーゼ若しくはリガーゼを使用する相補鎖の合成などによる(例えば、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定)核酸配列決定を使用してin situでDNAバーコードを検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、蛍光シグナルが生成される配列決定工程を含む。
【0071】
本開示は、FISSEQのための親和性バインダー試薬を生成するための親和性バインダー試薬のライブラリー・オン・ライブラリー選択方法、を提供し、ここで、親和性バインダーのライブラリーは2種以上のバインダーを含む。いくつかの実施形態において、バインダーはアプタマーである。いくつかの実施形態において、バインダーは、核酸、核酸類似体、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質からなる。いくつかの実施形態において、標的ライブラリーは、核酸、ポリペプチド、脂質、又は小分子を含む二つ以上の標的分子を含む。いくつかの実施形態において、各ライブラリー内の各親和性バインダー及び標的は追加の核酸バーコードを含む。
【0072】
本開示は、ハイドロゲル内にタンパク質を固定化することを含むin situタンパク質配列決定の方法、を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、タンパク質をN末端又はC末端バインダーと接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、バインダーと会合した蛍光標識を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、タンパク質を試薬と接触させて、1又は複数のN末端残基又はC末端残基を切断することを含む。
【0073】
本開示は、ヒト疾患における診断、予後診断、又は治療ガイダンスのためのタンパク質検出及びタンパク質修飾のためのin situタンパク質FISSEQの使用、を提供する。例示的な疾患としては、癌、免疫疾患及び自己免疫疾患、神経系疾患及び脳疾患、炎症性疾患、心臓病(心臓や循環器系の病気を含む)、臓器の病気(肺、肝臓、腎臓、腸、骨、結合組織、皮膚を含む)、及びメンデル病が挙げられるが、これらに限定されない。本開示は、以下を含むヒト患者内の非ヒトタンパク質の検出のためのin situタンパク質FISSEQの使用を提供する:皮膚、腸、口腔、及び膣のミクロビオームなどのミクロビオーム内の微生物タンパク質、並びに細菌、真菌、及びウイルスを含む病原性タンパク質。本開示は、以下の細胞学的特徴を同定する目的のための1又は複数のタンパク質の検出のためのin situタンパク質FISSEQの使用、を提供する:膜、リポソーム、エンドソーム、ミトコンドリア、ゴルジ体、核、細胞小器官、細胞骨格、及びストレス顆粒を含む顆粒。本明細書に提供される例は限定的ではない。
【0074】
本開示は、以下の組織学的特徴を同定する目的のための1又は複数のタンパク質の検出のためのin situタンパク質FISSEQの使用、を提供する:細胞膜、核、間質、上皮、脂肪、細胞外マトリックス、神経線維、血球、免疫細胞、及び基底膜。本明細書に提供される例は限定的ではない。
【0075】
本開示は、2つ以上のタンパク質種間の空間的関係の検出のためのin situタンパク質FISSEQの使用、を提供する。本開示は、2つ以上の細胞学的又は組織学的特徴間の空間的関係の検出のためのin situタンパク質FISSEQの使用、を提供する。本開示は、サイズ、形状及び体積を含む細胞学的又は組織学的要素の特性を検出するためのin situタンパク質FISSEQの使用、を提供する。
【0076】
本開示は、in situでハイドロゲルを形成するための試薬を含むタンパク質FISSEQライブラリーを形成するためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは親和性バインダーのライブラリーを含み、ここで各固有のバインダーは親和性結合を付与する部分と固有のDNAバーコードを含む。いくつかの実施形態において、キットは、親和性バインダーを結合するための緩衝液を含む。本開示は、蛍光部分に結合した複数種のオリゴヌクレオチドを含むタンパク質FISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットはDNAリガーゼを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、キットは、取り込み用緩衝液を含む。
【0077】
本開示は、蛍光部分に結合した複数種のdNTP類似体を含むタンパク質FISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットはさらにDNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態において、キットはさらにイメージング用緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、キットは、取り込み緩衝液を含む。
本開示は、蛍光部分に結合した複数種の準安定自己組織化DNAヘアピン、例えばハイブリダイゼーション連鎖反応モノマーを含むタンパク質FISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、親和性バインダーバーコード配列に相補的な配列を含む複数種のDNAオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、キットは、ハイブリダイゼーション用緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、キットは、HCR増幅用緩衝液を含む。
【0078】
代謝産物及び小分子検出
真のパンオミクスin situ分子検出技術を創出するために、核酸及びタンパク質に加えて他のクラスの生体分子を本明細書に提供される方法において標的とすることができる。いくつかの従来の小分子検出方法は、本明細書に提供されているFISSEQと組み合わせることができる。代謝産物は、本質的には細胞生化学過程と相互作用するあらゆる小分子であり、ビタミン、アミノ酸、ヌクレオチド、有機酸、アルコール及びポリオール、脂質並びに脂肪酸などが含まれる(Wishart, David S., et al. “HMDB: the human metabolome database.” Nucleic acids research 35.suppl 1 (2007): D521-D526)。代謝における中間体、生成物、及び補因子としてのそれらの役割を超えて、代謝産物及び他の小分子は、エネルギー源、シグナル伝達分子、浸透圧調節剤、及び酵素阻害剤又は活性化剤として生物系において役割を果たすことができる。代謝産物はまた、毒素、顔料、臭気物質、フェロモンなどとして、組織、生物全体、個体群、及び生態学の規模で重要な機能を果たす(Vining, Leo C. “Functions of secondary metabolites.” Annual Reviews in Microbiology 44.1 (1990): 395-427)。特に重要なクラスの代謝産物の一つは脂質である。脂質種の数はタンパク質種の数とほぼ同じで、脂質は構造分子及びシグナル分子として様々な役割を果たす(Muro, Eleonora, G. Ekin Atilla-Gokcumen, and Ulrike S. Eggert. “Lipids in cell biology: how can we understand them better?. “Molecular biology of the cell 25.12 (2014): 1819-1823)。これら全ての小分子は、細胞内で複雑な空間パターンの構成を有し得る。
【0079】
代謝産物はタンパク質によって保持され輸送される(Mercer, Andrew C., and Michael D. Burkart. “The ubiquitous carrier protein-a window to metabolite biosynthesis.“ Natural product reports 24.4 (2007): 750-773)。代謝自体は空間的に高度に局在化することができる。例えば、多くの代謝過程は特定の細胞型に局在化可能であり、実際には、代謝の特異化は多細胞性の進化のための適応の主要な原動力であり得る(Ispolatov, Iaroslav, Martin Ackermann, and Michael Doebeli. “Division of labour and the evolution of multicellularity.“ Proceedings of the Royal Society of London B: Biological Sciences (2011): rspb20111999)。
【0080】
細胞内では、代謝は、代謝産物自体の大きさ順によって、オルガネラなどのマクロコンパートメント及びミクロコンパートメントに編成され得る(Saks, Valdur, Nathalie Beraud, and Theo Wallimann. “Metabolic compartmentation-a system level property of muscle cells.“ International journal of molecular sciences 9.5 (2008): 751-767)。それにより酵素の効率を改善し(Bonacci, Walter, et al. “Modularity of a carbon-fixing protein organelle.“ Proceedings of the National Academy of Sciences 109.2 (2012): 478-483)、クロストークを防ぎ(Houslay, Miles D. “Compartmentalization of cyclic AMP phosphodiesterases, signalling ‘crosstalk’, desensitization and the phosphorylation of G i-2 add cell specific personalization to the control of the levels of the second messenger cyclic AMP.“ Advances in enzyme regulation 35 (1995): 303-338)、フラックスを調整する(Klitgord, Niels, and Daniel Segre. “The importance of compartmentalization in metabolic flux models: yeast as an ecosystem of organelles.“ Genome Inform. Vol. 22. 2010)。シグナル伝達、生合成、並びに細胞内及び細胞外経路を区画化するために、膜は「ラフト」に高度に組織化されている(例えば、Simons, Kai, and Julio L. Sampaio. “Membrane organization and lipid rafts.“ Cold Spring Harbor perspectives in biology 3.10 (2011): a004697を参照)。しかしながら、in situでのこれらの分子の検出は、蛍光標識、トレーサー、及び質量分析イメージングの使用に限定され得る(例えば、ナノ構造開始剤質量分析(nanostructure-initiator mass spectrometry:NIMS))(Northen, Trent, Gary Siuzdak, and Anders Nordstrom. “Nanostructure-initiator mass spectrometry“:米国特許出願第11/852,863号)。
【0081】
蛍光標識類似体の使用又は染色による(例えば、トリグリセリド定量のためのオイルレッドO染色(O’Rourke, Eyleen J., et al. “C. elegans major fats are stored in vesicles distinct from lysosome-related organelles.”Cell metabolism 10.5 (2009): 430-435))などの低多重度の読み出しでさえも、特定の代謝経路を理解し、全体的な代謝フラックスを推測し、そして代謝疾患の遺伝的基礎を理解するのに有用であり得る。FISSEQと組み合わせることができる別の低多重度読み出しは、カルシウムイメージングであり得、これにより、ニューロンの発火などの細胞活動の動的測定値を取得でき、遺伝子発現、遺伝子型、さらにはニューロンの結合性の測定と組み合わせ可能である。例えば、Grienberger, Christine, and Arthur Konnerth. “Imaging calcium in neurons.”Neuron 73.5 (2012): 862-885を参照。無機イオンは、浸透圧調節、シグナル伝達、及び細胞電気活性の中心となり得るが、それらのサイズ、溶解度、及び動態を考えると、それらはおそらくインビボで定量化する必要がある。
【0082】
これらの全ての代謝産物は、小さいサイズ及び溶解度により、最初の固定の間に試料から容易に洗い流されることが起こるので、in situでのアッセイでは困難であり得る。さらに、FISSEQは細胞内分子にアクセスするために透過処理を必要とし、その多くの形態は実際に小分子及び脂質を特異的に除去する。しかしながら、代謝産物及び生体分子についてのより高い多重度読み出しメカニズムを使用することができる。FISSEQによるタンパク質検出と同様に、代謝産物に特異的なDNAバーコード化アフィニティーバインダー試薬のライブラリーを作成することができる(上記「SMI-seq」の記載を参照)。別の解決策は、標的リガンドの存在下で立体配座の変化を受けることができる動的小分子バイオセンサーを開発してもよい。例えば、Feng, Justin, et al. “A general strategy to construct small molecule biosensors in eukaryotes.“ Elife 4 (2015): e10606を参照。本明細書で使用されるバイオセンサーは、小分子インデューサーの存在に応答して遺伝子発現を調節する遺伝的にコード化されたバイオセンサーを意味し得る。バイオセンサーは、遺伝的にコード化されたバイオセンサーを含む小分子誘導システムの一部であり得る。そのようなバイオセンサーシステムは、転写抑制又は活性化を介して、小分子の活性又は存在量を特定のRNA種の転写レベルに移行することができる。例えば、バイオセンサーはタンパク質であり得、ここでタンパク質は転写抑制因子又は活性化因子として機能する。いくつかの場合において、転写抑制因子又は活性化因子は、小分子によって調節され得、それは次にRNA転写を調節する。そのような場合、特定のRNA転写産物/種の存在量及び/又は存在量を使用して、調節小分子のレベル及び/又は存在量を決定することができる。
【0083】
検出のために代謝産物をin situで保持するために、小分子を膨張性ハイドロゲルマトリックスに架橋する化学的性質を開発する必要があり、それにより膨張中の生体分子の希釈による試料の透過処理が可能となる。さらに、カルシウムイメージングと同様に、in situとインビボの間の境界線をぼかすFISSEQ実験を設計することができる。例えば、蛍光バイオセンサーを使用して、インビボで代謝産物の存在量及び局在化の動態を測定することができ、これはin situで遺伝子発現又は遺伝子型の単一時点測定と組み合わせることができる。バイオセンサーはまた、結合時に転写を活性化することによるか、又はCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を使用することによるなど、この情報をゲノムに直接コード化することによって、小分子のRNAに対する存在量及び局在化を記録し得る。例えば、Feng, Justin, et al. “A general strategy to construct small molecule biosensors in eukaryotes.“ Elife 4 (2015): e10606; Shipman, Seth L., et al. “Molecular recordings by directed CRISPR spacer acquisition.“ Science (2016): aaf1175を参照。前者の場合、インビボでの代謝産物濃度についての情報を含むRNA分子は、FISSEQを用いてin situで検出され得る。後者の場合、修飾ゲノム配列はFISSEQを用いてin situで検出され得る。
【0084】
代謝産物と小分子の組み合わせの検出を要約すると、本開示は、付着部分を含むようにin situで分子を修飾する方法を提供する。いくつかの実施形態において、付着部分はフリーラジカル重合性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は重合可能な基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む。いくつかの実施形態において、付着部分は、続いてハイドロゲルにin situ連結される。いくつかの実施形態において、付着部分を組み込んで、in situでハイドロゲルが形成される。いくつかの実施形態では、付着部分はさらに、試料内の2種以上の代謝産物又は小分子間の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するために使用される。
【0085】
本開示は、親和性結合を付与する部分及び固有のDNAバーコードを各々含む2つ以上の親和性バインダー試薬を結合することを含む、ハイドロゲル内の2種以上の生体分子種を検出する方法、を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、ハイブリダイゼーションによるか、又はポリメラーゼ若しくはリガーゼを使用する相補鎖の合成などによる(合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定)核酸配列決定を使用してin situでDNAバーコードを検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、蛍光シグナルが生成される配列決定工程を含む。
【0086】
本開示は、親和性結合を付与する部分及びまた読み出し部分を各々含む1種又は複数種のバイオセンサーのインビボ発現を含む、ハイドロゲル内の1種又は複数種の生体分子種を検出する方法、を提供する。いくつかの実施形態において、読み出し部分は転写抑制因子である。いくつかの実施形態において、読み出し部分は転写活性化因子である。いくつかの実施形態において、読み出し部分はゲノム編集活性を含む。いくつかの実施形態において、方法は、ハイブリダイゼーションによる配列決定などの1又は複数のRNA種又は1又は複数のDNA遺伝子座のFISSEQによるか、又はポリメラーゼ若しくはリガーゼを使用する相補鎖の合成による(例えば、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定)核酸配列決定を使用してin situで読み出し部分の産物を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、発生した蛍光シグナルを検出することを含む。
【0087】
本明細書に提供されるFISSEQ方法は、標的検出のための標準的な染色方法と組み合わせることができる。本開示に係る方法は、試料を1種又は複数種の染色剤と接触させる工程、染色剤を画像化する工程、RNA、DNA、及び/又はタンパク質を検出するための試料内にin situでFISSEQライブラリーを構築する工程、FISSEQライブラリーを配列決定する工程、染色データをFISSEQデータとコンピューターにより統合する工程、を含む。
【0088】
本開示はまた、生体分子に対する親和性を有する1種又は複数種の試薬を含み、また検出可能な標識を含むFISSEQキットを提供する。
【0089】
FISSEQによる分子相互作用の検出
いくつかの場合において、生体分子間の相互作用を検出することができる。分子相互作用の強度を検出及び測定するためのいくつかの戦略があり、一般的に4つのテーマに分類することができる:アレイ化検体への結合の定量、架橋精製、相補性アッセイ、及び単一分子イメージング。
【0090】
アレイ化分析物への結合の定量化は、RNA、DNA、又はタンパク質などの分子の規則正しい配列を合成し、標的分子を添加し、そして次に蛍光標識された標的分子を使用してアレイ上の各スポットにおける蛍光のレベルを測定することによって結合プロファイルを測定することを含む。例えば、Mukherjee, Sonali, et al. “Rapid analysis of the DNA-binding specificities of transcription factors with DNA microarrays.“ Nature genetics 36.12 (2004): 1331-1339; Buenrostro, Jason D., et al. “Quantitative analysis of RNA-protein interactions on a massively parallel array reveals biophysical and evolutionary landscapes.“ Nature biotechnology 32.6 (2014): 562-568; Espina, Virginia, et al. “Protein microarray detection strategies: focus on direct detection technologies.“ Journal of immunological methods 290.1 (2004): 121-133を参照。アレイ化分析物への結合をアッセイするライブラリー・オン・ライブラリー法を設計することは可能であり得るが、これらの方法は一度に1分子をアッセイすることに限定され得る。例えば、FISSEQを使用して分析物のアレイに結合する核酸分子又はDNAバーコード化タンパク質を検出すること、又はタンパク質を直接検出するために質量分析イメージングを使用することが想像できる。例えば、van Hove, Erika R. Amstalden, Donald F. Smith, and Ron MA Heeren. “A concise review of mass spectrometry imaging.“ Journal of chromatography A 1217.25 (2010): 3946-3954を参照。分子バーコード化を介するなど、アレイ化分析物を使用するライブラリー・オン・ライブラリースクリーニングの他の方法が想像できる(すなわち、タンパク質ーリボソームーメッセンジャーーRNAー相補的DNA(PRMC)などの標的分子のバーコードが、アレイ内の結合位置または結合相手の同一性を示すバーコードにリンクされている場合)。SMI-seqは、結合の定量化に関連した形式であるが、分析物がアレイ化されているのではなく、代わりにFISSEQを使用して希釈及び検出されている。例えば、Gu, Liangcai, et al. “Multiplex single-molecule interaction profiling of DNA-barcoded proteins.“ Nature 515.7528 (2014): 554-557を参照(上記「SMI-seq」の記載についても参照)。
【0091】
架橋精製アッセイは免疫沈降(IP)であり得、ここでタンパク質抗原は免疫タンパク質をその結合パートナーと共に使用して沈殿され、その後検出される。このテーマには、タンパク質とゲノムの相互作用を検出するためのChromatin IP(ChIP)(Jothi, Raja, et al. “Genome-wide identification of in vivo protein-DNA binding sites from ChIP-Seq data.” Nucleic acids research 36.16 (2008): 5221-5231)、タンパク質とRNAの相互作用を検出するための架橋(cross-linking)及びIP(CLIP)(Ule, Jernej, et al. “CLIP: a method for identifying protein-RNA interaction sites in living cells.” Methods 37.4 (2005): 376-386)など、さまざまなバリエーションがあり、どちらも標的タンパク質と相互作用する核酸の不偏性のハイスループット検出のためにNGSを使用できる。免疫共沈降法及び質量分析法を用いて、標的タンパク質に結合したタンパク質を検出することができる。例えば、Free, R. Benjamin, Lisa A. Hazelwood, and David R. Sibley. “Identifying Novel Protein‐Protein Interactions Using Co‐Immunoprecipitation and Mass Spectroscopy.” Current Protocols in Neuroscience (2009): 5-28を参照。別の戦略は、クロマチンの特定の領域又は特定のRNA種を「沈降」するためのハイブリダイゼーションを使用し、次いで結合タンパク質を検出するための質量分析を使用して、精製のために核酸を標的とすることであり得る。Dejardin, Jerome, and Robert E. Kingston. “Purification of proteins associated with specific genomic Loci.” Cell 136.1 (2009): 175-186; Butter, Falk, et al. “Unbiased RNA-protein interaction screen by quantitative proteomics.” Proceedings of the National Academy of Sciences 106.26 (2009): 10626-10631。クロマチンコンフォメーションキャプチャーシークエンシング法(例えば、Dekker, Job, et al. “Capturing chromosome conformation.” science 295.5558 (2002): 1306-1311を参照) の全ては、ごく近接したDNA分子は架橋され精製される、架橋精製の形式であり得る。これらの方法では、化学架橋をライゲーションによって共有結合で置き換えることができ、増幅及び配列決定を妨げる化学架橋を逆転させ、NGSによって検出され得る配列接合部を作り出すことを可能にする。同様に、RNAの相互作用と構造のソラレン解析(PARIS)では、ソラレン派生物の4’-アミノメチルトリオキサレン(AMT)を可逆的架橋に使用し、続いてライゲーションしてNGSによるRNA-RNA相互作用を検出する(Lu, Zhipeng, et al. “RNA Duplex Map in Living Cells Reveals Higher-Order Transcriptome Structure.” Cell 165.5 (2016): 1267-1279)。可逆的ソラレン架橋技術は、DNA-DNA及びRNA-DNA相互作用の分析に拡張することができると考えられる。
【0092】
相補性アッセイは、分子相互作用を検出するために、レポーターシステムのサブセットである分子標識の近接によって生じる新規の機能性を利用する。ハイブリッド相補性スクリーニングアッセイは、典型的には、1種又は複数種の転写因子断片及び標的配列を含む転写レポーターシステムを使用する。これらの成分は、例えば融合タンパク質を作製することによって、内因性分子に付着している。標的分子が相互作用すると、レポーターシステムは再構成され得、抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカーの転写を活性化する。
【0093】
いくつかの古典的な例は、細菌性ワンハイブリッドDNA-タンパク質相互作用スクリーニング(Meng, Xiangdong, and Scot A. Wolfe. “Identifying DNA sequences recognized by a transcription factor using a bacterial one-hybrid system.“ NATURE PROTOCOLS-ELECTRONIC EDITION- 1.1 (2006): 30)、酵母ツーハイブリッドタンパク質ータンパク質及びタンパク質ーDNAスクリーニング(Chien, Cheng-Ting, et al. “The two-hybrid system: a method to identify and clone genes for proteins that interact with a protein of interest.“ Proceedings of the National Academy of Sciences 88.21 (1991): 9578-9582; Vidal, Marc, et al. “Reverse two-hybrid and one-hybrid systems to detect dissociation of protein-protein and DNA-protein interactions.“ Proceedings of the National Academy of Sciences 93.19 (1996): 10315-10320)、並びに酵母スリーハイブリッドタンパク質-RNA相互作用スクリーニング(Hook, Brad, et al. “RNA-protein interactions in the yeast three-hybrid system: Affinity, sensitivity, and enhanced library screening.“ Rna 11.2 (2005): 227-233)である。他の形態の相補性アッセイは蛍光を利用してインビボで分子相互作用を検出する。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、それらが10nmの近接内にある場合にドナー及びアクセプターフルオロフォアとの間のエネルギーの移動を可能にし(例えば、Jares-Erijman, Elizabeth A., and Thomas M. Jovin. “Imaging molecular interactions in living cells by FRET microscopy.“ Current opinion in chemical biology 10.5 (2006): 409-416を参照)、検出可能な蛍光シグナルを生成する。二分子蛍光相補性(BiFC)は、近接すると一時的に再集合して蛍光を示す蛍光タンパク質の非蛍光断片を使用する。例えば、Magliery, Thomas J., et al. “Detecting protein-protein interactions with a green fluorescent protein fragment reassembly trap: scope and mechanism.“ Journal of the American Chemical Society 127.1 (2005): 146-157; Kerppola, Tom K. “Design and implementation of bimolecular fluorescence complementation (BiFC) assays for the visualization of protein interactions in living cells.“ Nature protocols 1.3 (2006): 1278-1286を参照。これらの蛍光技術はまた、超解像顕微鏡を用いて単一の相互作用を視覚化するためにも使用され得る。例えば、Liu, Zhen, et al. “Super-resolution imaging and tracking of protein-protein interactions in sub-diffraction cellular space.“ Nature communications 5 (2014)を参照。
【0094】
最後に、超解像顕微鏡法の出現は、分子錯体を形成する個々に標識された成分の直接可視化を可能にすることができる。光活性化局在化顕微鏡法(PALM)による超解像イメージングは、20nmの精度で2つのタンパク質の空間分布及び共局在化を決定するためにin situで使用され得る。例えば、Sherman, Eilon, Valarie A. Barr, and Lawrence E. Samelson. “Resolving multi-molecular protein interactions by photoactivated localization microscopy.“ Methods 59.3 (2013): 261-269を参照。反射光シート顕微鏡法(RLSM)は、インビボでDNAへの転写因子結合動態(DNA標的は直接検出されない)、及び2つのDNA結合タンパク質の共局在化を測定することができる。例えば、Gebhardt, J. Christof M., et al. “Single-molecule imaging of transcription factor binding to DNA in live mammalian cells.“ Nature methods 10.5 (2013): 421-426を参照。これらの方法は技術的に困難であり得るが、ExMを使用すると、はるかに単純な回折限界のイメージングモダリティを使用してin situでの分子相互作用の超解像検出を容易にできる。例えば、Chen, Fei, Paul W. Tillberg, and Edward S. Boyden. “Expansion microscopy.“ Science 347.6221 (2015): 543-548を参照。
【0095】
分子相互作用に関する情報をFISSEQライブラリーに取り込むために、架橋精製及び相補性アッセイからの近接捕獲の概念を使用することができる。例えば、タンパク質又は核酸標的を免疫沈降又は沈降するのではなく、in situで分子プローブを使用して標的を結合することができる。分子プローブは核酸であるか、又は核酸バーコードを有することができる。いくつかの場合において、近接ライゲーションアッセイ(PLA)を使用して、隣接する核酸との新しいハイブリッド配列を作成し、これをFISSEQで検出することができる。例えば、Soderberg, Ola, et al. “Direct observation of individual endogenous protein complexes in situ by proximity ligation.“ Nature methods 3.12 (2006): 995-1000を参照。クロマチンコンフォメーションキャプチャーシークエンシング(配列決定)、RNA二本鎖検出(PARIS)、又はトランスジェニック細胞バーコード(BOINC)を用いたニューロンシナプスの検出のために、近接ライゲーションアッセイ(PLA)を用いて内因性核酸配列の近接を検出することもできる。あるいは、相補性アッセイと同様に、分子プローブは、RTプライマー又は酵素などのFISSEQライブラリー構築反応の成分を保有して、ライブラリー構築化学を標的分子に近接する配列に局在化させ得る。
【0096】
ExMをFISSEQと組み合わせて使用すると、直接可視化による分子相互作用の大規模多重検出が達成可能となる。共局在化の検出は、相互作用を推論するため、そして結合自由エネルギーなどの熱力学的量を推定するために使用することができる。例えば、Helmuth, Jo A., Gregory Paul, and Ivo F. Sbalzarini. “Beyond co-localization: inferring spatial interactions between sub-cellular structures from microscopy images.“ BMC bioinformatics 11.1 (2010): 1; Herce, H. D., C. S. CASAS‐DELUCCHI, and M. C. Cardoso. “New image colocalization coefficient for fluorescence microscopy to quantify (bio‐) molecular interactions.“ Journal of microscopy 249.3 (2013): 184-194) を参照。
【0097】
近接ライゲーションと比較して直接可視化を用いることの1つの利点は、後者は、タグが短い距離、典型的には~10nm以内に位置する相互作用の検出に限定されることであり、これは一般的に、対の又は極めて近位の相互作用に検出を制限する。例えば、Soderberg, Ola, et al. “Direct observation of individual endogenous protein complexes in situ by proximity ligation.” Nature methods 3.12 (2006): 995-1000を参照。これらの複合体を直接検出することで、大きな分子複合体や多数の成分を含む分子複合体間の構成と空間的関係を視覚化することができる。例えば、RNAスプライシング機構は、RNA分子と同様に数百のタンパク質を含む。構成分子及び相互作用を列挙することは、集団の平均状態の抽象的なネットワークグラフ表現のみを提供可能であり、それにより物理的構造に解釈又はマッピングすることが困難になり得る。例えば、Zhou, Zhaolan, et al. “Comprehensive proteomic analysis of the human spliceosome.”Nature 419.6903 (2002): 182-185; Dominguez, Daniel, and Christopher B. Burge.“Interactome analysis brings splicing into focus.” Genome biology 16.1 (2015); Pires, Mathias M., et al. “The network organization of protein interactions in the spliceosome is reproduced by the simple rules of food-web models.” Scientific reports 5 (2015)を参照。この複合体の全体的な空間構成と特定の要素の位置を決定することへの進歩は、主にcryo-EMによって進められてきた。例えば、Newman, Andrew J., and Kiyoshi Nagai. “Structural studies of the spliceosome: blind men and an elephant.” Current opinion in structural biology 20.1 (2010): 82-89を参照。パンオミクスFISSEQ検出を使用してナノメートルスケールの分解能で分子錯体を直接可視化することは、これら両方のアプローチの最良の態様を捉える。
【0098】
分子相互作用の検出を要約すると、本開示はin situでの分子相互作用の検出のための2つ以上の分子プローブの使用を提供し、ここで各プローブはまたDNAバーコードを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、ハイブリダイゼーションによる配列決定、又はポリメラーゼ若しくはリガーゼを使用する相補鎖の合成による配列決定(例えば、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定)を含むin situ配列決定の方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、配列決定において生成された蛍光シグナルを検出することを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、近接ライゲーション(連結)によってin situで連結された2つ以上の核酸バーコードの使用を提供する。いくつかの実施形態において、連結接合部は相互作用の識別子として働く。
【0099】
いくつかの実施形態において、本開示は、in situ配列決定ライブラリーの作成方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、2つ以上の核酸バーコードが近接しているときにそれらを連結する工程を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、方法は、in situ配列決定ライブラリーを調製する工程を含み、方法は、1つの核酸種を使用して、異なる核酸種により鋳型とされる核酸重合反応を開始させる工程を包む。いくつかの実施形態において、一方又は両方の核酸種は、タンパク質、RNA、DNA、又は他の生体分子を表す核酸バーコードであり、そして一方又は両方の核酸種は内因性核酸分子である。本開示は、2つのFISSEQ識別の空間的近接性によって分子相互作用を推論する方法を提供する。
【0101】
本開示は、in situでハイドロゲルを形成するための試薬を含む分子相互作用FISSEQライブラリーを形成するためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、in situでDNA、RNA、又は他の核酸バーコードをハイドロゲルに連結するための試薬を含む。
【0102】
本開示は、蛍光部分に結合した複数種のオリゴヌクレオチドを含む分子相互作用FISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、DNAリガーゼを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液及び/又は取り込み用緩衝液を含む。
【0103】
本開示は、蛍光部分に結合した複数種のdNTP類似体を含む分子相互作用FISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、DNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液及び/又は取り込み用緩衝液を含む。
【0104】
本開示は、蛍光部分に結合した複数種の準安定自己組織化DNAヘアピン、例えばハイブリダイゼーション連鎖反応モノマーを含む分子相互作用FISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、親和性バインダーバーコード配列に相補的な配列を含む複数種のDNAオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、キットは、ハイブリダイゼーション用緩衝液及び/又はHCR増幅用緩衝液を含む。
【0105】
細胞学的染色及び組織学的染色
染色は、典型的には試料のいくつかの成分の異なる結合によって、生体試料の特徴間のコントラストを増強するための重要な技術であり得る。合成アニリン染料の発見以来、科学者達は化学反応と化学成分及び組織成分間の親和性を利用して、組織構造及び化学的及び分子的組成の視覚的又は顕微鏡的分析のために組織の光学的性質を高めた。最もよく知られている染色の1つは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)の組み合わせであり得、それぞれ核酸及び細胞質/細胞外組織成分を染色する。その他の染色の例としては、トルイジンブルー、マッソン(Masson)のトリクローム染色、マロリー(Mallory)のトリクローム染色、ワイゲルト(Weigert)の弾性染色、ハイデンハイン(Heidenhain)のアザントリクローム染色、シルバー(Silver)染色、ライト(Wright)染色、オルセイン(Orcein)染色、及び過ヨウ素酸シッフ(periodic-acid Schiff:PAS)染色が挙げられる。DAPI及び他の挿入染料もまた、核酸及び核を標識するために使用してもよい。
【0106】
FISSEQを伴う染色をまとめると、本開示に係る方法は、試料を1又は複数の染色剤と接触させる工程、染色剤を画像化する工程、RNA、DNA、及び/又はタンパク質を検出するための試料内にin situでFISSEQライブラリーを構築する工程、FISSEQライブラリーを配列決定する工程、染色データをFISSEQデータとコンピューターにより統合する工程、を含む。
【0107】
本開示はまた、1又は複数の細胞学的及び/又は組織学的染色試薬を含むFISSEQキットを提供する。
【0108】
パンオミクスFISSEQの超解像顕微鏡法
いくつかの場合において、より高い解像度のイメージングが必要とされている。生体システム内では、ほとんどの物質はナノメートルオーダーの大きさである。例えば、DNAらせんの「B」型は、10塩基対当たり23.7オングストローム幅及び34オングストローム長である。例えば、Watson, James D., and Francis HC Crick. “Molecular structure of nucleic acids.“ Nature 171.4356 (1953): 737-738を参照。最小のポリペプチドも数ナノメートルのオーダーの長さである。したがって、生物学における「完全な分解能」は数ナノメートルのオーダーになる。蛍光イメージングのために、任意の数の戦略を使用してこの解像度を達成することが可能である。
【0109】
確率論的な超解像顕微鏡法の一種であるDNA PAINTは、10nm以下の分解能を示す。例えば、Silverberg, Jesse L., et al. “DNA-Paint and Exchange-Paint for Multiplexed 3D Super-Resolution Microscopy.“ Biophysical Journal 108.2 (2015): 477aを参照。FISSEQのためにこの顕微鏡法及び他の超解像様式を使用することは、単一のフルオロフォアの検出及び局在化のための単一分子「配列決定」の開発を必要とし得る。これは全ての分子の同時配列決定を可能にするであろうが、配列決定の各サイクルのためのイメージング時間は長くなり得る。10nm以下の解像度でDNA PAINT画像を取得するには、高倍率を使用して1フレームあたり何時間もイメージングする必要があり、これも1画像あたりの視野を制限する可能性がある。
【0110】
別のアプローチは、デジタル分割顕微鏡法と共に、RCA又はサイクリックHCR(CHCR)によるようなシグナル増幅を使用することであり得る。これにより十分な分解能を達成することができるが、アンプリコン自体が標的分子よりもほぼ2桁大きいので、局在化のコストがかかる。この方法はまた、多数の区画の連続的配列決定を必要とする可能性があり、これはアッセイ時間を劇的に増加させる。立体的な制限も生じ得る。例えば、同じ物理的体積内に多数のRCAアンプリコンを生成することは不可能かもしれない。
【0111】
ExMは、回折限界顕微鏡法の低倍率及び高速ピクセル取得速度を利用して任意の解像度及び優れた局在化でイメージング可能なので、完全な解像度を達成するための別の戦略となり得る(ExMの局在化精度は、重合中の分子捕捉ノードの密度及び得られる膨張ハイドロゲルの等方性、並びに標的分子又は検出可能な標識を捕捉するために使用される化学物質の物理的サイズによって制限され得る)。本明細書で論じられているすべての戦略は、ExMに対するパンオミクスFISSEQを達成するために使用することができる。この情報をゲルに取り込んだ後、数百の線膨張係数での膨張は、一けたのナノメートルの分解能を達成するのに十分であり得る。さらに、RCAやサイクリックHCR(CHCR)のように、シグナルを高度に増幅することができる。これらのアンプリコンは一般に回折限界があり、したがって解析可能で物理的に分離されるからである。
【0112】
ExM及びFISSEQの組み合わせは、NGS及びMSの多重度、感度、及び正確さを、ハイドロゲルの組成を操作することによって又は連続拡大によって任意の方法で増減できる分解能と組み合わせる。
【0113】
いくつかの場合において、ハイドロゲル(例えば、三次元マトリックス)は、外部刺激によって活性化することができる膨潤剤を用いて製造することができる。本明細書に記載のハイドロゲルシステムは、外部から誘導された体積の状態遷移が可能である機能性ハイドロゲルマトリックス及び/又は溶媒組成物を含み得る。所望により、ハイドロゲルは、液体の水の添加による塩の透析時に膨張するイオン性ポリマーマトリックスではない場合がある。
【0114】
所望により、ハイドロゲルは1又は複数の膨潤剤を含み得る。本明細書中に記載されるような膨潤剤は、三次元マトリックスに加わる及び/又は三次元マトリックスの膨潤を誘導する任意のメカニズムを指し得る。所望により、膨潤剤は、ポリマー骨格に組み込まれた官能基であり得る。例えば、膨潤剤は、刺激(例えば、外部刺激)によって活性化されたときにマトリックスのネットワークトポロジーの変化を誘発し得る三次元マトリックス内のメカニズムであり得る。いくつかの例において、ハイドロゲルを膨潤させるために、外部刺激(例えば、電磁放射線)がマトリックス中のポリマー鎖間の架橋の切断を誘発し得る。そのような例において、膨潤剤は、ポリマーマトリックスの架橋のサブセットを指すことがある。いくつかの例において、ハイドロゲルを膨潤させるために、外部刺激(例えば、熱刺激)は、ポリマー骨格間の非共有結合の変化(例えば、このような結合の切断)を誘発し得る。そのような例において、膨潤剤は、非共有結合を意味し得る。いくつかの例において、膨潤剤は、マトリックス内のプログラム可能なキレート剤であり得る。いくつかの例において、三次元マトリックスは、刺激に応答して及び/又は膨潤剤を用いて構造的再配列を起こしてもよい。
【0115】
いくつかの例において、外部刺激は電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激である。膨潤剤は、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激などの外部刺激によって活性化可能な化学基を含むことができる。電磁気刺激は異なる波長の光を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示は膨潤剤を含む、生体試料の1種又は複数種の生体分子の検出又は同定のためのシステム又は方法を提供する。ここで、膨潤剤は体積を増加させるための刺激を加えることにより、1種又は複数種の生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化することができ、刺激は、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激であり、及び三次元マトリックスは、生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する。いくつかの実施形態において、膨潤剤はさらに付着部分を含み、ここで目的の生体分子は付着部分を介して膨潤剤に結合可能である。いくつかの実施形態において、膨潤剤への外的刺激の印加は、膨潤剤を活性化して三次元ポリマーマトリックスを形成し、三次元ポリマーマトリックスが、生体試料内の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する。様々な実施形態において、膨潤剤は三次元ハイドロゲルマトリックスを形成する。いくつかの実施形態において、膨潤剤は収縮剤であり得、ここで収縮剤は三次元マトリックスの収縮及び/又は収縮を補助し得る。
【0116】
所望により、三次元マトリックスは、刺激に応答して及び/又は収縮剤を用いて収縮するように構造的再配列を起こしてもよい。収縮剤は、刺激(例えば、外部刺激)によって活性化されたときにマトリックスのネットワークトポロジーの変化を誘発し得る三次元マトリックス内のメカニズムであり得る。所望により、収縮剤は、ポリマー骨格に組み込まれた官能基であり得る。いくつかの例において、ハイドロゲルを収縮させるために、外部刺激(例えば、電磁放射線)がハイドロゲル(例えば、マトリックス)中のポリマー鎖間の架橋の形成を誘発し得る。そのような例において、収縮剤は、ポリマーマトリックスの架橋のサブセットを指すことがある。いくつかの例において、ハイドロゲルを収縮させるために、外部刺激(例えば、熱刺激)は、ポリマー骨格間の非共有結合の変化(例えば、このような結合の形成)を誘発し得る。そのような例において、膨潤剤は、非共有結合を意味し得る。いくつかの例において、膨潤剤は、マトリックス内のプログラム可能なキレート剤であり得る。
【0117】
例えば、膨潤剤/収縮剤は、特定の波長を有する光によって膨張するように活性化されてもよく、異なる波長を有する光によって収縮するように活性化されてもよい。いくつかの例において、刺激を伴う場合、収縮剤のいくつかの実施形態において、外部刺激は液体ではない。本明細書に記載の生体試料は、器官、組織、細胞、エキソソーム、血液、又はそれらの一部を含み得る。細胞試料は、任意の細胞内成分又は細胞派生物を含み得る。
【0118】
一例として、本明細書に記載のハイドロゲルは、N、N’-ビス(アクリロイル)シスタミン(BAC)架橋剤を有するポリアクリルアミドービスアクリルアミド(PA-BIS)コポリマーを含み得る。ハイドロゲルは特定のサイズで重合可能であり、ハイドロゲルマトリックス内の架橋のサブセットを破壊するジスルフィドの還元による電気化学的誘導の際に、ハイドロゲルはサイズを拡大し得る。そのような例において、ハイドロゲルマトリックス内の架橋のサブセットのみが破壊されてもよく、その結果、膨張又は膨潤後に、依然として生体分子又は生体分子標識が付着している三次元(3D)ハイドロゲルマトリックスが存在する。
【0119】
別の例では、ハイドロゲルは熱誘導ハイドロゲルであり得る。熱的に誘導されたハイドロゲルは、熱刺激に応答して体積変化を起こし得る。熱誘導ハイドロゲルの一例は、NIPAMゲルである。そのようなハイドロゲルでは、PA-BIS-BACハイドロゲルネットワーク間のジスルフィド結合状態の電気化学的に誘発された変化に類似して、ハイドロゲル主鎖間の非共有結合の変化によって体積の変化が引き起こされ得る。
【0120】
別の例では、ハイドロゲルはイオン性ポリマーハイドロゲルであり得る。そのようなハイドロゲルの例は、光ケージ化EDTAなどのプログラム可能なキレート剤溶質成分を有するアクリルアミドーアクリレートービスアクリルアミドコポリマーハイドロゲルであり得る。光ケージ化キレート剤要素の立体構造の活性化又は変化は、イオンを吸収(キレート化)または放出することによるように、ハイドロゲル内の溶液の有効イオン強度の変化を引き起こし得るものであり、それによりイオン性ポリマーマトリックスの湿潤強度を調節、膨潤や収縮を引き起こす。
【0121】
パンオミクスFISSEQについて超解像顕微鏡法を要約すると、本開示に係るin situでの膨張性ハイドロゲルの形成方法は、各々生体分子種に対応する複数の検出可能な標識を含む。ここで、ハイドロゲルは膨張し、直線寸法で2倍~3倍、3倍~4倍、4倍~5倍、5倍~6倍、6倍~7倍、7倍~8倍、8倍~9倍、9倍~10倍、又は10倍以上の倍率の膨張を生じ、ハイドロゲルは膨張状態で安定化される。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは膨潤して、直線寸法で2倍~10倍の倍率で膨張する。いくつかの例において、ハイドロゲルは膨潤剤の存在により膨潤することがある。いくつかの例において、膨潤剤は、三次元マトリックス(例えば、ゲル)を生じるように、本明細書中にさらに記載されるような刺激によって活性化され得る。所望により、ハイドロゲルは収縮するように構成されてもよい。例えば、ハイドロゲルは収縮剤の補助により収縮可能である。所望により、本明細書に記載の膨潤剤はさらなる収縮剤として作用し得る。
【0122】
本開示は、1又は複数の内因性核酸種を含む膨張性ハイドロゲルをin situで形成する方法を提供する。
【0123】
本開示は、特定の生体分子種についてFISSEQによって検出可能な標識として働く1又は複数の核酸バーコード種を含む膨張性ヒドロゲルをin situで形成する方法を提供する。
【0124】
本開示は、1又は複数の内因性核酸種及び1又は複数の核酸バーコード種を含む膨張性ハイドロゲルをin situで形成する方法を提供する。いくつかの実施形態において、膨張性ハイドロゲルは、オルトーニトロベンジルケージ化EDTAなどのキレート対イオンを含む光活性化膨潤剤を含む。いくつかの実施形態において、膨潤剤は、ある波長によって活性化されると膨張し、異なる波長によって活性化されると収縮することができる。いくつかの実施形態において、膨潤剤は元の膨張サイズの1/5~1/4、1/4~1/3、1/3~1/2に収縮することができる。いくつかの実施形態において、膨張性ハイドロゲルは、キノン-エステル保護EDTAなどのキレート対イオンを含む電気化学的に活性化された膨潤剤を含む。いくつかの実施形態において、膨張性ハイドロゲルは熱活性化膨潤剤、例えばキレート対イオンを含む。
【0125】
ハイドロゲルゲルは、異なる検出目的のために膨張又は収縮することができる。例えば、いくつかの場合において、ハイドロゲルは膨張するようにプログラムされており、それにより目的の標的をそれぞれ引き離してイメージング工程の間に分解されるようにすることができる。いくつかの場合において、ハイドロゲルは、追加の試薬と接触した後に収縮するようにプログラムされており、それによって相互作用検出のために対象となる標的を互いに近づける。いくつかの例において、ハイドロゲルは刺激を用いて膨張させることができる。刺激は、任意の種類の刺激、例えば電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激であり得る。いくつかの例において、刺激は液体でなくてもよい。所望により、ハイドロゲルは他の刺激を用いて収縮させてもよい。膨張のために使用される刺激と収縮のために使用される別の刺激は、同じタイプ(例えば、両方とも光)であり得る。所望により、膨張のために使用される刺激と収縮のために使用される別の刺激は、異なるタイプ(例えば、光と化学物質)のものであり得る。いくつかの場合において、ハイドロゲルは、第1の波長の光などの外部刺激によって膨張させることができ、試薬混合物は膨張後に通過させることができ、次いでハイドロゲルはその後第2の波長の光などの外部刺激によって収縮させることができる。ここで、第1及び第2の波長は異なる。
【0126】
パンオミクスFISSEQライブラリー構築及びハイドロゲル合成
分子及びプローブ捕捉
【0127】
パンオミクスFISSEQライブラリーを構築するためには、配列決定による蛍光検出のために、元の分子又は元の分子を表す検出可能な標識(すなわち、核酸バーコード)をハイドロゲルマトリックスに捕捉する必要がある。FISSEQハイドロゲルは、ライブラリー構築及び配列決定の工程時、分子の相対的又は絶対的な3次元(3D)空間位置情報を保存するように機能する。捕捉及び呼び出しの位置的フィデリティ―(忠実度)は、ハイドロゲル中の捕捉ノードの密度によって決定され得、ここで捕捉ノードは、マトリックスと元の分子との間の直接的若しくは間接的な結合又は標識を表す。ハイドロゲルマトリックス自体の位相幾何学的及び/又は空間的不変性によっても同様である。例えば、位相幾何学的不変性は、分析物間の空間的関係が保持されることを必要とする(例えば、関係内/関係なし、順序関係)。空間的不変性は、例えば、ハイドロゲルマトリックス内の全てのノードが他のノード又は位置基準マーカーに対して一定の絶対的又は相対的関係を維持するように、絶対的又は相対的空間的関係のいずれかの保存を示し得る。ExMの場合、ハイドロゲルの等方性膨張はハイドロゲル内のノード間の相対距離を保存することによって存在する空間情報を保存するが、ハイドロゲルは膨張している可能性がある。あるいは、ハイドロゲルは、近距離空間的不変性又は等方性膨張などのハイブリッド特性を示すことがあり得るが、長距離にわたる空間的関係を失う(しかしこれは計算分析又は位置基準マーカーの使用によって軽減され得る)。
【0128】
タンパク質の同一性及び局在化に関する情報は、タンパク質自体をゲルに連結することによって、それ自体タンパク質に付着若しくは結合し得る抗体又はプローブからのDNAバーコードを連結することによって、又は中間体(例えば一次、二次、三次、又はより高次の情報転送)によって捕捉され得る。例えば、Tillberg, Paul W., et al. “Protein-retention expansion microscopy of cells and tissues labeled using standard fluorescent proteins and antibodies.“ Nature Biotechnology (2016); Chen, Fei, Paul W. Tillberg, and Edward S. Boyden. “Expansion microscopy.“ Science 347.6221 (2015): 543-548)を参照。タンパク質自体は、タンパク質標的の固有の性質によって、例えば、タンパク質のシステイン残基上に存在するチオール、並びに他の基の中でも特に、N末端アミン、リジンのイプシロンアミノ、及びヒスチジンのイミダゾール環の、成長するポリアクリルアミド鎖への共有重合によって、又はマトリックスの形成中若しくは形成後のタンパク質のハイドロゲルマトリックスへの取り込み又は共有結合を促進するためのタンパク質の化学修飾によって、ハイドロゲル中に捕捉され得る。ハイドロゲルの形成(例えば、重合)中又は後にハイドロゲルマトリックスと特異的又は非特異的に相互作用する化学的部分を有することによって、プローブ(例えば、一次、二次、又は高次)をFISSEQハイドロゲルに連結し得る。免疫タンパク質及び他の種類の合成的に発現されたペプチドプローブの場合、ハイドロゲルマトリックスに連結することができる化学的部分を直接組み込む目的のための、インビトロ又はインビボ発現系におけるような、非天然アミノ酸の存在下及びペプチド中へのこれらのプローブの発現、又はハイドロゲルマトリックスに共有結合することができる化学的部分を形成するためにインビボ又はインビトロでさらに修飾することができる化学的部分を組み込むこと。免疫タンパク質及び他の種類の合成的に発現されたペプチドプローブの場合、これらのプローブの発現は、例えば、mRNAディスプレイ又はリボソームディスプレイによって、RNA分子をタンパク質に連結することによって、あるいは同族のDNA又はcDNA分子をさらにプローブに局在化することによって、例えば、逆転写によって、核酸バーコード又は標識として機能する核酸配列にプローブを化学的に連結するために使用され得る。
【0129】
核酸の配列及び局在に関する情報は、我々の新規LabelX試薬を使用することにより核酸自体を連結することによって、又はOligoPaint、パドロックプローブ、又はMIPなどのある種の核酸プローブを連結することによって捕捉することができる。LabelX試薬は、Label-IT Amine(MirusBio社)のナイトロジェンマスタード反応性基及びモジュール式反応性アミンリンカーを含み、さらにアクリロイルのポリアクリルアミドへのフリーラジカル重合以外の他の付着化学物質の開発を可能にする。例えば、NHSーエステルーアジド化合物をLabel-IT Amineに結合して、核酸をPEGクリックハイドロゲルに連結することができる新しいリンカーを作製可能である。他方、我々は、LabelXのAcX 6-((アクリロイル)アミノ)ヘキサン酸(Life Technologies社)成分などのハイドロゲル付着部分を使用して、多様な標的分子への他の付着化学物質を作り出すことができる。ナイトロジェンマスタードは核酸との反応に有効であるが、反応性アルキンは他のヘテロ原子とも非特異的に反応する。他の反応特性、又は特定のクラスの標的分子のFISSEQハイドロゲルへの共有結合捕捉に対する特異性の向上を伴って、任意の数の新しいリンカーを生成することができる。核酸をハイドロゲルマトリックスに特異的に連結するための他の種類の化学成分としては、二本鎖核酸にインターカレートすることができ、ハイドロゲルマトリックスに連結することができる化学部分を有することが可能な試薬が挙げられる。これらの試薬はまた、インターカレーションを介して核酸に特異的に向けられた後に、核酸と共有結合を確立するためなどの、他の機能的部分も有し得る。核酸をハイドロゲルマトリックスに特異的に結合させるための別の化学は、水銀原子が核酸と反応してスルフヒドリル基に対してさらに反応性の複合体を形成する核酸水銀化反応を含む。そのような化学は、核酸を水銀塩の溶液と接触させる工程、所望により、錯化されたが未反応の水銀を、例えば、シアン化水素を用いて除去する工程、そして最後に、スルフヒドリル基と、ハイドロゲル結合基、例えばアクリロイルを含むラジカル重合性基、クリック基、又はハイドロゲルマトリックスへの共役を目的とした反応性の他の基の両方を含む化合物と反応させる工程を含み得る。
【0130】
ハイドロゲル組成、分子取り込み及び排除
FISSEQハイドロゲルを形成するためには、特定の性質が望まれ得る。例えば、酵素との相溶性、急速拡散、熱的、物理的、光及び化学的安定性、光学的透明度、核酸との共有結合を確立するための入手容易な化学、固体支持基板への付着方法、生体直交性、及び均一なナノスケールネットワークアーキテクチャである。
【0131】
FISSEQヒドロゲルの組成及び形成化学は、FISSEQハイドロゲルに組み込まれた分子の種類及び化学部分を部分的に決定することができる。例えば、ポリアクリルアミド-ビスアクリルアミドハイドロゲルのフリーラジカル重合は、フリーラジカル重合に関与することができる特定の基をハイドロゲルに化学的に組み込むことができる。二官能性若しくは多官能性モノマー、又はアクリルアミド、ビスアクリルアミド、及びクリックモノマーなどの他の二官能性若しくは多官能性モノマーのコポリマーから形成される他のポリマーは、付加的な官能性により重合後に官能性ハイドロゲルを提供し得る。例えば、クリック官能性プロパルギルアクリルアミド(PAm)モノマーは、得られるポリマー中のクリック可能なアセチレン基を介してさらなる結合官能基を含む。他の種類のハイドロゲルは、アルキン又はアジドで末端官能化されているn-アームド(n-armed)PEGポリマーが「クリック」ケミストリーによってハイドロゲルマトリックスに組み立て可能な、PEG-クリックケミストリーによって形成されるものなどである。
【0132】
PEG-クリックゲルは、「クリックケミストリー」を使用してマルチアームPEG分子の共有結合により形成されるハイドロゲルである。特にアジドーアルキン付加環化及び銅触媒アジドーアルキン付加環化(CuAAC)は例示的なクリックケミストリーである。CuAACは、広範囲のpH及び温度にわたって水性溶媒中で作用し、大部分は生体直交性であり、これはクリック官能化PEGモノマーがタンパク質又は核酸と反応しないことを意味する。従って、生じるハイドロゲルは、一定の条件下で均一かつ理想的なナノスケールネットワーク構造を示すことができる。PEGは酵素反応と両立し得る。実際、PEGは反応速度論を高めるための一般的な添加剤である。PEGクリックハイドロゲルは光学的に透明であり得る。CuAACから生じるトリアゾール結合及びPEGスペーサーは双方化学的に安定であり、配列決定の熱的、物理的、化学的、及び光毒性ストレスに耐える可能性が高い。核酸をPEGクリックゲルに組み込むように修飾して、RNA及びDNAをハイドロゲルに連結することが可能になる。タンパク質及び他の種類の分子もまた、PEG-クリックゲルに組み込むために修飾され得る。最終的に、PEG-クリックハイドロゲルは、理想的には「ボトルブラシ」トポロジーの骨格に沿って他の結合基でさらに官能化され、RCAアンプリコンなどのハイドロゲルの形成後に合成された架橋分子のための化学ハンドルを提供する。膨張するPEGクリックハイドロゲルを合成することが可能であり、ここでPEG骨格は荷電基又は親水性基で官能化されていてもよい。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、標的又はプローブを有する付着部分又は反応性基と連結することが可能であり、ここで付着基又は反応性基は、目的の標的又はプローブを捕捉するように機能する。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、PEG-クリックハイドロゲルであり得、ここで、PEG-クリックハイドロゲルは、生体試料を用いてまたは用いずにin situで形成される。いくつかの実施形態において、PEG-クリックハイドロゲルなどの形成されたハイドロゲルを介して液体混合物を流してもよく、ここで付着部分又は反応性基は、流れる液体混合物中のさらなる分子を捕捉することができる。いくつかの場合において、重合三次元マトリックスを使用して生体分子を検出する方法は、重合三次元マトリックスを提供すること、標的に結合可能なプローブを重合三次元マトリックスへ流入させること、及び重合三次元マトリックス内でプローブを捕捉すること、を含み得る。いくつかの場合において、プローブの流入は、プローブによって検出されるべき生体分子に結合しているプローブの流入を含む。いくつかの場合において、プローブは、付着部分を介して捕捉できる。
【0133】
適切な化学的共役基をポリマーハイドロゲルネットワークの骨格に組み込み、標的を捕捉するために使用できる。例示的な共役基は、一級アミン、スルフヒドリル、および「クリック」化学基(例えば、アジド、アルキン)を含み得る。
【0134】
官能基は、空間精度に必要とされる三次元空間における機能的捕捉ノード密度を達成するために適切な濃度で組み込むことができる。いくつかの実施形態において、平均捕捉ノード密度は、1立方ミクロンあたり1ノードを超え得る。1~1000/立方ナノメートル、500~600/立方ナノメートル、600~700/立方ナノメートル、700~800/立方ナノメートル、800~900/立方ナノメートル、900~1000/立方ナノメートル、1000~1200/立方ナノメートル、1200~1500/立方ナノメートル、1500~1800/立方ナノメートル、又は1800~2000/立方ナノメートルであり得る。いくつかの実施形態において、捕捉ノード密度は、少なくとも1000/立方ナノメートル、少なくとも2000/立方ナノメートル、少なくとも3000/立方ナノメートル、少なくとも4000/立方ナノメートル、又は少なくとも5000/立方ナノメートルであり得る。
【0135】
FISSEQの効率及び空間的均一性を高めるために、配列決定鋳型のみをハイドロゲルに特異的に架橋してもよく、一方ハイドロゲルマトリックスに不均一性を生じさせる可能性がある他の全ての種類の生体分子を除去してもよい。例えば、架橋された生体分子はマトリックスの有効孔径を減少させ、それにより試薬のゲルへの不均一な拡散速度をもたらし、又は大きな高分子にアクセスできない局所領域さえも作り出す可能性がある。架橋生体分子はまた、FISSEQ時に導入されたオリゴヌクレオチド、酵素、及び他の試薬と非特異的に相互作用し得る。例えば、捕捉オリゴヌクレオチドのタンパク質への非特異的結合は、バックグラウンドシグナルを増大させるか偽陽性を生じ得る。
【0136】
生体試料から生体分子を加水分解又は洗浄するための多数の方法が存在する。FISSEQハイドロゲルを乱さない方法を使用することができる。それらの方法は、核酸(特に、in situ配列決定ライブラリーに組み込まれている目的の核酸及び配列決定鋳型を含む核酸)に対して直交性であると予想される。主にメタノールやアセトンなどの有機溶媒、Saponin、Triton X-100、Tween-20などの界面活性剤を含む一般的な透過処理試薬は、脂質や一部のタンパク質を除去できる。タンパク質は、酵素的又は化学的に加水分解することができる。ペプシン、トリプシン、エレプシン、及びプロテイナーゼKを含む幅広いプロテイナーゼを使用して、タンパク質の酵素的加水分解を達成することができる。グアニジンHCl及びSDSなどの変性剤、並びにDTT及びβ-メルカプトエタノールなどの還元剤は、酵素消化に抵抗性のある堅固なタンパク質構造を分解することによって助けとなり得る。タンパク質の酸加水分解は、効果的ではあるが、RNAの分解及びDNAの脱プリンを引き起こす可能性があるため、FISSEQには適していない可能性がある。しかしながら、中性pHでのPd(II)錯体によるなどの、ペプチド結合加水分解の他の化学的方法は、in situで可能であり得る。
【0137】
大部分の小分子及びイオンはハイドロゲルから容易に洗い流すことができる。しかしながら、グリコサミノグリカン及びプロテオグリカンのような、特にECM中に存在するより大きな炭水化物は、困難であるかもしれない。これらのコンパクトな結晶様構造は分解が困難である可能性があり、ヘパリン、コンドロイチン、ケラチン硫酸、及びヒアルロン酸などの多くが帯電している。ヒアルロナーゼ、コラゲナーゼを含む多くの酵素は特定のECM成分を分解する能力を有することがあるが、MMPなどの他の酵素は広域スペクトルのECM加水分解活性を示す。
【0138】
それぞれが生体分子の組み込み及び生体分子の特異的結合又は標識の識別のための独自の特徴を有する、代替のFISSEQハイドロゲル形成化学を利用することに加えて、特異的又は非特異的結合を確立する目的で、並びに特定の結合の形成を回避する目的で、ハイドロゲル形成化学に対する生体分子の反応性を調節することもできる。前者については上述した。後者の例として、タンパク質上のチオール基がフリーラジカル重合ポリアクリルアミドハイドロゲルに組み込まれてもよい。従って、ハイドロゲル形成前の、マレイミド又はヨードアセトアミドとの反応によるなど、生体分子上に存在するチオールの不動態化は、これらの基がハイドロゲルと相互作用するのを特異的に防ぐことができる。
【0139】
パンオミクスFISSEQハイドロゲル法を要約すると、本開示は、in situで形成されたハイドロゲルへの捕捉のためにRNA、DNA、タンパク質、又は他の生体分子を付着部分で化学修飾する方法を提供する。
【0140】
本開示は、特定の生体分子又は付着部分と共有結合を形成することができるヒドロゲル材料を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、遊離アミノ基のアシル化、カルボン酸基のアミノ化、又はチオール基のアルキル化などの、ヒドロゲルへの取り込みから生体分子を不動態化するための処理を含む。他の実施形態では、この方法は、ハイドロゲルから特定の種類の生体分子を除去するための処理を含み、処理は、不要な生体分子を物理的に洗い流すこと、SDS/洗剤で処理すること、タンパク質分解を誘発すること、脂肪分解を誘発すること、細胞外マトリックスなどの生物学的構造の酵素的又は化学的分解を用いること、及び/又は可溶化を誘導し、その後有機溶媒で洗い流すこと、を含む。
【0141】
特定の実施形態では、方法は、水素化ホウ素ナトリウムによるカルボニルの還元などのin situ配列決定による検出を強化する目的でハイドロゲルに共有結合した分子の自己蛍光を減少させるための処理を含む。
【0142】
in situ配列決定
配列決定は、実質的に無制限の固有のアイデンティティを持つ豊富なデジタルラベルとして機能する一連の順序付けられたシグナルを取得するプロセスである。核酸分子内の塩基の配列を決定するための、又は核酸を使用して蛍光シグナルの順序付けられたセットを生成するための化学として、ハイブリダイゼーションによる配列決定(SBH)、ライゲーションによる配列決定(SBL)、及び合成による配列決定(SBS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
分子同一性の検出のための配列決定は、例えば、分析時に生体試料の内部に存在するRNA及びDNA分子の、内因性配列又は未変性の核酸配列の検出を含み得る。これらの核酸分子には、例えば、アダプターライゲーション、環状化、第二及びさらなる鎖合成、増幅(例えば、PCR及びRCA)などの任意のライブラリー構築工程によって改変されたものが含まれ得る。あるいは、配列決定は、免疫タンパク質、センサー、アフィニティーバインダー試薬、核酸捕捉プローブ(例えば、OligoPaint、MIP、パドロックプローブ)に結合したものなどのプローブを介して導入された核酸標識の検出のためであり得る。最終的に、配列決定は、核酸配列及び合成バーコードの両方を連続的又は並行して検出するためのものであり得る。
【0144】
パンオミクスFISSEQの場合、分子同一性、核酸配列、又は核酸標識の検出のための配列決定は、すべての標的分子について同時に、すなわち並行して、又は直列の分子のサブセットについて行ってもよい(
図2)。特に、分子同一性の検出のための配列決定は、例えば、トランスクリプトーム(transcriptome)、ゲノム(genome)、プロテオーム(proteome)、ビローム(virome)、メタボローム(metabolome)、リポーム(lipome)、リニエージーオーム(lineage-ome)などの「omes」内又はその間の分子のサブセットに対して行われ得る。分子標識及び配列間の配列決定反応の分配は、配列決定ー反応ー直交条件の使用、選択的プライミング、及び部分的標識化を含む広範な手法によって達成され得る。直交性配列決定反応は、相互に排他的な条件下で行われる配列決定反応を意味し、任意の1つの特定の反応の間、潜在的鋳型のサブセットのみが検出され得る。選択的プライミングは、新しい相補的核酸の合成が開始される短い二本鎖核酸を用いて配列決定反応が「プライミング」されるSBS及びSBL化学に関連し得る。プライミング事象は配列依存的であり、すなわち、検出される全ての分子のうち、任意の1つの配列決定プライマーの導入によって配列決定反応のサブセットのみがプライミングされるように、サブセットは異なるプライミング配列を利用してもよい。部分標識とは、検出される分子又は標識のサブセットへの蛍光部分の選択的導入及び局在化を指し、これは特にSBH、SBL、及びCHCR化学に関連する。例えば、SBHを用いてタンパク質を検出するためのDNA結合抗体の検討時に、抗体標識に相補的な蛍光プローブのサブセットのみを一度に導入してもよい。
【0145】
パンオミクスFISSEQ配列決定法を要約すると、本開示は、複数の種類の生体高分子に対応する検出可能な標識を含む3Dハイドロゲルを提供し、ここで検出可能な標識は核酸配列である。
【0146】
本開示は、生体分子を同定し、3Dヒドロゲル内の2つ以上の生体分子間の絶対的または相対的な空間的関係を測定する方法を提供する。
【0147】
本開示は、ハイブリダイゼーションによるか、又はポリメラーゼ若しくはリガーゼを使用する相補鎖の合成による(合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定)配列決定によるものなど、検出のためにin situで一連の規則正しい蛍光シグナルを生成する方法を提供する。
【0148】
本開示は、RNA、DNA、タンパク質、及び/又は他の種類の生体分子を含む、FISSEQライブラリー内の分子種のサブセット又は検出可能な標識の連続検出の方法であって、連続検出プロセスを含む各工程において、2種以上の分子が検出される、方法を提供する。
【0149】
本開示は、RNA、DNA、タンパク質、及び/又は他の種類の生体分子を含む、FISSEQライブラリー内の分子種又は検出可能な標識の同時検出の方法を提供する。
【0150】
本開示は、蛍光部分に結合した複数種のオリゴヌクレオチドを含むFISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、DNAリガーゼを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液及び/又は取り込み用緩衝液をさらに含む。
【0151】
本開示は、蛍光部分に結合した複数種のdNTP類似体を含むFISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、DNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液及び/又は取り込み用緩衝液を含む。
【0152】
本開示は、蛍光部分に結合した複数種の準安定自己組織化DNAヘアピン、例えばハイブリダイゼーション連鎖反応モノマーを含むFISSEQライブラリーの蛍光in situ配列決定のためのキット又はシステムを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、親和性バインダーバーコード配列に相補的な配列を含む複数種のDNAオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、キットは、イメージング用緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、キットは、ハイブリダイゼーション用緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、キットは、HCR増幅用緩衝液をさらに含む。
【0153】
コンピューターによる同定
パンオミクスFISSEQは、試料内の同一の物理的空間に対応し、試料を構成する一連の画像を特徴とする一種のデータを生成することができる。
【0154】
単一同一性SBH及び染色によって生成されるものなど、この画像データのいくつかについては、単一画像は、標的分子の同定及び局在化に必要なすべての情報を含み得る。その場合、「画像サイクル」及び対応する化学的質問についての情報は、取得中に画像データにデジタル的にリンクされており、識別に十分である。この情報は、タイムスタンプ、固有の画像識別子、画像ファイルパス、データベース注釈などによって、画像メタデータにリンクされてもよく、あるいは画像データに関連付けられてもよい。
【0155】
画像データの他の態様では、対象物を識別して、例えば配列決定読み取りの、一連の時系列蛍光シグナルに関連付けることができる。この種の生画像データを分子識別及び局在化に処理するために、生画像データを、識別に使用される高次元ベクトルであり、典型的には核酸塩基識別子、整数、又はその他の記号(例:「ACTCTA」、「0102010120」など)などの順序付けられた識別子のセットからなる「読み取り(リード)」に処理する必要がある。配列決定読み取り(シーケンシングリード)はまた、空間座標及び他の空間的又は画像ベースの特性への参照、品質データなどを含む付随する情報を有してもよい。場合によっては、配列決定読み取りの構築は、ゲノムDNAの配列決定などのための分子同定の全体を構成する。他の場合には、順序付けられたシグナルは参照辞書にマッピングされ、それはバイオインフォマティクス界では一般に「アラインメント」と呼ばれる。
【0156】
全塩基配列決定のために、全ての読み取りは、既知のRNA若しくはDNA配列のデータベース、又は合成バーコードの辞書などの参照として知られる統一された検索辞書、又は複数の供給源及びタイプの識別子を含むハイブリッド参照に同時にアラインメントされ得る。あるいは、配列決定読み取りの一部は、検索辞書の検索を指示するために使用される。例えば、適切な参照データベースを選択する目的のために、どのタイプの分子が同定されているかを決定するためのアドレスとして配列読み取りの一部を使用する。あるいは、読み取りは、いくつかの参照に対して連続して分析されてもよい。読み取りが複数の可能な識別子と一致する場合、読み取りへの識別(アイデンティティ)の割り当ては確率的になる可能性がある。
【0157】
バーコード配列決定の場合、バーコードは、エラー検出及び/又はエラー訂正コードの特徴をバーコードシーケンスに組み込むことなどによって、検出のロバスト性を高める目的で構築されてもよい。例えば、合成バーコードは、一定のハミング距離で分離されている可能性があり、誤識別を引き起こすことなく、多数の配列決定エラーが発生する可能性がある。
【0158】
計算分析を要約すると、本開示は、画像メタデータの場合のように、あるいはタイムスタンプ、一意の画像識別子、画像ファイルパス、データベース注釈などのように画像データに関連する注釈によって、画像データが、検出されている検出可能な標識の性質にリンクされるように、画像データに注釈を付ける方法を提供する。
【0159】
本開示は、配列決定読み取りを分子識別子又は分子バーコード配列の1又は複数のデータベースにアラインメントさせる工程を含む、多オミクス又はパンオミクスFISSEQデータを分析する方法を提供する。
【0160】
本開示は、エラー検出又はエラー訂正情報を組み入れることによって分子識別子又は分子バーコード配列を計算的に設計する方法を提供する。
本明細書で使用される核酸化学、生化学、遺伝学、及び分子生物学の用語及び記号は、当技術分野の、例えば以下の標準的な論文及び教科書に従う:Komberg and Baker, DNA Replication, Second Edition (W.H. Freeman, New York, 1992); Lehninger, Biochemistry, Second Edition (Worth Publishers, New York, 1975); Strachan and Read, Human Molecular Genetics, Second Edition (Wiley-Liss, New York, 1999); Eckstein, editor, Oligonucleotides and Analogs: A Practical Approach (Oxford University Press, New York, 1991); Gait, editor, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach (IRL Press, Oxford, 1984)など。
【0161】
コンピューター制御システム
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされているコンピューター制御システムを提供する。
図3は、実質的に全体を通して説明されているように、生体分子の検出又は識別を補助するようにプログラムされているかそうでなければ構成されているコンピューターシステム301を示す。コンピューターシステム301は、例えば、光源、検出器(例えば、光検出器)、薬剤を放出するために利用される装置又は構成要素、反応条件(例えば、ハイブリダイゼーション、配列決定、酵素反応)を提供するのに利用される装置又は構成要素などの、生体分子の検出に利用される本開示の構成要素及び/又は装置の様々な態様を調整できる。コンピューターシステム301は、ユーザーの電子装置又は電子装置に対して遠隔に配置されたコンピューターシステムとすることができる。電子機器は携帯電子機器であり得る。
【0162】
コンピューターシステム301は中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」及び「コンピュータープロセッサ」)305を含み、これはシングルコア若しくはマルチコアプロセッサ又は並列処理用の複数のプロセッサとすることができる。コンピューターシステム301はまた、メモリ又はメモリ位置310(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶装置315(例えば、ハードディスク)、1又は複数の他のシステムと通信するための通信インターフェース320(例えば、ネットワークアダプター)、及びキャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置及び/又は電子ディスプレイアダプターなどの周辺機器325、を含む。メモリ310、記憶装置315、インターフェース320及び周辺機器325は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU305と通信する。記憶装置315は、データを記憶するためのデータ記憶装置(又はデータリポジトリ)とすることができる。コンピューターシステム301は、通信インターフェース320を用いてコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)330に作動可能に結合することができる。ネットワーク330は、インターネット、インターネット及び/又はエクストラネット、あるいはインターネットと通信するイントラネット及び/又はエクストラネットとすることができる。場合によっては、ネットワーク330は、電気通信及び/又はデータネットワークである。ネットワーク330は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる1又は複数のコンピュータサーバを含むことができる。場合によっては、コンピューターシステム301を利用して、ネットワーク330は、ピアツーピアネットワークを実装することができ、これにより、コンピューターシステム301に結合された装置がクライアント又はサーバとして振舞うことが可能になる。
【0163】
CPU305は、プログラム又はソフトウェアで実施することができる一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、メモリ310などのメモリ位置に格納されてもよい。命令をCPU305に向けることが可能であり、その後、本開示の方法を実施するようにCPU305をプログラムするか、そうでなければ構成することができる。CPU305によって実行される動作の例は、フェッチ、デコード、実行、及びライトバックを含むことができる。
【0164】
CPU305は、集積回路などの回路の一部とすることができる。システム301の1又は複数の他の構成要素を回路に含めることができる。いくつかの場合において、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0165】
記憶装置315は、ドライバ、ライブラリー、及び保存プログラムなどのファイルを記憶することができる。記憶装置315は、ユーザーデータ、例えば、ユーザーの好み及びユーザープログラムを記憶することができる。いくつかの場合において、コンピューターシステム301は、イントラネット又はインターネットを介してコンピューターシステム301と通信するリモートサーバ上に配置されるなど、コンピューターシステム301の外部にある1又は複数の追加のデータ記憶装置を含むことができる。
【0166】
コンピューターシステム301は、ネットワーク330を介して1又は複数のリモートコンピューターシステムと通信することができる。例えば、コンピューターシステム301は、ユーザー(例えば、本開示の生体分子を検出するユーザー)の遠隔コンピューターシステムと通信することができる。リモートコンピューターシステムの例には、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレート又はタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone、アンドロイド対応機器、Blackberry(登録商標))、又は携帯情報端末が含まれる。ユーザーは、ネットワーク330を介してコンピューターシステム301にアクセスすることができる。
【0167】
本明細書に記載の方法は、例えば、メモリ310又は電子記憶装置315など、コンピューターシステム301の電子記憶場所に記憶された機械(例えば、コンピュータープロセッサ)実行可能コードによって実施することができる。機械実行可能コード又は機械可読コードは、ソフトウェアの形で提供され得る。使用中、コードはプロセッサ305によって実行され得る。いくつかの場合において、コードは、記憶装置315から検索され、プロセッサ305による容易なアクセスのためにメモリ310に記憶可能である。いくつかの状況では、電子記憶装置315は除外することができ、機械実行可能命令はメモリ310に記憶される。
【0168】
コードは、コードを実行するように構成されたプロセッサを有する機械と共に使用するために事前にコンパイルし構成することができ、あるいは実行時にコンパイルすることができる。コードは、コードを事前コンパイル方式又はコンパイル時方式で実行できるように選択することができるプログラミング言語で供給することができる。
【0169】
コンピューターシステム301など、本明細書に提供されるシステム及び方法の態様は、プログラミングにおいて具現化することができる。本技術の様々な態様は、典型的には機械(又はプロセッサ)実行可能コード及び/又はある種の機械可読媒体で運ばれる又はその中に具現化された関連データの形をとる「製品」または「品目」と考えてもよい。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)又はハードディスクなどの電子記憶装置に格納することができる。「記憶」タイプの媒体は、コンピューター、プロセッサなどの有形メモリ、又は様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどのその関連モジュールのいずれかまたは全てを含むことができ、それによりソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的なストレージを提供し得る。ソフトウェアの全部又は一部は、インターネット又は他のさまざまな電気通信ネットワークを介して通信されることがある。そのような通信は、例えば、あるコンピューター又はプロセッサから別のコンピューター又はプロセッサへ、例えば管理サーバ又はホストコンピューターからアプリケーションサーバのコンピュータープラットフォームへのソフトウェアのロードを可能にし得る。従って、ソフトウェア要素を担持することができる別のタイプの媒体は、有線及び光地上通信網を介して、そして様々なエアリンクを介して、ローカルデバイス間の物理的インターフェースにわたって使用されるなどの光波、電波及び電磁波を含む。そのような波を搬送する物理的要素、例えば有線又は無線リンク、光リンクなどもまた、ソフトウェアを担持する媒体と見なされ得る。本明細書では、非一時的で有形の「記憶」媒体に限定されない限り、コンピューター又は機械の「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0170】
よって、コンピューター実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体又は物理伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するために使用され得るものなど、任意のコンピューターなどの任意の記憶装置などの光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体は、そのようなコンピュータープラットフォームのメインメモリなどの動的メモリを含む。有形の伝送媒体は、コンピューターシステム内のバスを構成するワイヤを含む、銅線及び光ファイバである、同軸ケーブルを含む。搬送波伝送媒体は、電気若しくは電磁信号、又は無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に発生するものなどの音波若しくは光波の形態を取り得る。従って、コンピューター可読媒体の一般的な形態は、例えば、以下のものを含む:フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、その他の磁気媒体、CD-ROM、DVD又はDVD-ROM、その他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、その他の穴のパターンを有する物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH-EPROM、その他のメモリチップ又はカートリッジ、データ又は命令を搬送する搬送波、そのような搬送波を輸送するケーブル又はリンク、あるいはコンピューターがプログラミングコード及び/又はデータを読み取ることができるその他の媒体。これらの形態のコンピューター可読媒体の多くは、実行のために1又は複数の命令の1又は複数のシーケンスをプロセッサに搬送することに関与し得る。
【0171】
コンピューターシステム301は、例えば生体分子を検出するための本開示の容器又は三次元マトリックスの少なくとも一部を提供するためのユーザーインターフェース(UI)340を含む電子ディスプレイ335を含むか、またはそれと通信することができる。UIの例には、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)及びウェブベースのユーザーインターフェースが含まれるがこれらに限定されない。
【0172】
本開示の方法及びシステムは、1又は複数のアルゴリズムによって実施することができる。アルゴリズムは、中央処理装置(CPU)305による実行時にソフトウェアによって実現することができる。アルゴリズムは、例えば、本開示に開示された方法及びシステムを利用して複数の生体分子を検出するように実行することができる。複数の生体分子は、本明細書に記載の異なる種類のものであり得る。所望により、本明細書に記載のシステムの構成要素(例えば、光源、検出器など)の動作を制御又は実行して生体分子の検出を実行するように、アルゴリズムを実行してもよい。
【0173】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」(不定冠詞)及び「the」(定冠詞)は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用されるとき、用語「comprises(含む)」及び/又は「comprising(含む)」又は「includes(含む)」及び/又は「including(含む)」は、記載された特徴、領域、整数、工程、動作、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1又は複数の他の特徴、領域、整数、工程、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。
【0174】
さらに、「下(lower)」又は「底(bottom)」及び「上(upper)」又は「頂(top)」などの相対用語は、本明細書では、図に示されているように1つの要素と他の要素との関係を説明するために使用され得る。相対的な用語は、図に示されている向きに加えて、要素の異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図のうちの1つの要素が反転されると、他の要素の「下」側にあると記載されている要素は、他の要素の「上」側に向けられる。従って、例示的な用語「下」は、図の特定の向きに応じて、「下」と「上」の両方の向きを包含することができる。同様に、図のうちの1つの要素が反転された場合、他の要素の、「下に(below)」又は「真下に(beneath)」として説明されている要素は、他の要素の「上に(above)」に向けられる。従って、「下に(below)」又は「真下に(beneath)」という例示的な用語は、上と下の両方の向きを包含することができる。
【0175】
本明細書では本発明の好ましい実施形態を示し説明してきたが、そのような実施形態が例示としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換に思い至るであろう。本明細書中に記載された本発明の実施形態に対する種々の代替物が本発明を実施する際に使用され得ることが理解されるべきである。本明細書に記載の実施形態の多数の異なる組み合わせが可能であり、そのような組み合わせは本開示の一部とみなされる。さらに、本明細書のいずれか1つの実施形態に関連して論じられた全ての特徴は、本明細書の他の実施形態での使用に容易に適合することができる。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がその範囲に包含されることが意図される。
【実施例】
【0176】
実施例1-例示的な直接的単一タンパク質配列決定
【0177】
図1A~
図1Cは、実施形態による、直接的単一タンパク質配列決定の概略図を示す。
図1Aは、アミノ酸残基の順序付けられた配列が、N-recognin結合、サイクルハイブリダイゼーション連鎖反応(CHCR)を用いるなどの単一分子蛍光検出、及びN末端残基の酵素的切断のサイクルによって決定され得ることを示す。
図1Bは、L/F/Y及びR/K/Hにそれぞれ結合するClps及びUBR1を使用するフィンガープリンティングがペプチド配列を低次元フィンガープリントにマッピングすることを示す。
図1Cは、RefSeqからのタンパク質を使用して、このフィンガープリント法が、約25残基のみの決定後に完全配列決定法との同定において同等性を達成するという例示的な実験データを示す。RefSeqデータベースに存在するタンパク質アイソフォームなどの複数のエントリーが原因で、同定は約60%の確率で漸近的に表示される。
【0178】
実施例2-組織に関するin situ単一細胞「オミクス」データからの空間情報の同時解析
【0179】
図2は、組織に関するin situ単一細胞「オミクス」データからの空間情報の同時分析のための目標を示す。上段:目標(左)及びCellNetの機能性(黒い破線ボックス図、右)。CellNetは、系統的な発現データの解析により、多くの細胞型(nCT)の遺伝子調節ネットワーク(GRN)プロファイルを作成する。遺伝子操作された組織(eCT)からの発現プロファイルは、対応と差異を識別するために、これらのプロファイルと照合される(黒い破線ボックス図、左)。この方法を用いて肝細胞様細胞に再プログラムされた線維芽細胞のCellNet解析例を示す(黒い破線ボックス図、右)。これらの「iHep」系統は肝細胞のマーカー及び機能テスト(動物の相補性を含む)を満たしているが、CellNetはそれらが線維芽細胞対肝臓の同一性を強く発現し続けることを示している。追加の転写因子(全部で4つ)の発現は肝臓適合を改善するが、線維芽細胞の同一性を排除しない(「4ファクト」)。胎児及び成人の肝臓のCellNet解析も示されており、胎児の肝臓は、胎児の造血におけるその役割と一致する造血幹細胞(HSPC)ならびに肝臓の同一性を示す。CellNetは、iHep系統が腸への同一性も若干発現することを示している(結腸)。結腸の同一性を改善する因子についてのCellNet解析の使用は結腸を機能的に生着させることができる細胞をもたらし、これはiHepが実際には二分化能の内胚葉前駆体であることを示唆する。第一の工程は、FISSEQ RNA発現データで始まるin situ「オミクス」データを受け入れるようにCellNet処理を調整し(上段左、項目1、矢印)、その後空間解析及びGRN解析(上段左、項目2、矢印)を統合することであり、予想例を示す(下段、破線のボックス)。細胞形態は、組織の単一細胞において解析され、CT/GRNプロファイルと相関し得る。ACME法を用いてFISSEQ用に調製された細胞の画像セグメンテーションの予備試験を示す(左、セグメンテーション;右、染色オーバーレイ)。相互作用は、空間的に近接した異なるCT、又はCT GRNが互いに相互作用又は調節する産物を産生する他の空間構造に適合する細胞を見つけることによって検出することができる。相互作用及び形態は、単一細胞in situタンパク質プロファイルを用いてより直接的に観察可能であり得る。これらの空間及びGRN情報の同時解析は、現在のCellNetロジックを使用して試料の「オミクス」データと比較される事前プロファイリングされたnCTに依存しているため、深く統合されていない(黒いボックス、上段)。このロジックは、特定のnCTに関連付けられたGRNネットワークを識別することにより、nCTを空間的に解析可能である(アーキテクチャ、左、丸で囲まれたGRNは特定のCTを表す)。深く統合された空間的/GRN解析は、それらの「オミクス」検出されたGRNプロファイルによる試料中の細胞の教師なしクラスタリング及びクラスタの空間的体系化の検出によって、以前にプロファイリングされていない細胞型又はサブタイプのGRNを発見し得る(アーキテクチャ、右、丸で囲まれたGRNは、試料中の空間的に体系化された細胞クラスタに対応する)。
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
(i)1種又は複数種の生体分子を含む生体試料と、(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を含み、
前記膨潤剤は刺激を印加すると、体積を増加して前記1種又は複数種の生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化することが可能であり、
前記刺激は、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激であり、
前記1種又は複数種の生体分子は、前記付着部分を介して前記三次元マトリックスに結合し、
前記三次元マトリックスは、前記生体試料中の前記生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する、
生体試料の1種又は複数種の生体分子の検出又は同定に使用するためのシステム。
<2>
(i)1種又は複数種の生体分子を含む生体試料と、(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を含み、
前記膨潤剤は刺激を印加すると、前記1種又は複数種の生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化することが可能であり、
前記刺激は液体ではなく、
前記1種又は複数種の生体分子は、前記付着部分を介して前記三次元マトリックスに結合しており、
前記三次元マトリックスは、前記生体試料中の前記生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する、
生体試料の1種又は複数種の生体分子の検出又は同定に使用するためのシステム。
<3>
前記三次元マトリックスが、前記生体分子を含む前記生体試料を含む、<1>又は<2>に記載のシステム。
<4>
前記容器に作動可能に結合している前記刺激の供給源をさらに含み、前記膨潤剤への前記刺激の印加により、前記膨潤剤が活性化して前記生体試料中の前記生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する三次元ポリマーマトリックスを形成する、<3>に記載のシステム。
<5>
前記刺激の供給源に作動可能に結合している1以上のコンピュータープロセッサをさらに含み、前記1以上のコンピュータープロセッサは、前記刺激の供給源に対して、前記膨潤剤に刺激を印加して前記膨潤剤を活性化して前記三次元ポリマーマトリックスを形成するように指示する、個別に又は集合的にプログラムされている<4>に記載のシステム。
<6>
前記生体試料が、細胞又は細胞の派生物である、<1>又は<2>に記載のシステム。
<7>
前記生体分子が、リボ核酸分子(RNA)、デオキシリボ核酸分子(DNA)、又はRNA及びDNAである、<1>又は<2>に記載のシステム。
<8>
前記電気化学的刺激が、電気化学的反応である、<1>又は<2>に記載のシステム。
<9>
前記膨潤剤が、さらに収縮剤として作用するように構成される、<1>又は<2>に記載のシステム。
<10>
前記収縮剤が、光活性化収縮剤、電気化学的活性化収縮剤、又は熱活性化収縮剤である、<9>に記載のシステム。
<11>
前記膨潤剤が、キレート官能性を有する、<1>又は<2>に記載のシステム。
<12>
前記膨潤剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、<1>又は<2>に記載のシステム。
<13>
前記EDTAが、オルトーニトロベンジルケージ化EDTA又はキノン-エステル保護EDTAである、<12>に記載のシステム。
<14>
前記三次元マトリックスは、前記膨潤剤の活性化により1.1~10倍に膨潤するように構成される、<1>又は<2>に記載のシステム。
<15>
前記1種又は複数種の生体分子の前記絶対的又は相対的な空間的関係が、前記三次元マトリックスの膨張の際に保存される、<14>に記載のシステム。
<16>
前記付着部分が、反応性基を含むか、又は、反応性基に作動可能に結合されている、<1>又は<2>に記載のシステム。
<17>
前記付着部分が、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む、<1>又は<2>に記載のシステム。
<18>
前記付着部分が、重合可能な基を含む、<1>又は<2>に記載のシステム。
<19>
光により、又は電気化学的若しくは熱的に前記三次元マトリックスを膨潤させることを含む、<1>又は2>に記載の三次元マトリックスを使用する方法。
<20>
前記膨潤に続いて、蛍光in situ配列決定(FISSEQ)のための試薬を前記三次元マトリックスに流し込むこと、をさらに含む、<19>に記載の方法。
<21>
光により、又は電気化学的若しくは熱的に前記三次元マトリックスを収縮させること、をさらに含む、<19>に記載の方法。
<22>
(a)および(b)を含む、生体試料内の生体分子のin situ検出又は同定に使用するための方法:
(a)(i)生体分子を含む生体試料と(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を用意すること、ここで、前記膨潤剤は刺激の印加により前記生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化することが可能であり、前記刺激は、電磁気刺激、電気化学的刺激、又は熱刺激である;
(b)前記膨潤剤に刺激を印加することにより、前記膨潤剤を活性化して前記生体分子を含む前記三次元マトリックスを得ること、ここで、前記生体分子は、前記付着部分を介して前記三次元マトリックスに結合し、前記三次元マトリックスは、前記生体試料中の前記生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する。
<23>
(a)および(b)を含む、生体試料内の生体分子のin situ検出又は同定に使用するための方法:
(a)(i)生体分子を含む生体試料と、(ii)膨潤剤及び付着部分とを含む容器を用意すること、ここで、前記膨潤剤は刺激の印加により、前記生体分子を含む三次元マトリックスを生成するように活性化することが可能であり、前記刺激は液体ではない;
(b)前記膨潤剤に前記刺激を印加することにより、前記膨潤剤を活性化して、前記生体分子を含む三次元マトリックスを得ること、ここで、前記生体分子は、前記付着部分を介して前記三次元マトリックスに結合し、前記三次元マトリックスは、前記生体試料中の前記生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する。
<24>
前記三次元マトリックスが、前記生体分子を含む前記生体試料を含む、<22>又は<23>に記載の方法。
<25>
前記生体試料が、細胞又は細胞の派生物である、<22>又は<23>に記載の方法。
<26>
前記三次元マトリックス内で少なくとも前記生体分子のサブセットを検出すること、をさらに含む、<22>又は<23>に記載の方法。
<27>
前記容器に動作可能に結合された前記刺激の供給源を適用することをさらに含み、前記適用により、前記膨潤剤が活性化して三次元ポリマーマトリックスを形成し、前記三次元ポリマーマトリックスは、前記生体試料内の前記生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する、<22>又は<23>に記載の方法。
<28>
前記供給源を適用することが、前記供給源に指示を出すように個別に又は集合的にプログラムされた1以上のコンピュータープロセッサを用いて前記刺激の供給源を前記膨潤剤に対して働かせることを含む、<26>に記載の方法。
<29>
前記膨潤剤が、さらに収縮剤として作用するように構成される、<22>又は23>に記載の方法。
<30>
光により、又は、電気化学的若しくは熱的に前記三次元マトリックスを収縮させることをさらに含む、<29>に記載の方法。
<31>
骨格を含む三次元ポリマー、及び
前記三次元ポリマーの前記骨格に結合された付着部分を含み、
前記付着部分は、前記三次元ポリマー内の1種又は複数種の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されており、
重合三次元マトリックスは、前記1種又は複数種の生体分子を同定するためのプローブを含まない、
1種又は複数種の生体分子を同定するための重合三次元マトリックス。
<32>
前記付着部分が、前記プローブを捕捉するように構成されている、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<33>
前記三次元重合マトリックスが、前記プローブを捕捉するように構成されている、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<34>
前記三次元ポリマーと一体化した生体試料をさらに含み、前記付着部分が、前記生体試料中の前記1種又は複数種の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されている、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<35>
前記付着部分が、前記1種又は複数種の生体分子に結合した前記プローブを捕捉するように構成されている、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<36>
前記骨格が、ポリ(エチレングリコール)骨格である、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<37>
前記付着部分が、ボトルブラシトポロジーにおいて前記骨格に結合している、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<38>
前記付着部分が反応性基を含む、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<39>
前記付着部分が、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<40>
前記付着部分が重合可能な基を含む、<31>に記載の重合三次元マトリックス。
<41>
<31>に記載の重合三次元マトリックスを提供すること、前記プローブを前記重合三次元マトリックスへ流入させること、及び前記重合三次元マトリックス内で前記プローブを捕捉すること、を含む重合三次元マトリックスを使用して生体分子を検出する方法。
<42>
前記プローブを検出すること、をさらに含む、<41>に記載の方法。
<43>
前記プローブによって標的配列を配列決定すること、をさらに含む<42>に記載の方法。
<44>
前記プローブの流入が、前記プローブに検出される生体分子に結合したプローブを流入させること含む、<41>に記載の方法。
<45>
前記プローブの捕捉が、前記付着部分を介して前記プローブを捕捉することを含む、<44>に記載の方法。
<46>
(a)及び(b)を含む、1種又は複数種の生体分子を同定するための方法:
(a)1種又は複数種の生体分子、及び、(i)骨格を含む三次元ポリマーと、(ii)前記三次元ポリマーの前記骨格に結合された付着部分とを含む重合三次元マトリックス、を含む容器を提供すること、ここで前記付着部分は、前記三次元ポリマー内の前記1種又は複数種の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されており、前記重合三次元マトリックスは、前記1種又は複数種の生体分子を同定するためのプローブを含まないこと;及び
(b)前記重合三次元マトリックスに前記プローブを通過させること。
<47>
前記1種又は複数種の生体分子が、細胞又は細胞の派生物に含まれる、<46>に記載の方法。
<48>
前記1種又は複数種の生体分子が、前記細胞由来の細胞マトリックスに含まれる、<47>に記載の方法。
<49>
前記重合三次元マトリックス内で前記プローブを捕捉することをさらに含む、<46>に記載の方法。
<50>
前記プローブを捕捉することが、前記付着部分を介して前記プローブを捕捉すること、を含む、<49>に記載の方法。
<51>
前記プローブが前記1種又は複数種の生体分子に結合している、<49>に記載の方法。
<52>
前記1種又は複数種の生体分子を検出すること、をさらに含む、<49>に記載の方法。
<53>
前記1種又は複数種の生体分子を配列決定することをさらに含む、<52>に記載の方法。
<54>
前記骨格がポリ(エチレングリコール)骨格である、<46>に記載の方法。
<55>
前記付着部分が、ボトルブラシトポロジーの前記骨格に結合している、<46>に記載の方法。
<56>
前記付着部分が反応性基を含む、<46>に記載の方法。
<57>
前記付着部分が、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む、<46>に記載の方法。
<58>
前記付着部分が重合可能な基を含む、<46>に記載の方法。
<59>
以下の(a)~(d)を含む、生体試料の複数の生体分子を検出する方法;
(a)異なる2種類以上の複数の生体分子を含む生体試料を準備すること;
(b)前記複数の生体分子をin situで修飾して付着部分を含むようにすること;
(c)前記付着部分を三次元ポリマーマトリックスにin situで連結すること、ここで前記付着部分は、前記生体試料中の前記複数の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されていること;
(d)前記複数の生体分子の少なくともサブセットをin situで検出すること。
<60>
前記生体分子が光学的に検出される、<59>に記載の方法。
<61>
前記生体分子が蛍光検出される、<60>に記載の方法。
<62>
前記生体試料が、細胞又は細胞の派生物である、<59>に記載の方法。
<63>
前記生体試料が、前記細胞に由来する細胞マトリックスである、<62>に記載の方法。
<64>
前記生体分子が、デオキシリボ核酸(DNA)、タンパク質、及び小分子を含む、<59>に記載の方法。
<65>
前記生体分子が、タンパク質を含み、前記検出が、前記タンパク質を配列決定することを含む、<64>に記載の方法。
<66>
前記タンパク質を配列決定することが、前記タンパク質のN末端残基を酵素的に切断すること、及び検出可能な標識を有する親和性バインダーをin situで前記タンパク質に結合させること、を含む、<65>に記載の方法。
<67>
前記親和性バインダーが、N末端アミノ酸結合タンパク質である、<66>に記載の方法。
<68>
前記検出可能な標識が、サイクルハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)又はナノスケールトポグラフィにおけるイメージングのためのDNA点集積(points accumulation for imaging in nanoscale topography(PAINT))によってシグナル増幅を提供するように構成されている、<66>に記載の方法。
<69>
前記異なる少なくとも2種類の生体分子が、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、タンパク質、及び小分子、を含む、<59>に記載の方法。
<70>
異なるクラスの生体分子間の分子相互作用を検出することをさらに含む、<59>に記載の方法。
<71>
互いに近接して異なるクラスの生体分子を検出することが、前記分子相互作用のシグナルとなる、<70>に記載の方法。
<72>
2つ以上の異なるクラスの生体分子間の空間距離を測定することをさらに含む、<59>に記載の方法。
<73>
前記検出することが、第2の種類の生体分子の発現を介して第1の種類の生体分子の存在を検出すること、を含む、<59>に記載の方法。
<74>
前記第1の種類の生体分子が小分子を含む、<73>に記載の方法。
<75>
前記第2の種類の生体分子が核酸である、<74>に記載の方法。
<76>
前記核酸がリボ核酸(RNA)であり、RNAの転写産物は、転写抑制又は活性化を通じて前記小分子によって調節されている、<75>に記載の方法。
<77>
前記核酸の存在又は存在量が、前記小分子の存在又は存在量を示す、<75>に記載の方法。
<78>
前記1種又は複数種の生体分子を検出することが、蛍光in situ配列決定(FISSEQ)を用いて達成される、<59>に記載の方法。
<79>
前記付着部分が反応性基を含む、<59>に記載の方法。
<80>
前記付着部分が、アミン、チオール、アジド、アルキン、又はクリック反応性基を含む、<59>に記載の方法。
<81>
前記付着部分が重合可能な基を含む、<59>に記載の方法。
<82>
以下の(a)~(e)を含む、生体試料の複数の生体分子を検出する方法:
(a)複数の生体分子を含む生体試料を提供すること、ここで複数の生体分子は、前記生体試料の第2の生体分子の有無を示す第1の生体分子を含む;
(b)付着部分を含むようにin situで前記第1の生体分子を修飾すること;
(c)前記付着部分を三次元ポリマーマトリックスにin situで連結すること、ここで前記付着部分は、前記生体試料中の前記第1の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されている;
(d)前記第1の生体分子を検出すること;及び
(e)前記第1の生体分子の検出により前記第2の生体分子の有無を同定すること。
<83>
(b)が、in situで前記第2の生体分子を追加の付着部分を含むように修飾することを含み、(c)が、前記追加の付着部分を前記三次元ポリマーマトリックスにin situで連結することを含み、前記追加の付着部分は、前記生体試料中の前記第2の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するように構成されている、<82>に記載の方法。
<84>
第1の種類の生体分子が小分子を含む、<82>に記載の方法。
<85>
前記小分子が代謝産物である、<84>に記載の方法。
<86>
第2の種類の生体分子がタンパク質である、<84>に記載の方法。
<87>
前記タンパク質が転写抑制因子である、<86>に記載の方法。
<88>
前記タンパク質が転写活性化因子である、<86>に記載の方法。
<89>
以下の(a)~(c)を含む、単一反応容器中の2種以上のクラスの生体分子のin situ検出法:
(a)単一反応容器内で、生体試料から2種以上の生体分子クラスの生体分子を含む複数の生体分子を準備すること;
(b)前記複数の生体分子と共に、in situでポリマーマトリックスを形成すること、ここで前記マトリックスは前記生体試料中の前記複数の生体分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存する;
(c)前記複数の生体分子の少なくともサブセットを検出すること。
<90>
前記生体分子が、各生体分子のための付着部分を含むように修飾されている、<89>に記載の方法。
<91>
前記付着部分が前記ポリマーマトリックスに連結可能である、<90>に記載の方法。
<92>
付着部分を含むプライマー又はプローブを提供することをさらに含み、前記付着部分が前記ポリマーマトリックスに連結可能である、<89>に記載の方法。
<93>
前記生体分子が、ゲノムDNAの2以上の分子又はその断片を含み、前記付着部分は前記DNA分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するためにさらに使用される、<92>に記載の方法。
<94>
ゲノムDNA FISSEQライブラリーがポリマーマトリックスで形成される、<93>に記載の方法。
<95>
前記生体分子が、2種類以上のタンパク質分子又はその断片を含み、前記タンパク質分子の各々が、前記タンパク質分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するためにさらに使用される付着部分を含む、<89>に記載の方法。
<96>
DNAバーコードを前記ポリマーマトリックスに付着させること、又は前記DNAバーコードをin situで形成された前記ポリマーマトリックスに組み込むこと、をさらに含む<89>に記載の方法。
<97>
前記生体分子が小分子を含む、<89>に記載の方法。
<98>
前記小分子の各々が、代謝産物及び小分子の絶対的又は相対的な空間的関係を保存するためにさらに使用される付着部分を含む、<97>に記載の方法。
<99>
2以上の分子プローブがin situでの分子相互作用の検出に使用され、前記2種以上の分子プローブの各々が、DNAバーコード配列を含む、<89>に記載の方法。
<100>
前記検出が細胞学的及び/又は組織学的染色をさらに含む、<89>に記載の方法。
<101>
前記ポリマーマトリックスが、パンオミクスFISSEQの超解像検出用に膨張可能である、<89>に記載の方法。
<102>
前記検出がコンピュータ分析を利用することをさらに含む、<89>に記載の方法。
<103>
前記2種以上の生体分子クラスは、RNA、DNA、タンパク質、脂質、及び小分子を含む、<102>に記載の方法。